JP2000039038A - クラッチ制御装置 - Google Patents

クラッチ制御装置

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JP2000039038A
JP2000039038A JP10206806A JP20680698A JP2000039038A JP 2000039038 A JP2000039038 A JP 2000039038A JP 10206806 A JP10206806 A JP 10206806A JP 20680698 A JP20680698 A JP 20680698A JP 2000039038 A JP2000039038 A JP 2000039038A
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冨士男 籾山
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清明 宮崎
Minoru Kamata
実 鎌田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 クラッチ板の摩擦係数が使用条件により変化
しても、その変化を制御系の中で吸収し、クラッチ制御
に直接影響を与えることなく円滑に制御できるようにす
る。 【解決手段】 エンジン回転速度とクラッチ板回転速度
との差からクラッチ以降の駆動力伝達系のトルクを推定
演算し、そのトルクが所定値(τ1 )に達した後には、
そのトルクが所定値(τ1 )を維持するようにクラッチ
板押圧を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車に利用する。
本発明は、機械式の自動クラッチを使用する車両に利用
する。本発明は、車両の発進時にクラッチ板押圧を自動
制御する方法および装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】機械式クラッチを使用し、車両の発進時
にそのクラッチ板押圧をプログラム制御回路により自動
制御する装置が知られている。従来技術の一つは、エン
ジン回転速度とクラッチ板回転速度との差が、あらかじ
めプログラムされた制御マップにしたがって時間の経過
とともに減少するように、制御回路により演算し、その
演算出力に基づいて液圧によりクラッチ板位置を制御す
るものである(特開平4−337159号公報)。この
制御マップをさらに工夫し、回転速度の差の変化率をも
とに制御を行い、伝達関数モデルに基づく演算を行うも
の(特開平7−305763号公報)などが知られてい
る。
【0003】このような装置を装備した車両では、運転
者は発進時、変速時などに、その都度クラッチペダルを
踏む必要がなく、クラッチ板の押圧制御は自動的に行わ
れる。運転席にクラッチペダルが設けられている車両で
も、そのクラッチペダルは非常用であり、通常の運転で
は使用する必要がない。運転者はクラッチペダルのわず
らわしい操作から解放されてスムーズな運転を行うこと
ができる。
【0004】しかし、大型車両など積載量に応じてクラ
ッチの使用条件が大きく変化する車両では、クラッチ制
御系に何らかの原因により外乱が発生すると、クラッチ
の接合制御が円滑でなくなることがある。このときいわ
ゆる「しゃくり」など乗り心地のよくない現象が現れる
ことがある。これまでのクラッチ制御装置では、積荷の
変化に伴うクラッチの使用頻度の変化、クラッチ温度の
変化、経年変化、その他使用条件の変化を含め、あらゆ
る場面でこのような乗り心地のよくない現象を皆無にす
るには至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本願発明者らは、クラ
ッチの接合制御が円滑でなくなる場合について、さまざ
まな角度から詳しく検討した。そして、クラッチ板の摩
擦係数が、クラッチの使用に伴い変化する現象に着目し
た。そして、クラッチ板の摩擦係数は、クラッチ板が滑
っている半クラッチの期間にもかなり大きく変動するこ
とが観測された。クラッチ板の摩擦係数が何らかの原因
により変化すると、それに伴い制御パラメタが変動して
制御系が一時的に乱れて、しゃくりなどの現象が発生す
ることが突き止められた。
【0006】これを抑圧するために、クラッチ板の摩擦
係数が変動を小さくすることも考えられるが、クラッチ
板の摩擦係数の変動の原因は複雑であり、簡単に制御す
ることができないこともわかった。
【0007】本発明はこのような背景に行われたもので
あって、クラッチ板の摩擦係数が変化しても、それがク
ラッチ制御に直接影響を与えることがない制御論理を提
供することを目的とする。本発明は、クラッチ板の摩擦
係数が変化しても、それを制御系の中で吸収して、クラ
ッチ制御を円滑に行うことができる方法および装置を提
供することを目的とする。本発明は、使用条件によりク
ラッチ板の温度その他が急激に変化し、それに応じてク
ラッチ板の摩擦係数が変動しても、クラッチ制御を円滑
に行うことができる方法および装置を提供することを目
的とする。本発明は、アクセルペダルが踏込まれない場
合には、上記のようなクラッチ制御を行うことなく、運
転操作に便利なクラッチ制御を行うことができる制御方
法および装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、機械式自動ク
ラッチを使用する車両に備えられたクラッチの摩擦係数
が変化しても、その変化を自動的に吸収してクラッチ制
御を円滑に行い、外乱変動に対し安定したクラッチ制御
を自動的に行うことを特徴とする。
【0009】すなわち、本発明の第一の特徴は、クラッ
チ板押圧の制御方法であって、変速機に発進ギヤが設定
され、ブレーキペダルが解放されたことが検出される
と、アクセルペダルの操作量にしたがってエンジンに対
する燃料供給量を調節しながらクラッチ板押圧を制御す
るクラッチ制御方法において、エンジン回転速度とクラ
ッチ回転速度との差(クラッチ滑り速度)からクラッチ
以降の駆動力伝達系のトルクを推定演算し、そのトルク
が所定値(τ1 )に達した後にはそのトルクが前記所定
値(τ1 )を維持するようにクラッチ板押圧を制御する
ことを特徴とする。
【0010】前記燃料供給量をアイソクロナス制御によ
り調節することにより、車速が所定値(V1 )になるま
で前記トルクを前記所定値(τ1 )に維持し、車速が所
定値(V1 )を越えたときには時間の経過にしたがって
クラッチ板押圧を大きく制御し、さらにブレーキペダル
が解放された後のアクセルペダルの操作量が所定値(S
1 )以下であるときには、前記トルクによる制御を禁止
し、車速がクリープ速度(Vc)に維持されるようにク
ラッチ板押圧を制御することが望ましい。
【0011】クラッチ板の摩擦係数が変化しても、それ
がクラッチ制御に直接影響を与えることがない制御論理
は次のとおりである。すなわち、クラッチ以降の駆動系
(たとえばプロペラ軸)のトルクτはエンジンの駆動ト
ルクが一定であるときには、クラッチ板の摩擦係数を
μ、クラッチ板の押圧力をfとするとき、 τ = kμf (kは比例定数) なる関係がある。したがって、クラッチが滑っていて車
両が発進するまでのクラッチ制御の最も重要な期間にわ
たり、トルクτが一定になるように制御系をフィードバ
ック制御することにより、かりに摩擦係数μに時間的な
変動が生じても、それに応じて押圧力fが反比例して制
御されるから、全体として安定な制御を行うことができ
る。
【0012】駆動系(たとえばプロペラ軸)のトルクτ
をリアルタイムで計測することは、しばしば困難であ
り、車両モデルを用いて、エンジン回転速度とクラッチ
回転速度との差からこのトルクτを推定演算することに
その特徴がある。
【0013】エンジンをアイソクロナス制御することに
より、エンジンは(回転速度一定ではなく)駆動トルク
一定となるように制御される。したがって、上式はエン
ジンの回転速度の広範囲にわたり成立する。
【0014】クラッチが滑る制御の微妙な期間を過ぎ車
両が発進したときには、クラッチ板の押圧力を時間の経
過とともに大きくして、車両の加速特性を良くする。
【0015】また、ブレーキペダルが解放された後に、
アクセルペダルの踏込みが行われない場合には、ただち
に本発明の特徴とする駆動トルク一定のクラッチ制御に
入ることなく、車両をクリープ速度に維持するようにク
ラッチ制御を行うことが運転操作の上から便利である。
【0016】本発明の第二の特徴は、クラッチ板を押圧
する制御装置であって、変速機に発進ギヤが設定されか
つブレーキペダルが解放されたことを検出する手段と、
ブレーキペダルが解放された後にアクセルペダルの操作
量にしたがってエンジンに対する燃料供給量を調節する
とともにクラッチ板押圧を制御する手段とを備えたクラ
ッチ制御装置において、クラッチ以降の駆動力伝達系の
トルクを推定演算する手段を設け、前記クラッチ板押圧
を制御する手段は、推定演算されるトルクが所定値(τ
1 )に達した後に車速が所定値(V1 )に達するまでそ
のトルクを前記所定値(τ1 )に維持するようにクラッ
チ板押圧を制御する手段を含むことを特徴とする。前記
燃料供給量を調節する手段はアイソクロナス制御手段を
含むことが望ましい。
【0017】ブレーキペダルが解放されアクセルペダル
が操作されると、アイソクロナス制御モードを設定する
とともに、クラッチ以降の駆動力系のトルクを検出す
る。検出したトルクが所定値(τ1 )を示した後に車速
が所定値(V1 )に達するまで、そのトルク(τ1 )を
維持するようにクラッチ板の押圧力を制御する。
【0018】すなわち、アクセルペダルが操作されたと
きに、アイソクロナス制御モードを設定し、内燃機関の
回転速度がある値以下の低回転速度領域にあるときは、
燃料供給量を急速に増大させあらかじめ定められた目標
とする回転速度を維持する。この回転速度の維持により
内燃機関のトルクが所定値(τ1 )に達したときに、ク
ラッチ板の押圧力を増加させ半クラッチ状態にする。半
クラッチ状態では内燃機関に負荷がかかり回転速度は低
下して車速は所定値(V1 )以下を示すが、アイソクロ
ナス制御が実行されているので、自動的に燃料の供給量
が増大され所定トルク(τ1 )が維持される。
【0019】車速が所定値(V1 )に達するまでの半ク
ラッチ状態にあるときは、このようにしてクラッチ板の
押圧力を制御し所定のトルク(τ1 )を維持し、車速が
所定値(V1 )に達したときにクラッチ板を完全にミー
トさせる。
【0020】駆動力伝達系のトルク(τ)は、前述した
ように、クラッチ板の摩擦係数(μ)およびクラッチ板
の押圧力(f)により求められる。したがって摩擦係数
(μ)に変動があっても、クラッチ板の押圧力(f)を
制御することによって所定値(τ1 )を維持することが
できる。
【0021】このように、駆動力伝達系のトルクを一定
に維持する制御をクラッチ板の押圧力を変えることによ
って行うことにより、クラッチ板の摩擦係数が温度その
他の要因により変化しても制御系の中で吸収することが
可能となり、クラッチ制御を円滑に行うことができると
ともに、アクセルペダルが踏込まれない場合には、自動
的にアイソクロナス制御によるエンジン回転の制御が行
われるので、運転者はクラッチペダルおよびアクセルペ
ダルを微妙に操作することなく、運転操作を円滑に行う
ことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
【0023】
【実施例】次に、本発明実施例を図面に基づいて説明す
る。図1は本発明実施例装置の要部の構成を示すブロッ
ク図である。
【0024】本発明実施例装置は、制御回路1と、この
制御回路1の制御にしたがってクラッチ20の押圧を加
減するクラッチ押圧手段2とが備えられる。
【0025】制御回路1には、クラッチ20に対する押
圧力の制御を行うクラッチ制御手段7と、電子ガバナ2
3を介してエンジン回転速度がある値以下に低下したと
きに燃料噴射装置24への燃料供給量を急速に増大させ
目標回転速度を維持するように制御するアイソクロナス
制御手段8と、車両モデルを対象としてエンジン26の
回転速度およびクラッチ20の回転速度との差(クラッ
チ滑り速度)からクラッチ20以降の駆動力伝達系のト
ルク(τ)を推定演算し、この推定演算されたトルク
(τ)が所定値(τ1 )に達した後、車速(V)が所定
値(V1 )に達するまで、そのトルク(τ)を所定値
(τ1 )に維持するようにクラッチ板への押圧力を演算
設定するオブザーバ9と、アクチュエータ5を駆動し変
速機25を制御する変速機制御手段6とが備えられる。
【0026】クラッチ制御手段7には、変速機25に発
進ギヤが設定されかつ図外のブレーキペダルが解放され
たことを検出する手段と、ブレーキペダルが解放された
後に、図外のアクセルペダルの操作量にしたがって、エ
ンジン26の燃料噴射装置24に対する燃料供給量を調
節するとともにクラッチ板押圧を制御する手段とが備え
られる。
【0027】このクラッチ板押圧を制御する手段には、
オブザーバ9により推定演算されたトルク(τ)が所定
値(τ1 )に達するまで、そのトルク(τ)を所定値
(τ1 )に維持するようにクラッチ板押圧を制御する手
段が含まれる。
【0028】クラッチ制御手段7には、クラッチの温度
を検出するクラッチ温度検出センサ11、ブレーキペダ
ルの操作を検出するブレーキ・センサ12、アクセルペ
ダルの操作を検出するアクセル・センサ13、変速機2
5のギヤ位置を検出するギヤ位置センサ14、エンジン
26の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ1
5、路面勾配を検出する勾配センサ16、車輪の回転速
度を検出する車輪回転速度センサ17、クラッチ板の位
置を検出するクラッチ位置検出センサ18、クラッチの
回転速度を検出するクラッチ回転速度センサ19、車両
の重量を検出する荷重センサ31、および過給圧力を検
出する過給圧センサ32の出力が接続される。
【0029】クラッチ押圧手段2は、油圧源10と、こ
の油圧源10からの圧油の供給によりクラッチ20のク
ラッチ板に主押圧力を付与する油圧シリンダ3と、クラ
ッチ板に補助的押圧力を付与するステップ・モータ4と
により構成される。
【0030】クラッチ制御手段7からは、ステップ・モ
ータ4および油圧源10に制御信号が送出され、クラッ
チ20の押圧力が調節される。
【0031】次に、このように構成された本発明実施例
装置によるクラッチ制御動作について説明する。
【0032】クラッチ制御手段7は、ギヤ位置センサ1
4の出力により変速機25に発進ギヤが設定されたこと
を検出し、ブレーキ・センサ12の出力によりブレーキ
ペダルが解放されたことを検出すると、アクセルペダル
の操作量にしたがって電子ガバナ23を制御して、燃料
噴射装置24からエンジン26に供給する燃料を調節し
ながらクラッチ20のクラッチ板押圧を制御する。
【0033】このクラッチ板押圧制御は、クラッチ制御
手段7がエンジン回転速度センサ15およびクラッチ回
転速度センサ19の出力を取込み、エンジン回転速度
(N)とクラッチ回転速度(C)との差(クラッチの滑
り速度)からクラッチ20以降の駆動力系のトルク
(τ)を推定演算し、そのトルク(τ)が所定値
(τ1 )に達した後には、そのトルク(τ1 )を維持す
るようにクラッチ板押圧を制御する。すなわち、車速
(V)が所定値(V1 )になるまでプロペラ軸22に伝
達されるトルク(τ)を所定値(τ1 )に維持し、車速
(V)が所定値(V1 )を越えたときには時間(t)の
経過にしたがってクラッチ板押圧を大きく制御する。
【0034】ブレーキペダルが解放された後のアクセル
ペダルの操作量(S)が所定値(S1 )以下になったと
きには、トルク(τ)による制御を禁止し、車速がクリ
ープ速度(VC )に維持されるようにクラッチ板押圧を
制御する。
【0035】ここで、図2を参照して本発明実施例装置
によるクラッチ制御をさらに詳しく説明する。図2は本
発明実施例装置によるクラッチ制御系統図である。
【0036】運転者が車両を停車状態から発進させるた
めに、ブレーキペダルの踏込みを緩め、アクセルペダル
を踏むと半クラッチによる車両クリープ状態を作り出
す。クラッチ制御手段7は、クラッチ位置検出センサ1
8、勾配センサ16および荷重センサ31から半クラッ
チ開始位置(L0 )および路面勾配と積載重量を含む車
両の全重量(T0 )を取込み、クリープ状態となった値
を基点として現在のクラッチ位置を検出する。
【0037】さらに、エンジン回転速度センサ15、ク
ラッチ回転速度センサ19、燃料噴射装置24および過
給圧センサ32からエンジン回転速度(N)、クラッチ
回転速度(C)、燃料噴射量(Q)および過給圧力
(P)を検出する。
【0038】次いで、取込んだこれらの検出値を用い
て、クラッチ回転速度差(N−P)を演算し、マップと
して記憶されたクラッチ20のμ−V特性(クラッチ摩
擦係数と車速とにより表した特性)を読出し現在のクラ
ッチ板の摩擦係数(μi )を仮決めするとともに、検出
したエンジン回転速度(N)、燃料噴射量(Q)および
過給圧力(P)をマップに照合してエンジントルク(τ
e )を推定する。このようにして求めたクラッチ回転速
度差(N−P)、クラッチ板摩擦係数(μi )およびエ
ンジントルク(τe )を用いてオブザーバ9に保持され
た4自由度車両モデルを参照し、クラッチ以降の駆動力
伝達系に伝達するクラッチ伝達トルク(τC )を推定演
算する。
【0039】この推定演算されたクラッチ伝達トルク
(τC )は、車両モデルの精度に合わせるために、車両
回転慣性質量(i)を用いて(τC /i)の演算を行
い、この値を時間積分することによりクラッチ回転速度
(Cm)を算出し、検出したクラッチ回転速度(C)と
の差(C−Cm)、すなわち実車のクラッチ回転速度と
の差をクラッチ板の摩擦係数(μ)の差としてフィード
バックする。これによりクラッチ伝達トルク(τC )の
推定演算を再度実行する。この値は再度フィードバック
される。これを繰り返すことによりこの推定演算された
クラッチ伝達トルク(τC )の値は現実の値に近づき、
クラッチのバラツキが補償される。
【0040】ここで、さらにアクセルペダルの踏込み操
作が行われると、その操作量にしたがってクラッチ板が
押圧される。すなわち、図3(a)に示すように、その
押圧ストロークが(L1 )の位置に達することによりク
ラッチ板の押圧力が増加し、図3(b)に示すようにプ
ロペラ軸22に伝達されるトルク(τ)がゆるやかに増
加する。さらに、アクセルペダルが踏込まれ押圧ストロ
ーク(L)が(L2 )の位置になったときに、クラッチ
20は半クラッチ状態になる。本発明の特徴として、ア
クセルペダルの踏込量が大きくなるにしたがい、この伝
達トルク(τ1)が一定に維持されるようにクラッチ押
圧ストローク(L)およびエンジン回転速度(N)が制
御される。図3(c)はクラッチ制御に用いられる目標
回転速度差マップである。
【0041】このとき、クラッチ制御手段7はこの目標
回転速度差マップを参照して加速指示値(dV(t)/
dt)を検出し、この加速指示値(dV(t)/dt)
および車両回転慣性質量(i)により、加速トルク(τ
a =i×dV(t)/dt)を算出する。この加速トル
ク(τa )および検出した車両負荷(T0 )を4自由度
モデルを参照して算出したクラッチ伝達トルク(τC
に付加し重みづけを行う。
【0042】同時に、クラッチ制御手段7は、図3
(c)に示す目標回転速度差マップを参照して目標回転
速度差(Δ(t)=N(t)−V(t))を検出し、残
差((N−V)−Δ(t))を求め、これをPID処理
により残差最少化を行って、重みづけしたクラッチ伝達
トルク(τC )に付加し、クラッチサーボアンプ(クラ
ッチ押圧手段2)に入力する。これによりクリープトル
クの安定化制御を行うことができる。
【0043】さらに詳しく説明すると、クラッチ20が
半クラッチ状態になり、クラッチ板の摩擦によって発熱
を伴い摩擦係数(μ)が低下し滑りを生じる。この滑り
によりクラッチ板の押圧力(f)が一定のままであれば
伝達すべきトルク(τ)は小さくなるが、クラッチ制御
手段7は前述したように駆動力伝達系のトルクを推定演
算することにより、そのトルクが所定値(τ1 )を維持
するようにクラッチ板の押圧力(f)を制御する。
【0044】プロペラ軸22のトルクτは、エンジン2
6の駆動トルクが一定であるときには、クラッチ板の摩
擦係数をμ、クラッチ板の押圧力を(f)とするとき、 τ = kμf (kは比例定数) の関係がある。
【0045】したがって、摩擦係数(μ)が変動したと
きには、その値に応じてクラッチ板の押圧力(f)を変
化させることによってトルク(τ)を一定に維持するこ
とができる。このクラッチ板押圧制御はクラッチ温度検
出センサ11の出力を取込み、温度変化に応じた押圧力
の制御を行うことができる。
【0046】推定演算された駆動力伝達系のトルク値は
オブザーバ9に出力され、オブザーバ9は車両モデルを
対象にこの出力により所定値(τ1 )のトルクを維持す
るに必要なクラッチ板の押圧力を演算し、その値をクラ
ッチ制御手段7に送出する。クラッチ制御手段7はこの
押圧力をクラッチ操作量として油圧源10およびステッ
プ・モータ4に出力する。
【0047】油圧源10はその操作量にしたがって油圧
シリンダ3に圧油を供給しクラッチ20のクラッチ板を
押圧する。同時に、ステップ・モータ4がその押圧力の
Δf分の微調節を行いクラッチ板を押圧する。
【0048】アイソクロナス制御を併用することによ
り、エンジン回転速度が維持され、クラッチ伝達トルク
を維持するには好都合である。すなわち、クラッチ20
が半クラッチ状態になると、図3(c)に示すようにエ
ンジン26に負荷がかかりその回転速度(N)が低下す
る。そこで、クラッチ制御手段7は、クラッチ20が半
クラッチ状態になったときに、アイソクロナス制御手段
8を起動して、半クラッチの期間にわたりアイソクロナ
ス制御モードを設定する。
【0049】アイソクロナス制御モードが設定される
と、図4に示すアイソクロナス制御曲線にしたがってエ
ンジン26への燃料噴射を行う。通常の制御モードでは
細い実線で示す曲線にしたがって燃料供給が行われる
が、アイソクロナス制御モードでは、車速がきわめて低
速の状態でエンジン回転速度が例えば同図中のxまで低
下したときに、太い実線で示すように燃料の供給量を急
速に増大させ、目標回転速度を維持するように制御す
る。
【0050】このようにしてアイソクロナス制御手段8
は、半クラッチ状態でエンジン回転速度が所定値以下に
低下したときには、電子ガバナ23を制御して燃料噴射
装置24からエンジン26への燃料噴射量を増加しエン
ジン回転速度を増大させる。
【0051】このようなクラッチ板の押圧力制御および
アイソクロナス制御が同時に行われることにより、プロ
ペラ軸22のトルクが所定値(τ1 )に維持され、発進
時の「しゃくり」などの現象が防止される。
【0052】図3(a)に示すように押圧ストロークが
3 に達しクラッチ20が完全ミート状態になると、プ
ロペラ軸22とディファレンシャル・ギヤ21とが直結
され、トルク(τ)の上昇にともなって車両速度が増大
し走行状態となる。
【0053】なお、アイソクロナス制御モードでは、勾
配センサ16の出力を取込み、その出力が示す上り勾配
の大きさ、例えば、図5に太線で示すように、3%、6
%、10%、……に応じて設定された特性曲線にしたが
って燃料噴射を制御することができる。これは、坂道発
進補助装置が装備されている車両では、この制御ソフト
ウェアを兼用することにより実施することができる。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、使
用条件によりクラッチ板の摩擦係数が変化しても、アイ
ソクロナス制御を行うことにより、その変化を制御系の
中で吸収し、クラッチの断接制御を円滑に行い、「しゃ
くり」などによる乗り心地を悪くする現象をなくすこと
ができる。また、アクセルペダルが踏込まれない場合に
は、自動的にアイソクロナス制御によるエンジン回転の
制御が行われるから、運転者はクラッチペダルおよびア
クセルペダルを微妙に操作することなく、運転操作を円
滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例装置の要部の構成を示すブロック
図。
【図2】本発明実施例装置によるクラッチ制御系統図。
【図3】(a)は本発明実施例装置の制御によるクラッ
チ板押圧方向のストロークの変化を示す図、(b)はプ
ロペラ軸トルクの変化を示す図、(c)はエンジン回転
速度および車両速度の変化を示す図。
【図4】本発明実施例にかかわるアイソクロナス制御曲
線および通常制御曲線を示す図。
【図5】本発明実施例にかかわる車両勾配に対応させた
アイソクロナス制御曲線および通常制御曲線を示す図。
【符号の説明】
1 制御回路 2 クラッチ押圧手段 3 油圧シリンダ 4 ステップ・モータ 5 アクチュエータ 6 変速機制御手段 7 クラッチ制御手段 8 アイソクロナス制御手段 9 オブザーバ 10 油圧源 11 クラッチ温度検出センサ 12 ブレーキ・センサ 13 アクセル・センサ 14 ギヤ位置センサ 15 エンジン回転速度センサ 16 勾配センサ 17 車輪回転速度センサ 18 クラッチ位置検出センサ 19 クラッチ回転速度センサ 20 クラッチ 21 ディファレンシャル・ギヤ 22 プロペラ軸(回転駆動軸) 23 電子ガバナ 24 燃料噴射装置 25 変速機 26 エンジン 31 荷重センサ 32 過給圧センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮崎 清明 東京都日野市日野台3丁目1番地1 日野 自動車工業株式会社内 (72)発明者 鎌田 実 神奈川県川崎市高津区千年新町9丁目13番 地 Fターム(参考) 3J057 AA02 AA03 BB04 GA21 GA67 GB02 GB04 GB10 GB12 GB14 GB23 GB29 GB32 GB35 GC09 GE13 JJ01

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変速機に発進ギヤが設定され、ブレーキ
    ペダルが解放されたことが検出されると、アクセルペダ
    ルの操作量にしたがってエンジンに対する燃料供給量を
    調節しながらクラッチ板押圧を制御するクラッチ制御方
    法において、 エンジン回転速度とクラッチ回転速度との差(クラッチ
    滑り速度)からクラッチ以降の駆動力伝達系のトルクを
    推定演算し、そのトルクが所定値(τ1 )に達した後に
    はそのトルクが前記所定値(τ1 )を維持するようにク
    ラッチ板押圧を制御することを特徴とするクラッチ制御
    方法。
  2. 【請求項2】 前記燃料供給量をアイソクロナス制御に
    より調節する請求項1記載のクラッチ制御方法。
  3. 【請求項3】 車速が所定値(V1 )になるまで前記ト
    ルクを前記所定値(τ1 )に維持し、車速が所定値(V
    1 )を越えたときには時間の経過にしたがってクラッチ
    板押圧を大きく制御する請求項1または2記載のクラッ
    チ制御方法。
  4. 【請求項4】 請求項1のクラッチ制御方法において、
    ブレーキペダルが解放された後のアクセルペダルの操作
    量が所定値(S1 )以下であるときには、前記トルクに
    よる制御を禁止し、車速がクリープ速度(Vc)に維持
    されるようにクラッチ板押圧を制御するクラッチ制御方
    法。
  5. 【請求項5】 変速機に発進ギヤが設定されかつブレー
    キペダルが解放されたことを検出する手段と、ブレーキ
    ペダルが解放された後にアクセルペダルの操作量にした
    がってエンジンに対する燃料供給量を調節するとともに
    クラッチ板押圧を制御する手段とを備えたクラッチ制御
    装置において、 クラッチ以降の駆動力伝達系のトルクを推定演算する手
    段を設け、 前記クラッチ板押圧を制御する手段は、推定演算される
    トルクが所定値(τ1)に達した後に車速が所定値(V
    1 )に達するまでそのトルクを前記所定値(τ1 )に維
    持するようにクラッチ板押圧を制御する手段を含むこと
    を特徴とするクラッチ制御装置。
  6. 【請求項6】 前記燃料供給量を調節する手段はアイソ
    クロナス制御手段を含む請求項1記載のクラッチ制御装
    置。
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