JP2000063284A - 炎症性腸疾患再燃防止剤 - Google Patents

炎症性腸疾患再燃防止剤

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JP2000063284A
JP2000063284A JP10235196A JP23519698A JP2000063284A JP 2000063284 A JP2000063284 A JP 2000063284A JP 10235196 A JP10235196 A JP 10235196A JP 23519698 A JP23519698 A JP 23519698A JP 2000063284 A JP2000063284 A JP 2000063284A
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inflammatory bowel
bowel disease
enzymes
preventive agent
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Fumiko Sakata
文子 坂田
Hanayo Shinoda
華代 信田
Minoru Tonuma
稔 渡沼
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Morinaga Milk Industry Co Ltd
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Terumo Corp
Morinaga Milk Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】炎症性腸疾患の再燃の防止が行える炎症性腸疾
患再燃防止剤、および、この防止剤を含有する栄養組成
物と栄養食品の提供。 【解決手段】乳清蛋白加水分解物からなる炎症性腸疾患
再燃防止剤により、上記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炎症の再燃を防止
する体質(腸管)を作る炎症性腸疾患予防剤に関する。
【0002】
【従来の技術】クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性
腸疾患はおもに10〜20代の若者の発病が多く、腸管
に広く炎症や潰瘍ができ、それに伴い腹痛や下痢が生じ
る。中でもクローン病は、1932年にCrohn らが14例の区
域性小腸炎を新しいclinicalentityとして報告して以来
すでに約65年が経過したが、いまだ原因不明で再燃と緩
解を繰り返す難治性の疾患である。現在のところ、本質
的な治療法は知られていない。クローン病は口腔より肛
門までのすべての消化器官に発症する区域性の全層性非
特異的炎症性疾患であり、組織学的に非乾酪性肉芽腫を
特徴とする。原因として感染、遺伝環境因子等が考えら
れるが、いまだ確定はしていない。生検組織中にも非乾
酪性肉芽腫が観察されることから、免疫異常、とくに単
球・マクロファージ系細胞機能の異常が病因に関与して
いる可能性が示唆され多くの研究が進められている。こ
の疾患の患者は、消化管とくに小腸における消化吸収障
害による栄養障害や成長障害が報告されている。急性期
病変においては、腸管の安静を保ちつつ、栄養状態を改
善する目的で完全静脈栄養や成分経腸栄養法を施行する
ことにより緩解導入効果を持つことが明らかにされてい
る。しかしながら、長期の静脈栄養法では、腸管腔に栄
養素が存在しないために腸粘膜の廃用性萎縮が惹起され
血液中へのエンドトキシンの移行が起こることから、静
脈栄養法には限界があるとも言われている。消化態栄養
剤で腸管の安静を保ち退院し、消化態栄養剤や栄養管理
により日常生活を送れるようになるが、クローン病は早
期に再発し、しかも再発、緩解を繰り返す疾患として知
られている。従って、長期間病院内で過ごすことを余儀
なくされ、通常の学業あるいは勤労形態を続けるのは不
可能であり、極めて困難を伴っている。このような炎症
性腸疾患の改善を行うにあたり、治療を目的とした処置
と予防を目的とした処置とがある。本疾患の治療は腸管
に発生した炎症を内科的あるいは外科的な処置により解
消することにより行われるが、上述したように繰り返し
再発する経過をたどる本疾患においてはこれらにより根
治するとは考えられていない。従って、治療とともに再
発の防止、すなわち、予防が重要な意味を持っている疾
患である。一方、本疾患に用いる治療薬としてはステロ
イドや5−ASA誘導体が知られており、上述の消化態
栄養剤とともに腸管の安静を保つために用いられている
が、このような薬剤の場合、栄養剤に加えて別形態での
投与が必要になるため、患者のQOLを低くすることに
つながるし、また、充分な再発予防効果は得られていな
い。さらに、長期の服用により副作用が発現することも
少なくない。
【0003】栄養組成物による治療・予防を目的とした
技術としては、特定組成のアミノ酸、炭水化物、脂肪、
ビタミン、および、ミネラルを含有する炎症性腸疾患用
栄養組成物が特開平8−73351号公報に、特定組成
のアミノ酸に更に好ましくは糖質、脂質、ビタミン、ミ
ネラル等を含有する経口経腸栄養組成物が特開平8−1
75987号公報に、脂質、糖質、ビタミン、ミネラ
ル、アミノ酸やペプチド等の窒素源を含有する液状栄養
剤が特開平6−141818号、特開平6−14181
9号各公報に、それぞれ開示されているが、何れも腸管
の刺激の少ない蛋白源を含む蛋白・脂肪・炭水化物・ミ
ネラル混合物であり、何れもそれらを安定に混合する製
剤化技術を主とした組成物であり、炎症性腸疾患の予防
・治療効果は充分とは言えなかった。また、特開平8−
188536号公報には、腸溶性の食品により、かかる
状態を軽減したりまたは防止する方法として、ビタミン
源やミネラル源と共に、加水分解ホエー等の蛋白質源、
炭水化物源、および、脂肪源を含む組成比を限定した混
合物が開示されており、混合物が腸管刺激を低減するこ
とについては開示されている。しかし、特定の蛋白質源
が炎症に耐え得る体質(腸管)を作ることは開示されて
いない。以上の従来技術は、質の異なった2種類以上の
栄養素、例えば蛋白質と脂肪栄養素の混合物の効果につ
いて論じられており、特定の栄養素それ自体が治療・予
防について効果的であるとの開示はされていない。ま
た、開示されている総合栄養剤の効果を発揮するために
は1日1500ml以上の栄養剤を経口的あるいは経管
的に服用することが必要であり、従来のアミノ酸製剤お
よびペプチド製剤は味が粗悪であることから患者のQO
Lはすこぶる悪い物とならざるを得なかった。さらに、
アミノ酸製剤により緩解導入しても、味が単一、粗悪で
あることから継続摂取は困難であり、通常の食事の摂取
により再発するケースも少なくない。そのために、再発
防止効果を持ち摂取の容易な予防剤の開発が求められて
いた。特表平9−502971号公報には特定の合成し
たペプチドが炎症性腸疾患等による炎症の治療に役立つ
ことが開示されているが、この合成ペプチドが炎症を予
防する効果は開示されていない。以上の従来技術には、
治療を目的としたものが多いが、予防効果について言及
しているものもある。しかし、これらはたとえ予防効果
を謳っていても事実上緩解期における炎症性腸疾患再発
の予防を行えるものではなかった。本疾患の場合、治療
剤と予防剤とは生体内のシステムに対し作用するポイン
トがそれぞれ違っており、治療効果のあるものが、同時
に予防効果を持つとは考えられていない。従って、治療
と予防とは異なる評価系に基づいてそれぞれの手段が考
えられなければならないとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の従来
技術の問題点を解決すべくなされたものであり、その目
的は、炎症性腸疾患の再燃の防止が行える乳清蛋白加水
分解物からなる炎症性腸疾患再燃防止剤、および、この
防止剤を含有する栄養組成物と栄養食品を提供すること
である。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、以
下の各態様の発明を提供する。 (1) 乳清蛋白加水分解物からなる炎症性腸疾患再燃
防止剤。
【0006】(2) 前記乳清蛋白加水分解物が、乳清
蛋白質水溶液に、バシラス・サチリス(Bacillu
s subtilis)由来のエンドペプチダーゼとト
リプシンの2種類の酵素、またはバシラス・サチリス由
来のエンドペプチダーゼ、トリプシン及びキモトリプシ
ンの3種類の酵素を添加して加水分解した後、酵素を失
活するか又は除去することにより得られるオリゴペプチ
ド混合物である請求項1に記載の炎症性腸疾患再燃防止
剤。
【0007】(3) 前記乳清蛋白加水分解物が、少な
くとも70%(重量)の純度の乳清蛋白質を10%(重
量)以下の濃度で水に溶解し、得られた水溶液のpHを
7.1〜10に調整したのち、該水溶液にバシラス・サ
チリス(Bacillus subtilis)由来の
エンドペプチダーゼとトリプシンの2種類の酵素、また
はバシラス・サチリス由来のエンドペプチダーゼ、トリ
プシン及びキモトリプシンの3種類の酵素を添加して、
30〜55℃の温度で加水分解し、のち加熱により酵素
を失活するか又はウルトラフィルトレーションにより酵
素を除去することにより得られるオリゴペプチド混合物
であるのが好ましい。
【0008】(4) 前記乳清蛋白加水分解物が低抗原
性であるのが好ましい。
【0009】(5) 前記乳清蛋白加水分解物のアミノ
酸組成が蛋白質1g当たり下記組成であるのが好まし
い。 L−アラニン 52〜 68(mg) L−アルギニン 23〜 32 L−アスパラギン酸(L−アスパラギンを含む) 102〜131 L−システイン 17〜 35 L−グルタミン酸(L−グルタミンを含む) 185〜201 L−グリシン 18〜 22 L−ヒスチジン 17〜 23 L−イソロイシン 59〜 71 L−ロイシン 100〜158 L−リジン 94〜128 L−メチオニン 15〜 25 L−フェニルアラニン 29〜 48 L−プロリン 38〜 64 L−セリン 45〜 58 L−スレオニン 57〜 83 L−トリプトファン 16〜 23 L−チロシン 26〜 47 L−バリン 54〜 66
【0010】(6) クローン病または潰瘍性大腸炎に
起因する炎症性腸疾患の再燃を防止する上記(1)〜
(5)のいずれかに記載の炎症性腸疾患再燃防止剤。 (7) クローン病または潰瘍性大腸炎に罹患した後、
再発予防のために投与される上記(1)〜(5)のいず
れかに記載の炎症性腸疾患再燃防止剤。 (8) クローン病または潰瘍性大腸炎の緩解期に用い
られる上記(1)〜(5)のいずれかに記載の炎症性腸
疾患再燃防止剤。 (9) クローン病または潰瘍性大腸炎の再発後に用い
られる上記(1)〜(5)のいずれかに記載の炎症性腸
疾患再燃防止剤。
【0011】(10) 上記炎症性腸疾患再燃防止剤を
含む栄養組成物。 (11) 上記炎症性腸疾患再燃防止剤を含む栄養食
品。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明は、乳清蛋白加水分解物と
いう特定の蛋白源が、炎症性腸疾患再燃防止効果を有す
ることを見出し、また、乳清蛋白加水分解物単独で、他
の栄養素と組み合わせずとも、かかる効果を発揮するこ
とを見出し完成されたものである。
【0013】本発明の炎症性腸疾患再燃防止剤(以下、
本発明の防止剤と記す)は、乳清蛋白質を加水分解して
得られる乳清蛋白加水分解物からなるものであれば特に
限定はされないが、乳清蛋白質水溶液に、バシラス・サ
チリス(Bacillussubtilis)由来のエ
ンドペプチダーゼとトリプシンの2種類の酵素、または
バシラス・サチリス由来のエンドペプチダーゼ、トリプ
シン及びキモトリプシンの3種類の酵素を添加して加水
分解した後、酵素を失活するか又は除去することにより
得られるオリゴペプチド混合物であるのが好ましい。さ
らに、特許第2648243号公報に詳述される下記の
理化学的性質を有するオリゴペプチド混合物であるのが
より好ましい。 (a) その加水分解物の分子量分布が10,000以
下であること、(b) 抗乳清蛋白質血清を用いたエラ
イザ(ELISA :Enzyme linked immuno-sorbent assay)
抑制試験法により測定した抗原残存活性が10-4以下で
あること、及び(c) 加水分解物の全アミノ酸含量に
対する遊離アミノ酸含量が5%(重量)以下であるこ
と。このようなより好ましいオリゴペプチド混合物は、
少なくとも70%(重量)の純度の乳清蛋白質を10%
(重量)以下の濃度で水に溶解し、ついでpHを7.1
〜10に調整することにより得られる水溶液であり、該
水溶液にバシラス・サチリス(Bacillus su
btilis)由来のエンドペプチダーゼとトリプシン
の2種類の酵素、またはバシラス・サチリス由来のエン
ドペプチダーゼ、トリプシン及びキモトリプシンの3種
類の酵素を添加して行われる加水分解反応が、30〜5
5℃の温度下で行われ、これらの酵素を失活するか又は
ウルトラフィルトレーションによって除去することによ
り得られる。
【0014】更に、上記方法によって得られたオリゴペ
プチド混合物溶液のpHを4.5〜5.5に調整し、加
熱し、沈澱物を除去することによって、残存する抗原性
物質を実質的に除去することもできる。
【0015】このようなオリゴペプチド混合物を製造す
るための好ましい出発原料として用いられる乳清蛋白質
としては、例えば、ホエーから常法(例えば、イオン交
換法等)により精製して得られるものが挙げられる。よ
り好ましい出発原料として用いられる純度が少なくとも
70%の乳清蛋白質としては、同様に、ホエーから常法
(例えば、イオン交換法等)により精製して得られるも
ので、純度70%(重量)以上としたものが挙げられる
が、市販品を利用することもでき、例えば、アイソラッ
ク(純度90%(重量)、ミライ社製)等が挙げられ
る。乳清蛋白質は、10%以下の濃度で水に溶解され、
得られた水溶液のpHを8〜10に調整する。この水溶
液を殺菌または滅菌することもできるが、乳清蛋白質は
加熱によってゲル化する傾向があるので注意を要する。
【0016】乳清蛋白質を加水分解するために使用され
る酵素は、特に制限はなく、上記の理化学的性質を有す
る加水分解物が得られれば良いが、特にサチロペプチダ
ーゼ(Subtilopeptiーdase)を主体とするバシラス・サ
チリス(Bacillus subtilis)由来のエンドペプチダー
ゼ(以下、酵素Sと記す)及びトリプシンの混合物、ま
たは酵素S、トリプシン及びキモトリプシンの混合物を
用いるのが望ましい(尚、市販のトリプシンにはキモト
リプシンを含んでいる場合があり、この場合には、事実
上3種の酵素を使用したことになる)。これらの酵素
は、何れも市販品を使用することができる。酵素Sは常
法による精製の程度によっては他の酵素を含み得るが、
粗製の酵素または結晶した純粋の酵素の何れでも使用で
きる。
【0017】尚、以下の記載において、使用する酵素の
活性の単位は、トリプシン及びキモトリプシンについて
はアメリカ薬局方に基づいており、「USP単位」と表
示する[ザ・ユナイテッド・ステーツ・ファーマコピア
・ザ・ナショナル・フォーミュラリー(The United Sta
tes Pharmacopeia The National Formulary )、第30
7ページ及び第1431ページ、ユナイテッド・ステー
ツ・ファーマコピアル・コンベンション・インコーポレ
ーテッド(United States Pharmacopeial Convention,
Inc.)1990年による]。
【0018】また、酵素Sの活性単位は、次の定義によ
る。即ち、ミルクカゼイン[ハマーシュタイン(Hammer
stein )。メルク社製]に酵素Sを作用させ、30℃で
1分間に1μgのチロシンに相当するアリルアミノ酸の
フォリン試薬での呈色反応を示す酵素活性度を1単位と
する。この単位をUSP単位と区別するため、「PUN
単位」と表示する。
【0019】乳清蛋白加水分解物を得るために用いられ
る酵素の使用量は、乳清蛋白質1g当たり、酵素Sは1
00〜5,000PUN単位、望ましくは500〜2,
000PUN単位、トリプシンは600〜30,000
USP単位、望ましくは3,000〜20,000US
P単位、キモトリプシンは0〜3,000USP単位、
望ましくは0〜2,000USP単位が適当である。
【0020】前述した濃度の乳清蛋白質水溶液に、上記
酵素を上記使用量の範囲で添加し、それらの酵素の至適
作用温度である30〜55℃の温度で3〜24時間、望
ましくは6〜12時間加水分解を行う。尚、2種又は3
種の酵素は、同時に添加しても、また酵素Sで加水分解
後、残余の酵素を添加しても良い。
【0021】次いで加熱処理により酵素を失活させるか
又はウルトラフィルトレーション処理により酵素を除去
する。加熱処理は、70℃10分間から140℃2秒間
までの範囲で適宜行われる。ウルトラフィルトレーショ
ン処理は、酵素が透過せず、ペプチドが透過でき、回収
が容易な分画分子量15,000から2,000の範囲
で行われる。
【0022】このようにして得られた乳清蛋白加水分解
物の抗原残存活性は、川瀬、御子神ら(東邦医学雑誌、
35:509−516、1989)の方法に準じて測定
することができる。すなわち、未分解乳清蛋白質10m
g(乾燥重量)を0.5mlのリン酸緩衝液に溶解し、
0.5mlのフロイント・コンプリート・アジュバント
を添加して乳化を行い、家兎の皮下に7日間間隔で4回
注射し、未分解蛋白質に対する抗体が十分上昇したこと
をELISA法にて確認後、家兎から採血を行い血清を
分離し、この未分解蛋白質に対する抗体を含んだ血清を
用いて、乳清オリゴペプチドの抗原性をELISA抑制
試験により測定する。このようにして得られた乳清蛋白
加水分解物の抗原残存活性は、10-4以下である。尚、
ELISA法による抗体残存活性の測定方法は、特開平
2−182155号公報に詳細に記載される。
【0023】以上のようにして得られるより好ましい乳
清蛋白加水分解物は、分子量分布が10,000以下、
好ましくは2,500以下であり、抗乳清蛋白質血清を
用いたELISA抑制試験法により測定し抗原残存活性
が10-4以下であり、全アミノ酸含量に対する遊離アミ
ノ酸含量が5%以下である。蛋白そのものと比べて抗原
性が低く、投与後の血清中のPCA抗体価の上昇がなく
アナフィラキシーショックによる死亡の危険性もない。
蛋白質1g当たりの全アミノ酸組成は、乳清蛋白質のア
ミノ酸スコアを損なうことなくアミノ酸バランスのよ
い、以下に示す範囲内にある。
【0024】 L−アラニン 52〜 68(mg) L−アルギニン 23〜 32 L−アスパラギン酸(L−アスパラギンを含む) 102〜131 L−システイン 17〜 35 L−グルタミン酸(L−グルタミンを含む) 185〜201 L−グリシン 18〜 22 L−ヒスチジン 17〜 23 L−イソロイシン 59〜 71 L−ロイシン 100〜158 L−リジン 94〜128 L−メチオニン 15〜 25 L−フェニルアラニン 29〜 48 L−プロリン 38〜 64 L−セリン 45〜 58 L−スレオニン 57〜 83 L−トリプトファン 16〜 23 L−チロシン 26〜 47 L−バリン 54〜 66 以上のようにして得られた乳清蛋白加水分解物含有液は
そのまま本発明の防止剤として利用しても良く、あるい
は常法により濃縮し、又は乾燥して、液状、ゲル状、又
は粉末状として利用しても良い。
【0025】本発明の乳清蛋白加水分解物からなる防止
剤は、クローン病や潰瘍性大腸炎などに起因する炎症性
腸疾患の炎症再燃防止効果を有する。この乳清蛋白加水
分解物の炎症再燃防止効果は、炎症誘発物質の投与前か
ら本防止剤を摂取することにより確認される。これは、
オリゴペプチドによる、炎症のイニシエータ物質の阻害
作用によるものであると考えられる。また、本発明にお
ける乳清蛋白加水分解物は低抗原性であることも特徴と
する。抗乳清蛋白質を用いたELISA抑制試験法によ
る測定においては、抗原残存活性は10-4以下である。
クローン病の原因の一つに免疫反応によるものがあると
考えられている。この説によると、クローン病患者は体
内の免疫反応が亢進しており通常なら異物としない食事
中の蛋白質を異物と認識して、炎症性物質が分泌され腸
管内に炎症を起こすと考えられている。何らかの外来抗
原の侵入と単球やマクロファージをはじめとする生体側
の反応異常がクローン病の原因の一つとして示唆されて
いることからも、本発明における乳清蛋白加水分解物の
低抗原性は、炎症再発防止に有用であると考えられる。
【0026】本発明における乳清蛋白加水分解物は単独
の摂取により再燃防止効果がある。投与形態は、前述の
ように、液状、ゲル状、又は粉末状であってもよい。投
与方法としては、経口摂取、経消化管投与が可能であ
る。粉末状であれば、水溶液としてから摂取することも
可能である。このような水溶液状等の液状であれば、容
器ごと加熱滅菌可能なクローズド化された可塑性素材容
器に充填し点滴により投与することも可能である。ゲル
状あるいは粉末状であればカプセルに充填し経口投与す
ることも可能である。投与量としては、本発明の防止剤
を1日当たり乾燥重量で0.5〜2g/kg程度、水溶
液等として、3日以上の期間に渡って経口または経消化
管にて投与するのが好ましい。本発明の防止剤は、例え
ば、動物実験によるインドメタシン投与モデルでは、本
発明の防止剤を、乳清蛋白加水分解物3.84g/ml
水溶液の形態で、270kcal/kg/dayを7日
間経腸投与した後、経肛門的にインドメタシンを24m
g/kg/回、あるいは、皮下にインドメタシンを7.
5mg/kg/回、1回/日、連続2日投与した場合で
は、本発明の防止剤を投与しなかった個体に比較して、
小腸、盲腸、大腸のいずれにおいてもおよそ70〜10
0%の潰瘍発現の減少が認められるという炎症の再燃防
止効果を示す。このようなインドメタシン投与モデルよ
り、クローン病あるいは潰瘍性大腸炎を罹病した者で
は、本発明の防止剤を炎症性腸疾患より回復後から、定
常的に摂取することにより、クローン病あるいは潰瘍性
大腸炎に起因する炎症性腸疾患の再燃が効果的に防止で
きることがわかる。また、本発明に用いる乳清蛋白加水
分解物は、毒性がなく長期間連用しても副作用のおそれ
がない。
【0027】本発明の防止剤は、他の栄養素を配合した
栄養組成物として投与することもできる。このような本
発明の栄養組成物は、従来の炎症性腸疾患用アミノ酸製
剤あるいはペプチド製剤に比べ、他の成分の配合に制約
が少なく、調味上有利であり、容易に摂取できる味とな
っている。そのため、患者のコンプライアンスの改善に
つながり、ひいては再燃防止効果を上げることができ
る。また、経静脈輸液剤等高価格の栄養剤に頼る必要が
低減できるなど、医療経済性の向上へつながることも期
待される。本発明の栄養組成物は、全エネルギーのおよ
そ1〜50%からなる乳清蛋白加水分解物と全エネルギ
ーのおよそ40〜90%からなる炭水化物と全エネルギ
ーのおよそ0〜30%からなる脂肪で構成されるのが好
ましい。これらを水に溶解、懸濁後、可塑性素材容器
(商品名「テルパック」テルモ(株)製)に充填し、密
封後、常法により加熱滅菌して液状栄養組成物とするこ
とができる。この場合、以下の組成をもつものが好まし
い。 乳清蛋白加水分解物(本発明の防止剤) 0.5〜20重量% 炭水化物 70〜95重量% 脂肪 0.1〜10重量% ミネラル 0.1〜1.2重量% ビタミン 0.01〜0.2重量% また、粉状や固形状とした場合には、溶解・懸濁上の制
限がなくなり、乳清蛋白加水分解物として0.5〜30
重量%、炭水化物として50〜95重量%、脂肪0.1
〜20重量%、ミネラル・ビタミンは同上とすることが
好ましい。本発明の栄養組成物の投与量は、1日、体重
1kg当たり、乾燥重量で1〜5g程度を、3日以上の
期間に渡って投与するのが好ましい。このように投与す
ることで、本発明の防止剤単独で投与した場合に得られ
る炎症性腸疾患の再燃防止効果と同様の効果を得ること
が出来る。なお、投与方法は、乳清加水分解物と同様の
方法でよく、この場合、1日に必要なカロリーの約半分
をこの栄養組成物で賄うことができ、残りのカロリーを
他の食品で摂取することができる。
【0028】本発明の防止剤は、他の食品素材と配合し
て栄養食品として摂取することもできる。例えば、ゴマ
豆腐、プリン、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー、
ジュース等の食品の素材として用いることにより種々の
形態の食品として供することもできる。本発明の栄養食
品は、含有される本発明の防止剤として、大人1日当た
り30〜50g程度、日常の食事に付加して摂取するこ
とにより、炎症の再燃を防止する体質(腸管)を作るこ
とができる。
【0029】本発明の防止剤は、上述の構成をとること
により、クローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患に
起因する炎症性腸疾患の再燃防止効果に優れる。また、
本発明の防止剤は本質的にオリゴペプチド混合物である
ため、腸管吸収性に優れ、消化吸収能の未熟な年少者
や、消化吸収能が低下している炎症性腸疾患罹患後の者
にも容易に吸収摂取することができ、再燃防止効果が容
易に発現される。上述の特定の製造方法により得られる
本発明の防止剤では、特に乳清蛋白質のアミノ酸スコア
を損なうこと無くアミノ酸バランスがよい。また、本発
明の防止剤は、実質的に抗原残存活性がないので、免疫
反応を亢進せず、炎症再発防止に優れる。本発明の栄養
組成物、栄養食品は、上述の本発明の防止剤同様の効果
を発揮しつつ、容易に摂取できる味であるので、継続し
て摂取しても患者のQOLが悪くならず、ひいては炎症
再燃防止効果をあげることができる。さらに、経静脈輸
液剤等の高価格な栄養剤に頼る必要が低減でき、医療経
済性が向上できる。
【0030】
【実施例】以下に、実施例を用いて本発明をさらに具体
的に説明するが、本発明はこれにより限定されるもので
はない。
【0031】(実施例1)純度90重量%の乳清蛋白質
分離物(商品名アイソラック:ミライ社製)1kgを脱
イオン水9kgに溶解し、ph10に調整し、この水溶
液にビオプラーゼ(長瀬生化学工業社製)100万US
P単位を添加し、40℃で1時間保持して加水分解し、
次いでph8に調整し、トリプシン(ノボノルディスク
社製)600万USP単位およびキモトリプシン(ノボ
ノルディスク社製)30万USP単位を添加し、40℃
で6時間加水分解し、80℃で10分間加熱して酵素を
失活させ、冷却し、生成した沈殿を遠心分離して除去
し、常法により乾燥して、乳清蛋白加水分解物であるオ
リゴペプチド混合物0.68kgを得た。このようにし
て得られた窒素源としての乳清蛋白加水分解物を下記記
載の他の原材料と共に、下記に記載の配合で溶解し、撹
拌機にて懸濁し、この溶液を400mlずつ熱可塑性合
成樹脂製容器(商品名「テルパック」テルモ(株)製)
に充填し、密封後、121℃、10分で加熱滅菌して、
経口摂取あるいは経管投与が可能な経腸組成物を製造し
た。
【0032】 組成物 100 ml中(単位g ) 乳清蛋白加水分解物 4.7 デキストリン 17.0 大豆油 1.75 グルコン酸カルシウムを含むミネラル類 0.581 脂溶性および水溶性ビタミン類 0.06 グリセリン 0.20 酢酸モノグリセリド 0.24 ヘキサグリセリンモノミリステート 0.16 ポリエキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート 0.20 精製水 適量
【0033】(比較例1)下記に記載の組成の市販アミ
ノ酸栄養剤を用いた。市販アミノ酸製剤は1袋80g を30
0ml となるように微温湯に溶かし(1kcal/ml)調製し
た。この栄養剤は窒素源がアミノ酸であることを特徴と
する。 組成物 100g中 L−イソロイシン 803mg L−ロイシン 1124mg 塩酸リジン 1110mg L−メチオニン 810mg L−フェニルアラニン 1089mg L−トレオニン 654mg L−トリプトファン 189mg L−バリン 876mg L−ヒスチジン塩酸塩 626mg L−アルギニン塩酸塩 1406mg L−アラニン 1124mg L−アスパラギン酸マグネシウム・カリウム 1295mg L−アスパラギン酸ナトリウム 1084mg L−グルタミン 2415mg アミノ酢酸 631mg L−プロリン 788mg L−セリン 1449mg L−チロシン 138mg デキストリン 79.37g クエン酸ナトリウム 770mg 塩化カリウム 188mg グリセロリン酸カルシウム 1031mg グルコン酸鉄 19.4mg 硫酸亜鉛 9.85mg 硫酸マンガン 1.63mg 硫酸銅 1.03mg ヨウ化カリウム 24.5μg 塩酸チアミン 242μg リン酸リボフラビンナトリウム 320μg 塩酸ピリドキシン 334μg シアノコバラミン 0.9μg パントテン酸カルシウム 1.49mg ニコチン酸アミド 2.75mg 葉酸 55μg ビオチン 49μg 重酒石酸コリン 22.41mg アスコルビン酸 9.75mg 酢酸レチノール顆粒 16.2mg 酢酸トコフェロール顆粒 20.63mg エルゴカルシフェロール 1.6μg フィトナジオン 11μg 大豆油 636mg
【0034】(比較例2)下記組成の市販蛋白質栄養剤
を用いた。この栄養剤はカゼインを蛋白質源として含
む。この栄養剤は窒素源が蛋白質であることを特徴とす
る。 組成物 250ml中 カゼインナトリウム 5.9g カゼインナトリウムカルシウム 2.7g 分離大豆蛋白質 1.3g トウモロコシ油 8.3g 大豆リン脂質 0.4g デキストリン 24.5g 精製白糖 9.8g パルミチン酸レチノール 344μg コレカルシフェロール 1.25μg 酢酸トコフェロール 8.23mg フィトナジオン 17.5μg アスコルビン酸 38mg 塩酸チアミン 0.38mg リボフラビン 0.43mg 塩酸ピリドキシン 0.50mg シアノコバラミン 1.5μg 塩化コリン 0.15μg 葉酸 50μg ニコチン酸アミド 5mg パントテン酸カルシウム 1.36mg ビオチン 38μg 炭酸水素ナトリウム 76.5μg 塩化マグネシウム 0.41g クエン酸カリウム 0.46g 第三リン酸カルシウム 0.30g 塩化カリウム 0.30g クエン酸ナトリウム 0.39g 硫酸亜鉛 16.49mg 硫酸鉄 11.20mg 塩化マンガン 1.80mg 硫酸銅 0.98mg 水酸化カリウム 24mg クエン酸 25mg
【0035】(試験例1)実施例1、比較例1および比
較例2で調製した経腸組成物を用いて、動物実験を行っ
た。6週齢、体重180 〜200gのSD系雄性ラット(1群5
匹)を一夜絶食後に胃内にカテーテルを留置した。カテ
ーテルより各経腸組成物を無拘束下に270kcal/
kg/dayで6日間持続投与した。インドメタシン24
mg/kg/回を経肛門的あるいは7.5mg /kg/回を皮下に
1回/日、連続2日投与した。インドメタシン投与後も
組成物の投与は続行した。2回目の投与から48時間後
にエーテル麻酔下で剖検した。胃幽門部から肛門までの
全消化管を摘出して、小腸、盲腸、大腸の各部位につい
て肉眼的に潰瘍数の計測を行った。図1〜4に各部位の
潰瘍数を示した。インドメタシン経肛門的投与あるいは
皮下投与いずれにおいても実施例1の経腸組成物を投与
した群は比較例1あるいは2の経腸組成物を投与した群
と比較して潰瘍数は少なかった。従って、実施例1の経
腸組成物は潰瘍の発生を防止していると考えられる。ま
た、カゼイン蛋白には潰瘍発生に対する予防効果はない
と考えられる。
【0036】(試験例2)実施例1、比較例2で調製し
た経腸組成物を用いて、動物実験を行った。カゼイン未
感作である7週齢、体重360 〜480gのHartley 系雌性モ
ルモット(1群5例)を用いて全身性アナフィラキシー
試験を行った。比較例2の経腸組成物100ml/kgを経口投
与して感作し、100mg/kgのカゼインナトリウムで惹起し
たところ3/5例がアナフィラキシーショックにより死
亡した。また、血清中のPCA抗体価の上昇が認められ
た。これに対して、同容量の感作抗原量で実施例1の経
腸組成物を経口投与により感作し、同容量の惹起抗原量
で惹起したところアナフィラキシー症状の発現は認めら
れなかった。また、血清中のPCA抗体価の上昇も認め
られなかった。
【0037】(実施例2)実施例1で得られた乳清蛋白
加水分解物を用いて、下記の配合で加熱溶解後、冷却し
てゴマ豆腐に加工した。男女10名のパネルにより官能
的に試験し、摂取しやすさを段階評価した結果、従来処
方に比べ人が容易に摂取できる栄養食品であることが分
かった。 組成物 配合量 乳清蛋白質加水分解物 5g 市販練りゴマ 15g 片栗粉 10g 砂糖 1.5g 塩 0.5g 水 80g
【0038】(実施例3)下記の配合表に従い、窒素源
としての実施例1で得られた乳清蛋白加水分解物をその
他の原材料とともに混合して目的の15%(N×6.38)蛋
白質を含む栄養組成物を製造した。 組成物 配合量 乳清蛋白加水分解物 181g デキストリン 449g シュークロース 225g ミネラル混合 35g ビタミン混合 10g セルロース 50g 大豆油 50g
【0039】(比較例3)下記の配合表に従い、窒素源
としての乳清蛋白質をその他の原材料とともに混合して
目的の15% (N×6.38)蛋白質を含む栄養組成物を製
造した。 組成物 配合量 乳清蛋白 169g デキストリン 457g シュークロース 229g ミネラル混合 35g ビタミン混合 10g セルロース 50g 大豆油 50g
【0040】(比較例4)下記の配合表に従い、窒素源
としてのカゼイン蛋白をその他の原材料とともに混合し
て目的の15%(N×6.38)蛋白質を含む栄養組成物を製
造した。 組成物 配合量 カゼイン蛋白 167g デキストリン 459g シュークロース 229g ミネラル混合 35g ビタミン混合 10g セルロース 50g 大豆油 50g
【0041】(試験例3)実施例3、比較例3、4で製
造した栄養組成物を用いて、動物実験を行った。体重18
0 〜 200gのSD系雄性ラット(1群5〜6例)を一夜
絶食後に体重が等しくなるように群分けを行い、各栄養
組成物を6日間自由摂取させた。インドメタシンを7.5
mg/kg/回を皮下に1回/日、連続2日投与して2回目
のインドメタシン投与から48時間後にエーテル麻酔下
で剖検した。インドメタシン投与後も栄養組成物は継続
摂取させた。胃幽門部から肛門までの全消化管を摘出し
て、小腸、盲腸、大腸の各部位について潰瘍部の病理検
査を行った。その結果、窒素源に乳清蛋白質加水分解物
を用いた実施例3の栄養組成物を摂取した群では、潰瘍
深度UL−1程度の軽度な潰瘍のみであったのに対し
て、窒素源に乳清蛋白質(比較例3)あるいはカゼイン
蛋白質(比較例4)を用いた栄養組成物を摂取した群で
は潰瘍深度UL−3から4の重度な潰瘍が観察された。
【0042】
【発明の効果】本発明の再燃防止剤、栄養組成物、栄養
食品によれば、クローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸
疾患による腸管の炎症反応を予防できる。緩解、再発を
繰り返す慢性疾患である本疾患の患者が再発によりこう
むる長期間に及ぶ入院がもたらす学業・就労への制約等
さまざまな苦痛を再発の抑制により低減できることに伴
い、患者が日常生活を再発に悩まされることなく送れる
ことが可能となりQOLの向上が期待される。現存の治
療薬は、症状を抑えるためのものであるので短期間での
再発は必至であり、副作用の発現も少なくない。本発明
の防止剤または栄養組成物によって治療薬では解決でき
ない炎症の再燃防止という課題を解決することができ
る。また、本疾患の患者が緩解期に通常使用する剤形態
の服用あるいは食品の形態での摂取のみで予防効果が得
られるため、従来のステロイド剤等の予防薬とは異な
り、患者が楽に服用できることからコンプライアンスの
改善につながり、ひいては予防効果を上げることができ
る。さらに、経静脈輸液剤等高価格の栄養剤に頼る必要
性が低減できるなど、医療経済性の向上へつながること
も期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1と比較例1の経腸栄養組成物を6日
間前投与して、インドメタシンを24mg/kg 経肛門的に投
与した際の消化管各部位の潰瘍数を示す図である。
【図2】 実施例1と比較例1の経腸栄養組成物を6日
間前投与して、インドメタシンを7.5mg/kg皮下投与した
際の消化管各部位の潰瘍数を示す図である。
【図3】 実施例1と比較例2の経腸栄養組成物を6日
間前投与して、インドメタシンを24mg/kg 経肛門的に投
与した際の消化管各部位における潰瘍数を示す図であ
る。
【図4】 実施例1と比較例2の経腸栄養組成物を6日
間前投与して、インドメタシンを7.5mg/kg皮下投与した
際の消化管各部位における潰瘍数を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 信田 華代 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内 (72)発明者 渡沼 稔 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内 Fターム(参考) 4B018 LB03 MS07 MS14 4C084 AA02 BA43 CA59 MA52 MA60 ZA662 4C087 AA01 AA02 BB39 CA16 MA52 ZA66

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】乳清蛋白加水分解物からなる炎症性腸疾患
    再燃防止剤。
  2. 【請求項2】前記乳清蛋白加水分解物が、乳清蛋白質水
    溶液に、バシラス・サチリス(Bacillus su
    btilis)由来のエンドペプチダーゼとトリプシン
    の2種類の酵素、またはバシラス・サチリス由来のエン
    ドペプチダーゼ、トリプシン及びキモトリプシンの3種
    類の酵素を添加して加水分解した後、酵素を失活するか
    又は除去することにより得られるオリゴペプチド混合物
    である請求項1に記載の炎症性腸疾患再燃防止剤。
  3. 【請求項3】前記乳清蛋白加水分解物が、少なくとも7
    0%(重量)の純度の乳清蛋白質を10%(重量)以下
    の濃度で水に溶解し、得られた水溶液のpHを7.1〜
    10に調整したのち、該水溶液にバシラス・サチリス
    (Bacillus subtilis)由来のエンド
    ペプチダーゼとトリプシンの2種類の酵素、またはバシ
    ラス・サチリス由来のエンドペプチダーゼ、トリプシン
    及びキモトリプシンの3種類の酵素を添加して、30〜
    55℃の温度で加水分解し、のち加熱により酵素を失活
    するか又はウルトラフィルトレーションにより酵素を除
    去することにより得られるオリゴペプチド混合物である
    請求項1に記載の炎症性腸疾患再燃防止剤。
  4. 【請求項4】前記乳清蛋白加水分解物のアミノ酸組成が
    蛋白質1g当たり下記組成である請求項1〜3のいずれ
    かに記載の炎症性腸疾患再燃防止剤。 L−アラニン 52〜 68(mg) L−アルギニン 23〜 32 L−アスパラギン酸(L−アスパラギンを含む) 102〜131 L−システイン 17〜 35 L−グルタミン酸(L−グルタミンを含む) 185〜201 L−グリシン 18〜 22 L−ヒスチジン 17〜 23 L−イソロイシン 59〜 71 L−ロイシン 100〜158 L−リジン 94〜128 L−メチオニン 15〜 25 L−フェニルアラニン 29〜 48 L−プロリン 38〜 64 L−セリン 45〜 58 L−スレオニン 57〜 83 L−トリプトファン 16〜 23 L−チロシン 26〜 47 L−バリン 54〜 66
  5. 【請求項5】前記乳清蛋白加水分解物が低抗原性である
    請求項1〜4のいずれかに記載の炎症性腸疾患再燃防止
    剤。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかに記載の炎症性腸
    疾患再燃防止剤を含む栄養組成物。
  7. 【請求項7】請求項1〜5のいずれかに記載の炎症性腸
    疾患再燃防止剤を含む栄養食品。
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