WO2024127498A1

WO2024127498A1 - スライドファスナー用スライダー

Info

Publication number: WO2024127498A1
Application number: PCT/JP2022/045842
Authority: WO
Inventors: 一輝細江; 理秀亀谷
Original assignee: Ykk株式会社
Priority date: 2022-12-13
Filing date: 2022-12-13
Publication date: 2024-06-20

Abstract

スライドファスナー用スライダー（３）は、金属製のスライダー胴体（４）と、スライダー胴体（４）の左右側面（４ａ）から左右側方に突出する金属製の一対の支軸（５，５）と、一対の支軸（５，５）に回動可能に支持される引手（６）と、を備える。引手（６）は、一対の支軸（５，５）が挿入される一対の貫通孔（６２ｂ）又は一対の凹部（６２ｄ）を有し、一対の貫通孔（６２ｂ）又は一対の凹部（６２ｄ）はそれぞれ、樹脂で覆われた樹脂部（６３）を有する。

Description

スライドファスナー用スライダー

　本発明は、スライドファスナー用スライダーに関する。

　特許文献１には、例えば自動車や列車の座席シートなどに用いられる隠しスライドファスナー用スライダー１００が開示されている。このスライダー１００では、引手取付部１０６を介して引手１０７がスライダー胴部１２０に連結されている。

　また、特許文献２には、金属製の引手取付部１６０を介してスライダー胴部１２０に樹脂製の引手２００を取り付けるスライドファスナー用スライダー１００が開示されている。

日本国特開２００７－５４１７６号公報国際公開第２０１６／１３５８９７号

　上記特許文献１のスライダー１００では、引手１０７が、環状部１０７ａを介して、引手取付部１０６に回動自在に支持されている。しかし、上記特許文献１のスライダー１００は、引手１０７を所定の姿勢で維持できるように構成されたものではない。

　また、上記特許文献２のスライダー１００では、引手２００がスライダー胴部１２０の上面に設けられた引手取付部１６０に回動自在に支持されている。引手取付部１６０は、引手２００の軸部２１０を軸支するべく対向配置された一対の爪部１７０と、一対の爪部１７０の間に設けられ、引手２００の軸部２１０が載置される載置面１６１と、を備える。引手２００は、樹脂で形成された軸部２１０を有し、軸部２１０が引手取付部１６０の内周面に接触して密着する。これにより、複数の姿勢において引手２００の維持することができ、ひいては引手２００のぶらつきを防止できる。

　ところでスライダー胴体の上部は、スライダーのうち一対のテープよりも上側への突出量の全体に対して、かなりの割合を占めているので、スライドファスナーの外観を形成する重要な要素の一つである。しかしながら、特許文献２のスライダーにおいては、スライダー胴部１２０の上面に上方に突出する一対の爪部１７０が必要となるため、スライダー胴部１２０の高さ寸法が大きくなり、分厚い印象を生じさせるものとなる。

　また、軸部２１０を軸支するために、スライダー胴部１２０の一対の爪部１７０をパンチ３００で加締める工程が必要である。パンチ３００からの打撃により一対の爪部１７０が塑性変形して加締められるのであるが、軸部２１０ひいては引手２００の固定具合を加締めの程度によって安定的に調整することは困難である。

　本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた外観を備え、安定して引手ぶらつきの抑制が可能なスライドファスナー用スライダーを提供することにある。

　上記課題を解決するため、本発明は以下の構成によって達成される。
［１］　金属製のスライダー胴体と、
　前記スライダー胴体の左右側面から左右側方に突出する金属製の一対の支軸と、
　前記一対の支軸に回動可能に支持される引手６と、
を備えるスライドファスナー用スライダーであって、
　前記引手は、前記一対の支軸が挿入される一対の貫通孔又は一対の凹部を有し、
　前記一対の貫通孔又は前記一対の凹部はそれぞれ、樹脂で覆われた樹脂部を有する、
スライドファスナー用スライダー。

　本発明によれば、安定して引手ぶらつきの抑制が可能なスライドファスナー用スライダーを提供できる。

第一実施形態のスライダーが適用された第一実施形態のスライドファスナーを示す平面図である。スライダーを斜め上方から見た斜視図である。スライダーを上方から見た平面図である。スライダーを後方から見た背面図である。スライダーを左方から見た側面図である。図５のＶＩ－ＶＩ断面矢視図である。スライダーの引手の斜視図である。スライダーを右方から見た拡大側面図であり、引手を上下方向に引き上げた状態を示す図である。引手を図８の状態から回転させて倒した状態を示す図である。スライダーを右方から見た拡大側面図であり、引手を図８の状態から９０°回転させて上下方向に垂直となるように倒した状態を示す図である。変形例に係るスライダーを右方から見た拡大側面図であり、引手を上下方向に引き上げた状態を示す図である。引手を図１１の状態から回転させて倒した状態を示す図である。スライダーを右方から見た拡大側面図であり、引手を図１１の状態から９０°回転させて上下方向に垂直となるように倒した状態を示す図である。引手に、貫通孔に代えて凹部を設けた例を示す断面図である。貫通孔を含めて引手全体を樹脂製とした例を示す断面図である。

　以下、本発明の各実施形態に係るスライドファスナーについて図面に基づいて詳細に説明する。
　なお、本明細書中、スライドファスナーについて「前後方向」とは、スライダーの摺動方向であり、スライドファスナーの長手方向を言い、特に、スライダーが左右のエレメント列を噛合させるように摺動する方向を「前方」とし、左右のエレメント列を分離させるように摺動する方向を「後方」とする。
　また、スライドファスナーについて「左右方向」とは、一対のエレメント列が並べられる方向で、スライダーの摺動方向に直交する方向であり、スライドファスナーの幅方向とも言い換えることもできる。
　さらに、スライドファスナーについて「上下方向」とは、前後方向と左右方向に直交する方向であり、ファスナーテープの厚さ方向やエレメント列の高さ方向と言い換えることもできる。

（第一実施形態）
　図１は、第一実施形態のスライダーが適用された第一実施形態のスライドファスナーを示す平面図である。図２は、スライダーを斜め上方から見た斜視図である。図３は、スライダーを上方から見た平面図である。図４は、スライダーを後方から見た背面図である。図５は、スライダーを左方から見た側面図である。図６は、図５のＶＩ－ＶＩ断面矢視図である。

　図１に示すように、本発明の第一実施形態のスライダー３を適用した本発明の第一実施形態のスライドファスナー１は、前後に延長すると共に左右に平行に並べられた一対のファスナーストリンガー２，２と、一対のファスナーストリンガー２，２の対向する左右の側縁部に沿って前後に移動させるスライドファスナー用スライダー３（以下、単にスライダー３と呼ぶ。）と、を備える。

　そしてスライダー３を前方へ移動させると、一対のファスナーストリンガー２，２が閉じ、スライダー３を後方へ移動させると、一対のファスナーストリンガー２，２が開く。前側とは図１での上側であり、後側とは図１での下側である。上側とは図１の紙面に対して手前側であり、下側とは図１の紙面に対して奥側である。右側とは図１での右側であり、左側とは図１での左側である。

　一対のファスナーストリンガー２，２は、前後に延長すると共に左右に平行に並べる一対のテープ２１，２１と、一対のテープ２１，２１における対向する左右の側縁部に沿って固定された一対のエレメント列２２，２２と、を備える。

　なお、図１では不図示であるが、一対のファスナーストリンガー２，２は、一対のエレメント列２２，２２の前側において各テープ２１に対して別々に固定された２つの前止具と、一対のエレメント列２２，２２の後側において一対のテープ２１，２１に対して固定された１つの後止具と、を有してもよい。

　各エレメント列２２は、テープ２１の対向する側縁部の下面に沿って前後に間隔をあけて配列された多数のエレメント２２ａによって形成され、本実施形態では多数のエレメント２２ａをコイル状に連続させてあるコイルエレメントによって形成される。一対のファスナーストリンガー２，２を閉じるためにスライダー３を前方へ移動させると、一対のエレメント列２２，２２のエレメント２２ａ同士が噛合する。なお、前止具が設けられる場合は、スライダー３が前止具に衝突することによって、スライダー３の更なる前方への移動が阻止される。また一対のファスナーストリンガー２，２を開くためにスライダー３を後方へ移動させると、一対のエレメント列２２，２２のエレメント２２ａ同士が左右に分離する。なお、後止具が設けられる場合は、スライダー３が後止具に衝突することによって、スライダー３の更なる後方への移動が阻止される。

　なお、各テープ２１は、薄くて細長い平面視矩形状で、例えば織物のテープ本体の上面を樹脂製の防水膜で覆った複層構造や、樹脂製のテープ本体の単層構造のように防水性を有するものが望ましい。

　図１～図６に示すように、本発明の第一実施形態のスライダー３は、一対のエレメント列２２，２２に係合すると共に前後に移動可能なスライダー胴体４と、スライダー胴体４の左右側面から側方に突出する一対の支軸５，５と、一対の支軸５，５に回動可能に支持される引手６と、を備える。

　一対の支軸５，５は、スライダー胴体４の左右側面４ａ，４ａから左右側方（左右方向外側）に突出している。より詳細には、一対の支軸５，５は、スライダー胴体４の上翼板４１の左右側面４１ａ，４１ａの前後方向中間部から左右側方に突出し、左右方向に一直線に配置されている。図５に示すように、各支軸５は、左右方向から見たとき略四角形である略四角柱形状である。図示の支軸５は、左右方向から見たとき、四角形の各頂点が面取りされており完全な四角形ではないが、この形状に限定されず、面取りが施されない完全な四角形であってもよい。また、後述するように、各支軸５の形状は特に限定されず、左右方向から見たとき略多角形である略多角柱形状であってもよく、左右方向から見たとき略円形である略円柱形状であってもよく、左右方向から見たとき略しずく形である柱形状であってもよく、左右方向から見たとき略楕円形である柱形状であってもよい。

　スライダー胴体４は、上下に間隔をあけて対向して配置される上翼板４１及び下翼板４２と、上翼板４１と下翼板４２の双方の前部同士の間における左右方向中間部に架設される連結柱４３と、上翼板４１の左右両端部から下側へ向かって突出する２つのフランジ４４，４４と、上述した一対の支軸５，５を備えている。

　またスライダー胴体４の内部には一対のエレメント列２２，２２を通すエレメント通路４５と、一対のテープ２１，２１を通す一対のテープ溝４６，４６とが形成される。一対の支軸５，５を含むスライダー胴体４は、例えば銅と亜鉛の合金等の金属製が望ましく、例えばダイカスト鋳造法によって成型される。

　上翼板４１は、上面及び下面を略平面とするものである。ここでの略平面とは、水平面だけでなく、側面視して円弧状の湾曲面や、湾曲面と水平面とを組み合わせた面を含む。また平面視すると、上翼板４１の形状は図３に示すように、左右対称形状である。また、下翼板４２も平面視すると、左右対称形状である。また下翼板４２も、上面及び下面を略平面とするものである。

　図４に示すように、エレメント通路４５は、上下を上翼板４１及び下翼板４２によって外部と仕切られ、左右を２つのフランジ４４，４４によって外部と仕切られ、前後方向に貫通する空間である。またエレメント通路４５の後部は直線状に延長し、エレメント通路４５の後端は噛合状態の一対のエレメント列２２，２２を通す後口４５ｂとなっている。一方、エレメント通路４５の前部は連結柱４３によって前方へ向かって左右に二股に分岐し、エレメント通路４５の前端は分離状態の一対のエレメント列２２，２２を通す一対の前口４５ａ，４５ａとなっている。つまりエレメント通路４５は全体としてＹ字状となっている。

　一対のファスナーストリンガー２，２を開いた状態とする時、すなわちスライダー３を後方へ移動させた時、噛み合った状態の一対のエレメント列２２，２２がその下側に位置する一対のテープ２１，２１と一緒に後口４５ｂからエレメント通路４５内へ導入される。そして一対のエレメント列２２，２２が連結柱４３によって左右に分離され、分離された状態の一対のエレメント列２２，２２が一対のテープ２１，２１と一緒に前口４５ａから排出される。一方、一対のファスナーストリンガー２，２を閉じた状態とする時、すなわちスライダー３を前方へ移動させた時、分離した状態の一対のエレメント列２２，２２が一対のテープ２１，２１と一緒に前口４５ａからエレメント通路４５内へ導入される。そして、連結柱４３の後側において一対のエレメント列２２，２２が噛合し、噛合した状態の一対のエレメント列２２，２２が後口４５ｂから排出される。

　各テープ溝４６は、一対のフランジ４４，４４と下翼板４２の上面との間に形成される空間である。左右のテープ溝４６，４６はエレメント通路４５の左右に連通している。また上翼板４１のみにフランジ４４が設けられ下翼板４２にはフランジが設けられないので、各テープ溝４６はエレメント通路４５の下側に偏って連通する状態に形成されている。

　図７は、スライダーの引手の斜視図である。図１～図７に示すように、引手６は、ユーザが指で摘まむ引手本体６１と、引手本体６１の左右から延長する一対の腕６２，６２と、を備え、全体として略Ｕ字形状である。各腕６２は、棒状であり、その先端部に支軸５を通す環状のリング６２ａが形成されている。

　リング６２ａの外周は、円形状、より詳しくは腕６２が棒状に延長する形状であるために略Ｃ字形状となっている。一方、リング６２ａの外周の最上端は、後に詳述する図１０に示すように、左右の腕６２，６２を水平に倒伏した状態において、スライダー胴体４の上面すなわち上翼板４１の上面よりも上側に所定寸法６２ｔだけ突出している。したがって、スライダー胴体４の上面は左右の腕６２，６２のリング６２ａの上面よりも低く形成されている。

　そしてリング６２ａの内周側には、当該リング６２ａを左右方向に貫通する貫通孔６２ｂが形成される。一対の貫通孔６２ｂ，６２ｂには、スライダー胴体４の一対の支軸５，５が挿入される。これにより、引手６は、一対の支軸５，５を介して、スライダー胴体４に対して回動可能に支持される。

　一対の貫通孔６２ｂ，６２ｂの内周面はそれぞれ、樹脂によって覆われた樹脂部６３を有する。この樹脂部６３の内周に、金属製の支軸５が挿入される。したがって、支軸５が貫通孔６２ｂの内周面の樹脂部６３に接触して摩擦力が発生することで、引手６の姿勢が所定の位置で維持されるので、引手６のぶらつきが抑制される。

　また、上述したように、特許文献２のスライダーにおいては、引手に軸部が設けられ、スライダー胴部の上面には上記軸部を軸支する一対の爪部が設けられる。したがって、スライダー胴部の上面には上方に突出する一対の爪部が必要となり、スライダー胴部の高さ寸法が大きくなりがちであった。また、引手の軸部を軸支するために、スライダー胴部の一対の爪部をパンチ等を用いて加締める工程が必要であった。これに対し、本実施形態においては、スライダー胴体４の左右側面４ａに一対の支軸５，５が設けられ、当該一対の支軸５，５に引手６の一対の貫通孔６２ｂ，６２ｂが挿入されるので、組立時に加締め工程も必要ない。また、スライダー胴体４の上面に引手６を固定するための爪部も必要ないので、スライダー胴体４の上面を、本実施形態のように略平面とすることができ、すっきりとした印象を与える優れた外観のスライダー３を実現できる。

　引手６は、例えば、樹脂部６３以外の金属部分（引手本体６１及び腕６２）をダイカスト成型した後、樹脂を射出成型して樹脂部６３を設けることによって製造される。樹脂部６３の材料は、ＰＯＭ（ポリアセタールまたはポリオキシメチレン）やＴＰＵ（熱可塑性ポリウレタン）等の弾性を有する部材、言い換えれば、柔軟性を有する部材で形成されている。この柔軟性により持続的な支軸５との干渉を実現できる。樹脂部６３は、引手６が自身の姿勢を保持できるように、支軸５に接触するのであれば、ＰＯＭやＴＰＵ以外の樹脂材料であってもよい。このように、引手６の樹脂部６３以外の部分を金属製とすることで、良好な強度の引手６を得られる。また、引手６の視認可能な外観の大部分が金属製となるので、引手６に高級感を持たせることができる。なお、図１５を参照して後述するように、引手６は樹脂部６３を含めて全体を樹脂製とすることも許容されるが、強度確保の観点からは、本実施形態のように、樹脂部６３以外の部分は金属製とすることが好ましい。

　図６に示すように、樹脂部６３は、その左右方向中間部に位置し、他の部分よりも外径が小径である小径部６３ａと、小径部６３ａの左右方向外側に接続し、小径部６３ａよりも外径が大径である外側大径部６３ｂと、小径部６３ａの左右方向内側に接続し、小径部６３ａよりも外径が大径である内側大径部６３ｃと、を有する。これら小径部６３ａ、外側大径部６３ｂ、及び内側大径部６３ｃの内径は、同一である。このように、樹脂部６３は、小径部６３ａの左右方向両側から、外側大径部６３ｂ及び内側大径部６３ｃが外径側に突出した形状である。

　小径部６３ａと外側大径部６３ｂは、腕６２の内部に位置しているが、内側大径部６３ｃは、腕６２の外部に露出している。そして、内側大径部６３ｃは、腕６２の左右方向内側面６２ｃに当接する。そして、外側大径部６３ｂと内側大径部６３ｃとによって腕６２を左右方向両側から挟み込む位置関係とすることで、樹脂部６３が腕６２から左右方向に抜け出ることが防止されている。

　また、内側大径部６３ｃの下側部は、スライダー胴体４の左右側面４ａ、より詳細には上翼板４１の左右側面４１ａに接する。したがって、樹脂部６３の内側大径部６３ｃとスライダー胴体４の左右側面４ａとの摩擦力によって、引手６の姿勢を維持することができ、引手ぶらつき抑制効果を高めることができる。ここで上述の通り、引手６は、ユーザが指で摘まむ引手本体６１と、引手本体６１の左右から延長する一対の腕６２，６２と、を備え、全体として略Ｕ字形状である。したがって、一対の腕６２，６２は、引手６の略Ｕ字形状を維持するように、弾性力を有する。したがって、スライダー胴体４の一対の支軸５，５が一対の貫通孔６２ｂ，６２ｂに挿入された状態で、内側大径部６３ｃがスライダー胴体４の左右側面４ａに接するように寸法関係等を設定すれば、左右側面４ａからの左右方向外側に向かう力に対して一対の腕６２，６２は左右方向内側に向かう弾性力を生じるので、樹脂部６３の内側大径部６３ｃとスライダー胴体４の左右側面４ａとをより確実に接触させることができる。これにより、より大きな摩擦力が発生し、引手６の姿勢を確実に維持することができ、引手ぶらつき抑制効果をより高めることができる。

　なお、図示の例では、内側大径部６３ｃの下側部がスライダー胴体４の左右側面４ａと当接しており、内側大径部６３ｃの上側部はスライダー胴体４の左右側面４ａと当接していないが、これは、スライダー胴体４の上面をなるべく凹凸のない平面形状として優れた外観を呈するように構成するためである。しかしながら、スライダー胴体４の上面に突起を形成することやスライダー胴体４の厚みを増すことが許容できる場合には、内側大径部６３ｃの上側部がスライダー胴体４の左右側面４ａと当接するように構成しても構わない。

　図８は、スライダーを右方から見た拡大側面図であり、引手を上下方向に引き上げた状態を示す図である。図９は、引手を図８の状態から回転させて倒した状態を示す図である。図１０は、引手を図８の状態から９０°回転させて上下方向に垂直となるように倒した状態を示す図である。

　図８～図１０に示すように、各支軸５は、左右方向から見たとき略四角形である略四角柱形状である。図示の支軸５は、左右方向から見たとき、四角形の各頂点が面取りされており完全な四角形ではないが、この形状に限定されず、面取りが施されない完全な四角形であってもよい。

　左右側方から見たとき、支軸５が挿入される各貫通孔６２ｂの形状は、より具体的には貫通孔６２ｂを覆う樹脂部６３の内周面の形状は、支軸５の形状と相似形状である。すなわち、支軸５が挿入される各貫通孔６２ｂの形状は、左右方向から見たとき略四角形である略四角柱形状である。貫通孔６２ｂの内径は、支軸５の外径よりも僅かに大きく形成されている。なお、支軸５が面取りが施されない完全な四角形である場合は、貫通孔６２ｂも面取りが施されない完全な四角形とされる。

　図８には、一対の支軸５，５を一対の貫通孔６２ｂ，６２ｂに挿入することでスライダー胴体４と引手６とを組立てた際の、支軸５の略四角形状の位相と貫通孔６２ｂの略四角形状の位相とが揃っている状態が示されている。このようにスライダー胴体４と引手６とを組立てる際には、まず、スライダー胴体４の一方側（例えば図６の左側）の支軸５に、引手６の一方側（例えば図６の左側）の貫通孔６２ｂを挿入する。次に、一対の腕６２，６２を左右方向に拡げて、スライダー胴体４の他方側（例えば図６の右側）の支軸５に、引手６の他方側（例えば図６の右側）の貫通孔６２ｂを挿入する。

　ここで、一方側（図６の左側）の支軸５に貫通孔６２ｂが挿入されて引手６が図６の反時計回りに傾いた状態で、支軸５が貫通孔６２ｂを効果的に支持するため、支軸５の一方側先端部の上部にテーパ面５ａを設けても構わない。テーパ面５ａは、支軸５の上面から一方側に延びるにしたがって下方に傾斜する傾斜面である。

　また同様に、支軸５の他方側先端部の上部にも、テーパ面５ｂを設けても構わない。テーパ面５ｂは、支軸５の上面から他方側に延びるにしたがって下方に傾斜する傾斜面である。このテーパ面５ｂは、一対の腕６２，６２を左右方向に拡げてスライダー胴体４の他方側（図６の右側）の支軸５に貫通孔６２ｂを挿入する際に、他方側の腕６２のリング６２ａの下部を案内して一対の腕６２，６２を左右に拡げる機能を有する。

　このようにして、スライダー胴体４と引手６とを組立てた際には、図８に示すように、支軸５と貫通孔６２ｂの位相が揃っている。そして、支軸５と貫通孔６２ｂとは相似形状であるので、組立時には互いに干渉することはなく、貫通孔６２ｂに設けられた樹脂部６３が押圧されて変形してしまうこともない。

　次に、図８に示した状態から、図９に示すように引手６を後方に傾斜させた場合、貫通孔６２ｂの内周面の樹脂部６３が、支軸５の外周面に押圧されて弾性変形し、支軸５の外周面に接触して密着する。したがって、図９の状態では、図８の状態よりも、樹脂部６３と支軸５との干渉力が強くなる。

　さらに、図９に示した状態から、図１０に示すように引手６を後方に傾斜させて、水平に倒伏させた場合、支軸５と貫通孔６２ｂの位相が９０°ずれ、支軸５と貫通孔６２ｂの形状が揃うことになる。したがって、図１０の状態では、図８の状態と同様、樹脂部６３と支軸５との干渉力が無くなる。

　本例では、図８に示す状態では樹脂部６３と支軸５との干渉力がゼロであり、引手６を前方又は後方に倒して傾斜角度が４５°に近づくにしたがって干渉力が大きくなり、さらに引手を倒して傾斜角度が４５°超となり９０°に近づくにしたがって干渉力が小さくなり、図１０に示すように傾斜角度が９０°となると干渉力がゼロとなる。

　以上のように、支軸５と貫通孔６２ｂとを円形以外の相似形状とすれば、図８のように組立てた後、引手６を支軸５に対して回転させた場合に、貫通孔６２ｂと支軸５とが干渉して摩擦力が発生する位置と、摩擦力が発生しない位置と、を設けることができる。したがって、貫通孔６２ｂと支軸５との干渉力の強弱をつけることができる。これにより、引手６を所定の位置で静止させて維持することが、さらに容易となる。

　なお、各支軸５や各貫通孔６２ｂの形状は特に限定されず、一般的な、左右方向から見たとき略円形である略円柱形状を採用しても構わない。この場合でも、樹脂部６３がスライダー胴体４の左右側面４ａに接触し、引手６の姿勢が所定の位置で維持されるので、引手６のぶらつきを抑制することができる。

　しかしながら、図８～図１０を参照して上述したように、各支軸５や各貫通孔６２ｂの形状を、略四角形等の円形以外の相似形状とすることで、貫通孔６２ｂと支軸５の干渉力の強弱をつけることができる。したがって、各支軸５や各貫通孔６２ｂの形状は、左右方向から見たとき略多角形である略多角柱形状や、左右方向から見たとき略しずく形である柱形状や、左右方向から見たとき略楕円形である柱形状等とすることが好ましい。以下、図１１～図１３を参照して、各支軸５や各貫通孔６２ｂの形状を、左右方向から見たとき略しずく形である柱形状とした変形例を例示する。

　図１１は、変形例に係るスライダーを右方から見た拡大側面図であり、引手を上下方向に引き上げた状態を示す図である。図１２は、引手を図１１の状態から回転させて倒した状態を示す図である。図１３は、引手を図１１の状態から９０°回転させて上下方向に垂直となるように倒した状態を示す図である。

　スライダー胴体４と引手６とを組立てた際には、図１１に示すように、支軸５と貫通孔６２ｂの位相が揃っている。支軸５及び貫通孔６２ｂの左右側方から見た形状はいわゆるしずく形状であり、下方が円弧状で、上方が尖状である。そして、支軸５と貫通孔６２ｂとは相似形状であるので、組立時には互いに干渉することはなく、貫通孔６２ｂに設けられた樹脂部６３が押圧されて変形してしまうこともない。

　次に、図１１に示した状態から、図１２に示すように引手６を後方に傾斜させた場合、貫通孔６２ｂの内周面の樹脂部６３が、支軸５の上方の尖形部に押圧されて弾性変形し、支軸５の外周面に接触して密着する。したがって、図１２の状態では、図１１の状態よりも、樹脂部６３と支軸５との干渉力が強くなる。

　さらに、図１２に示した状態から、図１３に示すように引手６を後方に傾斜させて、水平に倒伏させた場合、貫通孔６２ｂの内周面の樹脂部６３は、支軸５の上方の尖形部によって、さらに強く押圧されて弾性変形する。したがって、図１３の状態では、図１２の状態よりも、樹脂部６３と支軸５との干渉力が強くなる。

　このように本変形例では、図１１に示す状態では樹脂部６３と支軸５との干渉力がゼロであり、引手６を前方又は後方に倒して傾斜角度が９０°に近づくにしたがって干渉力が大きくなり、図１２に示すように傾斜角度が９０°となると干渉力が最大となる。したがって本変形例においても、貫通孔６２ｂと支軸５とが干渉して摩擦力が発生する位置と、摩擦力が発生しない位置と、を設けることができる。したがって、貫通孔６２ｂと支軸５との干渉力の強弱をつけることができる。これにより、引手６を所定の位置で静止させて維持することが、さらに容易となる。

　なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施可能な範囲において、適宜変更、改良等が可能である。

　図１４は、引手６に、貫通孔６２ｂに代えて、凹部６２ｄを設けた例である。図１４に示すように、引手６は、一対の支軸５，５が挿入される一対の凹部６２ｄ，６２ｄを有する。そして、一対の凹部６２ｄ，６２ｄはそれぞれ、樹脂によって覆われた樹脂部６３を有する。樹脂部６３は、上述の実施形態と同様、小径部６３ａと外側大径部６３ｂと内側大径部６３ｃとを有するが、外側大径部６３ｂが貫通孔を有する円環状ではなく、中実の円盤状である点が、第１実施形態と異なる。したがって、外側大径部６３ｂは、凹部６２ｄの底面を形成する。このように、貫通孔６２ｂに代えて凹部６２ｄを設けた場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。

　また、引手６は貫通孔６２ｂ又は凹部６２ｄの樹脂部６３を含めて、引手６全体を樹脂製としてもよい。図１５は、貫通孔６２ｂを含めて引手６全体を樹脂製とした例が示されている。このように、引手６全体を樹脂製とした場合、上述の実施形態のように樹脂部６３以外を金属製とした場合に比べて強度は若干落ちるものの、成型が容易となる。

　以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。

［１］　金属製のスライダー胴体（４）と、
　前記スライダー胴体（４）の左右側面（４ａ）から左右側方に突出する金属製の一対の支軸（５，５）と、
　前記一対の支軸（５，５）に回動可能に支持される引手（６）と、
を備えるスライドファスナー用スライダー（３）であって、
　前記引手（６）は、前記一対の支軸（５，５）が挿入される一対の貫通孔（６２ｂ）又は一対の凹部（６２ｄ）を有し、
　前記一対の貫通孔（６２ｂ）又は前記一対の凹部（６２ｄ）はそれぞれ、樹脂で覆われた樹脂部（６３）を有する、
スライドファスナー用スライダー（３）。
　この構成によれば、一対の貫通孔（６２ｂ，６２ｂ）の内周面はそれぞれ、樹脂によって覆われた樹脂部（６３）を有し、この樹脂部（６３）の内周に、金属製の支軸（５）が挿入される。したがって、支軸（５）が貫通孔（６２ｂ）の内周面の樹脂部（６３）に接触して摩擦力が発生することで、引手６の姿勢が所定の位置で維持されるので、引手（６）のぶらつきが抑制される。

［２］　前記樹脂部（６３）は、前記スライダー胴体（４）の前記左右側面（４ａ）に接する、
［１］に記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　この構成によれば、樹脂部（６３）とスライダー胴体（４）の左右側面（４ａ）との摩擦力によって、引手（６）の姿勢を維持することができ、引手ぶらつき抑制効果を高めることができる。

［３］　左右側方から見たとき、前記一対の貫通孔（６２ｂ）又は前記一対の凹部（６２ｄ）の形状と、前記一対の支軸（５，５）の形状とは、円形以外の相似形状である、
［１］又は［２］に記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　この構成によれば、支軸（５）と貫通孔（６２ｂ）とを円形以外の相似形状とすれば、引手（６）を支軸（５）に対して回転させた場合に、貫通孔（６２ｂ）と支軸（５）とが干渉して摩擦力が発生する位置と、摩擦力が発生しない位置と、を設けることができる。したがって、貫通孔（６２ｂ）と支軸（５）との干渉力の強弱をつけることができる。これにより、引手（６）を所定の位置で静止させて維持することが、さらに容易となる。

［４］　左右側方から見たとき、前記一対の貫通孔（６２ｂ）又は前記一対の凹部（６２ｄ）の形状と、前記一対の支軸（５，５）の形状とは、略多角形状である
［３］に記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　この構成によれば、貫通孔（６２ｂ）と支軸（５）との干渉力の強弱をつけることができ、引手（６）を所定の位置で静止させて維持することが容易となる。

［５］　左右側方から見たとき、前記一対の貫通孔（６２ｂ）又は前記一対の凹部（６２ｄ）の形状と、前記一対の支軸（５，５）の形状とは、略しずく形状である
［３］に記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　この構成によれば、貫通孔（６２ｂ）と支軸（５）との干渉力の強弱をつけることができ、引手（６）を所定の位置で静止させて維持することが容易となる。

［６］　前記引手（６）は、前記樹脂部（６３）以外の部分が金属製である、
［１］～［５］の何れか１つに記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　この構成によれば、良好な強度の引手（６）を得られる。また、引手（６）の視認可能な外観の大部分が金属製となるので、引手（６）に高級感を持たせることができる。

［７］　前記引手（６）は、前記樹脂部（６３）を含めて全体が樹脂製である、
［１］～［５］の何れか１つに記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　この構成によれば、引手（６）の成型が容易である。

１　スライドファスナー
２　ファスナーストリンガー
２１　テープ
２２　エレメント列
２２ａ　エレメント
３　スライダー（スライドファスナー用スライダー）
４　スライダー胴体
４ａ　左右側面
４１　上翼板
４１ａ　左右側面
４２　下翼板
４３　連結柱
４４　フランジ
４５　エレメント通路
４５ａ　前口
４５ｂ　後口
４６　テープ溝
５　支軸
５ａ，５ｂ　テーパ面
６　引手
６１　引手本体
６２　腕
６２ａ　リング
６２ｂ　貫通孔
６２ｃ　左右方向内側面
６２ｔ　所定寸法
６２ｄ　凹部
６３　樹脂部
６３ａ　小径部
６３ｂ　外側大径部
６３ｃ　内側大径部

Claims

　金属製のスライダー胴体（４）と、
　前記スライダー胴体（４）の左右側面（４ａ）から左右側方に突出する金属製の一対の支軸（５，５）と、
　前記一対の支軸（５，５）に回動可能に支持される引手（６）と、
を備えるスライドファスナー用スライダー（３）であって、
　前記引手（６）は、前記一対の支軸（５，５）が挿入される一対の貫通孔（６２ｂ）又は一対の凹部（６２ｄ）を有し、
　前記一対の貫通孔（６２ｂ）又は前記一対の凹部（６２ｄ）はそれぞれ、樹脂で覆われた樹脂部（６３）を有する、
スライドファスナー用スライダー（３）。
　前記樹脂部（６３）は、前記スライダー胴体（４）の前記左右側面（４ａ）に接する、
請求項１に記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　左右側方から見たとき、前記一対の貫通孔（６２ｂ）又は前記一対の凹部（６２ｄ）の形状と、前記一対の支軸（５，５）の形状とは、円形以外の相似形状である、
請求項１又は２に記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　左右側方から見たとき、前記一対の貫通孔（６２ｂ）又は前記一対の凹部（６２ｄ）の形状と、前記一対の支軸（５，５）の形状とは、略多角形状である
請求項３に記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　左右側方から見たとき、前記一対の貫通孔（６２ｂ）又は前記一対の凹部（６２ｄ）の形状と、前記一対の支軸（５，５）の形状とは、略しずく形状である
請求項３に記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　前記引手（６）は、前記樹脂部（６３）以外の部分が金属製である、
請求項１～５の何れか１項に記載のスライドファスナー用スライダー（３）。
　前記引手（６）は、前記樹脂部（６３）を含めて全体が樹脂製である、
請求項１～５の何れか１項に記載のスライドファスナー用スライダー（３）。