WO2024117076A1 - クロロプレン系重合体ラテックス組成物及び接着剤組成物 - Google Patents

クロロプレン系重合体ラテックス組成物及び接着剤組成物 Download PDF

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優れた初期接着強度を有する接着剤組成物を得ることができるクロロプレン系重合体ラテックス組成物、及びこれを含む接着剤組成物を提供する。 本発明によれば、クロロプレン系重合体及び共役樹脂酸を含むクロロプレン系重合体ラテックス組成物であって、前記クロロプレン系重合体ラテックス組成物は、前記クロロプレン系重合体100質量部に対して、前記共役樹脂酸を0.5~3.5質量部含み、前記クロロプレン系重合体は、トルエン不溶分が30質量%以下である、クロロプレン系重合体ラテックス組成物が提供される。

Description

クロロプレン系重合体ラテックス組成物及び接着剤組成物
 本発明は、クロロプレン系重合体ラテックス組成物及び接着剤組成物に関する。
 クロロプレン系重合体を含む接着剤は、種々の被着体に対して低圧着で高い接着力が得られるため、溶剤系コンタクト接着剤やグラフト接着剤などに使用されている。しかし、溶剤系接着剤は引火性や毒性を有するため、規制が年々厳しくなっている。そこで、クロロプレン系重合体ラテックスを使用した水性接着剤の開発がされている。
 例えば、特許文献1には、クロロプレン系重合体ラテックス100重量部中に、カルボン酸のアルカリ金属塩の乳化剤、及び特定の式で表されるポリオキシアルキレン誘導体を0.1~0.5重量部含むことを特徴とするクロロプレン系重合体ラテックス、並びに、該クロロプレン系重合体ラテックスを含む接着剤組成物が開示されている。
特開2016-160295号公報
 しかしながら、従来のクロロプレン系重合体ラテックス組成物を含む水性接着剤は、初期接着強度が不十分であった。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、優れた初期接着強度を有する接着剤組成物を得ることができるクロロプレン系重合体ラテックス組成物、及びこれを含む接着剤組成物を提供することを課題とする。
 本発明によれば、クロロプレン系重合体及び共役樹脂酸を含むクロロプレン系重合体ラテックス組成物であって、前記クロロプレン系重合体ラテックス組成物は、前記クロロプレン系重合体100質量部に対して、前記共役樹脂酸を0.5~3.5質量部含み、前記クロロプレン系重合体は、トルエン不溶分が30質量%以下である、クロロプレン系重合体ラテックス組成物が提供される。
 本発明者は、鋭意検討を行ったところ、クロロプレン系重合体ラテックス組成物に、共役樹脂酸を特定の量含ませ、さらに、トルエン不溶分を特定の数値範囲内とすることにより、優れた初期接着強度を有し、接着剤用途に好適なクロロプレン系重合体ラテックス組成物、及びこれを含む接着剤組成物となることを見出し、本発明の完成に至った。
 以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
[1]クロロプレン系重合体及び共役樹脂酸を含むクロロプレン系重合体ラテックス組成物であって、前記クロロプレン系重合体ラテックス組成物は、前記クロロプレン系重合体100質量部に対して、前記共役樹脂酸を0.5~3.5質量部含み、前記クロロプレン系重合体は、トルエン不溶分が30質量%以下である、クロロプレン系重合体ラテックス組成物。
[2][1]に記載のクロロプレン系重合体ラテックス組成物であって、前記共役樹脂酸は、アビエチン酸及びパラストリン酸のうち少なくとも1つを含む、クロロプレン系重合体ラテックス組成物。
[3][1]又は[2]に記載のクロロプレン系重合体ラテックス組成物であって、前記クロロプレン系重合体ラテックス組成物は、前記クロロプレン系重合体100質量部に対するノニオン系界面活性剤の含有量が、0.40質量部以下である、クロロプレン系重合体ラテックス組成物。
[4][1]~[3]のいずれかに記載のクロロプレン系重合体ラテックス組成物を含む、接着剤組成物。
[5][4]に記載の接着剤組成物であって、pH調節剤を含む、接着剤組成物。
[6][4]又は[5]に記載の接着剤組成物であって、ポリウレタンフォーム用の接着剤組成物。
 本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物によれば、優れた初期接着強度を有する接着剤組成物を得ることができる。本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物を含む接着剤組成物は、優れた初期接着強度を有し、接着剤使用時に、接着剤層の乾燥時間を短くし、又は、なくしても、優れた初期接着強度を発揮することができる。また、乾燥温度を常温とした、湿潤状態であっても、優れた初期接着強度を発揮することができる。すなわち、本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物を含む接着剤組成物による接着工程では、従来必要であった、長時間の乾燥や加熱乾燥が必須ではないため、作業工程を短縮することができ、エネルギー及びコストを削減することができ、設備を簡略化することができる。本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物を含む接着剤組成物は、例えば、ポリオレフィン樹脂や発泡体、特には、ポリウレタンフォームの接着に使用されるスプレータイプの接着剤として好適に用いることができる。
 以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
1.クロロプレン系重合体ラテックス組成物
 本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体及び共役樹脂酸を含む。本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体100質量部に対して、共役樹脂酸を0.5~3.5質量部含み、クロロプレン系重合体は、トルエン不溶分が30質量%以下である。
1.1 クロロプレン系重合体及びクロロプレン系重合体ラテックス
 本発明において、クロロプレン系重合体ラテックスは、クロロプレン系重合体を含むラテックスを意味する。また、クロロプレン系重合体は、2-クロロ-1,3-ブタジエン(以下クロロプレン単量体とも称する)に由来する単量体単位を含む重合体を意味し、クロロプレン単量体の単独重合体、及び、クロロプレン単量体とクロロプレン単量体と共重合可能な他の単量体に由来する単量体単位を含む共重合体を含む。他の単量体としては、1-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類などを挙げることができる。
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体ラテックス組成物に含まれるクロロプレン系重合体を100質量%としたとき、クロロプレン単量体単位を60~100質量%含むことが好ましい。クロロプレン単量体単位の含有率は、例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、99、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、1種のクロロプレン系重合体を含むことができ、2種以上のクロロプレン系重合体を含むこともできる。
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン単量体の単独重合体を含むことが好ましい。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体ラテックス組成物に含まれるクロロプレン系重合体ラテックスの固形分100質量%に対して、クロロプレン単量体の単独重合体を、固形分で、60~100質量%含むことが好ましい。クロロプレン単量体の単独重合体の含有率は、例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体を含むことにより、該クロロプレン系重合体ラテックス組成物を含む接着剤組成物のコンタクト性、耐熱接着性、初期接着強度を向上することができる。
<トルエン不溶分>
 本発明に係るクロロプレン系重合体は、トルエン不溶分が30質量%以下である。本発明において、トルエン不溶分とは、クロロプレン系重合体のうち、トルエン溶媒に不溶なゲル分の含有率をいう。また、ゾルとはトルエン溶媒に可溶な成分をいう。本発明に係るクロロプレン系重合体は、トルエン不溶分(ゲル分)が30質量%以下であり、分子運動性に優れるゾルを多量に含む。このため、接着界面におけるクロロプレン系重合体の分子鎖の融合が速やかに起こり、接着強度が瞬時に発現し、優れた初期接着強度を発現することが可能となると推測される。
 トルエン不溶分は、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 トルエン不溶分は、クロロプレン系重合体ラテックスを凍結乾燥させ得られるクロロプレン系重合体の質量をAgとし、凍結乾燥後のラテックスを、トルエンで溶解した混合物から分離したゲル分(不溶分)をBgとしたとき、以下の式で求めることができ、具体的には、実施例に記載の方法で求めることができる。
 トルエン不溶分(ゲル分)=B/A×100(%)
 トルエン不溶分は、クロロプレン系重合体ラテックス製造時の重合条件、例えば、重合開始剤及び連鎖移動剤の種類及び量、並びに重合温度、重合時間、重合率等の製造条件を調整することにより、制御することができる。
 なお、クロロプレン系重合体ラテックス組成物が、2種以上のクロロプレン系重合体を含む場合、2種以上のクロロプレン系重合体を混合した混合物のトルエン不溶分が上記数値範囲内であることが好ましい。
<平均粒子径>
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、平均粒子径が、160nm以下であることが好ましい。平均粒子径は、例えば、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 クロロプレン系重合体ラテックスの平均粒子径は、動的光散乱法において、光子相関法で求めた自己相関関数よりキュムラント法で求めた値とできる。具体的には、実施例に記載の方法で求めることができる。クロロプレン系重合体ラテックスの平均粒子径は、クロロプレン系重合体ラテックス製造時の重合条件、例えば、乳化剤等の種類及び量、並びに重合温度、重合時間、重合率等の製造条件を調整することにより、制御することができる。
1.2 共役樹脂酸
 本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体100質量部に対して、共役樹脂酸を0.5~3.5質量部含む。クロロプレン系重合体100質量部に対する共役樹脂酸の含有量は、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体100質量部に対して、非共役樹脂酸を0.5~6.0質量部含んでいても良い。クロロプレン系重合体100質量部に対する非共役樹脂酸の含有量は、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体ラテックス組成物中の共役樹脂酸と非共役樹脂酸の合計含有量を100質量%としたとき、共役樹脂酸の含有率を、5質量%以上とできる。共役樹脂酸の含有率は、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 共役樹脂酸とは、樹脂酸(ロジン酸)のうち、共役二重結合を有する樹脂酸を意味する。共役樹脂酸としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、及び、レボピマール酸を挙げることができる。共役樹脂酸は、アビエチン酸及びパラストリン酸のうち少なくとも1つを含むことが好ましく、アビエチン酸を含むことがより好ましい。また、非共役樹脂酸としては、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、ジヒドロアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、セコデヒドロアビエチン酸、デイソプロピルデヒドロアビエチン酸、デメチルデヒドロアビエチン酸を挙げることができる。
 クロロプレン系重合体ラテックス組成物に含まれる共役樹脂酸には、共役樹脂酸塩の形態で存在する共役樹脂酸も含まれる。クロロプレン系重合体の重合では、ロジン酸(共役樹脂酸及び非共役樹脂酸を含む)、共役樹脂酸、非共役樹脂酸を,ロジン酸塩、共役樹脂酸塩、非共役樹脂酸塩の形態で添加することもできる。また、ロジン酸等を使用した乳化重合法は強アルカリ性で実施されることが多く、強アルカリ性のクロロプレン系重合体ラテックス中では、ロジン酸、共役樹脂酸、非共役樹脂酸は塩の状態で存在する場合が多い。塩としては、アルカリ金属塩を挙げることができ、カリウム塩、ナトリウム塩等を挙げることができる。ロジン酸、共役樹脂酸、非共役樹脂酸と塩を構成する化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。共役樹脂酸には、アビエチン酸カリウム、ネオアビエチン酸カリウム、パラストリン酸カリウム、及び、レボピマール酸カリウム、並びに、アビエチン酸ナトリウム、ネオアビエチン酸ナトリウム、パラストリン酸ナトリウム、及び、レボピマール酸ナトリウムが含まれる。
 共役樹脂酸の含有量は、クロロプレン系重合体ラテックスを凍結乾燥させて得られるクロロプレン系重合体の固形分を、JIS K 6229で規定されるエタノール/トルエン共沸混合物(ETA溶液)で抽出し塩酸処理を施すことにより得られた抽出物を用いて、ガスクロマトグラフィーを行い、ガスクロマトグラフィーの測定結果より、共役樹脂酸成分のピーク面積、非共役樹脂酸成分のピーク面積を求め、総ピーク面積に対する共役樹脂酸成分及び非共役樹脂酸成分の含有量を算出することにより算出することができる。具体的には実施例に記載の方法で算出することができる。
 クロロプレン系重合体ラテックス組成物中の共役樹脂酸の含有量は、クロロプレン系重合体ラテックス組成物に配合する乳化剤の種類及び量、特にはクロロプレン系重合体の乳化重合時に用いるロジン酸の種類及び量を調整することにより、制御することができる。
 クロロプレン系重合体の乳化重合には、ロジン酸やそのアルカリ金属塩を乳化剤として用いることが知られている。しかしながら、ロジン酸として、共役二重結合を有する共役樹脂酸を含むロジン酸を用いた場合、重合が阻害される場合があった。また、得られるクロロプレン系重合体ラテックスの安定性が十分ではなかったり、接着特性が十分ではなかったりする場合があった。このような観点から、クロロプレン系重合体の乳化重合には、(特には、接着剤用途のクロロプレン系重合体の乳化重合には、)乳化剤として、不均化ロジン酸、特には不均化ロジンアルカリ金属塩が用いられる。
 本発明者らは鋭意検討を行ったところ、クロロプレン系重合体の乳化重合に共役樹脂酸を含む乳化剤を用い、かつ、その量を特定し、さらに、クロロプレン系重合体ラテックス組成物中のノニオン系界面活性剤の上限を定めることで、従来よりも初期接着強度に優れる接着剤組成物を得ることができるクロロプレン系重合体ラテックス組成物となることを見出し、本発明を完成させた。
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、共役樹脂酸の含有率が5質量%以上であるロジン酸を含むことができる。共役樹脂酸の含有率は、例えば5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
1.3 ノニオン系界面活性剤
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体100質量部に対するノニオン系界面活性剤の含有量が、0.4質量部以下であることが好ましい。ノニオン系界面活性剤の含有量は、例えば、0、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、ノニオン系界面活性剤を含まないこともできる。本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、特定の量の共役樹脂酸を含み、かつ、ノニオン系界面活性剤の上限を規定することにより、優れた初期接着強度を有する接着剤組成物となる。クロロプレン系重合体100質量部に対するノニオン系界面活性剤の含有量は実施例に記載の方法で求めることができる。
 ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル系、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、グリセリン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルアミン系、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系、アルキルアルカノールアミド系等の界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル系及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル系の界面活性剤うち少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリオキシエチレンフェニルエーテル系及びポリオキシエチレンアルキルエーテル系の界面活性剤うち少なくとも1種を含むことがより好ましく、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル系の界面活性剤を含むことがより好ましい。
 ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系及びポリオキシアルキレンフェニルエーテル系の界面活性剤は、RO(EO)(PO)Hで表すことができる。式中のRは炭素数8~30の直鎖又は分岐のアルキル基、あるいは非置換又は置換のフェニル基であり、好ましくは炭素数8~12の直鎖又は分岐のアルキル基、あるいは非置換又は置換のフェニル基であり、更に好ましくはフェニル基の水素原子がスチリル基C-CH(CH)-基で置換されたスチレン化フェニル基である。また、EOはエチレンオキシド基、POはプロピレンオキシド基、ブチレンオキシド基等の炭素数3以上のアルキレンオキシド基を表し、それらの配列はブロックでもランダムでもよい。また、n、mはそれぞれ0~100であり、好ましくは0~50である。なお、n+m>0である。
 なお、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、共役樹脂酸、その塩、ロジン酸、その塩及びノニオン系界面活性剤以外の乳化剤や分散剤を含んでいてもよい。その他の乳化剤や分散剤については、クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法についての説明で後述する。
1.4 クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法
 本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は特に限定されないが、以下の方法で製造できる。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は、乳化重合工程を含むことができ、乳化重合工程では、クロロプレン単量体、又は、クロロプレン単量体及びこれと共重合可能な他の単量体を含む原料単量体を、乳化剤や分散剤や重合開始剤や連鎖移動剤、還元剤等を適宜に用いて乳化重合させ、目的とする重合率に達した際に重合停止剤を添加してクロロプレン系重合体ラテックスを得ることができる。また、このようにして得られたクロロプレン系重合体ラテックスに、必要に応じて、ノニオン系界面活性剤等の添加物を添加することができる。また、減圧蒸留等の濃縮法等によって、未反応の単量体を除去しても良い。
(乳化剤)
 乳化剤は、共役樹脂酸を含むことが好ましい。共役樹脂酸の添加量は、用いる全単量体100質量部に対して、0.5~3.5質量部とできる。用いる全単量体100質量部に対する共役樹脂酸の添加量は、例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。共役樹脂酸の種類については前述のとおりであり、共役樹脂酸には、共役樹脂酸塩の形態で存在する共役樹脂酸も含まれる。
 乳化剤は、非共役樹脂酸を含むこともできる。非共役樹脂酸の添加量は、用いる全単量体100質量部に対して、0.5~6.0質量部とできる。用いる全単量体100質量部に対する非共役樹脂酸の添加量は、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 乳化剤中の共役樹脂酸と非共役樹脂酸の合計含有量を100質量%としたとき、共役樹脂酸の含有率は、5質量%以上とできる。共役樹脂酸の含有率は、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 一般に、クロロプレン系重合体の乳化重合に用いられる不均化ロジン酸は、生ロジン酸に対して不均化処理を施したものであり、不均化ロジン酸は、共役樹脂酸の含有量が極めて少ないか、又は共役樹脂酸を含まない。本発明の一実施形態では、不均化処理を施していないロジン酸、例えば、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジンの生ロジン酸や共役樹脂酸を非共役樹脂酸に完全に変性させる処理を施していないロジン酸(一部が非共役樹脂酸に変性し、一部が共役樹脂酸として残存している場合を含む)を乳化剤として用いることができる。
 得られるクロロプレン系重合体ラテックス組成物中の共役樹脂酸の含有量が上記した数値範囲内となれば特に制限されないが、ロジン酸の添加量は、用いる全単量体100質量部に対して、3.0~7.0質量部とすることができる。ロジン酸の添加量は、例えば、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 乳化剤は、共役樹脂酸の含有率が5質量%以上であるロジン酸を含むことができる。ロジン酸中の共役樹脂酸の含有率は、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 乳化重合工程で用いる乳化剤としては、不均化ロジン酸を含むロジン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むこともできる。乳化剤が、生ロジン酸及び/又はその塩、並びに、不均化ロジン酸及び/又はその塩を含む場合、乳化剤は、これらのロジン酸の合計100質量%に対して、生ロジン酸及び/又はその塩を15質量%以上含むことが好ましい。乳化剤は、ロジン酸の合計100質量%に対して、生ロジン酸及び/又はその塩を例えば、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量部含むことができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。乳化剤は、ロジン酸及び/又はそのアルカリ金属塩以外の乳化剤や分散剤も用いることができ、ロジン酸及び/又はそのアルカリ金属塩以外の乳化剤や分散剤としてはカチオン系、アニオン系、ノニオン系の乳化剤や分散剤を用いることができる。本発明の一実施形態では、乳化重合工程で用いる乳化剤として、共役樹脂酸を含む乳化剤と、アニオン系の乳化剤や分散剤を含むことができる。アニオン系の乳化剤や分散剤としては、pH調節剤添加時にクロロプレン系重合体ラテックスを安定化させる観点から、硫酸塩系やスルホン酸塩系のアニオン系乳化剤や分散剤を併用することが好ましい。具体的には、炭素数が8~20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが挙げられる。アニオン系の乳化剤や分散剤の添加量は、用いる全単量体100質量部に対して、0.05~5質量部とすることができる。ロジン酸及び/又はそのアルカリ金属塩以外の乳化剤や分散剤の添加量は、用いる全単量体100質量部に対して、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
(連鎖移動剤)
 乳化重合工程では、クロロプレン系重合体の分子量や分子量分布、トルエン不溶分を調整するために連鎖移動剤を添加することが好ましい。連鎖移動剤は、重合初期に添加してもよく、重合途中に添加しても良い。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタンやt-ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類が好ましい。分子量やトルエン不溶分がコントロールしやすいため、長鎖アルキルメルカプタン類を用いた方がより好ましい。連鎖移動剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。乳化重合時に添加する連鎖移動剤の合計添加量は、クロロプレン単量体及びクロロプレン単量体と共重合可能な単量体100質量部に対して0.005~0.12質量部が好ましい。連鎖移動剤の合計添加量は、例えば、0.005、0.01、0.05、0.1、0.11、0.12質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
(開始剤)
 重合用の開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を使用することができる。具体的には、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の有機あるいは無機の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が使用される。またアントラキノンスルホン酸塩や亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウムなどの助触媒を適宜併用しても良い。
(水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム)
 乳化重合工程では、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを用いることができる。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムは、用いる全単量体100質量部に対して、0.01~2.0質量部とすることができる。
(還元剤)
 乳化重合工程では、還元剤を添加することができる。還元剤としては、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、二酸化チオ尿素等を挙げることができる。還元剤の添加量は、重合工程で使用する原料単量体100質量部に対して、0.01~3.0質量部とすることができる。
(重合転化率)
 クロロプレン系重合体等の乳化重合時における原料単量体の重合転化率は、50質量%以上90質量%未満であることが好ましく、60~85質量%がより好ましい。重合転化率を50質量%以上とすることにより、クロロプレン系重合体ラテックスの固形分濃度が低下し、接着剤塗布後の乾燥工程の負荷の増大し、接着剤層の均一化が困難となることを防ぐことができる。また、クロロプレン単量体の残留による臭気や粘着力、接着力の悪化の問題を防ぐことができる。重合転化率を90質量%未満とすることにより、クロロプレン系重合体中の分岐の増大や、分子量の増大による分子量分布が増大を防ぐことができ、初期接着強度の悪化を防ぐことができる。重合転化率(質量%)は[(重合体質量/単量体質量の総和)×100]により求められる。以下、重合転化率を単に重合率と称することもある。
(重合温度)
 クロロプレン系重合体は、例えば、0~45℃の範囲で重合することができ、特に5~20℃の低温で重合することが好ましい。5~20℃の低温で重合することにより、ポリクロロプレン分子内のトランス1-4結合の比率がさらに高まり、より結晶化速度を高めることができ、水性接着剤とした際により充分な接着力が達成される。
(重合停止剤)
 一般に、クロロプレン系重合体の製造では、所望の分子量及び分布の重合体を得る目的で 、所定の重合率に到達した時点で、重合停止剤を添加し、反応を停止させる。重合停止剤としては特に制限はないが、フェノチアジン、p-t-ブチルカテコール 、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジエチルヒドロキシルアミン等を用いることができる。
(ノニオン系界面活性剤)
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は、重合停止後に、界面活性剤を添加する工程を含むことができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤を挙げることができる。ノニオン系界面活性剤の種類は前記したとおりである。
 ノニオン系界面活性剤の添加量は、クロロプレン系重合体100質量部に対して、0.4質量部以下であることが好ましい。ノニオン系界面活性剤の添加量は、例えば、0、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は、重合停止後に界面活性剤を添加する工程を含まないこともできる。なお、界面活性剤は、固形分濃度調整前に添加してもよく、固形分濃度調整後に添加しても良い。
(固形分濃度)
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は、減圧蒸留等の濃縮法等によって、未反応の単量体を除去する工程を有することができる。クロロプレン系重合体ラテックスの固形分濃度は、特に限定されないが、40~65質量%に調整できる。クロロプレン系重合体ラテックスの固形分濃度は、クロロプレン系重合体の乳化重合時の水等の溶媒を含む配合比の調整や、減圧蒸留等の濃縮工程により制御が可能である。
 以上の方法で得られるクロロプレン系重合体ラテックスをそのまま、又は、さらに添加物を添加し、クロロプレン系重合体ラテックス組成物とできる。
1.5 クロロプレン系重合体ラテックス組成物の物性
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体ラテックス組成物100質量部に対して、アクリルエマルションを25質量部、pH調節剤を11質量部含む接着剤組成物の下記方法により測定した初期接着強度1が2.7N/cm以上、及び/又は、初期接着強度2が5.9N/cm以上であることが好ましい。
 初期接着強度1は、例えば、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0N/cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 初期接着強度2は、例えば、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0N/cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<初期接着強度>
 密度30kg/mのウレタンフォーム(厚さ20mm×長さ50mm×幅50mm)2つを被着体に用い、23℃雰囲気下で接着剤を70g/mとなるようにそれぞれの被着体にスプレー塗布する。塗布後、接着剤が未乾燥の状態でウレタンフォームの接着面同士を重ね合わせ、厚さ40mmの被着体(積層体)を20mmに圧縮して10秒間保持する。その後23℃雰囲気中で1分間(初期接着強度1)又は15分間(初期接着強度2)放置後、直ちに引張り試験機(A&D製テンシロン;引張り速度200mm/min)で接着面と垂直方向に引張り試験を行い、接着強度を測定する。
2.接着剤組成物
 本発明に係る接着剤組成物は、上記のクロロプレン系重合体ラテックス組成物を含むものとできる。
2.1 pH調節剤
 本発明の一実施形態に係る接着剤組成物は、pH調節剤を含むことができる。pH調節剤を添加することにより、初期接着強度や貯蔵安定性をより向上させることができる。pH調節剤としては、弱酸や緩衝液を用いることができる。具体的には、クエン酸、グリコール酸などのヒドロキシ酸、ホウ酸、アミノ酸等から選ばれる少なくとも1種の化合物が望ましく、中でもアミノ酸が好ましい。アミノ酸としては、グリシン、アラニン、トレオニン、プロリンが挙げられ、コストや接着性能、ハンドリングの容易さなどからグリシンがより好ましい。
 本発明の一実施形態に係る接着剤組成物は、クロロプレン系重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、pH調節剤を1~20質量部含有することが好ましい。pH調節剤の含有量は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。pH調節剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
2.2 ポリマーエマルション
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物及び接着剤組成物は、ポリマーエマルション(クロロプレン系重合体以外の重合体を含むラテックス)を含むことができる。
 ポリマーエマルションとしては、アクリルエマルション、ウレタンエマルジョン、スチレン/ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル/ブタジエンゴムラテックス、天然ゴムラテックス等の中から選択される1種以上を挙げることができ、アクリルエマルションを含むことが好ましい。アクリルエマルションは、(メタ)アクリル酸エステルに、必要に応じて官能基となる単量体、架橋基となる単量体及び/又は共重合可能な他のモノマーを(共)重合させて得られるものとできる。
 本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物及び接着剤組成物における、クロロプレン系重合体ラテックスの固形分100質量部に対するポリマーエマルションの含有量は、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ポリマーエマルションは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の一実施形態に係る接着剤組成物は、ポリマーエマルション、特にはアクリルエマルション)を含むことにより、初期接着力を維持しつつその貯蔵安定性と接着剤層の風合い(硬さ)をより向上させることができる。
 本発明の一実施形態における接着剤組成物は、公知の成分を含むことができ、例えば、さらに粘着付与剤、受酸剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤等を含有することもできる。粘着付与剤としては、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系炭化水素等を挙げることができる。
 本発明の一実施形態における接着剤組成物は、上記方法により測定した初期接着強度1が2.7N/cm以上、及び/又は、初期接着強度2が5.9N/cm以上であることが好ましい。
 初期接着強度1は、例えば、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0N/cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 初期接着強度2は、例えば、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0N/cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
 本発明の一実施形態に係る接着剤組成物は、接着剤、好ましくは水性接着剤、より好ましくは一液型水性接着剤として好適に使用できる。本発明の一実施形態に係る接着剤組成物は、スプレータイプの接着剤として好適に用いることができ、特に下記の被着体を接着するためのスプレータイプの接着剤として好適に用いることができる。
 本発明の一実施形態に係る接着剤組成物が接着の対象とする被着体としては、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンなどの材質からなる発泡体(フォーム)、木材、布、織物等が挙げられる。本発明の一実施形態に係る接着剤組成物は、ポリウレタンフォーム用とすることができ、被着体の少なくとも一方がポリウレタンフォームとできる。例えば、ポリウレタンフォーム同士、ポリウレタンフォームと木材、ポリウレタンフォームと布の接着に好適であり、例えばポリウレタンフォーム製部材を含む家具の製造などの接着に好適に使用することができる。
 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<クロロプレン系重合体ラテックスの作製>
 内容積10Lの重合缶に、クロロプレン(単量体)100質量部、n-ドデシルメルカプタン0.1質量部、純水90質量部、ロジン酸カリウムA(共役樹脂酸含有、自社調製品)4.5質量部、水酸化カリウム0.55質量部、及び、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(商品名「デモールN」、花王株式会社製)0.30質量部、NaHSO0.3質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム、還元剤として二酸化チオ尿素を添加し、重合温度10℃にて窒素気流下で重合を行った。重合転化率83質量%となった時点で、重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させることにより蒸留前のラテックスを得た。ノニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(商品名「ノイゲンEA-137」、第一工業製薬株式会社製)を0.20部添加し、この蒸留前のラテックスを減圧蒸留して未反応の単量体を除去することにより、クロロプレン系重合体を含有する蒸留後のラテックスA(固形分:55質量%)を得た。
 表1に示す成分及び条件を用いたことを除きラテックスAと同様の操作を行うことによりラテックスB~L(固形分:55質量%)を得た(不均化ロジン酸カリウム:商品名「ロンヂスK-25」、荒川化学工業株式会社製)。
<ロジン酸成分における共役樹脂酸成分、非共役樹脂酸成分の含有量>
 上述のロジン酸カリウムAにおける共役樹脂酸成分、非共役樹脂酸成分の含有量を測定した。まず、JIS K 6229で規定されるエタノール/トルエン共沸混合物(ETA溶液)にロジン酸を溶解させ塩酸処理を施すことにより溶液(ロジン酸:1.5質量%)を得た。この溶液を用いて下記条件でガスクロマトグラフィーを行った。
[ガスクロマトグラフィーの条件]
 ・ガスクロマトグラフ質量分析装置:商品名「JEOL Jms-Q1050GC」、日本電子株式会社製
 ・使用カラム:FFAP 0.32mmφ×25m(膜厚0.3μm)
 ・カラム温度:200℃(90分保持)→250℃
 ・昇温速度:10℃/min
 ・注入口温度:270℃
 ・注入量:1μL
 ・インターフェイス温度:270℃
 ・イオン源温度:270℃
 ・イオン化電流:50μA
 ・イオン化電圧:70eV
 ・検出器電圧:-1000V
 ・イオン化法:EI法
 ガスクロマトグラフィーの測定結果より、アビエチン酸成分(アビエチン酸及びその塩。他の樹脂酸についても同様)、ネオアビエチン酸成分、パラストリン酸成分、及び、レボピマール酸成分のそれぞれの共役樹脂酸成分のピーク面積を求めると共に、デヒドロアビエチン酸成分、ピマール酸成分、イソピマール酸成分、及び、ジヒドロアビエチン酸成分のそれぞれの非共役樹脂酸成分のピーク面積を求めた。総ピーク面積に対する各成分のピーク面積の面積百分率を各成分の含有量であるとみなして、共役樹脂酸成分及び非共役樹脂酸成分の含有量を測定した。
 ロジン酸カリウムAにおいて、共役樹脂酸成分の面積百分率はアビエチン酸成分38.5%、ネオアビエチン酸成分1.2%、パラストリン酸成分2.3%、及び、レボピマール酸成分2.6%であり、共役樹脂酸成分の総面積は44.6%であった。非共役樹脂酸成分の面積百分率はデヒドロアビエチン酸成分33.5%、ピマール酸成分8.0、及び、ジヒドロアビエチン酸成分5.2%であり、非共役樹脂酸成分の総面積は46.7%であった。
 上述の不均化ロジン酸カリウムについて同様にガスクロマトグラフィーを行ったところ、アビエチン酸成分、ネオアビエチン酸成分、パラストリン酸成分、及び、レボピマール酸成分はいずれも検出されず、非共役樹脂酸成分の面積百分率はデヒドロアビエチン酸成分68.8%、ピマール酸成分0.5、及び、ジヒドロアビエチン酸成分21.1%であり、非共役樹脂酸成分の総面積は90.4%であった。
<クロロプレン系重合体における共役樹脂酸成分の含有量>
 上述のクロロプレン系重合体ラテックスを凍結乾燥させて得られるクロロプレン系重合体の固形分3gを2mm角に裁断することにより試験片を得た。コンデンサー付属のナス型フラスコにこの試験片を入れた後、JIS K 6229で規定されるエタノール/トルエン共沸混合物(ETA溶液)で抽出し塩酸処理を施すことにより得られた抽出物を用いて、ロジン酸成分における共役樹脂酸成分、非共役樹脂酸成分の含有量の分析と同様の上述の条件でガスクロマトグラフィーを行い、クロロプレン系重合体における共役樹脂酸成分の含有量を算出した。結果を表1に示す。
<クロロプレン系重合体100質量部に対するポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル含有量>
 内部標準物質トリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム-d4(TSP-d4)1.0mgとポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(商品名「ノイゲンEA-137」、第一工業製薬株式会社製)約30mgを重水1.0mLに溶解させた試料溶液のH-NMRスペクトルを日本電子(株)製JNM-ECX-400(400MHz、FT型)により測定した。化学シフトの基準物質を重水(4.65ppm)とした時、TSP-d4由来のー0.50~0.50ppmのピーク面積ITSP、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル由来の3.00~4.00ppmのピーク面積IEA-137を得た。下記の関係式より未知数MEA-137/HEA-137を算出した。ここでWは質量、Mは分子量、Iはシグナル積分値、HはシグナルH数を示す。
  WTSP/MTSP:WEA-137/MEA-137=ITSP/HTSP:IEA-137/HEA-137
 上記クロロプレン系重合体ラテックス組成物を凍結乾燥させて得られる固形分をJIS K 6229で規定されるエタノール/トルエン共沸混合物(ETA溶液)で抽出し、ろ過により固形分を除去して溶液を得たのち、溶媒除去を施し乾固物を得た。この時、クロロプレン系重合体ラテックス組成物の固形分質量に対する得られた乾固物質量の割合をETA抽出率とした。
 上記乾固物約30mgと1.0mgのTSP―d4を重水1.0mLに溶解させた試料溶液のH-NMRスペクトルを日本電子(株)製JNM-ECX-400(400MHz、FT型)により測定した。化学シフトの基準物質を重水(4.65ppm)とした時、TSP由来のー0.50~0.50ppmのピーク面積ITSP、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル由来の3.00~4.00ppmのピーク面積Iを得た。下記の関係式より試料溶液中に含まれるポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル質量Wを算出した。
  WTSP/MTSP:W/MEA-137=ITSP/HTSP:I/HEA-137
 クロロプレン系重合体ラテックス組成物の固形分質量に対するポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルの質量の割合Cを下記の式により算出した。
  C(%)=W(mg)/乾固物の質量(mg)×100×ETA抽出率(%)
 得られたCの値からクロロプレン系重合体100質量部に対するポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルの質量部を算出し、表1の値を得た。
<核磁気共鳴分析(1H―NMR)の測定条件>
・測定モード:ノンデカップリング
・フリップアングル:45度
・待ち時間:4.3秒
・サンプル回転数:12Hz
・ウィンドウ処理:指数関数
・積算回数:32・測定温度:30℃
<トルエン不溶分>
 上述のクロロプレン系重合体ラテックスを凍結乾燥させて得られるクロロプレン系重合体1gを2mm角に裁断することにより試験片を得た。コニカルビーカーにこの試験片を入れた後、トルエン80gで試験片を16時間かけて溶解した。続いて、遠心分離を行った後、200メッシュ金網を用いてゲル分(不溶分)を分離した。その後、ゲル分を乾燥させた後に乾燥物の質量を測定した。クロロプレン系重合体におけるトルエン不溶分は、凍結乾燥後のラテックスをAg、トルエンで溶解した混合物から分離したゲル分(不溶分)をBgとしたとき、以下の式で求めた。
  トルエン不溶分(ゲル分)=B/A×100(%)
結果を表1に示す。
<平均粒子径>
 上述のクロロプレン系重合体ラテックスを、固形分濃度が0.01質量%となるように蒸留水で希釈調整し、ELSZ Series(大塚電子株式会社製)によって平均粒子径を求めた。ここで、ラテックスの平均粒子径は、動的光散乱法において、光子相関法で求めた自己相関関数よりキュムラント法で求めた値を用いた。結果を表1に示す。
<水性接着剤の調製>
上記で得られたクロロプレン系重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、アクリルエマルション(商品名「Acronal Proof 1299」、BASF)25質量部、pH調節剤としてグリシン11質量部を添加し、スリーワンモーターを用いて撹拌し、水性接着剤を作製した。得られた水性接着剤の初期接着強度を以下の方法によって測定し、測定結果を表1に示す。
 [初期接着強度]
 密度30kg/mのウレタンフォーム(厚さ20mm×長さ50mm×幅50mm)2つを被着体に用い、23℃雰囲気下で接着剤を70g/mとなるようにそれぞれの被着体にスプレー塗布した。塗布後、接着剤が未乾燥の状態でウレタンフォームの接着面同士を重ね合わせ、厚さ40mmの被着体(積層体)を20mmに圧縮して10秒間保持した。その後23℃雰囲気中で1分間(初期接着強度1)又は15分間(初期接着強度2)放置後、直ちに引張り試験機(A&D製テンシロン;引張り速度200mm/min)で接着面と垂直方向に引張り試験を行い、接着強度を測定した。
 表1から明らかなように、本発明によるクロロプレン系重合体ラテックス組成物を含む接着剤組成物は、初期接着強度、特に湿潤状態における接着力が改善され、優れた初期接着強度の求められる用途に好適な接着剤、特にポリウレタンフォームの接着に使用されるスプレータイプの接着剤として好適に用いられることが確認された。

Claims (6)

  1.  クロロプレン系重合体及び共役樹脂酸を含むクロロプレン系重合体ラテックス組成物であって、
     前記クロロプレン系重合体ラテックス組成物は、前記クロロプレン系重合体100質量部に対して、前記共役樹脂酸を0.5~3.5質量部含み、
     前記クロロプレン系重合体は、トルエン不溶分が30質量%以下である、
    クロロプレン系重合体ラテックス組成物。
  2.  請求項1に記載のクロロプレン系重合体ラテックス組成物であって、
     前記共役樹脂酸は、アビエチン酸及びパラストリン酸のうち少なくとも1つを含む、
    クロロプレン系重合体ラテックス組成物。
  3.  請求項1又は請求項2に記載のクロロプレン系重合体ラテックス組成物であって、
     前記クロロプレン系重合体ラテックス組成物は、前記クロロプレン系重合体100質量部に対するノニオン系界面活性剤の含有量が、0.40質量部以下である、
    クロロプレン系重合体ラテックス組成物。
  4.  請求項1又は請求項2に記載のクロロプレン系重合体ラテックス組成物を含む、接着剤組成物。
  5.  請求項4に記載の接着剤組成物であって、
     pH調節剤を含む、接着剤組成物。
  6.  請求項4に記載の接着剤組成物であって、
     ポリウレタンフォーム用の接着剤組成物。
PCT/JP2023/042358 2022-11-28 2023-11-27 クロロプレン系重合体ラテックス組成物及び接着剤組成物 WO2024117076A1 (ja)

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