JP2015178654A - すべり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】裏金とAl基中間層とAl基軸受合金層とを備えたすべり軸受けにおいて、疲労によるクラックを抑制できる技術の提供。【解決手段】3〜12.5wt%のSnと、1〜8wt%のSiと、0.05〜3wt%のCrと、0.05〜0.3wt%のZrと、0.01〜0.5wt%のTiと、3wt%以下のCuまたはMgと、0〜9wt%のBiと、を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなるライニングと、裏金と、Zn,Cu,Mg,Li,Mn,V,Zr,Fe,Mo,Co,Ni,Hf,Sc,Ti,Wのなかから少なくとも1種類選択された固溶成分を0.01wt%以上含有しているAl合金によって、厚さが20μm以上であり、ビッカース硬さが30以上かつ80以下となるように前記裏金と前記ライニングとの間に形成された中間層と、を備えるすべり軸受。【選択図】図1

Description

本発明は、すべり軸受に関する。
特許文献1において、裏金とAl基中間層とAl基軸受合金層とを備えたすべり軸受が記載されている。特許文献1において、Al基軸受合金層において金属間化合物を析出させることにより、すべり軸受の疲労強度を向上させている。特許文献1において、硬いAl基中間層が形成されるが、当該Al基中間層の厚さが10〜20μmであれば、Al基中間層のクッション性によって、なじみ性を良好にできることが記載されている(特許文献1、表2,段落0043、参照)。
特開2010−242854号公報
引用文献1においては、Al基軸受合金層において金属間化合物を形成する成分が、Al基中間層においてもAl基軸受合金層と同程度(50〜150%)含まれるため(特許文献1、請求項6、参照。)、Al基中間層においても金属間化合物が形成される。この金属間化合物は、マトリクスとの親和性が悪いとともに、靱性が低い硬質相を構成する。そのため、Al基軸受合金層とAl基中間層との双方において、金属間化合物やその界面を起点として疲労によるクラックが形成されやすくなるという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、疲労によるクラックを抑制できるすべり軸受を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明のすべり軸受は、ライニングと裏金と中間層とを備える。ライニングは、3wt%以上かつ12.5wt%以下のSnと、1wt%以上かつ8wt%以下のSiと、0.05wt%以上かつ3wt%以下のCrと、0.05wt%以上かつ0.3wt%以下のZrと、0.01wt%以上かつ0.5wt%以下のTiと、3wt%以下のCuまたはMgと、0wt%以上かつ9wt%以下のBiと、を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなるとともに、Crのうちの10wt%以上かつ90wt%以下がAlと金属間化合物を形成し、Crのうちの残部がAlと固溶体を形成している。Crのうち10wt%以上かつ90wt%以下がAlと硬質の金属間化合物を形成することにより、ライニングの硬度を大きくすることができ、耐疲労性を向上させることができる。さらに、Crのうち金属間化合物を形成しなかった残部がAlと固溶体を形成することにより、マトリクスを強化することができ、耐疲労性を向上させることができる。
中間層は、Zn,Cu,Mg,Li,Mn,V,Zr,Fe,Mo,Co,Ni,Hf,Sc,Ti,Wのなかから少なくとも1種類選択された固溶成分を0.01wt%以上含有し、固溶成分の全量がAlと固溶体を形成しているAl合金によって、厚さが20μm以上であり、ビッカース硬さが30以上かつ80以下となるように裏金とライニングとの間に形成されている。固溶成分がAlと固溶体を形成することにより、マトリクスを強化することができ、耐疲労性を向上させることができる。さらに、固溶成分の全量がAlと固溶体を形成するため、固溶成分とAlとの金属間化合物が形成されることはなく、金属間化合物やその界面が疲労時にクラックの起点や通過点となることを防止できる。すなわち、ライニングにおいて発生したクラックが中間層を伝播することを防止できる。また、中間層のビッカース硬さを80以下に抑制することにより、中間層の延性や靱性を確保することができるため、ライニングにおいて発生したクラックが中間層を伝播することを防止できる。さらに、中間層の厚さが20μm以上であるため、ライニングにおいて発生したクラックが中間層と裏金との界面まで伝播することを防止でき、耐疲労性を向上させることができる。
ライニングが3wt%以上のSnを含有することにより、潤滑性を確保することができ、耐焼付性を向上させることができる。ライニングが1wt%以上のSiを含有することにより、Siの粒子およびSiを含む金属間化合物の粒子によってライニングの硬度を大きくし、耐疲労性を向上させることができる。ライニングが9wt%以下のBiを含有することにより、鉄との凝着性が低いBiを第2相として析出させることができ、耐焼付性を向上させることができる。ただし、Biは必ずしも含有されなくてもよく、Biの含有量は0wt%であってもよい。さらに、ライニングが0.05wt%以上かつ3wt%以下のCrと、0.05wt%以上かつ0.3wt%以下のZrと、3wt%以下(0wt%よりも大きい)のCuを含有することにより、ライニングを固溶強化できるとともに、これらを含む金属間化合物によりライニングを析出強化できる。また、ライニングが3wt%以下(0wt%よりも大きい)のMgを含有することにより、ライニングを固溶強化できる。さらに、ライニングが0.01wt%以上かつ0.5wt%以下のTiを含有することにより、金属間化合物(AlTi)を凝固初期に微細に分散して析出させることでAlの析出の核となりAl(α相)を微細化できる。
コンロッド用のすべり軸受の斜視図である。 (2A)は疲労試験を説明する模式図、(2B)は焼付試験を説明する模式図である。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)すべり軸受の構成:
(2)すべり軸受の製造方法:
(3)実験結果:
(4)他の実施形態:
(1)すべり軸受の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかるすべり軸受1の斜視図である。すべり軸受1は、裏金10と中間層11とライニング12とを含む。すべり軸受1は、円筒を直径方向に2等分した半割形状の金属部材であり、断面が半円弧状となっている。2個のすべり軸受1が円筒状になるように組み合わせられた状態で、自動車のエンジンのコンロッドに取り付けられる。2個のすべり軸受1を組み合わせることによって形成される円柱状の中空部分にて、相手軸2(ドットハッチング)としてのクランクシャフトを軸受けする。相手軸2の外径はすべり軸受1の内径よりもわずかに小さく形成されている。相手軸2の外周面と、すべり軸受1の内周面との間に形成される隙間に潤滑油(エンジンオイル)が供給される。相手軸2は、すべり軸受1の曲率中心と一致する回転軸を中心に回転する。その際に、すべり軸受1の内周面上を相手軸2の外周面が摺動する。
すべり軸受1は、曲率中心から遠い順に、裏金10と中間層11とライニング12とが順に積層された構造を有する。従って、裏金10がすべり軸受1の最外層を構成し、ライニング12がすべり軸受1の最内層を構成する。裏金10と中間層11とライニング12とは、それぞれ円周方向において一定の厚さを有している。裏金10の厚さは1.3mmであり、中間層11の厚さは50μmであり、ライニング12の厚さは0.35mmである。ライニング12の曲率中心側の表面の半径(すべり軸受1の内径)は45mmである。なお、コンロッドや相手軸2の形状に応じてすべり軸受1の形状を決定すればよく、すべり軸受1の幅は10〜300mmの間のいずれかの値であってもよいし、すべり軸受1の外径は25〜1000mmの間のいずれかの値であってもよいし、すべり軸受1全体の厚さは1〜20mmの間のいずれかの値であってもよい。また、ライニング12の厚さは0.05〜10mmの間のいずれかの値であってもよいし、中間層11の厚さは0.02〜2mmの間のいずれかの値であってもよい。以下、内側とはすべり軸受1の曲率中心側を意味し、外側とはすべり軸受1の曲率中心と反対側を意味することとする。ライニング12の内側の表面は、相手軸2の摺動面を構成する。
裏金10は、Cを0.15wt%含有し、Mnを0.06wt%含有し、残部がFeと不可避不純物とからなる低炭素鋼で形成されている。なお、裏金10は、ライニング12を介して相手軸2からの荷重を支持できる材料で形成されればよく、必ずしも鋼で形成されなくてもよい。
中間層11は、裏金10とライニング12との間に形成された層である。つまり、中間層11は、裏金10の内側、かつ、ライニング12の外側に積層された層である。中間層11は、アルミニウム合金によって形成されている。具体的に、中間層11は、Cuを0.05wt%含有し、Zrを0.05wt%含有し、Tiを0.02wt%含有し、Crを0.1wt%含有し、残部がAlと不可避不純物とからなる。なお、すべり軸受1の各層を構成する元素の質量は、ICP発光分光分析装置(島津製作所製 ICPS−8100)によって計測した。
中間層11のビッカース硬さ(硬度)を計測したところ、室温(20℃)におけるビッカース硬さは30であった。ライニング12および裏金10と接合する前の中間層11の試料を作成し、当該試料のビッカース硬さを計測した。ビッカース硬さは、マイクロビッカース硬さ計(明石製作所製 MVK−EII)によって、50〜400gの荷重で試験片上の測定点に形成した圧痕の大きさ(2個の対角線の長さの平均値)を測定点のビッカース硬さとして計測した。試験片上における3〜7点の測定点にて測定したビッカース硬さの平均値を中間層11のビッカース硬さとして採用した。
また、中間層11の任意の断面を観察したところ、中間層11に含有されているAl以外の成分(Cu,Zr,Ti,Cr)とAlとで形成された金属間化合物が存在していないことが確認された。すなわち、中間層11に含有されているAl以外の成分(以下、含有成分)の全量が、Alのマトリクス中において固溶体を形成していることが確認された。
含有成分の量は以下のようにして解析した。電子線マイクロアナライザ(EPMA)(日本電子製 JXA8100)を用いて、波長分散型X線分光法により中間層11のマトリクス上(析出物以外)の含有成分の量を点分析で10点以上計測し、その平均値を含有成分の固溶量として計測した。さらに500倍以上の倍率で4視野以上の視野全体における含有成分の量を含有成分の総量として計測した。さらに、含有成分の総量から固溶量を引いた値を、含有成分の総量で除算した百分率を、含有成分のうちAlと金属間化合物を形成している成分の割合である固溶割合として計測した。そして、固溶割合が、実質的に100%(例えば98%以上)である場合に、含有成分の全量が、Alのマトリクス中において固溶体を形成していると見なした。なお、分析時の電子線マイクロアナライザの電子線の加速電圧は10kVとした。
ライニング12は、中間層11の内側に積層された層である。1.3wt%のCuと、0.5wt%のCrと、0.2wt%のZrと、4.5wt%のSnと、1.5wt%のSiと、2wt%のBiと、0.01wt%のTiとを含有し、残部がAlと不可避不純物とからなる。Crのうちの85wt%(ライニング12全体のうちの17wt%)がAlと金属間化合物を形成し、Crのうちの残部がAlと固溶体を形成している。すなわち、ライニング12を電子線マイクロアナライザによって解析することにより、ライニング12の含有成分としてのCrの固溶割合を計測したところ、当該Crの固溶割合は85wt%であった。
すべり軸受1の耐疲労性能値を計測したところ、105MPaであった。耐疲労性能値とは、後述する往復動荷重試験機によって疲労試験を行った場合に疲労破壊が生じなかった面圧の上限値である。また、疲労破壊が生じたとは、疲労試験においてライニング12にて生じたクラックが中間層11を貫通し、裏金10まで伝播することにより、中間層11とライニング12とからなるAl合金層が裏金10から浮き上がることを意味する。
図2Aは、往復動荷重試験機によって行った疲労試験の模式図である。図2Aに示すように、長さ方向の両端に円柱状の貫通穴が形成されたコンロッドRを用意し、一端の貫通穴にて相手軸2(ドットハッチング)を軸受けさせた。なお、相手軸2を軸受けするコンロッドRの貫通穴の内周面に、2個のすべり軸受1(斜めハッチング)を円筒形に組み合わせた状態で取り付けた。相手軸2の軸方向におけるコンロッドRの両外側において相手軸2を軸受けし、単位時間あたりの回転数が3000回転/分となるように相手軸2を回転させた。相手軸2とは反対側のコンロッドRの端部を、コンロッドRの長さ方向に往復移動する移動体Fに連結し、当該移動体Fの往復荷重を、疲労試験を行うごとに変化させた。また、単位時間あたりの移動体Fの往復回数が3000回/分となるように移動体Fを往復させた。また、コンロッドRと相手軸2との間に、エンジンオイル(CF−4 10W−30)を給油した。また、試験時のすべり軸受1の温度が180℃となるようにエンジンオイルの温度を調整した。なお、相手軸2は、高周波焼入れを行った炭素鋼(S55C)とした。そして、相手軸2の回転数(移動体Fの往復回数)が107回となるまで、すべり軸受1の疲労試験を継続した。疲労試験後において摺動面に亀裂が生じなかった上限の移動体Fの往復荷重を特定し、当該往復荷重を相手軸2とすべり軸受1との接触面積で除算した面圧を耐疲労性能値として計測した。
また、すべり軸受1の耐焼付性能値を計測したところ、105MPaであった。耐焼付性能値とは、後述する静荷重試験機によって焼付試験を行った場合に焼付きが生じなかった面圧の上限値である。
図2Bは、静荷重試験機によって行った焼付試験の模式図である。図2Bに示すように、円柱状の相手軸2(ドットハッチング)を軸受けしたすべり軸受1(斜めハッチング)を用意し、すべり軸受1を相手軸2の径方向の外側から一対の保持体Sによって支持した。単位時間あたりの回転数が1300〜8000回転/分となるように相手軸2を回転させた。また、相手軸2の中心軸と垂直に交差する軸上において、一対の保持体Sを互いに相手軸2の中心軸に向けて接近させる静荷重を作用させ、当該静荷重の大きさを5MPaずつ漸増させた。また、少なくともすべり軸受1の全体がエンジンオイルO(SN 0W−20)中に浸漬するようにオイル浴中で焼付試験を行った。相手軸2を回転に要するトルクが所定値以上となった場合と、すべり軸受1の温度が所定温度以上となった場合とにおいて、静荷重試験機を停止させるとともに、静荷重試験機の停止直前に一対の保持体Sに作用させていた面圧(単位接触面積あたりの静荷重)を耐焼付性能値として計測した。
所定温度とは、目標温度に許容上昇温度を加算した温度である。目標温度は20〜40℃(室温)である。すべり軸受1の温度が目標温度となるようにオイル浴のエンジンオイルOの温度を調整した。許容上昇温度とは、焼付きが生じていない正常な摩擦状態で上昇し得るすべり軸受1の温度であり、目標温度からの上昇温度が許容上昇温度以上となった場合に、焼付きが生じたと見なすことができる。焼付試験において焼付きが生じなかった上限の静荷重を特定し、当該静荷重を相手軸2とすべり軸受1との接触面積で除算した面圧を耐焼付性能値として計測した。
以上説明したように、すべり軸受1の耐疲労性能値は105MPaであり、良好な耐疲労性を有することが分かった。また、すべり軸受1の耐焼付性能値は105MPaであり、良好な耐焼付性を有することが分かった。ライニング12において、Crのうち85wt%がAlと硬質の金属間化合物を形成することにより、ライニング12の硬度を大きくすることができ、耐疲労性を向上させることができたと考えられる。さらに、ライニング12において、Crのうち金属間化合物を形成しなかった残部がAlと固溶体を形成することにより、ライニング12のマトリクスを強化することができ、耐疲労性を向上させることができたと考えられる。
中間層11において、Al以外の成分(Cu,Zr,Ti,Cr)がAlと固溶体を形成することにより、マトリクスを強化することができ、耐疲労性を向上させることができたと考えられる。さらに、中間層11において、Al以外の成分の全量がAlと固溶体を形成するため、Al以外の成分とAlとの金属間化合物が形成されることはなく、金属間化合物やその界面が疲労時にクラックの起点や通過点となることを防止できたと考えられる。すなわち、ライニング12において発生したクラックが中間層11を伝播することを防止できたと考えられる。また、中間層11のビッカース硬さを80以下に抑制することにより、中間層11の延性や靱性を確保することができるため、ライニング12において発生したクラックが中間層11を伝播することを防止できたと考えられる。さらに、中間層11の厚さが50μmであるため、ライニング12において発生したクラックが中間層11と裏金10との界面まで伝播することを防止でき、耐疲労性を向上させることができたと考えられる。ライニング12において発生したクラックが中間層11と裏金10との界面まで伝播することを防止できるため、中間層11とライニング12とからなるAl合金層が裏金10から浮き上がることを防止できとた考えられる。従って、Al合金層が裏金10から浮き上がった部分にて摩擦熱が集中して発生することも防止でき、結果として良好な耐焼付性が得られたと考えられる。
(2)すべり軸受の製造方法:
本実施形態においてすべり軸受1は、a.ライニング板の形成、b.中間層板の形成、c.圧着、d.切断、e.機械加工の各工程を順に行うことにより製造される。以下、各工程について説明する。
a.ライニング板の形成
まず、1.3wt%のCuと、0.5wt%のCrと、0.2wt%のZrと、4.5wt%のSnと、1.5wt%のSiと、2wt%のBiと、0.01wt%のTiとを含有するAl合金が形成できるように、各成分の材料(Snインゴットと、Biインゴットと、他の含有成分とAlからなる母合金(Al−Cu(Cu:30wt%)、Al−Cr(Cr:1wt%)、Al−Zr(Zr:1wt%)、Al−Ti(Ti:5wt%))を計量して用意した。次に、各成分の材料を、高周波誘導炉によって850℃まで加熱して、15分保持した。これにより、ライニング12の溶融材料が形成されることとなる。その後、多孔質バブリングパイプやランスパイプによって流量が2L/minとなるように、20秒以上Arガスの気泡を分散噴出させて、水素ガスや介在物の除去を行い、5分以上静置した。
次に、ライニング12の溶融材料を鋳型に注入し、当該鋳型の開口からライニング12の溶融材料を鋳造方向に引き抜くことにより、ライニング12の原形となるライニング板を形成した。
さらに、ライニング板に対して、圧延を行いながら焼鈍を行った。この焼鈍工程では、305℃〜400℃の低温焼鈍と、400℃〜475℃の高温焼鈍とを、互いの温度差が10℃以上となるように行った。低温焼鈍と高温焼鈍の焼鈍時間はそれぞれ40〜180分として、低温焼鈍と高温焼鈍の焼鈍時間を調整することにより、CrのうちのAlと金属間化合物を形成する成分の固溶割合を調整した。CrのうちのAlと金属間化合物を形成する成分の固溶割合を大きくするには焼鈍時間を長くすればよく、金属間化合物を形成する成分の固溶割合を小さくするには焼鈍時間を短くすればよい。例えば、高温焼鈍温度(400〜460℃)にて60分以上140分以下の長さで焼鈍を行うことにより、Crの固溶割合を大きくしてもよい。高温焼鈍温度にて40分以上60分未満の長さで焼鈍を行うことにより、Crの固溶割合を小さくしてもよい。
b.中間層板の形成
まず、0.05wt%のCuと、0.05wt%のZrと、0.02wt%のTiと、0.1wt%のCrとを含有するAl合金が形成できるように、各成分の材料(Snインゴットと、他の含有成分とAlからなる母合金(Al−Cu(Cu:30wt%)、Al−Cr(Cr:1wt%)、Al−Zr(Zr:1wt%)、Al−Ti(Ti:5wt%))を計量して用意する。次に、各成分の材料を、高周波誘導炉によって850℃まで加熱して、15分保持した。これにより、中間層11の溶融材料が形成されることとなる。その後、多孔質バブリングパイプやランスパイプによって流量が2L/minとなるように、20秒以上Arガスの気泡を分散噴出させて、水素ガスや介在物の除去を行い、5分以上静置した。次に、中間層11の溶融材料を鋳型に注入し、当該鋳型の開口から中間層11の溶融材料を鋳造方向に引き抜くことにより、中間層11の原形となる中間層板を形成した。なお、中間層板は、押出成形によって形成されてもよい。また、中間層板の形成後に圧延を行うことによって、中間層板の厚さを調整した。
c.圧着
次に、ライニング板と中間層板とを厚さ方向に重ね合わせた状態で圧延を行うことにより、ライニング板と中間層板とが圧着されたAl圧着板を形成した。そして、Al圧着板に対して所定の熱処理を行うことにより、Al圧着板の圧着を完了させた。
さらに、裏金12の原形となる低炭素鋼板を用意し、低炭素鋼板とAl圧着板と厚さ方向に重ね合わせた状態で圧延を行うことにより、Al圧着板と低炭素鋼板とが圧着されたすべり軸受1の圧延板を形成した。そして、すべり軸受1の圧延板に対して所定の熱処理を行うことにより、すべり軸受1の圧延板の圧着を完了させた。
ライニング板と中間層板と低炭素鋼板との圧着においては、冷間圧延を行ってもよいし、熱間圧延を行ってもよい。また、圧着における各板の厚さの減少量(圧延率)を考慮し、すべり軸受1の圧延板の圧着後に狙いの厚さとなるように、圧着前のライニング板と中間層板と低炭素鋼板の厚さを調整しておけばよい。
d.切断
次に、すべり軸受1の圧延板を所定の大きさごとに切断した。所定の大きさとは、後述する機械加工を行うことにより、すべり軸受1が形成できる大きさであり、すべり軸受1が取り付けられるコンロッドの形状によって定まる大きさである。
e.機械加工
最後に、切断後のすべり軸受1の圧延板に対してプレス加工を行うことにより、半割形状のすべり軸受1を形成した。さらに、切削加工によって形状や表面状態を仕上げることにより、すべり軸受1を完成させた。
(3)実験結果:
表1は、すべり軸受1の各試験片(本発明の実施例1〜4,比較例1〜3)の機械特性(耐疲労性能値、耐焼付性能値)を測定した結果を示す。前記実施形態は、実施例4と同一の構成を有する。各試験片は、上述したすべり軸受の製造方法と同様の手法によって製造した。各機械特性は上述した実施形態と同様の手法によって計測した。
Figure 2015178654
表1に示すように、実施例1〜4のライニング12において、Crのうち45〜85wt%が金属間化合物を形成し、残部が固溶体を形成することにより、実施例1〜4のライニング12の硬度を向上させ、良好な耐疲労性を得ることができた。ここで、Al合金中におけるCrは、熱処理に応じて金属間化合物が析出しやすい元素であり、金属間化合物の析出量だけではなく、粒子の大きさも熱処理の時間等によって調整しやすい。特に、AlとCrの金属間化合物は粒界に析出しやすいため、同じく粒界に析出しやすいSn(12.5wt%以下)を多く含む場合にSnによって耐疲労性が低下することを効果的に抑制できる。さらに、Crの金属間化合物は、一つ一つの粒子の大きさが揃っており、Crの金属間化合物の析出量を容易に解析できる。従って、ライニング12におけるCrの固溶割合に注目することにより、所望の耐疲労性を実現するための熱処理時間の管理(条件出し)が容易となる。
また、実施例1〜4において、中間層11のビッカース硬さを25〜75とし、厚さを25〜50μmとすることにより、中間層11によってクラックの伝播を防止でき、耐疲労性および耐焼付性を向上させることができた。中間層11が適度な厚さと延性と靱性を備えて塑性変形が可能となることにより、クラックが裏金10まで伝播することを防止できたものと考えられる。また、中間層11に硬質の金属間化合物が含まれないため、金属間化合物が中間層11と裏金10との剥離の起点となることも防止でき、裏金10から中間層11が浮き上がる疲労破壊を防止できた。
比較例2は、中間層11のビッカース硬さが大き過ぎるとともに、中間層11が薄すぎるため、中間層11が塑性変形によってクラックの伝播を防止することができず、良好な耐疲労性と耐焼付性が発揮できなかったと考えられる。比較例1は、中間層11のビッカース硬さが適度であるものの、中間層11が薄すぎるため、中間層11が塑性変形によってクラックの伝播を防止することができず、良好な耐疲労性と耐焼付性が発揮できなかったものと考えられる。さらに、比較例1は、中間層11の厚さが適度であるものの、ビッカース硬さが小さすぎるため、中間層11の強度が不足し、中間層11が破壊した部分にて焼付きが発生しやすくなったものと考えられる。
(4)他の実施形態:
前記実施形態においては、本発明のすべり軸1をコンロッドに使用したが、すべり軸受1の用途はコンロッドに限定されない。例えば、本発明のすべり軸1をスラスト軸受に適用してもよい。また、すべり軸受1は、ライニング12上にオーバーレイが形成されてもよく、当該オーバーレイは金属層であってもよいし樹脂層であってもよい。
本発明においては、固溶強化成分の全量がライニング12のマトリクスに固溶すればよく、0.3wt%以上かつ5.0wt%以下のMgを固溶強化成分として含有してもよい。ライニング12においてMgを0.3wt%以上とすることにより固溶強化によって耐疲労性を良好にすることができ、ライニング12においてMgを5.0wt%以下とすることによりMgの全量をマトリクスに固溶させることができる。同様に、0.3wt%以上かつ5.0wt%以下のAgを固溶強化成分として含有してもよい。さらに、0.3wt%以上かつ2.0wt%以下のCuを固溶強化成分として含有してもよい。また、CuおよびAgを双方ともライニング12に含有させてもよく、CuおよびAgの合計を6.0wt%以下となるようにすることにより、CuおよびAgの全量をマトリクスに固溶させることができる。CuとAgとは、Al中に同時に含まれても金属間化合物を形成しないため、双方ともライニング12において固溶することができる。
中間層11における固溶成分の含有量は、固溶成分の全量がマトリクスにて固溶体を形成できる固溶限以下の量であればよく、中間層11のビッカース硬さが適度となるように固溶成分の含有量を固溶限以下の範囲内で調整すればよい。中間層11の厚さは20μm以上であればよく、ライニング12が含有するCrのうち金属間化合物を形成する割合が大きくなるほど、中間層11の厚さを大きくしてもよい。また、中間層11において、Zn,Cu,Mg,Li,Mn,V,Zr,Fe,Mo,Co,Ni,Hf,Sc,Ti,Wのなかから少なくとも1種類選択された固溶成分の全量が固溶体を形成すればよく、固溶成分以外の成分は必ずしも中間層11にて固溶体を形成しなくてもよい。
1…すべり軸受、2…相手軸、10…裏金、11…中間層、12…ライニング、F…移動体、R…コンロッド、S…保持体。

Claims (1)

  1. 3wt%以上かつ12.5wt%以下のSnと、1wt%以上かつ8wt%以下のSiと、0.05wt%以上かつ3wt%以下のCrと、0.05wt%以上かつ0.3wt%以下のZrと、0.01wt%以上かつ0.5wt%以下のTiと、3wt%以下のCuまたはMgと、0wt%以上かつ9wt%以下のBiと、を含有し、残部がAlと不可避不純物とからなるとともに、Crのうちの10wt%以上かつ90wt%以下がAlと金属間化合物を形成し、Crのうちの残部がAlと固溶体を形成しているライニングと、
    裏金と、
    Zn,Cu,Mg,Li,Mn,V,Zr,Fe,Mo,Co,Ni,Hf,Sc,Ti,Wのなかから少なくとも1種類選択された固溶成分を0.01wt%以上含有し、前記固溶成分の全量がAlと固溶体を形成しているAl合金によって、厚さが20μm以上であり、ビッカース硬さが30以上かつ80以下となるように前記裏金と前記ライニングとの間に形成された中間層と、
    を備えることを特徴とするすべり軸受。
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