JP4442949B2 - 抗骨粗鬆症剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は抗骨粗鬆症剤、とりわけ、有効成分としてトレハロースを含んでなる抗骨粗鬆症剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
骨粗鬆症は骨多孔症とも呼ばれ、骨が質的に変化することなく、その絶対量が減少する状態をいう。生体においては、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収が間断なく続いている。なんらかの原因で骨形成の速度と骨吸収の速度に差が生じ、骨形成が負の平衡に傾くと、骨粗鬆症が発症することとなる。骨粗鬆症の発症要因は環境要因と遺伝要因に大別され、環境要因としては、加齢に加えて、例えば、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、クッシング症候群などの内分泌疾患が、また、遺伝要因としてはエストロゲン受容体遺伝子の異常、骨形成不全、ホモシスチン尿症などが指摘されている。骨粗鬆症が発症すると、皮質骨の幅が減じ、骨髄腔が拡大するとともに、海綿骨の骨梁が減少し、粗鬆化する。骨粗鬆症が進行すると、骨の力学的強度が低下し、腰痛や関節痛を頻繁に訴えるようになり、また、僅かな衝撃でも骨折し易くなる。
【0003】
骨粗鬆症の治療には、通常、疼痛を鎮めるべく先ず鎮痛剤が用いられ、次いで、カルシウム代謝に関与する活性型ビタミンD剤、カルシトニン製剤、エストロゲン製剤、蛋白質同化ホルモン製剤などが投与される。このように、従来の骨粗鬆症治療剤は、そのほとんどがホルモン製剤であった。ホルモン製剤は副作用を惹起することがあるので、その使用には医師の処方が欠かせず、したがって、健常者が予防剤として普段から常用するなどということはできなかった。骨粗鬆症の発症率は加齢に伴って急激に増大する。本格的な高齢化社会の到来が目前に迫った今、健康にして快適な老後を過ごすためにも、家庭で手軽に常用でき、穏やかな治療・予防効果を発揮する抗骨粗鬆症剤の開発が鶴首されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる状況に鑑み、この発明は、手軽に常用でき、穏やかな治療・予防効果を発揮する抗骨粗鬆症の提供を課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者が種々の物質を検索したところ、二糖類の1種であるトレハロースは、ヒトを含む哺乳類が摂取すると、負の平衡に傾いた骨形成を本来あるべき正常な状態に調節し、骨粗鬆症に対して穏やかな治療・予防効果を発揮するという全く予想外の知見に到達した。すなわち、この発明は、有効成分としてトレハロースを含んでなる抗骨粗鬆症剤を提供することによって上記課題を解決するものである。
【0006】
トレハロースは2分子のグルコースが還元性基同士で結合してなる二糖類であり、自然界においては細菌、真菌、藻類、昆虫、甲殻類などに広く分布している。食品、化粧品及び医薬品の諸分野においては、蔗糖に代わる糖質としてのトレハロースの需要が急速に伸びつつあるけれども、エネルギー補給作用、皮膚に対する保湿作用及び血中脂肪酸の調節作用を除けば、哺乳類におけるトレハロースの生理作用はほとんど解明されていないというのが実状である。
【0007】
トレハロースは公知の物質である。しかしながら、この発明は、先述のとおり、トレハロースが哺乳類において顕著な抗骨粗鬆症作用を発揮するという独自の知見に基づくものであって、トレハロースの抗骨粗鬆症剤としての用途はこの発明をもって嚆矢とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明は、有効成分としてトレハロースを含んでなる抗骨粗鬆症剤に関するものである。周知のとおり、トレハロースには、互いに結合様式が相違するα,α体、α,β体及びβ,β体と呼ばれる3種類の異性体が存在する。これらはヒトを含む哺乳類において同様の抗骨粗鬆症作用を発揮するので、いずれもこの発明において有利に用いることができる。したがって、この発明の抗骨粗鬆症剤においては、これらの異性体の1又は複数が全体として有効量含まれてさえいれば、その調製方法、純度及び性状は問わない。
【0009】
トレハロースは種々の方法で調製することができる。この発明はトレハロースの調製に関するものではないので詳細な説明は割愛するけれども、経済性を問題にするのであれば、同じ特許出願人による特開平7−143876号公報、特開平7−213283号公報、特開平7−322883号公報、特開平7−298880号公報、特開平8−66187号公報、特開平8−66188号公報、特開平8−336388号公報及び特開平8−84586号公報のいずれかに開示された非還元性糖質生成酵素及びトレハロース遊離酵素を澱粉部分加水分解物に作用させる方法が好適である。この方法によるときには、廉価な材料である澱粉から、トレハロースのα,α体が高収量で得られる。ちなみに、斯かる方法により調製された市販品としては、結晶性トレハロース粉末(商品名『トレハオース』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)及びトレハロース含有シロップ(商品名『トレハスター』、固形分重量当りのトレハロース含量28%以上、株式会社林原商事販売)がある。なお、α,α体は、マルトースに、例えば、同じ特許出願人による特開平7−170977号公報、特開平8−263号公報、特開平8−149980号公報のいずれかに記載されたマルトース・トレハロース変換酵素を作用させるか、あるいは、公知のマルトース・ホスホリラーゼ及びトレハロース・ホスホリラーゼを組合せて作用させることによっても得ることができる。
【0010】
トレハロースのα,β体を調製するには、例えば、同じ特許出願人による特開平4−144694号公報及び特開平4−179490号公報に記載された方法にしたがって澱粉部分加水分解物と乳糖との混合物にシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼとβ−ガラクトシダーゼをこの順序で作用させればよい。また、β,β体は公知の化学合成により得ることができる。なお、この発明においては、トレハロースは必ずしも高度に精製されておらずともよく、調製方法に特有な他の糖質との未分離組成物としての形態、あるいは、ヒトを含む哺乳類においてトレハロースの抗骨粗鬆症作用を実質的に妨げない他の適宜成分との混合物の形態であってもよい。
【0011】
トレハロースは、ヒトを含む哺乳類が摂取すると、骨形成と骨吸収の平衡を本来あるべき正常な状態に調節する作用を発揮する。すなわち、平衡が正常である場合には、その正常な状態を維持するように作用し、また、例えば、老人性骨粗鬆症のような、骨形成が正常レベルを下回って骨量が減少する低回転骨粗鬆症や、上皮小体機能亢進症のような、骨吸収が正常レベルを越えて骨量が減少する高回転骨粗鬆症におけるがごとく、骨形成の速度と骨吸収の速度に差が生じ、骨形成の平衡が負に傾いている場合には、その平衡を本来あるべき正常な状態に戻すように作用する。これらの作用ゆえに、ヒトを含む哺乳類がトレハロースを摂取すると、骨が健康である場合には、その健康な状態を維持・増進し、また、骨粗鬆症に罹患している場合には、骨粗鬆症に伴う腰痛や関節痛を緩和するとともに、骨量を増加せしめて骨折し難くするように作用する。したがって、この発明でいう抗骨粗鬆症剤とは、有効成分としてトレハロースを含有し、骨粗鬆症を治療及び/又は予防する目的で摂取される、飲料を含むすべての食品及び医薬品を包含することとなる。なお、この発明の抗骨粗鬆症剤が奏する独特の効果は、例えば、卵巣を摘出したマウスにおける大腿骨の重量を指標とする後述の試験によっても確認することができる。
【0012】
この発明の抗骨粗鬆症剤はトレハロース単独の形態であっても、トレハロースとトレハロースの摂取を容易ならしめる他の成分との組成物の形態であってもよい。トレハロースの摂取を容易ならしめた組成物は、通常、経管流動食及び経管輸液としての形態を含む食品又は医薬品の形態、より具体的には、溶液状、懸濁液状、乳液状、クリーム状、ペースト状、粉末状、顆粒状、あるいは、それ以外の所望の形状に成形された固形状の食品又は医薬品の形態で提供される。すなわち、食品としての形態の場合には、例えば、水、アルコール、澱粉質、蛋白質、繊維、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、香辛料、安定剤、酸化防止剤、防腐剤のごとき食品に通常用いられる原料及び/又は素材をトレハロースの摂取を容易ならしめる成分として配合して組成物とすればよい。斯かる組成物に、さらに、ビフィズス菌増殖糖質、粉末ミルク、乳蛋白分解物(カゼインカルシウムペプチド、カゼインフォスフォペプチド)、ラクトフェリン、大豆イソフラボン、血粉、骨粉、貝殻粉、珊瑚粉末などの健康食品素材の1又は複数を適宜配合することもできる。斯かる食品は、経管流動食や経管輸液としての形態であってもよい。また、医薬品としての形態の場合には、例えば、担体、賦形剤、希釈剤及び安定剤の1又は複数をトレハロースの摂取を容易ならしめる成分として配合し、さらに必要に応じて、骨粗鬆症の治療に通常用いられる、例えば、乳酸カルシウム、グリセロ燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム及びL−アスパラギン酸カルシウムなどのカルシウム剤、さらには、鎮痛剤、消炎剤、活性型ビタミンD剤、ビタミンK剤、カルシトニン製剤、エストロゲン製剤、蛋白質同化ホルモン製剤などの他の薬剤の1又は複数を配合して組成物とすればよい。使用形態にもよるが、この発明の抗骨粗鬆症剤は、通常、トレハロースを0.1%(w/w)以上、望ましくは、1%(w/w)以上含有する。
【0013】
この発明の抗骨粗鬆症剤の使用方法についてヒトの場合を例にとって説明すると、この発明の抗骨粗鬆症剤は経口的に使用しても非経口的に使用しても穏やかな抗骨粗鬆症作用を発揮する。また、当該抗骨粗鬆症剤は、上述のような作用故に、経口的及び非経口的使用のいずれの場合にも、骨折や骨のひび等の骨関連の疾患ないしは損傷の予防や、斯かる疾患ないしは損傷の通常の方法による治療効果の改善・増進に奏効する。使用目的にもよるが、例えば、骨の健康を維持・増進したり、骨粗鬆症の予防を目的とする場合には、通常、食品の形態で経口的に摂取する。骨粗鬆症の治療や、骨粗鬆症に伴う腰痛・関節痛の緩和、骨の損傷・疾患の治療効果の改善を目的とする場合には、通常、食品又は液剤、シロップ剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などの医薬品の形態で経口的に摂取するか、場合によっては、注射剤、外用剤などの形態で非経口的に摂取する。用量としては、通常、トレハロースの摂取量が約0.5g乃至100g/成人/日、望ましくは、約1g乃至50g/成人/日になるようにして毎日摂取するか、あるいは、1乃至5回/週の頻度で摂取する。
【0014】
次に、実験例に基づき、この発明の抗骨粗鬆症剤の有効性と安全性について説明する。
【0015】
【実験1】
〈動物実験〉
常法にしたがって、体重に基づいて群分けした4週齢の雌性ddYマウス(34匹/群)をネンブタールにより麻酔し、卵巣を摘出した。その翌日から、適量の蒸留水に溶解した結晶性トレハロース粉末(商品名『トレハオース』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)を0.01g/kg体重/回、0.1g/kg体重/回又は1g/kg体重/回の用量で毎日1回、1週間に5回経口摂取させた。4週間後に、各個体の体重を測定する一方、常法にしたがって屠殺し、左右の大腿骨を摘出し、これを110℃で一晩加熱して乾燥した後、重量を測定した。なお、飼料には、骨量の差が現われ易い、低カルシウム含量の飼育用を用いた。
【0016】
併行して、トレハロース水溶液に代えて同量の蒸留水を経口摂取させる群(対照1)、トレハロース水溶液を経口摂取させるのに代えて骨粗鬆症治療剤であるエストラジオールを同量の蒸留水に溶解して1mg/kg体重/回の用量で1週間に2回腹腔内投与する群(対照2)、さらに、開腹手術を施すものの卵巣は摘出しない(偽手術)マウスに、トレハロース水溶液に代えて同量の蒸留水を経口摂取させる群(対照3)をそれぞれ設け、これらをトレハロースを経口摂取させる群(トレハロース投与群)におけると同様に処置して対照とした。トレハロース投与群及び対照1乃至3における大腿骨の乾燥重量を表1に纏めた。また、トレハロース投与群(トレハロース用量0.1g/kg体重/回)及びトレハロース非投与群(対照1及び対照3)における一部の個体より常法にしたがい脛骨を摘出し、顕微鏡観察した。顕微鏡観察用の標本は、摘出した脛骨を常法にしたがい、ホルマリン溶液で固定化し、水洗し、脱灰し、長軸に沿って割断した後、プロテアーゼKで処理して骨髄細胞を除去して調製した。斯かる脛骨標本を低真空走査型電子顕微鏡(倍率24倍)で観察し、観察された像を写真撮影した。結果をそれぞれ図1乃至3に示す。図1乃至3に示す像において、白色の部分が骨梁である。なお、ちなみに、卵巣を摘出したマウスに生じる骨粗鬆症は卵巣摘除骨粗鬆症と呼ばれ、老人性骨粗鬆症の1種である閉経後骨粗鬆症の優れたモデルであることが知られている。
【0017】
【表1】
Figure 0004442949
【0018】
表1の結果は、トレハロースは、哺乳類が経口摂取すると、エストラジオールほど速効性ではないものの、骨粗鬆症に伴う骨量の減少を有意に抑制することを示している。骨量の減少抑制は、トレハロースを0.1g/kg体重/回前後の用量で摂取すると顕現し、1g/kg体重/回の用量ではさらに顕著となった。トレハロースのこの作用は図1乃至3の写真からも窺える。すなわち、図3に示す脛骨を正常とみなして図1及び図2を互いに比較すると、対照1においては、図2の中央から下の部分に見られるように、骨粗鬆症の典型的な所見である海綿骨における骨梁の減少と骨髄腔の拡大が顕著となり、力学的に脆弱であったのに対して、トレハロース投与群においては、図1に見られるように、骨梁の減少と骨髄腔の拡大が明らかに抑制され、力学的にも強固であった。なお、全試験期間に亙ってマウスを注意深く観察したところ、トレハロースの投与による異常は皆無であった。また、データは示していないものの、トレハロースに代えて蔗糖を用いる系を設け、トレハロースにおけると同様に試験したところ、卵巣を摘出したマウスに蒸留水を摂取させる対照と比較して有意差が認められなかった。
【0019】
次に、トレハロースを0.1g/kg体重/回の用量で投与した群と、対照1及び対照3の群における、上記で脛骨を摘出した個体以外の個体の一部より、上記と同様にして脛骨を摘出した。それぞれの脛骨より常法にしたがって骨髄細胞を採取し、これらを10%(v/v)となるようにウシ胎児血清を補足したα−MEM培地に、それぞれ、細胞密度1.5×106個/mlとなるように浮遊させた。それぞれの骨髄細胞浮遊液を24ウェルプレートに0.5ml/ウェルずつ添加した。これらのウェルそれぞれに、予め、常法に従い、新生ddYマウスの頭蓋骨をコラゲナーゼ及びディスパーゼで処理した後、上記と同じ組成の新鮮な培地に浮遊させた、細胞密度4×104個/mlの骨芽様細胞の浮遊液を0.25ml/ウェルずつ加えた。さらに、それぞれのウェルに、上記と同じ組成の培地に溶解させた、濃度4×10-9Mの1α,25−ジヒドロキシビタミンD3溶液を0.25ml/ウェルずつ加えた。斯くして得た細胞浮遊液の混合物を、5%CO2インキュベーター中37℃で、培地を、1×10-9M1α,25−ジヒドロキシビタミンD3及び10%(v/v)ウシ胎児血清を含むα−MEM培地と適宜取り替えながら6日間培養した。
【0020】
培養後、培養上清を除去し、ウェル中の細胞をホルマリンを用いて固定化した後、『ナフトールAS−MSフォスフェート』及び『レッド・バイオレットLBソルト』(いずれもシグマ製)を用いて常法にしたがい酒石酸耐性酸性ホスファターゼ活性を示す細胞を染色した。因みに、分化した破骨細胞は、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ活性を示し、多核化しているという特徴を有している。染色後、各ウェルを光学顕微鏡観察して、染色され、かつ、多核化の認められた細胞の数を各ウェルごとに数えて破骨細胞数とした。その結果、対照1のウェルにおける破骨細胞数は、対照3の場合の3倍以上であったのに対し、トレハロース投与群における破骨細胞数は、対照3の場合の約2倍程度となり、これは、トレハロースには破骨細胞の分化の誘導を抑制する作用があることを示している。上記に示した動物実験における骨粗鬆症に伴う骨量の減少と破骨細胞の分化の誘導(対照1)との間にはよい相関が見られ、また、トレハロースによる斯かる骨量の減少抑制と破骨細胞の分化誘導抑制(トレハロース投与群)との間にもよい相関が見られた。したがって、以上実験1に示した結果は、トレハロースが負の平衡に傾いた骨形成を本来あるべき正常な状態に調節することによって穏やかな抗骨粗鬆症作用を発揮し、斯かる作用には、トレハロースによる破骨細胞の分化誘導抑制作用が関与していることを示唆している。
【0021】
【実験2】
〈臨床試験〉
老人性骨粗鬆症及び外傷後骨粗鬆症に伴う腰痛や関節痛を主訴する年齢60乃至72歳の被験者34名(男女それぞれ17名)を被験者とし、男女ほぼ同数になるように2群に群分けした後、被験試料として、後記実施例5の方法により調製したこの発明の抗骨粗鬆症剤、あるいは、トレハロースを蔗糖で置換した以外は後記実施例5におけると同様にして調製した偽薬のいずれかを毎食後5錠/回の用量で1箇月間に亙って摂取させた。試験には臨床検査技師が当り、試験期間中、経過について定期的に被験者を問診した。試験終了後、その問診結果に基づき、骨粗鬆症に伴う腰痛及び/又は関節痛の緩和を指標に、被験試料の効果を「よく効いた」、「やや効いた」、「変わらなかった」及び「悪化した」の4段階評価し、各群における被験者の総数に対する「よく効いた」又は「やや効いた」と回答した被験者の総数の百分率をもって奏効率(%)とした。結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
Figure 0004442949
【0023】
表2の結果は、この発明の抗骨粗鬆症剤が骨粗鬆症に伴う腰痛や関節痛の緩和に有効であることを示している。すなわち、偽薬を摂取した群の奏効率が10%未満であったのに対して、この発明の抗骨粗鬆症剤を摂取した群の奏効率は40%強にも達した。しかも、この発明の抗骨粗鬆症剤の摂取による心身の不調を訴える被験者は皆無であって、寧ろ、被験者の多くが安眠、リラックス感及び規則正しい便意が達成され、作業や歩行の支障も少なくなったと回答した。これらの結果は、この発明の抗骨粗鬆症剤が穏やかな抗骨粗鬆症作用を発揮することを物語っている。
【0024】
【実験3】
〈急性毒性試験〉
5%(w/w)アラビアガムを含む生理食塩水に結晶性トレハロース粉末(商品名『トレハオース』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)の適量を溶解した後、常法にしたがって滅菌した。これを体重20乃至25gのddYマウス(10匹/群)の腹腔内に注射投与するか、胃ゾンデにより経口投与した後、7日間に亙って経過を観察した。その結果、いずれの投与経路によっても、試みた最大トレハロース投与量である、15g/kg体重においても死亡例が認められなかった。この結果は、この発明の抗骨粗鬆症剤がヒトを含む哺乳類に常用して安全であることを示している。
【0025】
以下、実施例に基づき、この発明の実施の形態について具体的に説明する。
【0026】
【実施例1】
〈健康食品〉
常法にしたがって、温度20℃、湿度85%で2週間貯蔵することによって還元糖を自己消化させた馬鈴薯を水洗し、剥皮し、選別した後、遠心式スライサーを用いて厚さ1.5mmのスライスにした。水洗によりスライス表面の澱粉を除いた後、水切りし、温度170℃で約5分間油上げし、油切りした。次いで、ソルターを用いて、食塩7重量部、結晶性トレハロース粉末(商品名『トレハオース』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)3重量部及び適量の香辛料を含んでなる粉末調味料を均一に振り掛けた後、秤量製袋充填機に移し、そこで秤量し、充填し、包装してトレハロースを含有するスナック菓子を得た。
【0027】
呈味、風味ともに良好な本品は、骨の健康を維持・増進する健康食品として有用である。
【0028】
【実施例2】
〈健康食品〉
よく練ったバター25重量部に結晶性トレハロース粉末(商品名『トレハオース』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)18重量部と鶏卵10重量部をこの順序でそれぞれ加え、攪拌してクリーム状とした。これに薄力粉47重量部を加え、混練し、布にくるんで20分間放置して得られた生地を直径3cmの棒状にした後、パラフィン紙にくるみ、4℃で2時間放置した。その後、生地を5mmの厚さに輪切りし、油を引いた天板に並べ、170℃のオーブンで10分間焼いた後、上面にトレハロース含有シロップ(商品名『トレハスター』、固形分重量当りのトレハロース含量28%以上、株式会社林原商事販売)を塗布し、同じ温度でさらに10分間焼いてトレハロースを含有するアイスボックスクッキーを得た。
【0029】
呈味、風味ともに良好な本品は、骨の健康を維持・増進する健康食品として有用である。
【0030】
【実施例3】
〈健康食品〉
凍結乾燥紅茶エキス粉末7重量部とトレハロース含有シロップ(商品名『トレハスター』、固形分重量当りのトレハロース含量28%以上、株式会社林原商事販売)3重量部を適量の水に溶解し、得られた溶液を、常法にしたがって発酵させ乾燥させた紅茶葉90重量部に振り掛けた。常法にしたがって紅茶葉を篩分けし、裁断し、仕上げ乾燥し、選別機により異物を除いた後、和紙を用いて2gずつティーバッグ包装してトレハロースを含有する紅茶のティーバックを得た。
【0031】
本品は、冷水180mlに約10分間浸出させるか、あるいは、90乃至100℃の熱湯180mlに約2分間浸出させて飲用する。呈味、風味ともに良好な本品は、骨の健康を維持・増進する健康食品として有用である。
【0032】
【実施例4】
〈健康食品〉
マルトテトラオース含有シロップ(商品名『テトラップ』、固形分重量当りのマルトテトラオース含量50%以上、株式会社林原商事販売) 2.7重量部、トレハロース含有シロップ(商品名『トレハスター』、固形分重量当りのトレハロース含量28%以上、株式会社林原商事販売) 7重量部、コーヒーエキス 5重量部、全脂粉乳 2.2重量部、脱脂粉乳 1重量部、蔗糖脂肪酸エステル0.04重量部、重層 0.06重量部及び水 82重量部を常法にしたがって配合してトレハロースを含有するコーヒー飲料を得た。
【0033】
呈味、風味ともに良好な本品は、骨の健康を維持増進する健康食品として有用である。
【0034】
【実施例5】
〈健康補助食品〉
結晶性トレハロース粉末(商品名『トレハオース』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売) 55重量部、コーンスターチ40.5重量部及び結晶セルロース 2.5重量部を混合し、常法にしたがって、適量の水を噴霧滴下しながら混練し、流動層造粒した後、粉砕し、整粒して打錠用粉体を得た。これに潤沢剤として蔗糖脂肪酸エステル2重量部を均一に混合した後、直径11mmの杵を装着した打錠機により打錠してトレハロースを含有する錠剤(約300mg/錠)を得た。
【0035】
摂取し易く、消化管における崩壊性に優れた本品は、骨の健康を維持・増進する健康補助食品として有用である。
【0036】
【実施例6】
〈健康補助食品〉
結晶性トレハロース粉末(商品名『トレハオース』、固形分重量当たりのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売) 39重量部、天然珊瑚粉末25重量部、牛骨粉 9重量部、粉末ヨーグルト 12重量部、グアーガム 10重量部、ビタミンC 1.9重量部及び糖転移ビタミンP 0.1重量部を常法にしたがって適量の水を噴霧滴下しながら混練し、流動層造粒した後、粉砕し、整粒して打錠用粉体を得た。これに潤沢剤として蔗糖脂肪酸エステル 3重量部を均一に混合した後、直径6mmの杵を装着した打錠機により打錠してトレハロースを含有する錠剤(約200mg/錠)を得た。
【0037】
本品は、カルシウムが補強されている上に摂取しやすいので、骨の健康を維持・増進する健康補助食品として有用である。
【0038】
【発明の効果】
叙上のとおり、この発明は、ヒトを含む哺乳類において、トレハロースが負の平衡に傾いた骨形成を本来あるべき正常な状態に調節することによって穏やかな抗骨粗鬆症作用を発揮するという知見に基づくものである。この作用ゆえに、有効成分としてトレハロースを含んでなるこの発明の抗骨粗鬆症剤は、健常人が摂取すると、骨の健康を維持・増進し、骨粗鬆症を予防する。また、閉経後骨粗鬆症を含む老人性骨粗鬆症に罹患した患者、骨粗鬆症を伴う、例えば、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、クッシング症候群、骨形成不全症、ホモシスチン尿症に罹患した患者、外傷やステロイドホルモンの過剰投与に伴う副作用により骨が脆くなった患者、さらには、エストロゲン受容体遺伝子に異常がある患者が摂取すると、骨粗鬆症に伴う腰痛や関節痛を緩和するとともに、骨量を増加せしめて骨折し難くする。この発明の抗骨粗鬆症剤は、さらに、骨折や骨のひび等の骨関連の疾患ないし損傷の通常の方法による治療効果を高める効果もある。加えて、トレハロースは天然に広く分布する糖質であるので、副作用を懸念することなく安心して常用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】トレハロース投与群のマウスにつき、低真空走査型電子顕微鏡下で撮影した脛骨の写真(倍率24倍)のディスプレー上に表示した中間調画像である。
【図2】トレハロース非投与群の卵巣摘出マウスにつき、低真空走査型電子顕微鏡下で撮影した脛骨の写真(倍率24倍)のディスプレー上に表示した中間調画像である。
【図3】トレハロース非投与群の卵巣非摘出マウスにつき、低真空走査型電子顕微鏡下で撮影した脛骨の写真(倍率24倍)のディスプレー上に表示した中間調画像である。

Claims (4)

  1. 有効成分としてトレハロースを含んでなる抗骨粗鬆症剤
  2. トレハロースを0.1%(w/w)以上含んでなる請求項1記載の抗骨粗鬆症剤
  3. 骨粗鬆症予防剤又は骨粗鬆症治療剤としての請求項1又は2記載の抗骨粗鬆症剤。
  4. 破骨細胞分化誘導抑制剤としての請求項1乃至3のいずれかに記載の抗骨粗鬆症剤。
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