JP2000080197A - 多孔質フィルム - Google Patents

多孔質フィルム

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Abstract

(57)【要約】 【課題】機械強度等の各種の特性を満足し、かつ過酷な
高温条件下でも電池の安全性を確保できるような形状安
定性、高耐熱性を有する多孔質フィルム及びその製造方
法を提供することにある。本発明の他の目的は、本発明
の多孔質フィルムからなる電池用セパレーターを提供す
ること。 【解決手段】高分子樹脂を基材とする多孔質フィルムに
おいて、空孔内に熱硬化性樹脂及び/又は該高分子樹脂
より高い融点を有する重合性樹脂が充填されてなる多孔
質フィルム、並びに高分子樹脂を基材とする多孔質フィ
ルムを、熱硬化性樹脂のモノマー及び/又は該高分子樹
脂より高い融点を有する重合性樹脂のモノマーと溶剤と
を含有してなる混合溶液に浸漬した後、溶剤を除去し、
次いで前記モノマーを重合させることを特徴とする前記
多孔質フィルムの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は多孔質フィルム及び
その製造方法に関する。さらに詳しくは、電池の正極負
極間に配置されてこれらを隔離させる電池用セパレータ
ー等として好適に用いることのできる、多孔質フィルム
及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器のコードレス化等に対応
するため、電池として軽量で、高起電力、高エネルギー
が得られ、しかも自己放電が少ないリチウム電池が注目
を集めている。このリチウム電池の正極負極の間には、
正極負極の短絡防止のためにセパレーターが設けられて
いるが、このセパレーターとしては正極負極間のイオン
の透過性を確保するために多数の微細孔が形成された多
孔質フィルムが使用されている。
【0003】このようなセパレーターには、機械強度、
透過性といった特性に加えて、電池が過熱された際に微
細孔を閉塞することによりイオン透過を阻害して、電極
反応を抑制し、安全性を確保する等、電池特性に関する
多くの要求特性がある。
【0004】例えば、特開平5−258740号公報に
おいては、内部に微細孔を有するポリオレフィンからな
る多孔質ポリマー層と、その微細孔内に存在し、該多孔
質ポリマーよりも溶融温度が低い第二のポリオレフィン
からなるポリマー層から構成されるセパレーターが開示
されている。かかるセパレーターにおいては、所定の温
度以上に加熱されると第二のポリマーが溶融して微細孔
内部を閉塞することによりイオン透過性を消失させ、電
流の流路を遮断させている。
【0005】しかしながら、従来より広く用いられてい
るポリオレフィン系多孔質フィルムは、加熱されると分
子鎖運動が活性化されて分子伸長の緩和が起こり、フィ
ルムに収縮応力が発生する。これにより、フィルムの収
縮や破膜が起こるおそれがあるため、かかるフィルムを
電池内のセパレーターとして用いる場合、過熱に対して
は微細孔内部の閉塞により安全性を確保できるとして
も、特に電気自動車のバッテリー等、電池内部がより高
い温度になる可能性が高い場合には、フィルム自体の形
状安定性、熱耐久性が問題になってくる。
【0006】このように、セパレーター用の多孔質フィ
ルムには、機械強度、透過性、閉塞性能に加えて、形状
安定性、高耐熱性が要求されるが、これらの諸特性を備
えた多孔質フィルムは報告されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、機械
強度等の各種の特性を満足し、かつ過酷な高温条件下で
も電池の安全性を確保できるような形状安定性、高耐熱
性を有する多孔質フィルム及びその製造方法を提供する
ことにある。本発明の他の目的は、本発明の多孔質フィ
ルムからなる電池用セパレーターを提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために鋭意検討した結果、多孔質フィルムの
空孔内に熱硬化性樹脂や基材となる高分子樹脂より高い
融点を有する重合性樹脂を充填することにより、意外に
も寸法安定性、高耐熱性に優れた多孔質フィルムを得る
ことができることを見い出し、本発明に到った。
【0009】即ち、本発明の要旨は、(1) 高分子樹
脂を基材とする多孔質フィルムにおいて、空孔内に熱硬
化性樹脂及び/又は該高分子樹脂より高い融点を有する
重合性樹脂が充填されてなる多孔質フィルム、(2)
高分子樹脂を基材とする多孔質フィルムを、熱硬化性樹
脂のモノマー及び/又は該高分子樹脂より高い融点を有
する重合性樹脂のモノマーと溶剤とを含有してなる混合
溶液に浸漬した後、溶剤を除去し、次いで前記モノマー
を重合させることを特徴とする、熱硬化性樹脂及び/又
は該高分子樹脂より高い融点を有する重合性樹脂が空孔
内に充填されてなる多孔質フィルムの製造方法、(3)
前記(1)記載の多孔質フィルムからなる電池用セパ
レーター、に関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の多孔質フィルムは、高分
子樹脂を基材とするものであり(以下、高分子樹脂を基
材樹脂と称する場合がある)、該フィルムの空孔内に熱
硬化性樹脂及び/又は該高分子樹脂より高い融点を有す
る重合性樹脂(以下、両者を併せて充填樹脂と略す場合
がある)が充填されていることに特徴を有する。
【0011】本発明において基材樹脂として用いられる
高分子樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等
のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミド、ポリエチ
レンテレフタレート(PET)等のポリエステル等があ
げられる。なかでもポリオレフィンが好ましく、特に重
量平均分子量が5×105 以上の超高分子量ポリエチレ
ン等の結晶性高分子樹脂を用いるのが好ましい。
【0012】本発明で用いられる熱硬化性樹脂として
は、特に限定されない。例えば、ジグリシジルエーテル
等の官能基を2つ以上有するエポキシ樹脂、ビスマレイ
ミド・トリアジン・レジン等のトリアジン系樹脂、及び
ジアリルフタレート等のポリエステル樹脂、ポリイミド
樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ
エーテル樹脂等が挙げられる。なかでもエポキシ樹脂が
好ましい。熱硬化性樹脂は単独で用いても、2種類以上
を混合して用いても良い。
【0013】高分子樹脂より高い融点を有する重合性樹
脂としては、特に限定されない。具体的には、ポリエス
テルアクリレート等の官能基を2つ以上有するアクリル
樹脂、ポリオキシアルキレン樹脂等が挙げられる。ま
た、該重合性樹脂の融点としては、基材樹脂の融点より
高いものであればよいが、10℃以上高いものが好まし
く、20℃以上高いものがより好ましい。該重合性樹脂
は単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良
い。
【0014】また、本発明においては、前記のような熱
硬化性樹脂及び高分子樹脂より高い融点を有する重合性
樹脂を混合して用いてもよい。例えば、エポキシ樹脂と
アクリル樹脂など、エポキシ樹脂を含む一種以上の樹脂
が好適に使用される。
【0015】充填樹脂が空孔内に充填される充填量は、
高分子樹脂100重量部に対して、充填効果を発揮させ
る観点から30重量部以上が好ましく、40重量部以上
がさらに好ましい。また、多孔質フィルムの通気性を確
保する観点から150重量部以下が好ましく、100重
量部以下がさらに好ましく、90重量部以下が特に好ま
しい。ここでいう充填量は、実施例の項において記載の
方法により算出することができる。
【0016】また、樹脂の充填前の空孔体積に対する充
填率は、1〜70%が好ましく、10〜60%がさらに
好ましく、20〜50%が特に好ましい。ここでいう充
填率は、実施例の項において記載の方法により算出する
ことができる。
【0017】本発明の多孔質フィルムにおいて、樹脂が
充填された状態での空孔率は、10〜80体積%が好ま
しく、30〜70体積%がさらに好ましい。ここでいう
空孔率は、実施例の項において記載の方法により算出す
ることができる。
【0018】また、本発明の多孔質フィルムの150℃
での面積保持率は、30%以上が好ましく、40%以上
がさらに好ましい。本発明の多孔質フィルムは、このよ
うに高い面積保持率を有することにより、収縮による正
極負極間の短絡に対して抑制効果を発揮することができ
る。ここでいう面積保持率とは、実施例の項において記
載の方法により算出することができる。
【0019】本発明の多孔質フィルムを製造するには、
高分子樹脂を基材とする多孔質フィルムを、熱硬化性樹
脂のモノマー及び/又は該高分子樹脂より高い融点を有
する重合性樹脂のモノマーと溶剤とを含有してなる混合
溶液に浸漬した後、溶剤を除去し、次いで前記モノマー
を重合させることにより得ることができる。前記混合溶
液の調製に用いられる溶剤としては、熱硬化性樹脂のモ
ノマーや高分子樹脂より高い融点を有する重合性樹脂の
モノマーを溶解できるものであれば特に限定されるもの
ではない。例えば、メタノール、アセトン、塩化メチレ
ン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。ま
た、浸漬工程後に溶剤の除去を行う観点から易乾燥性の
溶剤が特に好ましい。充填樹脂のモノマーの混合溶液中
への配合割合は、モノマーが少なくとも1体積%以上で
あるのが好ましく、5体積%以上がより好ましい。
【0020】混合溶液の調製に際しては、所望の粘度に
適宜調整するのが好ましい。好ましい粘度としては、浸
漬する多孔質フィルムの孔径、細孔構造等に依るため、
一概には規定できないが、例えば、基材樹脂がポリエチ
レンの多孔質フィルムであれば、該フィルムの含浸温度
において100cps以下であることが好ましい。混合
溶液の粘度が高過ぎる場合、多孔質フィルムの空孔内へ
の充填樹脂モノマーの浸透速度等が遅くなり、生産性が
低下する傾向がある。また、本発明における混合溶液に
は、必要に応じて硬化剤、重合開始剤、触媒等の重合反
応に必要な物質が含まれていてもよい。
【0021】次に、前記混合溶液に多孔質フィルムを含
浸する。含浸温度は、特に限定されないが、20〜80
℃であるのが好ましく、含浸時間は、5秒〜60分が好
ましい。
【0022】含浸工程後、溶剤の除去を行なう。溶剤の
除去工程は風乾、減圧乾燥、熱風乾燥等の乾燥による方
法が好適に用いられる。この時、多孔質フィルム表面の
付着物を拭き取るか、溶剤を吹き付ける等の方法で付着
物を洗い流してもよい。場合により、所望の空孔率を確
保するためフィルムを吸引し通気処理を行っても良い。
【0023】次いでモノマーの重合により空孔内に浸透
したモノマーを重合する。重合方法としては、特に限定
されない。例えば、加熱、UV照射、電離放射線照射等
の方法が挙げられる。エポキシ樹脂を重合させる場合、
作業性の面から酸素の影響を受けないUVカオチン重合
法がより好ましい。
【0024】本発明の多孔質フィルムの製造に使用され
る樹脂充填前の多孔質フィルムは、常法により容易に得
ることができる。例えば、基材樹脂としてポリオレフィ
ンを用いる場合、ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解し、
ゲル状シートを作製し、延伸処理、脱溶媒処理を行って
多孔質フィルムを調製することができる。本発明で使用
する樹脂充填前の多孔質フィルムは、これらの高分子樹
脂を基材とするフィルム、又はこれらのフィルムを2種
類以上貼りあわせたフィルム等であり、微細な貫通孔を
有する多孔質フィルムであれば、特に限定されない。ま
た、多孔質フィルムには、本発明の目的を損なわない範
囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤が含まれ
ていてもよい。
【0025】また、本発明に用いられる樹脂充填前の多
孔質フィルムとしては、その空孔率が25〜90体積%
のものが好ましく、30〜80体積%のものがより好ま
しい。セパレーターとして電池に組み込んだ際における
イオン透過性や通気性の観点から25体積%以上が好ま
しく、強度を維持するという観点から90体積%以下が
好ましい。
【0026】前記のような方法により得られる本発明の
多孔質フィルムは、充填樹脂が空孔内の表面にコートさ
れた形態を持つが、特にフィルムのフィブリルが交差し
ている部分や枝分かれ部分などに凝集している量が多
い。そのため、フィブリル間が擬似的に架橋された状態
になり、フィブリル同士の相対位置がほぼ固定され、基
材樹脂の収縮変形が阻害されることにより形状安定性が
確保されていると考えられる。したがって、特開平5−
258740号公報に記載の発明のように、微細孔内に
基材樹脂よりも溶融温度が低いポリマーの充填された多
孔質フィルムとは異なり、本発明の多孔質フィルムにお
いては、基材樹脂の軟化点以上あるいは融点以上の温度
においても面積保持率を高く維持することができる。本
発明の多孔質フィルムの150℃での面積保持率は、前
記のように30%以上である。これにより、収縮による
応力が小さくなり、正極負極間の短絡抑制効果は非常に
大きくなる。
【0027】また、本発明の多孔質フィルムは、加圧下
で基材樹脂の融点以上の温度になっても、基材樹脂の変
形により部分的に薄くなり、破膜、短絡する問題が防止
できる。交差部分や枝分かれ部分に凝集した樹脂がスペ
ーサ粒子の役割をにない、短絡を防止できるものと考え
られる。短絡の起こらない温度、すなわち耐熱温度は高
いほど好ましく、本発明に係る耐熱温度は多孔質フィル
ムの基材樹脂の融点+10℃以上である。さらに好まし
くは融点+30℃以上であれば孔閉塞も充分発現し、効
果が大きい。
【0028】形状が固定されたまま基材樹脂の融点以上
に加熱すると孔閉塞が起こる。このことは、常温で測定
するガーレー値の大きさおよび表面SEM観察によって
確認される。25μm付近の膜厚であれば、ガーレー値
(25μm換算値)が>10000であれば十分閉塞さ
れている。このように、本発明の多孔質フィルムは、空
孔内に樹脂を充填することにより、高い耐熱性、形状安
定性を有するが、基材樹脂の部分的変形により孔の閉塞
性も確保される。
【0029】また、特にポリオレフィン多孔質フィルム
を基材に使用する場合、エポキシ樹脂等の親水性部分を
有する樹脂を空孔内に担持することにより、電解液の保
液性も改善することができる。
【0030】前記のような特性を有する本発明の多孔質
フィルムは、電池用セパレーターとしての用途だけでな
く、各種フィルター、電解コンデンサー用隔膜等に好適
に用いることのできるフィルムである。
【0031】
【実施例】本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに
詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定さ
れるものではない。なお、ここで実施した具体的な試験
方法は次の通りである。
【0032】(1)空孔率 本明細書においては、樹脂充填前の空孔率と充填後の空
孔率が存在するが、いずれも測定対象の多孔質フィルム
を直径3.9cmの円状に切り抜き、その体積と重量を
求め、得られる結果から次式を用いて計算する。
【0033】空孔率(体積%)=100×〔体積(cm
3 )−重量(g)/平均密度(g/cm3 )〕/体積
(cm3
【0034】但し、樹脂充填後の空孔率を求めるに際し
て、平均密度は次式により算出することができる。
【0035】平均密度(g/cm3 )=(多孔質基材重
量(g)+充填樹脂重量(g))/〔(多孔質基材重量
(g)/多孔質基材密度(g/cm3 ))+(充填樹脂
重量(g)/充填樹脂密度(g/cm3 ))〕
【0036】(2)充填樹脂の充填量(充填樹脂/基材
樹脂の重量比) 充填樹脂の充填量は、樹脂が充填された多孔質フィルム
を適当な大きさに切断し、その重量(M1)を秤量す
る。そして、多孔質フィルムを形成する高分子樹脂を溶
解するが、充填樹脂は溶解しない溶媒に浸漬し溶解作業
を行う。次に、充填樹脂(非溶解分)をろ別し、乾燥さ
せてその重量(M2)を秤量する。充填量は次式により
算出する。 充填量=M2/(M1−M2)
【0037】(3)樹脂の充填率 樹脂の充填率は、次式により算出される。
【0038】充填率(%)=100×〔(樹脂充填後の
膜重量−充填前の膜重量)/充填樹脂密度〕/(膜全体
積−充填前の膜重量/基材樹脂密度)
【0039】(4)面積保持率 多孔質フィルムを直径3.9cmの円状に切りぬき、無
張力の状態で四フッ化エチレンシートにのせ、150℃
のオーブンに1時間投入する。次いで、コンピュータお
よびスキャナを用いて加熱前後の画素数を測定し、次式
より150℃での面積保持率を計算する。 面積保持率(%)=100×(加熱後画素数)/(加熱
前画素数)
【0040】(5)耐熱性(短絡試験) 平均粒径10μmのLiCoO2 100重量部に対し、
リン状黒鉛(導電助剤)5重量部を加えて混合する。ま
た、これとは別に、ポリフッ化ビニリデン3重量部を2
2重量部のN−メチルピロリドンに溶解させた溶液を用
意する。そして、混合物8重量部と溶液3重量部を混合
し、次いで、70メッシュの網を通して粗大物を取り除
いてスラリー状の正極合剤を得る。この正極合剤を厚さ
20μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に均一
に塗布して乾燥し、その後、ローラープレス機により圧
縮し、更に、一辺が10mmの正方形に切断して正極を
作製した。
【0041】一方、これとは別に、平均粒径10μmの
カーボン粉末9重量部を前記と同じ溶液4重量部と混合
し、次いで、70メッシュの網を通して粗大物を取り除
いてスラリー状の負極合剤を得る。この負極合剤を厚さ
18μmの銅箔(負極集電体)の両面に均一に塗布して
乾燥し、その後、ローラープレス機により圧縮し、更
に、一辺が12mmの正方形に切断して負極を作製し
た。
【0042】一辺が12mm以上の正方形の多孔質フィ
ルムを用意し、このフィルムを正極と負極の間に挟ん
だ。次いで、このものを四フッ化エチレンシートを介し
てステンレス板に挟み、ステンレス板の四隅にあるボル
トを0.5kgf/cmのトルクで締めた。次いで、1
60、170、180又は190℃に5分間加熱した
後、両極の導通性をテスターにて調べた。なお、感圧紙
測定の結果から、フィルムには5MPaの圧が掛かって
いることが分かった。
【0043】(6)通気度 JIS P 8117に準拠して測定した。
【0044】実施例1 重量平均分子量が200万の超高分子量ポリエチレン
(融点:136℃)5重量部、重量平均分子量が20万
の高密度ポリエチレン(融点:131℃)10重量部、
さらに溶媒である流動パラフィン(40℃における動粘
度が59cSt)85重量部からなる樹脂組成物をスラ
リー状に均一混合した。次いで、小型ニーダーを用い
て、このスラリーを160℃の温度にて約50分間溶解
混練りし、得られた混練り物を0℃に冷却された金属板
に挟み込み、急冷しつつシート状に成形した。得られた
シート状成形物を、シート厚が0.2〜0.3mmにな
るまで約115℃の温度でヒートプレスした。次いで、
約115℃の温度で同時に縦横4×4倍に二軸延伸し、
次いで、塩化メチレンとさらにメタノールを使用して脱
溶媒処理を行い、空孔率60体積%、厚さ23μmの多
孔質フィルムを得た。
【0045】この多孔質フィルムを、エポキシモノマー
である1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル1
体積部、重合開始剤(UV1−6930:ユニオンカー
バイド日本社製)0.05体積部、メタノール6体積部
からなる混合溶液に含浸させた。この時の含浸温度は2
5℃、含浸時間は1分間とした。次いで、メタノール成
分を蒸発させると共に表面の付着物を洗浄した後、この
多孔質フィルムを650Wの水銀ランプ直下5cmの位
置に120秒間保持し、エポキシモノマーを重合させ
た。その結果、空孔率47体積%(充填率22%)のエ
ポキシ樹脂が空孔内に充填されてなる多孔質フィルムを
得た。このフィルムにおける充填樹脂の充填量は、充填
樹脂/基材樹脂の重量比として0.41であった。
【0046】このエポキシ樹脂が充填されてなる多孔質
フィルムについて、150℃で保持したときの面積保持
率、160〜190℃において実施した短絡試験の結果
を表1に示す。表中、短絡試験において短絡すれば×、
短絡しないものを○で表示した。エポキシ樹脂が充填さ
れてなる多孔質フィルムを作製した直後のガーレー値、
及び該多孔質フィルムを形状固定しながら150℃で5
分間保持した後のガーレー値を表2に示す。表1に示さ
れるように、本例で得られたエポキシ樹脂が充填されて
なる多孔質フィルムは、190℃まで短絡せず、150
℃で孔閉塞が起こっていることが確認された。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】実施例2 実施例1で得られた樹脂未充填の多孔質フィルムを1,
4−ブタンジオールジグリシジルエーテル1体積部、重
合開始剤(UV1−6930:ユニオンカーバイド日本
社製)0.05体積部、メタノール3体積部からなる混
合溶液に含浸させた。この時の含浸温度は25℃、含浸
時間は1分間とした。次いで、実施例1と同様の処理を
行い、空孔率34体積%(充填率43%)のエポキシ樹
脂が充填されてなる多孔質フィルムを得た。このフィル
ムにおける充填樹脂の充填量は、充填樹脂/基材樹脂の
重量比として0.82であった。
【0050】このエポキシ樹脂が充填されてなる多孔質
フィルムについて、実施例1と同様の評価試験を行った
結果を表1、2に示す。表1に示されるように、本例で
得られた多孔質フィルムは190℃まで短絡せず、15
0℃で孔閉塞が起こっていることが確認された。また、
本例における多孔質フィルムは、実施例1におけるそれ
よりも面積保持率に優れたものであることが分かった。
【0051】実施例3 重量平均分子量が200万の超高分子量ポリエチレン
(融点:136℃)15重量部、及び溶媒である流動パ
ラフィン(40℃における動粘度が59cSt)85重
量部からなる樹脂組成物をスラリー状に均一混合した。
次いで、小型ニーダーを用いて、このスラリーを160
℃の温度にて約50分間溶解混練りし、得られた混練り
物を0℃に冷却された金属板に挟み込み、急冷しつつシ
ート状に成形した。得られたシート状成形物を、シート
厚が0.2〜0.3mmになるまで約115℃の温度で
ヒートプレスした。次いで、約115℃の温度で同時に
縦横4×4倍に二軸延伸し、次いで、塩化メチレンとさ
らにメタノールを使用して脱溶媒処理を行い、空孔率6
3体積%、厚さ25μmの多孔質フィルムを得た。
【0052】この多孔質フィルムを、1,4−ブタンジ
オールジグリシジルエーテル1体積部、重合開始剤(U
V1−6930:ユニオンカーバイド日本社製)0.0
5体積部、メタノール3体積部からなる混合溶液に含浸
させた。この時の含浸温度は25℃、含浸時間は1分間
とした。次いで、メタノール成分を蒸発させると共に表
面の付着物を洗浄した後、この多孔質フィルムを、65
0Wの水銀ランプ直下5cmの位置に120秒間保持
し、エポキシモノマーを重合させた。その結果、空孔率
36体積%(充填率43%)のエポキシ樹脂が充填され
てなる多孔質フィルムを得た。このフィルムにおける充
填樹脂の充填量は、充填樹脂/基材樹脂の重量比として
0.92であった。
【0053】このエポキシ樹脂が充填されてなる多孔質
フィルムについて、実施例1と同様の評価試験を行った
結果を表1、2に示す。表1に示されるように、本例で
得られた多孔質フィルムは190℃まで短絡せず、15
0℃で孔閉塞が起こっていることが確認された。
【0054】実施例4 実施例1で得られた樹脂未充填の多孔質フィルムを、
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル1体積
部、重合開始剤(UV1−6930、ユニオンカーバイ
ド日本社製)0.05体積部、メタノール0.5体積部
からなる混合溶液に含浸させた。この時の含浸温度は2
5℃、含浸時間は1分間とした。次いで、実施例1と同
様の処理を行い、空孔率14体積%(充填率77%)の
エポキシ樹脂が充填されてなる多孔質フィルムを得た。
このフィルムにおける充填樹脂の充填量は、充填樹脂/
基材樹脂の重量比として1.46であった。
【0055】このエポキシ樹脂が充填されてなる多孔質
フィルムについて、実施例1と同様の評価試験を行った
結果を表1に示す。表1に示されるように、本例で得ら
れた多孔質フィルムは190℃まで短絡しなかった。
【0056】比較例1 実施例1で得られた樹脂未充填の多孔質フィルムについ
て、実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1、2
に示す。
【0057】表1に示されるように、本例で得られた多
孔質フィルムは170℃で短絡が起こった。これは、ス
ペーサ粒子の役割をになう充填樹脂が存在しないため、
圧によりPEが電極へ浸透したことによるものと考えら
れる。
【0058】比較例2 実施例3で得られた樹脂未充填の多孔質フィルムについ
て、実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示
す。本例で得られた多孔質フィルムは150℃保持で破
膜が起こり、表1に示すように短絡試験においても、1
60℃ですでに短絡が起こっていた。これも破膜が原因
と考えられる。
【0059】
【発明の効果】本発明により、機械強度等の各種の特性
を満足し、かつ過酷な高温条件下でも電池の安全性を確
保できるような形状安定性、高耐熱性を有する多孔質フ
ィルムを提供することが可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 23:00 (72)発明者 岸井 豊 大阪府茨木市下穂積1−1−2 日東電工 株式会社内 (72)発明者 山口 睦子 大阪府茨木市下穂積1−1−2 日東電工 株式会社内 (72)発明者 山本 一成 大阪府茨木市下穂積1−1−2 日東電工 株式会社内 (72)発明者 藤田 茂 大阪府茨木市下穂積1−1−2 日東電工 株式会社内 Fターム(参考) 4F074 AA16 AA17 AA24 AA46 AA64 AA65 AA66 AA71 AA74 AA76 AA78 CD20 DA24 DA49 4F212 AA03 AA04A AA05A AD05 AG20 AH33 UA15 UC07 UG02 UN29 UW32 UW41 5H021 BB09 BB12 BB13 CC00 EE02 EE04 EE09 HH01 HH02 HH06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高分子樹脂を基材とする多孔質フィルム
    において、空孔内に熱硬化性樹脂及び/又は該高分子樹
    脂より高い融点を有する重合性樹脂が充填されてなる多
    孔質フィルム。
  2. 【請求項2】 熱硬化性樹脂及び/又は該高分子樹脂よ
    り高い融点を有する重合性樹脂の充填量が、高分子樹脂
    100重量部に対して30〜150重量部であることを
    特徴とする請求項1記載の多孔質フィルム。
  3. 【請求項3】 充填される樹脂が、エポキシ樹脂を含む
    一種以上の樹脂であることを特徴とする請求項1又は2
    記載の多孔質フィルム。
  4. 【請求項4】 基材の高分子樹脂がポリオレフィンであ
    る請求項1〜3いずれか記載の多孔質フィルム。
  5. 【請求項5】 樹脂が充填された状態での空孔率が10
    〜80体積%である請求項1〜4いずれか記載の多孔質
    フィルム。
  6. 【請求項6】 150℃での面積保持率が30%以上で
    ある請求項1〜5いずれか記載の多孔質フィルム。
  7. 【請求項7】 高分子樹脂を基材とする多孔質フィルム
    を、熱硬化性樹脂のモノマー及び/又は該高分子樹脂よ
    り高い融点を有する重合性樹脂のモノマーと溶剤とを含
    有してなる混合溶液に浸漬した後、溶剤を除去し、次い
    で前記モノマーを重合させることを特徴とする、熱硬化
    性樹脂及び/又は該高分子樹脂より高い融点を有する重
    合性樹脂が空孔内に充填されてなる多孔質フィルムの製
    造方法。
  8. 【請求項8】 基材の多孔質フィルムの空孔率が25〜
    90体積%である請求項7記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜6いずれか記載の多孔質フィ
    ルムからなる電池用セパレーター。
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