JP2000007570A - 抗内分泌障害剤 - Google Patents

抗内分泌障害剤

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JP2000007570A
JP2000007570A JP10177611A JP17761198A JP2000007570A JP 2000007570 A JP2000007570 A JP 2000007570A JP 10177611 A JP10177611 A JP 10177611A JP 17761198 A JP17761198 A JP 17761198A JP 2000007570 A JP2000007570 A JP 2000007570A
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trehalose
endocrine
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administration
endocrine disorder
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JP10177611A
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English (en)
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Nariyuki Arai
成之 新井
Yoshiatsu Fukuda
恵温 福田
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Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK
Original Assignee
Hayashibara Biochemical Laboratories Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 副作用を惹起することなく、穏やかな抗内
分泌障害作用を発揮する手段を提供することにある。 【解決手段】有効成分としてトレハロースを含んでなる
抗内分泌障害剤を提供することにより解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は二糖類の1種であ
るトレハロースの新規な用途、とりわけ、有効成分とし
てトレハロースを含んでなる抗内分泌障害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】高等動物の内分泌器官は、生体内外の情
報に応じて50余種のホルモンを分泌すると言われてい
る。分泌されたホルモンは、血液を介して標的組織に運
ばれ、その代謝の速度と程度をそれぞれ調節することに
よって生体のホメオスターシスを維持する。内分泌の最
大の特徴は、関連する内分泌器官の間に一定の平衡状態
が保たれていることであり、例えば、ホルモンの血中レ
ベルが上昇すると、直接又は間接にフィードバック抑制
が働き、内分泌器官におけるホルモンの分泌が抑制され
る。このように、内分泌は高等動物の生命活動に不可欠
のシステムであり、したがって、内分泌疾患などによ
り、内分泌が正常に機能しなくなると、生体は正常な生
命活動を営むことができなくなる。例えば、甲状腺の機
能が低下し、甲状腺ホルモンが欠乏すると、心身の重篤
な発育不全が起こり、逆に、過剰に分泌されると、バセ
ドウ病の症状を呈することとなる。さらに、インスリン
が欠乏すると、血糖値が正常レベルを越えて上昇し、い
わゆる、糖尿病を惹起することとなる。
【0003】内分泌障害が病因となるか、あるいは、内
分泌障害を伴う疾患を治療するには、通常、ホルモン製
剤又はホルモンの分泌を誘発若しくは抑制する医薬製剤
が投与される。しかしながら、これらの医薬製剤は重篤
な副作用を惹起することがあり、患者によっては、所期
の治療成績を得ることなく投与を断念せざるを得ないこ
とがある。それ故に、ホルモン製剤及びホルモンの分泌
を誘発若しくは抑制する医薬製剤は、通常、用量・用法
が厳密に規定されており、医師の処方なくして用いるこ
とはできない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】斯かる状況に鑑み、こ
の発明は、副作用を惹起することなく、穏やかな抗内分
泌障害作用を発揮する手段を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者が鋭意検索した
ところ、二糖類の1種であるトレハロースは、ヒトを含
む哺乳類に投与すると、その内分泌を本来あるべき正常
な状態に調節したり、内分泌障害に伴う諸症状を緩和す
るという全く予想外の知見に到達した。すなわち、この
発明は、前記課題を、有効成分としてトレハロースを含
んでなる抗内分泌障害剤を提供することによって解決す
るものである。
【0006】トレハロースは2分子のグルコースが還元
性基同士で結合してなる二糖類であり、自然界において
は細菌、真菌、藻類、昆虫などに広く分布している。食
品、化粧品及び医薬品の諸分野においては、蔗糖に代わ
る糖質としてのトレハロースの需要が急速に伸びつつあ
るけれども、エネルギー補給作用、皮膚に対する保湿作
用及び血中脂肪酸の調節作用を除けば、哺乳類における
トレハロースの生理作用はほとんど解明されていないと
いうのが実状である。
【0007】トレハロースは公知の物質である。しかし
ながら、この発明は、既述のとおり、トレハロースが哺
乳類において抗内分泌障害作用を発揮するという独自の
知見に基づくものであって、トレハロースの抗内分泌障
害剤としての用途はこの発明をもって嚆矢とするもので
ある。
【0008】
【発明の実施の形態】この発明は、有効成分としてトレ
ハロースを含んでなる抗内分泌障害剤に関するものであ
る。周知のとおり、トレハロースには、互いに結合様式
が相違するα,α体、α,β体及びβ,β体と呼ばれる
3種類の異性体が存在する。これらはヒトを含む哺乳類
において同様の抗内分泌障害作用を発揮するので、いず
れもこの発明において有利に用いることができる。した
がって、この発明の抗内分泌障害剤においては、これら
の異性体の1又は複数が全体として有効量含まれてさえ
いれば、その調製方法や性状は問わない。
【0009】トレハロースは種々の方法で調製すること
ができる。この発明はトレハロースの調製に関するもの
ではないので詳細な説明は割愛するけれども、経済性を
問題にするのであれば、同じ特許出願人による特開平7
−143876号公報、特開平7−213283号公
報、特開平7−322883号公報、特開平7−298
880号公報、特開平8−66187号公報、特開平8
−66188号公報、特開平8−336388号公報及
び特開平8−84586号公報のいずれかに開示された
非還元性糖質生成酵素及びトレハロース遊離酵素を澱粉
部分加水分解物に作用させる方法が好適である。この方
法によるときには、廉価な材料である澱粉から、トレハ
ロースのα,α体が高収量で得られる。ちなみに、斯か
る方法により調製された市販品としては、食品級トレハ
ロース粉末(商品名『トレハオース』、純度98%以
上、株式会社林原商事販売)及び食品級トレハロースシ
ロップ(商品名『トレハスター』、28%以上、株式会
社林原商事販売)及び試薬級トレハロース(純度99%
以上、株式会社林原生物化学研究所販売)がある。な
お、α,α体は、マルトースに、例えば、同じ特許出願
人による特開平7−170977号公報、特開平8−2
63号公報及び特開平8−149980号公報のいずれ
かに記載されたマルトース・トレハロース変換酵素を作
用させるか、あるいは、公知のマルトース・ホスホリラ
ーゼ及びトレハロース・ホスホリラーゼを組合せて作用
させることによっても得ることができる。
【0010】トレハロースのα,β体を調製するには、
例えば、同じ特許出願人による特開平4−144694
号公報及び特開平4−179490号公報に記載された
方法にしたがって澱粉部分加水分解物と乳糖との混合物
にシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラ
ーゼとβ−ガラクトシダーゼをこの順序で作用させれば
よい。また、β,β体は公知の化学合成により得ること
ができる。なお、この発明においては、トレハロースは
必ずしも単離されておらずともよく、調製方法に特有な
他の糖質との未分離組成物としての形態、あるいは、ヒ
トを含む哺乳類においてトレハロースの抗内分泌障害作
用を実質的に妨げない他の適宜成分との混合物としての
形態であってもよい。なお、この発明の抗内分泌障害剤
を通常の注射又は点滴注射により非経口的に投与する場
合には、原料となるトレハロース中のパイロジェンは、
例えば、イオン交換樹脂、多孔性樹脂、活性炭及びメン
ブランフィルターを含む脱塩手段、吸着手段及び濾過手
段の1又は複数により事前に除去しておくのが望まし
い。
【0011】トレハロースは、ヒトを含む哺乳類に投与
すると、内分泌の平衡を本来あるべき正常な状態に調節
したり、内分泌障害に伴う諸症状を緩和する作用を発揮
する。すなわち、内分泌に障害なく、正常に機能してい
る場合には、その正常な内分泌を維持・増進することに
よって、内分泌障害や内分泌疾患を予防するように作用
する。一方、ホルモン欠損症を含む内分泌疾患などによ
り、例えば、副腎皮質刺激ホルモン、プロラクチン、甲
状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモ
ン、色素胞刺激ホルモン、バソプレッシン、副甲状腺ホ
ルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリンなどの分
泌に障害がある場合には、その内分泌障害に伴う、例え
ば、下垂体前葉機能低下症、視床下部下垂体機能低下
症、汎下垂体機能低下症を含む下垂体機能低下症、副腎
不全、副腎皮質腫瘍、クッシング症候群、甲状腺機能低
下症、バセドウ病、クレチン症、低ゴナドトロピン性類
宦官症、原発中枢性無月経、早発思春期、晩発思春期、
シーハン症候群、キアリ−フロンメル症候群、神経性食
思不振症、顆粒膜細胞腫、副腎性器症候群、下垂体剔
除、黄体機能不全、無精子症、クラインフェルター症候
群、ターナー症候群、女性化睾丸、卵巣発育不全、卵巣
無形成症、早発更年期、アジソン病、ネルソン症候群、
尿崩症、粘液水腫、眼球突出、副甲状腺機能低下症、糖
尿病、慢性膵疾患、インシュリノーマ、グルカゴノー
マ、ガストリノーマ、ゾーリンガー−エリソン症候群、
悪性貧血、高ガストリン血症を含む欠乏症及び過剰症を
緩和するように作用する。さらに、内分泌疾患又はホル
モン感受性疾患を治療する目的で脳下垂体ホルモン剤、
唾液腺ホルモン剤、甲状腺・抗甲状腺ホルモン剤、蛋白
同化ステロイド剤、副腎皮質ホルモン剤、男性ホルモン
剤、卵胞・黄体ホルモン剤、混合ホルモン剤、糖尿病用
剤などのホルモン製剤又はホルモンの分泌を誘発若しく
は抑制する医薬製剤を投与している場合には、その投与
に伴う、例えば、発疹、蕁麻疹、発熱、発汗、動悸、息
ぎれ、貧血、体温下降、血圧上昇、頭痛、不眠、眩暈、
不安感、神経過敏、胸やけ、食欲不振、悪感、嘔吐、下
痢、便秘、腹痛、腹鳴、腹部膨満感、排便切迫、倦怠
感、疲労感、脱力感、関節痛、筋肉痛、体重減少、味覚
減退、肝障害、掻痒感などの副作用を緩和するように作
用する。なお、この発明の抗内分泌障害剤は、卵巣炎、
卵巣癌、卵巣腺癌、卵巣嚢胞及び偽粘液性嚢胞腺腫の治
療・予防や、諸種の環境ホルモンによる内分泌の撹乱に
対しても効果がある。
【0012】この発明の抗内分泌障害剤は、トレハロー
ス単独の形態でも用いられるが、通常、有効成分として
のトレハロースと、トレハロースの投与を容易ならしめ
る他の成分からなる飲料を含む食品、あるいは、注射剤
及び補輸液を含む医薬品の形態で提供される。いずれの
形態にあっても、この発明の抗内分泌障害剤は、通常、
トレハロースを0.1%(w/w)以上、望ましくは、
1%(w/w)以上含有する。
【0013】この発明の抗内分泌障害剤の個々の形態に
ついて説明すると、食品としての形態の場合には、有効
量のトレハロースとともに、例えば、水、アルコール、
澱粉質、蛋白質、繊維質、糖質、脂質、ビタミン、ミネ
ラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、香辛料、安定
剤、酸化防止剤、防腐剤のごとき食品に通常用いられる
原料及び/又は素材をそれぞれ配合し、用途に応じて、
例えば、溶液状、懸濁液状、乳液状、クリーム状、ペー
スト状、粉末状、顆粒状、あるいは、それ以外の所望の
形状に成形された固形状の健康食品、健康補助食品又は
栄養調整食品に調製する。
【0014】一方、医薬品としての形態の場合には、有
効量のトレハロースとともに、例えば、乳糖、小麦澱
粉、米澱粉、玉蜀黍澱粉、馬鈴薯澱粉、タルク、カオリ
ン、アラビアガム、亜硫酸水素ナトリウム、コレステロ
ールなどの賦形剤、カプセル、白色軟膏、黄色ワセリ
ン、親水ワセリン、白色ワセリン、オリーブ油、カカオ
脂、ゴマ油、ミツロウ、サラシミツロウ、大豆油、単軟
膏、ツバキ油、ラウリル硫酸ナトリウム、落花生油、牛
脂、セタノール、豚脂、加水ラノリン、精製ラノリン、
マクロゴール軟膏、パラフィン、ステアリン酸、ベント
ナイト、ゾンネベース、プラスチベース、ポロイド、親
水ポロイドなどの軟膏基剤、精製水、注射用蒸留水、滅
菌精製水、プロピレングリコール、アセトン、エーテ
ル、石油ベンジン、トリエタノールアミンなどの溶解
剤、サッカリンナトリウム、単シロップ、白糖、蜂蜜、
ハッカ油、メントール、ユーカリ油、ラベンダー油、ロ
ーズ油、ウイキョウ油、カンゾウエキス、オレンジ油、
芳香散、クエン酸などの矯味矯臭着色剤、酒石酸などの
清涼止渇剤、ウィテップゾールなどの坐剤基剤、酢酸ナ
トリウム緩衝剤、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息
香チンキ、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息
香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタ
ノールなどの防腐剤、さらには、チオ硫酸ナトリウム、
塩化ナトリウム、無水クエン酸などの電解質を含む調製
用薬の1又は複数を適宜配合し、投与目的に応じて、例
えば、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、
丸剤、眼軟膏剤、懸濁剤、乳剤、硬膏剤、坐剤、散剤、
酒精剤、錠剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、注射剤、補輸
液、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ
剤、芳香水剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス
剤、ローション剤、さらには、点鼻剤、鼻噴霧剤、下気
道吸入剤、眼科用徐放剤、口腔粘膜貼付剤、浣腸剤など
に調製する。さらに、この発明は、発明の目的を逸脱し
ない範囲で、必要に応じて、内分泌疾患の治療に通常用
いられる、例えば、脳下垂体ホルモン剤、唾液腺ホルモ
ン剤、甲状腺・抗甲状腺ホルモン剤、蛋白同化ステロイ
ド剤、副腎皮質ホルモン剤、男性ホルモン剤、卵胞・黄
体ホルモン剤、混合ホルモン剤、糖尿病用剤などの抗内
分泌疾患剤の1又は複数を併用することを妨げない。
【0015】医薬品としての最も望ましい形態は注射剤
及び補輸液であり、この場合には、トレハロースととも
に、経口蛋白アミノ酸製剤、注射剤、糖質輸液、高カロ
リー輸液などの補輸液に通常用いられる、例えば、グル
コース、マルトース、フラクトース、ソルビトール、キ
シリトール、デキストリンなどの糖質、水酸化ナトリウ
ム、塩化ナトリウム、沃化ナトリウム、酢酸ナトリウ
ム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、燐酸一水素
ナトウム、燐酸二水素ナトリウム、塩化カリウム、沃化
カリウム、乳酸カリウム、クエン酸カリウム、燐酸一水
素カリウム、燐酸二水素カリウム、酢酸カルシウム、乳
酸カルシウム、グリセロ燐酸カルシウム、グルコン酸カ
ルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫
酸鉄、塩化第一鉄、硫酸銅、硫酸マンガンなどの電解
質、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L
−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニ
ン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アルギニ
ン、L−ヒスチジン、グリシン、L−アラニン、L−シ
ステイン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L
−プロリン、L−セリン、L−チロシンなどのアミノ
酸、塩酸チアミン、燐酸リボフラビンナトリウム、塩酸
ピリドキシン、シアノコバラミン、パントテン酸カルシ
ウム、ニコチン酸アミド、葉酸、ビオチン、重酒石酸コ
リン、L−アスコルビン酸、酢酸レチノール、酢酸トコ
フェロール、フィトナジオンなどのビタミン類、大豆
油、サフラワー油、亜麻仁油、エゴマ油、ココナッツ
油、鯨油、魚油などの動植物由来の脂質、全粉乳、脱脂
粉乳、カゼイン、大豆蛋白質、卵白加水分解物などの蛋
白質が配合される。
【0016】注射剤及び補輸液を調製するには、例え
ば、水にトレハロースとともに、必要に応じて、上記の
ごときトレハロース以外の成分の1又は複数をトレハロ
ース濃度が0.1%(w/w)以上、望ましくは、1乃
至10%(w/w)になるように溶解し、水溶液をメン
ブランフィルターなどで滅菌濾過した後、適宜容器に無
菌的に充填し、そのまま密封するか、あるいは、凍結乾
燥してから密封する。溶液のpHとしては中性付近、と
りわけ、pH6.0乃至7.4付近が望ましい。斯かる
pHを維持するには、適量の酸及び/又はアルカリを添
加するか、あるいは、酢酸緩衝剤、燐酸緩衝剤及び炭酸
緩衝剤などの製剤学的に許容される緩衝剤を適量添加す
ればよい。
【0017】この発明の抗内分泌障害剤の使用方法につ
いてヒトの場合を例に挙げて説明すると、この発明の抗
内分泌障害剤は経口的に使用しても非経口的に使用して
も顕著な抗内分泌障害作用を発揮する。使用目的にもよ
るが、例えば、内分泌障害や内分泌疾患の予防を目的す
る場合には、通常、健康食品、健康補助食品又は栄養調
整食品などの食品の形態にして経口的に投与する。一
方、内分泌障害や内分泌疾患を治療したり、ホルモン製
剤による副作用を緩和することが目的である場合には、
通常、成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤及び
半消化態流動食を含む経口蛋白アミノ酸製剤、注射剤、
糖質輸液、高カロリー輸液などの補輸液か、あるいは、
散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などの形態にして経口
的又は非経口的に投与する。注射剤又は補輸液の場合で
あって、内分泌障害に伴う諸症状の緩和を目的とする場
合には、通常の注射又は点滴注射などにより、1回当り
100mlまでの比較的低用量を投与し、また、内分泌
疾患の治療を目的とする場合には、点滴注射などによ
り、1回当り500mlまでの比較的大用量を投与す
る。いずれの場合も、投与速度は、トレハロース重量換
算で0.5g/kg体重/時間以下、投与時間は2時間
以内とするのが望ましい。この発明による注射剤及び補
輸液は、例えば、皮下、筋肉内、腹腔内及び静脈内に非
経口投与することが可能であるが、最も望ましいのは経
静脈投与である。使用目的にもよるが、この発明の抗内
分泌障害剤は、通常、トレハロースの投与量が約0.5
g乃至100g/成人/日、望ましくは、約1乃至50
g/成人/日の用量で用いられる。
【0018】次に、この発明の抗内分泌障害剤の有効性
と安全性につき、実験例に基づいて説明する。
【0019】
【実験1】〈動物実験〉食品級トレハロース粉末(商品
名『トレハオース』、トレハロース純度98%以上、株
式会社林原商事販売)を蒸留水に溶解し、胃ゾンデを用
いて、これを5週齢ddyマウス(12匹/群)に1m
g/kg体重/回、10mg/kg体重/回又は100
mg/kg体重/回の用量で毎日1回、6日間に亙って
経口投与した。
【0020】トレハロースの投与開始から7日目に、マ
ウスの腹腔内に軽度糖尿病を誘発する薬剤であるストレ
プトゾトシン(以下、「STZ」と略記する。)を10
0mg/kg体重注射投与した後、その翌日から上記と
同様にしてトレハロースを5日間経口投与した。2回目
のトレハロース投与開始から6日目にSTZを上記と同
様にして再度注射し、その翌日から、上記と同様にして
トレハロースをさらに5日間経口投与した。トレハロー
スの最終投与から18時間絶食させた後、胃ゾンデを用
いてグルコースを2g/kg体重経口投与する一方、グ
ルコース投与の直前並びに投与後0.5時間後、1時間
後及び2時間後にそれぞれ採血し、常法にしたがって血
糖値を測定した。
【0021】併行して、トレハロースのみを省略した1
群を設け、これを上記と同様に処置して対照とした。各
群の血糖値の平均値を標準偏差と併せて表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】表の1の結果に見られるとおり、トレハロ
ースを投与した群は、対照と比較して、グルコース負荷
時の血糖レベルが有意に低かった。これは、トレハロー
スが糖尿病に罹患した哺乳類において、グルコース負荷
時の血糖値抑制に効果があることを示している。さら
に、グルコース負荷試験の終了後に実施した組織学的検
査によると、トレハロースを投与しなかった群において
は、ランゲルハンス氏島β細胞の減少及び核濃縮並びに
β細胞そのものの萎縮など、膵機能障害特有の所見が顕
著であったのに対して、トレハロースを投与した群にお
いては、そのような変性や萎縮は僅少又は皆無であっ
た。これらの試験結果は、トレハロースに抗内分泌障害
作用があることを裏付けるものである。なお、データは
示していないけれども、投与経路を経静脈投与に変更し
て上記と同様の試験をしたところ、経口投与の場合とほ
ぼ同様の結果が得られた。
【0024】
【実験2】〈急性毒性試験〉5%(w/w)アラビアガ
ムを含む生理食塩水に食品級トレハロース粉末(商品名
『トレハオース』、トレハロース純度98%以上、株式
会社林原商事販売)の適量を溶解した後、常法にしたが
って滅菌した。これを体重20乃至25gのddyマウ
ス(10匹/群)の腹腔内に注射投与するか、胃ゾンデ
により経口投与した後、7日間に亙って経過を観察し
た。その結果、いずれの投与経路によっても、試みた最
大投与量であるマウス体重1kg当り約15gのトレハ
ロース投与の場合においてすら死亡例が認められなかっ
た。このことは、この発明の抗内分泌障害剤がヒトを含
む哺乳類に常用して安全であることを裏付けている。
【0025】以下、実施例に基づき、この発明の実施の
形態について具体的に説明する。
【0026】
【実施例1】〈補輸液〉注射用蒸留水に、イオン交換樹
脂及び活性炭を用い、常法にしたがってあらかじめパイ
ロジェンを除去しておいた食品級トレハロース(商品名
『トレハオース』、トレハロース純度98%以上、株式
会社林原商事販売)を5%(w/w)、塩化ナトリウム
を0.06%(w/w)、乳酸ナトリウムを0.31%
(w/w)、塩化カリウムを0.03%(w/w)、塩
化カルシウムを0.02%(w/w)それぞれ加温溶解
し、孔径0.22μmのメンブランフィルターで濾過し
た後、プラスチック製バッグに250mlずつ充填し
た。次いで、バッグ内の空間を窒素ガスで置換し、密栓
した後、常法にしたがって高圧蒸気滅菌して無色透明の
液剤(波長430nmにおける透過率98.4%)を得
た。
【0027】カロリー補給作用を兼備する本品は、内分
泌疾患を治療するための糖質輸液として有用である。
【0028】
【実施例2】〈注射剤〉適量の0.5M燐酸緩衝液(p
H7.0)により緩衝化した注射用蒸留水に、イオン交
換樹脂及び活性炭を用い、常法にしたがってあらかじめ
パイロジェンを除去しておいた食品級トレハロース(商
品名『トレハオース』、トレハロース純度98%以上、
株式会社林原商事販売))を濃度10%(w/w)にな
るように加温溶解し、孔径0.22μmのメンブランフ
ィルターで濾過した後、ガラス瓶に200mlずつ充填
した。次いで、瓶内の空間を窒素ガスで置換し、密栓し
た後、常法にしたがって高圧蒸気滅菌して無色透明の液
剤(波長430nmにおける透過率99.9%)を得
た。
【0029】安定な本品は、内分泌疾患を治療するため
の注射剤として有用である。
【0030】
【実施例3】〈乾燥注射剤〉適量の0.5M燐酸緩衝液
(pH7.0)により緩衝化した注射用蒸留水に、イオ
ン交換樹脂及び活性炭を用い、常法にしたがってあらか
じめパイロジェンを除去しておいた食品級トレハロース
(商品名『トレハオース』、トレハロース純度98%以
上、株式会社林原商事販売)を濃度10%(w/w)に
なるように加温溶解し、孔径0.22μmのメンブラン
フィルターで濾過した後、ガラス瓶に200mlずつ充
填した。次いで、瓶内の無色透明の液剤(波長430n
mにおける透過率99.9%)を凍結乾燥し、瓶内の空
間を窒素ガスで置換し、密栓した後、常法にしたがって
高圧蒸気滅菌して乾燥注射剤を得た。
【0031】本品は、適量の注射葉蒸留水に溶解して用
いる。安定な本品は、内分泌疾患を治療するための乾燥
注射剤として有用である。
【0032】
【実施例4】〈補輸液〉下記の原料成分を常法にしたが
って配合した後、500gずつ無菌的に缶詰した。な
お、実施例における「適量」とは、「生活活動強度II
(中程度)における栄養所要量」(日本人の栄養所要
量、厚生省)の半量に相当する量を意味する(以下同様
とする)。 原料成分 配合量(重量部) 脱脂粉乳 43.0 全粉乳 12.0 試薬級トレハロース(純度99%以上、株式会社林原生物化学研究所販売) 44.8 ビタミンA 適量 ビタミンD 適量 塩酸チアミン 適量 リボフラビン 適量 塩酸ピリドキシン 適量 シアノコバラミン 適量 酒石酸水素コリン 適量 ニコチン酸アミド 適量 パントテン酸カルシウム 適量 2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸(商品名『AA− 2G』、純度98%、株式会社林原生物化学研究所販売) 適量 酢酸トコフェロール 適量 硫酸鉄 適量 燐酸水素カルシウム 適量 プルラン(商品名『PIF』、分子量150,000ダルトン、株式会社林 原商事販売) 0.2
【0033】本品は、等量又は倍量の水又は微温湯(3
0乃至40℃)に溶解し、経口投与では1日1回又は数
回に分けて投与し、また、経鼻管投与、経胃瘻投与及び
経腸瘻投与では、300ml/時間を目安に連続的又は
断続的に投与する。カロリー補給作用を兼備する本品
は、内分泌疾患を治療するための成分栄養剤として有用
である。
【0034】
【実施例5】〈栄養調整食品〉下記の原料成分を均一に
混合し、水52重量部を加えた後、ミキサーで混練して
生地を得た。次いで、麺帯機を用いて生地を24mm×
72mm×12mmの板状に成形し、加熱真空乾燥機を
用いて120℃、10mmHgで30分間加熱乾燥した
後、アルミニウムラミネートフィルムのバッグに4個ず
つ無菌的に充填した。 原料成分 配合量(重量部) 食品級トレハロース(商品名『トレハオース』、純度98%以上、株式会社 林原商事販売) 6.8 粉末小麦蛋白 4.5 粉末大豆蛋白 23.0 粉末カゼイン 4.5 脱脂粉乳 2.4 粉末乾燥全卵 1.5 乳酸発酵粉末 1.5 プルラン(商品名『PIF』、平均分子量150,000ダルトン、株式会 社林原商事販売) 0.8 スイートコーンパウダー 3.0 ビタミンA 適量 ビタミンD 適量 ビタミンB1 適量 ビタミンB2 適量 ビタミンB6 適量 ビタミンB12 適量 2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸(商品名『AA− 2G』、純度98%以上、株式会社林原生物化学研究所) 適量 ニコチン酸アミド 適量 パントテン酸カルシウム 適量 炭酸カルシウム 適量
【0035】安定性に優れ、カロリー補給作用を兼備す
る本品は、内分泌疾患を治療・予防するための栄養調整
食品として有用である。
【0036】
【発明の効果】以上説明したとおり、この発明は、ヒト
を含む哺乳類において、トレハロースが副作用を惹起す
ることなく、穏やかな抗内分泌障害作用を発揮するとい
う独自の知見に基づくものである。すなわち、この発明
の抗内分泌障害剤は、健常者に投与すると、その正常な
内分泌を維持・増進するように作用し、また、内分泌疾
患の患者に投与すると、内分泌障害に伴う諸症状を緩和
したり、その異常な内分泌を本来あるべき正常な状態に
戻すように作用する。さらに、内分泌疾患などの治療目
的として、ホルモン製剤又はホルモンの分泌を誘発若し
くは抑制する医薬製剤の投与を受けている患者において
は、それらの医薬製剤の副作用を緩和する作用を発揮す
る。当該抗内分泌障害剤の有効成分であるトレハロース
は、自然界に広く分布する天然の物質である。したがっ
て、この発明の抗内分泌障害剤は、高用量で反復投与し
ても副作用を惹起することがないので、医療現場は言う
に及ばず、一般家庭においても安心して常用できる実益
がある。
【0037】斯くも顕著な作用効果を奏するこの発明
は、斯界に貢献すること誠に多大な意義のある発明であ
ると言える。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07H 3/04 C07H 3/04 Fターム(参考) 4B018 LB10 LE05 MS01 MS05 MS07 MS08 MS16 4C057 BB03 4C076 AA12 AA29 BB01 BB13 BB17 CC21 CC29 DD21 DD23 DD43 FF68 4C086 AA01 AA02 EA01 MA01 MA02 MA03 MA04 MA05 MA52 MA66 NA14 ZC02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有効成分としてトレハロースを含んでな
    る抗内分泌障害剤。
  2. 【請求項2】 有効成分としてのトレハロースと、トレ
    ハロースの投与を容易ならしめる他の成分からなる請求
    項1に記載の抗内分泌障害剤。
  3. 【請求項3】 トレハロースの投与を容易ならしめる他
    の成分が糖質、電解質、アミノ酸、ビタミン及び/又は
    脂質である請求項1又は2に記載の抗内分泌障害剤。
  4. 【請求項4】 トレハロースを0.1%(w/w)以上
    含んでなる請求項1、2又は3に記載の抗内分泌障害
    剤。
  5. 【請求項5】 食品又は医薬品としての請求項1、2、
    3又は4に記載の抗内分泌障害剤。
  6. 【請求項6】 経静脈的に投与される請求項1、2、
    3、4又は5に記載の抗内分泌障害剤。
  7. 【請求項7】 注射剤又は補輸液としての請求項1、
    2、3、4、5又は6に記載の抗内分泌障害剤。
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