JP2000001540A - ヘテロポリリン酸を触媒としてthf重合体を製造する方法 - Google Patents

ヘテロポリリン酸を触媒としてthf重合体を製造する方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヘテロポリリン酸を触媒としてTHFを重合
するに際して、THFの反応転化率を高くする製造方法
を提供する。 【解決手段】 フリーのリン酸含有量が1ppm以
下であるヘテロポリリン酸を触媒として用いることによ
り、重合生成物から効率よく触媒を除去できる。 更に、Al含有量が4ppm以下のヘテロポリリン
酸触媒を用いると、反応転化率が高く、高収率でTHF
からTHF重合体を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヘテロポリリン酸
を触媒としたTHF重合体の製造方法の改良に関するも
のである。さらに詳細には、本発明は、フリーのリン酸
の含有量が低い(且つ特定金属元素(AI)の含有量が
低い)、特定のヘテロポリリン酸触媒を使用してTHF
重合体(単独重合体および/または共重合体)からなる
ポリエーテルジオールの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエーテルジオールは、ポリウレタン
弾性繊維(スパンデックス)や合成皮革等に用いられる
ポリウレタンの主要原料や、オイルの添加剤、軟化剤等
に用いられる工業的に有用なポリマーである。ポリエー
テルジオール、特にTHF重合体からなるポリエーテル
ジオールを製造する方法として、ヘテロポリ酸が重合触
媒として利用できることが、米国特許第4568775
号明細書、同第4658065号明細書及び同第541
6240号明細書に開示されている。これらには、ヘテ
ロポリ酸の配位数を含めた結晶水量と触媒としての活性
について記載している。また、米国特許第467723
1号明細書には、ヘテロポリ酸触媒の除去方法について
記載している。しかし、ヘテロポリ酸触媒中の不純物の
影響等については言及していない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように、ヘテロポ
リリン酸を触媒としてTHFを重合する場合、ヘテロポ
リリン酸中の配位水を含めた水量を一定にしても、ヘテ
ロポリリン酸触媒のTHF重合体への溶解性および活性
が異なり、THF重合体中への残存率およびTHFの反
応転化率が異なる。THF重合体中に残存するヘテロポ
リリン酸触媒が多い場合には、加熱等によりTHFが解
重合等するために、経時によりTHF重合体の分子量が
変化するため好ましくない。THF中に残存するヘテロ
ポリリン酸触媒を除去するため吸着剤等が使用される
が、吸着剤の破過時間が短くなり、頻繁に吸着剤を交換
する必要が生じ、経済的および産業廃棄物増加の観点か
ら好ましくない。更に、反応転化率が低い場合には、エ
ネルギーの多消費となり経済的に問題がある。従って、
本発明の目的は、ヘテロポリリン酸を触媒としてTHF
を重合するに際し、該触媒中のフリーのリン酸量(及び
AI含有量)を一定値以下にして、ポリエーテルジオー
ル中の触媒を効率よく除去し、残存率を低く抑え(且つ
保存中に解重合等品質変化のない安定なTHF重合体
を、高反応転化率で製造できる)ことにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ヘテロポ
リリン酸触媒を用いたTHFの重合において、生成した
THF重合体中の触媒残存量および反応転化率が異なる
原因を鋭意検討した結果、使用するヘテロポリリン酸触
媒中のフリーのリン酸量(及びAI含有量)を一定値以
下にすることにより、本発明を完成するに至った。即
ち、本発明は: ヘテロポリリン酸触媒を用いて、テトラヒドロフラ
ンの重合体(以下THF重合体と称す)を製造するに際
し、フリーのリン酸が1モル%以下のヘテロポリリン酸
を使用するTHF重合体の製造方法を提供する。また、 Al含有量が4ppm以下である点に特徴を有す
る。
【0005】以下、本発明を詳細に説明する。 (A)ヘテロポリリン酸触媒: (i) ヘテロポリリン酸触媒中の不純物としては、原石由
来の種々の金属元素が存在し、通常市販されているヘテ
ロポリ酸中の金属原子は20ppm以下と微量であり、
これがTHFの重合挙動に影響することは知られていな
い。一方、ヘテロポリリン酸は、安定生産のため、通常
リンを過剰に使用することが一般的に行われており、T
HFの重合触媒として有効なヘテロポリリン酸には、結
晶構造の形成に寄与しないフリーのリン酸が存在する。
本発明者等は、このフリーのリン酸および不純物金属元
素に着目し、フリーのリン酸および金属元素の含有量と
得られる重合体への触媒の溶解性および触媒活性との関
係を検討し、本発明に到達したものである。
【0006】即ち、1)本発明は、ヘテロポリリン酸中
のフリーのリン酸含有量が1モル%以下であるヘテロポ
リリン酸を触媒として用い、THFを重合しポリエーテ
ルジオールを製造する方法に関するものである。 また、2)本発明は、ヘテロポリリン酸中のフリーのリ
ン酸含有量が1モル%以下であり且つAl含有量が4p
pm以下のヘテロポリリン酸を触媒として用い、THF
を重合しポリエーテルジオールを製造する方法に関する
ものである。
【0007】この場合、ヘテロポリリン酸中のフリーの
リン酸が1モル%を越えると、ヘテロポリリン酸のポリ
エーテルジオールへの溶解性が増加し、得られるポリエ
ーテルジオール中に残存する触媒量が増加する。また、
該触媒量が増加すると、精製工程或いは反応原料に供給
する場合の脱水工程等でポリエーテルジオールが高温下
に曝されたり、長時間保存すると、THFの重合生成物
の解重合が生じ、その分子量および分子量分布が変化
し、結果として目的のポリエーテルジオールを得ること
が出来ない。従って、ポリエーテルジオールが高温下で
処理される前に、ポリエーテルジオール中の触媒を除去
することが必要である。そのためには、活性炭吸着によ
る除去等で実現できるが、活性炭を頻繁に交換する必要
があり経済的でない。
【0008】(ii) これに対して、本発明の方法でヘテ
ロポリ酸中のフリーのリン酸を1モル%以下とすること
により、ヘテロポリリン酸を触媒としたTHFの重合に
おいて、米国特許第4677231号明細書に開示され
る方法によりヘテロポリリン酸触媒を効率よく分離する
ことが出来る。即ち、ヘテロポリリン酸を重合触媒とし
てTHFを重合して、得られるポリエーテルとTHFを
主成分とする混合物中に、THFより高沸点かつ共沸混
合物を形成しない炭素数15以下の炭化水素またはハロ
ゲン化炭化水素を添加することにより、触媒として用い
たヘテロポリリン酸を析出分離するに際し、フリーのリ
ン酸含有量が1モル%以下のヘテロポリリン酸を用いる
ことにより、重合生成物中の残存ヘテロポリリン酸を低
く抑えることが出来る。この原因は明らかではないが、
ヘテロポリリン酸の製造段階で過剰に加えたリン酸が結
晶構造内部に溶解または侵入し、結果として重合生成物
への溶解性が変化するものと考えられる。
【0009】ヘテロポリリン酸触媒の析出分離に際し、
使用する炭素数15以下の炭化水素またはハロゲン化炭
化水素としては、例えばn−ヘプタン、オクタン、ノナ
ン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロオクタン、
1−クロロオクタン、クロロシクロヘキサン、クロロト
ルエン等を挙げることができる。上記溶剤の中でも、n
−ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、
ドデカンはヘテルポリリン酸を析出させる機能が高く、
少量でも有効であり好ましい。また、重合生成物である
ポリエーテル中に溶解した溶剤を比較的容易に回収でき
ることから、溶剤としてオクタン、ノナンが更に好まし
い。炭素数16以上の溶剤は高沸点であり、ポリエーテ
ルからの分離回収が困難となり好ましくない。
【0010】また、ヘテロポリリン酸を析出分離させる
のに用いる溶剤の量は、共存するTHFの量により異な
るが、通常THFの等重量〜50重量倍、好ましくは2
〜20重量倍用いる。また、ポリエーテルに対しては、
THFを除去した後、ポリエーテルと溶剤とが相分離を
生じるのに必要な量を加えるが、通常ポリエーテルの
0.5〜50重量倍、好ましくは1.0〜20重量倍用
いる。溶剤を添加した後、公知の攪拌装置で混合後、静
置することでヘテロポリリン酸又はヘテロポリリン酸を
主体とする相と、ポリエーテルを主体とする相との2相
を形成する。混合静置の温度は、ポリエーテルが凝固し
ない温度範囲で操作し易い温度が選択される。高温下で
はヘテロポリリン酸の溶解度が増加するため、通常25
〜60℃の範囲で実施される。相分離のための静置時間
は、0.1〜50時間程度であるが、コアレッサー、液
体サイクロン、遠心分離器又はフィルターでの濾過によ
り短縮できる。
【0011】しかも、本発明の方法でヘテロポリリン酸
中のフリーのリン酸を1モル%以下の含有量にすること
により、THFの重合触媒として用いた場合、ヘテロポ
リリン酸のTHF重合体への溶解性を低く抑えることが
出来、効率よく重合生成物からヘテロポリリン酸を除去
することが出来る。 (iii) 更に、驚くべきことに、Al含有量を一定値以上
含有するヘテロポリリン酸を触媒としてTHFを重合し
た場合、THFの反応転化率が低下することを見い出し
た。
【0012】この原因は明らかではないが、重合した有
機物が無機酸塩を包含或いは重合し、ある種の有機金属
化合物を形成し、ヘテロポリリン酸表面を覆うため触媒
活性が低下するか、もしくはAlがなんらかの形でヘテ
ロポリリン酸中に溶解し、結果としてTHFとの相互作
用が強く重合触媒として有効なKeggin構造が、T
HFとの相互作用の弱いDawson構造に変化しKe
ggin構造の割合が減少するためと推定される。しか
し、本発明の方法でヘテロポリリン酸中のAl含有量を
4ppm以下、好ましくは2ppm以下とすることによ
り触媒活性が高く、高反応転化率でTHFの重合を実現
できる。
【0013】(B) ヘテロポリリン酸の調製:ヘテロポリ
リン酸の製造方法としては、エーテルを用いる抽出法が
知られており、例えばタングステンまたはモリブデン系
ヘテロポリリン酸の場合には、アルカリリン酸塩或いは
リン酸とアルカリタングステン酸塩(またはアルカリモ
リブデン酸塩)との混合水溶液を加熱撹拌しながら無機
酸を過剰量加えてタングステン(またはモリブデン)系
ヘテロポリリン酸を合成した後、エーテルで抽出するこ
とで塩および無機酸と分離して製造される。この際、得
られるヘテロポリリン酸を安定に生産するため、アルカ
リリン酸塩またはリン酸が過剰下で合成される。しか
し、該製法では精製工程がなく、得られるヘテロポリリ
ン酸中には不純物としてフリーのリン酸等が含有されて
いる。本発明に用いるTHF重合触媒として適したヘテ
ロポリリン酸を得るには、公知の方法で得られたヘテロ
ポリリン酸を再結晶等の方法で精製することで得ること
が出来る。
【0014】(C) ポリエーテルジオールの製造:本発明
によるポリエーテルジオールの製造には、THFの単独
重合の他、THFと共重合可能な環状エーテル、ジオー
ルをコモノマーとして用いることができる。かかるモノ
マーの例としては、オキセタンおよびオキセタン誘導
体、例えば3,3−ジメチルオキセタン、メチルテトラ
ヒドロフラン、1,3−ジオクソラン、テトラヒドロピ
ランの如き環状エーテルおよび/またはエチレングリコ
ール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオー
ル、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオー
ル、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオ
ール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコー
ル、ジプロピレングリコール等を挙げることが出来る。
【0015】(D) ヘテロポリリン酸の種類:本発明に用
いるヘテロポリリン酸は、Mo,W,Vのうち少なくと
も1種の酸化物とリンのオキシ酸が結合して生じるオキ
シ酸の総称である。リンに対する前者の原子比が2.5
〜12のものが好ましい。これらヘテロポリリン酸の具
体例としては、リンモリブデン酸、リンタングステン
酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジ
ン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタング
ストバナジン酸、リンモリブドニオブ酸等が挙げられ
る。使用するヘテロポリリン酸量は、特に限定されない
が、反応系中のヘテロポリリン酸が少ないと、重合速度
が遅く、モノマーに対して重量で0.1〜20倍量、好
ましくは0.5〜5倍量である。
【0016】(E) THFの重合:THFの重合温度は、
高くするとポリマーの解重合が生じるため重合度が低下
する傾向があり、重合収率からも0〜150℃、好まし
くは30〜80℃である。反応時間は、触媒量、反応温
度により異なるが、通常0.5〜20時間である。重合
反応は、モノマーとヘテロポリリン酸とを撹拌しつつ実
施できるので、特に溶媒を必要としないが、場合により
反応に不活性な溶媒を加えてもよい。
【0017】
【作用】1)ヘテロポリリン酸触媒を用いてTHFの重
合体を製造するに際し、ヘテロポリリン酸触媒中のフリ
ーのリン酸を一定量以下とすることで、重合生成物であ
るポリエーテルジオール中の触媒を効率よく除去し、残
存率を低く抑えることができる。 2)この場合、更に、Al含有量が4ppm以下のヘテ
ロポリリン酸を触媒として用いることにより、保存中に
解重合等品質変化のない安定なTHF重合体を、高反応
転化率で製造できる。
【0018】
【実施例】以下に本発明を実施例により説明するが、本
発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。 (実施例1〜4)撹拌装置と還流冷却器を付けた300
mlの容器に、水分300ppmのTHFを200g仕
込み、これに電気炉中180℃で加熱し、配位水数を調
整したヘテロポリリン酸を100g加えた。このヘテロ
ポリリン酸中のAl含有量フリーのリン酸量および配位
水数を表1に示す。反応温度を60℃に設定し5時間撹
拌を継続した後、室温で静置し、下層の触媒相を分離し
た。上層から未反応のTHFを蒸留で除き、約50%に
濃縮した後、オクタンを1.25倍容量加え、40℃で
4時間静置した後、平均孔径0.2μmのテフロンフィ
ルターで濾過して触媒相を分離した。濾液の触媒量を分
析した結果を表1に示す。また、得られたポリエーテル
ジオールのOH価測定から求めた数平均分子量および反
応転化率もあわせて表1に示す。
【0019】(比較例1、2)表1に示すヘテロポリリ
ン酸を触媒として用い、実施例1と同様にしてTHFを
重合した。平均孔径0.2μmのテフロンフィルターで
濾過する際、約5時間で濾過の入口圧力が15倍となっ
た。濾液は透明な液体であるが、残存触媒は表1に示す
ように50ppm以上と高い。また、フィルター孔径を
1μmとした場合、圧力上昇は殆ど認められないが、濾
液は透明でなくやや濁っている。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】以上の通り、フリーのリン酸含有量を低
減したヘテロポリリン酸を触媒としてTHFを重合する
ことにより、重合体中のヘテロポリリン酸残存量が少な
く、更に、Al含有量の少ない触媒を用いることによ
り、反応転化率が高くTHF重合体を製造することがで
きる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヘテロポリリン酸触媒を用いて、テトラ
    ヒドロフランの重合体(以下THF重合体と称す)を製
    造するに際し、フリーのリン酸が1モル%以下のヘテロ
    ポリリン酸を使用することを特徴とするTHF重合体の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 Al含有量が4ppm以下であることを
    特徴とする、請求項1に記載のTHF重合体の製造方
    法。
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