JP2000013179A - 弾性表面波素子とその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 周波性特性が良く、製造も容易な弾性表面波
素子とその製造方法を提供する。 【解決手段】 圧電性の基板１２上に互いに対向した櫛
形電極１４と、この櫛形電極１４の両側方に各々設けら
れた２つの反射器１６からなる共振器パターン１８の組
が２組縦続接続されている。各共振器パターン１８間に
は複数段からなる溝２２が形成され、共振器パターン１
８間の基板１２の表面上に生じる表面弾性波の伝播方向
に伸びている。溝２２の深さは、表面弾性波の波長以上
である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、特定の周波数帯
域の電磁波を抽出する周波数フィルタであって、弾性表
面波を利用した弾性表面波素子とその製造方法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、櫛形電極１と、両側方に設けられ
た２つの反射器２からなる共振器パターン３を２組設け
た弾性表面波素子４は、共振器パターン３間に溝５を形
成し、各共振器パターン３間に生じる不必要な弾性的結
合を切っていた。またこの不必要な弾性的結合を切るに
は溝５が深い方が望ましく、図３に示すように、この溝
５により、弾性表面波フィルタの周波数特性の実線で示
したような、通過帯域の上側あるいは下側に生じるスプ
リアスの原因となる弾性表面波をなくし、点線で示した
滑らかな曲線の周波数特性とし、フィルタの減衰量を向
上させていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術の場
合、溝５を所定の幅で深く削ると、図４、図５に示すよ
うに基板６の表面で、溝５の角部７に欠け７ａが生じ、
切り粉が多量に生じ、櫛形電極１に悪影響を及ぼしてい
た。さらに欠け７ａにより溝５の幅が一定ではないた
め、スプリアスの原因となる弾性表面波が完全になくな
らず、減衰量もあまり向上しなかった。

【０００４】従って、単に深さの深い溝５では共振器パ
ターン３間に生じる弾性的結合を完全に切ることができ
ず、一方、溝５の本数を増やすと、弾性表面波素子の大
きさが全体的に大きくなるという問題を有していた。

【０００５】この発明は上記従来の問題点に鑑みてなさ
れたものであり、周波性特性が良く、製造も容易な弾性
表面波素子とその製造方法を提供することを目的とした
ものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】この発明の弾性表面波素
子は、圧電性の基板上に互いに対向した櫛形電極と、こ
の櫛形電極の両側方に各々設けられた２つの反射器から
なる共振器パターンの組が２組縦続接続されており、こ
の各共振器パターン間には複数段からなる溝が形成され
ている。またこの溝は、共振器パターン間の基板表面上
に生じる表面弾性波の伝播方向に伸び、溝の深さは、表
面弾性波の波長程度またはこの表面弾性波の波長以上で
上記基板の厚さ未満である。

【０００７】またこの弾性表面波素子の製造方法は、圧
電性の基板上に、互いに対向した櫛形電極と、この櫛形
電極の両側方に反射器を設け、次に各々櫛形電極と２つ
の反射器とからなる共振器パターンの組を２組縦続接続
して形成し、この共振器パターン間で、共振器パターン
と平行になるように所定の厚みを有するブレードでダイ
シングを行い、所定の深さの溝を形成する。次にブレー
ドよりも厚みの薄いブレードに変えて、溝底部を切削
し、さらに深い深さを有する溝を形成する。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て図面に基づいて説明する。図１はこの発明の一実施形
態の弾性表面波素子１０を示し、水晶やリチウムタンタ
レート等の圧電性を有した基板１２の表面に、アルミニ
ウムまたはアルミニウム合金等の金属薄膜により二対の
櫛形電極１４が各々交互に対向して設けられている。こ
の櫛形電極１４の両側方には、等ピッチにアルミニウム
またはアルミニウム合金等の金属薄膜による格子状のパ
ターンが形成された反射器１６が各々設けられている。
そして櫛形電極１４と一対の反射器１６により１組の共
振器パターン１８を形成し、２組の共振器パターン１８
が設けられている。

【０００９】また、各櫛形電極１４の互いに隣接する側
には、櫛形電極１４の基端部から延長して一体に上記金
属薄膜による接続部２０が各々形成され、この接続部２
０間は、ワイヤ２４により接続され、隣接する共振器パ
ターン１８を縦続接続している。

【００１０】また各共振器パターン１８の間の部分に
は、基板１２の表面に生じる表面弾性波の伝播方向に伸
びる２段の溝２２が形成され、接続部２０は、溝２２の
内側面に沿って設けられている。この溝２２の深さは、
表面弾性波の波長程度、またはその波長以上で約１０倍
以下の深さ程度である。また、溝２２の幅は、一定の幅
で各共振器パターン１８から同距離だけ離れた位置に設
けられている。

【００１１】次にこの弾性表面波素子１０の製造方法
は、圧電性を有した基板１２の表面に上記金属薄膜を形
成し、この薄膜上にフォトレジストを塗布した後、所望
の電極形状等のフォトマスクを介して露光し、現像して
レジストパターンを形成する。そして、ドライエッチン
グ等により、櫛形電極１４と一対の反射器１６からなる
共振器パターン１８を２組形成する。

【００１２】次に共振器パターン１８間で、基板１２表
面上に表面弾性波の伝播方向に伸びるように所定の厚み
を有するブレードでダイシングし、浅い溝２２を形成す
る。さらにこの溝の底面でほぼ中心線上を上記ブレード
よりも厚みの薄いブレードを用いてダイシングし、深い
溝を形成し、図２に示すような２段になった溝２２を形
成する。この後、互いに隣接する櫛形電極１４の基端部
の接続部２０間に、ワイヤ２４をボンディングし、隣接
する櫛形電極１４を接続して、一対の共振器パターン１
８を縦続接続する。

【００１３】この実施形態の弾性表面波素子１０によれ
ば、ブレードの厚みを変えて２回に分けてダイシングす
ることにより、溝２２の角部に欠けが生じにくく、ダイ
シング時の切り粉の量が減り、しかも溝２２を深くする
ことができるので、図３の実線で示すように、周波数特
性においてスプリアスの原因となる弾性表面波がなくな
り、点線で示すような放物線となるため、フィルタとし
ての減衰量が向上する。

【００１４】なお、この発明の弾性表面波素子は、上記
実施形態に限定されるものではなく、大型の基板に複数
の共振器パターンを設け、さらに共振器パターン間に溝
を形成した後、所定の大きさとなるように基板を切断
し、弾性表面波素子を形成してもよい。また徐々にブレ
ードの厚みを薄くし、複数段の溝を形成してもよく、各
電極は導電性を有する材料であればよく適宜変更するこ
とができる。

【００１５】

【発明の効果】この発明の弾性表面波素子とその製造方
法は、共振器パターン間に複数段の溝を設けることによ
り、角部のかけがなく、一定の幅で深い溝を形成するこ
とができ、スプリアスの原因となる弾性表面波を効果的
になくし、良好な周波数特性を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施形態の弾性表面波素子を示す
平面図である。

【図２】この発明の一実施形態の弾性表面波素子の部分
拡大斜視図である。

【図３】この発明の一実施形態の弾性表面波素子と従来
の弾性表面波素子との減衰量と周波数の関係を相対的に
比較した説明図である。

【図４】従来の弾性表面波素子を示す平面図である。

【図５】従来の弾性表面波素子のＡ−Ａ断面図である。

【符号の説明】

１０ 弾性表面波素子 １２ 基板 １４ 櫛形電極 １６ 反射器 １８ 共振器パターン ２０ 接続部 ２２ 溝

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 圧電性の基板上に互いに対向した櫛形電
   極と、この櫛形電極の両側方に各々設けられた２つの反
   射器からなる共振器パターンの組が縦続接続され、この
   縦続接続された２組の各共振器パターン間に複数段から
   なる溝が形成されている弾性表面波素子。
2. 【請求項２】 上記溝は、上記共振器パターン間の上記
   基板表面上に生じる表面弾性波の伝播方向に伸びた請求
   項１記載の弾性表面波素子。
3. 【請求項３】 上記溝の深さは、表面弾性波の波長程度
   またはそれ以上である請求項１記載の弾性表面波素子。
4. 【請求項４】 圧電性の基板上に、互いに対向した櫛形
   電極と、この櫛形電極の両側方に反射器を設け、各々上
   記櫛形電極と２つの上記反射器とからなる共振器パター
   ンの組を２組縦続接続して形成し、この共振器パターン
   間で、共振器パターンと平行になるように所定の厚みを
   有するブレードでダイシングを行い、所定の深さの溝を
   形成した後、上記ブレードよりも厚みの薄いブレードで
   上記溝底部を切削し、さらに深い深さを有する溝を上記
   溝底部に形成し、上記２組の共振器パターン間に複数段
   の溝を設ける弾性表面波素子の製造方法。