WO2024009453A1

WO2024009453A1 - 転がり軸受装置

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Publication number: WO2024009453A1
Application number: PCT/JP2022/026957
Authority: WO
Inventors: 丈晴浦西
Original assignee: 株式会社ジェイテクト
Priority date: 2022-07-07
Filing date: 2022-07-07
Publication date: 2024-01-11

Abstract

転がり軸受装置は、杵型ロール３と一体回転する内輪１１と、外輪装置１２と、複数のころ１３と、軸箱１７に取り付けられているラビリンスリング３１と、ラビリンスリング３１に滑り接触するオイルシール３３とを備える。内輪１１の外周に、オイルシール３３が取り付けられる第二のシール溝７２が設けられている。第二のシール溝７２は、第一の側面７６と第二の側面７７と溝底面７８とを有する。オイルシール３３は、溝底面７８に沿って設けられている固定部５１と、ラビリンスリング３１に接触するリップ部５５と、付勢部５２とを有する。付勢部５２は、固定部５１から延びる第一の延在部６１と、第一の延在部６１の中継部６４から延びる第二の延在部６２とを有する。第一の延在部６１および第二の延在部６２の少なくとも一部が、第一の側面７６と第二の側面７７との間に設けられていて、側面７６に中継部６４は接触可能である。

Description

転がり軸受装置

　本開示は、転がり軸受装置に関する。

　特許文献１に、連続鋳造機に用いられる杵型ロールを含む転がり軸受装置が開示されている。杵型ロールは、小径軸部と、小径軸部よりも大きい直径を有する二つの大径部とを有する。小径軸部に、転がり軸受装置が備える内輪が取り付けられるために、転がり軸受装置は、二分割構造を有して構成される。

　連続鋳造機の場合、冷却水および鋳造スケールなどが、転がり軸受装置に降りかかる。冷却水および鋳造スケールが、転がり軸受装置の複数のころが存在する軸受内部に侵入することを防ぐために、ラビリンスリング、パッキンおよびオイルシールが転がり軸受装置に用いられる。特許文献１に開示の転がり軸受装置の場合、ラビリンスリングは軸箱に装着され、パッキンおよびオイルシールは、内輪に装着される。パッキンおよびオイルシールは、ラビリンスリングに接触する。

特開２０１７－１９０８３５号公報

　特許文献１に開示の転がり軸受装置は、図５に示すように、内輪９１にシール溝を有する。オイルシール９９がシール溝９２に装着されている。オイルシール９９はリップ部９８を有する。リップ部９８は、ラビリンスリング９６の内周面９６ａに接触する。オイルシール９９の外周側にリップ部９８が位置するため、リップ部９８にリング状のばねを取り付けて、ラビリンスリング９６に対するリップ部９８の緊迫力を大きくすることは難しい。

　そこで、リップ部９８の緊迫力を高めるため、ラビリンスリング９６に対するリップ部９８の締め代を大きく設定することが考えられる。しかし、この場合、次のような課題が生じる。例えば転がり軸受装置の組み立て精度の関係により、シール溝９２の溝底面９２ｃとラビリンスリング９６の内周面９６ａとの間隔が、周方向の一部において狭くなっている場合、周方向の一部において、リップ部９８は偏って大きく潰される。この場合、転がり軸受装置の回転抵抗が大きくなったり、ラビリンスリング９６に対するリップ部９８の接触状態は想定している態様と異なり密封性能が劣化する。

　そこで、本開示は、リップ部が、潰され難くなり、所望の締め代を有してラビリンスリングに接触することが可能となるオイルシールを備えた転がり軸受装置を提供することを目的とする。

　本開示の転がり軸受装置は、
　杵型ロールと、
　軸箱と、
　前記杵型ロールと一体回転するとともに内輪軌道を有する内輪と、
　前記内輪軌道と対向する外輪軌道を有するとともに前記軸箱に取り付けられている外輪と、
　前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に配置されている複数のころと、
　前記内輪の軸方向の端部と径方向について対向するようにして前記軸箱に取り付けられているラビリンスリングと、
　前記内輪に取り付けられ前記ラビリンスリングに滑り接触するパッキンと、
　前記内輪に取り付けられ前記ラビリンスリングに滑り接触するオイルシールと、
　を備え、
　前記杵型ロールは、前記内輪が取り付けられている小径軸部と、前記小径軸部よりも大きい直径を有する二つの大径部と、を有し、
　前記内輪の外周に、前記パッキンが取り付けられる第一のシール溝と、前記オイルシールが取り付けられる第二のシール溝と、が設けられていて、
　前記第二のシール溝は、環状である第一の側面と、前記第一の側面と軸方向について対向する環状である第二の側面と、前記第一の側面と前記第二の側面との間に設けられている溝底面と、を有し、
　前記オイルシールは、
　　前記溝底面に沿って設けられている固定部と、
　　前記ラビリンスリングに接触するリップ部と、
　　前記固定部と前記リップ部との間に設けられている付勢部と、を有し、
　前記付勢部は、
　　前記固定部から径方向の外側かつ軸方向の第一の側に延びる第一の延在部と、
　　前記第一の延在部の径方向の外側の部分である中継部から径方向の外側かつ軸方向の第二の側に延びる第二の延在部と、を有し、
　前記第一の延在部の全部、および、前記第二の延在部の少なくとも一部が、前記第一の側面と前記第二の側面との間に設けられていて、前記第一の側面と前記第二の側面とのうち、前記中継部に隣接する側面に、前記中継部は接触可能である。

　本開示の転がり軸受装置によれば、オイルシールにおいて、リップ部が、潰され難くなり、所望の締め代を有してラビリンスリングに接触することが可能となる。

図１は、転がり軸受装置の一例を示す断面図である。図２は、図１に示す転がり軸受装置の軸方向第一の側の一部を示す断面図である。図３は、オイルシールおよび第二のシール溝を説明する断面図である。図４は、オイルシールの変形例を示す断面図である。図５は、従来のオイルシールの断面図である。

＜本開示の発明の実施形態の概要＞
　以下、本開示の発明の実施形態の概要を列記して説明する。

　（１）本開示の転がり軸受装置は、
　杵型ロールと、
　軸箱と、
　前記杵型ロールと一体回転するとともに内輪軌道を有する内輪と、
　前記内輪軌道と対向する外輪軌道を有するとともに前記軸箱に取り付けられている外輪と、
　前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に配置されている複数のころと、
　前記内輪の軸方向の端部と径方向について対向するようにして前記軸箱に取り付けられているラビリンスリングと、
　前記内輪に取り付けられ前記ラビリンスリングに滑り接触するパッキンと、
　前記内輪に取り付けられ前記ラビリンスリングに滑り接触するオイルシールと、
　を備え、
　前記杵型ロールは、前記内輪が取り付けられている小径軸部と、前記小径軸部よりも大きい直径を有する二つの大径部と、を有し、
　前記内輪の外周に、前記パッキンが取り付けられる第一のシール溝と、前記オイルシールが取り付けられる第二のシール溝と、が設けられていて、
　前記第二のシール溝は、環状である第一の側面と、前記第一の側面と軸方向について対向する環状である第二の側面と、前記第一の側面と前記第二の側面との間に設けられている溝底面と、を有し、
　前記オイルシールは、
　　前記溝底面に沿って設けられている固定部と、
　　前記ラビリンスリングに接触するリップ部と、
　　前記固定部と前記リップ部との間に設けられている付勢部と、を有し、
　前記付勢部は、
　　前記固定部から径方向の外側かつ軸方向の第一の側に延びる第一の延在部と、
　　前記第一の延在部の径方向の外側の部分である中継部から径方向の外側かつ軸方向の第二の側に延びる第二の延在部と、を有し、
　前記第一の延在部の全部、および、前記第二の延在部の少なくとも一部が、前記第一の側面と前記第二の側面との間に設けられていて、前記第一の側面と前記第二の側面とのうち、前記中継部に隣接する側面に、前記中継部は接触可能である。

　前記転がり軸受装置によれば、オイルシールは径方向に弾性圧縮変形した状態で、溝底面とラビリンスリングとの間に介在する。付勢部の弾性圧縮変形および弾性復元力により、リップ部はラビリンスリングに追従して接触する。付勢部が有する第一の延在部および第二の延在部それぞれは、弾性変形するため、オイルシールは全体として径方向に弾性変形しやすく、オイルシールの剛性は、低下する。その結果、溝底面とラビリンスリングの内周面との間隔が、周方向の一部において狭くなっていても、リップ部は偏って潰され難くなる。よって、リップ部は所望の締め代を有してラビリンスリングに接触することが可能となる。

　付勢部が、径方向に弾性変形することに併せて軸方向に変位しても、前記中継部は、第二のシール溝の側面に接触できる。付勢部は、側面によって位置規制され、オイルシールは、全体の姿勢が崩れ難い。リップ部は所望の締め代を維持してラビリンスリングに接触できる。

　（２）好ましくは、前記中継部と、前記中継部に隣接する側面との間に、隙間が設けられていて、前記内輪と前記ラビリンスリングとが軸方向に相対移動すると、前記中継部と前記側面とが接触する。隙間が、前記中継部と、前記中継部に隣接する側面との間に無く、第一の延在部の軸方向の幅寸法が、第二のシール溝の軸方向の寸法と同一またはその寸法よりも大きい場合、付勢部は、側面によって拘束される可能性がある。しかし、前記隙間が設けられていることにより、付勢部は、側面に拘束され難く、リップ部は、ラビリンスリングに追従しやすく、密封性能は、低下しない。

　（３）好ましくは、前記付勢部は、前記第二の延在部の径方向の外側の部分である第二の中継部から径方向外側かつ軸方向の第一の側に延びる第三の延在部、を有し、前記第三の延在部の径方向の外側の部分から前記リップ部が前記ラビリンスリングに向かって延びている。この構成によれば、オイルシールは、径方向に弾性変形することが可能となる範囲を、大きくすることが可能となる。

＜本開示の発明の実施形態の詳細＞
　以下、本開示の発明の実施形態を説明する。
〔転がり軸受装置の全体構成〕
　図１は、転がり軸受装置１０の一例を示す断面図である。転がり軸受装置１０は、杵型ロール３と軸受ユニット１９とを備える装置である。軸受ユニット１９は、内輪１１、外輪１５、複数の円筒ころ（転動体）１３、ラビリンスリング３１、パッキン３２、オイルシール３３、および、軸箱１４を有する。軸受ユニット１９は、杵型ロール３を支持する。

　杵型ロール３は、連続鋳造機に用いられる。杵型ロール３は、別の対向する杵型ロールとともに鋳片を挟み、移動させる。杵型ロール３は移動する鋳片を圧縮させながら鋳造する。杵型ロール３は、中央の小径軸部４と、小径軸部４の軸方向両側に設けられている二つの大径部５，５とを一体として有する。大径部５は、小径軸部４よりも大きい直径を有する。杵型ロール３は、小径軸部４を軸受ユニット１９に支持されている。

　杵型ロール３の中心軸と、軸受ユニット１９の中心軸Ｌ１とは一致する、本開示の転がり軸受装置１０において、中心軸Ｌ１に平行な方向は、転がり軸受装置１０の軸方向である。本開示において、中心軸Ｌ１に平行な方向は、単に「軸方向」と呼ばれる。
　中心軸Ｌ１に直交する方向は、転がり軸受装置１０の径方向である。本開示において、中心軸Ｌ１に直交する方向は、単に「径方向」と呼ばれる。
　中心軸Ｌ１を中心とする円に沿った方向は、転がり軸受装置１０の周方向である。本開示において、中心軸Ｌ１を中心とする円に沿った方向は、単に「周方向」と呼ばれる。
　軸箱１７が固定される鋳造機セグメントの共通台板側は、「下」、その反対側は、「上」、と呼ばれる。
　図１は、中心軸Ｌ１と鉛直な方向とを含む平面における断面図である。転がり軸受装置１０は、図１に示す断面において、小径軸部の軸方向の中央の軸方向第一の側と軸方向第二の側とで対称の構成を有する。

　ラビリンスリング３１、パッキン３２、およびオイルシール３３は、転がり軸受装置１０の軸方向両側に配置される。形状は軸方向第一の側のラビリンスリング３１、パッキン３２、およびオイルシール３３と軸方向第二の側のそれらとは、同じ構成であり、対称に配置される。

　軸箱１４は、上下に分割される二分割構造を有する。軸箱１４は、鋳造機セグメントの共通台板に固定される第一の軸箱部材１７と、この第一の軸箱部材１７の上に載せられる第二の軸箱部材１８とを有する。第一の軸箱部材１７と第二の軸箱部材１８とは図外のボルト等によって連結固定される。第一の軸箱部材１７は、その上面側に、凹形状で球状の内面１７ａを有する。第一の軸箱部材１７は調心輪である。

　外輪１５は、調心外輪を、その中心軸を含む平面で半分に分割した構成を有する。外輪１５の内周面は、中心軸Ｌ１を中心とする円筒面に沿った形状を有する。外輪１５の内周面は、外輪軌道１５ｃを有する。外輪１５は、凸形状の球状外径面１５ｄを有する。球状外径面１５ｄは、前記凹形状で球状の内面１７ａに対して当接しかつ摺動可能である。

　第二の軸箱部材１８は、軸箱１４の上側の部材である。第二の軸箱部材１８の内周面は、中心軸Ｌ１を中心とする円筒面に沿った形状を有する。第二の軸箱部材１８の内周面は、外輪軌道１８ｃを有する。外輪１５および第二の軸箱部材１８それぞれの中心軸を一致させて、これらを組み合わせることにより、外輪軌道１５ｃと外輪軌道１８ｃとにより一つの外輪軌道が得られる。外輪軌道１８ｃの半径は、外輪軌道１５ｃの半径よりも少し大きい。外輪１５は、第一の軸箱部材１７に対して、内輪１１の傾きに合わせて揺動可能である。これに対して、第二の軸箱部材１８は、第一の軸箱部材１７に対して、揺動しない。

　内輪１１は、小径軸部４に外嵌して小径軸部４に取り付けられている。内輪１１は、杵型ロール３と一体に回転する。内輪１１は、二つ割り軌道輪である。内輪１１は、半円筒形状を有する第一の内輪分割体１１ａ及び第二の内輪分割体１１ｂを有する。これら内輪分割体１１ａ，１１ｂの分割面は、内輪１１の中心軸を含む平面上にある。内輪分割体１１ａ，１１ｂは図外のボルト等によって連結され固定されることによって、一体の筒状部材（内輪１１）となる。内輪１１は、その外周側に円筒形状である内輪軌道１１ｃを有する。内輪１１は、内輪軌道１１ｃの軸方向両側に、内輪軌道１１ｃよりも直径が大きいつば２０，２０を有する。

　内輪軌道１１ｃと外輪軌道１５ｃ，１８ｃとは径方向に対向する。ころ１３は、内輪軌道１１ｃと外輪軌道１５ｃ，１８ｃとの間に配置されれる。杵型ロール３が内輪１１と共に外輪１５及び軸箱１４に対して回転することで、ころ１３は、内輪軌道１１ｃと外輪軌道１５ｃ，１８ｃとを転動する。

　図２は、図１に示す転がり軸受装置１０の軸方向第一の側の一部を示す断面図である。内輪１１のつば２０の外周面２０ａの直径は内輪軌道１１ｃの直径よりも大きい。第一のシール溝７１と第二のシール溝７２とが、つば２０の外周面２０ａに設けられている。第一のシール溝７１と第二のシール溝７２とは、それぞれ環状の溝である。シール溝７１，７２は外周面２０ａから径方向内側に窪んでいる。第一のシール溝７１は、パッキン３２の取り付け用の溝であり、第二のシール溝７２は、オイルシール３３の取り付け用の溝である。

　後にも説明するが、パッキン３２およびオイルシール３３がラビリンスリング３１の内周面３１ｄに接触する。パッキン３２およびオイルシール３３とラビリンスリング３１との密封性能によって、冷却水および鋳造スケールが、転がり軸受装置１０の外部から、複数のころ１０が存在する軸受内部１６に侵入することは、抑制される。オイルシール３３は、軸受内部１６のグリースやオイルエアのオイルである潤滑剤が外部に漏れることを防ぐ機能も有する。

　図３は、オイルシール３３および第二のシール溝７２を説明する断面図である。第二のシール溝７２は、環状である第一の側面７６と、第一の側面７６と軸方向について対向する環状である第二の側面７７と、第一の側面７６と第二の側面７７との間に設けられている溝底面７８とを有する。第一の側面７６は、内輪１１の外周面２０ａの一部から径方向内側に延びる環状の平面である。第二の側面７７は、内輪１１の外周面２０ａの他部から径方向内側に延びる環状の平面である。溝底面７８は、第一の側面７６の径方向内側の端から軸方向に延び、第二の側面７７の径方向内側の端と繋がる円筒状の面である。溝底面７８は、内輪１１の中心軸を中心とする円筒の面である。図示しないが、溝底面７８は、前記のような円筒状の面以外、例えば、円錐面やトーラスの一部であってもよい。

〔ラビリンスリング３１〕
　ラビリンスリング３１は（図１参照）、全体として円筒状の部材である。ラビリンスリング３１は、周方向に二分割されている。ラビリンスリング３１は、半円筒形状である第一の半筒部３１ａ及び第二の半筒部３１ｂを有する。これら半筒部３１ａ，３１ｂの分割面は、ラビリンスリング３１の中心軸を含む平面上にある。ラビリンスリング３１の中心軸は、外輪１５の中心軸と一致する。ラビリンスリング３１の下側半分を構成する第一の半筒部３１ａは、第一の軸箱部材１７に取り付けられている。ラビリンスリング３１の上側半分を構成する第二の半筒部３１ｂは、第二の軸箱部材１８に取り付けられている。ラビリンスリング３１は、内輪１１の軸方向の端部（つば２０）と径方向について対向する。

　軸方向第一の側（図１において右側）のラビリンスリング３１は、軸箱１４から軸方向第一の側に向かって突出して設けられている。そのラビリンスリング３１の一部３１ｃは、杵型ロール３の大径部５に形成されている凹周溝６に入る。
　軸方向第二の側（図１において左側）のラビリンスリング３１は、軸箱１４から軸方向第二の側に向かって突出して設けられている。そのラビリンスリング３１の一部３１ｃは、杵型ロール３の大径部５に形成されている凹周溝６に入る。
　軸方向の両側において、ラビリンスリング３１の一部３１ｃと凹周溝６との間にラビリンス隙間が形成される。ラビリンス隙間は、外部から冷却水などの異物が軸受内部１６に侵入することを抑制する。

〔パッキン３２〕
　図２に示すように、パッキン３２は、第一のシール溝７１に嵌められて、取り付けられている。パッキン３２は、ラビリンスリング３１に滑り接触する筒部４０と、筒部４０の径方向内側に設けられている付勢部４１とを有する。パッキン３２は、筒部４０を含めた全体がゴム製であってもよいが、ラビリンスリング３１との接触抵抗を低減するために、筒部４０は樹脂製である。パッキン３２は周方向の一箇所で分離している。
　パッキン３２は、内輪１１へ装着された状態で、全体としてリング状である。パッキン３２は、周方向の一箇所で分離されているため、杵型ロール３の大径部５よりも直径の小さい内輪１１へ取り付けることができる。
　杵型ロール３及び内輪１１が回転すると、パッキン３２は内輪１１と一体となって回転する。筒部４０は、ラビリンスリング３１の内周面３１ｄに滑り接触する。

〔オイルシール３３〕
　オイルシール３３は、第二のシール溝７２に嵌められて、取り付けられている。
　オイルシール３３は、内輪１１へ装着された状態で、全体としてリング状である。オイルシール３３は、周方向の一箇所で分離されているため、杵型ロール３の大径部５よりも直径の小さい内輪１１へ取り付け可能となる。
　杵型ロール３及び内輪１１が回転すると、オイルシール３３は内輪１１と一体となって回転する。オイルシール３３のリップ部５３，５４は、ラビリンスリング３１の内周面３１ｄに滑り接触する。

　図３に示すように、オイルシール３３は、固定部５１と、付勢部５２と、第一のリップ部５３および第二のリップ部５４とを有する。以下、第一のリップ部５３と第二のリップ部５４とは、まとめて「リップ部５５」と呼ばれる。固定部５１は、溝底面７８に沿って設けられている。リップ部５５は、ラビリンスリング３１の内周面３１ｄに接触する。付勢部５２は、固定部５１とリップ部５５との間に設けられている。固定部５１、付勢部５２、第一のリップ部５３および第二のリップ部５４は、ゴム製であり、弾性変形可能である。

　固定部５１は、円筒形状を有する。固定部５１は、その内周面から径方向内側に突出する突起５６を有する。突起５６は、周方向について複数箇所設けられている。溝底面７８に突起５６を挿入させる穴５７が設けられている。突起５６を孔５７に挿入することにより、オイルシール３３は、内輪１１に対して相対的に回転しない。

　付勢部５２は、第一の延在部６１と第二の延在部６２とを有する。図３に示すオイルシール３３において、付勢部５２は、さらに、第三の延在部６３を有する。

　第一の延在部６１は、固定部５１から径方向の外側かつ軸方向の第一の側（図３では右側）に延びる部分である。第一の延在部６１は、固定部５１の軸方向の第二の側（図３では左側）の端部５１ａを含む部分から延びている。隙間ｅ１が、第一の延在部６１の径方向の外側の部分である第一の中継部６４と、固定部５１の軸方向の第一の側（図３では右側）の端部５１ｂとの間に、径方向に設けられる。

　第二の延在部６２は、第一の中継部６４から径方向の外側かつ軸方向の第二の側（図３では左側）に延びる部分である。隙間ｅ２が、第二の延在部６２の径方向の外側の部分である第二の中継部６５と、第一の延在部６１の軸方向の第二の側（図３では左側）の端部６１ａとの間に、径方向に設けられる。

　第三の延在部６３は、第二の延在部６２の第二の中継部６５から径方向外側かつ軸方向の第一の側（図３では右側）に延びる部分である。隙間ｅ３が、第三の延在部６３の径方向の外側の部分である第三の中継部６６と、第二の延在部６２の軸方向の第一の側（図３では右側）の端部６２ａとの間に、径方向に設けられる。リップ部５５は、第三の延在部６３の第三の中継部６６から、ラビリンスリング３１に向かって延びる。

　第一のリップ部５３は、第三の中継部６６から、径方向の外側かつ軸方向の第二の側（図３では左側）に向かって延びる。第二のリップ部５４は、第三の中継部６６から、径方向の外側かつ軸方向の第一の側（図３では右側）に向かって延びる。

　第一の延在部６１の全部、および、第二の延在部６２の全部が、第一の側面７６と第二の側面７７との間に配置される。つまり、第一の延在部６１の全部、および、第二の延在部６２の全部は、第二のシール溝７２の範囲内に配置される。第一の中継部６４は、隣接する第一の側面７６に、接触可能である。本実施形態において、隙間Ｅ１が、第一の中継部６４と第一の側面７６との間に設けられている。内輪１１とラビリンスリング３１とが軸方向に相対移動すると、付勢部５２は軸方向に弾性変形し、第一の中継部６４は第一の側面７６に接触する。

　第三の延在部６３の全部が、第一の側面７６と第二の側面７７との間に配置される。つまり、第三の延在部６３の全部が、第二のシール溝７２の範囲内に配置される。第二の中継部６５は、隣接する第二の側面７７に、接触可能である。本実施形態において、隙間Ｅ２が、第二の中継部６５と第二の側面７７との間に設けられている。内輪１１とラビリンスリング３１とが軸方向に相対移動すると、付勢部５２は軸方向に弾性変形し、第二の中継部６５は第二の側面７７に接触する。

　第三の中継部６６は、隣接する第一の側面７６に、接触可能である。本実施形態において、隙間Ｅ３が、第三の中継部６６と第一の側面７６との間に設けられている。内輪１１とラビリンスリング３１とが軸方向に相対移動すると、付勢部５２は軸方向に弾性変形し、第三の中継部６６は第一の側面７６に接触する。
　第一の中継部６４の側面６４ｓ、第二の中継部６５の側面６５ｓ、および第三の中継部６６の側面６６ｓは、第二のシール溝７２のうち、それらが隣接する側面（第一の側面７６または第二の側面７７）に平行となる平面形状である。オイルシール３３の中継部６４，６５，６６それぞれは、第二のシール溝７２の側面（第一の側面７６または第二の側面７７）に、面で接触できる。

　図３に示す形態において、第三の延在部６３の全部は、第一の側面７６と第二の側面７７との間に配置される一方、第三の延在部６３の一部が、第一の側面７６と第二の側面７７との間に配置されてもよい。さらに、第三の延在部６３の全部が、第二のシール溝７２の外に配置されてもよい。この場合、第二の延在部６２の少なくとも一部は、第一の側面７６と第二の側面７７との間に配置されていればよい。

〔オイルシール３３の変形例〕
　図４は、オイルシール３３の変形例を示す断面図である。第二のシール溝７２は、図３に示す形態の第二のシール溝７２と同じである。図４に示すオイルシール３３は、図３に示す形態のオイルシール３３と同様に、固定部５１、付勢部５２、第一のリップ部５３および第二のリップ部５４を有する。固定部５１は、溝底面７８に沿って設けられている。リップ部５５は、ラビリンスリング３１の内周面３１ｄに接触する。付勢部５２は、固定部５１とリップ部５５との間に設けられている。

　固定部５１は、円筒形状を有する。図４に示すオイルシール３３は、固定部５１を溝底面７８に押し付けるリング状のばね７０を有する。図４に示すオイルシール３３は、ばね７０を有することが図３に示すオイルシール３３と相違する。ばね７０は、内輪１１に対してオイルシール３３が回転することを抑制する。なお、ばね７０の代わりに、図３に示す突起５６と穴５７とによる構成が採用されていてもよい。

　図４に示す形態の付勢部５２は、図３に示す形態の付勢部５２と相違する。図４に示す形態の付勢部５２は、第一の延在部６１と第二の延在部６２とを有していて、図３に示す形態の付勢部５２の第三の延在部６３を有さない。図４に示すオイルシール３３の付勢部５２について説明する。なお、図３に示すオイルシール３３の構成と同じ構成である図４に示すオイルシール３３の構成の符号は、図３に示すオイルシール３３の構成の符号と同じである。

　第一の延在部６１は、固定部５１から径方向の外側かつ軸方向の第一の側（図４では左側）に延びる部分である。第一の延在部６１は、固定部５１の軸方向の第二の側（図４では右側）の端部５１ｂを含む部分から延びている。隙間ｅ１が、第一の延在部６１の径方向の外側の部分である第一の中継部６４と、固定部５１の軸方向の第一の側（図４では左側）の端部５１ａとの間に、径方向に設けられる。

　第二の延在部６２は、第一の中継部６４から径方向の外側かつ軸方向の第二の側（図４では右側）に延びる部分である。隙間ｅ２が、第二の延在部６２の径方向の外側の部分である第二の中継部６５と、第一の延在部６１の軸方向の第二の側（図４では右側）の端部６１ａとの間に、径方向に設けられる。リップ部５５は、第二の延在部６２の第二の中継部６５から、リップ部５５がラビリンスリング３１に向かって延びる。

　第一の延在部６１の全部、および、第二の延在部６２の全部が、第一の側面７６と第二の側面７７との間に配置される。つまり、第一の延在部６１の全部、および、第二の延在部６２の全部は、第二のシール溝７２の範囲内に配置される。第一の中継部６４は、隣接する第二の側面７７に、接触可能である。本実施形態において、隙間Ｅ４が、第一の中継部６４と第二の側面７７との間に設けられている。内輪１１とラビリンスリング３１とが軸方向に相対移動すると、付勢部５２は軸方向に弾性変形して、第一の中継部６４は第二の側面７７に接触する。

　第二の中継部６５は、隣接する第一の側面７６に、接触可能である。本実施形態において、隙間Ｅ５が、第二の中継部６５と第一の側面７６との間に設けられている。内輪１１とラビリンスリング３１とが軸方向に相対移動すると、付勢部５２は軸方向に弾性変形し、第二の中継部６５は第一の側面７６に接触する。

　図４に示す形態において、第二の延在部６２の全部は、第一の側面７６と第二の側面７７との間に配置される一方、第二の延在部６２の一部が、第一の側面７６と第二の側面７７との間に配置されてもよい。

〔各形態の転がり軸受装置１０について〕
　以上のように、前記転がり軸受装置１０は、内輪１１に取り付けられラビリンスリング３１に滑り接触するオイルシール３３を備える。各形態のオイルシール３３は、溝底面７８に沿って設けられている固定部５１と、ラビリンスリング３１に接触するリップ部５５と、固定部５１とリップ部５５との間に設けられている付勢部５２とを有する。付勢部５２は、第一の延在部６１と第二の延在部６２とを有する。

　第一の延在部６１は、固定部５１から径方向の外側かつ軸方向の第一の側に延びる。第二の延在部６２は、第一の延在部６１の径方向の外側の部分である第一の中継部６４から径方向の外側かつ軸方向の第二の側に延びる。第一の延在部６１の全部、および、第二の延在部６２の少なくとも一部は、第一の側面７６と第二の側面７７との間に設けられている。第一の中継部６４は、第一の側面７６と第二の側面７７とのうち、第一の中継部６４に隣接する側面に接触可能である。

　前記各形態のオイルシール３３を備える転がり軸受装置１０によれば、オイルシール３３は径方向に弾性圧縮変形した状態で、溝底面７８とラビリンスリング３１との間に介在する。付勢部４１の弾性圧縮変形および弾性復元力により、リップ部５５は、ラビリンスリング３１に追従して接触する。付勢部４１が有する第一の延在部６１および第二の延在部６２それぞれは、弾性変形するため、オイルシール３３は全体として径方向に弾性変形しやすく、オイルシール３３の剛性は、低下する。つまり、オイルシール３３の径方向についての柔軟性は、大きくなる。

　その結果、溝底面７８とラビリンスリング３１の内周面３１ｄとの間隔が、周方向の一部において狭くなっていても、リップ部５５は、偏って潰され難くなる。よって、リップ部５５は所望の締め代を有してラビリンスリング３１に接触できる。

　図３および図４に示すように、中心軸Ｌ１を含む断面において、第一の延在部６１および第二の延在部６２それぞれは、直線状となって延びて設けられており、両者は、鋭角を成して交差する。また、図３に示すオイルシール３３の場合、第三の延在部６３は、直線状となって延びて設けられており、第二の延在部６２と第三の延在部６３とは、鋭角を成して交差する。この構成により、オイルシール３３は径方向の寸法を小さくできてかつ径方向に弾性変形し易い。つまり、オイルシール３３は、より一層柔軟になる。

　図５に示す従来のオイルシール９９は、ゴム製である固定部９７およびリップ部９８の他に、固定部９７に埋設されている金属製である２つの円弧部材１００を有する。２つの円弧部材１００は、固定部９７に周方向に離れて埋設される。
　これに対して、図３および図４に示すオイルシール３３は、ゴム部分に埋設されている金属製の２つの円弧部材１００を有さない。このため、オイルシール３３は、径方向に弾性変形しやすい。

　付勢部５２が、径方向に弾性変形することに併せて軸方向に変位しても、第一の中継部６４は、第二のシール溝７２の側面（第一の側面７６または第二の側面７７）に接触できる。付勢部５２は、溝７１の前記側面によって位置規制され、オイルシール３３は、全体の姿勢が崩れ難い。よって、リップ部５５は所望の締め代を維持してラビリンスリング３１に接触できる。

　隙間が、第一の中継部６４と、その第一の中継部６４に隣接する側面（第一の側面７６または第二の側面７７）との間に無く、第一の延在部６１の軸方向の幅寸法が、第二のシール溝７２の軸方向の寸法と同一またはその寸法よりも大きい場合、付勢部５２は、側面によって拘束される可能性がある。その場合、付勢部５２は、径方向に柔軟に弾性変形してリップ部５５をラビリンスリング３１に追従させ難くなる。

　しかし、図３および図４に示す実施形態において、隙間が、第一の中継部６４と、その第一の中継部６４に隣接する側面との間に、設けられている。内輪１１とラビリンスリング３１とが軸方向に相対移動すると、第一の中継部６４は、前記側面に接触する。このような隙間が設けられていることにより、付勢部５２は、側面に拘束され難く、リップ部５５は、ラビリンスリング３１に追従しやすく、密封性能は、低下しない。

　図３に示す形態では、付勢部５２は、第三の延在部６３を有する。第三の延在部６３は、第二の延在部６２の径方向の外側の部分である第二の中継部６５から径方向外側かつ軸方向の第一の側に延びる。この構成によれば、オイルシール３３は、径方向に弾性変形することが可能となる範囲を、大きくすることが可能となる。

〔その他〕
　オイルシール３３が有する固定部５１は、第二のシール溝７２の第一の側面７６および第二の側面７７との間に隙間が設けられていてもよいが、固定部５１は、その軸方向の両側において、第一の側面７６および第二の側面７７の双方に接触した状態となって設けられていてもよい。この場合、オイルシール３３の回り止めの機能を固定部５１が有する。
　リップ部５５の形態は変更可能であり、図示する形態以外であってもよい。

　前記実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、前記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更を含む。

　３　杵型ロール
　４　小径軸部
　５　大径部
　１０　転がり軸受装置
　１１　内輪
　１１ｃ　内輪軌道
　１２　外輪装置
　１３　ころ
　１４　軸箱
　１５　外輪
　１５ｃ　外輪軌道
　３１　ラビリンスリング
　３２　パッキン
　３３　オイルシール
　５１　固定部
　５２　付勢部
　５３　第一のリップ部
　５４　第二のリップ部
　５５　リップ部
　６１　第一の延在部
　６２　第二の延在部
　６３　第三の延在部
　６４　第一の中継部
　６５　第二の中継部
　６６　第三の中継部
　７１　第一のシール溝
　７２　第二のシール溝
　７６　第一の側面
　７７　第二の側面
　７８　溝底面
　Ｅ１，Ｅ２，Ｅ３，Ｅ４，Ｅ５　隙間

Claims

　杵型ロールと、
　軸箱と、
　前記杵型ロールと一体回転するとともに内輪軌道を有する内輪と、
　前記内輪軌道と対向する外輪軌道を有するとともに前記軸箱に取り付けられている外輪と、
　前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に配置されている複数のころと、
　前記内輪の軸方向の端部と径方向について対向するようにして前記軸箱に取り付けられているラビリンスリングと、
　前記内輪に取り付けられ前記ラビリンスリングに滑り接触するパッキンと、
　前記内輪に取り付けられ前記ラビリンスリングに滑り接触するオイルシールと、
　を備え、
　前記杵型ロールは、前記内輪が取り付けられている小径軸部と、前記小径軸部よりも大きい直径を有する二つの大径部と、を有し、
　前記内輪の外周に、前記パッキンが取り付けられる第一のシール溝と、前記オイルシールが取り付けられる第二のシール溝と、が設けられていて、
　前記第二のシール溝は、環状である第一の側面と、前記第一の側面と軸方向について対向する環状である第二の側面と、前記第一の側面と前記第二の側面との間に設けられている溝底面と、を有し、
　前記オイルシールは、
　　前記溝底面に沿って設けられている固定部と、
　　前記ラビリンスリングに接触するリップ部と、
　　前記固定部と前記リップ部との間に設けられている付勢部と、を有し、
　前記付勢部は、
　　前記固定部から径方向の外側かつ軸方向の第一の側に延びる第一の延在部と、
　　前記第一の延在部の径方向の外側の部分である中継部から径方向の外側かつ軸方向の第二の側に延びる第二の延在部と、を有し、
　前記第一の延在部の全部、および、前記第二の延在部の少なくとも一部が、前記第一の側面と前記第二の側面との間に設けられていて、前記第一の側面と前記第二の側面とのうち、前記中継部に隣接する側面に、前記中継部は接触可能である、
　転がり軸受装置。
　前記中継部と、前記中継部に隣接する側面との間に、隙間が設けられていて、前記内輪と前記ラビリンスリングとが軸方向に相対移動すると、前記中継部と前記側面とが接触する、請求項１に記載の転がり軸受装置。
　前記付勢部は、前記第二の延在部の径方向の外側の部分である第二の中継部から径方向外側かつ軸方向の第一の側に延びる第三の延在部、を有し、
　前記第三の延在部の径方向の外側の部分から前記リップ部が前記ラビリンスリングに向かって延びている、請求項１または請求項２に記載の転がり軸受装置。