JP2000011768A - 無機巻線 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の課題は、耐熱性、電気機器コイル巻線
性及びコイル占積率特性がいずれも優れた無機巻線を提
供することにある。 【解決手段】本発明は、導体上に無機質化絶縁層が設け
られており、且つ該無機質化絶縁層の上層に自己潤滑性
エナメル皮膜層が設けられて成ることを特徴とする無機
巻線にある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は無機巻線に関するも
のである。更に詳述すれば、本発明は自己潤滑性が優れ
た無機巻線に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、産業用、電送用、民生用等におい
て耐熱性を２５０〜４００℃クラスに引き上げた電気機
器、例えば超高温用モータ、超高温用誘導加熱機器等の
ニーズが高まってきている。

【０００３】超高温用電気機器の巻線材料としては、耐
熱性の点から有機材料被覆巻線の適用が難しく、耐熱性
が優れた無機材料被覆無機巻線が検討されている。

【０００４】無機材料被覆無機巻線としては、ガラステ
ープ巻線、アスベストテープ巻線、ガラス糸巻線、無機
エナメル塗装巻線等がある。

【０００５】これらのうち、ガラステープ巻線、アスベ
ストテープ巻線、マイカテープ巻線、ガラス糸巻線等は
ガラステープ層、アスベストテープ層、マイカテープ
層、ガラス糸層等が厚く、その結果、電気機器コイルを
巻線したときにはコイルが大きくなってしまうという難
点がある。

【０００６】これに対して、無機エナメル塗装巻線は無
機エナメル塗装皮膜が薄く、その結果、電気機器コイル
を巻線したときには小形で、且つ軽量なコイルを製造す
ることができる。

【０００７】このようなエナメル塗装巻線としては、ガ
ラスフリットエナメル塗装巻線、ホーロウエナメル塗装
巻線、セラミックエナメル塗装巻線等がある。しかし、
これらのエナメル塗装巻線は脆く、且つ可撓性が著しく
劣るのが難点である。

【０００８】そこで、可撓性と耐熱性とを兼備した無機
巻線として高温変換型無機塗装巻線が検討されている。

【０００９】高温変換型無機塗装巻線は耐熱性有機バイ
ンダー、例えばシリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、
ポリカルボシラン等に、無機質フィラー微粉末、例えば
アルミナ、シリカ、マグネシア、セラミック等を分散し
て成る無機質フィラー分散塗料を導体上に半硬化状態と
なるように塗布、焼き付けして成るものである。この高
温変換型無機塗装巻線は、電気機器コイルに巻線してか
ら無幾質化できる高温で熱処理すると無機質化電気機器
コイルへ変換することができる。

【００１０】しかし、この高温変換型無機塗装巻線は、
塗装膜内に無機質フィラーが分散していることから摩擦
係数が大きく、その結果、高速巻線機による電気機器コ
イル巻線性が劣るという難点がある。

【００１１】この高温変換型無機塗装巻線の電気機器コ
イル巻線性を改良するため、汎用エナメルオーバーコー
ト高温変換型無機塗装巻線が検討されている。ここにお
いて、汎用エナメル線用塗料としては、ポリビニルホル
マールエナメル線用塗料、ポリウレタンエナメル線用塗
料、ポリエステルエナメル線用塗料、ポリエステルイミ
ドエナメル線用塗料、ポリアミドイミドエナメル線用塗
料、ポリイミドエナメル線用塗料等がある。

【００１２】

【発明が解決しようとする課題】しかし、汎用エナメル
オーバーコート高温変換型無機塗装巻線は、汎用エナメ
ルオーバーコート層の分だけ仕上外径が大きくなってし
まうという難点がある。ここにおいて、仕上外径の増大
を防止しようとすると、高温変換型無機塗装層が相対的
に薄くなり、その結果、本来の耐熱性が損なわれること
になる。

【００１３】本発明はかかる点に立って為されたもので
あって、その目的とするところは前記した従来技術の欠
点を解消し、耐熱性、電気機器コイル巻線性及びコイル
占積率特性がいずれも優れた無機巻線を提供することに
ある。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、導体上に無機質化絶縁層が設けられており、且つ
該無機質化絶縁層の上層に自己潤滑性エナメル皮膜層が
設けられて成ることを特徴とする無機巻線にある。

【００１５】

【発明の実施の形態】次に、本発明の無機巻線の実施の
形態について説明する。

【００１６】本発明において、導体としては耐熱性が優
れたものならよく、例えば銀線、ニッケル線、クロム
線、ステンレス線、銀めっき銅線、銀クラッド銅線、ニ
ッケルめっき銅線、ニッケルクラッド銅線等がある。

【００１７】本発明において、無機質化絶縁層としては
耐熱性有機バインダー、例えばシリコーン樹脂、変性シ
リコーン樹脂、ポリカルボシラン等に、無機質フィラー
微粉末、例えばアルミナ、シリカ、マグネシア、セラミ
ック等を分散して成る無機質フィラー分散塗料を塗布、
焼き付けしたもの等がある。

【００１８】本発明において、自己潤滑性エナメル皮膜
層としては自己潤滑性ポリビニルホルマールエナメル線
用塗料、自己潤滑性ポリウレタンエナメル線用塗料、自
己潤滑性ポリエステルエナメル線用塗料、自己潤滑性ポ
リエステルイミドエナメル線用塗料、自己潤滑性ポリア
ミドイミドエナメル線用塗料、自己潤滑性ポリイミドエ
ナメル線用塗料、自己潤滑性ポリアミド塗料、自己潤滑
性ふっ素樹脂塗料、自己潤滑性シリコーン樹脂塗料等を
塗布、焼き付けしたものである。

【００１９】なお、ここにおいて、汎用エナメル線用塗
料を自己潤滑性にするときにはポリオレフィン、脂肪酸
エステル、ワックス、ふっ素樹脂微粉末、シリコーン樹
脂等を微量配合する。

【００２０】本発明の無機巻線は自己潤滑性エナメル皮
膜層により表面の摩擦係数が低く、それにより自己潤滑
性エナメル皮膜層の厚さを薄くでき、その結果、外径を
大きくすることなく優れた電気機器コイル巻線性と高い
コイル占積率特性とを発揮することができる。

【００２１】

【実施例】次に、本発明の無機巻線の実施例を従来の比
較例と共に説明する。

【００２２】まず、実施例と比較例に用いた材料につい
て説明する。

【００２３】ａ．導体 導体としては、φ０．２mmのニッケルめっき銅線を用い
た。

【００２４】ｂ．無機質化絶縁電線 まず、数平均分子量１，０００のポリカルボシラン樹脂
１００重量部、シリコーン樹脂１００重量部、アルミナ
微粉末４００重量部、溶剤のキシレン４００重量部から
成る高温変換型無機塗料を用意した。

【００２５】次に、この高温変換型無機塗料をφ０．２
mmのニッケルめっき銅線上に厚さ塗膜厚さ０．１８mmの
半硬化状態となるように塗布、焼き付けすることにより
無機質化絶縁電線を得た。

【００２６】（実施例１）上記で用意した無機質化絶縁
電線上に、自己潤滑性ポリアミド塗料として日東電工製
のＤＡＩ−５００−２５塗料を自己潤滑性ポリアミド樹
脂層が０．００３mmとなるように塗布、焼き付けするこ
とにより実施例１の無機巻線を得た。

【００２７】図１はかくして得られた実施例１の無機巻
線の断面図を示したものである。

【００２８】図１において、１は銅導体、２はニッケル
めっき層、３は無機質化絶縁層、４は自己潤滑性エナメ
ル樹脂層である。

【００２９】（実施例２）上記で用意した無機質化絶縁
電線上に、自己潤滑性ポリアミド塗料としてオート化学
工業製のＡＭＷ−１１ＳＲ塗料を自己潤滑性ポリアミド
樹脂層が０．００４mmとなるように塗布、焼き付けする
ことにより実施例２の無機巻線を得た。（比較例１）上
記で用意した無機質化絶縁電線を比較例１の無機巻線と
した。

【００３０】（比較例２）上記で用意した無機質化絶縁
電線上に、ポリイミド塗料として東レ社のトレニース＃
３０００をポリイミド層が０．００８mmとなるように塗
布、焼き付けすることにより比較例２の無機巻線を得
た。

【００３１】（比較例３）上記で用意した無機質化絶縁
電線上に、ポリエステル塗料として日立化成工業社のＷ
Ｈ−４０６０をポリエステル層が０．０１０mmとなるよ
うに塗布、焼き付けすることにより比較例３の無機巻線
を得た。

【００３２】（特性試験方法）特性試験はＪＩＳ−Ｃ−
３００３に準じて、可撓性試験、熱軟化試験、摩耗試
験、静摩擦係数試験、絶縁抵抗試験、外観判定試験を行
った。

【００３３】（特性試験方法）表１は特性試験結果を示
したものである。

【００３４】

【表１】

【００３５】表１から分かるように、比較例１の無機巻
線は、可撓性試験において２０％伸張後に導体径の１０
〜１５倍の巻き付け棒に巻き付けただけでも塗膜層に亀
裂が発生し、摩耗も５回と低く、静摩擦係数試験が大き
くて自己潤滑性が乏しく、その上外観も悪かった。

【００３６】比較例２の無機巻線は静摩擦係数試験が大
きくて自己潤滑性が乏しく、その上外観も悪かった。

【００３７】比較例３の無機巻線も静摩擦係数試験が大
きくて自己潤滑性が乏しく、その上外観も悪かった。

【００３８】これらに対して、実施例１、２の無機巻線
は、可撓性試験において２０％伸張後に導体径の１倍の
巻き付け棒に巻き付けても塗膜層に亀裂の発生がなく、
熱軟化性温度も高く、耐摩耗性も１０８〜９２回と優
れ、静摩擦係数試験も０．０５と小さくて自己潤滑性が
優れ、その上外観もよく、これらにより優れた耐熱性、
電気機器コイル巻線性及びコイル占積率特性を発揮する
ことができる。

【００３９】

【発明の効果】本発明の無機巻線は優れた耐熱性、電気
機器コイル巻線性及びコイル占積率特性を発揮すること
ができるものであり、工業上有用である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例１の無機巻線の断面図を示した
ものである。

【符号の説明】

１ 銅導体 ２ ニッケルめっき層 ３ 無機質化絶縁層 ４ 自己潤滑性エナメル樹脂層

フロントページの続き (72)発明者 鈴木 和則 茨城県日立市日高町５丁目１番１号 日立 電線株式会社パワーシステム研究所内 (72)発明者 浅野 健次 茨城県日立市日高町５丁目１番１号 日立 電線株式会社パワーシステム研究所内 Ｆターム(参考） 5G309 CA05 LA07 MA06 MA16 MA18

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】導体上に無機質化絶縁層が設けられてお
   り、且つ該無機質化絶縁層の上層に自己潤滑性エナメル
   皮膜層が設けられて成ることを特徴とする無機巻線。
2. 【請求項２】無機質化絶縁層が、ポリカルボシラン樹
   脂、シリコーン樹脂、無機フィラー微粉末から成ること
   を特徴とする請求項１記載の無機巻線。
3. 【請求項３】自己潤滑性エナメル皮膜層が、自己潤滑性
   ポリアミド樹脂層であることを特徴とする請求項１記載
   の無機巻線。