JP2000042807A - 精密切削用工具 - Google Patents

精密切削用工具

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JP2000042807A
JP2000042807A JP11119891A JP11989199A JP2000042807A JP 2000042807 A JP2000042807 A JP 2000042807A JP 11119891 A JP11119891 A JP 11119891A JP 11989199 A JP11989199 A JP 11989199A JP 2000042807 A JP2000042807 A JP 2000042807A
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JP
Japan
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sintered body
boron nitride
cbn
cutting tool
precision cutting
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JP11119891A
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English (en)
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Hitoshi Sumiya
均 角谷
Shinya Kamisaka
伸哉 上坂
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 cBN焼結体からなる、高硬度、高強度、
耐熱性に優れた精密切削用工具を提供すること。 【解決手段】 平均粒径が0.5μm以下の立方晶窒化
ホウ素からなる立方晶窒化ホウ素焼結体を刃先とした精
密切削用工具であって、前記刃先部の立方晶窒化ホウ素
焼結体の、任意の方向のX線回折線の(220)回折強
度(I(220) )と(111)回折強度(I(111) )との
比I(220) /I(111) が、0.05以上であり、その粒
界に介在物を実質的に含まない精密切削用工具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は精密切削工具に関す
るもので、特に鉄系材料の精密切削加工に用いることの
できる精密切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、各種の成形金型や摺動部品など、
高硬度鉄系材料の高精度な仕上げ切削加工の要求が高ま
っている。この鉄系材料の精密加工として単結晶ダイヤ
モンド、および単結晶立方晶窒化ホウ素が検討されてき
た。しかし、単結晶ダイヤモンドで鉄系材料を切削する
場合、切削熱によりダイヤモンドと鉄の化学反応がおこ
り、ダイヤモンド工具が急速に摩耗するという問題があ
り、鋼などの金型の直接加工が不可能である。そのた
め、たとえばレンズ金型の精密加工においては無電解ニ
ッケルメッキ層を施して、そのメッキ層を精密に仕上げ
る方法がとられているが、金型の強度が不十分、プロセ
スが複雑などの問題があった。また、特殊雰囲気による
化学反応抑制法などで、直接加工の検討が行われている
が実用的でない。
【0003】立方晶窒化ホウ素(cBN)は、ダイヤモ
ンドに次ぐ硬度を有し、熱的化学的安定性の高い物質
で、鉄族金属とは反応しない。このため、cBNの粉末
をバインダーで固めた焼結体が鉄系材料の切削工具とし
て用いられている。現在、切削工具として用いられてい
るcBN焼結体は、cBNの粉末を、TiN、TiC、
Coなどのバインダーを用いて超高圧下で焼結されたも
ので、焼結体には10〜60体積%程度のバインダーが
含まれる。このため、切削時に微小な刃こぼれを生じや
すく、また刃先の研削仕上げにおいて刃先を刃こぼれな
くシャープに仕上げることは非常に難しく、精密切削工
具としての使用は困難であった。この対策のためには、
刃先に単結晶もしくはバインダーを含まない工具が必要
である。cBNの単結晶を作製して、鋼の超精密加工用
切削工具とする試みがなされたが、不純物や欠陥の少な
い大型cBN単結晶の合成が非常に困難であり、また、
cBN単結晶は意外に強度が低く、耐摩耗性が十分でな
かった。このため、cBN単結晶が精密用切削工具に実
用化されることはなかった。
【0004】また、バインダーを含まないcBN焼結体
として、ホウ窒化マグネシウムなどの触媒を用いて六方
晶窒化ホウ素(hBN)を原料として、反応焼結させた
焼結体がある。この焼結体はバインダーがなくcBN粒
子が強く結合しているため熱伝導率が600〜700W
/m・Kと高く、ヒートシンク材やTABボンディング
ツールなどに用いられている。しかし、この焼結体の中
には触媒がいくらか残留しているため、熱を加えるとこ
の触媒とcBNとの熱膨張差による微細クラックが入り
やすい。このため、その耐熱温度は700℃程度と低
く、切削工具としては大きな問題となる。また、粒径が
10μm前後と大きいため、熱伝導率が高いものの、強
度が十分でなく、切削工具としては適用出来なかった。
【0005】一方、cBNは、hBNなどの常圧型BN
を超高圧高温下で、無触媒で合成(直接変換)すること
が可能である。このhBN→cBN変換と同時に焼結さ
せることで、バインダーを含まないcBN焼結体を作製
できることが知られている。たとえば、特開昭47−3
4099号公報や特開平3−159964号公報にhB
Nを超高圧高温下でcBNに変換させ、cBN焼結体を
得る方法が示されている。また、特公昭63−394号
公報や特開平8−47801号公報には熱分解窒化ホウ
素(pBN)原料にして、cBN焼結体を作製する方法
が示されている。しかし、圧縮hBNが残留しやすいこ
と、配向(異方)性が強くて層状亀裂や剥離の問題が生
じやすいことなどの問題がある。そのほか、直接変換に
よりcBNを得る方法として例えば、特公昭49−27
518号公報に、一次粒子の平均粒径が3μm以下の六
方晶系窒化ほう素を原料とする方法が示されている。
が、六方晶窒化ほう素が微粉であるため、数%の酸化ホ
ウ素不純物や吸着ガスを含み、そのため焼結が十分に進
行せず、また、酸化物を焼結体内に多く含むため、高硬
度、高強度で耐熱性に優れた焼結体が得られず、切削工
具に用いることができない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】バインダーを含むcB
N焼結体は、鋭利な刃先が得られず、また刃先の強度や
耐摩耗性が十分でなく、鉄系材料の精密切削加工ができ
ない。cBN単結晶は、不純物や欠陥の少ない大型cB
N単結晶の合成が非常に困難であり、また、cBN単結
晶は以外に強度が低く、耐摩耗性が十分でない。cBN
は(110)面や(111)面によるへき開により、刃
先の欠損や、マイクロチッピングによる摩耗が進行する
と考えられる。
【0007】直接変換により、構成粒子が微細で粒子同
士の結合が十分な、バインダーを含まないcBN単相の
焼結体が得られれば、鋭利な刃先形成が可能で、かつ、
へき開による刃先欠損や摩耗が改善でき、鉄系材料の精
密切削加工が可能と考えられる。しかし、従来のバイン
ダーを含まないcBN焼結体は、前項で述べたように、
粒径が数μmと大きく、さらに粒界に、触媒や圧縮型h
BN、酸化物など介在するため、鋭利な刃先が得られ
ず、また十分な刃先強度が得られない。また、従来の直
接変換法では、原料のhBNが配向しやすく、その結果
<111>方向に配向した焼結体となりやすい。もとも
と配向性の高いpBNを原料に用いると、hBNを原料
にしたときより更に<111>配向したcBN焼結体と
なる。この配向性のため、切削工具として使用した場
合、層状亀裂、剥離などの不具合が生じるという問題が
あった。等方的でかつ微粒でしかも切削用途に適用でき
るような粒子間結合の強いcBN単相の焼結体は従来知
られていなかった。本発明は上記の問題点を解消するた
めに開発されたもので、バインダーを含まず0.5μm
以下の微粒のcBNからなり、粒界に介在物を含まず、
かつ組織が等方的であるため刃先が極めて鋭利で、強
度、耐摩耗性に優れた精密切削工具を提供することを目
的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、下記の発
明とその具体的態様によって達成することができる。 (1)平均粒径が0.5μm以下の立方晶窒化ホウ素か
らなる立方晶窒化ホウ素焼結体を刃先とした精密切削用
工具であって、前記刃先部の立方晶窒化ホウ素焼結体
の、任意の方向のX線回折線の(220)回折強度(I
(220) )と(111)回折強度(I(111) )との比I
(220) /I(111) が、0.05以上、特に0.1以上で
あり、その粒界に介在物を実質的に含まない精密切削用
工具、
【0009】(2)前記刃先部の立方晶窒化ホウ素焼結
体の抗折力(曲げ強度)が80kg/mm2 以上で、高
温下でも強度が低下しない上記(1)記載の精密切削用
工具、(3)前記刃先部の立方晶窒化ホウ素焼結体の硬
度が4000kg/mm2 以上である上記(1)または
(2)に記載の精密切削用工具、(4)前記刃先部の立
方晶窒化ホウ素焼結体の熱伝導率が、250W/m・K
〜1000W/m・Kである上記(3)に記載の精密切
削用工具。
【0010】(5)ホウ素と酸素を含む化合物を炭素と
窒素の存在下で還元窒化して低圧相窒化ホウ素を合成し
得られた低圧相窒化ホウ素を出発物質として高温高圧下
で立方晶窒化ホウ素に直接変換させると同時に焼結する
ことを特徴とする平均粒径が0.5μm以下の立方晶窒
化ホウ素からなる精密切削工具用焼結体の製造方法、お
よび(6)直接変換と焼結を圧力6GPa以上、温度1
550〜2100℃で行う上記(5)記載の精密切削工
具用焼結体の製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】上記したとおり、本発明の切削工
具を構成するcBN焼結体は、バインダーを含まず、
0.5μm以下の微粒のcBNからなり、粒界に介在物
を含まず、かつ、組織が等方的であるため、刃先が極め
て鋭利で、かつ強度、耐摩耗性に優れた工具が得られ、
精密切削加工用途に十分使用することができる。
【0012】本発明の精密切削工具のcBN焼結体は、
吸着ガスや酸化ホウ素を含まない低結晶性あるいは、微
粒の常圧型BNを出発物質とし、これを高圧高温下でc
BNに直接変換焼結することにより得られる。ここで用
いる、低結晶性あるいは、微粒の常圧型BNは、酸化ホ
ウ素やホウ酸を炭素で還元し、窒化させて調製されたも
のである必要がある。通常、常圧型BNの合成方法とし
て、酸化ホウ素やホウ酸をアンモニアと反応させる方法
が一般に工業的に行われている。しかし、このようにし
て得られたBNは、高温で熱処理するとhBNへ結晶化
する。このため、この方法により微細で低結晶性の常圧
型BNを合成しても、不純物の酸化ホウ素を除去するた
めの高温精製処理(窒素ガス中2050℃以上、真空中
1650℃以上など)を行うと、hBNに結晶化、粒成
長してしまう。これに対し、酸化ホウ素やホウ酸を炭素
と窒素の存在下で還元窒化させた常圧型BNは、高温で
熱処理しても結晶化しない特徴があり、したがって、こ
の方法で微粒で低結晶性の常圧型BNを合成し、窒素ガ
ス中2050℃以上または真空中1650℃以上などの
高純度精製処理を行うことで、酸化ホウ素や吸着ガスの
ない直接変換焼結に非常に適した常圧型BNが得られ
る。上記の還元窒化は窒素と炭素の存在下で行うか、又
は炭素と窒素とを含む化合物を用いて行うことができ
る。
【0013】本発明によれば、出発物質が微粒で低結晶
性の常圧型BNであり、しかもcBN変換を阻害する酸
化ホウ素を含まないため、従来の直接変換法でよくみら
れた圧縮hBNの残留がなく、直接変換後のcBNが粒
成長したり、一軸配向することが少ない。その結果、微
細な粒子からなる等方的な焼結体となる。さらに、cB
N粒子同士の焼結を阻害する酸化ホウ素や、吸着ガスが
ないため粒子間の結合強度の強い焼結体が得られる。
【0014】上記した直接変換焼結の条件は、圧力6G
Pa以上、温度1550〜2100℃が好ましい。特に
焼結温度が重要で、低いとcBNへの変換が十分でな
く、高すぎるとcBNの粒成長が進行し、cBN同士の
結合力が小さくなる。cBNの粒成長の起こらない焼結
温度は、出発原料の結晶性、粒径により変化する。上記
の適切な焼結温度範囲で焼結したcBN焼結体は、平均
粒径0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下のcB
Nからなる緻密な組織を有し、粒界に介在物を含まず、
かつ組織が等方的であるという特徴をもつ。ここで、c
BN粒径のコントロールは直接変換焼結時の温度で行
う。すなわち、0.5μm以下の微粒状態をコントロー
ルするために、出発原料として微粒で低結晶性の常圧型
のBNを用いそして低温域で直接変換焼結する必要があ
る。通常のhBNやpBNでは2100℃以上にしなけ
ればcBNに変換しないので0.5μm以下にコントロ
ールできない。
【0015】こうして得られたcBN焼結体を精密切削
工具用の素材とすることで、極めて鋭利で、強度の高い
刃先が得られ、従来困難であった精密切削が可能とな
る。この発明の精密切削用工具は、刃先部が低圧相窒化
ホウ素を高圧高温下で直接変換させると同時に焼結させ
て得られる、平均粒径が0.5μm以下の立方晶窒化ホ
ウ素(cBN)からなる焼結体であって、このcBN焼
結体の、任意の方向のX線回折線の(220)回折強度
(I(220) )と(111)回折強度(I(111 ) )との比
(220) /I(111) が、0.05以上、特に0.1以上
であり、その粒界に介在物を実質的に含まないものであ
る。ここで、cBNの平均粒径が0.5μmを越える
と、精密切削加工に十分鋭利な刃先が得られず、強度も
不十分となる。また、X線の回折強度比I(220) /I
(111) が、0.05未満であれば、cBN焼結体は<1
11>方向への配向が強く、異方向であるため、層状亀
裂や剥離が生じやすくなる。
【0016】また、刃先部のcBN焼結体の抗折力が8
0kg/mm2 以上で、高温下でも強度が低下しないも
のであることが好ましい。80kg/mm2 未満、また
は高温下で強度が低下するものであると、十分な強度の
刃先が得られず、切削中に欠損が起こりやすくなる。ま
た、刃先部のcBN焼結体の硬度が4000kg/mm
2 以上であることが好ましい。4000kg/mm2
満では、切削中の摩耗が大きく、精密な切削加工ができ
なくなる。
【0017】また、刃先部のcBN焼結体の熱伝導率が
250W/m・K以上であることが好ましい。250W
/m・K未満では切削中の発熱によって刃先先端温度が
上昇し、切削熱に起因する摩耗が大きくなり、工具寿命
を低下させる。
【0018】以上述べたように、本発明の切削工具のc
BN焼結体は、バインダーを含まず、微粒のcBNから
なり、粒界に介在物を含まず、かつ、組織が等方的であ
るため、精密加工が可能な、鋭利な刃先が得られ、かつ
強度、耐摩耗性に優れる。このため、鉄系材料の精密加
工用切削工具に用いた場合に、従来の焼結体に見られな
い優れた性能を示す。
【0019】
【実施例】(実施例1)酸化ホウ素(B2 3 )とメラ
ミン(C3 6 6 )をモル比で3:1で配合し、乳鉢
で均一に混合した。これを、管状炉で、窒素ガス中、合
成温度850℃で2時間処理した。得られた粉末をエタ
ノールで洗浄して未反応のB2 3 を除去し、さらに、
高周波炉で、N2 ガス中、2100℃で2時間処理し
た。得られた窒化ホウ素粉末の酸素含有量を、ガス分析
により測定すると0.75重量%であった。窒素ガス
中、2100℃の処理でB2 3 や吸着ガスは完全に除
去されているため、この酸素はhBNに固溶した不純物
と思われる。
【0020】こうして得られた窒化ホウ素のX線回折図
形は、hBNの(102)回折線がなく、hBNの(0
02)回折線が非常にブロードで、結晶性がかなり低い
ことを示した。hBN(002)回折線の半値幅より結
晶子サイズLcを計算すると8nmであった。この低結
晶性常圧型BN粉末を6ton/cm2 で型押し成形
し、この成形体を再度、高周波炉で、N2 ガス中、21
00℃で2時間処理した。次にこれをMoカプセルに入
れ、ベルト型超高圧発生装置で6.5GPa、1800
℃で15分処理した。得られた焼結体は、X線回折の結
果cBNのみからなることが判った。また、このcBN
焼結体のX線回折におけるcBNの(220)回折強度
のcBN(111)回折強度に対する比率は0.22
で、配向の少ない等方性の焼結体であることがわかっ
た。また、このcBN焼結体の微細構造を透過型電子顕
微鏡で観察したところ、cBN粒子の大きさは0.3μ
m以下と微細で、粒子同士が結合した緻密な組織である
ことがわかった。この硬度をマイクロヌープ圧子で測定
したところ5000kg/mm2 と高硬度であった。抗
折力を測定すると、室温で110kg/mm2 、100
0℃では120kg/mm 2 と高強度であった。また、
真空炉を用いて、真空中での高温処理後の硬度の変化
で、耐熱性を評価したところ、1300℃まで安定で、
耐熱性に優れていることがわかった。また、焼結体を5
×4×1mmの直方体に加工後、定常法を用いて50℃
〜60℃における熱伝導率を測定したところ、290W
/m・Kであった。
【0021】この焼結体をシャンクにロウ付けし、刃先
を#8000のダイヤモンド砥石で研削し、刃先ノーズ
Rが0.1mmである切削工具を作製した。刃先を顕微
鏡で観察すると、極めてシャープな刃先であることが確
認できた。前逃げ面の面粗さを測定すると、0.01μ
m以下であった。比較のため、市販のバインダーを含む
cBN焼結体で同様の刃先加工を行うと、逃げ面面粗さ
は0.02〜0.03μm程度であった。こうして得ら
れた切削工具で、SUS420J2(HRC53)を切
削速度100m/min、切り込み0.005mm、送
り0.005mm/revで、精密切削加工テストを行
ったところ、切削面粗さ0.1μmRmaxを確保でき
る工具寿命は、切削距離にして約5000mであった。
比較のため、cBN単結晶工具で同様の切削性能を評価
したところ、上記の工具寿命は最長200mであった。
【0022】(実施例2)低結晶性常圧型BNの合成温
度を800℃で2時間処理した他は、実施例1と同様に
窒化ホウ素を合成、精製した。得られた常圧型BN粉末
の酸素含有量を、ガス分析により測定すると0.8重量
%であった。X線回折図形は、hBNの(102)回折
線がなく、hBNの(002)回折線が非常にブロード
であり、微粒で、結晶性がかなり低いことを示した。h
BN(002)の回折線の半値幅より求めたLcは約6
nmであった。この低結晶性常圧型BNを原料にして実
施例1と同様にしてcBN焼結体を作製した。得られた
cBN焼結体を走査型電子顕微鏡観察した結果、粒径は
0.5μm以下と微細であることがわかった。また、X
線回折におけるcBNの(220)回折強度のcBN
(111)回折強度に対する比率は0.26で、等方性
であることを示した。このcBN焼結体の粒径、硬度、
強度、耐熱性、熱伝導率は実施例1と同様の値を示し、
精密切削のテストでも同様の性能を示した。
【0023】(実施例3)低結晶性常圧型BNの合成温
度を950℃で2時間処理した他は、実施例1と同様に
窒化ホウ素を合成、精製した。得られたBN粉末の酸素
含有量を、ガス分析により測定すると0.65重量%で
あった。X線回折図形は、hBNの(102)回折線が
なく、hBNの(002)回折線がブロードで、結晶性
が低いことを示した。hBN(002)の回折線の半値
幅より求めたLcは約15nmであった。この低結晶性
常圧型BNを原料にして実施例1と同様にしてcBN焼
結体を作製した。得られたcBN焼結体を走査型電子顕
微鏡観察した結果、粒径は0.5μm以下と微細である
ことがわかった。また、X線回折におけるcBNの(2
20)回折強度のcBN(111)回折強度に対する比
率は0.18で、等方性であることを示した。このcB
N焼結体の粒径、硬度、強度、耐熱性、熱伝導率は実施
例1と同様の値を示し、精密切削のテストでも同様の性
能を示した。
【0024】(実施例4)実施例1と同様に合成、生成
した、低結晶性常圧型BNを原料にして、これをMoカ
プセルに入れ、ベルト型超高圧発生装置で7.0GP
a、1900℃で15分処理した。得られた焼結体は、
X線回折の結果cBNのみからなることが判った。ま
た、このcBN焼結体のX線回折におけるcBNの(2
20)回折強度のcBN(111)回折強度に対する比
率は0.06で、等方性を示した。また、このcBN焼
結体の微細構造を透過型電子顕微鏡で観察したところ、
cBN粒子の大きさは0.5μm以下と微細で、粒子同
士が結合した緻密な組織であることがわかった。このc
BN焼結体の硬度、強度、耐熱性は実施例1と同様の値
を示し、実施例1と同様の精密切削のテストでも切削面
粗さ0.1μmRmaxを確保できる工具寿命は、切削
距離にして約1000mであった。
【0025】(比較例1)原料に市販の粒径3〜10μ
mの結晶性のよいhBN成形体を用いた。これを高周波
炉で、N2 ガス中、2100℃で2時間処理し、酸素含
有量をガス分析により測定すると0.03重量%であっ
た。これをベルト型超高圧発生装置で7.7GPa、2
200℃、15分で処理した。強固な焼結体が得られた
が、この焼結体を構成するcBN粒子は3〜5μm程度
で、そのX線回折におけるcBN(220)回折強度/
cBN(111)回折強度の値は、0.06であり、や
や粗粒で、(111)面方向に選択配向した異方性のあ
る焼結体であることがわかった。また、X線回折で、面
間隔d=3.1オングストローム付近に圧縮hBNが微
量ながら認められた。この焼結体より切削工具を作製
し、精密切削のテストを行ったところ、数分の後、刃先
部が層状に剥離したと思われる欠損が生じた。
【0026】(比較例2)原料に市販の熱分解BN(p
BN)の成形体を用いた。これを高周波炉で、N 2 ガス
中、2100℃で2時間処理し、酸素含有量をガス分析
により測定すると0.02重量%であった。これをベル
ト型超高圧発生装置で7.5GPa、2100℃、15
分で処理した。強固な焼結体が得られたが、このcBN
焼結体のX線回折におけるcBN(220)回折線はほ
とんど認められず、このcBN(220)回折強度/c
BN(111)回折強度の値はほとんど0であった。
(111)面方向に選択配向した非常に異方性の高い焼
結体であることがわかった。また、X線回折で、面間隔
d=3.1オングストローム付近に圧縮hBNが認めら
れた。この焼結体より切削工具を作製し、精密切削のテ
ストを行ったところ、瞬時にして刃先が欠損した。刃先
の損傷をみると、層状に剥離している部分が多く見られ
た。
【0027】(比較例3)実施例3と同様にして原料の
低圧相BNを作製し、焼結温度を2200℃としたこと
以外は、実施例3と同様にcBN焼結体を作製した。等
方的な焼結体が得られたが、粒径約1〜3μmとやや大
きく、抗折力が約70kg/mm2 で、1000℃の温
度下では40程度に低下した。この焼結体で、実施例1
と同様に精密切削のテストを行ったところ、初期の段階
で、刃先に微細なチッピングが生じ、高精度な加工がで
きなくなった。
【0028】
【発明の効果】本発明の切削工具のcBN焼結体は、バ
インダーを含まず、0.5μm以下の微粒のcBNから
なり、粒界に介在物を含まず、かつ、組織が等方的であ
るため、刃先が極めて鋭利で、かつ強度、耐摩耗性に優
れた工具が得られ、精密切削加工用途に十分使用するこ
とができる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均粒径が0.5μm以下の立方晶窒化
    ホウ素からなる立方晶窒化ホウ素焼結体を刃先とした精
    密切削用工具であって、前記刃先部の立方晶窒化ホウ素
    焼結体の、任意の方向のX線回折線の(220)回折強
    度(I(220))と(111)回折強度(I(111) )との
    比I(220) /I(111) が、0.05以上であり、その粒
    界に介在物を実質的に含まない精密切削用工具。
  2. 【請求項2】 前記刃先部の立方晶窒化ホウ素焼結体の
    抗折力が80kg/mm2 以上で、高温下でも強度が低
    下しない請求項1記載の精密切削用工具。
  3. 【請求項3】 前記刃先部の立方晶窒化ホウ素焼結体の
    硬度が4000kg/mm2 以上である請求項1または
    2に記載の精密切削用工具。
  4. 【請求項4】 前記刃先部の立方晶窒化ホウ素焼結体の
    熱伝導率が、250W/m・K〜1000W/m・Kで
    ある請求項3に記載の精密切削用工具。
  5. 【請求項5】 ホウ素と酸素を含む化合物を炭素と窒素
    の存在下で還元窒化して低圧相窒化ホウ素を合成し得ら
    れた低圧相窒化ホウ素を出発物質として高温高圧下で立
    方晶窒化ホウ素に直接変換させると同時に焼結すること
    を特徴とする平均粒径が0.5μm以下の立方晶窒化ホ
    ウ素からなる精密切削工具用焼結体の製造方法。
  6. 【請求項6】 直接変換と焼結を圧力6GPa以上、温
    度1550〜2100℃で行う請求項5記載の精密切削
    工具用焼結体の製造方法。
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