WO2023074632A1 - 放電処理装置及びシート材処理システム - Google Patents

Abstract

様々な厚さ、材質、下地処理のシート材に対し、放電処理装置におけるシート材の詰まりを防ぎ、適切なコロナ放電による濡れ性改善が可能な放電処理装置を得ることを目的とする。シート材の搬送経路１２０の上方に配置された上電極１１０と、搬送経路１２０の下方に配置された下電極１１２との間隔を調整する間隔調整機構２００を設ける。間隔調整機構２００は、シート材に関する情報であるシート情報（シート材の厚さ、材質、下地印刷の種類等）に基づいて、上電極と下電極との間隔を調整するように制御される。

Description

放電処理装置及びシート材処理システム

　本発明は、放電処理装置及びシート材処理システムに関する。

　従来、シート材の搬送経路の上方に配置された上電極と、搬送経路の下方に配置された下電極と、搬送経路を通過するシート材の下面を支持する支持部材と、を備え、上電極と下電極との間で放電を発生させ、シート材に対して放電処理を行う放電処理装置が知られている。この種の放電処理装置として、シート材に印刷やコーティングする際の付着性、つまり濡れ性（親和性）を高めるために、シート材の表面をコロナ放電により改質するコロナ処理装置が提案されている（特許文献１等）。

特表２０１６－５１６５７１公報

　この種の放電処理装置では、上電極と下電極とを、その間でコロナ放電が生じる程度に互いに近づけて配置するが、シート材が分厚い場合、シート材が上電極に当接してシート材が詰まることがあった。一方で上電極と下電極とを離間させすぎると、コロナ放電が発生しなかったり、部分的にしか発生するなど、適切なコロナ放電が行われず、その結果処理できなかったり、処理ムラを生じる等の不具合が発生する。また、シート材の厚みや、シート材の性質、予め施された下地印刷の種類等によって濡れ性改善効果に差異が生じることがある。

　上述した課題を解決するために、本発明は、上電極と、上電極の下方に配置された下電極と、上電極と下電極との間隔を調整する間隔調整機構と構成され、上電極と下電極との間に、シート材が下電極と接触して通過するように構成された搬送経路を形成するとともに、上電極と下電極との間で放電を発生させ、搬送経路を通過するシート材に対して放電処理を行う電極対と、シート材に関する情報であるシート情報を取得するシート情報取得部と、シート情報取得部により取得されたシート情報に基づいて、上電極と下電極との間隔を調整するように、間隔調整機構を制御する制御部とを有することを特徴とするものである。

　本発明によれば、様々な厚さ、材質、下地処理のシート材に対し、放電処理装置におけるシート材の詰まりを防ぎ、適切なコロナ放電による濡れ性改善が可能であるという優れた効果がある。

実施形態の加飾印刷システムを模式的に示す正面図。 実施形態の加飾印刷システムを模式的に示す平面図。 実施形態のコロナ処理装置の正面図。 実施形態のコロナ処理装置の側面図。 Ａ－Ａ断面図。 実施形態の制御ブロック図。 上下動機構２０８の第１調整制御を示す模式図。 上下動機構２０８の第１調整制御を示すフローチャート。 上下動機構２０８の第２調整制御を示す模式図。 上下動機構２０８の第２調整制御を示すフローチャート。 別の実施形態のコロナ処理装置の側面図。

　以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。

　以下、本発明に係る放電処理装置の一実施形態について説明する。

　図１及び図２は、本実施形態に係る放電処理装置であるコロナ処理装置２６を備える加飾印刷システム１０を模式的に示す図である。
　図１は正面図であり、図２は平面図である。加飾印刷システム１０は、シート材を搬送しながらシート材に所定の加飾印刷を施す装置である。シート材の素材は、紙、布、樹脂、金属などさまざまである。以降、シート材が搬送される方向（図１及び図２において右から左に向かう方向）を搬送方向Ｙ、搬送方向Ｙと直交する方向（図１においてシート面に直交する方向であって図２の上下方向）を幅方向Ｘと呼ぶ。「左」というときには、搬送方向Ｙに向かって幅方向Ｘにおける左側（図４における左方向）を指し、「右」というときには、搬送方向Ｙに向かって幅方向Ｘにおける右側（図４における右方向）を指す。

　加飾印刷システム１０は、シート材を一枚ずつ供給するシート材供給装置１２と、一枚ずつ供給されるシート材にニスを塗布するニス塗布装置１４と、シート材上に塗布したニスのタック性を利用してシート材に箔を転写する箔押し装置１６と、シート材を蓄積するスタッカ１８と、加飾印刷システム１０を統合的に制御する制御装置２０と、を備える。シート材供給装置１２、ニス塗布装置１４、箔押し装置１６、スタッカ１８は、搬送方向Ｙに上流側（図１及び図２では右側）からこの順に一列に並ぶ（以下、搬送方向Ｙにおける上流側を単に「上流側」、搬送方向Ｙにおける下流側を単に「下流側」という）。制御装置２０は、シート材供給装置１２、ニス塗布装置１４、箔押し装置１６及びスタッカ１８とネットワーク２を介して接続される。

　シート材供給装置１２は、フィーダ２２と、コロナ処理装置２６と、レジスト部２４と、を備える。フィーダ２２は、テーブル２８と、吸着ヘッド３０と、を含む。テーブル２８にはシート材が積載される。テーブル２８は、昇降可能に構成される。吸着ヘッド３０は、テーブル２８に積載されたシート材を上から順に一枚ずつ送り出す。

　コロナ処理装置２６は、フィーダ２２が送り出したシート材に対して、コロナ放電によりその表面の改質を行う。コロナ処理装置２６の詳細な構成は後述する。

　レジスト部２４は、図２中の矢印「α」で示すように、搬送方向Ｙに対して傾斜した搬送力をシート材に付与することで、シート材の幅方向Ｘの一方の端面（搬送方向Ｙに対して右側の端面）をレジスト基準ガイド３２に突き当てながら搬送する。これにより、フィーダ２２が送り出したシート材の幅方向Ｘの位置を揃える。

　ニス塗布装置１４は、シート材センサ４２と、一対のＣＣＤセンサ４４と、少なくとも一つのニス吐出部４６と、半硬化用紫外線ランプ４８と、本硬化用紫外線ランプ５０と、を含む。シート材センサ４２、一対のＣＣＤセンサ４４、ニス吐出部４６、半硬化用紫外線ランプ４８、本硬化用紫外線ランプ５０は、この順に上流側から並ぶように配置される。図示の例では、ニス塗布装置１４は三つのニス吐出部４６を含んでいるが、これには限定されず、ニス塗布装置１４は幅方向Ｘの全域にわたって延在する一つのニス吐出部４６を含んでもよいし、二つまたは四つ以上のニス吐出部４６を含んでもよい。半硬化用紫外線ランプ４８及び本硬化用紫外線ランプ５０には紫外線を照射するＬＥＤを用いるが、紫外線を照射するものであれば、電球や蛍光灯などの他の光源であってもよい。光源は出力調整可能なものが望ましい。

　シート材センサ４２は、シート材供給装置１２から供給され、レジスト部２４から搬出されたシート材を検出する。

　ニス吐出部４６は、特に限定しないが図示の例ではライン型のインクジェットヘッドである。ニス吐出部４６は、シート材センサ４２によるシート材の先端エッジの検出をトリガとして、ニス吐出データに従って紫外線硬化性ニスを吐出し、シート材に紫外線硬化性ニスを塗布する。ニス吐出データは、シート材のどこにニスを塗布するのかを示すデータである。

　シート材供給装置１２が供給するシート材には、予め、下地画像と、下地画像の位置を特定する基準となる複数のレジストレーションマークと、が印刷されていてもよい。ニス塗布装置１４は、シート材におけるニスの塗布部分を規定するニス吐出データに従って、下地画像と所定の関係を有するようにニスを塗布するものであり、例えば下地画像に重なるように、ニスを塗布してもよい。

　ここで、シート材の下地画像がずれていたり歪んでいたりすることもあり得る。したがって、下地画像と所定の関係を有するようにニスを塗布する場合は、ずれや歪みを考慮してニス吐出データを補正しておく必要がある。例えば、ＣＣＤセンサ４４が、シート材センサ４２によるシート材の検出をトリガとしてシート材を撮像し、制御装置２０がＣＣＤセンサ４４による撮像データを画像解析し、複数のレジストレーションマークの理論位置との相違により、レジストレーションマークに囲まれた領域のニス吐出データを補正してもよい。なお、当該補正には、本出願人が先に出願した特開２０１６－０８３８９８号公報に記載の方法を適用できる。

　半硬化用紫外線ランプ４８は、シート材上のニスに出力の比較的弱い紫外線を照射し、ニスを半硬化させる。半硬化は、ニスの流動性を低下させつつも完全には硬化させない程度に軽く（例えばさらに硬化させることができる状態に）硬化させることをいう。ニスの少なくとも表面を半硬化することにより、ニスのタック性を維持しつつも、ニスがシート材上を流れるのを防止してニスのシート材上での位置を安定させることができる。半硬化状態のニスは、箔押し装置１６において本硬化される。シート材に箔押ししない場合は、通常、半硬化用紫外線ランプ４８をオフにするが、箔押ししない場合に半硬化用紫外線ランプ４８を使用してもよい。例えば、シート材上に塗布したニスが滲みやすい場合、半硬化用紫外線ランプ４８をオンにしてニスの少なくとも表面を半硬化させる。これにより、ニスの滲みを抑えることができる。

　本硬化用紫外線ランプ５０は、シート材に塗布されたニスに紫外線を照射し、ニスを本硬化させる。シート材に箔押しする場合は、本硬化用紫外線ランプ５０をオフにする。

　つまり、シート材に箔押しする場合は、半硬化用紫外線ランプ４８によってニスを半硬化させ、箔押し装置１６の箔押し用紫外線ランプ６６によって半硬化状態のニスを本硬化させる。この場合、本硬化用紫外線ランプ５０はオフにする。シート材に箔押ししない、すなわちシート材にニスを塗布するだけの場合は、本硬化用紫外線ランプ５０でニスを本硬化させる。この場合、半硬化用紫外線ランプ４８及び箔押し装置１６の箔押し用紫外線ランプ６６はオフにする。ただし、上述したように、半硬化用紫外線ランプ４８は、箔押ししない場合でもオンにすることがある。また、箔押し用紫外線ランプ６６の光源には紫外線を照射するＬＥＤを用いるが、紫外線を照射するものであれば他の光源でもよい。

　箔押し装置１６は、ウェブ５２をロール・ツー・ロールで搬送する。ウェブ５２は、フィルムに箔（例えば金属箔）が保持された箔保持フィルムである。箔押し装置１６では、ウェブ５２とシート材とを搬送しながら接触させる。シート材上の半硬化状態のニスには、そのタック性により、ウェブ５２が保持する箔が接着する。この状態、すなわち箔がウェブ５２に保持されつつも半硬化状態のニスに接着した状態で、箔押し用紫外線ランプ６６が当該ニスに紫外線を照射し、ニスを本硬化させる。ニスが本硬化すると、ウェブ５２が箔を保持する力よりも本硬化したニスが箔を接着する力の方が強い状態となる。この状態で、シート材を搬送してシート材とウェブ５２とを分離させると、ウェブ５２に保持されていた箔は、シート材上のニスが塗布された部分に転写される。

　スタッカ１８は、箔押し装置１６から搬出されたシート材を蓄積する。

　制御装置２０は、例えばＰＣなどの情報処理端末である。制御装置２０は、加飾印刷ジョブの定義についての入力を受け付ける。制御装置２０は、所定のジョブ管理画面を表示し、当該ジョブ管理画面を介して、ジョブの定義についての入力を受け付けてもよい。ジョブの定義には、例えば、加飾印刷を施すシート材の枚数（加飾印刷部数）、加飾印刷を施すシート材に関する情報であるシート情報（シート材のサイズ、シート材の材質、シート材の厚さ、シート材に下地画像とレジストレーションマークとを印刷したプリンタの種類、下地画像とレジストレーションマークの印刷方式等）、ニス吐出データ、コロナ処理の有無、箔押しの有無、及びピニングの強度（半硬化の硬化度合い）の調節等、が含まれる。制御装置２０は、ジョブの定義に基づいて、シート材供給装置１２、ニス塗布装置１４及び箔押し装置１６、を制御する。

　以上が加飾印刷システム１０の基本構成である。

　変形例として、加飾印刷システム１０は、シート材供給装置１２に代えて、シート材に下地画像とレジストレーションマークとを印刷するプリンタを備え、プリンタから一枚ずつシート材を供給してもよい。

　また、加飾印刷システム１０は、箔押し装置１６とスタッカ１８との間に、シート材を切断したり綴じたりする後処理装置を備えてもよい。

　次に、コロナ処理装置２６の構成について詳細に説明する。
　図３は、コロナ処理装置２６を示す正面図、図４はその側面図、図５は図４におけるＡ－Ａ断面図（図３と同じ方向から見た図）である。コロナ処理装置２６は、二つのコロナ処理部１０２（上流側コロナ処理部１０２ａ、下流側コロナ処理部１０２ｂ）と、ハウジング１０４と、吸引装置１０６と、を備える。なお図４においては、理解が容易であるように、ハウジング１０４の上流側側面の図示を省略してある。

　上流側コロナ処理部１０２ａと下流側コロナ処理部１０２ｂの構成は互いに同一である。以下、両者を代表して上流側コロナ処理部１０２ａについて説明する。上流側コロナ処理部１０２ａの構成に付した付番のａをｂに置き換えた場合、下流側コロナ処理部１０２ｂの同一の構成を表現し、双方まとめて表現する場合はａ及びｂを省略するものとする。図示の例では二つのコロナ処理部１０２を備えるが、コロナ処理部１０２の数は特に限定されない。

　上流側コロナ処理部１０２ａは、搬送経路１２０の上方に配置される放電部１１０ａと、放電部１１０ａと上下で対向するように搬送経路１２０の下方に配置される受電部１１２ａと、を含む。放電部１１０ａ及び受電部１１２ａは、幅方向Ｘの長さが、シート材の幅方向Ｘの長さ、すなわちシート材の幅よりも長い。受電部１１２ａは、放電部１１０ａとの間でコロナ放電を行うことができるものであれば特に限定されない。本実施形態の受電部１１２ａは、幅方向Ｘに垂直な断面が円弧状の上面１１２ｆを有する。受電部１１２ａは、幅方向Ｘに垂直な断面が円形の回転ローラであってもよいし、回転しない円柱状の部材であってもよい。回転しない円柱状の部材である場合、任意の回転角度で固定可能としてもよい。コロナ放電を長期間行うことにより、受電部の表面が劣化したとき、回転角度を変えて再度取り付けることによって、劣化していない部分を新たに放電部１１０ａに対向させることができるので、同じ受電部１１２ａを長く使用することができる。

　ハウジング１０４は、シート材の搬送経路１２０を挟んで上下に位置する、上ハウジング１３０と、下ハウジング１４０と、を備える。上ハウジング１３０は内部空間１３０ｓを形成する箱状の部材であり、各コロナ処理部１０２の放電部１１０を収容する。下ハウジング１４０は、上面が開いた箱状の部材であり、各コロナ処理部１０２の受電部１１２を収容する。下ハウジング１４０の上面の開口部には、ガイドプレート１０８が設けられている。ガイドプレート１０８は、コロナ処理装置２６を通過するシート材の下面を支持する。

　ガイドプレート１０８は、放電部１１０と受電部１１２とが対向する部分で開口している。この開口によって、上流側受電部１１２ａよりも上流側のコロナ処理前ガイドプレート１０８ａ、上流側受電部１１２ａと下流側受電部１１２ｂとの間に位置するコロナ処理内ガイドプレート１０８ｂ及びコロナ処理後ガイドプレート１０８ｃに分けられている。

　上ハウジング１３０の上流側側面１３０ａと、下ハウジング１４０の上流側側面１４０ａとの隙間は、シート材をハウジング１０４内に搬入するための搬入口１５０を構成する。上ハウジング１３０の下流側側面１３０ｂと、下ハウジング１４０の下流側側面１４０ｂとの隙間は、シート材をハウジング１０４外に搬出するための搬出口１５２を構成する。搬入口１５０の上流側には、フィーダ２２からのシート材を搬入口１５０に向けて搬送する搬送手段が設けられる。搬出口１５２の下流側には、レジスト部２４へシート材を搬送する搬送手段が設けられる。

　シート材は、ガイドプレート１０８に支持されながら、搬入口１５０からハウジング１０４内に搬入され、二つのコロナ処理部１０２の放電部１１０と受電部１１２との間を通過して、搬出口１５２からハウジング１０４外に搬出される。ガイドプレート１０８の上面は、シート材が搬送される搬送経路１２０を構成する。

　シート材がコロナ処理部１０２の放電部１１０と受電部１１２との間を搬送されるとき、放電部１１０に高周波電圧が印加されると、放電部１１０と受電部１１２との間にコロナ放電が発生し、受電部１１２の表面に沿って移動するシート材の表面（上面）にコロナ処理が施される。放電部１１０及び受電部１１２は、シート材以上の幅を有するため、コロナ処理はシート材の搬送にともなってシート材の全面に対し施される。コロナ処理を行うと、ハウジング１０４内の空気中には、オゾン（Ｏ３）が発生する。

　図３中の破線の矢印はハウジング１０４内の空気の流れと、ハウジング１０４内に流入する空気の流れとを示す。
　ハウジング１０４には、放電部１１０側（すなわち搬送経路１２０よりも上方）に第一排気口１６０が形成されている。詳しくは、上ハウジング１３０に第一排気口１６０が形成されている。図示の例では、上ハウジング固定部１３４の上面に第一排気口１６０が形成されている。ハウジング１０４には、複数の第一排気口１６０が設けられてもよい。例えば、幅方向Ｘに並ぶように複数の第一排気口１６０が上ハウジング固定部１３４に形成されてもよい。また、搬送方向Ｙに並ぶように複数の第一排気口１６０が上ハウジング固定部１３４に形成されてもよい。この場合、各コロナ処理部１０２の上方に、第一排気口１６０が形成されてもよい。

　また、ハウジング１０４には、受電部１１２側（すなわち搬送経路１２０よりも下方）に第二排気口１６２が形成されている。つまり、下ハウジング１４０に第二排気口１６２が形成されている。図示の例では、下ハウジング１４０の下面に第二排気口１６２が形成されている。ハウジング１０４には、複数の第二排気口１６２が設けられてもよい。例えば、幅方向Ｘに並ぶように複数の第二排気口１６２が下ハウジング１４０に形成されてもよい。また、搬送方向Ｙに並ぶように複数の第二排気口１６２が下ハウジング１４０に形成されてもよい。この場合、各コロナ処理部１０２の下方に、第二排気口１６２が形成されてもよい。

　第一排気口１６０及び第二排気口１６２からは、吸引装置１０６によって、ハウジング１０４内のオゾンを含む気体が吸引され、排気される。ハウジング１０４内の気体の吸引及び排気は、コロナ処理部１０２を冷却する効果もある。第一排気口１６０及び第二排気口１６２の少なくとも一方には、圧力計（図示なし）が設けられる。この圧力計により、第一排気口１６０または第二排気口１６２の圧力が所定圧力を下回った場合、コロナ放電を中断する。

　本実施形態では、吸引装置１０６によるハウジング１０４内からの気体の吸引量、すなわち第一排気口１６０及び第二排気口１６２からの排気量は、シート材がハウジング１０４内に搬入されていないとき（すなわち下ハウジング１４０の上面の開口が塞がれていないとき）において、放電部１１０側（上側）の第一排気口１６０からの排気量よりも受電部１１２側（下側）の第二排気口１６２からの排気量を多くする。

　放電部１１０と受電部１１２との間を通過するシート材が受電部１１２から浮き上がると、たとえばシート材の裏面（下面）と受電部１１２との間でコロナ放電が発生し、シート材の表面（上面）側でコロナ放電が発生しなくなることがある。このように、シート材が浮き上がると、シート材の表面（上面）側で安定したコロナ放電が得られなくなり、所望の表面改質の効果を得ることができなくなる。これに対し、本実施形態では、上述したように、上側の排気量よりも下側の排気量を多くすることにより、図３中の破線矢印で示すように、ガイドプレート１０８と受電部１１２との隙間には下ハウジング１４０の内部空間である下部内部空間１４０ｓに向けて吸引する負圧が発生する。そして、搬送経路１２０を搬送されるシート材がこの負圧に吸引されることで、放電部１１０と受電部１１２との間を通過するシート材が受電部１１２から浮き上がることを抑制できる。これにより、シート材が受電部１１２上を摺動し、シート材の表面（上面）側で安定したコロナ放電を得ることができる。

　次に、間隔調整機構２００について説明する。コロナ処理装置２６は、コロナ処理部１０２の放電部１１０と受電部１１２の間隔を調整する間隔調整機構２００を有する。間隔調整機構２００は搬送方向Ｙに並んで二つ（上流側間隔調整機構２００ａ、下流側間隔調整機構２００ｂ）有する。上流側間隔調整機構２００ａは、上流側コロナ処理部１０２ａの放電部１１０ａと受電部１１２ａとの間隔を調整する。下流側間隔調整機構２００ｂは、下流側コロナ処理部１０２ｂの放電部１１０ｂと受電部１１２ｂとの間隔を調整する。

　上流側間隔調整機構２００ａと下流側間隔調整機構２００ｂの構成は互いに同一である。以下、両者を代表して上流側間隔調整機構２００ａについて説明する。上流側間隔調整機構２００ａの構成に付した付番のａをｂに置き換えた場合、下流側間隔調整機構２００ｂの同一の構成を表現し、双方まとめて表現する場合はａ及びｂを省略するものとする。

　上流側間隔調整機構２００ａは、第１支持部材２０２ａ、第２支持部材２０４ａ、二箇所の微調整機構２０６ａ（図４、図５）、上下動機構２０８ａ（図３、図４）を含む。

　第１支持部材２０２ａは、幅方向Ｘに長く形成され、その下方に放電部１１０ａが固定吊架される。第２支持部材２０４ａは幅方向Ｘに長く形成され、第１支持部材２０２ａの上方に適宜の間隔をおいて設けられる。第２支持部材２０４ａの幅方向Ｘの左端は、上ハウジング１３０の左側面１３０ｘに形成された角穴１３０ａｘを通って左外側に延出する。同様に第２支持部材２０４ａの幅方向Ｘの右端は、上ハウジング１３０の右側面１３０ｙに形成された角穴１０３ａｙを通って右外側に延出する。

　微調整機構２０６ａは、第１支持部材２０２ａと、第２支持部材２０４ａとの間隔を微調整可能とする。微調整機構２０６ａは、左微調整機構２０６ａｘと、右微調整機構２０６ａｙの２か所設けられ、上ハウジング１０３の内部空間１０３ｓの幅方向Ｘの中央を中心に振り分けて、左端付近と右端付近に各々配置される。左微調整機構２０６ａｘと、右微調整機構２０６ａｙの構成は互いに同一である。以下、両者を代表して左微調整機構２０６ａｘについて説明する。左微調整機構２０６ａｘの構成に付した付番のｘをｙに置き換えた場合、右微調整機構２０６ａｙの同一の構成を表現し、双方まとめて表現する場合はｘ及びｙを省略するものとする。

　左微調整機構２０６ａｘにおいては、第２支持部材２０４ａに穿孔された孔２０４ａｘにネジ２１０ａｘが挿通されている。ネジ２１０ａｘの先端は、第１支持部材２０２ａに形成された雌ネジ部２０２ａｘに螺合している。第１支持部材２０２ａと第２支持部材２０４ａとの間には、ネジ２１０ａｘを囲むように押しバネ２１２ａｘが介装されている。押しバネ２１２ａｘの押圧力により、第１支持部材２０２ａと第２支持部材２０４ａとの間隔は所定間隔に保たれ、その間隔は、ネジ２１０ａｘを回すことによって調整できる。

　上ハウジング１３０に適宜の開口を設け、ユーザはこの開口を通じて左微調整機構２０６ａｘのネジ２１０ａｘと、右微調整機構２０６ａｙのネジ２１０ａｙを各々回すこができる。ネジ２１０ａｘ、２１０ａｙを回すことにより、第１支持部材２０２ａと、第２支持部材２０４ａとの左右それぞれの上下間隔を微調整可能である。したがって第２支持部材２０４ａに対する第１支持部材２０２ａ及びこれに吊架された放電部１１０ａの幅方向Ｘの角度を微調整することができる。その結果、固定された受電部１１２ａに対する放電部１１０ａの平行度を調整することができる。

　上下動機構２０８ａは、放電部１１０ａと受電部１１２ａとの間隔を調整するために、第２支持部材２０４ａを左延出部、右延出部の双方を支持し、これを上下動させるための機構である。本発明において放電部１１０（１１０ａ、１１０ｂ）と受電部１１２（１１２ａ、１１２ｂ）との間隔とは、放電部１１０（１１０ａ、１１０ｂ）の下面（放電面）と、円弧状に形成された受電部１１２上面（１１２ｆ）の最上位までの距離である。

　第２支持部材２０４ａの左延出部には、タイミングベルト２１８ａが固定される。タイミングベルト２１８ａは、左側面１３０ｘに支持された軸の周りを回転する上プーリ２１４ａと下プーリ２１６ａとの間にかけられる。第２支持部材２０４ａには、軸方向が上下方向に向いたガイド軸２２０ａがスライドベアリング２２６ａを介して挿通される。ガイド軸２２０ａは、固定部材２２２ａ、２２４ａを介して左側面１３０ｘに固定される。タイミングベルト２１８ａが図３に示す時計方向に周回すると、第２支持部材２０４ａはガイド軸２２０ａに沿って上昇する。タイミングベルト２１８が図３に示す反時計方向に周回すると、第２支持部材２０４ａはガイド軸２２０ａに沿って下降する。プーリ２１４ａを支持する軸２２８ａには、ギヤ２３０ａとセンサ板２３２ａが軸支される。ギヤ２３０ａは、モータＭａの出力ギヤ２３４ａと噛み合っている。センサ板２３２ａには周方向に１か所欠き部が設けられた円盤であり、その周縁部に光軸が塞がれるように、センサ２３６ａが設けられている。モータＭａが駆動回転することにより、ギヤ２３４ａ、２３０ａを介してプーリ２１４ａが周回し、その結果タイミングベルト２１８ａが周回する。モータＭａは正逆回転可能であり、かつ回転量が制御可能なステッピングモータであるが、サーボモータ等を用いてもよい。以下、モータＭａがタイミングベルト２１８ａを時計方向に周回させる方向に駆動する回転方向を「正転」、タイミングベルト２１８ａを反時計方向に周回させる方向に駆動する回転方向を「逆転」と表記する。ギヤ２３０ａの周回とともにセンサ板２３２ａも周回し、センサ２３６ａは光軸部にセンサ板２３２ａの欠き部が達すると、これを検知する。したがってセンサ２３６ａにより、第２支持部材２０４ａが所定の高さであることが検知される。図３はセンサ２３６ａが欠き部を検出している状態である。

　軸２２８ａは上ハウジング１３０の内部空間１３０ｓを貫通し、右側面１３０ｙにも支持されるとともに、その外側まで延在する。この右側面１３０ｙの外側において、軸２２８ａはプーリ２３８ａを軸支する。プーリ２３８ａと、右側面１３０ｙに支持された軸の周りを回転する２４０ａとの間にタイミングベルト２４２ａが掛けられる。タイミングベルト２４２ａは第２支持部材２０４ａの右延出部に固定される。第２支持部材２０４ａには、軸方向が上下方向に向いたガイド軸２４４ａがスライドベアリング２４６ａを介して挿通される。ガイド軸２４４ａは、固定部材２４８ａ、２５０ａを介して右側面１３０ｙに固定される。タイミングベルト２４２ａが周回すると、第２支持部材２０４ａはガイド軸２４４ａに沿って上昇または下降する。

　第２支持部材２０４ａは略水平を保ったまま上昇または下降するように、左延出部のタイミングベルト２１８ａと、右延出部のタイミングベルト２４２ａは互いに同期しており、プーリ２１４ａ、２１６ａ、２３８ａ、２４０ａはすべて同じ歯数で構成されている。

以上の構成により、モータＭａが駆動回転すると、第２支持部材２０４ａが略水平を保ったまま昇降する。第２支持部材２０４ａが昇降すると、放電部１１０ａは、第２支持部材２０４ａに対し、微調整機構２０６ａにより微調整された角度を保ったまま昇降する。したがって放電部１１０ａは、固定された受電部１１２ａに対する所定の平行度を保ったまま昇降する。

　以上が上流側間隔調整機構２００ａの構成である。下流側間隔調整機構２００ｂの構成も上流側間隔調整機構２００ａと同一であるので、モータＭｂが駆動回転すると、第２支持部材２０４ｂが略水平を保ったまま昇降し、放電部１１０ｂは、固定された受電部１１２ｂに対する所定の平行度を保ったまま昇降する。

　図６は本発明の実施形態に係る制御ブロック図である。
制御装置２０には、情報処理端末としてのＰＣ２６０を通じ、ジョブ定義情報として、加飾印刷システム１０で処理されるシート材に関する情報であるシート情報が入力および記憶される。シート情報は、シート材の厚さｔを含む。シート情報はシートの材質に関する情報を含んでいてもよい。シート情報は、加飾印刷に先立ってシート材に施される下地印刷に関する下地印刷情報を含んでいてもよい。下地印刷情報とは、例えば下地印刷に用いたプリンタに関する情報（プリンタの機種等）である。また、例えば下地印刷に用いた印刷の方式（電子写真、インクジェット等）である。ジョブ定義情報にはその他の情報として、ニス吐出データや箔押し、ピニング処理に関する情報等を含む。

　制御装置２０はこのシート情報に基づいて、コロナ処理装置２６の間隔調整機構２００のモータＭを制御する。また、制御装置２０は、ニス塗布装置１４や箔押し装置１６をも制御する。

　以下、上下動機構２０８の調整制御を説明する。
図７はシート材の厚さｔに基づいて、上下動機構２０８の第１調整制御を示す模式図である。図７（ａ）では放電部１１０がホームポジションに位置しており、放電部１１０と受電部１１２との間隔はＤ０である。ホームポジションはセンサ２３６がセンサ板２３２の欠きを検知した位置であり、放電部１１０の昇降する範囲のうち最も低い位置である。

　制御装置２０はシート情報に含まれる厚さｔに基づき、ホームポジションからの上昇距離ＤＵを以下の式１に基づき算出する。
ＤＵ＝Ｄｒｅｆ＋ｔ－Ｄ０　…（式１）
Ｄｒｅｆはシート材Ｓの上面に対して安定したコロナ放電を行うことができる距離として予め設定され、記憶された値である。

　図８は第１調整制御を示すフローチャートである。
制御装置２０は所定の調整指令を受けると、モータＭを逆転させ、タイミングベルト２１８が図３に示す反時計方向に周回する（Ｓ１）（タイミングベルト２４２も同方向に周回する）。センサ２３６がセンサ板２３２の欠きを検知したら（Ｓ２のＹ）モータＭを停止させる（Ｓ３）。この時、放電部１１０はホームポジションにある（図７（ａ））（調整指令を受けたときにセンサ２３６の光軸が塞がれていない場合は、Ｓ１のモータ逆転を開始する前に、センサ２３６の光軸が塞がれるまでモータＭをいったん正転させる）。さらにモータＭを正転させ（Ｓ４）、パルス数Ｐが放電部１１０を式１により算出された距離ＤＵ（ＤＵ１，ＤＵ２）だけ上昇させるのに必要なパルス数ＰＵに達したら（Ｓ５のＹ）、モータＭを停止させ（Ｓ６）、調整制御が終了する。

　図７（ｂ）は、第１調整制御にしたがい、放電部１１０を厚さｔ１のシート材Ｓ１に対応した高さに調整した状態を示す。放電部１１０と受電部１１２との間隔はＤ１＝Ｄｒｅｆ＋ｔ１であり、したがって、放電部１１０の位置は、ホームポジションから距離ＤＵ１＝Ｄｒｅｆ＋ｔ１－Ｄ０＝Ｄ１－Ｄ０だけ上昇した位置である。放電部１１０の下面と、シート材Ｓ１の上面との距離はＤｒｅｆとなる。

　図７（ｃ）では、第１調整制御にしたがい、放電部１１０を厚さｔ１よりも厚い厚さｔ２のシート材Ｓ１に対応した高さに調整した状態を示す。放電部１１０と受電部１１２との間隔はＤ２＝Ｄｒｅｆ＋ｔ２であり、したがって、放電部１１０の位置は、ホームポジションから距離ＤＵ２＝Ｄｒｅｆ＋ｔ２－Ｄ０＝Ｄ２－Ｄ０だけ上昇した位置である。この場合も、放電部１１０の下面と、シート材Ｓ１の上面との距離はＤｒｅｆとなる。

　このように、シート材の厚さｔが変化しても、放電部１１０とシート材の上面との間隔は変化せず、Ｄｒｅｆに保たれる。したがって、シート材の厚さに関わらず、シート材が放電部１１０に当接することなく、安定したコロナ放電による表面改質が可能となる。ホームポジションは、Ｄｒｅｆに基づいて、厚さｔが最も薄い場合のＤｒｅｆよりもＤ０が小さくなるように予め設計される。放電部１１０と受電部１１２との間を搬送されるシート材を検知可能な図示しないジャムセンサが設けられている。シート材が放電部１１０に当接するなどして詰まると、シート材がこのジャムセンサに検知されたままとなる。ジャムセンサは、シート材の通過に要するはずの時間を所定以上上回る時間シート材を検知し続けた場合、ジャム（シート材の詰まり）エラーとして加飾印刷システム１０を停止させる。加飾印刷システム１０がジャムエラーで停止すると、当該シート材の損失であるほか、先行するシート材のニス塗布や箔押し処理が中途半端に中止され、ニスや箔等の消耗品が無駄になり、大きな損失となる。本発明はシート材の厚みに関わらずこのようなジャムを効果的に回避できるので、シート材や消耗品の損失を抑制することができる。なお、ジャムセンサは放電の影響を受けないよう、周囲を金属板でシールドされている。放電の影響を受けない光ファイバを用いてセンサの光を伝達してもよい。

　一方、シート材の厚さｔが大きくなるほど、放電部１１０と受電部１１２の間隔は大きくなるので、絶縁破壊に要する電圧が高くなる。したがって、放電部１１０に印加する電圧は、適用されうるシート材の最大の厚さｔに応じて調整された放電部１１０と受電部１１２の間隔においても安定したコロナ放電が得られる電圧とするのが望ましい。また、シート材の厚さｔが大きくなるほど、印加電圧を高くするように制御してもよい。

　図９は第１調整制御とは別の制御例である第２調整制御を示す模式図である。図９（ａ）は図７（ａ）と同様に、放電部１１０がホームポジションに位置しており、放電部１１０と受電部１１２との間隔はＤ０である。第２調整制御では、厚さｔと所定のＤｒｅｆとの合計がＤ０以下であれば放電部１１０は上昇させず、超える場合はその超過分だけ放電部１１０を上昇させる。

　図９（ｂ）はＤｒｅｆ+ｔ１≦Ｄ０である厚さｔ１のシート材Ｓ１を適用した場合の図である。この場合は放電部１１０はホームポジションから上昇させないので、放電部１１０と受電部１１２との間隔はＤ０のままである。図９（ｃ）は厚さｔ１よりも厚く、Ｄｒｅｆ+ｔ２＞Ｄ０である厚さｔ２のシート材Ｓ２を適用した場合の図である。この場合はｔ２+ＤｒｅｆがＤ０を超過した分だけ（Ｄｒｅｆ+ｔ２－Ｄ０）放電部１１０がホームポジションから上昇する。上昇距離ＤＵは式１により算出される（ＤＵ２＝Ｄｒｅｆ+ｔ２－Ｄ０）。

　第２調整制御におけるＤｒｅｆは、安定したコロナ放電による表面改質が可能であり、かつ、シート材が放電部１１０に当接するのを確実に防ぐのに最低限必要な間隔として、予め設計される。したがって第２調整制御においては、放電部１１０と受電部１１２との間隔がＤｒｅｆを下回らないように制御することができる。

　図１０は第２調整制御を示すフローチャートである。所定の調整指令を受けると、モータＭを逆転させ（Ｓ１）、センサ２３６がセンサ板２３２の欠きを検知したら（Ｓ２のＹ）モータＭを停止させる（Ｓ３）までは図８を同じである。この後、Ｄｒｅｆ+ｔ１＞Ｄ０であるか否かが判定され（Ｓ３１）、Ｙであれば、第１調整制御（図８）のＳ４～Ｓ６と同一の制御を行う。Ｎであれば、調整制御を終了する。したがってＤｒｅｆ+ｔ１＞Ｄ０の場合は、放電部１１０はホームポジションのまま（放電部１１０と受電部１１２との間隔がＤ０のまま）調整制御が終了する。

　シート材の厚さｔを含むジョブ定義ファイルについては、下地印刷を行うプリンタから通信回線を通じて送られてきたり、別途ユーザが管理するファイルから読み込まれたり等で入力される。あるいは、ＰＣ２６０や、あるいは別途設けられた操作パネル等を通じてユーザから直接入力されるようにしてもよい。あるいは、コロナ処理装置２６の上流側に、フィーダ２２から送り出されたシート材の厚さｔを検知する厚さ検知機構を設け、シート材が放電部１１０と受電部１１２との間に入る前に、この厚さ検知機構により取得された厚さｔに基づいて調整制御を行うようにしてもよい。

　第１または第２調整制御の後に、ユーザによる追加調整を可能としてもよい。具体的には、ＰＣ２６０や操作パネル等を通じてボタン操作、クリック操作等により、モータＭをわすかに正転または逆転させ、放電部１１０をわずかに上昇または下降させる。このとき、放電部１１０とシート材との当接を回避するために必要な間隔よりも狭くならないように、放電部１１０が所定高さよりも低くならないように制限してもよい。

　コロナ放電による濡れ性改善の効果は、下地シートの材質、下地印刷の種類（電子写真、インクジェット等）により変化することがある。また、環境条件、特に湿度によりコロナ放電が発生し得る絶縁破壊距離に影響を与えることが知られている。これらの条件に応じて、放電部１１０と受電部１１２と間隔をユーザが追加調整することにより、より良い濡れ性改善効果を得ることができる。

　第１または第２調整処理後のユーザによる追加調整に代えて、シートの材質や、下地印刷を行ったプリンタの型式、印刷の種類、環境条件等、濡れ性改善効果に影響し得るファクターに応じた追加調整を自動的に行ってもよい。追加調整の内容は、実験により取得した、改善効果と追加調整内容との関係に基づいて作成され、予め記憶されたテーブル等を参照する。シートの材質や、下地印刷を行ったプリンタの型式、印刷の種類等は、ジョブ定義ファイルに含まれているものを参照してもよいし、ユーザが入力するようにしてもよい。湿度等環境条件は、湿度計等の計測機器から得られた情報を参照してもよいし、ユーザが入力するようにしてもよい。この例によれば、放電部１１０と受電部１１２との間隔は、シート材の厚さｔに加えて、シート材の材質、下地印刷に関する情報、環境条件等を加味した、より適切な間隔とする調整制御が可能となる。

　また、適用されるシート材の厚さの範囲が比較的小さく、厚みに応じて放電部１１０と受電部１１２との間隔を変える必要がない場合は、調整制御においてシート材の厚さｔを考慮する必要がない。この場合は第１または第２の調整処理に代えて、シート材の厚さｔ以外のファクター、すなわちシートの材質や、下地印刷を行ったプリンタの型式、印刷の種類、気象条件等を参照し、これに応じて間隔調整を行ってもよい。各ファクターの入力にはユーザの入力内容、ジョブ定義ファイルの内容、計測機器の計測結果等を参照し、各ファクターに応じて実験により定めた最適値に基づいて予め記憶されたテーブル等を参照すればよい。
以上が上下動機構２０８の調整制御である。

　本発明の間隔調整機構２００は、上記説明した上下動機構２０８とその調整制御に加え、微調整機構２０６を有し、互いに幅方向Ｘに長い放電部１１０と受電部１１２との平行度が調整可能である。幅方向Ｘ全幅にわたって安定したコロナ放電を得るには、放電部１１０と受電部１１２の間隔が、幅方向Ｘの位置に関わらず一定とする、すなわち互いに平行とする必要がある。本発明ではこの微調整機構２０６により、上下動機構２０８を構成する部材の製造誤差に応じて予め放電部１１０と受電部１１２とを平行とすることができる。

　また、微調整機構２０６によって予め、幅方向Ｘの一方側を他方側に比べて放電部１１０と受電部１１２との間隔を小さくすることにより、一方側において他方側よりも強い濡れ性改善効果が得られるようにする（あるいはその逆）ことも可能である。

　以上説明した間隔調整機構２００の構成、機能は、上流側間隔調整機構２００ａ、下流側間隔調整機構２００ｂに共通のものである。また、上下動機構２０８の調整制御は、上流側上下動機構２０８ａと、下流側上下動機構２０８ｂとで同時に同一の調整制御が行われるものとする。

　ただし、製造誤差等により上流側放電部１１０ａと下流側放電部１１０ｂとの放電現象の差異や寸法誤差がある場合は、上流側上下動機構２０８ａと、下流側上下動機構２０８ｂとで個別に追加調整を可能としてもよい。また、段階的な濡れ性改善効果を得るために、意図的に上流側放電部１１０ａと下流側放電部１１０ｂとの間隔に差異を持たせるように、各々予めＤｒｅｆを設定してもよい。

　次に、間隔調整機構２００の変形例である間隔調整機構３００について説明する。間隔調整機構２００と同一の部材については原則として同一の符号を付して詳細な説明は省略し、間隔調整機構２００との相違点を中心に説明する。

　間隔調整機構３００は間隔調整機構２００と同様、搬送方向Ｙに並んで二つ（上流側間隔調整機構３００ａ、下流側間隔調整機構３００ｂ）有し、その構成は互いに同一である。以下、両者を代表して上流側間隔調整機構３００ａについて説明する。上流側間隔調整機構３００ａの構成に付した付番のａをｂに置き換えた場合、下流側間隔調整機構３００ｂの同一の構成を表現し、双方まとめて表現する場合はａ及びｂを省略するものとする。

　上流側間隔調整機構３００ａは、第１支持部材２０２ａと第２支持部材２０４ａ、微調整機構２０６を備えず、これに代えて支持部材３０２ａを有する。支持部材３０２ａは、第１支持部材２０２ａと第２支持部材２０４ａとを一体化させた構成である。また、上流側間隔調整機構３００ａは、上下動機構２０８ａに代えて、左上下動機構３０８ａｘ、右上下動機構３０８ａｙを有する。

　支持部材３０２ａの左上端は、上ハウジング１３０の左側面１３０ｘに形成された角穴１３０ａｘを通って左外側に延出する。同様に支持部材２０２ａの右上端は、上ハウジング１３０の右側面１３０ｙに形成された角穴１０３ａｙを通って右外側に延出する。

　上下動機構３０８ａｘはハウジング１３０の左側面１３０ｘの外側に設けられ、支持部材２０２ａの左延出部を上下動可能に支持する。上下動機構３０８ａｙはハウジング１３０の右側面１３０ｙの外側に設けられ、支持部材２０２ａの右延出部を上下動可能に支持する。上下動機構３０８ａｘ、３０８ａｙとが互いに同期して支持部材２０２ａを上下動させ、放電部１１０ａと受電部１１２ａとの間隔を調整する。

　上下動機構３０８ａｘは、上下動機構２０８ａにおける軸２２８ａに代えて、軸３２８ａｘが左側面１３０ｘの外側にのみ設けられる。ギヤ３３０ａｘ、センサ板３３２ａｘ、出力ギヤ３３４ａｘ、センサ３３６ａｘ、モータＭａｘは各々ギヤ２３０ａ、センサ板２３２ａ、出力ギヤ２３４ａ、モータＭａと同一の部材である。軸３２８ａｘ、ギヤ３３０ａｘ、センサ板３３２ａｘ、出力ギヤ３３４ａｘ、センサ３３６ａｘ、モータＭａｘに対し、幅方向Ｘの中央に対して線対称となるように、右側面１３０ｙの外側部分に軸３２８ａｙ、ギヤ３３０ａｙ、センサ板３３２ａｙ、出力ギヤ３３４ａｙ、センサ３３６ａｙ、モータＭａｙが設けられている。この構成により、上下動機構３０８ａｘ、３０８ａｙは、その構造が幅方向Ｘの中央に対して互いに線対称になっており、上下動機構３０８ａｘはモータＭａｘを駆動させることにより支持部材３０２ａの左延出部を、上下動機構３０８ａｙはモータＭａｙを駆動させることにより支持部材３０２ａの右延出部を各々個別に上下動できるようになっている。また、スライドベアリング２２６ａ、２４６ａによるガイド機構に代えて、ガイド部材３２６ａｘ、３２６ａｙが、支持部材２０２ａを搬送方向Ｙの上流側と下流側から挟むようにガイドする。上下動機構３０８ａｘ、３０８ａｙの上記以外の部分の構成は、上下動機構２０８ａと同一である。

　下流側間隔調整機構３００ｂの構成も同一である。すなわち支持部材３０２ｂの左延出部と右延出部とが、上下動機構３０８ｂｘのモータＭｂｘ、上下動機構３０８ｂｙのモータＭｂｙにより各々個別に上下動できるようになっている。

　上下動機構３０８においては、上下動機構２０８と同様の第１調整制御、または第２調整制御、あるいはシート材の厚さ以外のファクターによる調整制御、加えて必要に応じた追加調整を、左右同時に行う。上下動機構３０８においてはこれに加えて、支持部材３０２ａを左右個別に調整ができるので、部材の誤差を吸収して放電部１１０と受電部１１２とが平行になるように、予め左右個別の補正値を設定しておくことができる。また、ユーザが個別にＰＣ２６０または操作パネル等から、左右個別の追加調整を可能としてもよい。

　以上の構成により、間隔調整機構３００においては、手動の微調整機構２０６による平行度調整を自動化することができる。

１０　　：加飾印刷システム
２６　　：コロナ処理装置
１０２　：コロナ処理部
１１０　：放電部
１１２　：受電部
２００　：間隔調整機構
２０２　：第１支持部材
２０４　：第２支持部材
２０６　：微調整機構
２０８　：上下動機構

Claims (13)

1. 　上電極と、前記上電極の下方に配置された下電極とで構成され、前記上電極と前記下電極との間に、シート材が前記下電極と接触して通過するように構成された搬送経路を形成するとともに、前記上電極と前記下電極との間で放電を発生させ、前記搬送経路を通過する前記シート材に対して放電処理を行う電極対と、
   　前記上電極と前記下電極との間隔を調整する間隔調整機構と、
   　前記シート材に関する情報であるシート情報を取得するシート情報取得部と、
   　前記シート情報取得部により取得された前記シート情報に基づいて、前記上電極と前記下電極との間隔を調整するように、前記間隔調整機構を制御する制御部と
   　を有することを特徴とする放電処理装置。
2. 　前記シート情報取得部は、前記シート材の厚さに関する情報を取得するように機能し、
   　前記制御部は、前記シート情報取得部により取得された前記シート材の厚さに基づいて前記上電極と前記下電極との間隔を調整するように、前記間隔調整機構を制御することを特徴とする
   　請求項１記載の放電処理装置。
3. 　前記制御部は、前記上電極と前記シート材の上面との距離が所定距離となるように、前記間隔調整機構を制御することを特徴とする請求項１または２記載の放電処理装置。
4. 　前記制御部は、前記上電極と前記シート材の上面との距離が所定距離を下回らないように、前記間隔調整機構を制御することを特徴とする請求項１または２記載の放電処理装置。
5. 　前記電極対は、前記シート材の搬送方向に複数配置され、
   　前記制御部は、各々の前記上電極と前記下電極との間隔が実質的に同一の距離となるように制御することを特徴とする請求項１から４いずれかに記載の放電処理装置。
6. 　前記シート情報取得部は、前記シート材に予めなされた処理内容に関する情報である前処理情報を取得するように機能し、
   　前記制御部は、前記シート情報取得部により取得された前記前処理情報に基づいて前記上電極と前記下電極との間隔を調整するように、前記間隔調整機構を制御することを特徴とする
   　請求項１から５いずれかに記載の放電処理装置。
7. 　前記前処理情報は、前記シート材に予め行われた印刷の印刷方式であることを特徴とする請求項６記載の放電処理装置。
8. 　前記前処理情報は、前記シート材に予め行われた印刷に使われたプリンタに関する情報であることを特徴とする請求項６または７記載の放電処理装置。
9. 　前記電極対は、前記上電極及び前記下電極がシート材の搬送方向に直交する方向に長く、互いに略平行に形成されており、その平行度を調整可能な平行度調整機構を有することを特徴とする
   　請求項１から８いずれかに記載の放電処理装置。
10. 　前記電極対は、前記上電極及び前記下電極がシート材の搬送方向に直交する幅方向に長く、互いに略平行に形成されており、
    　前記間隔調整機構は、前記上電極及び前記下電極との幅方向の一方側の間隔を調整する一方側間隔調整機構と、前記上電極及び前記下電極との幅方向の他方側の間隔を調整する他方側間隔調整機構とを有し、
    前記制御部は、前記一方側間隔調整機構と、他方側間隔調整機構とを、各々個別に調整可能であることを特徴とする請求項１から８いずれかに記載の放電処理装置。
11. 　前記制御部は、前記シート情報に基づいた前記上電極と前記下電極との間隔調整の後、ユーザによる追加調整を受け付けることを特徴とする
    　請求項１から１０いずれかに記載の放電処理装置。
12. 　枚葉シート材に放電処理を施す放電処理手段と、
    　前記放電処理手段に前記シート材を供給するシート材供給手段と、を備えるシート材処理システムにおいて、
    　前記放電処理手段として、請求項１乃至１１のいずれかに記載の放電処理装置を備えることを特徴とするシート材処理システム。
13. 　請求項１２のシート材処理システムにおいて、
    　前記放電処理手段から排出された前記枚葉シート材にニスを塗布するニス塗布手段を備えることを特徴とするシート材処理システム。

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