JP2000007637A - 脂肪族ニトリルの製造方法 - Google Patents

脂肪族ニトリルの製造方法

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泰之 三村
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道夫 寺坂
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(57)【要約】 【課題】 脂肪族カルボン酸低級アルキルエステルとア
ンモニアとの反応において、反応温度が 300℃以下で高
い活性を持ち、反応液に難溶の固体触媒を用いて、製品
中への触媒の溶解がなく、高収率でかつ高品質な脂肪族
ニトリルを安価に製造するための方法の提供。 【解決手段】 脂肪族カルボン酸低級アルキルエステル
とアンモニアとを、酸で処理した酸化ニオブの存在下に
反応させる脂肪族ニトリルの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高収率でかつ高品質
な脂肪族ニトリル類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】脂肪族
ニトリルは、一般に脂肪族カルボン酸又はその誘導体と
アンモニアとの反応によって工業的に作られている。そ
の反応形態としては大別して気相法と液相法がある。気
相法の反応では、Zr, Ta, Ga, In, Sc, Nb, Hf, Fe, Zn
又はSnの酸化物(特開平4−208260)、酸化アルミニウ
ム、シリカゲル、酸化トリウムなどの脱水作用を持つ触
媒を使用して、予め気化させた脂肪族カルボン酸又はそ
の誘導体をアンモニアと共に 250〜600 ℃の温度で接触
させる方法が実施されている。しかし気相法では原料物
質を気化させるために、液相法に比べて比較的エネルギ
ーコストがかかるという欠点を有する。
【0003】一方、液相法で反応させる場合には、触媒
の存在下で脂肪族カルボン酸又はその誘導体を加熱溶解
させ、この中にアンモニアガスを吹き込むことにより回
分式もしくは連続式で広く行われている。この反応で使
用される触媒としては、コバルトの脂肪族カルボン酸塩
(米国特許第2,493,637 号)、鉄又は鉄化合物(特開昭
58-39653)、酸化亜鉛などが知られている。そのような
触媒は 300℃以下の反応温度で高い触媒活性を示すが、
いずれも反応液に対して溶解し得るもので、反応生成物
からの特別な分離、回収操作が必要となる。そのために
蒸留収率の低下や廃棄物の増加を招くので好ましくな
い。
【0004】本発明の課題は、脂肪族カルボン酸低級ア
ルキルエステルとアンモニアとの反応において、反応温
度が 300℃以下で高い活性を持ち、反応液に難溶の固体
触媒を用いて、製品中への触媒の溶解がなく、高収率で
かつ高品質な脂肪族ニトリルを安価に製造する方法を提
供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、酸で処理
した酸化ニオブが触媒として高い活性を持ち、反応液に
難溶な固体であることを見出し、本発明を完成するに至
った。即ち本発明は、脂肪族カルボン酸低級アルキルエ
ステルとアンモニアとを、酸で処理した酸化ニオブの存
在下に反応させる脂肪族ニトリルの製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明で使用する脂肪族カルボン
酸低級アルキルエステルは、直鎖又は分岐の炭素数6〜
22の飽和又は不飽和脂肪族モノカルボン酸低級アルキル
エステルもしくはジカルボン酸ジ低級アルキルエステル
である。ここで低級アルキルとしては炭素数1〜5のア
ルキルであるが、具体的にはメチル、エチル、プロピ
ル、イソプロピルが挙げられ、特にメチルが好ましい。
これらの脂肪族カルボン酸低級アルキルエステルは、各
々単独或いは2種以上混合して使用することができる。
【0007】これらの脂肪族カルボン酸低級アルキルエ
ステルの具体例としては、カプロン酸メチル、カプリル
酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリ
スチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メ
チル、アラキン酸メチル、ベヘン酸メチル、ジメチルオ
クタン酸メチル、ブチルヘプチルノナン酸メチル、ヘキ
セン酸メチル、オクテン酸メチル、デセン酸メチル、ド
デセン酸メチル、テトラデセン酸メチル、ヘキサデセン
酸メチル、オクタデセン酸メチル、エイコセン酸メチ
ル、ドコセン酸メチル、アジピン酸ジメチル、アゼライ
ン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、デカメチレンジカ
ルボン酸ジメチル、ヘキサデカメチレンジカルボン酸ジ
メチル、オクタデカメチレンジカルボン酸ジメチル等が
挙げられる。
【0008】本発明で使用する酸で処理した酸化ニオブ
とは、酸水溶液と酸化ニオブを接触処理したものをい
う。接触させる酸としては、塩酸、ホウ酸、硝酸、硫
酸、リン酸等の無機酸が好ましく、特に塩酸、ホウ酸が
活性、選択性の面から好ましい。酸水溶液の濃度は特に
限定されないが、0.1〜5mol/Lの範囲が触媒活性化効
果の点で好ましく、特に0.5〜5mol/Lが好ましい。ま
たこの時、酸と酸化ニオブとの割合は酸化ニオブ1モル
に対し酸が 0.1〜50モルが好ましく、より好ましくは
0.5〜30モルである。
【0009】本発明で使用する酸で処理した酸化ニオブ
には、酸が残存していても良いし、残存していなくても
良い。酸が残存している場合には、その存在量は酸化ニ
オブ1モルに対して0.05モル以下が好ましく、特に0.03
モル以下が好ましい。酸の残存が上記範囲であれば、反
応液中に酸が溶出することがほとんどなく、得られた脂
肪族ニトリルを水素還元して脂肪族アミンに誘導する際
に、反応時間が遅延する等の悪影響を及ぼさないため好
ましい。
【0010】本発明で使用する酸化ニオブには、五酸化
ニオブ、四酸化ニオブ、三酸化ニオブ、二酸化ニオブ、
一酸化ニオブがあり、どの酸化ニオブを使用しても差し
支えないが、反応性の観点から五酸化ニオブを使用する
のが好ましい。酸化ニオブの形態は特に制限はなく、含
水物を用いても、無水物を用いても良い。
【0011】本発明で使用する酸で処理した酸化ニオブ
の調製方法は、特に限定されないが、例えば酸化ニオブ
を酸の水溶液に懸濁した後、蒸発乾固、焼成する方法が
用いられる。酸水溶液中での酸化ニオブの懸濁時間は、
特に制限はないが、24時間以上行う方が触媒活性化効果
が大きい。水洗は行っても行わなくても良いが、酸が多
量に残存する場合には、水洗したほうが良い。また焼成
は行っても行わなくても良いが、焼成する場合、焼成温
度には特に制限はないが、500 ℃以下の温度が好まし
い。上記の範囲を越える温度で焼成すると触媒の結晶化
が生じるため、表面積が小さくなり、触媒活性が低下す
る。
【0012】本発明の方法においては、反応は懸濁床に
よる回分、半回分、連続式でも、また固定床流通式でも
実施できる。反応温度は、好ましくは180〜350℃、より
好ましくは250〜300℃の範囲が選定される。反応時の圧
力は、通常やや加圧された状態で行なうが、常圧でも良
い。酸で処理した酸化ニオブ触媒の使用量は、懸濁床に
よる回分、半回分、連続式で実施する場合には、カルボ
ン酸低級アルキルエステルに対して 0.1〜10重量%、好
ましくは 0.3〜3重量%である。また固定床流通式で実
施する場合には、反応混合物の触媒層における平均滞留
時間は、1秒〜10分が好ましい。
【0013】
【発明の効果】本発明の方法は、酸化ニオブを酸で処理
することによって得られる、高活性で、反応液に難溶の
酸化ニオブを触媒に用いることにより、従来の方法と比
較して、製品中への触媒の溶解がなく、優れた品質の脂
肪族ニトリルを高収率で製造することができ、工業的に
極めて有意義である。
【0014】
【実施例】実施例1 フラスコに五酸化ニオブ水和物(CBMM社製、含水量13.4
wt%)30.14gと0.5mol/Lのホウ酸水溶液 100mlを加え
て、室温で48時間攪拌し酸処理した後、吸引濾過した。
得られた触媒前駆体をイオン交換水1000ml中で30分間攪
拌し、吸引濾過した。この水洗を3回繰り返した後、 1
00℃で乾燥し、 300℃で3時間焼成してホウ酸で処理し
た酸化ニオブ触媒を得た。
【0015】次に、撹拌器、ガス導入管、温度計及び脱
水装置を装備した四つ口フラスコに、上記触媒1.0gとス
テアリン酸メチル500gを混合し、これに260℃で1050ml
/minのアンモニアガスを6時間に亘って導入して反応
させた。触媒を分離して得られた反応生成物をガスクロ
マトグラフィー[ガスクロ装置:HEWLETT PACKARD Seri
es 5890、カラム:J&W 製、DB-5(内径×長さ:0.53mm
×15m)]で組成分析した結果を表1に示す。またIC
P発光分析によって元素分析した結果、反応生成物中の
ホウ素及びニオブは検出限界以下であった。
【0016】実施例2 触媒調製において、ホウ酸の代わりに塩酸を用いた以外
は実施例1と同様の操作を繰り返し、塩酸で処理した酸
化ニオブ触媒を得た。その触媒を用いて実施例1と同一
条件で反応を行った。反応生成物を実施例1と同様に分
析した。結果を表1に示す。反応生成物中の塩素及びニ
オブは検出限界以下であった。
【0017】比較例1 比較のために、酸で処理していない五酸化ニオブを触媒
として用いて、実施例1と同様に反応を行った。反応生
成物を実施例1と同様に分析した。結果を表1に示す。
【0018】実施例3〜5 触媒調製でホウ酸濃度を表1に示した濃度に変更した以
外は実施例1と同様の操作を繰り返し、ホウ酸で処理し
た酸化ニオブ触媒を得た。その触媒を用いて実施例1と
同一条件で反応を行った。反応生成物を実施例1と同様
に分析した。結果を表1に示す。いずれも反応生成物中
にはホウ素及びニオブは検出されなかった。
【0019】実施例6〜7 実施例1で調製した触媒を使用して、反応温度及び反応
時間を表1に示した値に変更した以外は実施例1と同様
に反応した。反応生成物を実施例1と同様に分析した。
結果を表1に示す。いずれも反応生成物中にはホウ素及
びニオブは検出されなかった。
【0020】
【表1】
【0021】実施例8 実施例1で調製した触媒を使用して、ステアリン酸メチ
ルの代わりにラウリン酸メチルを用いた以外は実施例1
と同様に反応した。反応生成物を実施例1と同様に分析
した結果、ラウリロニトリルの生成量は87.3(GC%)で
あり、また反応生成物中にはホウ素及びニオブは検出さ
れなかった。
【0022】実施例9 実施例1と同様の操作を繰り返して調製した焼成前のホ
ウ酸で処理した酸化ニオブ粉末を押し出し成形した後、
300℃で3時間焼成して成形触媒を得た。その触媒1.0g
を内径10mm、長さ 500mmのステンレス製筒状反応管の中
央部に充填した。アンモニアガスを88.3L/hr 、ステア
リン酸メチルを1.5g/hr の速度で反応管の上部から供給
し、 260℃、常圧下で反応させた。得られた反応生成物
は気液分離処理し、次いで実施例1と同様にガスクロマ
トグラフィーでステアロニトリル生成量を測定した結
果、99.2(GC %)であった。また反応生成物中のホウ素
及びニオブは検出限界以下であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安倍 裕 和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社研 究所内 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC54 BA12 BA30 BA81 BE14 QN22 4H039 CA70 CD40

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 脂肪族カルボン酸低級アルキルエステル
    とアンモニアとを、酸で処理した酸化ニオブの存在下に
    反応させる脂肪族ニトリルの製造方法。
  2. 【請求項2】 0.1〜5mol/Lの濃度の酸水溶液で処理
    した酸化ニオブを用いる請求項1記載の脂肪族ニトリル
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 酸が、塩酸又はホウ酸である請求項1又
    は2記載の脂肪族ニトリルの製造方法。
  4. 【請求項4】 脂肪族カルボン酸低級アルキルエステル
    が、炭素数6〜22の脂肪族カルボン酸のメチルエステル
    である請求項1〜3のいずれか一項に記載の脂肪族ニト
    リルの製造方法。
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JP2010527976A (ja) * 2007-05-24 2010-08-19 アルケマ フランス 環状カーボネートならびに脂肪族ニトリルおよび/またはアミンの同時製造
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