JP2000086575A - キナ酸及びキナ酸エステルの製造方法 - Google Patents

キナ酸及びキナ酸エステルの製造方法

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JP2000086575A
JP2000086575A JP10261463A JP26146398A JP2000086575A JP 2000086575 A JP2000086575 A JP 2000086575A JP 10261463 A JP10261463 A JP 10261463A JP 26146398 A JP26146398 A JP 26146398A JP 2000086575 A JP2000086575 A JP 2000086575A
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Japan
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quinic acid
quinic
acid
group
ester
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JP10261463A
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English (en)
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Sunao Nagai
永井  直
Hisaharu Kuboyama
久春 久保山
Masahiro Shioya
昌弘 塩冶
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Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 一般式(I): 【化1】 (式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は同一又は相異な
り、水素、置換もしくは非置換のアリールカルボニル基
又は置換スチリルカルボニル基を表し、R5 は水素又は
置換もしくは非置換のアリール基を表す。)で示される
キナ酸誘導体を含有する植物体又はその処理物より有機
溶媒を用いて該キナ酸誘導体を抽出し、次いで、該キナ
酸誘導体を酸又は塩基触媒存在下、加水分解又はアルコ
ーリシスした後、精製することを特徴とする一般式(I
I): 【化2】 (式中、Rは水素、アルキル基、アルケニル基又はアラ
ルキル基を表す。)で示されるキナ酸又はキナ酸エステ
ルの製造方法。 【効果】 キナ酸誘導体を含む植物体から効率よく、安
価にキナ酸及びキナ酸エステルを得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば医薬原料、
化粧品原料、食品添加物、工業材料として有用なキナ酸
及びキナ酸エステルの製造方法に関し、より詳細には、
キナ酸誘導体を含む植物から効率的にキナ酸及びキナ酸
エステルを得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】キナ酸の製造に関しては、1954年に
4−クロロシクロヘキサノンからキナ酸の全合成がなさ
れている(R.Grewe,Ber.,Vol.87,
p.793(1954))。また、1964年にはα−
アセトアクリル酸メチルエステルと1,3−ブタジエン
を出発原料としてキナ酸の全合成が行われている(J.
Wolinsky,R.Novak,R.Vasile
ff,J.Org.Chem.,Vol.29,p.3
596〜3598(1964))。しかしながら、この
ような全合成によるキナ酸の製造は工程数が多く、収率
が低く、従って、キナ酸を工業的に製造することは困難
である。
【0003】また、天然のキナ酸はキナ皮、タラ豆の
サヤ、コーヒー豆、タバコ葉、サツマイモ、ナシ葉、リ
ンゴ、その他多くの植物に分布し、これらの材料から抽
出されると報告されている。植物中での形態は、キナ皮
では遊離の状態で存在しているが、主に、一般式
(I):
【0004】
【化3】
【0005】(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は同一
又は相異なり、水素、置換もしくは非置換のアリールカ
ルボニル基又は置換スチリルカルボニル基を表し、R5
は水素又は置換もしくは非置換のアリール基を表す。)
で示されるキナ酸誘導体として存在している。例えば、
タラ豆のサヤ中には、キナ酸と1〜5分子の没食子酸が
エステル結合したキナ酸誘導体として存在し、コーヒー
豆、タバコ葉、サツマイモ、ナシ葉、リンゴ中ではキナ
酸の5位水酸基と1分子の3,4−ジヒドロキシケイ皮
酸(カフェー酸)がエステル結合したクロロゲン酸とし
て存在する。また、他の植物体の中には、キナ酸とp−
ヒドロキシケイ皮酸(p−クマル酸)又は4−ヒドロキ
シ−3−メトキシケイ皮酸(フェルラ酸)がエステル結
合した構造で存在している。
【0006】天然のキナ酸を抽出・精製する従来法とし
ては、コーヒー生豆又はコーヒー抽出残渣から、イオン
交換や電気透析等を用いて抽出・精製する方法(特開平
7−8169号公報、特開平7−18259号公報)が
あるが、大掛かりな装置が必要となり、ランニングコス
トがかかりすぎていた。またタラ豆のサヤから没食子酸
を製造したときに排出される没食子酸製造廃液からキナ
酸を精製する方法(特開平9−3000号公報)がある
が、この方法でも精製の途中に水を留去する工程が数回
あり、膨大なエネルギーを必要とするためにランニング
コストがかかりすぎるという問題点がある。
【0007】キナ酸は水溶性が極めて高く、水溶液から
通常の有機溶媒により抽出することが困難である。ま
た、ナトリウムイオン及びカリウムイオンとの親和性が
高く、無機塩を取り除くにも困難が伴う。しかしなが
ら、植物体からキナ酸を分離するには加水分解する際、
大量の水とアルカリを必要とするため、その水溶液か
ら、キナ酸を抽出し、無機塩を除去する必要がある。前
述の抽出方法がいずれも大掛かりなものであることは、
このようにキナ酸の抽出精製が困難であることを示して
いる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述したとおり、キナ
酸の安価で効率的な抽出方法が未だ確立されていない。
本発明は、天然物に含まれているキナ酸類からキナ酸及
びキナ酸エステルを効率よく得る方法を提供することを
目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記問題
を解決するため、キナ酸類の植物体における主たる形態
である一般式(I)で示されるキナ酸誘導体を植物体か
ら抽出して繊維質等と分離できれば、これを加水分解又
はアルコーリシスすることにより、従来大量に必要であ
った水とアルカリを大幅に削減でき、効率的にキナ酸及
びキナ酸エステルを得ることが可能となると考えた。
【0010】そこで、実際の抽出源からキナ酸誘導体を
抽出する検討を行った。抽出源としてはタラ豆のサヤの
破砕物を選定した。これはタラ豆のサヤは安価であり、
通常の方法でアルカリ加水分解を行ったところキナ酸類
を約12%含んでいることがわかったためである。タラ
豆のサヤからキナ酸誘導体を抽出する条件を各種検討し
た結果、有機溶媒、好ましくはアルコール類を用いるこ
とによりキナ酸と1〜5分子の没食子酸がエステル結合
したキナ酸誘導体をほぼ定量的に抽出し、植物体の繊維
質と分離できることを見出した。
【0011】このキナ酸誘導体の加水分解及びアルコー
リシスの検討を鋭意実施した。加水分解に使用する水、
アルカリ量の削減検討を行った。その結果、従来含有さ
れるキナ酸に対し50〜100重量倍の水と20当量倍
の水酸化ナトリウムを必要としていた加水分解が、前述
の方法で抽出したキナ酸誘導体を用いると、水を80〜
90%、水酸化ナトリウムを30%以上削減できること
が分かった。これは、繊維質等の難溶成分が除去された
ため、効率的に加水分解が進行するためと考えている。
【0012】キナ酸誘導体を用いたアルコーリシスの検
討を行った結果、アルコール類と酸を用いることによ
り、効率的にエステル交換反応が進行し、目的とするキ
ナ酸エステルと没食子酸エステルが得られることを見出
した。次に、得られたキナ酸と没食子酸、又はキナ酸エ
ステルと没食子酸エステルを分離する方法を検討した。
キナ酸又はキナ酸エステルは極めて水溶性が高く低級ア
ルコール以外の有機溶媒に難溶であるため、水と適当な
有機溶媒との溶解度の差を利用して分離可能と考えた。
その結果、少量の水と適当な有機溶媒により水中にキナ
酸又はキナ酸エステルが、有機溶媒中に没食子酸又は没
食子酸エステルが分配し、分離・抽出することが可能と
なった。
【0013】得られた水溶液から水を留去することによ
りキナ酸又はキナ酸エステルを含む油状物を得ることが
できた。ここで得られたキナ酸エステルは適当な有機溶
媒中で再結晶又はカラムクロマトグラフィーにより精製
することができる。また、キナ酸は、脱塩後メタノール
−水から再結晶することにより精製することができる。
前記方法は他のキナ酸誘導体を含む植物体へも適用可能
である。即ち、本発明は、以下の発明を包含する。 (1)一般式(I):
【0014】
【化4】
【0015】(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は同一
又は相異なり、水素、置換もしくは非置換のアリールカ
ルボニル基又は置換スチリルカルボニル基を表し、R5
は水素又は置換もしくは非置換のアリール基を表す。)
で示されるキナ酸誘導体を含有する植物体又はその処理
物より有機溶媒を用いて該キナ酸誘導体を抽出し、次い
で、該キナ酸誘導体を酸又は塩基触媒存在下、加水分解
又はアルコーリシスした後、精製することを特徴とする
一般式(II):
【0016】
【化5】
【0017】(式中、Rは水素、アルキル基、アルケニ
ル基又はアラルキル基を表す。)で示されるキナ酸又は
キナ酸エステルの製造方法。 (2)抽出に際し、水を用いない前記(1)に記載の方
法。 (3)前記キナ酸誘導体を含有する植物体がタラ豆のサ
ヤである前記(1)に記載の方法。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明を以下に具体的に説明す
る。本発明に用いる植物体は、一般式(I)で示される
キナ酸誘導体を含有するものであれば、どのような種類
のものでもよいが、例えばタラ豆のサヤ、コーヒー豆、
コーヒー抽出残渣、タバコ葉、茶葉、サツマイモ、ナシ
葉、リンゴ、サトウダイコン葉等を挙げることができ
る。これらの植物体中には、キナ酸が没食子酸、カフェ
ー酸、p−クマル酸、ファルラ酸等のカルボン酸とのエ
ステル、即ち一般式(I)で示されるエステルとして存
在している。これらの植物体は、抽出効率を高めるた
め、破砕物、乾燥物等の処理物として用いることが好ま
しい。
【0019】一般式(I)において、R1 〜R4 で表さ
れる置換アリールカルボニル基としては、例えば、ベン
ゼンカルボニル基等のアリールカルボニル基が水酸基で
置換された3,4,5−トリヒドロキシベンゼンカルボ
ニル基等のヒドロキシベンゼンカルボニル基が挙げら
れ、置換スチリルカルボニル基としては、例えば、3,
4−ジヒドロキシスチリルカルボニル基、4−ヒドロキ
シスチリルカルボニル基、4−ヒドロキシ−3−メトキ
シスチリルカルボニル基等を挙げることができる。
【0020】一般式(I)において、R5 で表される置
換アリール基としては、例えば、ベフェニル基等のアリ
ール基が水酸基、カルボキシル基で置換されたカルボキ
シポリヒドロキシフェニル基等を挙げることができる。
前記カルボキシポリヒドロキシフェニル基としては、例
えば、没食子酸の3位、4位又は5位の水酸基と、キナ
酸のカルボキシル基とがエステル結合した場合に相当す
るカルボキシジヒドロキシフェニル基が挙げられる。
【0021】一般式(II)において、Rで表されるアル
キル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロ
ピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、
sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基等の炭素
数1〜5のアルキル基を挙げることができ、アルケニル
基としては、例えば、アリル基等の炭素数2〜5のアル
ケニル基が挙げられ、アラルキル基としては、例えば、
ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0022】(1)キナ酸誘導体の抽出 キナ酸誘導体を植物体又はその処理物から抽出するため
の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロ
パノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタ
ノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタ
ノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール等のア
ルコール類;酢酸等の脂肪族カルボン酸類;ジエチルエ
ーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類を挙げるこ
とができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2
種以上を混合して用いてもよい。コスト面から、好まし
くはメタノールが挙げられる。また、抽出に際し、水を
用いないことが好ましい。
【0023】有機溶媒の使用量は、植物体又はその処理
物に対し、通常0.1〜100重量倍、好ましくは0.
5〜50重量倍、更に好ましくは1〜20重量倍であ
る。抽出方法としては、例えば、該溶媒中で植物体又は
その処理物を撹拌後、ろ過する方法が挙げられる。この
方法において、抽出時の温度は通常0〜300℃、好ま
しくは10〜200℃、更に好ましくは30℃〜150
℃又は溶媒の沸点である。抽出時間は、使用する溶媒の
種類・量、温度によって異なるが、通常1〜10時間で
ある。有機溶媒に不溶の部分は主に繊維質であるが、ろ
過後有機溶媒で洗浄することが好ましい。ろ液と洗液を
併せるとほぼ定量的にキナ酸誘導体が抽出される。
【0024】(2)キナ酸誘導体の加水分解・アルコー
リシス 抽出されたキナ酸誘導体は、有機溶媒を留去した後、酸
又は塩基触媒存在下、水又はアルコール系溶媒中で加水
分解又はアルコーリシスする。触媒として用いる酸とし
ては、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類、p−トルエンス
ルホン酸等のスルホン酸類、アンバーリスト-15 等の固
体酸類を挙げることができる。これらの酸は単独で用い
てもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。コスト
面から、硫酸が好ましい。
【0025】触媒として用いる塩基としては、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セ
シウム、水酸化バリウムに代表されるアルカリ金属及び
アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭
酸水素カリウムに代表されるアルカリ金属の炭酸水素
塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸バリウムに代
表されるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、
アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムに代表され
るアルミン酸化合物、並びにナトリウムメトキシド、ナ
トリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルコ
キシドが挙げられ、これらの塩基は単独で用いてもよい
し、2種以上を混合して用いてもよい。塩基としては、
特に、価格の点から水酸化ナトリウムが好ましい。
【0026】アルコーリシスで用いる溶媒としては、メ
タノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノ
ール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノー
ル、n-ペンタノール、イソペンタノール、ベンジルアル
コール、フェネチルアルコール、アリルアルコール等の
アルコール類を挙げることができる。これらの溶媒は単
独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよ
い。コスト面から、好ましくはメタノールが挙げられ
る。植物体又はその処理物からの抽出溶媒と、アルコー
リシスで使用する溶媒が同一の場合は、抽出後溶媒を留
去せずにそのままアルコーリシスを実施することができ
る。
【0027】加水分解又はアルコーリシスに使用する水
又は溶媒の量は、キナ酸誘導体に対し、通常0.1〜3
00当量、好ましくは1〜200当量、更に好ましくは
2〜100当量である。使用する酸又は塩基の量は、キ
ナ酸誘導体に対し、通常0.01〜100当量、好まし
くは0.05〜50当量、更に好ましくは0.1〜20
当量である。反応温度は、通常0〜200℃、好ましく
は10〜150℃又は溶媒の沸点である。反応時間は、
使用する触媒の種類・量、反応温度によって異なるが、
通常1〜10時間である。
【0028】加水分解後、キナ酸とカルボン酸類とその
他の混合物が得られるが、キナ酸とこれら不純物の有機
物を分離する方法は、有機物の種類にもよるが、例え
ば、キナ酸を含む原料液のpHを1〜2まで低下させた
後、適当な有機溶媒により分配除去する方法が挙げられ
る。ここで用いる有機溶媒としては、水と2相分離し、
キナ酸以外の有機物を抽出可能なものであればどのよう
なものでもよいが、例えば塩化メチレン、クロロホルム
に代表されるハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、
テトラヒドロフラン(THF)に代表されるエーテル
類、ベンゼン、トルエン、キシレンに代表される芳香族
化合物、酢酸エチルで代表されるエステル類等の不活性
な有機溶媒を単独又は混合で用いることができる。有機
溶媒による抽出方法としては、例えば、原料液に対し、
通常0.01〜100倍、好ましくは0.1〜10倍の
体積の有機溶媒を加え、通常0〜100℃で撹拌した
後、油層を分離する方法が挙げられる。この方法におい
て、撹拌時間は特に限定されるものではないが、通常
0.5〜5時間の範囲である。通常、この操作を1〜1
0回行う。
【0029】アルコーリシス後、キナ酸エステルとカル
ボン酸エステル等が得られるが、キナ酸エステルとこれ
ら不純物の有機物を分離する方法は、有機物の種類にも
よるが、例えば、アルコーリシスで使用した溶媒を留去
後、適当な有機溶媒と水への分配を利用して、キナ酸エ
ステルと有機物を分離する方法が挙げられる。ここで用
いる有機溶媒としては、水と2相分離し、キナ酸エステ
ル以外の有機物を抽出可能なものであればどのようなも
のでもよいが、例えば塩化メチレン、クロロホルムに代
表されるハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、TH
Fに代表されるエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシ
レンに代表される芳香族化合物、酢酸エチルで代表され
るエステル類等の不活性な有機溶媒を単独又は混合で用
いることができる。有機溶媒による抽出方法としては、
例えば、反応溶媒留去後の反応混合物に対し、通常0.
01〜100重量倍、好ましくは0.05〜10重量倍
の有機溶媒を加え、通常0〜100℃で撹拌した後、油
層を分離する方法が挙げられる。この方法において、撹
拌時間は特に限定されるものではないが、通常0.5〜
5時間の範囲である。通常、この操作を1〜10回行
う。
【0030】このようにして得られたキナ酸又はキナ酸
エステルの水溶液の水を留去するが、本方法によれば従
来法に比べ留去する水の量は極めて少量で済む。前述の
ようにしてキナ酸又はキナ酸エステルを高濃度で含むオ
イルが得られるが、これの精製法としては、キナ酸の場
合、例えば、含まれる塩類をイオン交換樹脂等で除去
後、メタノール−水等からキナ酸を再結晶する方法が挙
げられる。精製せず、酸・塩基触媒共存下、アルコール
中でキナ酸エステルに変換後、精製してもよい。キナ酸
エステルの精製法としては、例えば、必要に応じて無機
塩を除去後、カラム精製又は適当な溶媒を用いて再結晶
する方法が挙げられる。
【0031】このキナ酸エステルは、この段階で精製せ
ずに酸触媒下、アセトン中反応させることにより、下式
に示したようなキナ酸のラクトン体へと誘導後、精製
し、数ステップを経て医薬中間体として有用なシキミ酸
又はシキミ酸誘導体へと変換可能である。また、同様に
キナ酸エステルをこの段階で精製せずに、酸触媒下、
2,2−ジアルコキシプロパン等と反応させることによ
り、キナ酸アセタール体に誘導後、精製し、その後数ス
テップを経て同じく医薬中間体として有用なシキミ酸又
はシキミ酸誘導体へと変換可能である。
【0032】
【化6】
【0033】
【実施例】以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実
施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施
例において、メタノールとしては、99%メタノールを
用いた。 (実施例1) (1)抽出 温度計、冷却管付き300mlフラスコにタラパウダー
(タラ豆のサヤの破砕物)50g及びメタノール100
mlを加え、1 時間撹拌しながら加熱還流した。反応混
合物をろ過し、メタノール100mlで洗浄した。ろ液
中の溶媒を減圧下(2.7kPa:以降減圧度は同一)
50℃で留去した。
【0034】(2)加水分解、分離 得られた残渣39gに48%水酸化ナトリウム水溶液2
6g、水23mlを加え加熱撹拌した。このとき残存す
るメタノールをトップから除き反応溶液の内温を約10
0℃とした後、5時間加熱した。反応の終点は液体クロ
マトグラフィーで確認する。反応混合物を約50℃に冷
却した後、反応溶液のpHが1.5になるまで濃硫酸(
16.25gを要した) を加えた。約50℃で反応溶液
75mlをTHF30mlで10分かけて抽出した後、
更にTHF15mlで2回抽出し、水層70.4gを分
離した。液体クロマトグラフィー分析の結果、水層には
キナ酸4.7g(24.4mmol)が含まれていた。有機層には
キナ酸0.8g、没食子酸17.2gが含まれていた。
【0035】(3)エステル化 水層70.4gを減圧下、80℃で濃縮し49gの残渣
を得た。メタノール50mlを加え、析出した硫酸ナト
リウム(24.4 g) をろ去した。硫酸ナトリウムをメタノ
ール30mlで洗浄し、ろ液と洗液を併せ、溶媒を減圧
下50℃で留去した。残渣9.9gにメタノール30m
l及び濃硫酸1gを加え、5時間加熱還流し、キナ酸メ
チル5.38g(26.1mmol)を含むメタノール溶液38g
を得た。溶媒を減圧留去した後、カラムクロマトグラフ
ィー(シリカゲル、展開溶媒=アセトン−酢酸エチル)
により精製することにより、5.0g(24.3mmol)のキナ
酸メチルが得られた。
【0036】(実施例2)実施例1において(1)抽
出、(2)加水分解・分離までを同様に行い、キナ酸
4.7gを含む水溶液70gを得た。この反応溶液にメ
タノール30mlを加えて1時間撹拌した後、析出した
無機塩をろ去した。得られたキナ酸抽出液を、あらかじ
め10%塩酸で処理した後に水洗しておいたアンバーラ
イトIR120B(陽イオン交換樹脂)10.0gと共
に室温で30分間撹拌した後、ろ過し、メタノールで洗
浄した。ろ液と洗液を混合したものに、あらかじめ1N
水酸化ナトリウム水溶液で処理した後に水洗しておいた
アンバーライトIRA900(陰イオン交換樹脂)1
0.0gを加え30分間撹拌した。反応溶液のpHは
3.0となった。ろ過した後、メタノールで洗浄し、ろ
液と洗液を混合した。溶媒を減圧下、50〜60℃に加
熱留去し油状物質を得た。得られた油状物質をメタノー
ル−水から再結晶し、キナ酸4.0g(20.8mmol)を得
た。
【0037】(実施例3)温度計、冷却管付き200m
lフラスコにタラパウダー(タラ豆のサヤの破砕物)2
0g及びメタノール40mlを加え、1 時間加熱還流し
た。反応混合物をろ過し、メタノール40mlで洗浄し
た。得られたキナ酸誘導体を含むメタノール溶液80g
に硫酸6.13gを加えオートクレーブ中、系内を窒素
置換後、120℃で5時間撹拌した。内圧は1MPaま
で上昇した。反応後、液体クロマトグラフィーによりキ
ナ酸メチルが1.33g、没食子酸メチルが9.13g
生成していることを確認した。反応混合物からメタノー
ルを留去後(留去後の重量:9.6g)、酢酸エチル3
0ml及び水3mlを加え、0.5時間振盪攪拌した
後、水層を分け取った。得られた水溶液の水を減圧下留
去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展
開溶媒=アセトン−酢酸エチル)により精製することに
より、1.0g(4.9mmol) のキナ酸メチルが得られた。
【0038】(実施例4)実施例1において(1)抽出
までを同様に行い、得られたキナ酸誘導体を含む残渣3
9gに水30ml及び濃硫酸15.62gを加え、10
0℃で5時間撹拌した。反応溶液に48%水酸化ナトリ
ウム水溶液を加えpHを1.5とした後、THF20m
lで10分かけて抽出した後、更にTHF10mlで抽
出し、水層を分離した。水を留去後、メタノール50m
lを加え、析出した硫酸ナトリウムをろ去した。濃硫酸
1gを加え、5時間加熱還流し、キナ酸メチル2.88
g(14mmol)を含むメタノール溶液62.5gを得た。溶
媒を減圧留去した後、カラムクロマトグラフィー(シリ
カゲル、展開溶媒=アセトン−酢酸エチル)により精製
することにより、2.7g(13.1mmol)のキナ酸メチルが
得られた。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、キナ酸誘導体を含む植
物体から効率よく、安価にキナ酸及びキナ酸エステルを
得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塩冶 昌弘 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 化学株式会社内 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC41 AC46 AC48 AD11 AD16 BA66 BA69 BB10 BB14 BB15 BB17 BB25 BB71 BD70 BE60 BJ20 BJ50 BN20 BS20 KA03 KA06

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I): 【化1】 (式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は同一又は相異な
    り、水素、置換もしくは非置換のアリールカルボニル基
    又は置換スチリルカルボニル基を表し、R5 は水素又は
    置換もしくは非置換のアリール基を表す。)で示される
    キナ酸誘導体を含有する植物体又はその処理物より有機
    溶媒を用いて該キナ酸誘導体を抽出し、次いで、該キナ
    酸誘導体を酸又は塩基触媒存在下、加水分解又はアルコ
    ーリシスした後、精製することを特徴とする一般式(I
    I): 【化2】 (式中、Rは水素、アルキル基、アルケニル基又はアラ
    ルキル基を表す。)で示されるキナ酸又はキナ酸エステ
    ルの製造方法。
  2. 【請求項2】 抽出に際し、水を用いない請求項1記載
    の方法。
  3. 【請求項3】 前記キナ酸誘導体を含有する植物体がタ
    ラ豆のサヤである請求項1記載の方法。
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