JP2000072788A - ルテニウムカルベン錯体の製造方法 - Google Patents

ルテニウムカルベン錯体の製造方法

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JP2000072788A
JP2000072788A JP10257482A JP25748298A JP2000072788A JP 2000072788 A JP2000072788 A JP 2000072788A JP 10257482 A JP10257482 A JP 10257482A JP 25748298 A JP25748298 A JP 25748298A JP 2000072788 A JP2000072788 A JP 2000072788A
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ruthenium
carbene complex
group
phosphine
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Koji Iwatani
幸治 岩谷
Yasushi Hori
容嗣 堀
Toshimitsu Hagiwara
利光 萩原
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Takasago International Corp
Original Assignee
Takasago International Corp
Takasago Perfumery Industry Co
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 メタセシス反応触媒等として有用なルテニウ
ムカルベン錯体を安全に且つ簡便に短時間で生産性良く
製造し得る方法の提供。 【解決手段】一般式;[RuX2(arene)]2(式中Xは
ハロゲン原子を示し、areneはベンゼン環を有する炭化
水素を示す)で表されるルテニウム化合物、一般式;P
123(式中R1、R2及びR3はそれぞれ独立して炭
素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキ
ル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す)
で表されるホスフィン、及び一般式;R4CHX2(式中
4はエーテル結合及び/又はエステル結合を有してい
てもよい炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシ
クロアルキル基或いは置換基を有していてもよいアリー
ル基を示し、Xはハロゲン原子を示す)で表されるジハ
ロゲノ化合物を、金属還元剤の存在下に反応させて、一
般式;RuX2(PR1232(=CHR4)(式中
1、R2、R3、R4及びXは前記と同じ)で表されるル
テニウムカルベン錯体を製造する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、ルテニウムカルベ
ン錯体の製造方法に関する。さらに詳細には、本発明
は、各種の有機合成反応、特にメタセシス反応による炭
素−炭素間の結合生成反応の触媒として有用なルテニウ
ムカルベン錯体を、安全に且つ簡便に、短時間で生産性
良く製造し得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から多くの遷移金属錯体が有機合成
反応の触媒として使用されている。その中で、遷移金属
錯体を触媒とするオレフィンのメタセシス反応では、モ
リブデンやタングステンなどの遷移金属を含む触媒を用
いる反応について多くの研究がなされてきたが、それら
の触媒は酸素や水分に対して不安定なものが多い。ま
た、モリブデンやタングステンを含むメタセシス触媒
は、それらの金属の示すルイス酸性のために、反応基質
中の官能基の種類によっては使用できないものも多く、
取り扱い性に劣っている。
【0003】近年、ルテニウムのカルベン錯体よりなる
触媒が開発され(J.Am.Chem.Soc.,1996,1
18,p100−110)、この触媒は空気や湿気にも
比較的安定であり、しかもメタセシス反応基質中の官能
基による影響を受けにくいために、非共役ジエンの閉環
メタセシス反応、環状オレフィンのメタセシス開環重合
などに有効であるとしてメタセシス反応用触媒としての
用途が拡大している。ルテニウムカルベン錯体としては
種々のものが知られているが、その代表例としては、下
記の式;
【0004】
【化5】RuX2(PR5 32(=CHR6) (式中、R5はフェニル基、シクロヘキシル基などの1
価の炭化水素基、R6はフェニル基などの1価の炭化水
素基、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるものを挙
げることができる。
【0005】上記したルテニウムカルベン錯体の合成法
としては、(1)ジクロロトリス(トリフェニルホスフ
ィン)ルテニウム、フェニルジアゾメタンおよびトリシ
クロヘキシルホスフィンを反応させる方法(国際公開番
号WO 97/06185)、(2)(シクロオクタジエ
ン)(シクロオクタトリエン)ルテニウム、トリシクロ
ヘキシルホスフィンおよびベンザルクロリドを反応させ
る方法[Organometallics,16,p4001−4003(199
7)]、(3)ジクロロシクロオクタジエンルテニウ
ム、トリシクロヘキシルホスフィン、水素および水酸化
ナトリウムを用いてヒドリド錯体を製造した後、該ヒド
リド錯体をオレフィン、ベンザルクロリドで処理してル
テニウムカルベン錯体を製造する方法[Organometalli
cs,16,p4001−4003(1997),Chem.Commn.,19
97,1733]、(4)ヒドリドクロロジハイドロジェンビ
ス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムとプロ
パルギルクロリドまたはビニルクロリドを反応させる方
法[Organometallics,16,p3867−3869(1997)]
が報告されている。
【0006】しかしながら、上記(1)の方法は、不安
定で爆発性のあるジアゾ化合物を使用するため安全性の
点で問題があり、また上記(2)の方法は、主原料であ
る(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)ル
テニウムが製造しにくいため、目的とするルテニウムカ
ルベン錯体を低コストで生産性良く製造することが困難
である。そして、上記(3)の方法は、多段の反応工程
を経る必要があることから、工程が複雑で時間がかか
り、目的とするルテニウムカルベン錯体を短時間で生産
性良く製造することが困難である。また、上記(4)の
方法は中間体のルテニウム錯体が酸化され易いという問
題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、メタ
セシス触媒などとして有用なルテニウムカルベン錯体
を、安定な原料を用いて、簡単な工程で、短い時間で、
安全に且つ生産性良く製造する方法を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために鋭意研究を行なった結果、特定のジ−
ハロビス[(炭化水素)ハロルテニウム]、特定のホス
フィンおよび特定のジハロゲノ化合物を金属還元剤の存
在下に反応させると、目的とするルテニウムカルベン錯
体を、一段階の反応で、短時間に、安全に且つ簡単に、
高い収率で生産性良く製造できることを見いだして本発
明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、(i)下記の一般式
(I);
【0010】
【化6】[RuX2(arene)]2 (I) (式中、Xはハロゲン原子を示し、areneはベンゼ
ン環を有する炭化水素を示す。)で表されるルテニウム
化合物; (ii)下記の一般式(II);
【0011】
【化7】 PR123 (II) (式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数
1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基
または置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
で表されるホスフィン;および、 (iii)下記の一般式(III);
【0012】
【化8】 R4CHX2 (III) (式中、R4はエーテル結合および/またはエステル結
合を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、炭素
数3〜8のシクロアルキル基、或いは置換基を有してい
てもよいアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示
す。)で表されるジハロゲノ化合物;を、金属還元剤の
存在下に反応させて、 (iv)下記の一般式(IV);
【0013】
【化9】 RuX2(PR1232(=CHR4) (IV) (式中、R1、R2、R3、R4およびXは上記と同じであ
る。)で表されるルテニウムカルベン錯体を製造する方
法である。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明で用いる上記の一般式(I)で表されるル
テニウム化合物[以下「ルテニウム化合物(I)」とい
う]において、Xは上述のようにハロゲン原子であり、
具体例としては塩素、臭素、ヨウ素などを挙げることが
できる。また、ルテニウム化合物(I)におけるare
neは、ベンゼン環を有する炭化水素であり、ベンゼン
または置換基を有するベンゼンであることが好ましい。
areneが置換基を有するベンゼンである場合に、そ
の置換基は炭素数1〜4のアルキル基および/またはア
ルコキシ基であることが好ましく、areneは1個ま
たは2個以上の前記した置換基をベンゼン環に有してい
ることができる。areneの好ましい具体例として
は、ベンゼン、p−シメン、メトキシベンゼン、ヘキサ
メチルベンゼンなどを挙げることができる。
【0015】本発明で用いるルテニウム化合物(I)の
具体例としては、[RuCl2(ベンゼン)]2、[Ru
Cl2(p−シメン)]2、[RuCl2(ヘキサメチル
ベンゼン)]2、[RuCl2(メトキシベンゼ
ン)]2、[RuBr2(ベンゼン)]2、[RuBr
2(p−シメン)]2、[RuBr2(ヘキサメチルベン
ゼン)]2、[RuBr2(メトキシベンゼン)]2
[RuI2(ベンゼン)]2、[RuI2(p−シメ
ン)]2、[RuI2(ヘキサメチルベンゼン)]2
[RuI2(メトキシベンゼン)]2などを挙げることが
できる。前記したルテニウム化合物のうちでも、本発明
の方法では、areneがアルキル基で置換されたベン
ゼンであって且つXが塩素であるルテニウム化合物
(I)、具体的には[RuCl2(p−シメン)]2
[RuCl2(ヘキサメチルベンゼン)]2などが、入手
の容易性、製造の容易性、目的とするルテニウムカルベ
ン錯体の収率、酸化されにくいなどの点から特に好まし
く用いられる。
【0016】本発明で用いるルテニウム化合物(I)の
製法は何ら制限されないが、ルテニウム化合物(I)
は、例えば、Can.J.Chem.,Vol 50,306
3(1972)に記載されている方法により製造でき
る。具体的には、例えば、ジ−μ−クロロビス[(p−
シメン)クロロルテニウム]([RuCl2(p−シメ
ン)]2)の場合は、塩化ルテニウムとα−フェランド
レンをエタノール中で還流して反応させることによって
得ることができる。
【0017】本発明で用いる上記の一般式(II)で表さ
れるホスフィン[以下「ホスフィン(II)」という]に
おいて、そのR1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭
素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキ
ル基または置換基を有していてもよいアリール基であ
る。R1、R2および/またはR3が炭素数1〜8のアル
キル基である場合の具体例としては、メチル、エチル、
プロピル、イソプロピル、ブチル、ブタン−2−イル、
ペンチル、ペンタン−2−イル、ペンタン−3−イル、
ヘキシル、ヘキサン−2−イル、ヘプタン−2−イル、
オクタン−2−イルなどのアルキル基などを挙げること
ができる。また、R1、R2および/またはR3が炭素数
3〜8のシクロアルキル基である場合の具体例として
は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、
シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど
を挙げることができる。
【0018】また、R1、R2および/またはR3がアリ
ール基である場合は、置換基を持たないアリール基また
は置換基を有するアリール基のいずれであってもよい。
置換基を有するアリール基である場合に、その置換基と
してはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、アミノ
基、アルキルアミノ基、アリール基、アラルキル基など
を挙げることができ、これらの置換基の1個または2個
以上を有することができる。R1、R2および/またはR
3が置換基を持たないかまたは有するアリール基である
場合の具体例としては、フェニル、2−メチルフェニ
ル、4−メチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、
4−ビフェニル、4−メトキシフェニル、4−ジメチル
アミノフェニル、4−クロロフェニル、1−ナフチル、
2−ナフチル、4−ビフェニル、4−ベンジルフェニル
などを挙げることができる。
【0019】本発明で用いるホスフィン(II)の具体例
としては、トリイソプロピルホスフィン、トリ(ブタン
−2−イル)ホスフィン、トリ(ペンタン−2−イル)
ホスフィン、トリ(ペンタン−3−イル)ホスフィン、
トリ(ヘキサン−2−イル)ホスフィン、トリ(ヘプタ
ン−2−イル)ホスフィン、トリ(オクタン−2−イ
ル)ホスフィン、ジイソプロピルフェニルホスフィン、
ジ(ブタン−2−イル)フェニルホスフィン、ジ(ペン
タン−2−イル)フェニルホスフィン、ジ(ペンタン−
3−イル)フェニルホスフィン、ジ(ヘキサン−2−イ
ル)フェニルホスフィン、ジ(ヘプタン−2−イル)フ
ェニルホスフィン、ジ(オクタン−2−イル)フェニル
ホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、ブタ
ン−2−イルジフェニルホスフィン、ペンタン−2−イ
ルジフェニルホスフィン、ペンタン−3−イルジフェニ
ルホスフィン、ヘキサン−2−イルジフェニルホスフィ
ン、ヘプタン−2−イルジフェニルホスフィン、オクタ
ン−2−イルジフェニルホスフィン、トリシクロプロピ
ルホスフィン、トリシクロブチルホスフィン、トリシク
ロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィ
ン、トリシクロヘプチルホスフィン、トリシクロオクチ
ルホスフィン、ジシクロプロピルフェニルホスフィン、
ジシクロブチルフェニルホスフィン、ジシクロペンチル
フェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフ
ィン、ジシクロヘプチルフェニルホスフィン、ジシクロ
オクチルフェニルホスフィン、シクロプロピルジフェニ
ルホスフィン、シクロブチルジフェニルホスフィン、シ
クロペンチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジ
フェニルホスフィン、シクロヘプチルジフェニルホスフ
ィン、シクロオクチルジフェニルホスフィンなどを挙げ
ることができる。
【0020】本発明では、ホスフィン(II)として、前
記したホスフィンのうちでも、R1、R2およびR3が炭
素数3〜8のシクロアルキル基、特にシクロヘキシル
基、シクロペンチル基であるホスフィンまたはイソプロ
ピル基であるホスフィンが、最終的に得られるルテニウ
ムカルベン錯体の触媒活性が高い点から好ましく用いら
れる。ホスフィン(II)は、市販品を使用しても、また
は公知の方法により調製して使用してもよい。
【0021】本発明で使用する上記の一般式(III)で
表されるジハロゲノ化合物(以下「ジハロゲノ化合物
(III)」という]において、R4はエーテル結合および
/またはエステル結合を持たない炭素数1〜8のアルキ
ル基、エーテル結合および/またはエステル結合を有す
る炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロア
ルキル基、置換基を持たないアリール基または置換基を
有するアリール基である。
【0022】R4がエーテル結合および/またはエステ
ル結合を持たない炭素数1〜8のアルキル基である場合
の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプ
ロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オク
チルなどを挙げることができる。またR4がエーテル結
合および/またはエステル結合を有する炭素数1〜8の
アルキル基である場合の具体例としては、−CH2−O
−CH3、−CH2−O−C25、−CH2−O−C
37、−CH2−O−C49、−C24−O−CH3、−
24−O−C25、−C24−O−C37、−C24
−O−C49、−C36−O−CH3、−C36−O−
25、−C36−O−C49、−CH2COOCH3
−CH2−COOC25、−CH2COOC37、−CH
2COOC49、−C24COOCH3、−C24COO
25、−C24COOC37、−C24COOC49
など挙げることができる。
【0023】R4が炭素数3〜8のシクロアルキル基で
ある場合の具体例としては、シクロプロピル、シクロブ
チル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチ
ル、シクロオクチルなどを挙げることができる。
【0024】R4が置換基を有するアリール基である場
合の置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲ
ン、アミノ基、アルキルアミノ基、アリール基、アラル
キル基などを挙げることができ、これらの置換基の1個
または2個以上を有することができる。R4が置換基を
持たないかまたは置換基を有するアリール基である場合
の具体例としては、フェニル、2−メチルフェニル、4
−メチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、4−ビ
フェニル、4−メトキシフェニル、4−ジメチルアミノ
フェニル、4−クロロフェニル、1−ナフチル、2−ナ
フチル、4−ビフェニル、4−ベンジルフェニルなどを
挙げることができる。
【0025】また、ジハロゲノ化合物(III)におい
て、Xは上述のようにハロゲン原子であり、具体例とし
ては塩素、臭素、ヨウ素などを挙げることができる。
【0026】本発明で用いるジハロゲノ化合物(III)
の具体例としては、エチリデンクロリド、エチリデンブ
ロミド、エチリデンヨージドなどの1,1−ジハロゲノ
アルカン類、ベンザルクロリド、ベンザルブロミド、ベ
ンザルヨージドなどのジハロゲノアルキル芳香族化合
物、ジクロロ酢酸メチル、ジブロモ酢酸メチル、ジヨー
ド酢酸メチル、ジクロロ酢酸エチル、ジブロモ酢酸エチ
ル、ジヨード酢酸エチルなどのジハロゲノ脂肪酸エステ
ルを挙げることができる。そのうちでも、本発明では、
ジハロゲノ化合物(III)として、R4が置換基を有して
いてもよいアリール基、特にフェニル基、p−トリル
基、p−クロロフェニル基であるジハロゲノ化合物(例
えばベンザルクロリド、ベンザルブロミド、ベンザルヨ
ージドなど)が入手容易性、安定性の点から好ましく用
いられる。
【0027】本発明では、上記したルテニウム化合物
(I)、ホスフィン(II)およびジハロゲノ化合物(II
I)を、金属還元剤の存在下に反応させて、上記の一般
式(IV)で表されるルテニウムカルベン錯体[以下「ル
テニウムカルベン錯体(IV)」という]を製造する。前
記の金属還元剤の具体例としては、リチウム、ナトリウ
ム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウ
ム、スズ、亜鉛、鉄から選ばれる金属の1種または2種
以上或いは前記した金属の2種以上からなる合金を挙げ
ることができ、そのうちでも亜鉛、マグネシウム、アル
ミニウムおよび/または鉄が好ましく用いられる。金属
還元剤は粉末、顆粒、箔片、リボンなどの形態で用いる
のが表面積が大きくて活性が高い点から好ましい。ま
た、金属還元剤は、必要に応じて超音波処理などの処理
を施して表面を活性化しておいてもよい。
【0028】ルテニウムカルベン錯体(IV)の製造に当
たっては、ルテニウム化合物(I)1モルに対して、ホ
スフィン(II)を4モル以上およびジハロゲノ化合物
(III)を2モル以上の割合で用いることが、ルテニウ
ムカルベン錯体(IV)の収率の点から有利であり、ホス
フィン(II)を4〜6モルおよびジハロゲノ化合物(II
I)を3モル以上の割合で用いることがより好ましい。
ジハロゲノ化合物(III)を多量に用いる場合は、その
一部を溶媒として兼用してもよい。また、ルテニウム化
合物(I)1モルに対する金属還元剤の使用量は、2〜
100モルであることがルテニウムカルベン錯体(IV)
の収率の点から好ましく、5〜50モルであることがよ
り好ましく、10〜30モルであることがさらに好まし
い。
【0029】ルテニウムカルベン錯体(IV)の製造に当
たっては、反応容器を窒素などの不活性ガスで置換した
後、そこにルテニウム化合物(I)、ホスフィン(I
I)、ジハロゲノ化合物(III)および金属還元剤を導入
して反応を行うのが望ましい。均一な反応を行わせるた
めに、前記反応を有機溶媒中で撹拌下に行うのが望まし
い。その際の有機溶媒の具体例としては、塩化メチレ
ン、臭化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベ
ンゼンなどのハロゲン化有機溶媒、ベンゼン、トルエ
ン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、酢酸エチル、
酢酸ブチル、安息香酸メチルなどのエステル類、ジメチ
ルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、
テトラヒドロフランなどを挙げることができ、これらの
有機溶媒は単独で使用してもまたは2種以上を併用して
もよい。反応温度としては、0〜140℃の温度が好ま
しく採用され、室温〜80℃の温度がより好ましく採用
される。そして、上記したような条件下に通常30分〜
4時間程度の反応を行うことによって、目的とするルテ
ニウムカルベン錯体(IV)を、一段階の簡単な反応工程
で、安全に且つ高い収率で円滑に生成させることができ
る。反応系からのルテニウムカルベン錯体(IV)の回収
法は特に制限されないが、例えば、濾過、蒸発乾固、洗
浄、減圧乾燥などの工程を経て回収することができる。
【0030】上記した本発明の方法で得られるルテニウ
ムカルベン錯体(IV)は、メタセシス反応基質からメタ
セシス反応生成物を調製するためのメタセシス反応用触
媒などとして有効に使用することができる。何ら限定さ
れないが、本発明の方法で得られるルテニウムカルベン
錯体(IV)は、例えば、2種のアルケンのクロスメタセ
シス反応、ジエン系化合物等の閉環メタセシス反応、環
状鎖状ジエンなどの分子内開閉環反応、シクロペンテン
などのような環状不飽和化合物の開環メタセシス反応、
エンインメタセシス反応(2重結合含有化合物と3重結
合含有化合物との間のメタセシス反応)、カルボニル基
のアルケニル化とメタセシスを組み合わせた不飽和エス
テルからの環状エノールエーテルの合成反応における触
媒などとして用いることができる。
【0031】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明について具体
的に説明するが、本発明はそれにより何ら制限されな
い。なお、以下の実施例において、得られた化合物の物
性の測定には、次の機器を用いた。 ・1H−NMRスペクトル:ブルカー社製「DRX−5
00型装置」(内部標準物質;テトラメチルシラン) ・31P−NMRスペクトル:ブルカー社製「DRX−5
00型装置」(外部標準物質;85%リン酸)
【0032】《実施例1》[ジクロロビス(トリシクロ
ヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムの合成] (1) 100mlのフラスコ内を窒素ガスで置換した
後、窒素気流下に、ジ−μ−クロロビス[(p−シメ
ン)クロロルテニウム]1.0g(1.64mmo
l)、トリシクロヘキシルホスフィン1.83g(6.
52mmol)、塩化ベンザル0.42ml(3.27
mmol)、亜鉛粉末2.14g(32.7mmol)
およびトルエン60mlを仕込んで、80℃の温度で1
時間撹拌下に反応を行った。 (2) 上記(1)で得られた反応溶液を濾過して固形
分を除去し、回収した濾液からトルエンを留去し、それ
により得られた残渣にメタノール30mlを加えて濾過
し、濾紙上に残留した濾物をアセトン5mlおよびメタ
ノール5mlで洗浄した後、減圧乾燥して、0.83g
の固体状の反応生成物を得た(収率61.7%)。 (3) 上記(2)で得られた反応生成物の1H−NM
Rおよび31P−NMR測定を行ったところ、下記のとお
りであり、その測定結果から、この実施例1で得られた
反応生成物は、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホス
フィン)ベンジリデンルテニウム[RuCl2(PC
32(=CH−C65)(式中Cyはシクロヘキシル
基を示す)]であることが確認された。 (4)NMR測定結果:1 H−NMR(CD2Cl2)δppm:1.15−1.25(m),
1.38−1.46(m), 1.67−1.77(m), 2.57−2.63(m),
7.32(t,J=7.4Hz), 7.55(t,J=7.4Hz),8.45
(d,J=7.5Hz),20.03(s).31 P−NMR(CD2Cl2)δppm:38.63(s).
【0033】
【発明の効果】本発明で用いる原料成分はいずれも化学
的に安定であり、爆発の危険などがないので、本発明の
方法による場合は、メタセシス反応の触媒などとして有
用な上記の一般式(IV)で表されるルテニウムカルベン
錯体(IV)を安全に且つ円滑に製造することができる。
そして、本発明の方法による場合は、複雑な多段工程を
経ることなく、一段階の反応工程で、短い反応時間で、
しかも温和な加熱条件下に目的とするルテニウムカルベ
ン錯体を高収率で製造することができるので、ルテニウ
ムカルベン錯体の大量合成が可能であり、工業的に極め
て有利である。さらに、本発明で用いる原料成分は、い
ずれも、入手または合成が容易で比較的安価であるの
で、本発明の方法による場合は、目的とするルテニウム
カルベン錯体を低コストで製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 萩原 利光 神奈川県平塚市西八幡1丁目4番11号 高 砂香料工業株式会社総合研究所内 Fターム(参考) 4H050 AA02 WB11 WB16 WB17 WB21

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (i)下記の一般式(I); 【化1】 [RuX2(arene)]2 (I) (式中、Xはハロゲン原子を示し、areneはベンゼ
    ン環を有する炭化水素を示す。)で表されるルテニウム
    化合物; (ii)下記の一般式(II); 【化2】 PR123 (II) (式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数
    1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基
    または置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
    で表されるホスフィン;および、 (iii)下記の一般式(III); 【化3】 R4CHX2 (III) (式中、R4はエーテル結合および/またはエステル結
    合を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、炭素
    数3〜8のシクロアルキル基、或いは置換基を有してい
    てもよいアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示
    す。)で表されるジハロゲノ化合物;を、金属還元剤の
    存在下に反応させて、 (iv)下記の一般式(IV); 【化4】 RuX2(PR1232(=CHR4) (IV) (式中、R1、R2、R3、R4およびXは上記と同じであ
    る。)で表されるルテニウムカルベン錯体を製造する方
    法。
  2. 【請求項2】 上記の一般式(I)で表されるルテニウ
    ム化合物1モルに対して、一般式(II)で表されるホス
    フィンを4モル以上および一般式(III)で表されるジ
    ハロゲノ化合物を2モル以上の割合で使用する請求項1
    に記載の方法。
  3. 【請求項3】 上記の一般式(I)で表されるルテニウ
    ム化合物1モルに対して、金属還元剤を2モル以上の割
    合で使用する請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 上記の一般式(I)で表されるルテニウ
    ム化合物として、該一般式(I)におけるareneが
    アルキル基置換ベンゼン環を有する炭化水素であるルテ
    ニウム化合物を使用する請求項1〜3のいずれか1項に
    記載の方法。
  5. 【請求項5】 上記の一般式(II)で表されるホスフィ
    ンとしてR1、R2およびR3が炭素数3〜8のシクロア
    ルキル基であるホスフィンを使用し、且つ上記の一般式
    (III)で表されるジハロゲノ化合物におけるR4が置換
    基を有していてもよいアリール基であるジハロゲノ化合
    物を使用する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方
    法。
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