JP4219483B2 - 脂肪族ニトリルの製造方法 - Google Patents

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  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高収率でかつ高品質な脂肪族ニトリル類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
脂肪族ニトリルは、一般に脂肪族カルボン酸又はその誘導体とアンモニアとの反応によって工業的に作られている。その反応形態としては大別して気相法と液相法がある。気相法の反応では、Zr, Ta, Ga, In, Sc, Nb, Hf, Fe, Zn又はSnの酸化物(特開平4−208260)、酸化アルミニウム、シリカゲル、酸化トリウム、酸化チタンなどの脱水作用を持つ触媒を使用して、予め気化させた脂肪族カルボン酸又はその誘導体をアンモニアと共に 250〜600 ℃の温度で接触させる方法が実施されている。しかし気相法では原料物質を気化させるために、液相法に比べて比較的エネルギーコストがかかるという欠点を有する。
【0003】
一方、液相法で反応させる場合には、触媒の存在下で脂肪族カルボン酸又はその誘導体を加熱溶解させ、この中にアンモニアガスを吹き込むことにより回分式もしくは連続式で広く行われている。この反応で使用される触媒としては、コバルトの脂肪族カルボン酸塩(米国特許第2,493,637 号)、鉄又は鉄化合物(特開昭58-39653)、酸化亜鉛などが知られている。そのような触媒は 300℃以下の反応温度で高い触媒活性を示すが、いずれも反応液に対して溶解し得るもので、反応生成物からの特別な分離、回収操作が必要となる。そのために蒸留収率の低下や廃棄物の増加を招くので好ましくない。
【0004】
本発明の課題は、脂肪族カルボン酸とアンモニアとの反応において、反応温度が 300℃以下で高い活性を持ち、反応液に難溶の固体触媒を用いて、製品中への触媒の溶解がなく、高収率でかつ高品質な脂肪族ニトリルを安価に製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸化チタンを主成分とする複合酸化物触媒が、300 ℃以下の反応温度でも高い触媒活性を持ち、かつ反応液に難溶な固体であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、脂肪族カルボン酸とアンモニアとを、酸化チタンを主成分とする複合酸化物触媒の存在下に反応させる脂肪族ニトリルの製造方法である。
【0006】
なお、本発明において「複合酸化物」とは、その内部又は表面において2種以上の金属が共存している酸化物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する脂肪族カルボン酸は、直鎖又は分岐の炭素数6〜22の飽和又は不飽和脂肪族モノカルボン酸もしくはジカルボン酸である。これらの脂肪族カルボン酸は、各々単独或いは2種以上混合して使用することができる。
【0008】
これらの脂肪族カルボン酸の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、ジメチルオクタン酸、ブチルヘプチルノナン酸、ヘキセン酸、オクテン酸、デセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オクタデセン酸、エイコセン酸、ドコセン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ヘキサデカメチレンジカルボン酸、オクタデカメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0009】
本発明の方法において使用する触媒は、酸化チタンを主成分とする複合酸化物触媒であるが、酸化チタンに、珪素、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、ガリウムおよびゲルマニウムからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物を複合した複合酸化物触媒が好ましく、特に酸化チタンに、シリカ、酸化ニオブ又は酸化ジルコニウムを複合した複合酸化物触媒が好ましい。本発明の複合酸化物触媒中の酸化チタン以外の酸化物の含有量は、高い活性が得られる点で、1〜25重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましい。
【0010】
本発明の方法において使用する触媒の調製方法は、特に限定されないが、酸化チタンとその他の酸化物が複合体を形成するような方法、例えば沈着法、共沈法、アルコキシド法、含浸法などが用いられる。触媒の焼成温度は特に制限はないが、 500℃以下で行うことが好ましい。 500℃を越える温度で焼成すると触媒の表面積が小さくなり、活性が低下する。
【0011】
本発明の方法においては、反応は懸濁床による回分、半回分、連続式でも、また固定床流通式でも実施できる。反応温度は、好ましくは 180〜350 ℃、より好ましくは 250〜300 ℃の範囲が選定される。反応時の圧力は、通常やや加圧された状態で行うが、常圧でも良い。複合酸化物触媒の使用量としては、懸濁床による回分、半回分、連続式で実施する場合には、脂肪族カルボン酸に対して好ましくは 0.1〜10重量%、より好ましくは 0.3〜3重量%である。また固定床流通式で実施する場合には、反応混合物の触媒層における平均滞留時間は、1秒〜10分が好ましい。
【0012】
【発明の効果】
本発明の方法は、高活性で反応液には難溶の複合酸化物触媒を用いることにより、従来の方法と比較して、製品中への触媒の溶解がなく、優れた品質の脂肪族ニトリルを高収率で製造することができ、工業的に極めて有意義である。
【0013】
【実施例】
実施例1〜4、比較例1〜3
酸化チタンとシリカが表1に示す重量比となるようにフラスコにチタンテトライソプロポキシド、オルト珪酸テトラエチル並びに溶媒としてイソプロパノールを仕込んだ。80℃まで昇温後、攪拌下で金属アルコキシドに対して6モル倍量のイオン交換水を滴下した。滴下終了後、その温度で5時間攪拌し続けた。濾過して取り出した触媒前駆体はイオン交換水で水洗濾過してから、 110℃で乾燥し、300 ℃で3時間焼成して本発明に使用する複合酸化物触媒を得た。
【0014】
次に、攪拌器、ガス導入管、温度計及び脱水装置を装備した四つ口フラスコに、上記複合酸化物触媒5.0gとステアリン酸500gを混合し、 260℃で1050ml/minのアンモニアガスを5時間に亘って導入して反応させた。得られた反応生成物をガスクロマトグラフィー[ガスクロ装置:HEWLETT PACKARD Series 5890 、カラム:J&W 製DB-5(内径×長さ:0.53mm×15m)]で組成分析してニトリルの生成量を測定した。なお、比較のために、上述と同様の操作を繰り返して調製した酸化チタン、シリカそれぞれ単独の触媒、又はそれらを物理混合して得た酸化チタン:シリカの重量比95:5の触媒について、同一条件で反応を行った。その結果を表1に示す。本発明の触媒を用いた場合はいずれも反応の進行が速く、またICP発光分析による元素分析の結果、反応生成物中のチタン及び珪素は検出限界以下であった。
【0015】
実施例5〜6
触媒調製において、オルト珪酸テトラエチルの代わりにジルコニウムテトラプロポキシドを使用し、酸化チタンと酸化ジルコニウムが表1に示す重量比となるようにする以外は実施例1と同様の操作を繰り返して複合酸化物触媒を得た。その複合酸化物触媒を使用して、実施例1と同一条件で反応を行い、反応生成物を実施例1と同様に分析した。結果を表1に示す。反応生成物中のチタン及びジルコニウムは検出限界以下であった。
【0016】
実施例7〜9
触媒調製において、オルト珪酸テトラエチルの代わりにニオビウムペンタエトキシド、タンタリウムペンタエトキシド又はガリウムトリプロポキシドを使用する以外は実施例2と同様の操作を繰り返して複合酸化物触媒を得た。その複合酸化物触媒を使用して、実施例1と同一条件で反応を行い、反応生成物を実施例1と同様に分析した。結果を表1に示す。反応生成物中の触媒由来の金属元素は検出限界以下であった。
【0017】
実施例10
実施例2で調製した酸化チタンとシリカの重量比が95:5の複合酸化物触媒を使用して、反応温度 300℃でアンモニアガスを3時間に亘って導入した以外は実施例1と同一条件で反応を行った。反応生成物を実施例1と同様に分析した。結果を表1に示す。反応生成物中のチタン及び珪素は検出限界以下であった。
【0018】
【表1】
Figure 0004219483
【0019】
実施例11
実施例2で調製した酸化チタンとシリカの重量比が95:5の複合酸化物触媒を使用して、ステアリン酸の代わりにラウリン酸を使用した以外は実施例1と同一条件で反応を行なった。反応生成物を実施例1と同様に分析した結果、ラウリロニトリルの生成量は91.8(GC%)であり、また反応生成物中のチタン及び珪素は検出限界以下であった。
【0020】
実施例12
酸化チタンとシリカの重量比が95:5となるように、実施例2と同様の操作を繰り返して焼成前の粉末を調製した。その粉末を押し出し成形後、 300℃で3時間焼成して成形触媒を得た。その触媒1.0gを内径10mm、長さ 500mmのステンレス製筒状反応管の中央部に充填した。アンモニアガスを706 mL/hr 、ステアリン酸を1.2g/hr の速度で反応管の上部から供給し、 250℃、常圧下で反応させた。得られた反応生成物は気液分離及び脱水処理し、次いで実施例1と同様にガスクロマトグラフィーでステアロニトリル生成量を測定した結果、99.1(GC%)であった。また反応生成物中のチタン及び珪素は検出限界以下であった。

Claims (3)

  1. 脂肪族カルボン酸とアンモニアとを、酸化チタンを主成分とする複合酸化物触媒の存在下に反応させる脂肪族ニトリルの製造方法。
  2. 酸化チタンに複合される酸化物が、珪素、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、ガリウムおよびゲルマニウムからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物である請求項1記載の脂肪族ニトリルの製造方法。
  3. 脂肪族カルボン酸が、炭素数6〜22のカルボン酸である請求項1又は2記載の脂肪族ニトリルの製造方法。
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