JP2000043084A

JP2000043084A - 射出成形同時絵付用シート、射出成形同時絵付方法、及び成形品

Info

Publication number: JP2000043084A
Application number: JP10213673A
Authority: JP
Inventors: Gen Takeuchi; 玄竹内
Original assignee: Dai Nippon Printing Co Ltd
Current assignee: Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date: 1998-07-29
Filing date: 1998-07-29
Publication date: 2000-02-15

Abstract

(57)【要約】【課題】射出成形同時絵付方法にて、ポリオレフィン
系樹脂の成形物に絵付用シートを積層して絵付けする際
に、シート取扱い時のブロッキング、シート予備成形時
の破れ等を起こさずに、安定的に密着良好な成形品を製
造する。【解決手段】絵付用シートＳは、アクリル樹脂を主成
分とする透明な基材シート１に、バインダーの樹脂がア
クリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合
物を主成分とする装飾層２と、ウレタン樹脂を主成分と
するプライマー層３と、塩素化ポリオレフィン樹脂を主
成分とする接着剤層４を積層した構成とする。この絵付
用シートを用いて射出成形同時絵付けを行い、成形品を
得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形同時絵付
法に使用するラミネ−トタイプの絵付用シートとして、
樹脂成形物、特にポリオレフィン樹脂からなる樹脂成形
物の表面に密着良く積層できる絵付用シートと、該シー
トを用いた射出成形同時絵付方法及び成形品に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、樹脂成形物の表面を加飾した
成形品が各種用途で使用されている。例えば、特公昭５
０−１９１３２号公報等に開示の射出成形同時絵付方法
では、樹脂成形物の成形と同時にその表面に絵付用シー
トを積層一体化する事で、表面が加飾された成形品が得
られる。この様な射出成形同時絵付方法によって、成形
品を得る場合、一般的に使用する射出成形樹脂は、アク
リル樹脂、ＡＢＳ樹脂、ポリカーボネート樹脂、或いは
これらのポリマーブレンド物が主な樹脂である。また、
安価なポリオレフィン樹脂からなる樹脂成形物の表面を
加飾する場合は、予め絵柄の無い成形物を作製し、それ
に対して絵付け部分に、プライマー処理等の下地処理を
施した後、一般的な絵付け方法である水圧転写法などに
よって、絵付けして、所望の成形品とする場合がほとん
どである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上記射出成
形同時絵付方法にて射出成形樹脂として列記した、アク
リル樹脂、ＡＢＳ樹脂、ポリーカーボネート樹脂等の汎
用樹脂は、加工性は良いが、コストが高いと言う欠点が
ある。そして、ポリプロピレン樹脂等の安価なポリオレ
フィン樹脂を射出成形樹脂として使用して射出成形同時
絵付方法で表面加飾する場合、絵付用シートと樹脂成形
物との接着剤には、塩素化ポリプロピレンに変成アクリ
ル樹脂を添加した物を使用する事が多かった。しかし、
該接着剤は、粘着性（タック）に富んでいる為に、その
形成方法はロールコート、スプレーコート等の塗工法が
主であり、グラビアコート等ではバックトラップ等の問
題が発生し易かった。また、絵付用シートを巻き取り保
存すると、ブロッキングが発生する事もあった。

【０００４】絵付用シートの基材シートとして、熱可塑
性樹脂からなる透明な樹脂シートを用いて、該樹脂シー
トによって成形品表面に塗装感等を付与する場合は、該
樹脂シートには、透明性に優れたアクリル樹脂が好適で
ある。しかし、上記の如きバックトラップやブロッキン
グの問題を何とか解決して、アクリル樹脂を主成分とす
る基材シートを使用し、接着剤層に塩素化ポリプロピレ
ンに変成アクリル樹脂を添加した物を使用した絵付用シ
ートで、射出成形同時絵付けを行うと、今度は次の様な
問題が発生し易かった。それは、射出成形の型間に絵付
用シートを供給し、ヒータによって絵付用シートを加熱
軟化し、該型面に沿う様に真空成形で予備成形する時
に、絵付用シートの加熱温度が高過ぎると、真空引き時
の応力は低い値で済むが、接着剤層が溶融してしまい射
出成形時の熱圧による密着に悪影響を及ぼす事であっ
た。一方、絵付用シートの加熱温度が低過ぎると、今度
は十分に絵付用シートが軟化せず、型面の形状に沿わな
くなり、樹脂の射出時に絵付用シートの破れ等が生じ易
くなると言う問題があった。

【０００５】この様な事もあって、安価なポリオレフィ
ン樹脂の樹脂成形物表面を絵付用シートで加飾する場合
は、上述の如く水圧転写法などによって加飾してきた訳
である。しかし水圧転写法では、射出成形同時絵付方法
に比較して、加飾するに当たり下地処理等の工程数が増
え、結果的にコストアップに繋がる方法であった。

【０００６】そこで、本発明の課題は、工程的に効率的
な射出成形同時絵付方法による場合でも、樹脂成形物、
中でも特にポリオレフィン樹脂からなる樹脂成形物の表
面を、透明な基材シートとして透明性に優れたアクリル
樹脂を使用した絵付用シートを密着良く積層して絵付け
出来る様にする事である。その為に使用するバックトラ
ップやブロッキングが起きずに安定的に生産できる絵付
用シート、密着不良やシートの破れが起きずに安定的に
絵付け出来る射出成形同時絵付方法、そしてその結果得
られる成形品を提供する事である。

【０００７】

【課題を解決するための手段】そこで、上記課題を解決
すべく、本発明の射出成形同時絵付用シートは、アクリ
ル樹脂を主成分とする透明な基材シートに、バインダー
の樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合
体との混合物を主成分とする装飾層と、ウレタン樹脂を
主成分とするプライマー層と、塩素化ポリオレフィン樹
脂を主成分とする接着剤層がこの順に積層されてなる絵
付用シートであって、接着剤層の樹脂成分が、主成分の
塩素化ポリオレフィン樹脂に加えて、石油系樹脂、エポ
キシ樹脂で構成され、更に該接着剤層中に疎水性シリカ
が含有されている構成とした。その結果、絵付用シート
はバックトラップやブロッキングが起きず安定的に生産
出来て取扱いも用意な実用的なシートとなる。しかも、
射出成形同時絵付け時に絵付用シートを加熱軟化して真
空成形する場合でも、絵付用シートの破れや密着不良が
起きず、安定的に成形品を製造できる絵付用シートとな
る。そして、安価なポリオレフィン系樹脂に対しても密
着性が優れ、しかも優れた塗装感が得られる絵付用シー
トとなる。

【０００８】また、本発明の射出成形同時絵付方法は、
上記の射出成形同時絵付用シートを、一対の型の間に、
該接着剤層が充填される樹脂と対面するようにして挿入
した後、両型を型締めし、両型で形成されるキャビティ
内に流動状態の樹脂を充填して固化させて、成形と同時
に樹脂成形物表面に射出成形同時絵付用シートを密着、
積層させた後、両型を型開きし、射出成形同時絵付用シ
ートが樹脂成形物に積層した成形品を得る様にした。そ
の結果、射出成形同時絵付け時に絵付用シートを加熱軟
化して真空成形する場合でも、絵付用シートの破れや密
着不良が起きず、安定的に成形品を製造できる。そし
て、安価なポリオレフィン系樹脂に対しても密着良く塗
装感に優れた絵付用シートを積層できる。

【０００９】また、本発明の成形品は、前記の射出成形
同時絵付用シートが、その接着剤層によってポリオレフ
ィン系樹脂からなる樹脂成形物の表面に積層されてなる
構成の成形品とした。その結果、安価なポリオレフィン
系樹脂の樹脂成形物の表面に対して、積層された絵付用
シートの密着性が良く、且つ塗装感に優れた絵付け成形
品となる。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
の実施の形態を説明する。図１は、本発明の射出成形同
時絵付用シートの一形態を例示する断面図、図２は、本
発明の射出成形同時絵付方法を説明する概念図、図３は
本発明の成形品を例示する断面図である。

【００１１】〔射出成形同時絵付用シート〕本発明の射
出成形同時絵付用シートは、図１（Ａ）に例示する射出
成形同時絵付用シートＳの如く、アクリル樹脂を主成分
とする透明な基材シート１に、バインダーの樹脂がアク
リル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物
を主成分とする装飾層２と、ウレタン樹脂を主成分とす
るプライマー層３と、塩素化ポリオレフィン樹脂を主成
分とする接着剤層４がこの順に積層し、該接着剤層４の
樹脂成分が、主成分の塩素化ポリオレフィン樹脂に加え
て、石油系樹脂、エポキシ樹脂で構成され、更に該接着
剤層中に疎水性シリカが含有されている構成の絵付用シ
ートである。

【００１２】（基材シート）基材シート１は、熱可塑性
樹脂からなる透明な樹脂シートであり、該熱可塑性樹脂
として、本発明では透明性に優れ、その結果、優れた塗
装感を付与できるアクリル樹脂を主体として構成する。
該アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル（メタ）
アクリレート、ポリブチル（メタ）アクリレート、メチ
ル（メタ）アクリレート−ブチル（メタ）アクリレート
共重合体、メチル（メタ）アクリレート−スチレン共重
合体等のアクリル樹脂〔但し、（メタ）アクリレートと
は、アクリレート又はメタクリレートの意味〕を単体又
は２種以上の混合物として、単層又は２層以上の積層体
のシートとして用いる。なお、基材シートは無色透明の
他に、着色透明でも良い。また、基材シート中には、必
要に応じて、適宜、可塑剤、安定剤、着色剤、紫外線吸
収剤、光安定剤等の各種添加剤を、物性調整の為に添加
しても良い。また、副材料として、アクリル樹脂以外の
樹脂を添加しても良い。基材シートの厚みは、特に限定
されないが、一般的には３０〜５００μｍ程度である。

【００１３】（装飾層）装飾層としては、バインダーの
樹脂を特定の樹脂から構成する他は、基本的には特に制
限は無い。装飾層は、通常は印刷インキ或いは塗料で、
公知の印刷又は塗工法により形成する。バインダーの樹
脂は、本発明では、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビ
ニル共重合体との混合物を主成分とする。ここで、アク
リル樹脂としては、前記の基材シートのところで列記し
たものと同様のものの中から適宜選択する他、メチル
（メタ）アクリレート、エチル（メタ）アクリレート、
ブチル（メタ）アクリレート等と、２−ヒドロキシエチ
ル（メタ）アクリレート等の分子中に水酸基を有する
（メタ）アクリル酸エステルとを共重合させて得られる
アクリルポリオールを用いることも出来る。また、塩化
ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、通常、酢酸ビニ
ル含有量が５〜２０重量％程度、平均重合度３５０〜９
００程度のものが用いられる。アクリル樹脂と塩化ビニ
ル−酢酸ビニル共重合体との混合比は、アクリル樹脂／
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体＝１／９〜９／１（重
量比）程度である。この他、副成分の樹脂脂として、必
要に応じて、適宜その他の樹脂、例えば、熱可塑性ポリ
エステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、塩素化ポリエチ
レン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン
等の樹脂を混合しても良い。また、上記印刷インキ（或
いは塗料）に用いる着色剤は公知の染料や顔料で良く、
例えば、チタン白、弁柄、黄鉛、群青、カーボンブラッ
ク、イソインドリノン、キナクリドン、フタロシアニン
ブルー等を用いる。装飾層の絵柄は、木目、石目、布
目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等と任意であ
る。

【００１４】（プライマー層）プライマー層は、少なく
とも装飾層と接着剤層との間に介在させて、これら両層
間の密着性をより向上させる易接着層として作用する。
このプライマー層は本発明ではウレタン樹脂を主成分と
して構成する。アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル
共重合体との混合物を主成分とする装飾層と、塩素化ポ
リオレフィン樹脂を主成分とする接着剤層との密着性向
上には、ウレタン樹脂が好ましい。ウレタン樹脂として
は、２液硬化型ウレタン樹脂、或いは熱可塑性ウレタン
樹脂等を使用すれば良い。また、プライマー層は、この
様な樹脂からなるインキ又は塗液で、公知の印刷法又は
塗工法で形成すれば良い。

【００１５】例えば、２液硬化型ウレタン樹脂は、ポリ
オールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤（硬化剤）
とするウレタン樹脂である。ポリオールとしては、分子
中に２個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチ
レングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリル
ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポ
リオール、ポリカーボネートポリオール等が用いられ
る。また、イソシアネートとしては、分子中に２個以上
のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用い
られる。例えば、２，４−トリレンジイソシアネート、
キシレンジイソシアネート、４，４′−ジフェニルメタ
ンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或い
は、１，６−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホ
ロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ
ート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の
脂肪族（乃至は脂環式）イソシアネート、或いはまた、
上記各種イソシアネートの付加体、又は多量体を用いる
事もできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加
体、トリレンジイソシアネート３量体（ｔｒｉｍｅｒ）
等がある。また、熱可塑性ウレタン樹脂は、２価のポリ
オールと２価のイソシアネートとをウレタン結合させて
得られる線状高分子からなる。

【００１６】なお、プライマー層は、密着性向上の為に
必要に応じて、基材シートと装飾層との間等の他の層間
に設けても良い。この場合は、目的とする層材料に応じ
て、上記ウレタン樹脂、或いはその他の樹脂を使用す
る。

【００１７】（接着剤層）接着剤層としては、塩素化ポ
リオレフィン樹脂を主成分とし、更に副成分の樹脂とし
て、石油系樹脂及びエポキシ樹脂を含有し、更に疎水性
シリカを添加剤として含有した層とする。

【００１８】上記塩素化ポリオレフィン樹脂としては、
塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の熱可塑
性樹脂を単体又は２種以上混合して使用する。特に、印
刷・塗工適性が良く、且つポリオレフィン系樹脂に対す
る密着性も良い点で、塩素化ポリプロピレンは塩素化ポ
リエチレンに比較してより優れた特性を示し、好まし
い。

【００１９】上記石油系樹脂は、接着剤のタックを調整
してグラビア塗工時のバックトラップを防止し、また、
接着剤の加熱軟化特性を調整する。該石油系樹脂として
は、公知の樹脂を使用すれば良い。例えば、クマロン・
インデン樹脂、石油樹脂等である。石油樹脂としては、
石油類の分解により生成する分解油留分を混合物のま
ま、カチオン的に重合して得られる熱可塑性樹脂を使用
する。石油系樹脂の混合量は副成分樹脂としの範囲で適
宜調整する。

【００２０】上記エポキシ樹脂は、接着剤の耐熱性を向
上させる樹脂成分であり、加熱された時に、塩素化ポリ
オレフィン樹脂から遊離塩素或いは塩化水素によって、
絵付用シートが膨れたりするのを防止する安定剤として
作用する。該エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノ
ールＡジグリシジルエーテル、エポキシ化大豆油等を使
用する。混合量は副成分樹脂としの範囲で適宜調整す
る。

【００２１】上記疎水性シリカは、接着剤の塗工適性を
調整するとともに、接着剤層によるブロッキングを防止
する。該疎水性シリカとしては、公知の物を使用すれば
良い。通常、粒径は０．１〜１μｍ程度、より好ましく
は０．２〜０．３μｍであり、その添加量は塩素化ポリ
オレフィン樹脂１００重量部に対して１〜１０重量部程
度であるが、必要に応じて適宜調整する。

【００２２】なお、接着剤層の厚みは使用法等に応じて
適宜厚さとすれば良いが、通常１〜１００μｍ程度であ
る。また、接着剤層の形成方法は特に限定は無いが、通
常は、上記樹脂を希釈溶剤で希釈した樹脂液からなるイ
ンキ又は塗液として、グラビア印刷、ロールコート等の
公知の印刷又は塗工手段により形成する。また、接着剤
層中には、更に、インキ（又は塗液）の印刷（又は塗
工）適性等の諸物性を調整、向上させる為に、必要に応
じて、その他の副材料、例えば、体質顔料、保存安定剤
等の各種添加剤を添加しても良い。

【００２３】〔射出成形同時絵付方法〕本発明の射出成
形同時絵付方法は、前述した本発明の射出成形同時絵付
用シートを用いて、所謂射出成形同時絵付方法によっ
て、樹脂成形物の表面に積層する事で、該絵付用シート
で絵付けされた成形品を得る方法である。

【００２４】なお、射出成形同時絵付方法とは、特公昭
５０−１９１３２号公報、特公昭４３−２７４８８号公
報等に記載されるように、絵付用シートを射出成形の雌
雄両金型間に配置した後、流動状態の樹脂を型内に射出
充填し、樹脂成型物の成形と同時にその表面に絵付用シ
ートを積層して絵付けする方法である。

【００２５】本発明の射出成形同時絵付方法は、用いる
絵付用シートとして前述した本発明の射出成形同時絵付
用シートを用いる事以外は、従来公知の射出成形同時絵
付方法に於ける各種形態をとり得るものである。例え
ば、絵付用シートの予備成形を行う形態でも行わない形
態でも、いずれでも良い。また、絵付用シートの予熱を
行っても良く、行わなくても良い。なお、予備成形時に
は通常は絵付用シートは予熱する。特に本発明では、絵
付シートを加熱軟化させて予備成形する場合でも、絵付
シートを真空成形等で予備成形するに必要十分な温度ま
で加熱しても、接着剤層として加熱され過ぎて溶融した
り、或いは今度は接着剤層をその融着による密着力が適
度となる様な温度まで加熱した場合に、絵付シートの加
熱軟化が不十分となり該シートが破れたりするといった
問題が起きない。従って、本発明の射出成形同時絵付用
シートが好適な射出成形同時絵付方法の形態は、絵付シ
ートを予め加熱軟化させて真空成形等で予備成形する形
態である。

【００２６】なお、もちろんの事だが、絵付用シートの
絞りが大きい場合は、予備成形を行うのが好ましい。一
方、絵付用シートの絞りが少ない場合は、射出される流
動状態の樹脂の樹脂圧で絵付用シートを成形できる。こ
の際、絞りが浅ければ、予備成形無しで樹脂射出と同時
に型内に充填される流動状態の樹脂の樹脂圧で絵付用シ
ートを成形する事もある。また、樹脂圧で絵付用シート
を成形する場合でも、絵付用シートは予熱せずに射出樹
脂の熱を利用する事もある。また、絵付用シートの予備
成形は、通常は、射出成形型を真空成形型と兼用して行
うが、型間に絵付用シートを供給する前に、型外部で別
の真空成形型で絵付用シートを真空成形する様な予備成
形でも良い。なお、本発明に於いて真空成形とは真空圧
空成形も包含する。

【００２７】例えば、射出成形型を真空成形型と兼用し
て絵付用シートを予備成形する形態に於ける或る一例と
して、工程毎に分けて述べれば、次の様な工程からなる
射出成形同時絵付方法がある。すなわち、雌雄一対から
なる型が型開き状態の時に雌型のパーティング面上に絵
付用シートを供給するシート供給工程と、前記絵付用シ
ートを雌型のパーティング面上に保持固定するクランプ
工程と、前記絵付用シートを延伸させて雌型のキャビテ
ィ面に沿わせる延伸工程（予備成形工程）と、雌型と雄
型とを型締めする型締め工程と、雌型と雄型とで形成さ
れるキャビティ内に流動状態の樹脂を注入充填し、樹脂
成形物と前記絵付用シートとを接触させる射出工程と、
射出樹脂が固化した後に雌型と雄型とを離間させる型開
き工程と、絵付用シートが樹脂成形物に積層された成形
品を取り出す成形品取出し工程、をこの順に行う射出成
形同時絵付方法である。

【００２８】ところで、図２は本発明の射出成形同時絵
付方法を或る一形態で説明する概念図である。図２に示
す形態では、型締めする前に、絵付用シートを型間で加
熱し軟化させて射出成形型で真空成形により予備成形し
た後に、型締めして樹脂を射出する形態である。そこで
次に、図２を用いて、本発明の射出成形同時絵付方法を
説明する。

【００２９】先ず、図２（Ａ）の如く、射出成形型とし
ては、射出ノズルと連通する湯道（ランナー）及び湯口
（ゲート）を有する型Ｍａと、型面に吸引孔４１を有し
シートの予備成形型を兼用する型Ｍｂの一対の成形型を
用いる。これらの型は鉄等の金属、或いはセラミックス
からなる。型開き状態に於いて両型Ｍａ、Ｍｂ間に射出
成形同時絵付用シートＳを供給し、型Ｍｂに絵付用シー
トＳを枠状のシートクランプ４２で押圧する等して固定
する。この際、絵付用シートの接着剤層側は、図面右側
の射出樹脂側となる様にする事はもちろんである。次い
で、適宜、両型間に挿入したヒータで絵付用シートを加
熱軟化させる。加熱は例えば非接触の輻射加熱とする
が、接触加熱でも良い。そして、吸引孔から吸引して真
空成形して、絵付用シートを型Ｍｂのキャビティ面に沿
わせ予備成形する。なお、真空成形は圧空も併用する真
空圧空成形でも良く、これも包含する。次いで、ヒータ
を両型間から退避させ、図２（Ｂ）の如く両型を型締め
し、両型で形成さるキャビティに加熱熔融状態等の流動
状態の樹脂を充填する。そして、樹脂が固化後、型開き
して成形物を取り出す。なお、絵付用シートの不要部分
があれば適宜トリミングする。そして、図３の如く、樹
脂成形物５に射出成形同時絵付用シートＳが積層され絵
付けされた成形品Ｐが得られる。

【００３０】なお、本発明の射出成形同時絵付方法に於
いて、射出成形する樹脂としては、基本的には、射出成
形同時絵付方法に於ける従来公知のものが使用でき特に
制限はない。射出成形樹脂は、製品の要求物性やコスト
等に応じて選定される。例えば、熱可塑性樹脂であれ
ば、ＡＢＳ（アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン
共重合体）樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、アク
リル樹脂、ポリカーボネート樹脂、或いはポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテ
ン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピ
レン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラスト
マー等のポリオレフィン系樹脂等である。また、硬化性
樹脂であれば、２液硬化型の樹脂、例えば、ウレタン樹
脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の未硬化
樹脂液等の射出成形同時絵付用として従来より知られて
いる材料を使用できる。熱可塑性樹脂は加熱熔融して流
動状態で射出し、また硬化性樹脂は室温又は適宜加熱し
て流動状態で射出する。但し、本発明の射出成形同時絵
付方法では、前述した本発明の射出成形同時絵付用シー
トを使用する方法であり、該本発明の絵付用シートの特
徴を活かして最も効果を奏するのは、ポリプロピレン等
の上記各種のポリオレフィン系樹脂である。

【００３１】〔成形品〕本発明の成形品は、図３に例示
する成形品Ｐの如く、前述した本発明の射出成形同時絵
付用シートＳが、ラミネ−トシートとして、ポリオレフ
ィン系樹脂からなる樹脂成形物５の表面に積層してなる
構成の成形品である。ポリオレフィン系樹脂は、例え
ば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ
メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチ
レン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可
塑性エラストマー等である。本発明の成形品では、絵付
用シートの密着性に優れる上、透明性に優れたアクリル
樹脂を主体とする基材シートにより、優れた塗装感も得
られる。なお、成形品は、通常、絵付用シートの積層面
が凹凸面等と非平面の立体物である。しかし、本発明の
成形品としては、絵付用シートの積層面は平面だが他の
面が非平面の立体物、積層面が平面となる板状物を排除
するものではない。特定の接着剤層による優れた密着性
を享受できる。

【００３２】本発明の成形品を得るには、絵付用シート
には本発明の射出成形同時絵付用シートを使用するのが
必須であるが、その射出成形同時絵付用シートを樹脂成
形物に積層する方法は、射出成形同時絵付方法が好適で
あるが、当該方法に必ずしも限定されるものでは無い。
射出成形同時絵付用シートの変則的な使用法となるが、
被着体である樹脂成形物（に於ける絵付用シートの被着
面の形状）、用意できる製造設備等に応じて、適宜方法
を採用しても良い。例えば、特公昭５６−４５７６８号
公報（オーバーレイ法）、特公昭６０−５８０１４号公
報（真空プレス法）等に記載の所謂真空成形積層方法等
でも良い。もちろん、本発明の射出成形同時絵付方法を
採用する事が、ポリオレフィン系樹脂に対して密着良く
積層して、絵付けでき、なお且つ成形と絵付けとを同時
に１工程で出来、生産効率も良い等の点で好ましい。

【００３３】

【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明を更に
詳述する。

【００３４】〔実施例１〕透明な１２５μｍ厚のアクリ
ル樹脂シート（ガラス転移温度１０５℃）を基材シート
として、その片面に、バインダーの樹脂がアクリル樹脂
と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との１対１重量比の
混合物で、着色顔料が弁柄、カーボンブラック、黄鉛を
主成分とする着色インキの多色刷りで全ベタを含む木目
柄の装飾層をグラビア印刷で形成し、更に続いて、アク
リルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとか
らなる２液硬化型ウレタン系樹脂からなるプライマーイ
ンキで厚さ２μｍのプライマー層をグラビア印刷で形成
し、更に続いて、塩素化ポリプロピレン（Ｖｉｃａｔ軟
化点９０℃）を主成分とする下記組成の塩素化ポリプロ
ピレンを主成分とする接着剤（溶液）を塗工して、厚さ
３μｍの接着剤層を形成して、図１の如き構成の本発明
の射出成形同時絵付用シートを得た。この際、バックト
ラップやブロッキングの現象は認められなかった。

【００３５】接着剤組成塩素化ポリプロピレン１３．１重量部石油系樹脂８．２重量部エポキシ樹脂（遊離塩素捕獲剤）１．３重量部疎水性シリカ（平均粒径０．２５μｍ）０．４重量部希釈溶剤接着剤全量を１００重量部とする量（酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンの混合溶剤）

【００３６】そして、図２の概念図に示した様な本発明
の射出成形同時絵付方法によって、上記射出成形同時絵
付用シートを樹脂成形物からなる被着体の成形と同時に
その表面に積層して、図３に示す如き、射出成形同時絵
付用シートＳ全体が樹脂成形物５に積層された層構成の
本発明の成形品Ｐを得た。成形品には、インキ流れ（装
飾層の柄の崩れ）、絵付用シートの密着不良及び皺が認
められず、外観良好であった。成形品は、木目柄で絵付
けされ意匠感に優れた絵付け成形品となった。なお、射
出成形同時絵付方法は、絵付用シートは射出成形型を真
空成形型として、型間に供給後、加熱軟化して真空成形
で予備成形する形態によった。また、射出成形金型に
は、箱型形状のパネルとなる樹脂成形物が得られる金型
で、雌型側にシート予備成形の為の吸引孔を有する型を
用いた。また、絵付用シートの予備成形時の加熱温度は
１００℃とした。また、射出成形樹脂としては、ポリプ
ロピレン樹脂（三井東圧化学株式会社製、ＨＩＰ−１４
５）を使用した。

【００３７】更に、得られた成形品を、１００℃のオー
ブン中に６０時間入れて耐熱性試験を行ったところ、絵
付用シートの剥がれや浮き等の外観に特に変化は無く、
耐熱性は良好であった。

【００３８】〔比較例１〕実施例１において、接着剤層
に用いた接着剤を下記組成とした他は、実施例１と同様
にして射出成形同時絵付用シートを得た。接着剤をグラ
ビア塗工後、十分に乾燥してロール状に巻き取った。グ
ラビア塗工時のバックトラップ発生は無かったが、塗工
面（接着剤層面）と基材シート面とが密着するブロッキ
ングが発生した。この為、この絵付用シートは、射出成
形同時絵付けに使用できなかった。

【００３９】接着剤組成塩素化ポリプロピレン２３重量部石油系樹脂５重量部希釈溶剤接着剤全量を１００重量部とする量（酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンの混合溶剤）

【００４０】〔比較例２〕実施例１に於いて、接着剤層
に用いた接着剤を下記組成とした他は、実施例１と同様
にして射出成形同時絵付用シートを得た。バックトラッ
プ及びブロッキングは発生しなかったが、接着剤中のシ
リカの分散が悪く、塗工ムラが生じた。この為、この絵
付用シートは、射出成形同時絵付けに使用し得るシート
ではなかった。

【００４１】接着剤組成塩素化ポリプロピレン２３重量部石油系樹脂５重量部疎水性シリカ（平均粒径２．５μｍ）１．６重量部希釈溶剤接着剤全量を１００重量部とする量（酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンの混合溶剤）

【００４２】〔比較例３〕実施例１に於いて、接着剤層
に用いた接着剤を下記組成とした他は、実施例１と同様
にして射出成形同時絵付用シートを得た。バックトラッ
プ、ブロッキング及び塗工ムラは発生しなかった。そこ
で、この絵付用シートを用いて、実施例１同様に、射出
成形同時絵付けを行って成形品を得た。そして、得られ
た成形品を、１００℃のオーブン中に６０時間入れて耐
熱性試験を行ったところ、塩素化ポリプロピレンからの
遊離塩素によって成形品表面に凹凸が発生し、また接着
剤の耐熱性不足によって、成形品表面にユズ肌状の劣化
が確認され、成形品は不良となった。

【００４３】接着剤組成塩素化ポリプロピレン２３重量部石油系樹脂５重量部疎水性シリカ（平均粒径０．２５μｍ）１．６重量部希釈溶剤接着剤全量を１００重量部とする量（酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンの混合溶剤）

【００４４】〔比較例４〕比較例３に於いて、基材シー
トに用いアクリル樹脂シートのガラス転移温度を１０５
℃から６７℃に変えた他は、比較例３と同じ材料及び方
法で、射出成形同時絵付用シートを作製し、そして成形
品を得た。絵付用シート作製時は、バックトラップ、ブ
ロッキング及び塗工ムラは発生しなかった。絵付用シー
トの予備成形時の加熱温度を８０℃で作製した成形品
は、外観良好であったものの、接着剤の溶融不足によ
り、密着性試験（下記の碁盤目試験）により若干の剥が
れが生じた。次に、絵付用シートの予備成形時の加熱温
度を１００℃に変えて作製した成形品では、同様の密着
性試験は良好となったが、過剰加熱による皺が成形品表
面に発生した。従って、いずれにせよ、良好な成形品は
得られなかった。

【００４５】上記密着性を評価する為の碁盤目試験は、
成形品表面（絵付用シート面）に、２ｍｍ間隔で碁盤目
状に縦横に、深さが樹脂成形物にまで達する切り込みを
入れて、縦横で１０×１０個の合計１００個の枡目を作
った後、セロハン粘着テープ（ニチバン株式会社製、
「セロテープ」（登録商標）２４ｍｍ幅、産業用）を２
５℃に於いて成形品表面に貼着した後、勢い良く剥がし
て、絵付用シートがテープと共に剥がれるか否かで評価
した。剥がれ無きものを良好、剥がれ有りのものを不良
とした。

【００４６】

【発明の効果】本発明の射出成形同時絵付用シートに
よれば、バックトラップやブロッキングが起きず安定的
に生産出来て取扱いも用意な実用的な絵付用シートとな
る。しかも、射出成形同時絵付け時に絵付用シートを加
熱軟化して真空成形する場合でも、絵付用シートの破れ
や密着不良が起きず、安定的に成形品を製造できる絵付
用シートとなる。そして、安価なポリオレフィン系樹脂
に対しても密着性が優れ、しかも優れた塗装感が得られ
る絵付用シートとなる。本発明の射出成形同時絵付方法では、上記射出成形同
時絵付用シートを用いる事によって、射出成形同時絵付
け時に絵付用シートを加熱軟化して真空成形する場合で
も、絵付用シートの破れや密着不良が起きず、安定的に
成形品を製造できる。そして、安価なポリオレフィン系
樹脂に対しても密着良く塗装感に優れた絵付用シートを
積層できる。本発明の成形品によれば、安価なポリオレフィン系樹
脂の樹脂成形物の表面に対して、ラミネ−トされた絵付
用シートの密着性が良く、且つ塗装感に優れた絵付け成
形品となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の射出成形同時絵付用シートの形態例を
例示する断面図。

【図２】本発明の射出成形同時絵付方法をその一形態で
説明する概念図。

【図３】本発明の成形品の形態例を例示する断面図。

【符号の説明】

１基材シート２装飾層３プライマー層４接着剤層５樹脂成形物４１吸引孔４２シートクランプＭａ射出成形型（雄型）Ｍｂ射出成形型（雌型）Ｐ成形品Ｓ射出成形同時絵付用シート

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Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】射出成形同時絵付けに使用する絵付用シ
ートにおいて、アクリル樹脂を主成分とする透明な基材シートに、バイ
ンダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル
共重合体との混合物を主成分とする装飾層と、ウレタン
樹脂を主成分とするプライマー層と、塩素化ポリオレフ
ィン樹脂を主成分とする接着剤層がこの順に積層されて
なる絵付用シートであって、接着剤層の樹脂成分が、主成分の塩素化ポリオレフィン
樹脂に加えて、石油系樹脂、エポキシ樹脂で構成され、
更に該接着剤層中に疎水性シリカが含有されている、射
出成形同時絵付用シート。
【請求項２】請求項１記載の射出成形同時絵付用シー
トを、一対の型の間に、該接着剤層が充填される樹脂と
対面するようにして挿入した後、両型を型締めし、両型
で形成されるキャビティ内に流動状態の樹脂を充填して
固化させて、成形と同時に樹脂成形物表面に射出成形同
時絵付用シートを密着、積層させた後、両型を型開き
し、射出成形同時絵付用シートが樹脂成形物に積層した
成形品を得る、射出成形同時絵付方法。
【請求項３】請求項１記載の射出成形同時絵付用シー
トが、その接着剤層によってポリオレフィン系樹脂から
なる樹脂成形物の表面に積層されてなる成形品。