WO2024106371A1 - 修飾基板の製造方法、半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ALD処理を行い、所定の領域に選択性よくALD被膜が形成された修飾基板を製造することができる、修飾基板の製造方法、および上記修飾基板の製造方法に関する半導体デバイスの製造方法を提供する。本発明の修飾基板の製造方法は、互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板と、上記第1表面に結合または吸着する官能基および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物ならびに溶媒を含む薬液とを接触させ、上記第1表面上に第1被膜を形成する工程1と、上記工程1で得られた基板に対して、原子層堆積処理を施し、上記第2表面上に第2被膜を形成する工程2と、を含む。

Description

修飾基板の製造方法、半導体デバイスの製造方法
 本発明は、修飾基板の製造方法、および半導体デバイスの製造方法に関する。
 半導体デバイスの更なる微細化に伴い、より微細で精密な半導体素子の形成が求められている。従来、半導体素子の形成には、フォトリソグラフィ法が用いられてきたが、パターンの位置合わせ等が必要で、昨今求められる精度を満たさなくなりつつある。
 現在、所定の領域に膜を形成する技術として、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)が知られている。このようなALDによる関連する技術として、非特許文献1では、低分子アミノシラン化合物を阻害剤として、基板上の二酸化ケイ素表面に吸着させたのち、ジメチルアルミニウムイソプロポキシドと水を前駆体とした原子層堆積法によって、酸化アルミニウム層を形成することで、低分子アミノシランを吸着した領域において、酸化アルミニウム層の成長が阻害されたことが報告されている。
Wanxing Xu, Mitchel G. N. Haeve, Paul C. Lemaire, Kashish Sharma, Dennis M. Hausmann, and Sumit Agarwal, Langmuir 2022, 38, 2, 652-660.
 一方で、昨今、表面に異なる材料からなる複数の領域(例えば、金属原子を含む金属領域と絶縁体を含む絶縁領域)を有する基板に対して、一方の領域を修飾して膜(修飾膜)を形成した後、ALD処理を行うことにより、修飾膜が形成されている領域にはALDによる被膜(ALD被膜)を形成せず、修飾膜が形成されていない領域にはALD被膜を形成して、微細なパターンを形成する方法が検討されている。
 本発明者らが、非特許文献1に記載の技術について検討したところ、上記低分子アミノシラン化合物を用いて上記修飾膜を形成した後に、修飾膜が形成されていない領域上にALD被膜を形成しようとしたところ、修飾膜が形成されている領域上(修飾膜上)においても、厚いALD被膜が形成されてしまった。つまり、修飾膜が形成されていない領域に選択性よくALD被膜を形成することが困難であった。
 そこで、本発明では、ALD処理を行い、所定の領域に選択性よくALD被膜が形成された修飾基板を製造することができる、修飾基板の製造方法、および上記修飾基板の製造方法に関する半導体デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、以下の構成により上記課題が解決されることを見出した。
 〔1〕 互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板と、上記第1表面に結合または吸着する官能基および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物ならびに溶媒を含む薬液とを接触させ、上記第1表面上に第1被膜を形成する工程1と、
 上記工程1で得られた基板に対して、原子層堆積処理を施し、上記第2表面上に第2被膜を形成する工程2と、を含む、修飾基板の製造方法。
 〔2〕 上記第1表面に結合または吸着する官能基が、含窒素基、ホスホン酸基またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される、〔1〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔3〕 上記架橋性基が、エチレン性不飽和基である、〔1〕または〔2〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔4〕 上記架橋性基が、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、スチリル基、ビニルナフチル基、および、ビニル基からなる群から選択される、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法。
 〔5〕 互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板と、含窒素基、ホスホン酸基またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基、および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物ならびに溶媒を含む薬液とを接触させ、上記第1表面上に第1被膜を形成する工程1と、
 上記工程1で得られた基板に対して、原子層堆積処理を施し、上記第2表面上に第2被膜を形成する工程2と、を含む、修飾基板の製造方法。
 〔6〕 上記架橋性基が、エチレン性不飽和基である、〔5〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔7〕 上記架橋性基が、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、スチリル基、ビニルナフチル基、および、ビニル基からなる群から選択される、〔5〕または〔6〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔8〕 上記第1表面および上記第2表面の少なくとも一方が金属で構成される金属表面である、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法。
 〔9〕 上記第1表面および上記第2表面の少なくとも一方が、銅原子、コバルト原子、チタン原子、タンタル原子、タングステン原子、ルテニウム原子、およびモリブデン原子からなる群から選択される少なくとも1つの金属原子を含む、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法。
 〔10〕 上記第1表面および上記第2表面の少なくとも一方が、チタン原子、タングステン原子、ルテニウム原子、およびモリブデン原子からなる群から選択される少なくとも1つの金属原子を含む、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法。
 〔11〕 上記第2被膜が、金属膜または金属酸化物膜である、〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法。
 〔12〕 上記工程2の後に、上記第1被膜を除去する工程3をさらに有する、〔1〕~〔11〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法。
 〔13〕 上記薬液が重合禁止剤を含む、〔1〕~〔4〕、および〔8〕~〔12〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法。
 〔14〕 上記重合禁止剤が、フェノール系化合物、キノン系化合物、フリーラジカル系化合物、アミン系化合物、および、ホスフィン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、〔13〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔15〕 上記重合禁止剤の含有量が、上記化合物100質量部に対して、0.001~1.000質量部である、〔13〕または〔14〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔16〕 上記重合禁止剤の含有量が、上記化合物100質量部に対して、0.01質量部以上である、〔13〕または〔14〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔17〕 上記薬液が重合禁止剤を含む、〔5〕~〔7〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法。
 〔18〕 上記重合禁止剤が、フェノール系化合物、キノン系化合物、フリーラジカル系化合物、アミン系化合物、および、ホスフィン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、〔17〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔19〕 上記重合禁止剤の含有量が、上記化合物100質量部に対して、0.001~1.000質量部である、〔17〕または〔18〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔20〕 上記重合禁止剤の含有量が、上記化合物100質量部に対して、0.01質量部以上である、〔17〕または〔18〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔21〕 上記薬液が水を含む、〔1〕~〔20〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法。
 〔22〕 上記水の含有量が、上記溶媒の全質量に対して80質量%以下である、〔21〕に記載の修飾基板の製造方法。
 〔23〕 上記薬液が、3種以上の上記溶媒を含む、〔1〕~〔22〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法。
 〔24〕 〔1〕~〔23〕のいずれか1つに記載の修飾基板の製造方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
 本発明によれば、ALD処理を行い、所定の領域に選択性よくALDによる被膜が形成された修飾基板を製造することができる、修飾基板の製造方法、および上記修飾基板の製造方法に関する半導体デバイスの製造方法を提供できる。
 以下、本明細書における各記載の意味を表す。
 本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
 本明細書に記載の化合物は、特に断らない限り、構造異性体、光学異性体および同位体を含んでいてもよい。また、構造異性体、光学異性体および同位体は、1種単独、または2種以上含まれていてもよい。
 本明細書において、2価の基(例えば、-COO-)の結合方向は、特段の断りがない限り、「X-Y-Z」で表される化合物中のYが-COO-である場合、化合物は「X-O-CO-Z」、および、「X-CO-O-Z」のいずれであってもよい。
 本明細書において、特に断らない限り、分子量分布を有する化合物の分子量は、重量平均分子量である。
 以下、本発明の修飾基板の製造方法について詳述する。
 本発明の修飾基板の製造方法の第1実施態様は、互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板と、上記第1表面に結合または吸着する官能基、および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物(以下、「特定化合物1」ともいう。)ならびに溶媒を含む薬液とを接触させ、上記第1表面上に第1被膜を形成する工程1と、上記工程1で得られた基板に対して、原子層堆積処理を施し、上記第2表面上に第2被膜を形成する工程2と、を含む、修飾基板の製造方法である。
 また、本発明の修飾基板の製造方法の第2実施態様は、互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板と、含窒素基、ホスホン酸基またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基(以下、「特定基」ともいう。)、および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物(以下、「特定化合物2」ともいう。)ならびに溶媒を含む薬液とを接触させ、上記第1表面上に第1被膜を形成する工程1と、上記工程1で得られた基板に対して、原子層堆積処理を施し、上記第2表面上に第2被膜を形成する工程2と、を含む、修飾基板の製造方法である。
 本発明の修飾基板の製造方法(第1実施態様および第2実施態様)が上記構成を取ることで、本発明の課題を解決できる機序は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下の通り推測している。
 なお、下記推測により、効果が得られる機序が制限されるものではない。換言すれば、下記以外の機序により効果が得られる場合でも、本発明の範囲に含まれる。
 本発明の修飾基板の製造方法で用いる薬液(以下、「本薬液」ともいう。)は、第1表面に結合または吸着する官能基を有する特定化合物1、または、特定基を有する特定化合物2を含むことで、特定化合物1中の第1表面に結合または吸着する官能基、または、特定化合物2中の特定基が第1表面に結合または吸着し、結果として、第1表面に第1被膜が形成されやすい。第1被膜には、特定化合物1または特定化合物2に由来する成分が含まれる。
 さらに、特定化合物1および特性化合物2は架橋性基を有するため、工程1の後に行う工程2におけるALD処理において基板が加熱されることで、架橋性基間で反応して共有結合が形成され、第1被膜が硬化膜となる。
 したがって、第1表面上に第1被膜を均一に形成し、ALD処理において架橋性基同士を共有結合させることで、耐熱性および撥水性に優れる硬化膜が第1表面上に形成されるため、ALD処理の際に硬化膜上にALD被膜が形成されづらくなり、結果として、第2表面上に選択性よくALD被膜が形成されやすくなったものと推察される。
 以下、本発明の修飾基板の製造方法に含まれ得る各工程について詳述する。
 また、ALD処理を行い、ALD被膜が所定の領域に形成される選択性がより優れることを「本発明の効果がより優れる」ともいう。
[修飾基板の製造方法(第1実施態様)]
 本発明の修飾基板の製造方法の第1実施態様は、工程1を含む。
 工程1は、互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板と、上記第1表面に結合または吸着する官能基および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物(特定化合物1)ならびに溶媒を含む薬液(以下、「薬液1」ともいう。)とを接触させ、上記第1表面上に第1被膜を形成する工程である。
 以下、工程1で用いる薬液1について詳述する。
<薬液1>
 薬液1は、特定化合物1および溶媒を含む。
(特定化合物1)
 特定化合物1は、上述の通り、第1表面に結合または吸着する官能基、および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物である。
 上記第1表面に結合または吸着する官能基は、第1表面との間で、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、および、金属結合等、いずれの結合または相互作用を形成してもよい。
 後述する通り、第1表面は金属原子を含むことが好ましい点で、第1表面と結合または吸着する官能基としては、金属原子を含む表面に結合または吸着する官能基が好ましい。
 第1表面に結合または吸着する官能基としては、例えば、含窒素基、ホスホン酸エステル、リン酸基(-PO)またはその塩、ホスホン酸基(-PO)またはその塩、スルホ基(-SOH)またはその塩、カルボキシ基(-COOH)またはその塩、ヒドロキシ基(-OH)、チオール基(-SH)、および、加水分解性シリル基が挙げられる。
 特定化合物1が、含窒素基、ホスホン酸エステル、リン酸基(-PO)もしくはその塩、ホスホン酸基(-PO)もしくはその塩、スルホ基(-SOH)もしくはその塩、カルボキシ基(-COOH)もしくはその塩、ヒドロキシ基(-OH)、またはチオール基(-SH)を含む場合、後述する態様Aの基板上に第1被膜をより選択的に形成しやすく、加水分解性シリル基を含む場合、後述する態様B(特に、態様B3)の基板上に第1被膜をより選択的に形成しやすい。
 なかでも、第1表面に結合または吸着する官能基としては、含窒素基、ホスホン酸基またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基が好ましく、含窒素基、ホスホン酸基またはその塩、ホスホン酸エステル、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基がより好ましく、含窒素基、ホスホン酸基またはその塩、および、ホスホン酸エステルからなる群から選択される基がさらに好ましい。
 含窒素基としては、第1級アミノ基(-NH)、第2級アミノ基(-NRH)、第3級アミノ基(-NR )、および、第4級アンモニウム基(-N )が挙げられ、第1級アミノ基、第2級アミノ基、または第3級アミノ基が好ましく、第1級アミノ基がより好ましい。
 なお、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、複数のRはそれぞれ異なっていてもよい。また、複数のRは互いに結合して環を形成していてもよい。形成される環としては、窒素原子を含む環であり、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、および、ピペラジン環等が挙げられる。
 また、含窒素基は、含窒素ヘテロアリール基であってもよく、含窒素ヘテロアリール基は、単環であっても複環であってもよい。含窒素ヘテロアリール基としては、ピリジル基、トリアジン基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、ベンズイミダゾール基、および、ベンズトリアゾール基等が挙げられる。
 リン酸基の塩とは、-PO 2-Ctn+ 2/nで表される基をいう。なお、Ctn+は、n価のカチオンを表し、nは1または2を表す。1価のカチオンとしては、Li、Na、K、および、NH 等が挙げられる。Ctn+が1価のカチオンを表す場合、その個数は2個である。2価のカチオンとしては、Mg2+、および、Ca2+等が挙げられる。Ctn+が2価のカチオンを表す場合、その個数は1個である。
 なお、リン酸基を有する化合物を、「リン酸化合物」ともいい、官能基名としては、「-リン酸」ともいう。
 ホスホン酸基の塩とは、-PO 2-Ctn+ 2/nで表される基をいう。Ctn+は、n価のカチオンを表し、nは1または2を表す。1価のカチオンおよび2価のカチオンとしては、それぞれ上記のリン酸基の塩で説明したカチオンと同様のカチオンが挙げられ、その個数もそれぞれ同様である。
 また、ホスホン酸エステルとは、-PO で表される基をいう。Rは、各々独立に、水素原子または有機基を表す。但し、2つの存在するRのうち、少なくとも一方は有機基を表す。ホスホン酸エステルは、モノエステルであることが好ましい。すなわち、2つの存在するRのうち、一方が水素原子であり、もう一方が有機基であることが好ましい。
 有機基としては、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~6の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基が更に好ましい。上記脂肪族炭化水素基およびアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、および環状のいずれであってもよい。
 なお、ホスホン酸基を有する化合物を、「ホスホン酸化合物」ともいう。
 スルホ基の塩とは、-SO Ctで表される基をいう。Ctは1価のカチオンを表し、上記リン酸基の塩で説明した1価のカチオンと同様のカチオンが挙げられる。
 カルボキシ基の塩とは、-COOCtで表される基をいう。Ctは1価のカチオンを表し、上記リン酸基の塩で説明した1価のカチオンと同様のカチオンが挙げられる。
 上記ヒドロキシ基は、アルコール性ヒドロキシ基(脂肪族炭化水素に結合するヒドロキシ基)、およびフェノール性ヒドロキシ基(芳香族炭化水素に結合するヒドロキシ基)のいずれであってもよいが、アルコール性ヒドロキシ基が好ましい。
 上記加水分解性シリル基は、ケイ素原子を有し、水と反応することで、第1表面と結合を形成できる基に変換される基をいう。加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシシリル基、およびクロロシリル基(-Si-Cl構造を有する基)が挙げられる。
 アルコキシシリル基において、ケイ素原子(Si原子)と結合するアルコキシ基の数は特に制限されないが、2以上が好ましく、3がより好ましい。上記Si原子と結合するアルコキシ基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
 アルコキシシリル基は、なかでも、トリメトキシシリル基、またはトリエトキシシリル基が好ましい。
 クロロシリル基において、Si原子と結合する塩素原子の数は、1~3が好ましく、1がより好ましい。上記塩素原子の数が1または2である場合、クロロシリル基は、ジアルキルモノクロロシリル基、またはモノアルキルジクロロシリル基が好ましい。
 上記アルキル基は、直鎖状、環状および分岐鎖状のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基としては、なかでも、メチル基が好ましい。
 特定化合物1が有する、第1表面に結合または吸着する官能基の数は1以上であれば特に制限されないが、1~3が好ましく、1がより好ましい。
 上記架橋性基は、加熱により架橋性基間で結合を形成できれば特に制限されない。架橋性基としては、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、およびアニオン重合性基が挙げられ、エチレン性不飽和基が好ましい。
 架橋性基としては、なかでも、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、スチリル基、ビニルナフチル基、および、ビニル基からなる群から選択される基が好ましく、スチリル基、ビニルナフチル基、またはビニル基がより好ましい。ビニルナフチル基は、2-ビニルナフタレンから6位の水素原子を除いてなる基が好ましい。
 なお、上記ビニル基とは、CH=CH-で表される基であるが、本明細書において、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、スチリル基、および、ビニルナフチル基は、いずれもビニル基とは異なる基として取り扱う。つまり、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、スチリル基、および、ビニルナフチル基には、CH=CH-で表される構造が含まれるが、ビニル基とは異なる基として取り扱う。
 特定化合物1が有する、架橋性基の数は1以上であれば特に制限されないが、1~3が好ましく、1がより好ましい。
 特定化合物1は、配向性を示す構造を有することが好ましい。配向性を示す構造とは、基板と薬液1とを接触させて、第1表面上に第1被膜を形成した際に、特定化合物1を第1表面に対して垂直方向に配向させる機能を有する構造をいう。
 配向性を示す構造は、特に制限されないが、例えば、エーテル性酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香環基、およびこれらを組み合わせてなる基が挙げられる。なかでも、エーテル性酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。
 上記2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。2価の脂肪族炭化水素基は、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
 2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は特に制限されないが、第1表面上の上記第1被膜の安定性が向上する点で、1~25が好ましく、3~20がより好ましく、6~18がさらに好ましい。
 2価の芳香環基は、2価の芳香族炭化水素基(アリーレン基)および2価の芳香族複素環基(ヘテロアリーレン基)のいずれであってもよいが、アリーレン基が好ましい。
 2価の芳香環基は、単環および多環のいずれであってもよい。
 2価の芳香環基の炭素数は、5~25が好ましく、6~20がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
 アリーレン基としては、例えば、フェニレン基が挙げられる。
 ヘテロアリーレン基としては、例えば、ピリジンから水素原子2つを除いてなる基が挙げられる。
 特定化合物1としては、なかでも、式(S1)で表される化合物が好ましい。
 X-L-Y   式(S1)
 式(S1)中、Xは、含窒素基、ホスホン酸基またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基を表す。
 Xで表される各基の具体的な態様、および好適態様は、第1表面に結合または吸着する官能基について上述した通りである。Xで表される各基は、なかでも、第1級アミノ基が好ましい。
 式(S1)中、Yは、エチレン性不飽和基を表す。
 Yで表されるエチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、スチリル基、ビニルナフチル基、および、ビニル基からなる群から選択される基が好ましい。
 式(S1)中、Lは、エーテル性酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香環基、またはこれらを組み合わせてなる基を表す。
 上記2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香環基、およびこれらを組み合わせてなる基の具体的な態様、および好適態様は、上述した通りである。
 なかでも、上記2価の脂肪族炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基が好ましく、エーテル性酸素原子を有していてもよい、炭素数6~18のアルキレン基がより好ましい。
 上記2価の芳香環基としては、フェニレン基が好ましい。
 特定化合物1の分子量は、500以下であれば特に制限されないが、50~450が好ましく、100~450がより好ましく、150~400がさらに好ましい。
 特定化合物1の含有量は、薬液1の全質量に対して、0.0001~10.0質量%が好ましく、0.001~1.0質量%がより好ましく、0.01~0.5質量%がさらに好ましい。
 特定化合物1は、2種以上を併用してもよい。
 特定化合物1を2種以上併用する場合、その合計含有量が、上記範囲であることが好ましい。
(溶媒)
 薬液1は、溶媒を含む。
 溶媒としては、水および有機溶媒が挙げられる。
 有機溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ポリオール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、含硫黄系溶媒、および、エステル系溶媒が挙げられる。
 炭化水素系溶媒としては、n-ペンタン、および、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、および、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;トルエン、および、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。
 アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール(IPA)ともいう。)、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソペンチルアルコール、および、4-メチル-2-ペンタノール(メチルイソブチルカルビノール(MIBC)ともいう。)等の炭素数1~18の脂肪族アルコール系溶媒;シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式アルコール系溶媒;ベンジルアルコール等の芳香族アルコール系溶媒;ジアセトンアルコール等のケトンアルコール系溶媒等が挙げられる。
 アルコール系溶媒の炭素数は、1~8が好ましく、2~7がより好ましく、3~6がさらに好ましい。
 ポリオール系溶媒としては、例えば、炭素数2~18のグリコール系溶媒が挙げられる。
 グリコール系溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。
 グリコールエーテル系溶媒としては、例えば、炭素数3~19のグリコールモノエーテル系溶媒が挙げられる。
 グリコールモノエーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-エトキシ-1-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、および、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルが挙げられる。
 グリコールエーテル系溶媒の炭素数は、1~8が好ましく、2~7がより好ましく、3~6がさらに好ましい。
 ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンが挙げられる。
 エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、および、テトラヒドロフランが挙げられる。
 アミド系溶媒としては、例えば、ホルムアミド、モノメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、モノメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、モノエチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、および、N-メチルピロリドンが挙げられる。
 含硫黄系溶媒としては、例えば、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、および、スルホランが挙げられる。
 エステル系溶媒としては、例えば、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、および、δ-バレロラクトンが挙げられる。
 エステル系溶媒は、グリコールエステル系溶媒、酢酸n-ブチルおよび乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒、γ-ブチロラクトン(GBL)およびδ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒、並びに、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、および、プロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)等のカーボネート系溶媒等であってもよい。
 グリコールエステル系溶媒としては、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、および、メトキシブチルアセテート等の炭素数6~22のグリコールジカルボキシレート系溶媒、並びに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、および、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の炭素数5~21のグリコールモノエーテルカルボキシレート系溶媒が挙げられる。
 エステル系溶媒の炭素数は、3~22が好ましく、4~12がより好ましい。
 溶媒としては、なかでも、アルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、またはエステル系溶媒が好ましく、炭素数1~18の脂肪族アルコール系溶媒、炭素数3~19のグリコールモノエーテル系溶媒、または炭素数4~12のエステル系溶媒がより好ましく、IPA、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、またはPGMEAが更に好ましい。
 上記エステル系溶媒としては、なかでも、モノカルボン酸エステル系溶媒、ラクトン系溶媒、またはカーボネート系溶媒が好ましい。
 溶媒は、2種以上を併用してもよい。また、3種以上を用いてもよい。つまり、薬液は、3種以上の溶媒を含んでいてもよい。
 2種以上の溶媒を併用する場合、アルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、およびエステル系溶媒からなる群から選択される1種以上の有機溶媒と、水とを併用することが好ましく、1種または2種の上記有機溶媒と水とを併用することがより好ましい。
 有機溶媒の好ましい態様は上述した通りであるが、有機溶媒としては、なかでも、IPA、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、またはPGMEAが好ましい。
 薬液が水を含む場合、水の含有量は、薬液が含む溶媒の全質量に対して80質量%以下が好ましく、80質量%未満がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましい。下限は特に制限されず、例えば、0質量%であってもよい。
 また、有機溶媒の含有量をA、水の含有量をB、A+Bを100とした場合、有機溶媒と水との含有量比A/Bは、20/80~100/0が好ましく、30/70~90/10がより好ましく、40/60~80/20が更に好ましい。
 薬液における溶媒の含有量は、薬液全質量に対して、90~99.999質量%が好ましく、95~99.9質量%がより好ましく、97~99.9質量%がさらに好ましい。
 溶媒を2種以上併用する場合、その合計含有量が、上記範囲であることが好ましい。
(重合禁止剤)
 薬液の安定性が向上する点で、薬液1は、重合禁止剤を含むことが好ましい。
 重合禁止剤としては、特に限定されず、特定化合物1が有する架橋性基の種類に応じて公知の重合禁止剤を選択すればよいが、ラジカル重合禁止剤であることが好ましい。
 重合禁止剤は、フェノール系化合物、キノン系化合物、フリーラジカル系化合物、アミン系化合物およびホスフィン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、重合禁止能の観点からはフリーラジカル系化合物がより好ましい。
 フェノール系化合物としては、例えば、4-メトキシフェノール、ヒドロキノン、2-tert-ブチルヒドロキノン、4-tert-ブチルカテコール、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,5-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4-メトキシナフトール、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール、p-ニトロソフェノール、およびα-ニトロソ-β-ナフトールが挙げられる。
 キノン系化合物としては、1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン、および1,4-ナフトキノンが挙げられる。
 フリーラジカル系化合物としては、ポリ(4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル、およびトリフェニルフェルダジルが挙げられる。
 アミン系化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N-フェニル-β-ナフチルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、フェノチアジン、2-メトキシフェノチアジン、フェノキサジン、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、N-ニトロソジナフチルアミン、p-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム、およびクペロンが挙げられる。アミン系化合物として例示した各化合物は、金属塩または金属錯体を形成していてもよい。
 ホスフィン系化合物としては、亜リン酸(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)が挙げられる。
 その他、重合禁止剤として、ニトロベンゼン、および4-ニトロトルエン等のニトロベンゼン系化合物、ならびに、3,3’-チオジプロピオン酸ジオクタデシル、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、およびチオジプロピオン酸ジステアリル等のチオールエーテル類を含んでもよい。
 重合禁止剤の分子量は、1,000以下が好ましく、800以下がより好ましく、500以下がさらに好ましい。上記分子量の下限は、特に限定されないが、80以上が好ましい。
 重合禁止剤の含有量は、上記特定化合物1の含有量100質量部に対して、0.0001質量部以上が好ましく、0.001質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上がさらに好ましく、0.010質量部以上が特に好ましい。
 また、重合禁止剤の含有量は、上記特定化合物1の含有量100質量部に対して、10.0質量部以下が好ましく、1.000質量部以下がより好ましく、0.100質量部以下がさらに好ましい。
 薬液1は、重合禁止剤を1種単独で含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。重合禁止剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
<薬液1の製造方法>
 上記薬液1の製造方法は特に制限されないが、例えば、上記の各成分を混合することにより製造できる。
 薬液中の各成分を混合する順序またはタイミングは、特に制限されない。例えば、精製した溶媒を入れた混合ミキサー等の撹拌機に、特定化合物1を添加した後に十分撹拌することにより、薬液を製造する方法が挙げられる。
 薬液が特定化合物1以外のその他の成分を含む場合、その他の成分は特定化合物1を同時に添加してもよいし、異なるタイミングで添加してもよい。
 薬液1を製造する製造工程において、以下に説明する工程を行ってもよい。
(金属除去工程)
 上記製造方法は、上記成分および/または薬液(以下、「被精製物」ともいう。)から金属成分を除去する、金属除去工程を行ってもよい。
(ろ過工程)
 上記製造方法は、異物および粗大粒子等を液中から除去するために、液をろ過する、ろ過工程を含むことが好ましい。
 ろ過の方法としては特に制限されず、公知のろ過方法を使用できる。なかでも、フィルタを用いたフィルタリングが好ましい。
(除電工程)
 薬液の製造方法は、さらに、薬液を除電する除電工程を含んでいてもよい。
<基板>
 本発明の修飾基板の製造方法の第1実施態様で用いられる基板は、互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板(以下、単に「基板」ともいう。)である。
 第1表面を構成する材料、および第2表面を構成する材料は、互いに異なっていれば特に制限されず、有機材料、および、無機材料のいずれであってもよいが、本発明の効果がより優れる点で、第1表面および第2表面の少なくとも一方が金属原子を含むことが好ましく、第1表面が金属原子を含むことがより好ましい。
 なお、本明細書においては、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、およびテルル等の半金属原子についても金属原子に含めるものとする。
 第1表面または第2表面が金属原子を含む場合、上記金属原子は、例えば、金属(例えば、金属単体)または化合物中に含まれる金属原子として含まれていてもよい。また、金属原子は、純金属または合金中に含まれる金属原子として含まれていてもよい。
 金属原子としては、遷移金属原子が好ましく、銅原子、コバルト原子、チタン原子、タンタル原子、タングステン原子、ルテニウム原子、およびモリブデン原子からなる群から選択される少なくとも1つの金属原子が好ましく、チタン原子、タングステン原子、ルテニウム原子、およびモリブデン原子からなる群から選択される少なくとも1つの金属原子がより好ましく、ルテニウム原子またはタングステン原子がさらに好ましい。
 第1表面が、銅原子、コバルト原子、チタン原子、タンタル原子、タングステン原子、ルテニウム原子、およびモリブデン原子からなる群から選択される少なくとも1つの金属原子を含む場合、本発明の効果がより優れる点で、特定化合物1は、第1表面と結合または吸着する官能基として、含窒素基、ホスホン酸エステル、リン酸基(-PO)またはその塩、ホスホン酸基(-PO)またはその塩、スルホ基(-SOH)またはその塩、カルボキシ基(-COOH)またはその塩、ヒドロキシ基(-OH)、および、チオール基(-SH)からなる群から選択される基を有することが好ましい。
 また、第1表面および第2表面の好ましい他の態様として、第1表面および第2表面の一方が金属で構成される金属表面であり、他方が非金属で構成される非金属表面である態様(以下、態様Aともいう。)が挙げられる。
 金属としては、純金属または合金が挙げられる。
 非金属としては、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、および有機材料が挙げられる。
 純金属および合金としては、上記の通り例示した好ましい金属原子から構成されることが好ましい。
 また、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、および金属酸窒化物は、上記の通り例示した好ましい金属原子の金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、および金属酸窒化物であることが好ましい。
 態様Aとしては、なかでも、第1表面が金属表面であり、第2表面が非金属表面であることが好ましい。
 第1表面が金属表面であり、第2表面が非金属表面である場合、本発明の効果がより優れる点で、特定化合物1は、第1表面と結合または吸着する官能基として、含窒素基、ホスホン酸エステル、リン酸基(-PO)、ホスホン酸基またはその塩、スルホ基(-SOH)またはその塩、カルボキシ基(-COOH)またはその塩、ヒドロキシ基(-OH)、および、チオール基(-SH)からなる群から選択される基を有することが好ましい。
 また、第1表面および第2表面の好ましい態様として、第1表面が金属(純金属または合金)、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、および金属酸窒化物からなる群から選択される材料で構成される表面であり、第2表面が第1表面とは異なる種類の材料で構成され、金属(純金属または合金)、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、および金属酸窒化物からなる群から選択される材料で構成される表面である態様(以下、態様Bともいう。)が挙げられる。第1表面および第2表面が異なる種類の材料で構成されるとは、金属、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、および、金属酸窒化物の5種の材料のうち、2種の材料が第1表面および第2表面として選択されることを意図する。
 態様Bとしては、より具体的には、第1表面が金属で構成される金属表面であり、第2表面が金属酸化物で構成される金属酸化物表面である態様(以下、態様B1ともいう。)、第1表面が金属窒化物で構成される金属窒化物表面であり、第2表面が金属酸化物で構成される金属酸化物表面である態様(以下、態様B2ともいう。)、および、第1表面が金属酸化物で構成される金属酸化物表面であり、第2表面が金属で構成される金属表面である態様(以下、態様B3ともいう。)が挙げられる。
 態様B1の場合、金属としては、銅、コバルト、チタン、タンタル、タングステン、ルテニウム、およびモリブデンが挙げられる。
 金属酸化物としては、酸化ケイ素、シリコンオキシカーバイド(SiOC)、およびオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等が挙げられる。
 態様B2の場合、金属窒化物としては、窒化チタンが挙げられる。
 金属酸化物としては、酸化ケイ素、シリコンオキシカーバイド(SiOC)、およびオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等が挙げられる。
 また、態様B1または態様B2の場合、本発明の効果がより優れる点で、特定化合物1は、第1表面と結合または吸着する官能基として、含窒素基、ホスホン酸基(-PO)またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基(-PO)またはその塩、スルホ基(-SOH)またはその塩、カルボキシ基(-COOH)またはその塩、ヒドロキシ基(-OH)、および、チオール基(-SH)からなる群から選択される基を有することが好ましい。
 特に、第1表面と結合または吸着する官能基が含窒素基である場合、タングステン表面、ルテニウム表面、またはモリブデン表面に結合または吸着しやすくなるため、ALD被膜がより阻害されやすい。また、第1表面と結合または吸着する官能基がホスホン酸基(-PO)もしくはその塩、またはホスホン酸エステルである場合、銅表面、またはコバルト表面に結合または吸着しやすくなるため、ALD被膜がより阻害されやすい。
 態様B3の場合、金属酸化物としては、酸化ケイ素、シリコンオキシカーバイド(SiOC)、およびオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等が挙げられる。
 金属としては、ケイ素が挙げられる。
 態様B3の場合、本発明の効果がより優れる点で、特定化合物1は、第1表面と結合または吸着する官能基として、加水分解性シリル基を有することが好ましい。
〔工程1〕
 本発明の修飾基板の製造方法(第1実施態様)は、工程1を含む。
 工程1は、上述した通り、互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板(以下、単に「基板」ともいう。)と、上記第1表面に結合または吸着する官能基および上記架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物(特定化合物1)ならびに溶媒を含む薬液(薬液1)とを接触させ、上記第1表面上に第1被膜を形成する工程である。
 基板と薬液1とを接触させる方法は特に制限されないが、例えば、基板上に薬液1を塗布または噴霧する方法、および、薬液1に基板を浸漬する方法が挙げられる。基板に薬液1を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができ、例えば、スピンコート法が挙げられる。また、薬液1に基板を浸漬する際、薬液1を対流させてもよい。
 基板と薬液1とを接触させる際の薬液1の温度は特に制限されないが、0~50℃が好ましく、10~30℃がより好ましい。
 基板と薬液1とを接触させ、第1表面上に第1被膜を形成した基板に対して、リンス処理を施すことも好ましい。リンス処理により、基板上の所望の領域以外に付着した特定化合物1を基板から除去できる。
 リンス方法は特に制限されないが、リンス液と基板とを接触させる方法が挙げられる。接触方法としては、上記薬液1と基板とを接触させる方法と同様の方法が挙げられる。接触時のリンス液の温度は特に制限されないが、0~50℃が好ましく、10~30℃がより好ましい。
 リンス液は特に制限されないが、薬液1に含まれる溶媒が挙げられる。薬液1に含まれる溶媒と同種の溶媒をリンス液として用いてもよい。
〔工程2〕
 本発明の修飾基板の製造方法(第1実施態様)は、工程2を含む。
 工程2は、上述した通り、上記工程1で得られた基板(上記第1被膜を有する基板)に対して、原子層堆積処理(ALD処理)を施し、上記第2表面上に第2被膜を形成する工程である。
 工程1で得られた基板に対してALD処理を施すと、第1被膜により第2被膜の形成が阻害されるため、第1被膜が形成されていない領域上(第2表面)において第2被膜が選択性よく形成された修飾基板が得られる。
 Langmuir-Blodgett膜や自己組織化単分子膜(SAM膜)の形成に用いられる材料は低分子材料であることが多いため、高分子材料と比較して、基板上の微細な領域に対して選択的に修飾膜を形成するのに非常に有効である一方、ALD処理において基板が加熱される際の耐性に劣る場合が多い。
 それに対して、本発明の工程2においては、特定化合物1は、低分子材料であるものの、架橋性基を有するために、ALD工程において基板が加熱される際、第1被膜が硬化膜となり、十分な耐熱性を発揮することができるために、耐熱性を保ちながら微細な領域のALD被膜形成を阻害することが可能となる。
 ALD処理においては、第2被膜の原料となる前駆体を工程1で得られた基板の表面に供給する。上記前駆体は、2種以上用いられることが一般的である。
 第2被膜を構成する材料は、供給する前駆体の種類、供給雰囲気および酸化剤等によって制御できる。ALD処理によって形成される第2被膜は、特に制限されないが、金属膜、金属酸化物膜、または金属窒化物膜が好ましく、金属膜または金属酸化物膜がより好ましい。
 上記金属膜を構成する金属としては、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、ランタン、セリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、白金、および、ビスマス等が挙げられる。
 上記金属酸化物膜を構成する金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、および、酸化タンタル等が挙げられる。
 上記金属窒化膜を構成する金属窒化物としては、窒化チタン、および、窒化タンタル等が挙げられる。
 また、ALD処理においては、第1被膜が形成されていない領域の表面を変質させるための処理を行ってもよい。
 上記ALD処理は、特に制限されないが、熱ALD法が好ましい。なお、後述する通り架橋性基同士を反応させる加熱工程として、工程4を別途設けてもよい。
 架橋性基同士の反応を効率よく行える点で、ALD処理における基板加熱温度は、100~400℃が好ましく、150~400℃がより好ましく、200~300℃がさらに好ましい。
 工程2において、第2表面上の第2被膜の厚みと、第1被膜が形成された領域上の第2被膜の厚みとの差(第2表面上の第2被膜の厚み-第1被膜が形成された領域上の第2被膜の厚み)は、1.0nm以上が好ましく、1.2nm以上がより好ましく、1.5nm以上がさらに好ましい。
 上記厚みの差の上限は特に制限されないが、例えば、100nm以下が挙げられる。
[修飾基板の製造方法(第2実施態様)]
 本発明の修飾基板の製造方法の第2実施態様は、上述した通り、互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板と、含窒素基、ホスホン酸基(-PO)またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基、および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物(以下、「特定化合物2」ともいう。)ならびに溶媒を含む薬液(以下、「薬液2」ともいう。)とを接触させ、上記第1表面上に第1被膜を形成する工程1と、上記工程1で得られた基板に対して、原子層堆積処理を施し、上記第2表面上に第2被膜を形成する工程2と、を含む、修飾基板の製造方法である。
 以下、上記工程1で用いる薬液2について詳述する。
<薬液2>
 薬液2は、特定化合物2および溶媒を含む。
(特定化合物2)
 特定化合物2は、上述した通り、含窒素基、ホスホン酸基(-PO)またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基(特定基)、および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物である。
 後述する通り、上記基板における第1表面は金属原子を含むことが好ましいため、特定化合物2が上記特定基を有することで、金属原子を含む第1表面と特定基との間で強固な結合を形成することで、安定した第1被膜を得ることが可能である。
 特定基の具体的な態様、および好適態様は、第1実施態様における、第1表面に結合または吸着する官能基の具体的な態様、および好適態様と同一である。
 上記特定基としては、なかでも、含窒素基、ホスホン酸基(-PO)またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基が好ましく、含窒素基、ホスホン酸基(-PO)またはその塩、ホスホン酸エステル、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基がより好ましく、含窒素基、ホスホン酸基(-PO)またはその塩、および、ホスホン酸エステルからなる群から選択される基がさらに好ましい。
 特定化合物2は、架橋性基を有する。特定化合物2中の架橋性基の具体的な態様、および好適態様は、特定化合物1中の架橋性基の具体的な態様、および好適態様と同一である。
 特定化合物2が有する、架橋性基の数は1以上であれば特に制限されないが、1~3が好ましく、1がより好ましい。
 特定化合物2は、配向性を示す構造を有することが好ましい。特定化合物2中の配向性を示す構造の具体的な態様、および好適態様は、特定化合物1中の配向性を示す構造の具体的な態様、および好適態様と同一である。
 特定化合物2としては、なかでも、上述した式(S1)で表される化合物が好ましい。
 特定化合物2の分子量は、500以下であれば特に制限されないが、50~450が好ましく、100~450がより好ましく、150~400がさらに好ましい。
 特定化合物2の含有量は、薬液2の全質量に対して、0.0001~10.0質量%が好ましく、0.001~1.0質量%がより好ましく、0.01~0.5質量%がさらに好ましい。
 特定化合物2は、2種以上を併用してもよい。
 特定化合物2を2種以上併用する場合、その合計含有量が、上記範囲であることが好ましい。
(溶媒)
 薬液2は、溶媒を含む。溶媒の具体的な態様、および好適態様は、薬液1に含まれる溶媒の具体的な態様、および好適態様と同一である。
 薬液における溶媒の含有量は、薬液全質量に対して、90~99.999質量%が好ましく、95~99.9質量%がより好ましく、97~99.9質量%がさらに好ましい。
 溶媒は、2種以上を併用してもよい。
 溶媒を2種以上併用する場合、その合計含有量が、上記範囲であることが好ましい。
(重合禁止剤)
 薬液の安定性が向上する点で、薬液2は、重合禁止剤を含むことが好ましい。重合禁止剤の具体的な態様、および好適態様は、薬液1に含まれる重合禁止剤の具体的な態様、および好適態様と同一である。
 重合禁止剤の含有量は、上記特定化合物2の含有量100質量部に対して、0.0001質量部以上が好ましく、0.001質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上がさらに好ましく、0.010質量部以上が特に好ましい。
 また、重合禁止剤の含有量は、上記特定化合物2の含有量100質量部に対して、10.0質量部以下が好ましく、1.000質量部以下がより好ましく、0.100質量部以下がさらに好ましい。
 薬液2は、重合禁止剤を1種単独で含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。重合禁止剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
<薬液の製造方法>
 上記薬液2の製造方法は特に制限されず、具体的な態様、および好適態様は、上記薬液1の製造方法と同一である。
<基板>
 本発明の修飾基板の製造方法の第2実施態様で用いられる基板は、互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板(以下、単に「基板」ともいう。)である。上記基板の具体的な態様、および好適態様は、第1実施態様で用いられる基板の具体的な態様、および好適態様と同一である。
〔工程1〕
 本発明の修飾基板の製造方法(第2実施態様)は、工程1を含む。
 工程1は、上述した通り、互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板と、含窒素基、ホスホン酸基(-PO)またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基、および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物(特定化合物2)ならびに溶媒を含む薬液(薬液2)とを接触させ、上記第1表面上に第1被膜を形成する工程である。
 基板と薬液2とを接触させる方法は特に制限されず、具体的な態様、および好適態様は、基板と薬液1とを接触させる方法と同一である。
 また、基板と薬液2とを接触させ、第1表面上に第1被膜を形成した基板に対して、リンス処理を施すことも好ましい。リンス方法の具体的な態様、および好適態様は、第1実施態様における工程1におけるリンス方法の具体的な態様、および好適態様と同一である。
〔工程2〕
 本発明の修飾基板の製造方法(第2実施態様)は、工程2を含む。
 工程2は、上述した通り、上記工程1で得られた基板(上記第1被膜を有する基板)に対して、原子層堆積処理(ALD処理)を施し、上記第2表面上に第2被膜を形成する工程である。本発明の修飾基板の製造方法の第2実施態様における工程2の具体的な態様、および好適態様は、上述した第1実施態様における工程2の具体的な態様、および好適態様と同一である。
[その他の工程]
〔工程3〕
 本発明の修飾基板の製造方法(第1実施態様および第2実施態様)は、工程2の後に、工程1において基板上に形成した第1被膜を除去する工程3を有していてもよい。工程2の後に工程3を実施することで、第2表面上のみに第2被膜が形成された修飾基板が得られる。
 第1被膜の除去方法は特に制限されないが、ドライエッチング、ウェットエッチング、および、それらの組み合わせが挙げられる。
 ドライエッチングとしては、第1被膜を有する修飾基板の表面に対して、反応性イオンまたは反応性ラジカルを供給する方法が挙げられる。反応性イオンまたは反応性ラジカルは、プラズマ等によって発生させればよく、酸素、窒素および水素からなる群から選択される1種以上のガスを含む混合ガスを用いて発生させることが好ましい。上記混合ガスは、希ガスを含んでいてもよい。また、ドライエッチングは、スパッタ現象を利用した物理エッチングであってもよい。
 ウェットエッチングは、エッチング液を、第1被膜を有する修飾基板の表面に供給すればよい。エッチング液としては、オゾン等の酸化剤を含むエッチング液、および有機溶媒を含むエッチング液が挙げられる。有機溶媒を含むエッチング液の有機溶媒としては、上記薬液が有する有機溶媒が挙げられ、炭化水素系溶媒が好ましい。
〔工程4〕
 本発明の修飾基板の製造方法(第1実施態様および第2実施態様)は、修飾基板を加熱する工程4を有していてもよい。工程4は、工程2の前に実施されることが好ましい。
 加熱温度は特に制限されないが、100~400℃が好ましく、150~400℃がより好ましく、200~300℃がさらに好ましい。
 加熱方法は特に制限されず、発熱体と接触させる方法(例えば、ホットプレートによる加熱)、および、赤外線を照射する方法が挙げられる。
[半導体デバイスの製造方法]
 本発明は、上記修飾基板の製造方法を含む、半導体デバイスの製造方法にも関する。
 本発明の修飾基板の製造方法は、半導体デバイスを製造するためのいずれの工程にも用いることができ、例えば、半導体デバイスの製造方法において、半導体基板を処理する工程に用いることができる。
 以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
 以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
[薬液の調製方法]
 実施例および比較例に用いた薬液は、後段の表に示す割合となるように各成分を混合して調製した。
 なお、薬液の調製、充填および保管等は、全てISOクラス2以下を満たすレベルのクリーンルームで行った。また、薬液の調製、充填および保管等に使用した容器は、調製に用いる溶媒または調製した薬液で洗浄した後に使用した。
[評価A]
 以下の手順に従って、後述の薬液を用い、第1表面のみからなる基板上に第1被膜を形成した基板を準備し、ALD阻害性を評価した。
〔評価用サンプル基板の作製(第1被膜形成方法)〕
 まず、基板として、市販のシリコンウエハ(直径12インチ)の一方の表面上に、CVD法によりタングステン層を形成したW層ウエハ、CVD法によりルテニウム層を形成したRu層ウエハ、CVD法により窒化チタン層を形成したTiN層ウエハ、およびプラズマCVD法によりオルトケイ酸テトラエチル(Si(OC)層を形成したTEOS層ウエハを準備した。W層、Ru層、TiN層、およびTEOS層の厚みは、それぞれ20nmとなるように成膜条件を調整した。
 上記シリコンウエハ、ならびに、上述の通り製膜して得られた、W層ウエハ、Ru層ウエハ、TiN層ウエハ、およびTEOS層ウエハをそれぞれ2cm角に裁断し、イソプロピルアルコール(IPA)でリンス処理を行ったのち、各ウエハに窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。
 リンス処理は、IPAに基板を浸漬して実施し、上記浸漬は、250rpmの条件で容器に入れたIPAをマグネチックスターラーで撹拌しながら行い、IPAの温度は25℃、浸漬時間は30秒とした。
 リンス処理後の各ウエハを、各薬液に浸漬した。各ウエハの薬液への浸漬は、250rpmの条件で容器に入れた薬液をマグネチックスターラーで撹拌しながら行い、薬液の温度は25℃、浸漬時間は10分とした。
 上記浸漬処理後の各ウエハに対し、上記と同様の手順によってIPAによるリンス処理を行った後、窒素ガスにより乾燥させることで、各ウエハ上に第1被膜を形成したサンプル(評価用サンプル)を得た。
〔ALD阻害性〕
 〔評価用サンプル基板の作製(第1被膜形成方法)〕にて得られたサンプル(評価用サンプル)、および第1被膜を形成しない場合のサンプル(未処理サンプル)に対して、原子層堆積装置(サムコ社製AD-230LP)を用いて、酸化アルミニウム層(ALD被膜)を形成した。有機金属原料としてトリメチルアルミニウムを用い、酸化剤として水を用いた。
 なお、ALD処理温度は200℃とし、第1被膜を形成しない場合の各サンプル(未処理サンプル)に対して膜厚が5nmとなる条件で、各サンプルのALD処理を行った。
 上記ALD処理後のサンプルにおける、ALD被膜の膜厚は、蛍光X線分析(XRF:X‐ray Fluorescence)装置(リガク社製AZX400)を用いて測定した。上記ALD被膜の膜厚は、サンプルの5点について測定を行い、その平均値を膜厚とした。
 下記式(A)に従って得られた値を、下記基準に照らしてALD阻害量(nm)を評価した。ALD阻害量(nm)が大きい程、ALD処理による被膜が堆積しづらいことを意味する。
 式(A):ALD阻害量(nm) = (未処理サンプルのALD被膜の膜厚(5nm))-(評価用サンプルのALD被膜の膜厚(nm))
(評価基準)
 A:ALD阻害量が、2.0nm以上である。
 B:ALD阻害量が、1.0nm以上であり、2.0nm未満である。
 C:ALD阻害量が、1.0nm未満である。
[結果]
 後述する表1に、薬液の調製に用いた各成分とその含有量比(質量比)を表す。
 表1中、「分子量」欄は、特定化合物の分子量を示す。なお、化合物C-1については、分子量は重量平均分子量を表す。
 また、後述する表2~5において、ALD阻害性の評価結果を示す。
 なお、表2では、第1表面としてW層を、第2表面としてTEOS層を用いた場合を想定した結果を示す。
 表3では、第1表面としてRu層を、第2表面としてTEOS層を用いた場合を想定した結果を示す。
 表4では、第1表面としてTiN層を、第2表面としてTEOS層を用いた場合を想定した結果を示す。
 表5では、第1表面としてTEOS層を、第2表面としてSi層を用いた場合を想定した結果を示す。
 表2~5中、「成膜量」欄は、各評価用サンプルを用いて形成されたALD被膜の膜厚である。また、「ALD阻害量」欄は、上記式(A)に従って求めたALD阻害量を示す。
 表1中、薬液の調製に用いた各成分の構造または名称を下記に示す。
<特定化合物>
 特定化合物(A-1~A-10)の構造を以下に示す。
 なお、特定化合物は、特定化合物1または特定化合物2に該当する化合物である。
<その他の化合物>
 ・B-1:下記化合物
 ・C-1:国際公開第2019/167704号の段落[0135]~[0136]に記載の下記構造の重合体
 下記構造の重合体は、国際公開第2019/167704号の段落[0135]に記載の方法にしたがって合成した。合成した下記構造の重合体の重量平均分子量は5200、数平均分子量は4900であった。
<溶媒>
 ・S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
 ・S-2:メチルイソブチルカルビノール
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 表2中、本発明の製造方法で用いる薬液を用いた実施例1A~15Aにおいては、W層ウエハに対するALD阻害量の評価がAまたはBである一方で、TEOS層ウエハに対するALD阻害量の評価はCであった。この結果より、W層上には第1被膜が形成された一方、TEOS層には第1被膜が形成されなかったため、ALD処理を行った際、W層では第1被膜によりALD被膜形成が阻害され、TEOS層では、阻害を受けることなくALD被膜が形成されたことが分かる。
 よって、第1表面としてW層と、第2表面としてTEOS層とを有する基板を用いて、本発明の製造方法に従って修飾基板を製造した際、TEOS層に選択性よくALD被膜が形成された基板を得られると考えられる。
 Ru層とTEOS層とを評価した実施例1B~16B、TiN層とTEOS層とを評価した実施例1C~15C、およびTEOS層とSi層とを評価した実施例1Dについても、実施例1A~15Aと同様のことがいえる。
 実施例評価に対し、特定化合物を用いていない比較例1Aにおいては、W層およびTEOS層のいずれにおいても、ALD阻害量の評価がCであった。つまり、比較例1Aにおいては、実施例のような被膜がW層上およびTEOS層上の両方に形成されなかったため、W層上およびTEOS層上の両方にALD被膜が形成されていた。そのため、第1表面としてW層と、第2表面としてTEOS層とを有する基板を用いて、R-1の薬液を用いて上述した工程1および2を実施した場合には、第1表面および第2表面の両方にALD被膜が形成されてしまい、所望の効果が得られない。
 また、比較例2Aにおいては、W層およびTEOS層のいずれにおいても、ALD阻害量の評価がAであった。つまり、比較例2Aにおいては、実施例のような被膜がW層上およびTEOS層上の両方に形成されてしまい、W層上およびTEOS層上の両方にALD被膜が形成されにくかった。そのため、第1表面としてW層と、第2表面としてTEOS層とを有する基板を用いて、R-2の薬液を用いて上述した工程1および2を実施した場合には、第1表面および第2表面の両方にALD被膜の形成が抑制されてしまい、所望の効果が得られない。
 比較例1B~2Bおよび比較例1C~2Cにおいても、上記と同様の傾向が観察された。
 また、実施例1A~13Aの比較等から、特定化合物1または特定化合物2における架橋性基が、スチリル基またはビニル基である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
 実施例6A~8Aと、実施例14Aおよび15Aとの比較等から、特定化合物1または特定化合物2が、炭素数6~18の、エーテル性酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
 また、W層、Ru層、およびTiN層の少なくとも1つの表面を第1表面として有し、TEOS層を第2表面として有する基板(基板1)と表1に記載の各薬液とを接触させ、その後、上記〔ALD阻害性〕で実施したALD処理と同様の手順のALD処理を実施したところ、表2~4に示した評価結果と同様の傾向にて、TEOS層に選択性よくALD被膜が形成された基板1が得られることが確認できた。
 また、基板1の代わりに、TEOS層を第1表面として有し、Si層を第2表面として有する基板(基板2)を用い、かつ、表1に記載の薬液を用いた場合、表5に示した評価結果と同様の傾向にて、Si層に選択性よくALD被膜が形成された基板2が得られることが確認された。
[評価B]
 実施例101~132について、ALD阻害性および薬液安定性を評価した。
〔ALD阻害性〕
 上記W層ウエハおよびTEOS層ウエハに対して、後述する組成を有する薬液Y-1~Y-32を用いて、ALD阻害性を評価した。ALD阻害性は上記〔ALD阻害性〕と同様の手順にて評価した。
〔薬液安定性の評価〕
 後述する組成を有する薬液Y-1~Y-32を用いて、下記手順に従い薬液安定性を評価した。
 各薬液を45℃の条件下で1か月間保管し、濁度を測定した。濁度は、三菱ケミカルアナリテック社製の積分球式濁度計 PT-200を用いて測定した。
 測定された濁度から、下記評価基準に従って、薬液安定性を評価した。上記濁度が小さいほど、薬液安定性に優れるといえる。
-評価基準-
 A:濁度が0.1ppm未満であった。
 B:濁度が0.1ppm以上であった。
[結果]
 実施例101~132のALD阻害性および薬液安定性の評価結果を以下表6~表9に示す。
 各実施例で用いた薬液Y-1~Y-32は、各特定化合物100質量部に対して、表6~表9に示す含有量(質量部)の各重合禁止剤を混合したのち、溶媒S-1を固形分濃度が0.1質量%となるように添加して調製した。固形分とは、特定化合物および重合禁止剤をいう。
 表6~9において、薬液の調製に用いた各重合禁止剤の名称は以下の通りである。なお、薬液の調製に用いた各特定化合物および溶媒S-1の構造または名称は、[評価A]において上述した通りである。
<重合禁止剤>
 ・D-1:4-メトキシフェノール
 ・D-2:N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム
 ・D-3:ポリ(4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル)
 ・D-4:4-tert-ブチルカテコール
 ・D-5:1,4-ベンゾキノン
 ・D-6:フェノチアジン
 ・D-7:N,N-ジエチルヒドロキシルアミン
 ・D-8:4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル
 ・D-9:クペロン
 ・D-10:2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール
 表6~9中、種類欄において「/」で区切られた記載は、当該物質として複数の化合物を含むことを示し、含有量欄において「/」で区切られた記載は、複数の化合物の含有量を順に示す。例えば、実施例128の「重合禁止剤」は、「D-1」および「D-5」を含み、含有量が順に「0.01」および「0.01」質量部であることを表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
 表6~9の結果から、実施例101~132の修飾基板の製造方法は、実施例1A~15Aと同様に、W層では第1被膜によりALD被膜形成が阻害され、TEOS層では、阻害を受けることなくALD被膜が形成され、選択性よくALD被膜を形成できることが確認された。
[評価C]
 以下の手順に従って、後述の表10~13に記載の薬液を用い、第1表面のみからなる基板上に第1被膜を形成した基板を準備し、ALD阻害性を評価した。
〔評価用サンプル基板の作製(第1被膜形成方法)〕
 まず、基板として、市販のシリコンウエハ(直径12インチ)を用意し、このシリコンウエハの一方の表面上に、銅(Cu)層、コバルト(Co)層、シリコンオキシカーバイド(SiOC)層、タングステン(W)層、ルテニウム(Ru)層、およびモリブデン(Mo)層をそれぞれ形成することで、Cu層ウエハ、Co層ウエハ、SiOC層ウエハ、W層ウエハ、Ru層ウエハ、およびMo層ウエハ(以下、これらを包括して「層付きウエハ」ともいう。)をそれぞれ準備した。
 なお、Cu層およびCo層は、スパッタリング法により形成し、SiOC層は、プラズマCVD(化学気相成長、Chemical Vapor Deposition)法により形成し、W層、Ru層、およびMo層は、CVD法により形成した。
 各層の厚みは、それぞれ20nmとなるように成膜条件を調整した。
 続いて、上記シリコンウエハ、および上記手順にて準備した層付きウエハのそれぞれについて、表10~13に記載の薬液を用いて、各ウエハ上に第1被膜を形成したサンプルを作製した。具体的な手順としては、上記評価Aにおける〔評価用サンプル基板の作製(第1被膜形成方法)〕に記載の手順に従って、サンプルを作製した。
〔ALD阻害性〕
 〔評価用サンプル基板の作製(第1被膜形成方法)〕にて得られたサンプル(評価用サンプル)、および第1被膜を形成しない場合のサンプル(未処理サンプル)に対して、原子層堆積装置(Oxford社製Flex-AL)を用いて、窒化チタン層(ALD被膜)を形成した。有機金属原料としてTDMAT(テトラキス(ジメチルアミノ)チタン)を用い、還元剤としてアンモニアを用いた。
 なお、ALD処理温度は300℃とし、第1被膜を形成しない場合の各サンプル(未処理サンプル)に対して膜厚が5nmとなる条件で、各サンプルのALD処理を行った。
 上記ALD処理後のサンプルにおける、ALD被膜の膜厚は、蛍光X線分析(XRF:X‐ray Fluorescence)装置(リガク社製AZX400)を用いて測定した。上記ALD被膜の膜厚は、サンプルの5点について測定を行い、その平均値を膜厚とした。
 下記式(A)に従って得られた値を、下記基準に照らしてALD阻害量(nm)を評価した。ALD阻害量(nm)が大きい程、ALD処理による被膜が堆積しづらいことを意味する。
 式(A):ALD阻害量(nm) = (未処理サンプルのALD被膜の膜厚(5nm))-(評価用サンプルのALD被膜の膜厚(nm))
(評価基準)
 A:ALD阻害量が、2.0nm以上である。
 B:ALD阻害量が、1.0nm以上であり、2.0nm未満である。
 C:ALD阻害量が、1.0nm未満である。
[結果]
 後述する表10~13に、薬液の調製に用いた各成分とその含有量比(質量比)を表す。なお、表に記載していない成分として、いずれの薬液も4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルを重合禁止剤として100質量ppm含む。
 表10~13中、「Mw」欄は、特定化合物の分子量を示す。
 また、表14~17に、ALD阻害性の評価結果を示す。
 なお、表14および表16では、第1表面としてCu層およびCo層の少なくとも一方からなる表面を、第2表面としてSiOx(シリコンウエハ)層およびSiOC層の少なくとも一方からなる表面を用いた場合を想定した結果を示す。
 表15および表17では、第1表面としてW層、Ru層およびMo層の少なくとも1つからなる表面を、第2表面としてSiOx(シリコンウエハ)層およびSiOC層の少なくとも一方からなる表面を用いた場合を想定した結果を示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000014
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000016
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000017
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000018
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000019
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000020
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000021
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000022
 表に示す通り、本発明の修飾基板の製造方法によれば、ALD処理を行い、所定の領域に選択性よくALD被膜が形成された修飾基板を製造できることが確認された。
 また、実施例Y-1~Y-9の比較等から、特定化合物1または特定化合物2における架橋性基が、スチリル基、ビニルナフチル基、またはビニル基である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
 実施例X-1~X-5と、実施例X-6~X-8との比較等から、特定化合物1または特定化合物2が、炭素数6~18の、エーテル性酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
 実施例Y-1~Y-8と、実施例Y-10~Y-11との比較等から、特定化合物1または特定化合物2が、第1級アミノ基を有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
 実施例X-12~X-22の比較、または実施例Y-15~Y-24の比較等から、水の含有量が、溶媒の全質量に対して80質量%未満である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
 また、上記〔ALD阻害性〕の工程において、TDMATの代わりにPDMAT(ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル)を用いることで、各評価用サンプルに対して窒化タンタル層を形成して、上記〔ALD阻害性〕に示す手順にてALD阻害量を評価した場合であっても、表14~17と同一の結果を得られることが確認された。

Claims (24)

  1.  互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板と、前記第1表面に結合または吸着する官能基および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物ならびに溶媒を含む薬液とを接触させ、前記第1表面上に第1被膜を形成する工程1と、
     前記工程1で得られた基板に対して、原子層堆積処理を施し、前記第2表面上に第2被膜を形成する工程2と、を含む、修飾基板の製造方法。
  2.  前記第1表面に結合または吸着する官能基が、含窒素基、ホスホン酸基またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される、請求項1に記載の修飾基板の製造方法。
  3.  前記架橋性基が、エチレン性不飽和基である、請求項1に記載の修飾基板の製造方法。
  4.  前記架橋性基が、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、スチリル基、ビニルナフチル基、および、ビニル基からなる群から選択される、請求項1に記載の修飾基板の製造方法。
  5.  互いに異なる材料から構成される第1表面および第2表面の少なくとも2つの表面を有する基板と、含窒素基、ホスホン酸基またはその塩、ホスホン酸エステル、リン酸基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、チオール基、および、加水分解性シリル基からなる群から選択される基、および架橋性基を有し、分子量が500以下の化合物ならびに溶媒を含む薬液とを接触させ、前記第1表面上に第1被膜を形成する工程1と、
     前記工程1で得られた基板に対して、原子層堆積処理を施し、前記第2表面上に第2被膜を形成する工程2と、を含む、修飾基板の製造方法。
  6.  前記架橋性基が、エチレン性不飽和基である、請求項5に記載の修飾基板の製造方法。
  7.  前記架橋性基が、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、スチリル基、ビニルナフチル基、および、ビニル基からなる群から選択される、請求項5に記載の修飾基板の製造方法。
  8.  前記第1表面および前記第2表面の少なくとも一方が金属で構成される金属表面である、請求項1~7のいずれか1項に記載の修飾基板の製造方法。
  9.  前記第1表面および前記第2表面の少なくとも一方が、銅原子、コバルト原子、チタン原子、タンタル原子、タングステン原子、ルテニウム原子、およびモリブデン原子からなる群から選択される少なくとも1つの金属原子を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の修飾基板の製造方法。
  10.  前記第1表面および前記第2表面の少なくとも一方が、チタン原子、タングステン原子、ルテニウム原子、およびモリブデン原子からなる群から選択される少なくとも1つの金属原子を含む、請求項9に記載の修飾基板の製造方法。
  11.  前記第2被膜が、金属膜または金属酸化物膜である、請求項1~7のいずれか1項に記載の修飾基板の製造方法。
  12.  前記工程2の後に、前記第1被膜を除去する工程3をさらに有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の修飾基板の製造方法。
  13.  前記薬液が重合禁止剤を含む、請求項1に記載の修飾基板の製造方法。
  14.  前記重合禁止剤が、フェノール系化合物、キノン系化合物、フリーラジカル系化合物、アミン系化合物、および、ホスフィン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項13に記載の修飾基板の製造方法。
  15.  前記重合禁止剤の含有量が、前記化合物100質量部に対して、0.001~1.000質量部である、請求項13に記載の修飾基板の製造方法。
  16.  前記重合禁止剤の含有量が、前記化合物100質量部に対して、0.01質量部以上である、請求項13に記載の修飾基板の製造方法。
  17.  前記薬液が重合禁止剤を含む、請求項5に記載の修飾基板の製造方法。
  18.  前記重合禁止剤が、フェノール系化合物、キノン系化合物、フリーラジカル系化合物、アミン系化合物、および、ホスフィン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項17に記載の修飾基板の製造方法。
  19.  前記重合禁止剤の含有量が、前記化合物100質量部に対して、0.001~1.000質量部である、請求項17に記載の修飾基板の製造方法。
  20.  前記重合禁止剤の含有量が、前記化合物100質量部に対して、0.01質量部以上である、請求項17に記載の修飾基板の製造方法。
  21.  前記薬液が水を含む、請求項1または5に記載の修飾基板の製造方法。
  22.  前記水の含有量が、前記溶媒の全質量に対して80質量%以下である、請求項21に記載の修飾基板の製造方法。
  23.  前記薬液が、3種以上の前記溶媒を含む、請求項1または5に記載の修飾基板の製造方法。
  24.  請求項1~7、および13~20のいずれか1項に記載の修飾基板の製造方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
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