JP2000017363A - すべり軸受用アルミニウム合金及びすべり軸受 - Google Patents
すべり軸受用アルミニウム合金及びすべり軸受Info
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Abstract
用アルミニウム合金は最近の高負荷内燃機関に使用する
と疲労を起こすおそれがあるので、耐疲労性が優れたア
ルミニウム軸受合金を提供することを目的とする。 【解決手段】(a)合金組成−Sn:1〜15%,S
i:1〜8%,Cr:0.05〜0.3%,Zr:0.
05〜0.3%を含有し、残部Al及び不可避的不純物
からなる。 (b)組織−Al−Cr金属間化合物が主としてアルミ
ニウムの結晶粒界に析出し、Al−Zr金属間化合物が
主としてアルミニウム結晶粒内の亜粒界に析出する。 (c)調質状態:圧延後に300〜400℃の低温焼鈍
(T1 )と400〜480℃の高温焼鈍(T2 )を行っ
た焼鈍調質状態(但し、T2 −T1 ≧10℃)
Description
ミニウム合金に関するものであり、さらに詳しく述べる
ならば、高面圧下での耐疲労性を著しく高めたすべり軸
受用アルミニウム合金、ならびにすべり軸受に関するも
のである。
用合金の二大材料である。アルミニウム合金の代表的添
加成分は潤滑性を付与するSnなど,耐摩耗性を付与す
るSiなど,なじみ性を付与するPbなどである。この
ような組成のアルミニウム合金を改良するための種々の
提案がなされているが、本出願人の提案であって実機に
使用されているものとしては、ドイツ特許DE 32 49 133
C2号で提案されたものがある。このすべり軸受用アルミ
ニウム合金は、Si,Feなどの硬質成分を平均粒径が
5〜7μmの粗大粒子として析出させた組織を特徴とし
ている。この粗大硬質粒子は相手軸の球状黒鉛鋳鉄を削
り、軸面をなじみ面とすることにより軸受性能を向上し
たものである。同様の本出願人の提案として米国特許第
4153756号のものがある。この特許で提案された
Al−Sn系すべり軸受は微量のCrを添加することに
よりSn粒子の粗大化を阻止し、耐疲労性を高めたもの
である。
程度添加したアルミニウム合金は析出硬化型合金とな
り、その熱処理としては、一般的には、溶体化処理後に
室温時効(T4 )もしくは150℃程度での人工時効
(T6 )を行う方法が行われている。
高負荷となっており、例えば2000ccの排気量で2
50馬力の出力も珍しくなくなっている。このために、
従来のすべり軸受用アルミニウム合金は疲労によりトラ
ブルを招くおそれが抱かれている。さらに、潤滑油の温
度が170〜180℃程度の高温でかつ40MPa以上
の高面圧ですべり軸受が作動されるので、すべり軸受用
アルミニウム合金はこのような使用条件では疲労が加速
されることになる。このような疲労は、破壊学の面から
は滑り軸受表面に微細亀裂が発生する;かなり広い面が
削り取られるように剥離するなどの現象となり;材料学
の面からは、170〜180℃ではアルミニウム合金が
過時効状態となり強度の低下が起こり、またAl結晶が
粗大化するなどの現象となる。この結果軸受が焼付を起
こす。
下で疲労により焼付いた場合、その金属組織を観察する
と、Sn相の粗大化はかなり阻止されているが、過時効
現象、Al結晶粒界の破断,Al結晶粒の粗大化や結晶
粒内の破断が起こっていることが観察された。
は、高負荷の内燃機関に使用しても疲労を起こし難い耐
疲労性が優れたアルミニウム軸受合金及びすべり軸受を
提供することを目的とする。
用アルミニウム合金は、Sn:1〜15重量%,Si:
1〜8重量%,Cr:0.05〜0.3重量%,Zr:
0.05〜0.3重量%を含有し、残部Al及び不可避
的不純物からなり、Al−Cr金属間化合物が主として
アルミニウムの結晶粒界に析出し、Al−Zr金属間化
合物が主としてアルミニウム結晶粒内の亜粒界に析出し
ていることを特徴とするものである。さらに、本発明に
係るすべり軸受用アルミニウム合金は、Sn:1〜15
重量%,Si:1〜8重量%,Cr:0.05〜0.3
重量%,Zr:0.05〜0.3重量%を含有し、残部
Al及び不可避的不純物からなり、圧延後に300〜4
00℃の低温焼鈍と400〜480℃の高温焼鈍−但
し、低温焼鈍と高温焼鈍の温度差10℃以上−を行って
焼鈍調質状態としたことを特徴とするものである。ま
た、本発明に係るすべり軸受は、上記したすべり軸受用
アルミニウム合金を軸受形状に成形してなるライニング
と、このライニングに被着されたMoS2 と樹脂のコー
ティングを含んでなることを特徴とするものである。以
下、本発明の滑り軸受合金の組成を先ず説明する。
(以下百分率は特に断らない限り重量%を意味するもの
とする)未満であると、軸受使用初期の凝着摩耗が多く
なり、一方15%を超えると合金の強度が低下すること
によるアブレーシブな摩耗が多くなる。またSn量が1
〜15%の範囲内に入らないと所期の耐疲労性向上を図
ることはできない。好ましいSn含有量は2〜10%で
あり、より好ましいSn含有量は2〜6%である。
向上する成分である。Siが1%未満であると耐摩耗性
が不足し、一方8%を超えると加工性が低下する。
して耐疲労性を高める。このような効果を実現するため
にはCrは0.05%以上が必要であり、一方0.3%
を超えると、合金が硬くなりすぎて加工性が低下し、又
粗大折出物が発生する。好ましいCr量は0.05〜
0.25%であり、より好ましいCr量は0.1〜0.
2%である。
−Zr金属間化合物として析出してピンニング効果によ
りもたらす。この効果を実現するためにはZrは0.0
5%以上が必要であり、一方0.3%を超えると合金が
硬くなりすぎて加工性が低下し、又粗大折出物が発生す
る。好ましいZr量は0.05〜0.2%であり、より
好ましいZr量は0.1〜0.2%である。
化元素であるCu及びMgの少なくとも1種を3%以下
添加することができる。同様に、軟質成分でありなじみ
性を付与するPb及びBiの少なくとも1種を9%以下
さらに添加することができる。
ニウム合金を説明する。通常の鋳造法によると、アルミ
ニウム合金に添加されたCrは、圧延と焼鈍を経るとA
l7 CrなどのAl−Cr金属間化合物として析出す
る。すなわち、圧延による加工硬化を取り除く軟化焼鈍
においてAl−Cr金属間化合物がAlマトリックスか
ら転位の近傍に析出する。その後の再圧延では、この金
属間化合物は転位をピンニングし、一方Al結晶はさら
に変形され圧延方向に伸びる。さらに最終の軟化焼鈍を
で行うと、この温度で形成される再結晶粒の粒界に金属
間化合物のほとんどが存在している。このように結晶粒
の粒界の析出したAl−Cr金属間化合物は結晶粒をピ
ンニングし結晶粒の粗大化による疲労破壊を防止する。
Zr−Al金属間化合物は析出する場所がAl結晶粒界
ではなくAl結晶粒内の亜粒界であることと、析出温度
が高いことに特長がある。すなわち、亜粒界にAl3 Z
rなどの金属間化合物が析出して、亜粒界をピンニング
することにより疲労を阻止する。この作用がないと耐疲
労性が劣化するのは、すべり軸受の使用中に亜粒界で境
界を接する亜結晶粒間で剪断歪みが発生することに起因
する新たな結晶粒が疲労の起点となるなどの理由が考え
られる。なお、結晶粒界はアルミニウム合金で通常行わ
れる光学顕微鏡による観察で検出でき、一方亜粒界は透
過電子顕微鏡による観察で検出できる。
軸受用アルミニウム合金を説明する。本発明と同一組成
のアルミニウム合金のT4 もしくはT6 調質状態の引張
り強さは約300MPaであるが、本発明のアルミニウ
ム合金の強度は、この半分以下になっている。このよう
な強度特性に相当する調質状態は、加工歪みが除去され
さらに過時効域に突入した状態である。この状態を本発
明では焼鈍調質と称する。具体的には圧延後に300〜
400℃、好ましくは320〜380℃の低温焼鈍と4
00〜480℃、好ましくは420〜480℃の高温焼
鈍(但し、低温と高温焼鈍の温度差10℃以上)を行っ
た状態である。この低温焼鈍はAl−Cr金属間化合物
を析出させ、一方高温焼鈍はAl−Zr金属間化合物を
析出させる。この条件から逸脱すると、Al−Cr金属
間化合物は高温焼鈍では粗大化し、また一部は固溶し、
一方Al−Zr金属間化合物は低温焼鈍では析出が少な
い。このために、高温と低温の別々の焼鈍を行う必要が
ある。また、上述の理由から低温焼鈍を先に行い、高温
焼鈍を後に行うことが好ましい。この順序を逆にして
も、高温焼鈍で一部固溶したAl−Cr金属間化合物が
析出するが、析出量は少なくなる。低温焼鈍は30分〜
5時間の範囲内で、高温焼鈍は30分〜5時間の範囲内
で行うことが好ましい。
ウム合金は再結晶組織となっており、内燃機関に使用さ
れるアルミニウム合金はこの組織状態である。軸受の使
用温度である170〜180℃程度の温度で高負荷が加
えられたアルミニウム合金は、さらに再結晶することは
ないが、荷重により移動する転位が疲労のきっかけを作
り出し、また荷重による結晶粒界や亜結晶粒界のずれが
疲労のきっかけを作り出す。本発明が特徴とする焼鈍は
170〜180℃より遥かに高温で行われるから、析出
するAl−Cr及びAl−Zr金属間化合物は軸受の使
用温度で安定であり、上記の転位及び結晶粒界をピンニ
ングすることにより疲労の進展を抑えることができる。
このような理由により、合金自体が著しく軟化するため
に強度の面では不利であるが、Al−Cr金属間化合物
とAl−Zr金属間化合物の析出形態を制御する焼鈍調
質状態が高面圧下での耐疲労性の面では重要になる。
ニウム合金の製造方法を説明する。所定の組成をもつ合
金のインゴットを鋳造もしくは連続鋳造により製造した
後、圧延と本発明の特長とする焼鈍を少なくとも1回行
う加工工程によりライニングの厚さとする。熱処理とし
ては上記加工工程の中で低温焼鈍によりAl−Cr金属
間化合物を析出する熱処理を行い、その後圧延を介して
または介さずに高温焼鈍によりAl−Zr金属間化合物
を析出させる熱処理を行う。上記以外の熱処理、加工な
どは任意に追加して行うことができる。例えば、Mg2
Si,Al−Cuなどの金属間化合物は焼鈍温度では固
溶するために、これらの析出強化を利用する場合には、
上記熱処理の後に通常のT6 処理に相当する時効を行う
か、あるいは室温時効を行うことができる。この場合で
もAl−Cr,Al−Zr金属間化合物の析出場所は上
記したところと変わらない。またCr,Zr,Mg,C
uなどを固溶させるための熱処理として溶体化処理を行
うことができる。加工歪みを除去するための目的で低温
焼鈍を行うこともできる。
ニウム合金は、通常の構造のすべり軸受として使用する
ことができる。この中には、アルミニウム軸受合金(い
わゆるライニング)を鋼板などの裏金に圧着したバイメ
タル軸受や裏金に接着しないソリッド軸受が含まれる。
さらに、裏金とライニングの間に、強化層としての純ア
ルミニウム、Al−Cu、MgもしくはMn系アルミニ
ウム合金などの中間層を介在させた3層構造の軸受構造
も可能である。相手軸と接触するアルミニウム合金は、
その表面に固体潤滑剤であるMoS2と樹脂のコーティ
ングを好ましくは2〜10μmに被着することにより、
MoS2 の働きによって軸受使用初期の焼付を防止する
ことができる。樹脂としてはポリイミド、ポリアミドイ
ミド樹脂などを好ましく使用することができる。また、
コーティング中のMoS2 の量は60〜90%であるこ
とが好ましい。上記のコーティングがある程度摩滅する
とアルミニウム合金が軸と接触する状態となって、軸受
合金本来の性能によって焼付、摩耗などが防止される。
したがって、Snのもつ機能はある程度MoS2 により
代替されているので、アルミニウム合金中のSn量は1
〜8%であることが好ましい。MoS2 と組合わせてあ
るいはMoS2 とは別にグラファイトなどの固体潤滑剤
を使用することができる。以下、実施例により本発明を
説明する。
の連続鋳造板とした。その後以下の順序で加工と熱処理
を行った。本発明処理条件 (a)圧延(常温,板厚=6mm) (b)軟化焼鈍(350℃) (c)圧延(常温℃,板厚=1mm) (c)軟化焼鈍(温度は表1に示すとおり)比較例処理条件 (a)圧延(常温℃,板厚=6mm) (b)軟化焼鈍(350℃) (c)圧延(常温℃,板厚=1mm) (c)軟化焼鈍(350℃)
及び175℃で引張り試験を行った。
時効したのでAl7 CrはAl結晶粒の亜粒界に析出し
たが、Al−Zr金属間化合物は析出していない合金で
ある。このため引張り強さは低い。比較例4、6はZr
とCrの添加した合金であるので、比較例3、5よりも
特性が優れているが、低温時効のみを行っているので、
引張り強さが低い。
内(亜)粒界、Al7 Cr及びAl3 Zrに着目したス
ケッチ図である。図示したように、Al7 Cr及びAl
3 ZrはAl結晶のそれぞれ結晶粒界と亜粒界に析出し
ている。
工及び熱処理を施した。この圧延の途中でアルミニウム
合金を裏金(厚さ1.2mmのSPCC鋼板に圧着し
た。
許の実施例(公報第11頁、第2表)と同様に加工及び
熱処理を施して、比較例の供試材とし、実施例1と同様
に裏金鋼板に圧着した。
加工し下記条件で疲労試験を行った。疲労試験条件 (イ)試験機:回転荷重試験機 (ロ)回転数:8000rpm (ハ)試験温度(軸受背面温度):160〜183℃ (ニ)面圧:29MPa (ホ)相手材:S55C 高周波焼入れ (ヘ)潤滑油:5w−30SH 試験の結果をNo.7とNo.12については図2に、
No.8とNo12については図3に示す。これらの図
より本発明の供試材は軸受背面で約15℃、繰り返し数
で約50倍従来の供試材よりも耐疲労性が優れているこ
とが分かる。上記以外の供試材についても同様の傾向が
得られた。
うち一部につき、実施例2の疲労試験条件を一部修正し
た下記条件で試験を行った。疲労試験条件 (イ)試験機:往復動荷重試験機 (ロ)回転数:2000〜3000rpm (ハ)試験温度(軸受背面温度):160℃ (ニ)面圧:60強MPa〜90強MPa (ホ)相手材:S55C 高周波焼入れ (ヘ)潤滑油:CD10w−30 試験の結果を図4に示す。なお図4より本発明の供試材
(◆)は、繰り返し数で約50倍、面圧で30MPa弱
従来の供試材よりも耐疲労性が優れていることが分か
る。
ニウム合金の表面を粒面化した。粒面化の方法、りん酸
化合物もしくはクロム酸化合物添加酸液での酸洗、ある
いは機械的方法(ショットブラスト)であった。次にM
oS2 粒子(平均粒径0.5μm)70重量%及びポリ
アミドイミド樹脂30重量%からなる混合物を塗布し、
その後220℃で焼成して厚さが5μmのコーティング
を形成した。その後実施例3の試験条件で試験を行った
ところ、本発明供試材の疲労特性は●で示すとおりとな
り、コーティングの効果が認められた。
御あるいは調質状態の設定により、後面圧下でのAl−
Sn−Si系すべり軸受合金の耐疲労性を著しく高める
ことができる。また、これにMoS2 系皮膜を施すとさ
らに良好な性能が得られ、またSn量を少なくすること
ができる。
の顕微鏡組織のスケッチである。
(比較例)について疲労特性を示すグラフである。なお
ドットで示す幅は95%の信頼性を示す。
(比較例)について図2と同様である。
結果を示すグラフである。
Claims (7)
- 【請求項1】 Sn:1〜15重量%,Si:1〜8重
量%,Cr:0.05〜0.3重量%,Zr:0.05
〜0.3重量%を含有し、残部Al及び不可避的不純物
からなり、Al−Cr金属間化合物が主としてアルミニ
ウムの結晶粒界に析出し、Al−Zr金属間化合物が主
としてアルミニウム結晶粒内の亜粒界に析出しており、
高面圧下で耐疲労性が優れていることを特徴とするすべ
り軸受用アルミニウム合金。 - 【請求項2】 Sn:1〜15重量%,Si:1〜8重
量%,Cr:0.05〜0.3重量%,Zr:0.05
〜0.3重量%を含有し、残部Al及び不可避的不純物
からなり、圧延後に300〜400℃の低温焼鈍と40
0〜480℃の高温焼鈍−但し低温焼鈍と高温焼鈍の温
度差10℃以上−を行って焼鈍調質状態とし、高面圧下
で耐疲労性が優れていることを特徴とするすべり軸受用
アルミニウム合金。 - 【請求項3】 低温焼鈍の後に高温焼鈍を行う請求項2
記載のすべり軸受用アルミニウム合金。 - 【請求項4】 Cu及びMgの少なとも1種を3重量%
以下さらに含有することを特徴とする請求項1から3ま
での何れか1項記載のすべり軸受用アルミニウム合金。 - 【請求項5】 Pb及びBiの少なとも1種を9重量%
以下さらに含有することを特徴とする請求項1から4ま
での何れか1項記載のすべり軸受用アルミニウム合金。 - 【請求項6】 請求項1から5までの何れか1項記載の
すべり軸受用アルミニウム合金を軸受形状に成形してな
るライニングと、このライニングに被着されたMoS2
と樹脂のコーティングと、を含んでなるすべり軸受。 - 【請求項7】 前記すべり軸受用アルミニウム合金のS
n量が8重量%以下である請求項6記載のすべり軸受。
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JP19168598A JP3868630B2 (ja) | 1998-07-07 | 1998-07-07 | すべり軸受用アルミニウム合金及びすべり軸受 |
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- 1998-07-07 JP JP19168598A patent/JP3868630B2/ja not_active Expired - Lifetime
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