WO2023053283A1 - 固定子、これを備えるm相交流電動機、及び固定子の製造方法 - Google Patents

固定子、これを備えるm相交流電動機、及び固定子の製造方法 Download PDF

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Abstract

固定子鉄心と、固定子鉄心の周方向に配置されたM・N個(M及びNはそれぞれ正の整数)のスロットと、M相のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる複数のコイルと、を備えるM相交流電動機の固定子は、M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、周方向に隣接するX個のスロットを1個の基本スロット群として、当該基本スロット群内のX個のスロットのうちのいずれかに巻線が配置され、X個のスロットのうちのいずれかに巻線が配置された基本スロット群が、周方向に、スロットピッチXの周期で繰り返し配置される。

Description

固定子、これを備えるM相交流電動機、及び固定子の製造方法
 本発明は、固定子、これを備えるM相交流電動機、及び固定子の製造方法に関する。
 交流電動機は、極数とスロット数との関係及びスロットにおける巻線の配置の仕方によって、その特性は大きく変化する。例えば、極数が大きいと、固定子が磁気飽和しにくくなることから固定子を小型化できるメリットがあるが、交流電動機の最大速度(制御周波数)を大きくできないデメリットがある。また、スロット数が大きいと、逆起電圧波形がきれいな正弦波になるメリットがあるが、コイル数が多くなってしまうデメリットがある。また、スロット数を極数で除算して得られる値はコイルピッチに近い値となるが、その値が小さいほど、コイルエンドが小さくなり結果としてコイル長が短くなるので銅損が減少するが、その一方で、一極に集中する磁束量が多くなるので鉄損が増加する。また、交流電動機の回転子において、1極当たりの使用する磁石の量を増やすなどにより磁束量を増加させることで交流電動機のトルク密度を上げることが可能であるが、その一方で、回転子の磁束量が増えてしまうことでコギングトルク及びトルクリップルが大きくなってしまうデメリットがある。交流電動機を設計及び製造するにあたっては、これらメリット及びデメリットを考慮して、交流電動機に求められる特性、用途、使用環境、コストなどに応じて、極数、スロット数、及び巻線配置が適宜選定される。また、これら相反するメリットとデメリットとのトレードオフの関係が解消され、より多くのメリットが得られる交流電動機の特性、及び交流電動機の製造方法が望まれる。
 例えば、P個の磁極が略等間隔に配置された可動子と、m相に励磁されるN個の巻線コイルの巻回中心が移動方向に対し略等間隔となるように配置された固定子とを備え、上記可動子の磁極数Pと固定子の巻線コイル数Nの組み合わせがP=2n(以下nは自然数)かつN=2n±1あるいはN=2(n±1)となるようにPとNを選択し、Nは相数mの整数倍ではないようにした永久磁石式電動機において、上記巻線コイルのターン数を上記巻線コイル間で異なるように設定し、上記巻線コイルの一つの巻回中心に対して1相分の巻線コイルのみを巻回したことを特徴とする永久磁石式電動機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
 例えば、複数対の磁極を有する回転子と、前記回転子の回転軸方向に形成され、かつ周方向に配列された複数のスロットを有し、前記回転子と径方向に対向配置された固定子と、前記スロットに挿入されて前記固定子に巻装された複数の巻線と、を備えた3相交流電動機において、回転子の極数を2P、固定子の巻線を挿入するスロット数をNとし、スロット数Nを極対数Pで除した値が既約分数となり、かつ、該既約分数の分母の値が奇数となる関係を持ち、前記巻線を挿入する前記固定子の各スロットには、U相、V相及びW相の3相及びその逆位相の合計6相帯のいずれかの巻線が、1スロットにつき3層に重ねて配置され、各スロットに配置されている3層の巻線のうち、1層目の巻線は、U相、V相及びW相の3相の各巻線の配置が、互いに機械角で±120度の回転対称性を持つように配置され、残りの2層のうち片方の層である2層目の巻線は、前記1層目の巻線の配置を前記1層目の巻線の配置とはLスロット分だけずらして配置され、前記2層のうちの残りの層である3層目の巻線は、前記1層目の巻線の配置を前記1層目の巻線の配置とはLスロット分だけ前記2層目の巻線の配置とは逆方向にずらして配置されている、ことを特徴とする3相交流電動機が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
 例えば、複数対の磁極を有する回転子と、前記回転子の回転軸方向に形成され、周方向に配列された複数のスロットを有し、前記回転子と径方向に対向配置された固定子と、前記スロットに挿入されて前記固定子に巻装された複数の巻線と、を備え、前記回転子の極数を2P、前記固定子の巻線を挿入するスロット数を6Nとし、スロット数6Nを極対数Pで除した値が既約分数となり、かつ、2N>Pの関係を持つ3相交流電動機の固定子において、スロット数6Nを極数2Pで除した商をXとするとき、前記固定子には、所定の巻数で巻回されたコイルが1相あたり2N個スロット内に配置され、各1つのコイルは直列接続している別の1つのコイルと、電流の向きを合わせて1辺を共有して1つの中央スロットに重ねて配置され、前記の2つのコイルのスロットを共有していない各々の反対側の1辺は、各々スロットが前記中央スロットからXだけ離れている別のスロットに配置されて、前記2つのコイルは3つのスロットに渡って8の字状に連結して配置され、前記の8の字状の連結コイルの組が、前記固定子のスロットに1相あたりN組各々完全には重ならない位置に配置され、各々直列接続されている、ことを特徴とする3相交流電動機が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
 例えば、円筒形状であり内周面に周方向に複数のスロットが形成された固定子鉄心と複数の前記スロットにそれぞれ挿入されている複数相のコイルとを備えた固定子と、前記固定子に対して回転可能に支持されている可動子鉄心と前記可動子鉄心に設けられている少なくとも一対の可動子磁極とを備えた可動子とを有する回転電機の製造方法であって、導線から前記複数相のコイルが複数に分割された分束コイルを、前記各相のそれぞれについて形成する分束コイル形成工程と、棒状であり互いに離間して円周上に配置された複数のブレードと、各前記ブレードの内側部分と対向するように前記各前記ブレードの内側に配置され前記ブレードの形成方向に沿って移動するプッシャーとを備えたコイル挿入機の各前記ブレード間に、前記各相のそれぞれの複数の前記分束コイルを前記ブレードの形成方向に重ねて層状に挿入するコイルセット工程と、各前記スロットの位置が各前記ブレード間に形成された隙間の位置と一致するように、前記固定子鉄心を前記コイル挿入機にセットする固定子鉄心セット工程と、前記プッシャーを前記固定子鉄心側に移動させることにより、前記プッシャー側にある各前記ブレード間にそれぞれ挿入された複数の前記分束コイルで、この分束コイルよりも前記固定子鉄心側に隣接する前記分束コイルを押圧させて、前記各相のそれぞれの複数の前記分束コイルを一度に各前記スロットに順次重ねて層状に挿入する分束コイル一括挿入工程と、を有する回転電機の製造方法が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
 例えば、周方向に複数のスロットを有する円環状の固定子コアと、周方向の異なる前記スロットに配置されるスロット収容部と前記スロットの外部で前記スロット収容部同士を接続しているターン部とを有する複数の導線からなる固定子巻線と、を備えた回転電機の固定子において、前記導線は、一端側に位置する第1スロット収容部から順に周方向に離間した前記スロットにそれぞれ収容される第2スロット収容部、第3スロット収容部、・・・、第n(nは4以上の自然数)スロット収容部と、前記固定子コアの軸方向一端側における前記スロットの外部と前記固定子コアの軸方向他端側における前記スロットの外部とで交互に前記スロット収容部同士を接続する前記第1ターン部、前記第2ターン部、・・・、前記第(n-1)スロット収容部と前記第nスロット収容部を接続する第(n-1)ターン部とを有し、前記第1スロット収容部から前記第nスロット収容部の前記固定子コアの中心軸線からの半径距離が順次大きく又は順次小さくなるよう配置された連続線とされているとともに、前記導線の前記スロット収容部または前記スロット収容部の延長線上の部位に、前記スロット収容部の表面よりも前記固定子コアの径方向に膨出する膨出部を有することを特徴とする回転電機の固定子が知られている(例えば、特許文献5参照。)。
特開2011-223676号公報 特開2016-140202号公報 特開2017-011959号公報 特開2018-085854号公報 特開2011-142798号公報
雪江明彦 著、「代数学1 群論入門」、日本評論社、2019年2月15日 雪江明彦 著、「代数学2 環と体とガロア理論」、日本評論社、2019年10月25日
 様々な極数、スロット数、及び巻線配置に対応可能な汎用性の高い交流電動機に関する技術開発が望まれている。
 本開示の一態様によれば、固定子鉄心と、固定子鉄心の周方向に配置されたM・N個(M及びNはそれぞれ正の整数)のスロットと、M相のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる複数のコイルと、を備えるM相交流電動機の固定子は、M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、周方向に隣接するX個のスロットを1個の基本スロット群として、当該基本スロット群内のX個のスロットのうちのいずれかに巻線が配置され、X個のスロットのうちのいずれかに巻線が配置された基本スロット群が、周方向に、スロットピッチXの周期で繰り返し配置される。
 また、本開示の一態様によれば、M相交流電動機は、上記固定子と、固定子に対して径方向に対向配置された回転子と、を備える。
 また、本開示の一態様によれば、M相(Mは正の整数)のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる複数のコイルを備えるM相交流電動機の固定子の製造方法は、周方向に配置されたM・N個(Nは正の整数)のスロットを有する固定子鉄心を形成する固定子鉄心形成ステップと、M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、周方向に隣接するX個のスロットのうちのいずれかに巻線を配置することで得られる基本スロット群を、スロットピッチXの周期で周方向に繰り返し配置する巻線配置ステップと、を備える。
 また、本開示の一態様によれば、M相(Mは正の整数)のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる複数のコイルを備えるM相交流電動機の固定子の製造方法は、円筒状の中空と、周方向に配置されたM・N個(Nは正の整数)のスロットと、を有する固定子鉄心を形成する固定子鉄心形成ステップと、M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、インサータ巻線装置内において周方向に隣接するX個のブレードを1個の基本ブレード群とするときの当該基本ブレード群内のX個のブレードのうちのいずれかに巻線を配置するブレード準備ステップと、基本ブレード群内のブレードに巻線が配置されたインサータ巻線装置を固定子鉄心に挿入することで、ブレードに配置された巻線を、スロットピッチXの周期で周方向に隣接するX個のスロットを1個の基本スロット群としたときの当該基本スロット群内のX個のスロットのうちのいずれかへ移し替えて巻線をスロットに配置する巻線配置ステップと、を備える。
 また、本開示の一態様によれば、M相(Mは正の整数)のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる波巻コイルを備えるM相交流電動機の固定子の製造方法は、周方向に配置されたM・N個(Nは正の整数)のスロットを有する固定子鉄心を形成する固定子鉄心形成ステップと、互いに略平行な第1辺及び第2辺と、第1辺と第2辺とを結ぶ第3辺と、を有したU字形状に成形した平角線を複数生成する平角線生成ステップと、M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、周方向に隣接するX個のスロットのうちのいずれかに平角線の第1辺及び第2辺を収容することで得られる基本スロット群を、スロットピッチXの周期で周方向に複数形成する平角線収容ステップと、隣接する基本スロット群間において、一方の基本スロット群の第1辺の一部ともう一方の基本スロット群の第2辺の一部とをそれぞれ折り曲げたうえで互いに接合することで、各基本スロット群内のスロットに巻線が収容された波巻コイルを形成するコイル形成ステップと、を備える。
 また、本開示の一態様によれば、M相(Mは正の整数)のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる波巻コイルを備えるM相交流電動機の固定子の製造方法は、M・Nで得られる値(Nは正の整数)に対して互いに素な正の整数をXとするとき、固定子鉄心の周方向に隣接するX個のスロットを1個の基本スロット群として、当該基本スロット群に対応する長さを波巻の1周期分とする波巻形状を有する平角線を成形する第1の平角線成形ステップと、平角線を環状に巻く第2の平角線成形ステップと、環状に巻かれた平角線の径方向の外側から、固定子鉄心に設けられるスロットに対応する溝形状が形成された複数の磁性材料を挿入することで、平角線の一部からなる巻線がスロットに収容された波巻コイルを形成するコイル形成ステップと、を備える。
 本開示の一態様によれば、様々な極数、スロット数、及び巻線配置に対応可能な汎用性の高い交流電動機、これに備えられる固定子、及び固定子の製造方法を実現することができる。
本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子における7スロットピッチからなる1個の基本スロット群におけるコイル配置を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において周方向に1周に亘って図1に示す7スロットピッチからなる基本スロット群が配置されたときのコイル配置を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において、36個スロットを仮想的に252個に展開させ、7スロットピッチからなる基本スロット群が仮想的に36個分配置されたときのコイル配置を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において基本スロット群を7スロットピッチとした場合における各相コイルの第1の割り当て例を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において図4に示した第1の割り当て例により割り当てられた3相コイルの巻線配置を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において基本スロット群を7スロットピッチとした場合における各相コイルの第2の割り当て例を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において図6に示した第2の割り当て例により割り当てられた3相コイルの巻線配置を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において基本スロット群を7スロットピッチとした場合における第3の割り当て例を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において周方向に1周に亘って図8に示した第3の割り当て例により割り当てられたコイル配置を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において周方向に7周に亘って図8に示した第3の割り当て例により割り当てられたコイル配置を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において基本スロット群を7スロットピッチとした場合における1個の基本スロット群におけるコイル配置のバリエーションを例示する展開断面図である。 本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において基本スロット群を13スロットピッチとした場合における1個の基本スロット群におけるコイル配置の第1の例を例示する展開断面図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第1の形態を説明する展開断面図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態において用いられるインサータ巻線装置を示す斜視図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態におけるインサータ巻線装置と環状コイルとの位置関係を示す斜視図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の環状コイルを有する固定子の製造方法の第2の形態を説明する上面図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態におけるインサータ巻線装置と第1のスロット群に相当する波巻コイルとの位置関係を示す斜視図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態におけるインサータ巻線装置と第2のスロット群に相当する波波巻コイルとの位置関係を示す斜視図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態におけるインサータ巻線装置と第1から第6のスロット群に相当する波巻コイルとの位置関係を示す斜視図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態において、第1から第6のスロット群を配置し終えた波巻コイルを示す上面図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第3の形態を説明する展開断面図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態における第1の平角線成形ステップを説明する斜視図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態における第2の平角線成形ステップを説明する斜視図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態において、波巻形状に成形された平角線が環状に巻かれた状態を示す斜視図である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態におけるコイル形成ステップを説明する斜視図(その1)である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態におけるコイル形成ステップを説明する斜視図(その2)である。 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子と回転子との位置関係を例示する断面図である。 本開示の実施形態による固定子を備えるM相交流電動機の外観を例示する図である。 環状コイルにおける巻線の定義を説明する図である。 波巻コイルにおける巻線の定義を説明する図である。
 以下図面を参照して、固定子、これを備えるM相交流電動機、及び固定子の製造方法について説明する。各図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。また、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は実施するための一つの例であり、図示された形態に限定されるものではない。
 また、本願明細書では、「・」は数の四則演算における乗算を表す演算子とする。なお、乗算を表す演算子「・」は、演算子「*」で表されてもよい。また、3つの正の整数M、N、Xに対し、M・Nと、Xとが互いに素の関係であるとは、M・NとXとの公約数が1以外にないことを意味する。このとき、MとXとの間、及びNとXとの間も、各々互いに素となる関係がある。また、M・NとXとの最小公倍数の値は、3つの整数を乗算したM・N・Xとなる性質がある。本開示の実施形態ではこれらの性質を利用する。
 まず、本開示の実施形態におけるコイル及び巻線の定義について説明する。
 図29は、環状コイルにおける巻線の定義を説明する図である。図29に示すように電流が流れる銅線などの線材を使用して、閉じた環状の形状をつくり、同一形状で連結して束で重なっているコイルを「環状コイル」と称する。環状コイル4は、固定子の鉄心(コア)3に設けられたスロット2に収容される部分である巻線41と、スロットに2に収容されない部分であるコイルエンド42とで構成される。1つのコイルから引き出される線材を引き出し線43と称する。特に、コイルとコイルとを結線するための引き出し線を渡り線と称する。巻線41は、1本の線材で構成されることもあれば、複数束ねた線材で構成されることもある。1つの環状コイルにおける巻線の線材の数を「巻数」と称する。
 図30は、波巻コイルの巻線の定義を説明する図である。波巻は、360度に渡る環状のコイルを波形状に曲げて固定子のスロットに巻装する方法である。図30に示すように、波巻コイル4は、固定子の鉄心3の軸方向の両端面に対して特定のスロットピッチで交互にコイルエンド42を形成しながらスロット2に巻装されるので、巻線41、コイルエンド42、及び引き出し線43のみで構成されることになる。波巻コイル4は、コイル間の渡り線が少ないこと、及び必要とするコイル数を少なくできることから、コイルエンド42も小さくできる利点がある。なお、波巻コイルの巻数は一般に1である。
 ここで、本開示の実施形態における電動機におけるM相交流、および巻線の+(プラス)巻線、-(マイナス)巻線について説明する。本開示の実施形態において、M相交流の電動機とは、振幅が同じかつ位相がM種類の異なる交流電流あるいは交流電圧が巻線に印加される電動機である。また、M相のうちの異なる相は互いに電気的に平衡しているものとする。電気的に平衡するM種類の位相とは、各々の位相が互いに360/M度ずつずれたM種類の位相を指す。
 また、ある1相の交流電流が流れるコイルの巻線は、コイルの巻線に流れる電流の方向に応じて、電流の位相が180度異なる2つの巻線に分けられる。例えば、図29に示す環状コイルを例にとり説明すると、1つの環状コイルにおける巻線41は、流れる電流の向きが異なる2つの巻線によって構成されている。一方の巻線41Pを「+巻線」と定義すると、もう一方の巻線41Nは、電気角で位相が180度異なる電流が流れる「-巻線」となる。各相の巻線の「+巻線」と「-巻線」とを明確に区別するとき、一般のM相交流において、各相の巻線は2倍の数だけ区別され、「+巻線」と「-巻線」まで区別された相を「相帯」と称する。
 従来の3相交流の電源により駆動される電動機を例にとり説明すると、3相交流の3相とは、U相、V相、W相という名称で区別され、各々の電流の大きさは同じかつ120度位相が異なり、電気的に平衡している。電動機の巻線に流れる電流は、各相のコイルの巻線を+巻線と-巻線に分けることができるので、各々を区別して、「-U」、「+U」、「-V」、「+V」、「-W」、「+W」の6相帯に分けられる。これら6相帯の巻線は、「-U」を基準に取ると、「-U」(0度)、「+V」(60度)、「-W」(120度)、「+U」(180度)、「-V」(240度)、「+W」(300度)の順に電気角で60度ずつ位相が異なる。電動機の固定子のスロットに配置される巻線にこれら6つの相帯を割り当てて電流を流すことで電磁気のアンペールの法則(右ねじの法則)にしたがって、離散的に配置された各巻線周りに磁界が生じ周期的な極性を固定子鉄心に発生させることが可能となる。電動機の巻線としては、電気的に平衡であれば十分なので、U相とV相とW相の巻線が互いに機械角で120度ずつ位置が回転対称(3回回転対称)となるように配置されることが多いが、「+U」、「-V」、「+W」、「-U」、「+V」、「-W」の6相帯を、互いに機械角で60度ずつ位置が回転対称(6回回転対称)となるように構成してもよい。なお、巻線の配置が6回回転対称を持つことが可能かどうかは、固定子のスロット数、回転子の極対数、またはスロットに収納される巻線の数(スロット内の層数)を均一に配置できるかなどによって制約を受ける。例えば明らかに6回回転対称とできない例として、スロット数が6の倍数でない場合がある。スロット数が6の倍数でない場合、6相帯を機械角で60度ずつ回転対称となるように配置することは物理的に不可能である。
 またさらに、M相交流の他の例として、5相交流の電源にて駆動される電動機を例とり説明すると、5相交流をA相、B相、C相、D相、E相の5つの相に区別すると、各々の相は順に電気角で72度ずつ電気的に位相が異なる。さらに電動機の各相の巻線にて、+巻線と-巻線とを区別すると、「-A」を基準として、「-A」(0度)、「+D」(36度)、「-B」(72度)、「+E」(108度)、「-C」(144度)、「+A」(180度)、「-D」(216度)、「+B」(252度)、「-E」(288度)、「+C」(324度)の順に電気角が36度ずつ異なる合計10相帯の電流が巻線に流れる。この10相帯を電気的に平衡となるように、電動機の固定子の巻線に割り当てることで、電動機は駆動可能となる。A相、B相、C相、D相、E相が割り当てられた巻線は、電気的に平衡となる必要があるため、各々の各相の巻線は互いに5回回転対称性を有するように配置される。すなわち、機械角にて72度ずつ位置が回転対称となるように巻線が配置される。配置される巻線は5回回転対称性を有していれば十分であるが、「-A」、「+D」、「-B」、「+E」、「-C」、「+A」、「-D」、「+B」、「-E」、「+C」の10相帯を区別して、これらが互いに10回回転対称の関係となるように巻線を配置し固定子を構成してもよい。ただし、その必要条件としてスロット数は、10(相数5の2倍)の倍数である必要がある。
 同様の原理で、9相交流、12相交流などのような多相交流を電源とする電動機も構成可能である。
 以下で説明する実施形態では、説明を簡明なものにするために、円筒状である固定子を直線的に展開した展開断面図を用いて説明する。展開断面図には、固定子の断面の上面から見た図と、固定子の側面から見た図が含まれる。固定子に設けられる各スロットには「スロット識別番号」が付与される。
 以下、本開示の実施形態による固定子、これを備えるM相交流電動機(Mは正の整数)、及び固定子の製造方法について説明する。ここでは、一例として本開示の実施形態によるM相交流電動機としてインナーロータ型の交流電動機については説明する。インナーロータ型の交流電動機では、固定子鉄心には、内周側に開口するスロットが形成される。なお、本開示の実施形態は、アウターロータ型のM相交流電動機にも適用可能であり、この場合は、固定子鉄心には、外周側に開口するスロットが形成される。
 本開示の実施形態によるM相交流電動機(Mは正の整数)の固定子は、固定子鉄心と、各々が溝形状に形成され固定子鉄心の周方向に配置されたM・N個(Nは正の整数)のスロットと、M相のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる複数のコイルと、を備える。
 本開示の実施形態では、M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、周方向に隣接するX個のスロットを1個の基本スロット群として、当該基本スロット群内のX個のスロットのうちのいずれかにコイルの巻線が配置される。M・Nで得られる値と正の整数Xとは互いにその関係を有するので、M・Nで得られる値と正の整数Xとの最大公約数は1である。また、X個のスロットのうちのいずれかに巻線が配置されて構成される基本スロット群が、固定子鉄心の周方向に繰り返し配置される。各基本スロット群におけるコイルは同一の形状を有し、すなわち、巻線が配置(収容)されることになるスロットのスロットピッチ(スロット周期)は、各基本スロット群において同一である。また、X個のスロットのうちのいずれかに巻線が配置されて構成される基本スロット群が、固定子鉄心の周方向にスロットピッチXの周期でM・N個繰り返し配置することで、M・N個のスロット全てに、巻線が配置されることになる。本開示の一態様によれば、様々な極数、スロット数、及び巻線配置の組み合わせを実現可能であるが、以下、具体的な例についていくつか列記する。
 まず、一例として、36(=M・N)スロットの3(=M)相交流電動機の固定子において、7(=X)個のスロットを基本スロット群に設定した場合のコイル配置について、図1~図12を参照して説明する。
 図1は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子における7スロットピッチからなる1個の基本スロット群におけるコイル配置を例示する展開断面図である。図1において、上段は上面から見た固定子1を示し、下段は側面から見た固定子1を示すが、これ以降の図においても同様に記載することがある。
 36スロットの3相交流電動機の固定子においては、相数Mは3であるので、Nは12となる。3(=M)・12(=N)で得られる値36に対して互いに素な正の整数Xとしては、1、5、7、11、13、17、19、23、25、29、31、及び35があるが、ここでは一例として、値36に対して互いに素な正の整数Xとして7を選定する。この場合、周方向に隣接する7(=X)個のスロット2を「基本スロット群」として規定する。基本スロット群におけるコイルの巻線の配置は7スロットピッチ内のスロット2のうちのいずれかに巻線41が配置さればよいが、図1では、一例として、スロット識別番号1及び4のスロット2に、巻線41が配置(収容)されて1つの環状コイルを構成している。すなわち、コイル4は、スロット識別番号1~7のスロット2からなる基本スロット群において、スロット識別番号1及び4のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる環状の線材にて構成される。なお、図1においては、引き出し線、及びスロット識別番号1~7のスロットからなる当該基本スロット群と隣接する他の基本スロット群への渡り線については、図示を省略している。
 図2は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において周方向に1周に亘って図1に示す7スロットピッチからなる基本スロット群が配置されたときのコイル配置を例示する展開断面図である。
 図2に示すように、固定子鉄心3の周方向に36スロットが並ぶ固定子鉄心3には、7スロットピッチからなる図1に示す基本スロット群を、当該周方向に1周に亘って、スロットピッチ7の周期で、5個繰り返し配置することができる。各基本スロット群におけるコイルは同一の形状を有し、すなわち、巻線が配置(収容)されることになるスロット2のスロットピッチ(スロット周期)は、各基本スロット群において同一である。図2において、1番目の基本スロット群ではスロット識別番号1及び4のスロット2に環状形状に成形されたコイル4が配置され、2番目の基本スロット群ではスロット識別番号8及び11のスロット2に環状形状に成形されたコイル4が配置され、3番目の基本スロット群ではスロット識別番号15及び18のスロット2に環状形状に成形されたコイル4が配置され、4番目の基本スロット群ではスロット識別番号22及び25のスロット2に環状形状に成形されたコイル4が配置され、5番目の基本スロット群ではスロット識別番号29及び32のスロット2に環状形状に成形されたコイル4が配置される。隣接する基本スロット群間のコイル同士は、渡り線にて結線される。基本スロット群は7(=X)のスロットピッチを有するので、36(=M・N)スロットの固定子鉄心3に、7スロットピッチの基本スロット群を5個配置したとしても(すなわち固定子鉄心3において周方向に1周に亘って基本スロット群が配置したとしても)、5番目の基本スロット群の終端はスロット識別番号35のスロット2となり、スロット識別番号36のスロット2には至らない。
 図3は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において、36個スロットを仮想的に252個に展開させ、7スロットピッチからなる基本スロット群が仮想的に36個分配置されたときのコイル配置を例示する展開断面図である。
 図3に示すように、固定子鉄心3の周方向の1周目のコイル配置については、図2を参照して説明した通り、1番目の基本スロット群から5番目の基本スロット群が配置される。
 5番目の基本スロット群に続く6番目の基本スロット群は、スロット識別番号36及び39のスロット2に環状形状に成形されたコイル4が配置される。以降はmを6以上の整数として、m+1番目の基本スロット群は、スロット識別番号「m・7+1」及び「m・7+4」のスロット2に環状形状に成形されたコイル4が配置され、mを6から251まで帰納的に繰り返すことで、仮想的な252個の各スロットに基本スロット群が36個均等に配置される。
 ここで、1から252の番号がついた仮想的なスロット識別番号について、各スロット識別番号を36個のスロット識別番号に射影する方法について説明する。各スロット識別番号をスロット数の36で除算しその余りを求め、その余りの値をスロット識別番号として各スロットに割り当て直す。なお、余りが0になる場合は、スロット識別番号は36とする。これらの操作により、252個のスロットの識別番号は全て1から36のうちのいずれかのスロット識別番号へ変換される。例えば、1、37、73、109、145、181、及び217については36で除算すると余りが1となるので、スロット識別番号1、37、73、109、145、181、及び217は、スロット識別番号1に射影できる。同様に、2、38、74、110、146、182、及び218については36で除算すると余りが2となるので、スロット識別番号2、38、74、110、146、182、及び218は、スロット識別番号2に射影できる。以降についても同様の操作によりスロット識別番号3、4、…、35のいずれかに射影できる。なお、36、72、108、144、180、216、及び252については36で除算すると余りが0であるが、これらについてはスロット識別番号を36とする。以上の操作より、固定子の36個の各スロットに基本スロット群が均等に配置される。
 1番目の基本スロット群のコイルの巻き始め及び36番目の基本スロット群のコイルの巻き終わりを除き、隣接する基本スロット群間のコイル同士は、渡り線にて結線される。
 252個の仮想的なスロットは、合計36・7個のスロットであるため、固定子の周方向に7周配置するものと考えれば、図1の基本スロット群におけるコイルと同一の形状を有するコイルが配置される基本スロット群を、図3に示すように36(=M・N)個繰り返し配置することで固定子鉄心3の周方向に7(=X)周に亘ってコイル4が配置され、最終的には36スロットの全てにコイル4の巻線が配置されることになる。このように、固定子鉄心3の周方向に基本スロット群を36個繰り返し配置することで、固定子鉄心3の周方向に7周に亘ってコイルが巻装されて36スロットの全てに巻線が配置されることになるのは、スロット数36とは互いに素の関係になる値「7」を基本スロット群のスロットピッチとして選定したからである。本開示の実施形態によれば、スロット数M・Nに対して互いに素な正の整数をXをスロットピッチとする基本スロット群とし、各基本スロット群においてはコイルは同一の形状を有するよう巻装し、このような基本スロット群を固定子鉄心の周方向にスロットピッチXの周期でM・N個繰り返し配置することで、M・N個のスロット全てに巻線を均等に配置することができる。なお、基本スロット群を、固定子鉄心3の周方向に36個ではなくこれより少ない数だけ繰り返し配置した3(=M)相交流電動機の固定子1を作成してもよい。
 図3に示すように、コイル4を、適宜、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルに割り当てることで、36スロットの3相交流電動機の固定子が完成する。
 ここで、36スロットの3相交流電動機の固定子の各相コイルの割り当て例について、いくつか列記する。以降では、基本スロット群が周方向に複数個連続して配置され、各基本スロット群が、コイルエンドまたは引き出し線によって電気的に接続されたものを「スロット群」と称し、各スロット群の各巻線に相帯「-U」、「+U」、「-V」、「+V」、「-W」、「+W」のいずれかを割り当てたものを「コイル群」と称する。
 図4は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において基本スロット群を7スロットピッチとした場合における各相コイルの第1の割り当て例を例示する展開断面図である。
 図4に示す第1の割り当て例では、図3を参照して説明した36(=M・N)個の基本スロット群を3(=M)等分した位置の渡り線を切断する(図中、破線の位置で切断。)。
 すなわち、固定子鉄心3の周方向の3周目に配置される12番目の基本スロット群と13番目の基本スロット群との間の渡り線を切断し、固定子鉄心3の周方向の5周目に配置される24番目の基本スロット群と25番目の基本スロット群との間の渡り線を切断する。そして、固定子鉄心3の周方向の1周目に配置される1番目の基本スロット群におけるスロット識別番号1のスロット2の巻線の引き出し線から始まり固定子鉄心3の周方向の3周目に配置される12番目の基本スロット群におけるスロット識別番号9のスロット2の巻線の引き出し線で終わるコイルを、第1のスロット群と呼び、第1相(例えばU相)のコイルに割り当てる。具体的には、1番目の基本スロット群の1つのコイルのスロット識別番号1のスロットの巻線に-U相を割り当てることで、そのコイルの他方の巻線は+U相の巻線となり、引き出し線によって連結された他の第1のスロット群に配置される巻線は-U相あるいは+U相が順次決定されていき、これにより第1のスロット群の各巻線の相帯が一意に決定される。これを第1のコイル群とする。また、固定子鉄心3の周方向の3周目に配置される13番目の基本スロット群におけるスロット識別番号13のスロット2の巻線の引き出し線から始まり固定子鉄心3の周方向の5周目に配置される24番目の基本スロット群におけるスロット識別番号21のスロット2の巻線の引き出し線で終わるコイルを第2のスロット群とし、第2相(例えばV相)のコイルに割り当てる。V相を割り当てられた第2のスロット群を第2のコイル群とする。また、固定子鉄心3の周方向の5周目に配置される25番目の基本スロット群におけるスロット識別番号25のスロット2の巻線の引き出し線から始まり固定子鉄心3の周方向の7周目に配置される36番目の基本スロット群におけるスロット識別番号36のスロット2の巻線の引き出し線で終わるコイルを第3のスロット群とし、第3相(例えばW相)のコイルに割り当てる。W相を割り当てられた第3のスロット群を第3のコイル群とする。以上の操作により、3つに分割されたスロット群に対して、スロット群の一端の引き出し線に相帯を割り当てることで、3つのコイル群が形成される。なお、図示の例は、交流電動機の相数が3であるので、コイル4に対し36個の基本スロット群を3等分して3相各相のコイルに割り当てたが、交流電動機の相数がMである場合は、コイル4に対し36個の基本スロット群をM等分してM相各相のコイルに割り当てればよい。
 図5は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において図4に示した第1の割り当て例により割り当てられた3相コイルの巻線配置を例示する展開断面図である。図5では、固定子の断面を上面から見ている。
 図3を参照して説明したコイル4に対し、図4を参照して説明した第1の割り当て例により3相各相のコイルを割り当てることにより、36個あるスロットのそれぞれに2つずつ巻線が均等に配置された2層巻コイルを有する固定子1が得られる。
 図6は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において基本スロット群を7スロットピッチとした場合における各相コイルの第2の割り当て例を例示する展開断面図である。
 図6に示す第2の割り当て例では、図3を参照して説明したコイル4に対し、36(=M・N)個の基本スロット群を3・2(=M・2)等分した位置の渡り線を切断する(図中、破線の位置で切断。)。
 すなわち、固定子鉄心3の周方向の2周目に配置される6番目の基本スロット群と7番目の基本スロット群との間の渡り線を切断し、1番目から6番目までの連続する基本スロット群を第1のスロット群とする。固定子鉄心3の周方向の3周目に配置される12番目の基本スロット群と13番目の基本スロット群との間の渡り線を切断し、7番目から12番目までの連続する基本スロット群を第2のスロット群とする。固定子鉄心3の周方向の4周目に配置される18番目の基本スロット群と19番目の基本スロット群との間の渡り線を切断し、13番目から18番目までの連続する基本スロット群を第3のスロット群とする。固定子鉄心3の周方向の5周目に配置される24番目の基本スロット群と25番目の基本スロット群との間の渡り線を切断し、19番目から24番目までの連続する基本スロット群を第4のスロット群とする。固定子鉄心3の周方向の6周目に配置される30番目の基本スロット群と31番目の基本スロット群との間の渡り線を切断し、35番目から30番目まで連続する基本スロット群を第5のスロット群とする。また、31番目から36番目までの連続する基本スロット群を第6のスロット群とする。これにより、コイル4が5カ所の切断箇所により6つのスロット群に分けられることになる。
 6つのスロット群は、固定子鉄心3の周方向に沿って順に、各相のコイルの巻線がスロット2に均等に割り当てられるよう6つの相帯、すなわち、第1のスロット群の1つ目のコイルの1つの巻線に第1相帯(例えば-U相)、第2のスロット群の1つ目のコイルの1つの巻線(第1スロット群と同じ位置の巻線)に第2相帯(例えば+V相)、第3のスロット群の1つ目のコイルの1つの巻線(第1スロット群と同じ位置の巻線)に第3相帯(例えば-W相)、第4のスロット群の1つ目のコイルの1つの巻線(第1スロット群と同じ位置の巻線)に第4相帯(例えば+U相)、第5のスロット群の1つ目のコイルの1つの巻線(第1スロット群と同じ位置の巻線)に第5相帯(例えば-V相)、第6のスロット群の1つ目のコイルの1つの巻線(第1スロット群と同じ位置の巻線)に第6相帯(例えば+W相)の順に割り当てられる。なお、図示の例は、交流電動機の相数が3であるので、コイル4に対し36個の基本スロット群を6等分して6相各相のコイルに割り当てたが、交流電動機の相数がMである場合は、コイル4に対し36個の基本スロット群をM・2等分してM・2相各相のコイルに割り当てればよい。これらの単純な操作によって相帯まで割り当てられた複数個のコイル群が得られる。各コイル群のコイルは、周方向に周期的に引き出し線によって接続されているため、各引き出し線の交差が発生しない。
 図7は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において図6に示した第2の割り当て例により割り当てられた3相コイルの巻線配置を例示する展開断面図である。図7では、固定子の断面を上面から見ている。
 図3を参照して説明したコイル4に対し、図6を参照して説明した第2の割り当て例により3相各相のコイルを割り当てることにより、36個あるスロットのそれぞれに2つずつ巻線が均等に配置された2層巻コイルを有する固定子1が得られる。
 続いて、本開示の実施形態の要である、基本スロット群を周方向に周期的に連続でM・N個配置するだけで、各スロットに巻線が均等に配置される理由について説明する。まずは類似する物理現象の例を用いて説明し、その次に、数学的な背景を説明する。
 類似する物理現象の1つの事例として、一般家庭で使用されるアナログ式時計(12時間時計)がある。アナログ式時計は時間を刻む機械であり、長針の分針が時刻の0から59までの「分」を表し、短針の時針が0から11までの時刻の「時」を表す。例えば、0時0分より5時間、時間が経過しているならば、分針は0を、時針は5を指す。また、時刻は11時59分の後、0時0分に戻る。すなわち、時計が刻む時間は12時間の周期性がある。
 アナログ時計の12時間時計の設定のもとで開始時刻を0時0分として、+5時間ずつ時刻を刻む(時刻を記録する)とすると、12時間の周期性があるため、0時0分→5時0分→10時0分→3時0分→8時0分→1時0分→6時0分→11時0分→4時0分→9時0分→2時0分→7時0分→0時0分の順に時刻が刻まれ、12種類の時刻を刻んだあと、もとの0時0分に戻る。0時0分から開始して5時間ずつ時刻を刻み、次に0時0分に戻る間、時針は時計を5回転回り、そのときの経過時間は12時間・5回転=60時間である。
 上述のように、0時0分を開始時刻として、+5時間ずつ時刻を刻むと、時刻は12種類の時刻を刻む一方で、時針は時計を5周する。また12と5との最小公倍数である60時間経過後にもとの時刻に戻る。この現象は刻む時刻が+5時間だけではなく、+7時間、+11時間、+13時間、+25時間など、12と互いに素な数を選択した場合も同様の現象となる。
 一方で、開始時刻を0時0分として、+6時間ずつ時刻を刻むとすると、0時0分→6時0分→0時0分→6時0分→…となり、0時0分と6時0分の2種類しか時は刻まれず、他の時刻は一切刻まれない。これは、12と6の最大公約数は6であり、6時間ずつ時間を刻むと、0時0分と6時0分の2つの同じ時刻で周期してしまうためである。
 「アナログ式時計の時針」の分針を省略し12時間時計ではなく、M・N時間時計とし、これを「M・N個のスロットを有する固定子」と捉え、かつ、「+X時間ずつ時刻を刻むこと」を、「周方向にXスロットピッチずつ周方向にスロットを巡回すること」と捉えると、M・N個のスロットの固定子を+Xスロットピッチずつ周方向にスロットを巡回するとき、Xの値がM・Nと互いに素となる数であるならば、スロット識別番号1からM・Nの全てのスロットを1回ずつ巡回し、M・N・Xの数だけスロットを跨いだ後にもとの位置に戻る。M・N・Xの数だけスロットを跨ぐ間に、各スロットを巡回する経路は固定子をX回転だけ回る。これはXの整数倍がM・Nと一致せず、Xの整数倍とM・Nの整数倍が始めて一致するM・N・X(M・NとXの最小公倍数)の数だけスロットを跨いで始めてもとの位置に戻るためである。しかも、固定子のスロット数M・Nは相数Mの倍数であるため、「巡回するスロット識別番号の経路」は均等にM相で割れる。
 ここで上述の「巡回するスロット識別番号の経路」を「スロット軌道」と称する。例えば、スロット数M・N=36、X=7とする場合、スロット識別番号1を初項として、+7ずつ数字を加算するスロット軌道を「1→8→15→22→29→36→7→14→21→28→35→6→13→20→27→34→5→12→19→26→33→4→11→18→25→32→3→10→17→24→31→2→9→16→23→30→」(→1、以降繰り返し)とし、36個のスロット識別番号の数列と、矢印記号「→」で表す。このスロット軌道をM相で均等に割るとは、上述のスロット軌道をM等分することを意味するとする。すなわち、M=3の3相交流の場合、「1→8→15→22→29→36→7→14→21→28→35→6→」、「13→20→27→34→5→12→19→26→33→4→11→18→」、「25→32→3→10→17→24→31→2→9→16→23→30→」。これらの均等に3分割されたスロット軌道に各相帯を与えることで、電気的に平衡する電動機を構成することが可能である。例えば、「1→8→15→22→29→36→7→14→21→28→35→6→」に-U相を割り当て、「13→20→27→34→5→12→19→26→33→4→11→18→」に-V相を割り当て、「25→32→3→10→17→24→31→2→9→16→23→30→」に-W相を割り当てることで電気的に平衡する交流電動機を構成可能である。
 上述のスロット軌道について、開始のスロット識別番号を4ではなく、他のスロット識別番号の数字を選んでも同様の現象が起きる。例えば、スロット識別番号4をスタートとし、+7ずつ加算するとスロット軌道は、「4→11→18→25→32→3→10→17→24→31→2→9→16→23→30→1→8→15→22→29→36→7→14→21→28→35→6→13→20→27→34→5→12→19→26→33→」(→4、以降繰り返し)となる。この初項が異なる2つ目のスロット起動を3相で均等に割り、+U相、+V相、+W相を割り与える。すなわち、「4→11→18→25→32→3→10→17→24→31→2→9→」に+U相を割り当て、「16→23→30→1→8→15→22→29→36→7→14→21→」に+V相を割り当て、「28→35→6→13→20→27→34→5→12→19→26→33→」に+W相を割り当てる。スロット軌道の初項を他の数字に変えても、同様に全てのスロット番号を巡回する。
 分割されて-U相、-V相、-W相が割り当てられた3つのスロット軌道のスロット識別番号と、分割されて+U相、+V相、+W相が割り当てられた3つのスロット軌道のスロット識別番号とを合わせ、固定子にスロットに収容し配置される巻線と見なすと、各スロットに巻線が2つずつ配置される。分割したスロット軌道によって割り当てられた各相帯の巻線は、図5の第1の割り当て例の巻線の配置と完全に一致する。
 なお、スロット軌道を2Mで分割、あるいは2以上の整数×Mで分割してもよい。例えば、スロット数を36、X=7とし、初項を1としたスロット軌道において、3の2倍である6つで分割する場合、「1→8→15→22→29→36→」に-U相を割り当て、「7→14→21→28→35→6→」に+V相を割り当て、「13→20→27→34→5→12→」に-W相を割り当て、「19→26→33→4→11→18→」に+U相を割り当て、「25→32→3→10→17→24→」に-V相を割り当て、「31→2→9→16→23→30→」に+W相を割り当てる。一方で、初項を+3ずらしたスロット軌道にて「4→11→18→25→32→3→」に+U相を割り当て、「10→17→24→31→2→9→」に-V相を割り当て、「16→23→30→1→8→15→」に+W相を割り当て、「22→29→36→7→14→21→」に-U相を割り当て、「28→35→6→13→20→27→」に+V相を割り当て、「34→5→12→19→26→33→」に-W相を割り当てることで、図6及び図7に示した第2の割り当て例と同じ巻線配置を得る。
 なお、Xが、固定子のスロットの数M・Nと互いに素な数でないならば、スロット軌道は全てのスロットを巡回することができない。例えば、スロット数=36、X=18である場合、識別番号1のスロットを初項として、+18スロットピッチずつ周方向に巡回すると、スロット軌道は「1→19→1→19→…」となり、スロット識別番号1のスロット及びスロット識別番号19のスロットの2つのスロットのみしか巡回しない。これは36と18との最大公約数が18であるためである。したがって、スロット軌道は、18スロットピッチずつ巡回してしまい、全てのスロットを均等に巡回しないし、スロット軌道は全スロットを均等に3相で割ることもできない。
 スロット数M・NとXが互いに素な関係である場合、スロット軌道は、その軌道のスタートのスロット識別番号(スロット軌道の初項)が異なる場合でも、全てのスロット識別番号を経由することは変わらない。したがって、次の命題1、命題2が成立する。
 [命題1]
 基本スロット群を固定子のスロットに、スロットピッチXでM・N個連続して繰り返し配置した際、1つのスロットに配置される巻線の数(1つのスロットの層数)は、基本スロット群に配置される巻線の合計数に一致する。
 [命題2]:(命題1と同値)
 基本スロット群のX個の各スロットに配置される巻線の巻数をn1、n2、…、nXとすると、基本スロット群を固定子のスロットスロットピッチXでM・N個連続して繰り返し配置した際、各スロットに配置される巻数はn1+n2+…+nXである(n1、n2、…、nXは0以上の整数。)。
 命題1及び命題2は後述する命題4により厳密に証明される。また例えば、本開示の実施形態である図4の場合、1つの基本スロット群に配置される巻線の数は2であるため、初項の異なる2つのスロット軌道が存在すると考えれば、全てのスロットの各々には2つずつ巻線が配置され2層巻のスロットとなる。また、命題2から固定子に配置する1つのスロットあたりの巻数を用意に調整することが可能である。例えば1つのスロットに配置される巻数を多くしたい場合、基本スロット群に配置する巻数を多くすることで固定子全体の総巻数を簡易に多くできる。
 以下では、数学の代数学に基づき説明する。集合論、群論、環論及び環上の加群の基礎、各定理の詳細など、種々の基礎事項は代数学の入門書を参考にされたい(例えば、非特許文献1(雪江明彦 著、「代数学1 群論入門」、日本評論社、2019年2月15日)、非特許文献2(雪江明彦 著、「代数学2 環と体とガロア理論」、日本評論社、2019年10月25日)など)。各式における記号「=の上に~」との表記は、左辺の集合の要素と、右辺の集合の要素が1:1に対応することを表している。
 一般に代数学の環論にて互いに素な整数の性質として式1に示す中国式剰余定理が知られている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
 ここでpとqとは互いに素な整数である。Zは整数の集合を表し整数環と呼ぶ。pZ、qZ、(p・q)Zは、各々pの倍数の集合、qの倍数の集合、p・qの倍数の集合を表しイデアルと呼ばれている。また、Z/pZ、Z/qZ、Z/(p・q)Zは各々整数をpで割った余りの集合、整数をqで割った余りの集合、整数をp・qで割った余りの集合を示し、剰余環と呼ばれている。Z/pZ、Z/qZ、Z/(p・q)Zの各剰余環の要素を表示すると、式2~式4のようになる。各剰余環の要素は整数を除算した余りの数であり、一般の整数と区別するため、各式では「数字の上にバーを追加した文字」と表記する。また、剰余環にて余りが0になる要素については、0と表記せずp、q、p・qを用いることにする。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000004
 式1の「×」は集合の直積を表し、2つの集合の2成分を同時に表示している。また、式1の両辺の関係は、集合の全単射となる写像fとその逆像f-1(f:Z/pZ×Z/qZ→Z/(p・q)Z、f-1:Z/(p・q)Z→Z/pZ×Z/qZ)が存在することを意味する。
 また、式1の定理を前提に、次の命題3が成立する。
 [命題3]
 写像φ:Z/pZ→Z/(p・q)Zが等価な濃度の全射であるとき、写像ψ:Z/(p・q)Z→Z/qZの全射を経由して、それらの合成写像ψφ:Z/pZ→Z/qZも等価な濃度の全射となる。
 また、整数環Zにおける加法「+」を演算としスカラー倍を定めた集合をZ加群とする。命題3と同様にZ/pZの剰余環上のZ加群をSPZとし、Z/qZの剰余環上のZ加群をTqZ、Z/(p・q)Zの剰余環上のZ加群をU(p・q)Zとするとき、命題3を整数環上のZ加群の線形写像(加法の演算とスカラー倍を保つ写像)に適用した次の命題が成立する。
 [命題4]
 写像φ’:SpZ→U(p・q)Zが等価な濃度の全射であるとき、写像ψ’:U(p・q)Z→TqZの全射を経由して、それらの合成写像ψ’φ’:SpZ→TqZも等価な濃度の全射となる。
 ここで、「等価な濃度の全射」とは、集合AからBへの全射の写像F:A→Bにおいて、集合Aの各要素a1、a2、…、anのうち、Bの一つの要素bと、F(ai)=F(aj)=F(ak)…=bとなる関係にて、bに射影される集合Aの要素(ai、aj、ak、…)の数が、集合Bの任意の要素bにおいて等しくなる全射とする。すなわち等価な濃度の全射とは、集合Bの異なる任意の2要素b1、b2へ移されるAの要素の数は常に等しい全射の写像である。
 命題3及び命題4は、式1に示す中国式剰余定理と式5に示す各剰余環及び整数環との包含関係にて、環あるいは加群の第1~3同型定理を適用し、等価な濃度の全射を前提とすることにより証明される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000005
  pZとqZは整数環Zの部分集合でありイデアルでもあるので各々の等価性から環の第2同型定理より、式6及び式7が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000006
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000007
  式6及び式7を式8及び式9に示す第3同型定理に適用する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000008
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000009
  式8及び式9は剰余環Z/(p・q)Zにおいて、剰余環Z/qZまたはZ/pZで同値関係をつくりグループ分けされた剰余環は、各々Z/pZ、Z/qZに同型であることを意味する。さらに式8及び式9にて、第1同型定理より、Kerφ”=Z/qZ、あるいはKerψ”=Z/pZを核とする全射φ”:Z/(p・q)Z→Z/pZ、ψ”:Z/(p・q)Z→Z/pZの存在は明らかであり、あとは全射φ”:Z/(p・q)Z→Z/pZにて、その逆像φ”-1:Z/pZ→Z/(p・q)Zに相当する写像を構成できればよい。全射の逆像を取る方法のひとつとして、前述の等価な濃度の全射を適用することにより命題3が成立する。また、各々の剰余環上のZ加群においても同様の証明を適用し命題4を得る。
 命題3及び命題4は、Z/pZの要素をZ/qZの要素に射影させる際、写像:Z/pZ→Z/(p・q)Zが均一に写されるならば、Z/(p・q)Z→Z/qZも同様に均一に写される写像が必ず存在し、結果としてZ/pZの要素はZ/qZの要素に均一に射影されることを示している。例えば、スロット数を36とし、それに互いに素となる整数Xを7として、基本スロット群の識別番号の集合を剰余環Z/7Zと捉え、固定子のスロット識別番号の集合を剰余環Z/36Zと捉える。ここで、剰余環Z/7Zから剰余環Z/36Zへの写像を考えたとき、Z/7Zの要素数は7個、Z/36Zの要素数は36個なので、各要素を1:1に対応させる写像を構成することは単純にはできないが、Zから7Zと36Zとの共通部分である252Zへの自然な準同型として構成されるZ/252Zに、Z/7Zの構造を一度均一に射影し、均一に射影されたZ/252Zの各要素を36で除算しその余りの値によってグループを分けることで、Z/252Zの構造が均一にZ/36Zへ射影される。しかもその写像は等価な濃度の全射である。
 命題3及び命題4を図1、図2及び図3を用いて説明すると次の通りである。図1に示す基本スロット群の各スロットを、固定子の36個のスロットに均等に配置しようとしても、図2に示すように固定子のスロットの数と、基本スロット群のスロットの数の倍数とが一致しないため、35個のスロットまでしか基本スロット群を配置できない。固定子のスロット1周期分のみに基本スロット群を配置するのではなく、図3に示すように固定子にて36個のスロットを7倍して、合計252個の仮想的なスロットがあるものと考え、7スロット分に相当する基本スロット群を36個複写して、基本スロット群内のスロット識別番号の順序関係を保ったまま各基本スロット群を連続して繋ぎ、合計252個のスロットとした後、固定子の仮想的な252個の各スロットへ配置(射影)することが可能となる。また、均等に基本スロット群が配置された仮想的な252個の各スロットに順に1~252の番号を付け、その番号を36で除算し、その余りの値を新規のスロット識別番号とすることで、1~36のスロット識別番号が与えられ(このとき除算の余りが0となるものは36と考えるものとする)、252個のスロットを均等に36個のスロットへ対応付けること(射影すること)が可能となる。結果として、7スロット分に相当する基本スロット群の構造が、均等に固定子の36個のスロットへ射影される。命題3あるいは命題4は7個スロットを有する基本スロット群から252個のスロットへの均等な射影方法(等価な濃度の全射)が存在するならば、252個のスロットから36個のスロットへの均等な射影方法が必ず存在することを保証する。252個のスロットから36個のスロットへの射影方法としては、252個のスロット識別番号をスロット数の36で割った余りが等しい値でグループを纏めることで、36スロットへの射影が一意に決まる。
 なお、第1の割り当て例を示した図5と第2の割り当て例を示した図7とを比較すると、同じ7スロットピッチの基本スロット群における巻線配置であったとしても、各相コイルの割り当ての仕方が異なると、結果として各スロットの巻線配置が異なることが分かる。一般に巻線を配置した固定子の磁極の極数を調べるための指標として、巻線係数が知られている。交流電動機の1次巻線係数によって、固定子の極性を把握することができる。巻線係数は、固定子のスロットの電気角での中心角を位置の離散変数として、固定子の各スロットに配置された1相の各巻線の巻数を離散フーリエ変換し、さらにその演算結果を巻線の合計巻数で除算して規格化し、絶対値を取ることで得られる。巻線係数は0から1の値を取り、回転子の極数の2極分(=1極対分)の中心角が、離散フーリエ変換時の1波長分(巻線係数の1次成分の周期)に相当する。1次巻線係数が大きいほど交流電動機のトルクが大きくなる。一方で、高次巻線係数が小さいほど交流電動機のトルクの脈動(トルクリップル)が小さくなる。例えば、電動機のトルクを大きくするため、磁石量を増やすなど回転子における1極当たりの磁束量を大きく増加させたとしても、高次の巻線係数の値が小さいのであれば、トルクを大きくしてもトルクの脈動は小さくなる。また、特に3の倍数次の巻線係数は、鉄損の低減にも影響を与える。トルクを大きくする一方で鉄損を低減させたい場合は、3の倍数次の巻線係数を低減させた配置を選択すればよい。表1に、回転子の磁極を10極として、第1の割り当て例による巻線配置の巻線係数と、第2の割り当て例による巻線配置の巻線係数とを示す。また、比較のため後述する第3の割り当て例による巻線配置の巻線係数も併せて示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
 第1の割り当て例による巻線配置の1次巻線係数と第2の割り当て例による巻線配置の1次巻線係数とを比較すると、第2の割り当て例による巻線配置の1次巻線係数の方が、第1の割り当て例による巻線配置の1次巻線係数よりも大きいことから、交流電動機のトルクが大きくなることが分かる。このことは、36(=M・N)個の基本スロット群の分割数が大きいほど、巻線係数を大きくできることを示している。また、第2の割り当て例による巻線配置及び第1の割り当て例による巻線配置のいずれの場合も高次巻線係数は0に近く、一般的な従来の交流電動機と比べてかなり小さい。このことは、毎極毎相スロット数」(スロット数/(極数・相数))が、整数ではなく既約分数となる分数スロット型交流電動機の特徴をよく現わしている。
 なお、一般に巻線係数について、固定子に配置されるコイルのコイルピッチが全て同じとすることが可能であれば、「巻線係数」=(「コイルの巻数を係数とするコイル中心位置の複素ベクトルの平均和」)・(「1つのコイルのコイルピッチによる位相差による低減」)の2項の乗算で表すことが可能である。「コイルの巻数を係数とするコイル中心位置の複素ベクトルの平均和」の項は分布巻係数と呼ばれ、「1つのコイルのコイルピッチによる位相差による低減」の項は短節係数と呼ばれている。特に分数スロット型交流電動機では、高次の分布巻係数の値を小さくすることが可能な特徴がある。
 基本スロット群においては、任意の位置に巻線を配置することができる。上述した実施形態では、7スロットピッチからなる基本スロット群において1つの環状コイルとなるように配置したが、例えば次に示す第3の割り当て例のように2つの環状コイルとなるように巻線を配置してもよい。結果として、各々の本開示の実施形態では巻線係数が異なる。電動機の使用用途に応じて必要な特性が得られるように各巻線配置を選択すればよい。
 図8は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において基本スロット群を7スロットピッチとした場合における第3の割り当て例を例示する展開断面図である。図8において、上段は上面から見た固定子1を示し、下段は側面から見た固定子1を示す。
 7スロットピッチからなる基本スロット群において、例えば、2つの環状コイルが配置される。コイル4は、スロット識別番号1~7のスロット2からなる基本スロット群において、スロット識別番号1及び4のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第1の環状コイルと、スロット識別番号4及び7のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第2の環状コイルと、が設けられる。スロット識別番号4のスロット2内において第1の環状コイルから延びる線材と第2の環状コイルへ向かう線材とが結線されることで、基本スロット群において8の字状の環状コイルが形成される。
 図9は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において周方向に1周に亘って図8に示した第3の割り当て例により割り当てられたコイル配置を例示する展開断面図である。
 図10は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において周方向に7周に亘って図8に示した第3の割り当て例により割り当てられたコイル配置を例示する展開断面図である。第3の割り当て例では、第2の割り当て例と同じように36個の基本スロット群を6つのスロット群に分け、各々のスロット群の1つの巻線に6種類の相帯を割り当て6つのコイル群を得る。図10では、固定子の断面を上面から見ている。
 図9に示すように、固定子鉄心3の周方向に36スロットが並ぶ固定子鉄心3には、7スロットピッチからなる図8に示す基本スロット群を、当該周方向に1周に亘って5個繰り返し配置することができる。図9は基本スロット群の中の構成を除いて図2と同じ基本スロット群の配置であり、基本スロット群を図3のように繰り返し、図6と同じ相帯の組み合わせを取ることで図11の巻線配置を得る。図10に示されるように36スロットの全てにコイル4の巻線が配置されることになる。36スロットの全てに巻線が配置されたコイル4を例えば均等に6分割して得られた6つのコイル群を3相各相のコイルを割り当てることにより、図10に示すように36個あるスロットのそれぞれに4つずつ巻線が均等に配置された4層のスロットを有する固定子1が得られる。
 図11は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において基本スロット群を7スロットピッチとした場合における1個の基本スロット群におけるコイル配置のバリエーションを例示する展開断面図である。図11において、上段は上面から見た固定子1を示し、下段は側面から見た固定子1を示す。
 図11に示すパターンAの基本コイル群では、スロット識別番号2及び6のスロット2に、巻線41が収容されて1つの環状コイルが構成されている。すなわち、コイル4は、スロット識別番号1~7のスロット2からなる基本スロット群において、スロット識別番号2及び6のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる環状の線材にて構成される。なお、命題1により、図11に示すパターンAの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は2であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は2である。
 図11に示すパターンBの基本コイル群では、スロット識別番号2及び6のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第1の環状コイルと、スロット識別番号3及び5のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第2の環状コイルと、が設けられる。第1の環状コイルのスロット識別番号6のスロット2の巻線から延びる線材と第2の環状コイルのスロット識別番号3のスロット2の巻線へ向かう線材とが結線されることで、基本スロット群において2重の環状コイルが形成される。なお、命題1により、図11に示すパターンBの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は6であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は6である。
 図11に示すパターンCの基本コイル群では、スロット識別番号1及び5のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第1の環状コイルと、スロット識別番号2及び6のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第2の環状コイルと、が設けられる。第1の環状コイルのスロット識別番号5のスロット2の巻線から延びる線材と第2の環状コイルのスロット識別番号2のスロット2の巻線へ向かう線材とが結線されることで、基本スロット群において2重の環状コイルが形成される。なお、命題1により、図11に示すパターンCの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は10であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は10である。
 図11に示すパターンDの基本コイル群では、スロット識別番号4及び2のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第1の環状コイルと、スロット識別番号4及び7のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第2の環状コイルと、が設けられる。ただし、第1の環状コイルと第2の環状コイルとでコイルの巻き方向が異なる。スロット識別番号4のスロット2内において第1の環状コイルから延びる線材と第2の環状コイルへ向かう線材とが結線されることで、基本スロット群において8の字状の環状コイルが形成される。なお、命題1により、図11に示すパターンDの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は8であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は8である。
 図11に示すパターンEの基本コイル群では、スロット識別番号1及び6のスロット2に巻線が配置されるよう波巻コイル4が形成される。なお、命題1により、図11に示すパターンEの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は2であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は2である。
 図11に示すパターンFの基本コイル群では、スロット識別番号1、3、5及び7のスロット2に巻線が配置されるよう波巻コイル4が形成される。なお、命題1により、図11に示すパターンFの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は4であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は4である。
 上述した7スロットピッチからなる基本スロット群の各パターンは、一例であって、基本スロット群における7スロットピッチ内のスロット2のうちのいずれかに巻線が配置さればよく、他のパターンの巻線配置も可能である。
 図12は、本開示の実施形態による36スロットの3相交流電動機の固定子において基本スロット群を5スロットピッチとした場合における1個の基本スロット群におけるコイル配置のバリエーションを例示する展開断面図である。図12において、上段は上面から見た固定子1を示し、下段は側面から見た固定子1を示す。
 36スロットの3相交流電動機の固定子においては、相数Mは3であるので、Nは12となる。3(=M)・12(=N)で得られる値36に対して互いに素な正の整数Xとしては、1、5、7、11、13、17、19、23、25、29、31、及び35があるが、ここでは一例として、値36に対して互いに素な正の整数Xとして5を選定する。
 図12に示すパターンAの基本コイル群では、スロット識別番号2及び4のスロット2に、巻線41が収容されて1つの環状コイルが構成されている。すなわち、コイル4は、スロット識別番号1~5のスロット2からなる基本スロット群において、スロット識別番号2及び4のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる環状の線材にて構成される。なお、命題1により、図12に示すパターンAの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は2であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は2である。
 図12に示すパターンBの基本コイル群では、スロット識別番号1及び5のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第1の環状コイルと、スロット識別番号2及び4のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第2の環状コイルと、が設けられる。第1の環状コイルのスロット識別番号5のスロット2の巻線から延びる線材と第2の環状コイルのスロット識別番号2のスロット2の巻線へ向かう線材とが結線されることで、基本スロット群において2重の環状コイルが形成される。なお、命題1により、図12に示すパターンBの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は8であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は8である。
 図12に示すパターンCの基本コイル群では、スロット識別番号1及び4のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第1の環状コイルと、スロット識別番号2及び5のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第2の環状コイルと、が設けられる。第1の環状コイルのスロット識別番号4のスロット2の巻線から延びる線材と第2の環状コイルのスロット識別番号3のスロット2の巻線へ向かう線材とが結線されることで、基本スロット群において2重の環状コイルが形成される。なお、命題1により、図12に示すパターンCの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は10であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は10である。
 図12に示すパターンDの基本コイル群では、スロット識別番号3及び1のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第1の環状コイルと、スロット識別番号3及び5のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる第2の環状コイルと、が設けられる。ただし、第1の環状コイルと第2の環状コイルとでコイルの巻き方向が異なる。スロット識別番号3のスロット2内において第1の環状コイルから延びる線材と第2の環状コイルへ向かう線材とが結線されることで、基本スロット群において8の字状の環状コイルが形成される。なお、命題1により、図12に示すパターンDの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は10であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は10である。
 図12に示すパターンEの基本コイル群では、スロット識別番号1及び5のスロット2に巻線が配置されるよう波巻コイル4が形成される。なお、命題1により、図12に示すパターンEの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は2であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は2である。
 図12に示すパターンFの基本コイル群では、スロット識別番号1、3及び5のスロット2に巻線が配置されるよう波巻コイル4が形成される。なお、命題1により、図12示すパターンFの上面にて、基本スロット群の巻線の合計数は3であるため、基本スロット群をM・N個配置したとき、各スロットの層数は3である。
 上述した5スロットピッチからなる基本スロット群の各パターンは、一例であって、基本スロット群における5スロットピッチ内のスロット2のうちのいずれかに巻線が配置さればよく、他のパターンの巻線配置も可能である。また、基本スロット群を配置する固定子のスロット数は36に限定されず、他のスロット数M・Nにおいても図11に示すA~Fのパターン(X=7)、図12に示すA~Fのパターン(X=5)はM・NとXとが互いに素な関係であれば適用可能である。
 続いて、本開示の実施形態による三相交流電動機の固定子の製造方法について、図13~図26を参照して説明する。以下の説明は、上述した各極数及び各スロット数を有する三相交流電動機について同様に成り立つ。
 まず、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第1の形態について説明する。
 図13は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第1の形態を説明する展開断面図である。ここでは、一例として、36スロットの3相交流電動機において7スロットピッチからなる基本スロット群を備える固定子の製造方法について説明する。
 まず、固定子鉄心形成ステップにおいて、周方向に配置された36(=3・12)個のスロットを有する固定子鉄心を形成する。なお、この固定子鉄心を形成する工程においては、固定子鉄心とコイルとの間を電気的に絶縁する絶縁部材を固定子鉄心に装着させる場合もあるが、本実施形態の説明では省略する。
 次いで、巻線配置ステップにおいて、36(=3・12=M・N)に対して互いに素な正の整数である7(=X)個が周方向に隣接するスロットのうちのいずれかに巻線を配置することで得られる基本スロット群を、周方向に繰り返し配置する。
 例えば、図13に示すように、スロット識別番号1~7のスロット2からなる1番目の基本スロット群において、スロット識別番号1及び4のスロット2に収容される部分である巻線とスロット2に収容されない部分であるコイルエンドとからなる環状コイルを形成する。そして、1番目の基本スロット群の巻線配置と同じ基本スロット群を、固定子鉄心3の周方向に36(=3・12=M・N)個繰り返し配置していくことで、36個のスロット全てに巻線を均等に配置することができる。図13では、図面を簡明にするために、固定子鉄心3の周方向に1周に亘って5個繰り返し配置した場合を示している。なお、基本スロット群を、固定子鉄心3の周方向に36個ではなくこれより少ない数だけ繰り返し配置した3(=M)相交流電動機の固定子1を作成してもよい。
 続いて、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態について説明する。
 図14は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態において用いられるインサータ巻線装置を示す斜視図である。
 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態においては、インサータ巻線装置500が用いられる。インサータ巻線装置500は、インナーロータ型の固定子鉄心3の内径よりわずかに小さい外径を有し、固定子鉄心3のティースの歯先と同じ幅の形状を有するブレード501が設けられている。ブレード501の個数は、製造するM相交流電動機の固定子のスロットの個数に対応する。
 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態では、まず、固定子鉄心形成ステップにおいて、円筒状の中空と、周方向に配置されたM・N個のスロットと、を有する固定子鉄心を形成する。次いで、ブレード準備ステップにおいて、M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、インサータ巻線装置500内において周方向に隣接するX個のブレード501を1個の基本ブレード群とするときの当該基本ブレード群内のX個のブレード501のうちのいずれかに巻線を配置する。ブレード準備ステップでは、上記基本ブレード群を、インサータ巻線装置500の周方向に、M・N個配置する。次いで、巻線配置ステップにおいて、基本ブレード群内のブレード501に巻線が配置されたインサータ巻線装置500を固定子鉄心3に挿入することで、ブレード501に配置された巻線を、固定子1の周方向に隣接するX個のスロット2を1個の基本スロット群としたときの当該基本スロット群内のX個のスロット2のうちのいずれかへ移し替えて巻線をスロット2に配置する。
 環状コイル及び波巻コイルのいずれについても、第2の形態によるインサータ巻線装置を用いた固定子の製造方法は適用可能である。
 第2の形態において、環状コイルを有する固定子は、インサータ巻線装置を用いて次のように製造することができる。
 図15は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態におけるインサータ巻線装置と環状コイルとの位置関係を示す斜視図である。
 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態では、環状に成形したコイル4をブレード501に掛ける。例えば36スロットの3相交流電動機の固定子の基本スロット群のスロットピッチXを7とする場合、ブレード準備ステップにおいて、インサータ巻線装置500内において周方向に隣接する7(=X)個のブレードを1個の基本ブレード群とするときの当該基本ブレード群内の7(=X)個のブレード501のうちのいずれかに巻線を配置する。図15では、一例として、図1に示す7スロットピッチからなる基本スロット群における3スロット分の巻線配置に対応するように、3個のブレード501に環状のコイル4が掛けられた状態を示している。
 図16は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の環状コイルを有する固定子の製造方法の第2の形態を説明する上面図である。
 ブレード準備ステップでは、上記基本ブレード群を、インサータ巻線装置500の周方向に、M・N個配置する。例えば36スロットの3相交流電動機の固定子の基本スロット群のスロットピッチXを7とする場合、図16に示すように、ブレード準備ステップの処理1において、図1に示す7スロットピッチからなる基本スロット群における3スロット分の巻線配置に対応するように、7(=X)個のブレードからなる基本ブレード群において3個のブレード501に環状のコイル4-1を掛ける。次いで処理2において、環状のコイル4-1を配置した基本ブレード群に対して周方向に隣接する基本ブレード群に環状のコイル4-2を掛ける。次いで処理3において、環状のコイル4-2を配置した基本ブレード群に対して周方向に隣接する基本ブレード群に環状のコイル4-3を掛ける。次いで処理4において、環状のコイル4-3を配置した基本ブレード群に対して周方向に隣接する基本ブレード群に環状のコイル4-4を掛ける。次いで処理4において、環状のコイル4-3を配置した基本ブレード群に対して周方向に隣接する基本ブレード群に環状のコイル4-4を掛ける。次いで処理5において、環状のコイル4-4を配置した基本ブレード群に対して周方向に隣接する基本ブレード群に環状のコイル4-5を掛ける。次いで処理6において、環状のコイル4-5を配置した基本ブレード群に対して周方向に隣接する基本ブレード群に環状のコイル4-6を掛ける。図16では図示していないがコイル4-1からコイル4-6は渡り線により繋がれている。またコイル4-1からコイル4-6の装着により、たとえば本開示の第2の実施形態の例における第一のスロット群に相当するコイル4が装着完了となる。以降、図16では図示を省略するが処理6以降も同様の処理を繰り返し、最終的には36(=M・X)個の基本ブレード群に環状のコイルを配置する。そして、巻線配置ステップにおいて、基本ブレード群内のブレード501に巻線が配置されたインサータ巻線装置500を固定子鉄心3に挿入することで、ブレード501に配置された巻線を、周方向に並ぶ36(=M・X)個の基本スロット群内のスロット2へ移し替えて環状コイルの巻線をスロット2に配置する。
 上述のインサータ巻線装置を用いた製造方法ならば、図14のブレード501にてZ軸を回転軸として、一定の角度ずつ回転し繰り返しコイルを挿入することで、固定子の全てのコイル4がブレード501に配置されることになる。
 第2の形態において、波巻コイルを有する固定子は、インサータ巻線装置を用いて次のように製造することができる。なお、本第2の形態ではスロット群の数について合計6つの場合を想定する。
 図17~図19は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態におけるインサータ巻線装置とブレード準備ステップで配置される波巻コイルとの位置関係を示す斜視図であって、図17は第1のスロット群に相当する波巻コイルを示し、図18は第2のスロット群に相当する波巻コイルを示し、以降、同様に第3から第6のスロット群に相当する波巻コイルをブレードに掛けた状態を図19に示す。図20は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態において、第1から第6のスロット群を配置し終えた波巻コイルを示す上面図である。
 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第2の形態では、波巻形状に成形したコイル4をブレード501に掛ける。例えば36スロットの3相交流電動機の固定子の基本スロット群のスロットピッチXを7とする場合、ブレード準備ステップにおいて、インサータ巻線装置500内において周方向に隣接する7(=X)個のブレードを1個の基本ブレード群とするときの当該基本ブレード群内の7個のブレード501のうちのいずれかにコイル4が掛けられる。図17~図19では、一例として、基本スロット群の7スロットピッチに対応する長さを波巻コイル4の1周期分とし、当該1周期において4スロットと3スロットとで交互に波打つよう、基本ブレード群において3個分のブレード501にコイル4が掛けられ、4個分のブレード501に相当する長さのコイル4がブレード501の外に配置される。図17~図19に示すように、1周ごとに波巻形状に成形されたコイル4をブレードに配置していき、図20に示すように最終的には7周分の波巻形状のコイル4がブレード501に掛けられる。そして、巻線配置ステップにおいて、基本ブレード群内のブレード501に巻線が配置されたインサータ巻線装置500を固定子鉄心3に挿入することで、ブレード501に配置された巻線を、周方向に並ぶ36(=M・X)個の基本スロット群内のスロット2へ移し替えて波巻コイルの巻線をスロット2に配置する。これにより、7スロットピッチを1周期として当該1周期で4スロットと3スロットとで交互に波打つ波巻コイルが固定子鉄心3に形成される。
 続いて、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第3の形態について説明する。
 図21は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第3の形態を説明する展開断面図である。ここでは、一例として、36スロットの3相交流電動機において7スロットピッチからなる基本スロット群を備える固定子の製造方法について説明する。
 まず、固定子鉄心形成ステップ(処理1)において、周方向に配置された36(=3・12=M・N)個のスロット2を有する固定子鉄心3を形成する。
 次いで、平角線生成ステップにおいて、コイルとなり得る線材を用いて、互いに略平行な第1辺及び第2辺と、第1辺と第2辺とを結ぶ第3辺と、を有したU字形状に成形した平角線を複数生成する。
 次いで、平角線収容ステップ(処理2)において、36(=M・N)に対して互いに素な正の整数を7(=X)とするとき、周方向に隣接する7(=X)個のスロット2のうちのいずれかに平角線の第1辺及び第2辺を収容することで得られる基本スロット群を、周方向に複数形成する。図21に示す例では、一例として、スロット識別番号1~7のスロット2からなる1番目の基本スロット群において平角線の第1辺をスロット識別番号1のスロット2に収容し、第2辺をスロット識別番号4のスロット2に収容する。スロット識別番号8~14のスロット2からなる2番目の基本スロット群において平角線の第1辺をスロット識別番号8のスロット2に収容し、第2辺をスロット識別番号11のスロット2に収容する。スロット識別番号15~21のスロット2からなる3番目の基本スロット群において平角線の第1辺をスロット識別番号15のスロット2に収容し、第2辺をスロット識別番号18のスロット2に収容する。スロット識別番号22~28のスロット2からなる4番目の基本スロット群において平角線の第1辺をスロット識別番号22のスロット2に収容し、第2辺をスロット識別番号25のスロット2に収容する。スロット識別番号29~35のスロット2からなる5番目の基本スロット群において平角線の第1辺をスロット識別番号29のスロット2に収容し、第2辺をスロット識別番号32のスロット2に収容する。図21では図示を省略するが、5番目の基本スロット群に隣接する6番目以降の基本スロット群においても処理2を繰り返し、最終的には36(=M・X)個の基本スロット群内のスロット2に平角線の第1辺と第2辺とを収容することで、36個のスロット全てに平角線の第1辺及び第2辺を均等に収容する。
 次いで、コイル形成ステップ(処理3)において、隣接する基本スロット群間において、一方の基本スロット群の第1辺の一部ともう一方の基本スロット群の第2辺の一部とをそれぞれ折り曲げたうえで接続点Tで互いに接合することで、各基本スロット群内の各スロット2に巻線が収容された波巻コイルを形成する。図21では図示を省略するが、5番目の基本スロット群に隣接する6番目以降の基本スロット群においても処理3を繰り返し、最終的には36(=M・X)個の基本スロット群内のスロット2に平角線の第1辺と第2辺とを収容することで、36個のスロット全てに平角線の第1辺及び第2辺が均等に収容された波巻コイルが形成される。
 続いて、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態について図22~図26を参照して説明する。
 本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態は、M・Nで得られる値(Nは正の整数)に対して互いに素な正の整数をXとするとき、固定子鉄心の周方向に隣接するX個のスロットを1個の基本スロット群として、当該基本スロット群に対応する長さを波巻の1周期分とする波巻形状を有する平角線を成形する第1の平角線成形ステップと、平角線を環状に巻く第2の平角線成形ステップと、環状に巻かれた平角線の径方向の外側から、固定子鉄心に設けられるスロットに対応する溝形状が形成された複数の磁性材料を挿入することで、平角線の一部からなる巻線がスロットに収容された波巻コイルを形成するコイル形成ステップと、を備える。
 図22は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態における第1の平角線成形ステップを説明する斜視図である。
 上述のように、M・Nで得られる値(Nは正の整数)に対して互いに素な正の整数をXとするとき、固定子鉄心の周方向に隣接するX個のスロットを1個の基本スロット群とする。第1の平角線成形ステップでは、コイルとなり得る線材である平角線を、図22に示すように、基本スロット群のXスロットピッチに対応する長さを波巻コイル4の1周期分とするような波巻形状に成形する。
 図23は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態における第2の平角線成形ステップを説明する斜視図である。
 第2の平角線成形ステップでは、図22に示した波巻形状に成形された平角線を、図23に示すように環状に巻いていく。図24は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態において、波巻形状に成形された平角線が環状に巻かれた状態を示す斜視図である。
 図25及び図26は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の製造方法の第4の形態におけるコイル形成ステップを説明する斜視図である。
 コイル形成ステップにおいて、図25に示すように、外側から、固定子鉄心3に設けられるスロット2に対応する溝形状が形成された磁性材料からなる分割コア11を複数を挿入していくことで、平角線の一部からなる巻線がスロット2に収容された波巻コイル4を形成する。これにより、図26に示すように、固定子鉄心3の周方向に配置されたM・N個のスロット2内に巻線が配置された波巻コイル4が形成される。M・N個のスロット2を有する固定子鉄心3を形成する場合、固定子鉄心3の周方向において1個当たりの分割コア11の占める角度が「360度/(M・N)」となるように分割コア11を形成し、このような分割コア11をM・N個連結する。
 図27は、本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子と回転子との位置関係を例示する断面図である。
 図27では、一例として、インナーロータ型のM相交流電動機の回転子及び固定子を示している。上述した本開示の実施形態によるM相交流電動機の固定子の固定子鉄心3の内側に、径方向に対向して回転子が設けられる。回転子は、回転軸を含む回転子鉄心6と、回転子鉄心6の径方向の表面に設けられる磁石である回転子磁極5とを備える。なお、本開示の実施形態は、アウターロータ型のM相交流電動機にも適用可能であり、この場合は、固定子鉄心には、外周側に開口するスロットが形成され、固定子鉄心の内側に、径方向に対向して回転子が設けられる。
 図28は、本開示の実施形態による固定子を備えるM相交流電動機の外観を例示する図である。
 本開示の実施形態による三相交流電動機1000は、上述した固定子1と、固定子1に対して径方向に対向配置された回転子10とを備える。図において、参照符号3は固定子鉄心アを示し、参照符号4はコイルを示す。コイル4は、スロットに収容される巻線41と、スロットに収容されないコイルエンド42からなる。参照符号5は、回転子10に設けられる磁石である回転子磁極を示し、参照符号6は回転子10の回転軸を示す。
 1  固定子
 2  スロット
 3  固定子の鉄心
 4  コイル
 5  回転子磁極
 6  回転子鉄心
 7  回転軸
 11  分割コア
 41  巻線
 41P  +(プラス)巻線
 41N  -(マイナス)巻線
 42  コイルエンド
 43  引き出し線
 500  インサータ巻線装置
 501  ブレード

Claims (12)

  1.  固定子鉄心と、前記固定子鉄心の周方向に配置されたM・N個(M及びNはそれぞれ正の整数)のスロットと、M相のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる複数のコイルと、を備えるM相交流電動機の固定子であって、
     M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、前記周方向に隣接するX個の前記スロットを1個の基本スロット群として、当該基本スロット群内のX個の前記スロットのうちのいずれかに前記巻線が配置され、
     X個の前記スロットのうちのいずれかに前記巻線が配置された前記基本スロット群が、前記周方向に、スロットピッチXの周期で繰り返し配置される、固定子。
  2.  X個の前記スロットのうちのいずれかに前記巻線が収容された前記基本スロット群が、前記周方向に、M・N個配置される、請求項1に記載の固定子。
  3.  前記コイルは、波巻形状に成形されたコイルである、請求項1または2に記載の固定子。
  4.  前記コイルは、環状形状に成形されたコイルである、請求項1または2に記載の固定子。
  5.  連続する複数個の前記基本コイル群の間は、コイルエンドまたは引き出し線によって電気的に接続され、相帯が割り当てられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の固定子。
  6.  請求項1~5のいずれか一項に記載の固定子と、
     前記固定子に対して径方向に対向配置された回転子と、
    を備える、M相交流電動機。
  7.  M相(Mは正の整数)のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる複数のコイルを備えるM相交流電動機の固定子の製造方法であって、
     周方向に配置されたM・N個(Nは正の整数)のスロットを有する固定子鉄心を形成する固定子鉄心形成ステップと、
     M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、前記周方向に隣接するX個の前記スロットのうちのいずれかに前記巻線を配置することで得られる基本スロット群を、スロットピッチXの周期で前記周方向に繰り返し配置する巻線配置ステップと、
    を備える、固定子の製造方法。
  8.  前記巻線配置ステップでは、前記基本スロット群を、前記周方向に、M・N個配置する、請求項7に記載の固定子の製造方法。
  9.  M相(Mは正の整数)のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる複数のコイルを備えるM相交流電動機の固定子の製造方法であって、
     円筒状の中空と、周方向に配置されたM・N個(Nは正の整数)のスロットと、を有する固定子鉄心を形成する固定子鉄心形成ステップと、
     M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、インサータ巻線装置内において周方向に隣接するX個のブレードを1個の基本ブレード群とするときの当該基本ブレード群内のX個の前記ブレードのうちのいずれかに前記巻線を配置するブレード準備ステップと、
     前記基本ブレード群内の前記ブレードに前記巻線が配置された前記インサータ巻線装置を前記固定子鉄心に挿入することで、前記ブレードに配置された前記巻線を、スロットピッチXの周期で前記周方向に隣接するX個の前記スロットを1個の基本スロット群としたときの当該基本スロット群内のX個の前記スロットのうちのいずれかへ移し替えて前記巻線を前記スロットに配置する巻線配置ステップと、
    を備える、固定子の製造方法。
  10.  前記ブレード準備ステップでは、前記基本ブレード群を、前記インサータ巻線装置の前記周方向に、M・N個配置する、請求項9に記載の固定子の製造方法。
  11.  M相(Mは正の整数)のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる波巻コイルを備えるM相交流電動機の固定子の製造方法であって、
     周方向に配置されたM・N個(Nは正の整数)のスロットを有する固定子鉄心を形成する固定子鉄心形成ステップと、
     互いに略平行な第1辺及び第2辺と、前記第1辺と前記第2辺とを結ぶ第3辺と、を有したU字形状に成形した平角線を複数生成する平角線生成ステップと、
     M・Nで得られる値に対して互いに素な正の整数をXとするとき、前記周方向に隣接するX個の前記スロットのうちのいずれかに前記平角線の前記第1辺及び前記第2辺を収容することで得られる基本スロット群を、スロットピッチXの周期で前記周方向に複数形成する平角線収容ステップと、
     隣接する前記基本スロット群間において、一方の前記基本スロット群の前記第1辺の一部ともう一方の前記基本スロット群の前記第2辺の一部とをそれぞれ折り曲げたうえで互いに接合することで、各前記基本スロット群内の前記スロットに前記巻線が収容された前記波巻コイルを形成するコイル形成ステップと、
    を備える、固定子の製造方法。
  12.  M相(Mは正の整数)のうちのいずれかの相の交流電流が流れる巻線からなる波巻コイルを備えるM相交流電動機の固定子の製造方法であって、
     M・Nで得られる値(Nは正の整数)に対して互いに素な正の整数をXとするとき、固定子鉄心の周方向に隣接するX個のスロットを1個の基本スロット群として、当該基本スロット群に対応する長さを波巻の1周期分とする波巻形状を有する平角線を成形する第1の平角線成形ステップと、
     前記平角線を環状に巻く第2の平角線成形ステップと、
     環状に巻かれた前記平角線の径方向の外側から、前記固定子鉄心に設けられる前記スロットに対応する溝形状が形成された複数の磁性材料を挿入することで、前記平角線の一部からなる前記巻線が前記スロットに収容された前記波巻コイルを形成するコイル形成ステップと、
    を備える、固定子の製造方法。
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