JP2000034194A - 結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型化合物及びその製造方法 - Google Patents

結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型化合物及びその製造方法

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JP2000034194A
JP2000034194A JP10200451A JP20045198A JP2000034194A JP 2000034194 A JP2000034194 A JP 2000034194A JP 10200451 A JP10200451 A JP 10200451A JP 20045198 A JP20045198 A JP 20045198A JP 2000034194 A JP2000034194 A JP 2000034194A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 密度と配向度の歩留まりが高く,圧電特性が
大きく,かつ特性の再現性に優れた結晶配向ビスマス層
状ペロブスカイト型化合物及びその製造方法を提供する
こと。 【解決手段】 一般式が(Bi2+(Am−1
3m+12−で表され,上記Aは1〜3価の金
属元素,一方,Bは2〜6価の金属元素である結晶配向
ビスマス層状ペロブスカイト型化合物。このビスマス層
状ペロブスカイト型化合物は,ロットゲーリング(Lo
tgering)法による平均配向度が80%以上であ
り,かつ,相対密度95%以上の体積が95%以上を占
めている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,非鉛系で高いキュリー温度,良
好な温度特性を有する圧電材料として用いられる,結晶
配向ビスマス層状ペロブスカイト型化合物及びその製造
方法に関する。
【0002】
【従来技術】従来より,高いキュリー温度,良好な温度
特性を有する圧電材料として用いられるビスマス層状ペ
ロブスカイト型化合物の結晶配向焼結体について,いく
つかの提案がなされてきた。以下に,その例を示す。 (1)いわゆるビスマス層状ペロブスカイト型の代表的
な化合物であり,圧電性を有するPbBiTi
15(PBT),SrBiTi15(SBT),
Na0.5Bi4.5Ti15(NBT)を,通常
の焼結法にて作製した焼結体の例が示されている(Ja
panese J.Appl.Phys.,Vol1
3,No.10,1572−77(1974))。
【0003】上記結晶配向焼結体は,上記PBT,SB
T,NBTの焼結体であり,焼結体密度のX線密度に対
する比である相対密度はそれぞれ,92.5%,91.
3%,92.8%と低い密度にとどまっている。また,
厚みモードの電気機械結合係数(K)はそれぞれ,
0.072,0.22,0.15であった。また,キュ
リー温度はそれぞれ570,550,670℃と高く,
温度安定性に優れた圧電材料であることが示唆されてい
る。
【0004】(2)Mnを添加した,ビスマス層状ペロ
ブスカイト型化合物であるNa0.5Bi4.5Ti
15(NBT),Na0.475Ca0.05Bi
4.47 Ti15(NCBT)より,以下のごと
く製造した結晶配向焼結体の例が示されている(Sen
sors and Materials,Vol.1,
35−46(1988))。即ち,上記化合物を固相反
応法で合成した後,ホットフォージング法で緻密化する
事により,該層状化合物の層の面(正方晶または擬正方
晶と考えた場合のc面)が加圧軸に垂直に配向した配向
焼結体を通常の焼結法にて作製した。
【0005】上記ホットフォージング法とは,粉末成形
体を通常の焼結温度で加熱しながら一軸加圧する方法を
いう。上記結晶配向焼結体の配向度はいずれも,90%
以上に達している。上記結晶配向焼結体は,通常の固相
反応法と焼結法で作製した同組成の無配向焼結体に比べ
高い密度を示した。
【0006】また,NBT,NCBTの縦効果の電気機
械結合係数,K33は,従来の方法による焼結体でそれ
ぞれ,0.147,0.161であったのに対し,ホッ
トフォージング法で作製した配向焼結体(電界方向は擬
正方晶c面に垂直)ではそれぞれ,0.325,0.3
56と大きく向上した。
【0007】(3)BiTi12の板状粉末を合
成し,これを配向するように成形し,焼結することによ
って,BiTi12の配向焼結体を作製した例が
示されている(窯業協会誌,93巻,485(198
5))。
【0008】(4)板状BiTi12粒子とBi
Ti12微粒子とを板状粒子が微粒子の5〜10
体積%となる割合で混合し,テープ成形で板状粒子を配
向させ,このテープを積層して900〜1100℃で焼
結することにより,配向度が0.95の結晶配向Bi
Ti12焼結体を作成した例が示されている(Pr
oceedings of ISAF‘96,P943
〜946(1996))。
【0009】
【解決しようとする課題】上記の従来技術(1)に示す
ように,Bi層状ペロブスカイト型圧電材料は高いキュ
リー温度を持つ圧電材料であり,(2)に示すようにホ
ットフォージング法にて結晶を配向させると無配向焼結
体よりも高い特性を発現する。しかしながら,図5に示
すごとく,ホットフォージング法では熱間にて加圧治具
21,22を用い,試料9を一軸加圧することにより大
きな変形を生じさせねばならない。そのため,大きな試
料を作製することは困難であり,かつ生産性が低い。
【0010】また,ホットフォージング中の試料9内部
の応力分布は均一でないため,図5(B)に示すごと
く,上記試料9の厚み方向にも径方向にも,大きな配向
度のばらつきが生じる。即ち,上記試料9の表面では高
配向度であるが内部は低配向度であり,径方向の分布は
中心と周辺で低配向度となる。これに加え,上記試料9
周辺部は圧力がかかりにくいため低密度になりやすく,
また,亀裂が生じやすい。
【0011】従って,この方法ではロットゲーリング法
による平均配向度が80%以上,かつ相対密度95%以
上を有する結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型化合
物を製造できない。即ち,ホットフォージング法は,配
向焼結体を得ることは可能であるが,高コストであり,
また,製品の密度と配向度の観点からも歩留まりの高い
プロセスではない。従って,量産には適さない方法であ
る。
【0012】また,(3)(4)は,フラックス中で合
成した板状粉末を用いてこれをドクターブレード法や押
し出し法で配向させ,常圧焼結にて徴密化させて配向焼
結体を得ている。これはチタン酸ビスマス(BiTi
12)のように金属元素を2種類しか含まない単純
な複酸化物の配向焼結体を得るには有利な手法である。
しかし,上記SBT,NBT,NCBTのように金属元
素を3種類以上含む複酸化物を,上記のごとき,フラッ
クス法で得ようとすると元素比がずれやすく,所望の化
学量論比の板状粉末を得ることが困難である。
【0013】本発明は,かかる問題点に鑑み,密度と配
向度の歩留まりが高く,圧電特性が大きく,かつ特性の
再現性に優れた結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型
化合物及びその製造方法を提供しようとするものであ
る。
【0014】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,一般式が(Bi
2+(Am−13m+1 2−で表さ
れ,上記Aは1〜3価の金属元素,一方,Bは2〜6価
の金属元素である結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト
型化合物であって,ロットゲーリング(Lotgeri
ng)法による平均配向度が80%以上であり,かつ,
相対密度95%以上の体積が95%以上を占めているこ
とを特徴とするビスマス層状ペロブスカイト型化合物に
ある。
【0015】上記Aは,例えば,Na,K等のアルカリ
金属,Ca,Sr,Ba等のアルカリ土類金属,Y,L
a,Gd,Nd等の希土類金属,Pb,Cd,Bi等の
重金属から選ばれる1〜3価の金属元素である。また,
Bは,例えば,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Mo,
W,Mg,Zn,Mn,Fe,Co,Ni,Cr等の2
〜6価の遷移金属元素である。
【0016】本発明において最も注目すべき点は,上記
ビスマス層状ペロブスカイト型化合物は,ロットゲーリ
ング法による平均配向度が80%以上であり,かつ,相
対密度95%以上の体積が95%以上を占めている点で
ある。
【0017】上記ビスマス層状ペロブスカイト型化合物
は,平均配向度が80%以上であるため,高い圧電特性
を有する。また,相対密度95%以上の体積が95%以
上を占めているため,歩留まりが高い。
【0018】上記平均配向度が80%未満の場合には,
高い圧電特性を有するビスマス層状ペロブスカイト型化
合物が得られない。また,上記総体密度95%以上の体
積が95%未満の場合には,試料に亀裂等が発生しやす
く歩留まりが低下する。従って,本発明によれば密度と
配向度の歩留まりが高く,圧電特性が大きく,かつ特性
の再現性に優れたビスマス層状ペロブスカイト型化合物
を得ることができる。
【0019】また,上記ビスマス層状ペロブスカイト型
化合物は,0.5cm以上の体積を有していることが
好ましい。これにより,例えば,大型形状の圧電素子を
得ることができる。
【0020】上記ロットゲーリング法につき,以下に説
明する。即ち,ロットゲーリング法により得られた結晶
配向セラミックスの結晶配向度Q(HKL)は,以下の
数1式により定義される。
【0021】
【数1】
【0022】ここに,I(HKL)は結晶配向セラミッ
クスにおける結晶面(HKL)からのX線回折強度であ
る。一方,I(HKL)は,上記結晶配向セラミック
スと同一組成の同一化合物であり,かつ無配向の多結晶
セラミックスにおける結晶面(HKL)からのX線回折
強度である。
【0023】また,Σ´I(HKL)はI(006),
I(008),I(0010)等,擬正方晶表示した場
合の結晶配向セラミックスにおける各結晶配向面からの
X線回折強度の総和である。一方,ΣI(hkl)
は,上記無配向の多結晶セラミックスにおける全ての結
晶面(hkl)からのX線回折強度の総和である。な
お,Q(HKL)の値は無配向の場合に0%,全ての結
晶粒子が配向している場合に100%となるよう規格化
してある。
【0024】一般に上記化学式で表される圧電性のビス
マス層状ペロブスカイト型化合物は,ビスマス層状ペロ
ブスカイトの単位セルがm個連なった層と酸素からなる
層とが交互に重なり合った正方晶構造から僅かにひずん
でいる。上記ビスマス層状ペロブスカイト型化合物は,
これを擬正方晶構造とみなした場合の{001}面が特
有の面内に配向している結晶配向セラミックスを示す。
【0025】本発明のビスマス層状ペロブスカイト型化
合物も上記のごとく,擬正方晶表示におけるその{00
1}面が一方向に配向していることが好ましい。なお,
ここで,一方向に配向している状態には,円柱形状や円
筒形状における半径方向と円周方向を含むものとする。
【0026】圧電性のビスマス層状ペロブスカイト型化
合物は,一般に擬正方{001}面内又は擬正方{00
1}面内から擬正方<001>方向に僅かに向きを変え
た方位に分極軸を有している。上記のような結晶配向し
た圧電性ビスマス層状ペロブスカイト型化合物は,擬正
方<001>方向と垂直な方向に分極を行ない,同じ方
向に電界を印加することにより無配向な同じ組成の圧電
性ビスマス層状ペロブスカイト型化合物よりも優れた圧
電性,特に圧電d33定数,圧電g33定数,電気機械
結合k33係数を示す。
【0027】なお,上記圧電性のビスマス層状ペロブス
カイト型化合物のうち,特に金属元素Bとして,Ti,
Nb,Taのうち少なくとも一種類を含むものであるこ
とが好ましい。
【0028】上記化合物としては,例えば,SrBi
Nb,SrBiTa,BaBiNb
,BaBiTa,PbBiNb
PbBiTa,BaBiTiNbO12
PbBiTi15,SrBiTi15,C
aBiTi15,BaBiTi15,Na
0.5Bi4.5Ti15,K0.5Bi4.5
15,SrBiTi18,BaBi
Ti18,PbBiTi18等が挙げられ
る。この場合には,上記ビスマス層状ペロブスカイト型
化合物は優れた圧電性を示すため,配向した場合の効果
も大きくなる。
【0029】また,本発明のビスマス層状ペロブスカイ
ト型化合物は,配向度が低い焼結体と比較して,ノック
センサー等の加速度センサーに必要な圧電g定数が1.
5〜2倍となる。また,上記ビスマス層状ペロブスカイ
ト型化合物のうちPbを含まないものは,環境面からも
望ましい圧電材料となる。また,非鉛の圧電材料として
は高いキュリー温度を有し,温度特性に優れている。
【0030】次に,上記結晶配向ビスマス層状ペロブス
カイト型化合物の製造方法としては,ホストとなる形状
異方性を有する材料と,ゲストとなるビスマス層状ペロ
ブスカイト型化合物の原料とを混合する第1工程と,こ
の混合粉末を配向させる第2工程と,熱処理によって,
上記ビスマス層状ペロブスカイト型の結晶を上記ホスト
の配向性を継承させながら成長させる第3工程とからな
る製造方法がある。
【0031】即ち,請求項2の発明のように,BiとB
iを除く2〜6価の金属元素Bを1種類含むビスマス層
状ペロブスカイト型化合物の板状粉末と,1〜3価の金
属元素のうち少なくとも1種類の金属元素Aおよび2〜
6価の金属元素のうち少なくとも1種類の金属元素Bを
含む原料とを混合する第1工程と,BiとBiを除く2
〜6価の金属元素Bを1種類含むビスマス層状ペロブス
カイト型化合物の板状粉末を配向させる第2工程と,熱
処理によってBiとBiを除く2種以上の金属元素を含
むビスマス層状ペロブスカイト型化合物(Bi
2+(Am−13m+12−を合成する第3工
程とよりなることを特徴とするビスマス層状ペロブスカ
イト型化合物の製造方法がある。
【0032】そして,この方法によって作製された結晶
配向セラミックスは,擬正方晶表示におけるその{00
1}面が一方向に配向しており,その平均配向度が,ロ
ットゲーリング法で80%以上であり,かつ,配向度が
80%以上で相対密度95%以上の体積が95%以上を
占める。また,このものは,高配向度の試料がわずかし
か得られないホットフォージング法で焼結した焼結体と
異なり,0.5cm以上の体積を有している焼結体で
ある。そして,本製造方法によれば,かかる焼結体を容
易に得ることができる。
【0033】上記の第1工程で用いられるBiとBiを
除く2〜6価の金属元素Bを1種類含むビスマス層状ペ
ロブスカイト型化合物の板状粉末は,通常はフラックス
法等で合成したチタン酸ビスマス(BiTi
12)や,ニオブ酸ビスマス(BiNb
15)を用いる。
【0034】また,BiVO5.5,BiWO
どの利用も可能である。これらの板状粉末の形状異方性
の程度は大きいほど良く,長手方向の寸法を幅または厚
みで割った,いわゆるアスペクト比が5以上,好ましく
は10以上でである事が望ましい。これは,押し出しや
ドクターブレード,圧延などの成形法で配向しやすくす
るためである。
【0035】また,長手方向の大きさが少なくとも0.
5μm以上あることが好ましい。更に望ましくは,5μ
m以上であることにより,更に良好な結果が得られる。
これも,押し出しやドクターブレード,圧延などの成形
法で剪断力が働く方向に配向しやすくするためである。
【0036】このような粉末は,結晶異方性を有する物
質を液相または気相中で合成する事によって容易に得ら
れる。特にアスペクト比の大きな粉末を得る方法は,高
温の融液中で合成するフラックス法,水熱法,または,
過飽和溶液中で析出させる方法である。
【0037】第2工程において配向を容易にするために
は,板状粉末の形状異方性の程度は大きいほど好まし
く,形状の長手方向の寸法を厚みで割った値,いわゆる
アスペクト比が5以上ある事が望ましい。なお,配向を
更に容易にするためには,上記アスペクト比は10以上
である事が更に望ましい。この板状粉末と反応して,目
的とする組成の圧電性層状ペロブスカイト型化合物(B
2+(Am−13m+12−が生成
する化学量論比で,1〜3価の金属元素のうち少なくと
も1種類の金属元素Aおよび2〜6価の金属元素のうち
少なくとも1種類の金属元素Bを含む原料とを混合す
る。
【0038】これら板状粉末と反応する原料は,単純酸
化物の他,複酸化物,水酸化物,炭酸塩,硝酸塩,硫酸
塩,有機酸塩,アルコキシドなど熱分解によって酸化物
となり得る原料であれば何れであっても良い。また,こ
れらは固体や液体として用いても,水や有機溶媒に溶解
または懸濁している状態で使用しても良く,これらの液
体中で錯体を作製して使用しても良い。
【0039】また,気相の原料を用いて板状粉末の表面
に付着させても良い。例えば,目的とするビスマス層状
ペロブスカイト型化合物がCaBiTi15であ
る場合,チタン酸ビスマス板状粉末(BiTi
12)1モルに対し,元素Aを含む原料である炭酸カル
シウム(CaCO)と元素Bを含む原料である酸化チ
タン(TiO)を各1モルずつ混合する。或いは,チ
タン酸カルシウム(CaTiO)のように元素Aと元
素Bの両方を含む複合酸化物を用いても良い。
【0040】或いは,チタン酸ビスマス板状粉末(Bi
Ti12)1モルに対し,元素Aを含む原料であ
る炭酸カルシウム(CaCO)2モルと酸化ビスマス
(Bi)2モルと元素Bを含む原料である酸化チ
タン(TiO)5モル混合するように,板状粉末を除
く原料として3種類以上の原料を用いても良い。或い
は,チタン酸カルシウム(CaTiO)のように元素
Aと元素Bの両方を含む複合酸化物を原料として用いて
も良い。
【0041】また例えば,目的とするのがSrBi
の場合,二オブ酸ビスマス板状粉末(Bi
15)0.4モルに対して,炭酸ストロンチウム
(SrCO)1モルと酸化ニオブ(Nb)0.
4モルを混合する。
【0042】或いはBaBiTiNbO12のよう
にTiとNbの2種類を含むような場合には,2種類の
板状粉末(チタン酸ビスマスとニオブ酸ビスマス)を用
いても良く,一般に2種以上の板状粉末を用いる事が可
能である。また,第一工程で用いる板状粉末の量は,一
般に目的とするビスマス層状ペロブスカイト型化合物中
のBサイト元素の少なくとも5%が板状粉末中のBサイ
ト元素として供給されるのが望ましい。
【0043】混合は乾式で行っても良いが,望ましくは
水または有機溶媒中でボールミルや攪拌機によって行
う。必要に応じて分散剤を添加しても良い。この際,成
形工程で必要な結合材や可塑剤をも同時に混合したり,
混合の途中で添加するのが一般的であるが,湿式法で混
合した後,スラリーを乾燥させ,しかる後に再び結合材
や可塑剤を添加する事もある。
【0044】次に第2工程では,BiとBiを除く2〜
6価の金属元素Bを1種類含むビスマス層状ペロブスカ
イド型化合物の板状粉末を配向させる。この際,第1工
程による混合粉末,あるいは結合材や可塑剤を含んだ混
合粉末を,湿式または乾式の一軸加圧,押し出し成形,
ドクターブレード等を用いたテープ成形,圧延,遠心成
形,などから選ばれ,このうち一つ又は複数の組み合わ
せにより,板状粉末の面方向が配向した成形体を得る事
ができる。
【0045】このうち,最も好ましいのは,押し出し成
形,テープ成形,圧延,およびこれらの2種以上を組み
合わせた成形方法である。これらの方法でほぼ均一に近
い剪断応力が板状粉末に加わる事により,板状粉末の面
積の広い面,即ち擬正方晶表示{001}面をほぼ均一
な配向度で配向させる事ができる。
【0046】例えば,ドクターブレードや押し出し成形
などの配向成形プロセスにさらに積層圧着や圧延を組み
合わせる事によって,板状粉末を高配向度で配向させる
事も困難ではない。水または有機溶媒を含む成形体は通
常,成形途中又は成形後に,水または有機溶媒の乾燥を
行う。
【0047】次に第3工程では,熱処理によって成形体
中でBiとBiを除く2種以上の金属元素を含む圧電性
層状ペロブスカイト型化合物(Bi2+(A
m−13m+12−を合成する事ができる。こ
の工程の前に,通常,成形体中の有機成分を燃焼除去す
る脱脂処理を行う。脱脂処理の後に静水圧加圧処理を行
い,成形体の密度を高める処理を行う事が望ましい。
【0048】脱脂の条件と,目的とする化合物の種類に
よって脱脂処理の際に合成反応の一部または総てが終了
する事もある。圧電性層状ペロブスカイト型化合物(B
2+(Am−13m+12−の合成
処理は通常大気中など酸素を含む雰囲気,望ましくは酸
素雰囲気にて行う。
【0049】上記圧電性層状ペロブスカイト型化合物の
合成は通常1000℃までの温度で完了するが,さらに
緻密な焼結体とするため,これを越える温度までの熱処
理を行う。その温度は化合物の種類によって熱分解が始
まる温度が異なるため異なる。例えば,SrBiTi
15,或いはCaBiTi15であれば11
00℃〜1250℃の温度で常圧焼結処理を行うか,1
000℃〜1200℃の温度で加圧焼結処理を行うと良
い。SrBiTi15,或いはCaBiTi
15を,1250℃を超える温度に加熱すると,試料
の一部が溶融するおそれがある。
【0050】ただし,ここで加圧は配向のために行うの
ではなく,緻密化を助けるために行うのであるから,い
わゆるホットフォージング処理のように高い圧力を加え
る必要はなく,試料に重りを乗せて焼結する程度,即ち
0.1MPa程度までの加圧で十分効果がある。ホット
フォージング処理のように10MPaを超えるような圧
力での加圧は焼結体中の配向度のばらつきを大きくし,
均一な特性を有する製品を作製する事ができない。
【0051】この熱処理工程中に,原料として用いた板
状粉末の面積の広い面,即ち擬正方晶表示{001}面
と合成後のBiとBiを除く2種以上の金属元素を含む
圧電性層状ペロブスカイト型化合物(Bi2+
(Am−13m+1 2−の擬正方晶表示{00
1}面が平行になるように合成反応が生じる。加熱手段
は,電気炉,ガス炉,イメージ炉など各種の炉が使用で
きるが,マイクロ波やミリ波等を用いて,板状粉末を優
先的に加熱する手法は有力な加熱手法の一つである。
【0052】なお,本手法を用いれば,圧電材料以外の
ビスマス層状ペロブスカイト型化合物も容易に配向させ
ることができる。例えば,高温超伝導材料として知られ
るBiとCuとこの他の金属元素を含むビスマス層状ペ
ロブスカイト型化合物の配向焼結体を作製することがで
きる。この場合は,銅とビスマスを含む層状酸化物の板
状粉末を使用する。
【0053】
【発明の実施の形態】実施形態例 本発明の実施形態例にかかるビスマス層状ペロブスカイ
ト型化合物からなる結晶配向セラミックスにつき,表
1,及び図1〜図4を用いて説明する。本例にかかる結
晶配向セラミックスは,BiとBiを除く2種以上の金
属元素を含む圧電性ビスマス層状ペロブスカイト型化合
物である。そして,一般式が(Bi2+(A
m−13m+12−で表される。
【0054】上記Aは1〜3価の金属元素のうち一種以
上であってBi以外の少なくとも一種の1〜3価の金属
元素を含んでいる。一方,上記Bは2〜6価の金属元素
のうち1種以上である。そして,上記結晶配向セラミッ
クスは,擬正方晶表示におけるその{001}面が一方
向に配向しており,平均配向度がロットゲーリング法で
80%以上であり,かつ,配向度が80%以上で相対密
度95%以上の体積が95%以上を占めている。なお,
X線回折パターンの図におけるミラー指数はJCPDS
カードと同じく,正斜晶表示で表してあるが,{00
L}面が擬正方晶表示のC面にあたる。更に,上記結晶
配向セラミックスの体積は,0.5cm以上である。
【0055】次に,本例にかかる結晶配向セラミックス
の製造方法につき説明する。上記製造方法においては,
板状粉末の種類,板状粉末以外の原料,板状粉末の添加
量(Bサイト原子のモル分率として表記),焼結条件を
表1に記した。板状粉末はいずれもフラックス法にて合
成した。
【0056】
【表1】
【0057】表1に示す比率の原料を有機溶媒中でボー
ルミル混合し,結合剤と可塑剤を加えてさらに混合した
後,ドクターブレード法によりテープ成形を行った。次
いで,乾燥した上記テープを積層し,圧着した後,圧延
処理をした。圧延後の試料をさらに重ねて圧着し,約1
cm角の立方体に近い形状の試料2個を作製した。この
試料を大気中700℃×2hで熱処理後,約300MP
aの圧力で静水圧成形処理を行った。
【0058】この試料を酸素中で表1に示した条件で熱
処理を行い焼結させた。この焼結体を,元のテープ成形
体のテープ面と平行な方向にダイヤモンド刃で切断し,
一つの試料から5枚の板状焼結体を得た。この焼結体の
相対密度をアルキメデス法で測定すると共に,X線回折
法にて結晶相を調べた。その結果,総ての試料で目的と
した圧電性ビスマス層状ペロブスカイト型化合物が得ら
れており,総ての試料でその相対密度は95%以上であ
る事がわかった。
【0059】一方,板状焼結体の広い面の擬正方晶{0
01}面の配向度をロットゲーリング法で評価した。平
均配向度はいずれのロットも85%以上であり,かつ,
総ての試料で配向度は80%以上であった。この結果,
歩留まり(配向度が80%以上でありかつ相対密度95
%以上の試料)は総ての試料で10/10であった。表
1中のNo.1とNo.5の試料における,テープ面に
平行な上記焼結体の切断面の代表的なX線回折パターン
をそれぞれ図1及び図2に示す。
【0060】図1,図2より,いずれの試料も正斜晶
{00L}面に由来する回折ピークが著しく高く,これ
は,擬正方晶{001}面に由来する回折ピークが著し
く高い事を示す。参考までに,同じ試料のテープ面に垂
直に切断した焼結体切断面のX線回折パターンをそれぞ
れ図3及び図4に示す。こちらは逆に,擬正方{00
1}面からの回折ピークが小さくなっている。
【0061】なお,試料No.1(Na0.5Bi
4.5Ti15)の焼結体のテープ面に垂直な切断
面を研摩し,銀電極を焼き付けて分極処理を行なった
後,d33定数を測定したところ,36.2pC/N
(ピコクーロン/ニュートン)であった。一方,従来の
方法で作製した,配向の殆どない焼結体のd33定数は
17.3pC/Nであり,本製造方法による配向化で圧
電特性が2倍以上に向上したことが分かった。
【0062】
【発明の効果】上記のごとく,本発明によれば,密度と
配向度の歩留まりが高く,圧電特性が大きく,かつ特性
の再現性に優れた結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト
型化合物及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例における,No.1試料の結晶配向
セラミックスの焼結体におけるテープ面に平行な切断面
のX線回折パターンを表す線図。
【図2】実施形態例における,No.5試料の結晶配向
セラミックスの焼結体におけるテープ面に平行な切断面
のX線回折パターンを表す線図。
【図3】実施形態例における,No.1試料の結晶配向
セラミックスの焼結体におけるテープ面に垂直な切断面
のX線回折パターンを表す線図。
【図4】実施形態例における,No.5試料の結晶配向
セラミックスの焼結体におけるテープ面に垂直な切断面
のX線回折パターンを表す線図。
【図5】従来例における,ホットフォージング法により
結晶配向焼結体を作製する際の,(A)試料を一軸加圧
する前の状態,及び(B)一軸加圧した状態を示す説明
図。
【符号の説明】
21,22...加圧治具, 9...試料,
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斎藤 康善 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 Fターム(参考) 4G030 AA01 AA03 AA04 AA05 AA07 AA08 AA09 AA10 AA12 AA13 AA16 AA17 AA19 AA20 AA21 AA22 AA23 AA24 AA25 AA27 AA28 AA29 AA32 AA33 AA43 BA10 CA02 CA03 GA09 GA18 GA25 4G047 AA01 AB01 AC01 AD04 CA01 CA06 CA07 CA08 CB04 CC02 CD04 CD08 KA17 4G048 AA03 AA04 AA05 AB01 AC01 AD04 AD08 AE05 4G077 AA02 AA07 BC21 BC27 HA11

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式が(Bi2+(Am−1
    3m+1 で表され,上記Aは1〜3価の金
    属元素,一方,Bは2〜6価の金属元素である結晶配向
    ビスマス層状ペロブスカイト型化合物であって,ロット
    ゲーリング(Lotgering)法による平均配向度
    が80%以上であり,かつ,相対密度95%以上の体積
    が95%以上を占めていることを特徴とするビスマス層
    状ペロブスカイト型化合物。
  2. 【請求項2】 BiとBiを除く2〜6価の金属元素B
    を1種類含むビスマス層状ペロブスカイト型化合物の板
    状粉末と,1〜3価の金属元素のうち少なくとも1種類
    の金属元素Aおよび2〜6価の金属元素のうち少なくと
    も1種類の金属元素Bを含む原料とを混合する第1工程
    と,BiとBiを除く2〜6価の金属元素Bを1種類含
    むビスマス層状ペロブスカイト型化合物の板状粉末を配
    向させる第2工程と,熱処理によってBiとBiを除く
    2種以上の金属元素を含むビスマス層状ペロブスカイト
    型化合物(Bi2+(Am−1
    3m+12−を合成する第3工程とよりなること
    を特徴とするビスマス層状ペロブスカイト型化合物の製
    造方法。
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