WO2023008181A1

WO2023008181A1 - 密封装置

Info

Publication number: WO2023008181A1
Application number: PCT/JP2022/027437
Authority: WO
Inventors: 昌幸谷田; 健一吉村; 純一渡辺; 英明長浜谷
Original assignee: Nok株式会社
Priority date: 2021-07-27
Filing date: 2022-07-12
Publication date: 2023-02-02
Also published as: KR20240008355A; EP4379242A1

Abstract

回転軸とハウジングとの間の導通を長時間かつ低コストかつ省スペースで達成することができる密封装置を提供することを課題とする。回転軸の外面と、前記回転軸が挿入される軸孔を有するハウジングにおける前記軸孔を構成する内面と、の隙間に配置され、この隙間を密封する密封装置であって、前記回転軸が回転すると、前記ハウジングにおける前記軸孔を構成する前記内面に押し付けられる、前記回転軸と前記ハウジングとを導通可能な密封装置によって解決する。

Description

密封装置

　本発明は密封装置に関する。

　一般に、ＥＶ（Electric Vehicle）やＨＥＶ（Hybrid Electric Vehicle）において、モータの回転軸とハウジングとの間には、機内に密封されている潤滑材の機外への漏洩を防止するために、オイルシールである密封装置が設けられている。
　このようなＥＶおよびＨＥＶでは、モータに生じる誘起電流によって電磁ノイズが生じ、電子機器への悪影響が懸念される。

　これに関連する従来法として、例えば特許文献１には、断面略Ｌ字状の補強環に、ゴム様弾性材性オイルリップおよびダストリップを接着されてなるオイルシールにおいて、前記ダストリップが導電性材料を混入された織布または不織布をもって製せられ、前記補強環の嵌合面の少なくとも一部が露出していることを特徴とするオイルシールが記載されている。そして、このようなオイルシールはハウジングとシャフトの導電性がダストリップおよび補強環を経由して確保されるので、通常のオイルシールを使用した場合において見られるノイズ発生の問題が回避されると記載されている。

　また、特許文献２には、モータに接続された回転軸とハウジングとの間に配されて機内と機外とをシールする密封装置であって、前記回転軸に摺動可能に接するリップを有し、前記回転軸と前記ハウジングとの間に配されて前記機外からの異物の侵入を抑えつつ前記機内に潤滑材をシールする導電性の弾性体部と、前記弾性体部と一体に形成され、前記ハウジングの内周面に接する導通面を有する導電性の補強環と、前記回転軸側で前記弾性体部に接する第１の導通面及び前記ハウジング側で前記補強環に接する第２の導通面を有し、前記第１の導通面と前記第２の導通面との間の導電性が前記弾性体部よりも高い導電用金属環とを備える密封装置が記載されている。そして、このような密封装置によれば、モータに接続された回転軸とハウジングとの間の導通を低コスト且つ省スペースでスムーズに行うことができると記載されている。

　特許文献３は、モーターの回転軸を金属製のモーターハウジングに電気的に接続させ、回転軸に誘起された電磁ノイズをモーターハウジングに逃がす技術を開示する。特に、特許文献３の図４は、モーターの回転軸とハウジングとの間に配置されたオイルシールである密封装置を導電性ゴムから製造することを開示する。

実開昭６０－１６７２６３号公報特開２０２０－６０２４０号公報特開２０００－２４４１８０号公報

　回転軸からハウジングへ電磁ノイズを逃がすことを考慮して、モーターの回転軸の周囲に導電性を備える密封装置を配置する場合、導電性を有する密封装置と金属製等の回転軸の接触、および密封装置と金属製等のハウジングの接触を確保することが望ましい。発電機の回転軸の周囲に導電性を備える密封装置を配置する場合についても同様である。また、モーターの回転軸で回転させられる回転軸、および発電機の回転軸を回転させる回転軸の周囲に導電性を備える密封装置を配置する場合についても同様である。

　本発明は、回転軸とハウジングとの間の導通を長時間かつ低コストかつ省スペースで達成することができる密封装置を提供する。

　本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
　本発明は以下の（１）～（１０）である。
（１）回転軸の外面と、前記回転軸が挿入される軸孔を有するハウジングにおける前記軸孔を構成する内面と、の隙間に配置され、この隙間を密封する密封装置であって、
　前記回転軸が回転すると、前記ハウジングにおける前記軸孔を構成する前記内面に押し付けられる、前記回転軸と前記ハウジングとを導通可能な密封装置。
（２）前記回転軸の前記外面に固定される環状の鞘管部と、
　リング状であり、リング外周部が前記ハウジングの前記内面に接し、主面が前記鞘管部に固定されている導通部と、
を有する上記（１）に記載の密封装置。
（３）前記回転軸が回転することで生じた遠心力によって前記導通部が前記ハウジングの前記内面に押し付けられる力が上昇する、上記（２）に記載の密封装置。
（４）前記回転軸が嵌め込まれる円筒部と、
　前記円筒部から径方向外側に延びるフランジと、
　前記フランジからさらに径方向外側に延びて、前記ハウジングの前記軸孔の前記内周面に摺動可能に接触する少なくとも１つのリップを有し、
　前記円筒部と前記フランジは、金属と導電性ゴムの少なくとも１つから形成され、前記リップは導電性ゴムから形成されている
ことを特徴とする、上記（１）に記載の密封装置。
（５）前記回転軸の前記外面に固定され、前記回転軸の軸心方向へ延びる固定部および前記固定部の端とつながり前記ハウジングの内面へ近づく方向へ延びる支持部を備える環状の鞘管部と、
　リング状であり、リング外周部が前記ハウジングの前記内面に接し、主面が前記鞘管部の前記支持部に固定されている導通部と、
　前記ハウジングの前記内面に付いている弾性体からなる環状の取付部と、前記回転軸の前記外面および／または前記鞘管部の前記固定部に摺動可能に接する弾性体からなるリップ部と、前記取付部と前記リップ部とをつなぐ弾性体からなる連結部と、前記取付部の内面に密着し、前記連結部とも密着する補強環と、を含み、外部からの異物の侵入を抑制し、内部の潤滑材をシールするシール部と、
を有する上記（１）に記載の密封装置。
（６）前記導通部におけるリング内周部が前記回転軸の前記外面に接している、上記（５）に記載の密封装置。
（７）前記導通部が導電性不織布からなる、上記（５）または（６）に記載の密封装置。
（８）前記回転軸の前記外面と、前記ハウジングの前記内面と、の隙間において、前記回転軸の軸心方向の外部側から内部側へ向かって、前記導通部、前記鞘管部および前記シール部がこの順に配置されている、上記（５）～（７）のいずれかに記載の密封装置。
（９）前記導通部における前記リング外周部に複数の切り込みを有する、上記（５）～（８）のいずれかに記載の密封装置。
（１０）前記鞘管部における前記固定部と前記支持部とが、前記回転軸の前記軸心に平行方向の断面において略垂直をなしている、上記（５）～（９）のいずれかに記載の密封装置。

　本発明によれば、回転軸とハウジングとの間の導通を長時間かつ低コストかつ省スペースで達成することができる密封装置を提供することができる。

本発明の実施形態に係る導電装置を備えた電気自動車の動力伝達系を示す図である。本発明の実施形態に係る導電装置を備えた他の電気自動車の動力伝達系を示す図である。本発明の密封装置の好適態様を示す概略断面図である。本発明の密封装置の別の好適態様を示す概略断面図である。本発明の密封装置のさらに別の好適態様を示す概略断面図である。本発明の密封装置のさらに別の好適態様を示す概略断面図である。本発明のさらに別の実施形態に係る密封装置を示す断面図である。本発明のさらに別の実施形態に係る密封装置を示す断面図である。図７の密封装置の他の用途を示す断面図である。図８の密封装置の他の用途を示す断面図である。本発明の密封装置のさらに別の好適態様を示す概略断面図である。図１１に示す本発明の密封装置の好適態様が有する導通部の概略平面図である。

　本発明について説明する。
　本発明は、回転軸の外面と、前記回転軸が挿入される軸孔を有するハウジングにおける前記軸孔を構成する内面と、の隙間に配置され、この隙間を密封する密封装置であって、前記回転軸が回転すると、前記ハウジングにおける前記軸孔を構成する前記内面に押し付けられる、前記回転軸と前記ハウジングとを導通可能な密封装置である。
　このような密封装置を、以下では「本発明の密封装置」ともいう。

　本発明の密封装置は前記回転軸の前記外面についていることが好ましい。この場合、前記回転軸が回転することで本発明の密封装置に遠心力が加わるため、本発明の密封装置は前記ハウジングの前記内面に押し付けられる。
　その結果、本発明の密封装置が安定して前記ハウジングの前記内面に密着するため、前記回転軸と前記ハウジングとの導通および密封が確保される。

　初めに、本発明の密封装置が利用される得る部位について、図１および図２を用いて説明する。
　なお、以下、添付の図面（図１、図２およびその他の図）を参照しながら本発明に係る複数の実施形態等を説明するが、図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。

　図１に示すように、実施形態に係る密封装置４０（本発明の密封装置）を備えた電気自動車の動力伝達系は、電動機（モーター）２、歯車列４、差動歯車装置６、左側車軸構造８、右側車軸構造１０、左側駆動輪１２、および右側駆動輪１４を有する。

　モーター２は、ステータ１６と、ロータ１８を有し、ロータ１８には回転軸２０が固定されている。回転軸２０は、鋳鉄、鋼またはアルミニウム合金などの金属製であり、軸受２１～２４によって回転可能に支持されている。回転軸２０の回転は、歯車列４すなわち歯車減速機によって、差動歯車装置６に伝達される。差動歯車装置６は、左右の駆動輪１２，１４に作用する負荷に応じて、左右の車軸構造８，１０にトルクを分配しつつ、車軸構造８，１０を回転させる。

　左側車軸構造８は、軸８ａ、自在継手８ｂ、軸８ｃ、自在継手８ｄ、および車軸８ｅを有する。差動歯車装置６によって、軸８ａが回転させられ、その回転は、自在継手８ｂ、軸８ｃ、および自在継手８ｄを経て、左側駆動輪１２が固定された車軸８ｅに伝達される。左側車軸構造８は、軸８ａを回転可能に支持する軸受２６，２７、および車軸８ｅを回転可能に支持するサスペンション機構２８によって支持されている。

　右側車軸構造１０は、軸１０ａ、自在継手１０ｂ、軸１０ｃ、自在継手１０ｄ、および車軸１０ｅを有する。差動歯車装置６によって、軸１０ａが回転させられ、その回転は、自在継手１０ｂ、軸１０ｃ、および自在継手１０ｄを経て、右側駆動輪１４が固定された車軸１０ｅに伝達される。右側車軸構造１０は、軸１０ａを回転可能に支持する軸受３２、および車軸１０ｅを回転可能に支持するサスペンション機構３４によって支持されている。

　モーター２、歯車列４、差動歯車装置６、軸８ａ，１０ａは、共通のハウジング３８の内部に配置されている。ハウジング３８は、鋳鉄、鋼またはアルミニウム合金などの金属製である。

　モーター２の回転軸２０の一端部の周囲には、金属製のハウジング３８の端部３８ａと回転軸２０の隙間全体にわたって配置される円環状の密封装置４０が配置されている。密封装置４０は、回転軸２０に固定され、ハウジング３８の端部３８ａの軸孔の内周面に接触する。

　また、上記実施形態に係る密封装置４０は、モーター２の回転軸２０の周囲に配置される。しかし、モーター２の回転軸２０に動力伝達機構（例えば、歯車列４と差動歯車装置６）を介して回転させられる回転軸（軸８ａ，１０ａ）の周囲に、密封装置４０を配置してもよい。例えば、ハウジング３８と軸８ａの隙間に、図２に示すように、密封装置４０を配置してもよいし、ハウジング３８と軸１０ａの隙間に、密封装置４０を配置してもよい。さらには、歯車列４の中間歯車の回転軸４Ａとハウジング３８の隙間に、密封装置４０を配置してもよい。密封装置４０の付近に、さらに後述する密封装置８０を配置してもよい。

　あるいは、潤滑油が使用された発電機の回転軸と回転軸のハウジングの間の隙間に密封装置４０を配置してもよい。あるいは、発電機の回転軸を回転させる回転軸とハウジングの間の隙間に密封装置４０を配置してもよい。

　密封装置４０の代わりに、本発明の密封装置に該当する別の態様の密封装置（例えば後述する密封装置６０や密封装置２０１）を同箇所に配置することもできる。

　本発明の密封装置は鞘管部と導通部とを有する態様であることが好ましい。具体的には、本発明の密封装置は回転軸の外面に固定される環状の鞘管部と、リング状であり、リング外周部がハウジングの内面に接し、主面が鞘管部に固定されている導通部と、を有する態様であることが好ましい。
　このような本発明の密封装置の好適態様について、図３～図６を用いて説明する。

　図３～図６に示す密封装置４０は、本発明の密封装置の好適態様に相当する。
　図３～図６は密封装置４０の好適態様ならびに回転軸２０およびハウジング３８についての、回転軸２０の軸心ωを含む面で切って得られる断面の概略図（概略断面図）である。

　図３～図６において密封装置４０は、回転軸２０の外面２０ｓと、回転軸２０が挿入される軸孔を有するハウジング３８における軸孔を構成する内面３８ｓと、の隙間１０７に配置されている。

　前述のように、回転軸２０として、例えばＥＶ（Electric Vehicle）やＨＥＶ（Hybrid Electric Vehicle）における駆動モータのモータ軸が挙げられる。通常、回転軸２０は棒状（円柱状）であり、その断面は通常、円形である。

　ハウジング３８は、通常、接地されている。

　図３～図６に示す好適態様である密封装置４０は、鞘管部１１０と、導通部１２０とを有する。

＜鞘管部＞
　図３～図６に示す密封装置４０が有する鞘管部１１０について説明する。
　鞘管部１１０は、回転軸２０の外面２０ｓに直接的または間接的に固定される環状の部位である。
　図３、図５および図６において鞘管部１１０は、回転軸２０の外面２０ｓに直接的に固定されている。
　図４において鞘管部１１０は、後述する導通部１２０を介して、回転軸２０の外面２０ｓに固定されている。すなわち、鞘管部１１０は回転軸２０の外面２０ｓに間接的に固定されている。図４に示す態様では導通部１２０が鞘管部１１０の一部を包み込んでいる。

　鞘管部１１０を回転軸２０の外面２０ｓに固定する手段は特に限定されない。例えば鞘管部１１０と回転軸２０の外面２０ｓとが締まり嵌め込み方式で嵌め込まれることで、鞘管部１１０を回転軸２０の外面２０ｓに固定してよい。
　その他、接着剤等を用いて鞘管部１１０を回転軸２０の外面２０ｓに固定してよい。

　鞘管部１１０は、図３～図６に示すように、回転軸２０の軸ωと平行な方向へ延びる固定部１１０ａと、固定部１１０ａの端とつながりハウジング３８の内面３８ｓへ近づく方向へ延びる支持部１１０ｂと、を備えることが好ましい。

　ここで、固定部１１０ａと支持部１１０ｂとは、各々、図３～図６に示す態様のように、板状であることが好ましい。つまり、固定部１１０は円筒状をなしており、支持部１１０ｂは中央に貫通孔を有する円盤状であることが好ましい。
　また、固定部１１０ａと支持部１１０ｂとが、図３～図６に示す態様のように、回転軸２０の軸心ωを含む面で切って得られる断面において略垂直をなしていることが好ましい。
　図３～図６に示す好適態様では、固定部１１０ａと支持部１１０ｂとが回転軸２０の軸心ωを含む面で切って得られる断面において略垂直をなしている。したがって、図３～図６に示す好適態様の鞘管部１１０は、断面が略Ｌ字型である。
　ここで「略垂直」とは完全な垂直でなくてもよいことを意味する。つまり、図３～図６において固定部１１０ａと支持部１１０ｂとが９０度をなしていることが好ましいが、この角度が７５～１０５度（好ましくは８０～１００度、より好ましくは８５～９５度）であってよい。

　鞘管部１１０は導電性を備えることが好ましい。
　後述する導通部１２０におけるリング内周部１２０ｂが、回転軸２０の外面２０ｓに接しない場合、鞘管部１１０は必ず導電性を備える。
　一方、後述する導通部１２０におけるリング内周部１２０ｂが、回転軸２０の外面２０ｓに接する場合、鞘管部１１０は必ずしも導電性を備えなくてよい。

　鞘管部１１０は金属からなることが好ましく、導電性を有する金属であることがより好ましい。このような金属として、ステンレス鋼、冷間圧延鋼（ＳＰＣＣ）、真鍮、アルミが挙げられる。
　鞘管部１１０は金属でなくてもよい。例えば、樹脂製であってもよい。

　鞘管部１１０はプレス加工や鍛造によって形成することができる。

　鞘管部１１０の数は限定されない。例えば図５に示した態様では２つの鞘管部が導通部１２０を挟んで重なっている。

＜導通部＞
　図３～図６に示す密封装置４０が有する導通部１２０について説明する。
　導通部１２０は、リング状であり、リング外周部１２０ａがハウジング３８の内面３８ｓに接し、その主面１２０ｓが鞘管部１１０に固定されている。
　図３～図６に示す態様のように、導通部１２０の主面１２０ｓが鞘管部１１０の支持部１１０ｂに固定されていることが好ましい。

　導通部１２０は図３、図５および図６に示す態様のように、シート状または板状であって、かつ、後述するように柔軟性または弾性力を有していて容易に変形可能なものであることが好ましい。
　図３、図５および図６では、断面が略Ｌ字型となるように変形した導通部１２０を示している。そして、鞘管部１１０における板状の支持部１１０ｂの主面に、導通部１２０の主面１２０ｓが着いている。ここで支持部１１０ｂの主面に導通部１２０の主面１２０ｓが密着していることが好ましい。
　また、リング外周部１２０ａにおける主面１２０ｓがハウジング３８の内面３８ａに着いている。回転軸２０が回転することが密封装置４０に遠心力が加わり、リング外周部１２０ａにおける主面１２０ｓがハウジング３８の内面３８ａに密着することが好ましい。
　また、図６に示す態様では、導通部１２０におけるリング内周部１２０ｂにおける主面１２０ｓが回転軸２０における外面２０ｓに着いている。

　図３、図５および図６に示した、断面が略Ｌ字型となるように変形した導通部１２０において、リング外周部１２０ａは円筒状をなしており、それ以外の部分は中央に貫通孔を有する円盤状をなしている。

　回転軸２０が回転することで生じた遠心力Ｆによって、導通部１２０がハウジング３８の内面３８ｓに押し付けられる力が、回転軸２０が回転する前と比較して上昇することが好ましい。
　図３～図６に示した好適態様の場合であれば、回転軸２０が回転すると導通部１２０に遠心力Ｆが加わり、導通部１２０におけるリング外周部１２０ａがハウジング３８の内面３８ｓに押し付けられる。その結果、導通部１２０ａのリング外周部１２０ａが安定してハウジング３８の内面３８ｓに密着して、回転軸２０とハウジング３８との導通が確保される。

　また、図４および図６に示す好適態様における導通部１２０では、導通部１２０におけるリング内周部１２０ｂが回転軸２０の外面２０ｓに接している。図４および図６に示す好適態様では、導通部１２０のリング外周部１２０ａが回転軸２０の主面２０ｓに着いている。
　このように導通部１２０におけるリング内周部１２０ｂが回転軸２０の外面２０ｂに接していることが好ましい。回転軸２０とハウジング３８とが導通されやすくなるからである。この場合、前述の鞘管部１１０が導電性を備えない場合であっても、回転軸２０とハウジング３８とが導通される。

　導通部１２０の主面１２０ｓを鞘管部１１０の支持部１１０ｂの主面に固定する方法は特に限定されず、例えばこれらを接着剤を用いて固定することができる。ただし、接着剤を用いず金属製のボルトとナットを用いてこれらを固定すると、導通部１２０と鞘管部１１０との導通が確保されやすいので、結果として回転軸２０とハウジング３８とが導通されやすくなり好ましい。

　導通部１２０は導電性を備え、かつ、柔軟性を備えるものであることが好ましい。導通部１２０は、例えば、ニトリルゴム（ＮＢＲ）、水素添加ニトリルゴム（Ｈ－ＮＢＲ）、アクリルゴム（ＡＣＭ）またはフッ素ゴム（ＦＫＭ）といったゴム材料と、ゴム材料の中に分散された導電性粉末、例えば導電性カーボンブラックの粉末または金属の粉末とを含有するものからなってよい。
　また、導通部１２０は導電性織布であってよく、導電性不織布であってもよい。
　導電性不織布または導電性織布の材質としては、銅、銀、鉄、カーボンを挙げることができる。

　本発明の密封装置は、前記回転軸が嵌め込まれる円筒部と、前記円筒部から径方向外側に延びるフランジと、前記フランジからさらに径方向外側に延びて、前記ハウジングの前記軸孔の前記内周面に摺動可能に接触する少なくとも１つのリップを有し、前記円筒部と前記フランジは、金属と導電性ゴムの少なくとも１つから形成され、前記リップは導電性ゴムから形成されていることが好ましい。
　このような好適態様における実施形態に相当する密封装置４０および密封装置６０について、図６～図１０を用いて説明する。

　図７は、円柱形の回転軸２０、円環状の密封装置４０、およびハウジング３８の円筒状の端部３８ａの上半分のみを示す。この実施形態では、密封装置４０は、ハウジング３８の端部３８ａの軸孔３８ｂの内周面と回転軸２０の隙間を封止する密封装置（オイルシール）である。密封装置４０は、円筒部４１、フランジ４２、円環部４３、シールリップ４４、およびダストリップ４５を有する。

　円筒部４１には、モーター２の回転軸２０が締まり嵌め方式で嵌め込まれる。したがって、密封装置４０は回転軸２０に固定され、回転軸２０と共に回転する。フランジ４２は、円筒部４１から径方向外側に延びる円板である。円環部４３は、フランジ４２の外端縁に形成されている。

　シールリップ４４は、円環部４３からさらに径方向外側に延びて、ハウジング３８の端部３８ａの軸孔３８ｂの内周面に摺動可能に接触する。シールリップ４４は、ハウジング３８の内部側に配置されたモーター２を潤滑する潤滑油がハウジング３８の外部側に漏出しないよう封止する。

　ダストリップ４５も、円環部４３からさらに径方向外側に延びて、ハウジング３８の端部３８ａの軸孔３８ｂの内周面に摺動可能に接触する。ダストリップ４５は、ハウジング３８の外部側から内部側への異物の侵入を抑制する。

　密封装置４０は、弾性環５０と、剛性材料、例えば金属製の剛性環５２を有する。剛性環５２は、ほぼＬ字形の断面を有しており、弾性環５０に埋設されて、弾性環５０を補強する。

　円筒部４１とフランジ４２は、弾性環５０と剛性環５２から構成され、円環部４３、シールリップ４４およびダストリップ４５は、弾性環５０のみから構成されている。

　弾性環５０は、導電性ゴムから形成されている。導電性ゴムは、例えば、ニトリルゴム（ＮＢＲ）、水素添加ニトリルゴム（Ｈ－ＮＢＲ）、アクリルゴム（ＡＣＭ）またはフッ素ゴム（ＦＫＭ）といったゴム材料と、ゴム材料の中に分散された導電性粉末、例えば導電性カーボンブラックの粉末または金属の粉末を有する。

　したがって、密封装置４０は、径方向全体にわたって導電性材料から形成され、回転軸２０をハウジング３８に電気的に接続する。このため、回転軸２０に誘起された電磁ノイズをハウジング３８に逃がすことが可能である。特に、この実施形態においては、密封装置４０は回転軸２０に固定され、回転軸２０と共に回転する。シールリップ４４とダストリップ４５は、径方向外側に延びるため、回転軸２０が回転すると、遠心力Ｆを受けて、ハウジング３８の軸孔３８ｂの内周面に向けて押し付けられる。

　ハウジング３８の内部側には、モーター２を潤滑する潤滑油があり、潤滑油がシールリップ４４とハウジング３８の軸孔３８ｂの内周面の間に油膜を形成することがある。場合によっては、潤滑油がダストリップ４５とハウジング３８の軸孔３８ｂの内周面の間に油膜を形成することもありうる。しかし、シールリップ４４とダストリップ４５は、遠心力Ｆを受けて、ハウジング３８の軸孔３８ｂの内周面に向けて押し付けられるため、リップとハウジング３８の間に油膜が発生しにくく、油膜が発生してもその厚さは小さい。このため油膜の電気抵抗が小さく、回転軸２０からハウジング３８へ電磁ノイズを逃がす信頼性が高い。

　図８に示すように、本発明の密封装置に相当する、他の形状の密封装置６０を使用してもよい。この実施形態では、密封装置６０は、ハウジング３８の端部３８ａの軸孔３８ｂの内周面と回転軸２０の隙間を封止する密封装置（オイルシール）である。図８は、円柱形の回転軸２０、円環状の密封装置６０、およびハウジング３８の円筒状の端部３８ａの上半分のみを示す。密封装置６０は、円筒部６１、フランジ６２、シールリップ６４、およびダストリップ６５を有する。

　円筒部６１には、モーター２の回転軸２０が締まり嵌め方式で嵌め込まれる。したがって、密封装置６０は回転軸２０に固定され、回転軸２０と共に回転する。フランジ６２は、円筒部６１から径方向外側に延びる円板である。

　シールリップ６４は、フランジ６２の外端縁からさらに径方向外側に延びて、ハウジング３８の端部３８ａの軸孔３８ｂの内周面に摺動可能に接触する。シールリップ６４は、ハウジング３８の内部側に配置されたモーター２を潤滑する潤滑油がハウジング３８の外部側に漏出しないよう封止する。

　ダストリップ６５も、フランジ６２の外端縁からさらに径方向外側に延びて、ハウジング３８の端部３８ａの軸孔３８ｂの内周面に摺動可能に接触する。ダストリップ６５は、ハウジング３８の外部側から内部側への異物の侵入を抑制する。

　密封装置６０は、弾性環７０と、剛性材料、例えば金属製の剛性環７２を有する。剛性環７２は、ほぼＬ字形の断面を有しており、弾性環７０に密着して、弾性環７０を補強する。

　円筒部６１とフランジ６２は、弾性環７０と剛性環７２から構成され、シールリップ６４とダストリップ６５は、弾性環７０のみから構成されている。

　弾性環７０は、上記の弾性環５０（図７参照）と同様に導電性ゴムから形成されている。

　したがって、密封装置６０は、径方向全体にわたって導電性材料から形成され、回転軸２０をハウジング３８に電気的に接続する。このため、回転軸２０に誘起された電磁ノイズをハウジング３８に逃がすことが可能である。特に、この実施形態においては、密封装置６０は回転軸２０に固定され、回転軸２０と共に回転する。シールリップ６４とダストリップ６５は、径方向外側に延びるため、回転軸２０が回転すると、遠心力Ｆを受けて、ハウジング３８の軸孔３８ｂの内周面に向けて押し付けられる。

　ハウジング３８の内部側には、モーター２を潤滑する潤滑油があり、潤滑油がシールリップ６４とハウジング３８の軸孔３８ｂの内周面の間に油膜を形成することがある。場合によっては、潤滑油がダストリップ６５とハウジング３８の軸孔３８ｂの内周面の間に油膜を形成することもありうる。しかし、シールリップ６４とダストリップ６５は、遠心力Ｆを受けて、ハウジング３８の軸孔３８ｂの内周面に向けて押し付けられるため、リップとハウジング３８の間に油膜が発生しにくく、油膜が発生してもその厚さは小さい。このため油膜の電気抵抗が小さく、回転軸２０からハウジング３８へ電磁ノイズを逃がす信頼性が高い。

　この実施形態では、円筒部６１において金属製の剛性環７２が回転軸２０の外周面に面接触する。したがって、回転軸２０からハウジング３８へ電磁ノイズを逃がす信頼性がさらに高い。

　図９は、図７の密封装置４０の他の態様を示す。ここでは、密封装置４０よりもハウジング３８の内部側に密封装置（オイルシール）８０が設けられている。したがって、密封装置４０は、密封装置８０の補助密封装置（ダストシール装置）である。密封装置４０は、回転軸２０からハウジング３８へ電磁ノイズを逃がす役割を果たす。

　好ましくは、密封装置４０のシールリップ４４とダストリップ４５の間の空間４８には、潤滑剤としてのグリースが配置される。このグリースは、好ましくは高い導電性を有する。

　密封装置８０は、円筒部８１、円板部８２、円環部８３、シールリップ８４、およびダストリップ８５を有する。

　円筒部８１は、ハウジング３８の軸孔３８ｂに締まり嵌め方式で嵌め込まれる。したがって、密封装置８０はハウジング３８に固定される。円板部８２は、円筒部８１から径方向内側に延びる。円環部８３は、円板部８２の内端縁に形成されている。

　シールリップ８４は、円環部８３からさらに径方向内側に延びて、モーター２の回転軸２０の外周面に摺動可能に接触する。シールリップ８４は、ハウジング３８の内部側に配置されたモーター２を潤滑する潤滑油がハウジング３８の外部側に漏出しないよう封止する。

　不可欠ではないが、シールリップ８４の径方向内側には、ガータースプリング８６が配置されている。ガータースプリング８６は、シールリップ８４を回転軸２０の外周面に押し付ける。

　ダストリップ８５も、円環部８３からさらに径方向内側に延びて、回転軸２０の外周面に摺動可能に接触する。ダストリップ８５は、ハウジング３８の外部側から内部側への異物の侵入を抑制する。

　密封装置８０は、弾性環９０と、剛性材料、例えば金属製の剛性環９２を有する。剛性環９２は、ほぼＬ字形の断面を有しており、弾性環９０に埋設されて、弾性環９０を補強する。

　円筒部８１と円板部８２は、弾性環９０と剛性環９２から構成され、円環部８３、シールリップ８４およびダストリップ８５は、弾性環９０のみから構成されている。

　弾性環９０は、ゴム材料から形成されている。弾性環９０は、密封装置４０の弾性環５０と同様に、導電性ゴムから形成されていてもよい。

　図１０は、図８の密封装置６０の他の態様を示す。ここでは、密封装置６０よりもハウジング３８の内部側に密封装置（オイルシール）８０が設けられている。したがって、密封装置６０は、密封装置８０の補助密封装置（ダストシール装置）である。密封装置６０は、回転軸２０からハウジング３８へ電磁ノイズを逃がす役割を果たす。

　好ましくは、密封装置６０のシールリップ６４とダストリップ６５の間の空間６８には、潤滑剤としてのグリースが配置される。このグリースは、好ましくは高い導電性を有する。

　以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明の密封装置に相当する密封装置４０および密封装置６０を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。

　例えば、リップの形状は上記の実施形態に限定されない。

　本発明の密封装置における、さらに別の好適態様について説明する。
　本発明の密封装置は、回転軸の外面と、前記回転軸が挿入される軸孔を有するハウジングにおける前記軸孔を構成する内面と、の隙間に配置され、この隙間を密封する密封装置であって、前記回転軸の前記外面に固定され、前記回転軸の軸心方向へ延びる固定部および前記固定部の端とつながり前記ハウジングの内面へ近づく方向へ延びる支持部を備える環状の鞘管部と、リング状であり、リング外周部が前記ハウジングの前記内面に接し、主面が前記鞘管部の前記支持部に固定されている導通部と、前記ハウジングの前記内面に付いている弾性体からなる環状の取付部と、前記回転軸の前記外面および／または前記鞘管部の前記固定部に摺動可能に接する弾性体からなるリップ部と、前記取付部と前記リップ部とをつなぐ弾性体からなる連結部と、前記取付部の内面に密着し、前記連結部とも密着する補強環と、を含み、外部からの異物の侵入を抑制し、内部の潤滑材をシールするシール部と、を有し、前記回転軸と前記ハウジングとを導通することができる密封装置であることが好ましい。

　このような本発明の密封装置の好適態様（本発明の密封装置２０１）について図１１および図１２を用いて説明する。
　図１１および図１２に示す本発明の密封装置は好適態様（例示）であって、本発明の密封装置は図に示す態様に限定されない。

　図１１は、本発明の密封装置ならびに回転軸およびハウジングを回転軸の軸心ωを含む面で切って得られる断面の概略図（概略断面図）である。

　図１１において本発明の密封装置２０１は、回転軸３００の外面３１０と、回転軸３００が挿入される軸孔を有するハウジング４００における軸孔を構成する内面４１０と、の隙間４０５に配置されている。

　回転軸３００として、例えばＥＶ（Electric Vehicle）やＨＥＶ（Hybrid Electric Vehicle）における駆動モータのモータ軸が挙げられる。通常、回転軸３００は棒状（円柱状）であり、その断面は通常、円形である。

　ハウジング４００は、通常、接地されている。

　本発明の密封装置２０１は、シール部２１０と、鞘管部２２０と、導通部２３０とを有する。

＜シール部＞
　本発明の密封装置２０１が有するシール部２１０について説明する。
　シール部２１０は取付部２１２、リップ部２１４、連結部２１６、補強環２１８を含む。

　取付部２１２は環状であり、回転軸３００の軸心ωに平行な方向へ延びていて、ハウジング４００の内面４１０に付いている。取付部２１２は後述する補強環２１８とハウジング４００の内面４１０との間に挟まり、ハウジング４００の内面４１０に密着するように固定されている。

　リップ部２１４（２１４ａ、２１４ｂ）は、後述する鞘管部２２０の固定部２２２に摺動可能に接している。
　ただし、リップ部２１４（２１４ａ、２１４ｂ）は、回転軸３００の外面３１０に摺動可能に接していてもよい。すなわち、リップ部２１４は回転軸３００の外面３１０および／または鞘管部２２０の固定部２２２に摺動可能に接していればよい。
　リップ部２１４が鞘管部２２０の固定部２２２に摺動する場合、固定部２２２をプランジ加工する必要が無い点で好ましい。

　図１１に示した好適態様では、シール部２１０は２つのリップ部（第１のリップ部２１４ａ、第２のリップ部２１４ｂ）を有している。ただし、図１１に示す本発明の密封装置の好適態様では少なくとも１つのリップ部を有するものであればよい。
　また、図１１に示した好適態様では、シール部２１０における第１のリップ部２１４ａはガータースプリング２１９を有している。

　連結部２１６は取付部２１２とリップ部２１４とをつないでいる。
　図１１に示した好適態様のシール部２１０の場合、連結部２１６は取付部２１２と、その回転軸３００の軸心ωに平行な方向における端部においてつながっている。そして、回転軸３００の軸心ωに垂直な方向に延びて、リップ部２１４とつながっている。
　また、連結部２１６は、補強環２１８における回転軸３００の軸心ωに垂直な方向に延びる部分に付いている。

　上記のような取付部２１２、リップ部２１４、連結部２１６はいずれも弾性体からなる。
　弾性体の材質として、例えばニトリルゴム（ＮＢＲ）、水素添加ニトリルゴム（Ｈ－ＮＢＲ）、アクリルゴム（ＡＣＭ）、フッ素ゴム（ＦＫＭ）などの合成ゴムが挙げられる。

　補強環２１８は環状である。そして、図１１に示すように、断面が略Ｌ字型であって回転軸３００の軸心ωと平行な方向に延びる部分と、軸心ωに垂直な方向へ延びる部分とからなるものであることが好ましい。
　そして、回転軸３００の軸心ωと平行な方向に延びる部分は、取付部２１２を介してハウジング４００の内面４１０に固定されることが好ましい。つまり、補強館２１８における回転軸３００の軸心ωと平行な方向に延びる部分は、取付部２１２の内面に密着している。
　また、補強環２１８における回転軸３００の軸心ωに垂直な方向に延びる部分は連結部２１６に密着している。

　補強環２１８は金属からなることが好ましく、ステンレス鋼または冷間圧延鋼（ＳＰＣＣ）からなることがより好ましい。
　補強環２１８はプレス加工や鍛造によって形成することができる。

　取付部２１２、リップ部２１４、連結部２１６および補強環２１８は一体に成形して得ることができる。例えば成形型内に補強環２１８（必要に応じて、さらにガータースプリング２１９）を配置し、未架橋のゴム材料を装入し、その後、成形型内の閉空間を加熱および加圧することでゴム材料を架橋して、取付部２１２、リップ部２１４、連結部２１６および補強環２１８が一体に成形されてなるシール部２１０を得ることができる。

　このようなシール部２１０は、外部からの異物の侵入を抑制し、内部の潤滑材をシールする役割を果たす。

＜鞘管部＞
　本発明の密封装置２０１が有する鞘管部２２０について説明する。
　鞘管部２２０は、回転軸３００の外面３１０に固定され、回転軸３００の軸ωと平行な方向へ延びる固定部２２２および固定部２２２の端とつながりハウジング４００の内面４１０へ近づく方向へ延びる支持部２２４を備える環状の部位である。

　ここで、固定部２２２と支持部２２４とが、図１１に示すような回転軸３００の軸心ωに平行方向の断面において略垂直をなしていることが好ましい。
　図１１に示す好適態様では、固定部２２２と支持部２２４とが回転軸３００の軸心ωを含む面で切って得られる断面において略垂直をなしている。したがって、図１１に示す好適態様の鞘管部２２０は、断面が略Ｌ字型である。
　ここで「略垂直」とは完全な垂直でなくてもよいことを意味する。つまり、固定部２２２と支持部２２４とが９０度をなしていることが好ましいが、この角度が７５～１０５度（好ましくは８０～１００度、より好ましくは８５～９５度）であってよい。

　鞘管部２２０は導電性を備えることが好ましい。
　後述する導通部におけるリング内周部が、回転軸３００の外面３１０に接しない場合、鞘管部２２０は必ず導電性を備える。
　一方、後述する導通部におけるリング内周部が、回転軸３００の外面３１０に接する場合、鞘管部２２０は必ずしも導電性を備えなくてよい。

　鞘管部２２０は金属であることが好ましく、導電性を有する金属であることがより好ましい。このような金属として、ステンレス鋼、冷間圧延鋼（ＳＰＣＣ）、真鍮、アルミが挙げられる。
　鞘管部２２０は金属でなくてもよい。例えば、樹脂製であってもよい。

　鞘管部２２０はプレス加工や鍛造によって形成することができる。

＜導通部＞
　本発明の密封装置２０１が有する導通部２３０について説明する。
　導通部２３０は、リング状であり、リング外周部２３２がハウジング４００の内面４１０に接し、その主面２３４が鞘管部２２０の支持部２２４に固定されている。
　回転軸３００が回転すると導通部２３０に遠心力が加わり、導通部２３０におけるリング外周部２３２がハウジング４００の内面４１０に押し付けられる。その結果、導通部２３０のリング外周部２３２が安定してハウジング４００の内面４１０に密着して、回転軸３００とハウジング４００との導通が確保される。

　また、図１１に示す好適例における導通部２３０では、導通部２３０におけるリング内周部２３６が回転軸３００の外面３１０に接している。
　本発明の密封装置２０１では、導通部２３０におけるリング内周部２３６が回転軸３００の外面３１０に接していることが好ましい。回転軸３００とハウジング４００とが導通されやすくなるからである。この場合、前述の鞘管部２２０が導電性を備えない場合であっても、回転軸３００とハウジング４００とが導通される。

　導通部２３０の主面２３４を鞘管部２２０の支持部２２４に固定する方法は特に限定されず、例えばこれらを接着剤を用いて固定することができる。ただし、接着剤を用いず金属製のボルトとナットを用いてこれらを固定すると、導通部２３０と鞘管部２２０との導通が確保されやすいので、結果として回転軸３００とハウジング４００とが導通されやすくなり好ましい。

　導通部２３０は導電性を備え、かつ、柔軟性を備えるものであることが好ましい。
　導通部２３０は布であることが好ましく、導電性織布であることがより好ましく、導電性不織布であることがさらに好ましい。
　導電性不織布または導電性織布の材質としては、銅、銀、鉄、カーボンを挙げることができる。

　図１２は回転軸３００の外面３１０と、ハウジング４００の内面４１０との隙間４０５に配置する前の導通部２３０の概略平面図である。図１２に示すように、導通部２３０はリング外周部２３２に複数の切り込み２３８を有することが好ましい。
　導通部２３０がリング外周部２３２に複数の切り込み２３８を有すると、回転軸３００が回転して導通部２３０に遠心力が加わったときに、導通部２３０が導電性不織布のような弾性が乏しいものであっても、導通部２３０におけるリング外周部２３２をハウジング４００の内面４１０に、より安定して密着させることができるからである。その結果、回転軸３００とハウジング４００との導通が、より安定して確保される。

　図１１に示す好適例の場合、回転軸３００の外面３１０と、ハウジング４００の内面４１０と、の隙間４０５において、外部側から内部側へ向かって、導通部２３０、鞘管部２２０およびシール部２１０がこの順に配置されている。
　この場合、内部側のシール性を有しながら、軸とハウジングの導通を省スペースで保つことができるという効果を発揮する。

　この出願は、２０２１年７月２７日に出願された日本出願特願２０２１－１２２１４１を基礎とする優先権および２０２１年８月１９日に出願された日本出願特願２０２１－１３３８８２を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。

２　電動機（モーター）
８ａ，１０ａ　軸（回転軸）
２０　回転軸
２０ｓ　回転軸の外面
３８　ハウジング
３８ｓ　ハウジングの内面
３８ｂ　軸孔
４０，６０　密封装置
４１，６１　円筒部
４２，６２　フランジ
４３　円環部
４４，６４　シールリップ
４５，６５　ダストリップ
５０，７０　弾性環
５２，７２　剛性環
１０７　隙間
１１０　鞘管部
１１０ａ　鞘管部における固定部
１１０ｂ　鞘管部における支持部
１２０　導通部
１２０ａ　導通部におけるリング外周部
１２０ｂ　導通部におけるリング内周部
１２０ｓ　導通部の主面
２０１　本発明の密封装置
２１０　シール部
２１２　取付部
２１４　リップ部
２１４ａ　第１のリップ部
２１４ｂ　第２のリップ部
２１６　連結部
２１８　補強環
２１９　ガータースプリング
２２０　鞘管部
２２２　固定面
２２４　支持面
２３０　導通部
２３２　リング外周
２３４　主面
２３６　リング内周
２３８　切り込み
３００　回転軸
３１０　回転軸の外面
４００　ハウジング
４１０　ハウジングの内面
　ω　　回転軸の軸心

Claims

　回転軸の外面と、前記回転軸が挿入される軸孔を有するハウジングにおける前記軸孔を構成する内面と、の隙間に配置され、この隙間を密封する密封装置であって、
　前記回転軸が回転すると、前記ハウジングにおける前記軸孔を構成する前記内面に押し付けられる、前記回転軸と前記ハウジングとを導通可能な密封装置。
　前記回転軸の前記外面に固定される環状の鞘管部と、
　リング状であり、リング外周部が前記ハウジングの前記内面に接し、主面が前記鞘管部に固定されている導通部と、
を有する請求項１に記載の密封装置。
　前記回転軸が回転することで生じた遠心力によって前記導通部が前記ハウジングの前記内面に押し付けられる力が上昇する、請求項２に記載の密封装置。
　前記回転軸が嵌め込まれる円筒部と、
　前記円筒部から径方向外側に延びるフランジと、
　前記フランジからさらに径方向外側に延びて、前記ハウジングの前記軸孔の前記内周面に摺動可能に接触する少なくとも１つのリップを有し、
　前記円筒部と前記フランジは、金属と導電性ゴムの少なくとも１つから形成され、前記リップは導電性ゴムから形成されている
ことを特徴とする、請求項１に記載の密封装置。
　前記回転軸の前記外面に固定され、前記回転軸の軸心方向へ延びる固定部および前記固定部の端とつながり前記ハウジングの内面へ近づく方向へ延びる支持部を備える環状の鞘管部と、
　リング状であり、リング外周部が前記ハウジングの前記内面に接し、主面が前記鞘管部の前記支持部に固定されている導通部と、
　前記ハウジングの前記内面に付いている弾性体からなる環状の取付部と、前記回転軸の前記外面および／または前記鞘管部の前記固定部に摺動可能に接する弾性体からなるリップ部と、前記取付部と前記リップ部とをつなぐ弾性体からなる連結部と、前記取付部の内面に密着し、前記連結部とも密着する補強環と、を含み、外部からの異物の侵入を抑制し、内部の潤滑材をシールするシール部と、
を有する請求項１に記載の密封装置。
　前記導通部におけるリング内周部が前記回転軸の前記外面に接している、請求項５に記載の密封装置。
　前記導通部が導電性不織布からなる、請求項５または６に記載の密封装置。
　前記回転軸の前記外面と、前記ハウジングの前記内面と、の隙間において、前記回転軸の軸心方向の外部側から内部側へ向かって、前記導通部、前記鞘管部および前記シール部がこの順に配置されている、請求項５～７のいずれかに記載の密封装置。
　前記導通部における前記リング外周部に複数の切り込みを有する、請求項５～８のいずれかに記載の密封装置。
　前記鞘管部における前記固定部と前記支持部とが、前記回転軸の前記軸心に平行方向の断面において略垂直をなしている、請求項５～９のいずれかに記載の密封装置。