WO2022270268A1 - システムの制御装置、及びプログラム - Google Patents
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Abstract
制御装置は、ロータ(22)及びステータ巻線(21)を有する回転電機(20)と、蓄電部(31)と、上,下アームスイッチ(SWH,SWL)を有するインバータ(30)と、を備えるシステムに適用される。制御装置は、回転電機の指令トルク(Trq*)または指令回転速度(Nm*)のいずれかである指令値を算出する指令算出部(55)と、算出された指令値に基づいて、回転電機のトルクを指令トルクに制御すべく、上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う回転電機制御部(37)と、を備える。回転電機制御部は、システムの駆動状態に基づいて、回転電機及びインバータが過熱状態にならないロータの上限回転速度(Nmlim)を算出する。指令算出部は、ロータの回転速度を、算出された上限回転速度以下にする保護処理を行う。
Description
本出願は、2021年6月24日に出願された日本出願番号2021-105121号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
本開示は、システムの制御装置、及びプログラムに関する。
この種の制御装置としては、特許文献1に記載されているように、回転電機及びインバータを備えるシステムに適用されるものが知られている。制御装置は、回転電機の指令トルクを算出し、回転電機のトルクを、算出した指令トルクに制御すべく、インバータを構成する上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う。
回転電機及びインバータが過熱状態にならないようにするため、制御装置は、回転電機の温度が所定温度を超えた場合、回転電機の温度が高いほど、算出した指令トルクに対してトルク制御に用いる指令トルクの低下量を大きくする。このようにトルク制限を行うことにより、回転電機の過熱保護を図っている。
回転電機及びインバータを備えるシステムの駆動状態によっては、トルク制限が行われたとしても、回転電機及びインバータの過熱保護を行うことができない場合があり得る。
本開示は、回転電機及びインバータが過熱状態になることを抑制できるシステムの制御装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
本開示は、ロータ及びステータ巻線を有する回転電機と、
蓄電部と、
上,下アームスイッチを有し、前記ステータ巻線と前記蓄電部とを電気的に接続するインバータと、
を備えるシステムに適用されるシステムの制御装置において、
前記回転電機の指令トルクまたは指令回転速度のいずれかである指令値を算出する指令算出部と、
算出された前記指令値に基づいて、前記回転電機のトルクを前記指令トルクに制御すべく、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う回転電機制御部と、を備え、
前記回転電機制御部は、
前記システムの駆動状態に基づいて、前記回転電機及び前記インバータが過熱状態にならない前記ロータの上限回転速度を算出し、
算出した前記上限回転速度を前記上位制御部に送信し、
前記指令算出部は、前記ロータの回転速度を、受信した前記上限回転速度以下にする保護処理を行う。
蓄電部と、
上,下アームスイッチを有し、前記ステータ巻線と前記蓄電部とを電気的に接続するインバータと、
を備えるシステムに適用されるシステムの制御装置において、
前記回転電機の指令トルクまたは指令回転速度のいずれかである指令値を算出する指令算出部と、
算出された前記指令値に基づいて、前記回転電機のトルクを前記指令トルクに制御すべく、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う回転電機制御部と、を備え、
前記回転電機制御部は、
前記システムの駆動状態に基づいて、前記回転電機及び前記インバータが過熱状態にならない前記ロータの上限回転速度を算出し、
算出した前記上限回転速度を前記上位制御部に送信し、
前記指令算出部は、前記ロータの回転速度を、受信した前記上限回転速度以下にする保護処理を行う。
回転電機のトルク制限が行われたとしても、システムの過熱保護を行うことができなくなる場合として、ロータの回転速度が高い場合がある。ここで、回転電機及びインバータの少なくとも一方が過熱状態になるロータの回転速度は、システムの駆動状態に応じて変化する。
そこで、本開示の回転電機制御部は、システムの駆動状態に基づいて、回転電機及びインバータが過熱状態にならないロータの上限回転速度を算出する。指令算出部は、ロータの回転速度を、算出された上限回転速度以下にする保護処理を行う。これにより、回転電機及びインバータが過熱状態になることを抑制することができる。
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1は、第1実施形態に係るシステムの全体構成図であり、
図2は、MGCUが行う過熱保護処理の手順を示すフローチャートであり、
図3は、電源電圧の変化に伴う回転電機の動作領域の変化を示す図であり、
図4は、蓄電池の劣化進行に伴う回転電機の動作領域の変化を示す図であり、
図5は、キャリア周波数の変化に伴う回転電機の動作領域の変化を示す図であり、
図6は、デッドタイムの変化に伴う回転電機の動作領域の変化を示す図であり、
図7は、冷却水温の変化に伴う回転電機の動作領域の変化を示す図であり、
図8は、磁石温度の変化に伴う回転電機の動作領域の変化を示す図であり、
図9は、モータ温度と第1係数との関係を示す図であり、
図10は、インバータ温度と第2係数との関係を示す図であり、
図11は、EVCUが行う過熱保護処理の手順を示すフローチャートであり、
図12は、EVCUが行う過熱保護処理の手順を示すフローチャートであり、
図13は、第2実施形態に係るMGCUが行う過熱保護処理の手順を示すフローチャートであり、
図14は、第3実施形態に係るMGCUが行う過熱保護処理の手順を示すフローチャートである。
<第1実施形態>
以下、本開示に係る制御装置を電動車両に搭載した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
以下、本開示に係る制御装置を電動車両に搭載した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両10は、回転電機20を備えている。回転電機20は、3相の同期機であり、星形結線された各相のステータ巻線21を備えている。各相のステータ巻線21は、電気角で120°ずつずれて配置されている。本実施形態の回転電機20は、ロータ22に永久磁石(「界磁極」に相当)を備える永久磁石同期機である。
回転電機20は、車載主機であり、ロータ22が車両10の駆動輪11と動力伝達可能とされている。回転電機20が電動機として機能することにより発生するトルクが、ロータ22から駆動輪11に伝達される。これにより、駆動輪11が回転駆動させられる。
本実施形態の回転電機20は、車両10の車輪に一体に設けられるインホイールモータである。ロータ22と駆動輪11との間の動力伝達経路には変速機が設けられておらず、ロータ22が駆動輪11のホイールに対して固定されている。このため、ロータ22の回転速度[rpm]と、駆動輪11の回転速度[rpm]とは同じになる。車両10が左右の前輪と、左右の後輪とを備えている場合、4輪それぞれに対してインホイールモータが設けられたり、各前輪又は各後輪にインホイールモータが設けられたりする。各駆動輪11の回転電機20に対して、後述するインバータ30が個別に設けられている。なお、車輪の数は4つに限らない。
車両10は、インバータ30と、コンデンサ31(「蓄電部」に相当)と、蓄電池40とを備えている。インバータ30は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態において、各スイッチSWH,SWLは、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、具体的にはIGBTである。このため、各スイッチSWH,SWLの高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。各スイッチSWH,SWLには、フリーホイールダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。
各相において、上アームスイッチSWHのエミッタと、下アームスイッチSWLのコレクタとには、ステータ巻線21の第1端が接続されている。各相のステータ巻線21の第2端同士は、中性点で接続されている。なお、本実施形態において、各相のステータ巻線21は、ターン数が同じに設定されている。
各相の上アームスイッチSWHのコレクタと、蓄電池40の正極端子とは、正極側母線Lpにより接続されている。各相の下アームスイッチSWLのエミッタと、蓄電池40の負極端子とは、負極側母線Lnにより接続されている。正極側母線Lpと負極側母線Lnとは、コンデンサ31により接続されている。なお、コンデンサ31は、インバータ30に内蔵されていてもよいし、インバータ30の外部に設けられていてもよい。
蓄電池40は例えば組電池であり、蓄電池40の端子電圧は例えば数百Vである。蓄電池40は、例えば、リチウムイオン電池又はニッケル水素蓄電池等の2次電池である。
車両10は、電流センサ32、電圧センサ33、回転角センサ34、モータ温度センサ35、インバータ温度センサ36、及びMGCU37(Motor Generator Control Unit、「回転電機制御部」に相当)を備えている。電流センサ32は、各相のうち少なくとも2相分のステータ巻線21に流れる電流を検出する。電圧センサ33は、コンデンサ31の端子電圧を電源電圧Vdcとして検出する。回転角センサ34は、例えばレゾルバであり、ロータ22の回転角(電気角)を検出する。モータ温度センサ35は、回転電機20の温度をモータ温度Tmgdとして検出する。本実施形態において、モータ温度センサ35は、ステータ巻線21の温度をモータ温度Tmgdとして検出する。モータ温度センサ35は、例えばサーミスタである。インバータ温度センサ36は、インバータ30の温度をインバータ温度Tinvdとして検出する。インバータ温度センサ36は、例えば、感温ダイオード又はサーミスタである。インバータ30の温度は、例えば、上,下アームスイッチSWH,SWLの温度である。各センサ32~36の検出値は、MGCU37に入力される。
なお、電圧センサ33の検出値は、実際には、車両10に備えられるバッテリCUを介してMGCU37に入力される。ただし、バッテリCUを介して入力されること、及び車載CUのうちMGCU37、EVCU55及びブレーキCU62以外のCUが車両10に備えられることは要部ではないため、図1ではバッテリCU等の図示を省略した。
MGCU37は、マイコン37a(「第1コンピュータ」に相当)を主体として構成され、マイコン37aは、CPUを備えている。マイコン37aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン37aがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン37aは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、図2等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
MGCU37は、後述するEVCU55(Electric Vehicle Control Unit)から送信された指令トルクTrq*を受信する。MGCU37は、回転電機20のトルクを受信した指令トルクTrq*に制御すべく、インバータ30を構成する各スイッチSWH,SWLのスイッチング制御を行う。各相において、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとは、デッドタイムを挟みつつ交互にオンされる。
MGCU37は、力行駆動制御を行う。力行駆動制御は、蓄電池40から出力された直流電力を交流電力に変換してステータ巻線21に供給するためのインバータ30のスイッチング制御である。この制御が行われる場合、回転電機20は、電動機として機能し、力行トルクを発生する。また、MGCU37は、回生駆動制御を行う。回生駆動制御は、回転電機20で発電される交流電力を直流電力に変換して蓄電池40に供給するためのインバータ30のスイッチング制御である。この制御が行われる場合、回転電機20は、発電機として機能し、回生トルクを発生する。
車両10は、冷却水が循環する循環経路50と、冷却装置として、電動式のウォータポンプ51、ラジエータ52及び電動式のファン53を備えている。ウォータポンプ51は、給電されて駆動されることにより冷却水を循環させる。循環経路50において、ウォータポンプ51の下流側には、順に、インバータ30、回転電機20が配置されている。ただし、循環経路50における回転電機20、インバータ30の配置順序は、上述した順序に限らない。
循環経路50においてインバータ30とウォータポンプ51との間には、ラジエータ52が設けられている。ラジエータ52は、循環経路50を介して流入する冷却水を冷却してウォータポンプ51へと供給する。車両10の走行に伴いラジエータ52に吹き付けられる走行風や、ファン53を回転駆動させることによりラジエータ52に吹き付けられる風により、ラジエータ52に流入する冷却水が冷却される。
車両10は、冷却水温センサ54と、EVCU55(「指令算出部」に相当)とを備えている。冷却水温センサ54は、循環経路50のうちインバータ30へ流れる冷却水の温度を検出する。
EVCU55は、マイコン55a(「第2コンピュータ」に相当)を主体として構成され、マイコン55aは、CPUを備えている。本実施形態において、EVCU55は、MGCU37及び後述するブレーキCU62の上位制御部に相当する。マイコン55aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン55aがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン55aは、自身が備える記憶部に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、上記冷却装置の駆動処理と、図11及び図12等に示す処理とのプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
車両10は、ブレーキ装置60と、ブレーキセンサ61と、ブレーキCU62とを備えている。ブレーキ装置60は、駆動輪11を含む車輪に摩擦力を付与することにより、制動力を発生させる。ブレーキ装置60は、ブレーキペダルの踏込量に応じて動作するマスタシリンダ及びブレーキパッド等を含む。ブレーキセンサ61は、ドライバのブレーキ操作部材としてのブレーキペダルの踏込量であるブレーキストロークを検出する。ブレーキセンサ61の検出値は、ブレーキCU62に入力される。
ブレーキCU62は、マイコン62aを主体として構成され、マイコン62aは、CPUを備えている。マイコン62aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン62aがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン62aは、自身が備える記憶部に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、ブレーキ装置60の制動力制御処理等のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
MGCU36、EVCU55及びブレーキCU62は、所定の通信形式(例えばCAN)により互いに情報のやりとりが可能になっている。
車両10は、アクセルセンサ70と、操舵角センサ71とを備えている。アクセルセンサ70は、ドライバのアクセル操作部材としてのアクセルペダルの踏込量であるアクセルストロークを検出する。操舵角センサ71は、ドライバによるステアリングホイールの操舵角を検出する。アクセルセンサ70及び操舵角センサ71の検出値は、EVCU55に入力される。EVCU55は、アクセルセンサ70により検出されたアクセルストロークと、操舵角センサ71により検出された操舵角とに基づいて、ロータ22の指令回転速度Nm*を算出する。EVCU55は、ロータ22の回転速度を、算出した指令回転速度Nm*にフィードバック制御するための操作量として、指令トルクTrq*を算出する。EVCU55は、算出した指令トルクTrq*(「指令値」に相当)をMGCU36に送信する。なお、ロータ22の回転速度は、例えば、回転角センサ34の検出値に基づいて算出されればよい。また、自動運転機能が車両10に備えられている場合、EVCU55は、自動運転モードが実行されるときにおいて、例えば、車両10が備える自動運転CUにより設定される車両10の目標走行速度に基づいて、指令回転速度Nm*を算出してもよい。
ブレーキCU62は、ブレーキセンサ61により検出されたブレーキストロークに基づいて、車輪に対して付与すべき総制動トルクFbrkを算出する。ブレーキCU62は、回生可能制動トルクFgmaxをEVCU55から受信する。回生可能制動トルクFgmaxは、回生駆動制御によって車輪に付与可能な制動トルクの現状の最大値である。
ブレーキCU62は、回生可能制動トルクFgmaxと、総制動トルクFbrkとに基づいて、回生要求制動トルクFgbと、機械式要求制動トルクFmbとを算出する。例えば、ブレーキCU62は、総制動トルクFbrkから回生要求制動トルクFgbを差し引くことにより、機械式要求制動トルクFmbを算出する。
ブレーキCU62は、算出した回生要求制動トルクFgbをEVCU55に送信する。EVCU55は、受信した回生要求制動トルクFgbを指令トルクTrq*としてMGCU37に送信する。回生要求制動トルクFgbが大きいほど、回転電機20からインバータ30を介して蓄電池40へと供給される発電電力が大きくなる。
また、ブレーキCU62は、算出した機械式要求制動トルクFmbをブレーキ装置60に送信する。これにより、ブレーキ装置60により車輪へと付与される制動トルクが機械式要求制動トルクFmbに制御されるようになる。
続いて、EVCU55及びMGCU37が行う過熱保護制御について説明する。
まず、図2を用いて、MGCU37が行う過熱保護制御について説明する。図2に示す処理は、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS10では、ロータ22の現在の回転速度Nmcを取得する。回転速度Nmcは、例えば、回転角センサ34の検出値に基づいて算出したロータ22の回転速度であってもよい。なお、EVCU55から指令回転速度Nm*が送信される場合、回転速度Nmcは、指令回転速度Nm*であってもよい。
ステップS11では、電圧センサ33により検出された電源電圧Vdc、インバータ30の制御状態、冷却水温センサ54により検出された冷却水温WTd、及びロータ22の永久磁石の温度(以下、磁石温度Tφd)を取得する。ここでは、例えば、モータ温度センサ35により検出されたモータ温度Tmgdを磁石温度Tφdとして用いてもよいし、モータ温度Tmgdに基づいて推定した磁石温度Tφdを用いてもよい。
インバータ30の制御状態には、キャリア周波数、デッドタイム、制御方式及び変調方式が含まれる。制御方式には、PWM制御、過変調制御及び矩形波制御が含まれる。
PWM制御は、ステータ巻線21に印加される各相電圧のピーク値が蓄電池40の端子電圧以下になる場合において、ステータ巻線21に印加される各相電圧をPWM電圧波形にするための上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング制御である。詳しくは、PWM制御は、各相の指令電圧と、キャリア信号との大小比較に基づくスイッチング制御である。PWM制御の変調方式には、3相変調又は2相変調が含まれる。
過変調制御は、ステータ巻線21に印加される各相電圧のピーク値が蓄電池40の端子電圧を上回る場合において、ステータ巻線21に印加される各相電圧を、PWM制御によるPWM電圧波形よりも変調率の高いPWM電圧波形にするための上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング制御である。矩形波制御は、1電気角周期においてデッドタイムを挟みつつ上アームスイッチSWH及び下アームスイッチSWLをそれぞれ1回ずつオンするスイッチング制御である。
ステップS12では、ステップS11において取得された各パラメータに基づいて、回転電機20が生成可能なトルクの上限値(以下、可能トルクTrqpb)を算出する。
まず、図3を用いて、電源電圧Vdcに基づく可能トルクTrqpbの算出方法について説明する。図3に、トルクTrq及び回転速度Nmから定まる動作点の動作領域を示す。この動作領域は、第1領域RA及び第2領域RBを含む。第1領域RAは、ステータ巻線21に弱め界磁電流を流す弱め界磁制御が実行されない領域である。第2領域RBは、弱め界磁制御が実行される領域であり、第1領域RAに隣接して、かつ、第1領域RAに対して高速側の領域である。第2領域RBにおいて回転速度が高い側の境界が、回転速度Nmの最大値(以下、最高回転速度Nmax)である。
トルクTrqが正の値の場合、力行駆動制御が行われる。一方、トルクTrqが負の値の場合、回生駆動制御が行われる。
動作領域のうち、力行駆動制御が行われる領域を規定する高トルク側の境界が力行可能トルクTmCであり、回生駆動制御が行われる領域を規定する高トルク側の境界が回生可能トルクTgCである。
第1領域RAと第2領域RBとの境界を規定する回転速度が速度閾値Nthである。MGCU37は、回転速度Nmcが速度閾値Nth以下であると判定した場合、現在の動作点が第1領域RAであると判定し、回転速度Nmcが速度閾値Nthを超えていると判定した場合、現在の動作点が第2領域RBであると判定する。
図3には、電源電圧Vdcが第1電圧VB1になる場合と第2電圧VB2(>VB1)になる場合とが示されている。図3において、RA(VB1)は、電源電圧Vdcが第1電圧VB1とされる場合の第1領域RAを示し、RA(VB2)は、電源電圧Vdcが第2電圧VB2とされる場合の第1領域RAを示す。第2領域RB、速度閾値Nth、力行可能トルクTmC、回生可能トルクTgC及び最高回転速度Nmaxについても同様である。
図3に示すように、電源電圧Vdcが高いほど、動作領域が拡大する。このため、電源電圧Vdcが高いほど、現在の回転速度Nmcに対応する可能トルクTrqpbを大きくする。詳しくは、電源電圧Vdcが高いほど、現在の回転速度Nmcに対応する力行可能トルクTmCを大きくし、現在の回転速度Nmcに対応する回生可能トルクTgCの絶対値を大きくする。
ちなみに、図4に示すように、蓄電池40の劣化度合いが大きいほど、動作領域を縮小してもよい。つまり、劣化度合いが大きいほど、力行可能トルクTmCを小さくし、回生可能トルクTgCの絶対値を小さくしてもよい。
続いて、図5を用いて、制御方式がPWM制御とされる場合におけるキャリア信号の周波数(以下、キャリア周波数)に基づく可能トルクTrqpbの算出方法について説明する。図5には、キャリア周波数が第1周波数FC1になる場合と第2周波数FC2(<FC1)になる場合とが示されている。図5において、RA(FC1)は、キャリア周波数が第1周波数FC1とされる場合の第1領域RAを示し、RA(FC2)は、キャリア周波数が第2周波数FC2とされる場合の第1領域RAを示す。第2領域RB、速度閾値Nth、力行可能トルクTmC、回生可能トルクTgC及び最高回転速度Nmaxについても同様である。
図5に示すように、キャリア周波数が低いほど、電圧利用率が高くなるため、動作領域が拡大する。このため、キャリア周波数が低いほど、現在の回転速度Nmcに対応する可能トルクTrqpbを大きくする。詳しくは、キャリア周波数が低いほど、現在の回転速度Nmcに対応する力行可能トルクTmCを大きくし、現在の回転速度Nmcに対応する回生可能トルクTgCの絶対値を大きくする。
続いて、図6を用いて、デッドタイムに基づく可能トルクTrqpbの算出方法について説明する。図6には、デッドタイムが第1時間DT1になる場合と第2時間DT2(<DT1)になる場合とが示されている。図6において、RA(DT1)は、デッドタイムが第1時間DT1とされる場合の第1領域RAを示し、RA(DT2)は、デッドタイムが第2時間DT2とされる場合の第1領域RAを示す。第2領域RB、速度閾値Nth、力行可能トルクTmC、回生可能トルクTgC及び最高回転速度Nmaxについても同様である。
図6に示すように、デッドタイムが短いほど、電圧利用率が高くなるため、動作領域が拡大する。このため、デッドタイムが短いほど、可能トルクTrqpbを大きくする。詳しくは、デッドタイムが短いほど、現在の回転速度Nmcに対応する力行可能トルクTmCを大きくし、現在の回転速度Nmcに対応する回生可能トルクTgCの絶対値を大きくする。
なお、力行可能トルクTmC及び回生可能トルクTgCは、制御方式がPWM制御、過変調制御又は矩形波制御のいずれであるかに基づいて算出されてもよい。また、力行可能トルクTmC及び回生可能トルクTgCは、変調方式が2相変調又は3相変調のいずれであるかに基づいて算出されてもよい。
続いて、図7を用いて、冷却水温WTdに基づく可能トルクTrqpbの算出方法について説明する。図7には、冷却水温WTdが第1水温WT1になる場合と第2水温WT2(<WT1)になる場合とが示されている。図7では、速度閾値Nthの図示が省略されている。図7において、RA+RB(WT1)は、冷却水温WTdが第1水温WT1とされる場合の動作領域を示し、RA+RB(WT2)は、冷却水温WTdが第2水温WT2とされる場合の動作領域を示す。力行可能トルクTmC、回生可能トルクTgC及び最高回転速度Nmaxについても同様である。
図7に示すように、冷却水温WTdが低いほど、動作領域が拡大する。このため、冷却水温WTdが低いほど、現在の回転速度Nmcに対応する可能トルクTrqpbを大きくする。詳しくは、冷却水温WTdが低いほど、現在の回転速度Nmcに対応する力行可能トルクTmCを大きくし、現在の回転速度Nmcに対応する回生可能トルクTgCの絶対値を大きくする。
続いて、図8を用いて、磁石温度Tφdに基づく可能トルクTrqpbの算出方法について説明する。図8には、磁石温度Tφdが第1~第3温度Tφ1~Tφ3(Tφ1<Tφ2<Tφ3)になる場合が示されている。図8では、速度閾値Nthの図示と、回生側の動作領域の図示とが省略されている。図8において、RA+RB(Tφ1)は、磁石温度Tφdが第1温度Tφ1とされる場合の動作領域を示し、RA+RB(Tφ2)は、磁石温度Tφdが第2温度Tφ2とされる場合の動作領域を示し、RA+RB(Tφ3)は、磁石温度Tφdが第3温度Tφ3とされる場合の動作領域を示す。力行可能トルクTmC及び最高回転速度Nmaxについても同様である。
図8に示すように、磁石温度Tφdが高いほど、永久磁石の磁束量が低下するため、現在の回転速度Nmcに対応する可能トルクTrqpbを小さくする。詳しくは、磁石温度Tφdが高いほど、現在の回転速度Nmcに対応する力行可能トルクTmCを小さくし、現在の回転速度Nmcに対応する回生可能トルクTgCの絶対値を小さくする。
なお、可能トルクTrqpbは、例えば、ステップS11で取得される上記各パラメータと可能トルクTrqpbとが関係付けられたマップ情報又は数式情報に基づいて算出されればよい。
図2の説明に戻り、続くステップS13では、モータ温度センサ35により検出されたモータ温度Tmgdと、インバータ温度センサ36により検出されたインバータ温度Tinvdとを取得する。
ステップS14では、算出した可能トルクTrqpbに基づいて、回転電機20の上限トルクTrqlimを算出する。まず、力行側について説明すると、力行可能トルクTmC及び第1係数Kmgの乗算値と、力行可能トルクTmC及び第2係数Kinvの乗算値とを算出する。第1係数Kmgは、図9に示すように、1以下の値である。本実施形態において、モータ温度Tmgdが第1モータ温度Tm1以下の場合、第1係数Kmgは第1所定値KH(<1)になる。モータ温度Tmgdが第1モータ温度Tm1よりも高くて、かつ、第2モータ温度Tm2(>Tm1)未満の場合、第1係数Kmgは、モータ温度Tmgdが高いほど小さくなる。モータ温度Tmgdが第2モータ温度Tm2以上の場合、第1係数Kmgは、0よりも大きい第2所定値KL(<KH)になる。
第2係数Kinvは、図10に示すように、1以下の値である。図10及び図9において、LLは共通の横軸スケールを示す。本実施形態において、インバータ温度Tinvdが第1インバータ温度Ti1以下の場合、第2係数Kinvは上記第1所定値KHになる。インバータ温度Tinvdが第1インバータ温度Ti1よりも高くて、かつ、第2インバータ温度Ti2(>Ti1)未満の場合、第2係数Kinvは、インバータ温度Tinvdが高いほど小さくなる。インバータ温度Tinvdが第2インバータ温度Ti2以上の場合、第2係数Kinvは上記第2所定値KLになる。本実施形態において、第1インバータ温度Ti1は第1モータ温度Tm1よりも高く、第2インバータ温度Ti2は第2モータ温度Tm2よりも高い。
なお、モータ温度Tmgdが第1モータ温度Tm1以下になる場合における第1係数Kmgと、インバータ温度Tinvdが第1インバータ温度Ti1以下になる場合における第2係数Kinvとは、異なる値であってもよい。また、モータ温度Tmgdが第2モータ温度Tm2以上になる場合における第1係数Kmgと、インバータ温度Tinvdが第2インバータ温度Ti2以上になる場合における第2係数Kinvとは、異なる値であってもよい。
次に、算出した「TmC×Kmg」及び「TmC×Kinv」のうち、小さい方を力行上限トルクTrqmlimとする。
続いて、回生側について説明すると、回生可能トルクTgC及び第1係数Kmgの乗算値と、回生可能トルクTgC及び第2係数Kinvの乗算値とを算出する。次に、算出した「TgC×Kmg」の絶対値及び「TgC×Kinv」の絶対値のうち、小さい方の符号を負にした値を回生上限トルクTrqglimとする。
なお、第1係数Kmgは、例えば、回転電機20のトルクが「TmC×Kmg」又は「TgC×Kmg」とされる場合において、回転電機20が過熱状態になることなく連続して駆動できる値に設定されればよい。本実施形態において、回転電機20が過熱状態になるとは、回転電機20(具体的にはステータ巻線21)の温度が回転電機20(具体的にはステータ巻線21)の許容上限温度を超えることである。また、第2係数Kinvは、例えば、回転電機20のトルクが「TmC×Kinv」又は「TgC×Kinv」とされる場合において、インバータ30が過熱状態になることなく連続して駆動できる値に設定されればよい。本実施形態において、インバータ30が過熱状態になるとは、インバータ30の温度がインバータ30の許容上限温度を超えることである。
ステップS15では、ステップS11において取得された各パラメータに基づいて、ロータ22の上限回転速度Nmlimを算出する。本実施形態では、上限回転速度Nmlimを速度閾値Nthに設定する。この設定により、回転電機20及びインバータ30が過熱状態にならないようにする。つまり、弱め界磁制御が行われている場合、所定トルクを発生させるためにステータ巻線21に流す電流ベクトルの大きさは、弱め界磁制御が行われていない場合よりも大きくなる。このため、回転電機20及びインバータ30が過熱状態にならないようにするには、弱め界磁制御が極力実施されないことが望ましい。以上から、上限回転速度Nmlimを速度閾値Nthに設定する。
まず、図3を用いて、電源電圧Vdcに基づく上限回転速度Nmlimの算出方法について説明する。図3に示すように、電源電圧Vdcが高いほど、動作領域が拡大し、速度閾値Nthのラインが高速側にシフトする。このため、電源電圧Vdcが高いほど、上限回転速度Nmlimを高くする。本実施形態では、力行可能トルクTmCから回生可能トルクTgCまでの指令トルクTrq*と関係付けられた上限回転速度Nmlimを、電源電圧Vdcが高いほど高くする。指令トルクTrq*と関係付けられた上限回転速度Nmlimが、後述するステップS16において送信対象の情報とされる。
ちなみに、図4に示すように、蓄電池40の劣化度合いが大きいほど、動作領域が縮小することに鑑み、劣化度合いが大きいほど、上限回転速度Nmlimを低くしてもよい。
続いて、図5を用いて、制御方式がPWM制御とされる場合におけるキャリア周波数に基づく上限回転速度Nmlimの算出方法について説明する。図5に示すように、キャリア周波数が低いほど、動作領域が拡大し、速度閾値Nthのラインが高速側にシフトする。このため、キャリア周波数が低いほど、上限回転速度Nmlimを高くする。本実施形態では、力行可能トルクTmCから回生可能トルクTgCまでの指令トルクTrq*と関係付けられた上限回転速度Nmlimを、キャリア周波数が低いほど高くする。
続いて、図6を用いて、デッドタイムに基づく上限回転速度Nmlimの算出方法について説明する。図6に示すように、デッドタイムが短いほど、動作領域が拡大し、速度閾値Nthのラインが高速側にシフトする。このため、デッドタイムが短いほど、上限回転速度Nmlimを高くする。本実施形態では、力行可能トルクTmCから回生可能トルクTgCまでの指令トルクTrq*と関係付けられた上限回転速度Nmlimを、デッドタイムが短いほど高くする。
なお、上限回転速度Nmlimは、制御方式がPWM制御、過変調制御又は矩形波制御のいずれであるかに基づいて算出されてもよい。また、上限回転速度Nmlimは、変調方式が2相変調又は3相変調のいずれであるかに基づいて算出されてもよい。
続いて、冷却水温WTdに基づく上限回転速度Nmlimの算出方法について説明する。冷却水温WTdが低いほど、図7に示すように動作領域が拡大し、速度閾値Nthのラインが高速側にシフトする。このため、冷却水温WTdが低いほど、上限回転速度Nmlimを高くする。本実施形態では、力行可能トルクTmCから回生可能トルクTgCまでの指令トルクTrq*と関係付けられた上限回転速度Nmlimを、冷却水温WTdが低いほど高くする。
続いて、磁石温度Tφdに基づく上限回転速度Nmlimの算出方法について説明する。磁石温度Tφdが高いほど、永久磁石の磁束量が低下するため、速度閾値Nthのラインが高速側にシフトする。このため、磁石温度Tφdが高いほど、上限回転速度Nmlimを高くする。本実施形態では、力行可能トルクTmCから回生可能トルクTgCまでの指令トルクTrq*と関係付けられた上限回転速度Nmlimを、磁石温度Tφdが高いほど高くする。
なお、上限回転速度Nmlimは、例えば、ステップS11で取得される上記各パラメータと上限回転速度Nmlimとが関係付けられたマップ情報又は数式情報に基づいて算出されればよい。
図2の説明に戻り、ステップS16では、ステップS14で算出した力行上限トルクTrqmlim及び回生上限トルクTrqglimと、ステップS15で算出した上限回転速度NmlimとをEVCU55に対して送信する。詳しくは、現在の回転速度Nmcと関係付けられた各上限トルクTrqmlim,Trqglimの情報と、力行可能トルクTmCから回生可能トルクTgCまでの指令トルクTrq*と関係付けられた上限回転速度Nmlimの情報とをEVCU55に対して送信する。
続いて、図11及び図12を用いて、EVCU55が行う過熱保護制御について説明する。図11及び図12に示す処理は、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、EVCU55の制御周期とMGCU37の制御周期とは、同じ周期であってもよいし、異なる周期であってもよい。
まず、図11の処理について説明する。この処理は、車両10の走行速度を制限する処理である。
ステップS20では、車両10の現在の走行速度Vsを取得する。なお、走行速度Vsは、例えば、回転角センサ34の検出値に基づいて算出されればよい。
ステップS21では、MGCU37から送信された上限回転速度Nmlimを受信する。
ステップS22では、ロータ22の回転速度が上限回転速度Nmlimであると仮定した場合における車両10の走行速度(以下、上限走行速度Vlim)を算出する。例えば、下式(eq1)を用いて上限走行速度Vlimを算出すればよい。下式(eq1)において、RTは車輪の外径を示す。
ステップS23では、現在の走行速度Vsが、現在の指令トルクTrq*に対応する上限走行速度Vlim以下であるか否かを判定する。ステップS23において否定判定した場合には、現在の走行速度Vsが上限走行速度Vlim以下になるまで、車両10の走行速度Vsを低下させる処理を行う。
走行速度Vsを上限走行速度Vlim以下にするのは、以下に説明する理由のためである。弱め界磁制御が行われている場合、ステータ巻線21に流す電流ベクトルの大きさが、弱め界磁制御が行われていない場合よりも大きくなる。その結果、動作点が第2領域RB内にある場合において指令トルクTrq*を例えば0まで低下させたとしても、ステータ巻線21に流れる相電流の実効値を回転電機20(具体的にはステータ巻線21)の許容上限電流(具体的には例えば、常時許容電流)以下にできないことがある。
この場合、モータ温度Tmgdがさらに上昇してシャットダウン温度Tshutに到達し、各相の上,下アームスイッチSWH,SWLを全てオフするシャットダウン制御がMGCU37により行われる。しかしながら、高速側領域である第2領域RBでは、ステータ巻線21に誘起される逆起電圧が高いため、ステータ巻線21の線間電圧のピーク値がコンデンサ31の端子電圧を超え得る。この場合、電力回生が発生し、ステータ巻線21、上アームスイッチSWHのダイオードDH、コンデンサ31、及び下アームスイッチSWLのダイオードDLを含む閉回路に電流が流れる。その結果、回転電機20及びインバータ30の温度がさらに上昇し、回転電機20及びインバータ30が故障し得る。そこで、走行速度を低下させてロータ22の回転速度を低下させることにより、逆起電圧を低下させ、電力回生が発生しないようにする。これにより、回転電機20及びインバータ30が過熱異常で故障することを防止する。
本実施形態では、以下(A),(B)の少なくとも1つを実施することにより、走行速度を低下させればよい。
(A)ブレーキ装置60により車輪に制動力を付与する指示をブレーキCU62に行う処理。
機械式のブレーキ装置60によれば、回生トルクを発生させるための電流をステータ巻線21に流す必要がない。このため、回転電機20及びインバータ30の温度上昇を好適に抑制しつつ、ロータ22の回転速度を低下させ、ひいては走行速度を低下させる。これにより、動作点を第2領域RBから第1領域RAに移行させ、弱め界磁制御が実行されないようにし、回転電機20及びインバータ30を過熱から保護する。
また、ブレーキ装置60によれば、インバータ30のスイッチング制御によらず、ロータ22の回転速度を低下させ、走行速度を低下させることができる。このため、例えばインバータ30の制御が停止している場合であっても、ロータ22の回転速度を低下させてステータ巻線21に流す電流を的確に制限でき、回転電機20及びインバータ30を過熱から保護する。
なお、ブレーキ装置60により車輪に制動力を付与する処理は、例えば以下の場合にも有効である。車両10の走行路面が下り勾配の場合、指令トルクTrq*を低下させたとしても、ロータ22の回転速度が低下しない場合があり得る。また、蓄電池40のSOCが規定量よりも高い高SOC状態の場合、蓄電池40の過充電を防止するために回生トルクが制限されたり、回生トルクを発生できなかったりする場合があり得る。これらの場合において、ブレーキ装置60により車輪に制動力を付与する処理が有効である。
(B)回生駆動制御の実行指示をMGCU37に行う処理。
この処理は、具体的には、MGCU37に送信する指令トルクTrq*を負の値にする処理となる。この場合、回生トルクを発生させることができ、走行速度が低下させられる。これにより、動作点を第2領域RBから第1領域RAに移行させ、回転電機20及びインバータ30を過熱から保護する。なお、ステータ巻線21に流れる相電流の実効値を、回転電機20(具体的にはステータ巻線21)の許容上限電流(具体的には例えば、常時許容電流)以下にするように回生駆動制御が行われればよい。
なお、EVCU55からMGCU37に指令回転速度Nm*が送信される場合、EVCU55は、MGCU37に送信する指令回転速度Nm*を低下させる処理を行ってもよい。
この処理により、ロータ22の回転速度が低下させられ、車両10の走行速度が低下させられる。これにより、動作点を第2領域RBから第1領域RAに移行させ、回転電機20及びインバータ30を過熱から保護する。なお、車両10の減速度が所定の減速度以下となるように、送信する指令回転速度Nm*を漸減させればよい。所定の減速度は、車両10の乗員の安全を確保できる値(例えば、0.2G)に設定されていればよい。
続いて、図12の処理について説明する。この処理は、トルクを制限する処理である。
ステップS30では、MGCU37から送信された上限トルクTrqlim(具体的には、力行上限トルクTrqmlim及び回生上限トルクTrqglim)を受信する。
ステップS31では、力行駆動制御が行われている場合、MGCU37に送信する指令トルクTrq*が力行上限トルクTrqmlim以下であるか否かを判定する。指令トルクTrq*が力行上限トルクTrqmlimを超えていると判定した場合には、ステップS32に進み、MGCU37に送信する指令トルクTrq*を低下させて力行上限トルクTrqmlim以下にする。これにより、回転電機20及びインバータ30を過熱から保護する。
一方、回生駆動制御が行われている場合、MGCU37に送信する指令トルクTrq*の絶対値が回生上限トルクTrqglimの絶対値以下であるか否かを判定する。指令トルクTrq*の絶対値が回生上限トルクTrqglimの絶対値を超えていると判定した場合には、ステップS32に進み、MGCU37に送信する指令トルクTrq*の絶対値を低下させて回生上限トルクTrqglimの絶対値以下にする。これにより、回転電機20及びインバータ30を過熱から保護する。
以上説明した本実施形態では、MGCU37及びEVCU55が連携して回転電機20及びインバータ30の過熱保護を行う。ここで、MGCU37により、電源電圧Vdcや冷却水温WTd等の各パラメータに基づいて上限回転速度Nmlimが算出される。このため、回転電機20の動作点の動作範囲を極力制限することなく、回転電機20の制御を継続できる。その結果、車両10の駆動力を極力制限することなく、回転電機20及びインバータ30の過熱保護を行うことができる。
<第1実施形態の変形例>
・CAN等を介した各CU37,55,62間の通信には遅れを伴う。このため、MGCU37は、通信遅れの影響を加味して、今後予想される動作点に対応する上限トルクTrqlim及び上限回転速度NmlimをEVCU55に対して送信してもよい。
・CAN等を介した各CU37,55,62間の通信には遅れを伴う。このため、MGCU37は、通信遅れの影響を加味して、今後予想される動作点に対応する上限トルクTrqlim及び上限回転速度NmlimをEVCU55に対して送信してもよい。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、MGCU37における上限回転速度Nmlimの算出方法が変更されている。
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、MGCU37における上限回転速度Nmlimの算出方法が変更されている。
図13を用いて、MGCU37が行う過熱保護制御について説明する。図13に示す処理は、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS40では、上限回転速度Nmlimを、ロータ22の回転に伴いステータ巻線21に誘起される線間電圧のピーク値Vemfと、電圧センサ33により検出された電源電圧Vdcとが同じになるようなロータ22の回転速度にする。線間電圧はロータ22の回転速度に依存するため、例えば、ロータ22の回転速度、電源電圧Vdc及び上限回転速度Nmlimが関係付けられたマップ情報又は数式情報と、回転速度と、電源電圧Vdcとに基づいて、上限回転速度Nmlimを算出すればよい。なお、本実施形態の上限回転速度Nmlimは、指令トルクTrq*が0の場合の速度閾値Nthよりも高い値となる。
ステップS41では、ステップS40で算出した上限回転速度NmlimをEVCU55に対して送信する。
以上説明した本実施形態によれば、例えばインバータ30の制御が停止している場合であっても、ロータ22の回転速度を低下させてステータ巻線21に流す電流を的確に制限でき、回転電機20及びインバータ30を過熱から保護できる。
<第2実施形態の変形例>
ステップS40において、磁石温度Tφdが、磁石温度Tφdの取り得る範囲の下限値であるとした場合における線間電圧のピーク値と、電源電圧Vdcとが同じになるようなロータ22の回転速度を上限回転速度Nmlimとして算出してもよい。この場合、ステータ巻線21に誘起される線間電圧が高くなることを想定して上限回転速度Nmlimが算出される。このため、電源電圧Vdcやロータ22の回転速度の一時的な変動に起因して動作点が一時的に変動する場合であっても、動作点を第1領域RAに極力とどまらせることができる。
ステップS40において、磁石温度Tφdが、磁石温度Tφdの取り得る範囲の下限値であるとした場合における線間電圧のピーク値と、電源電圧Vdcとが同じになるようなロータ22の回転速度を上限回転速度Nmlimとして算出してもよい。この場合、ステータ巻線21に誘起される線間電圧が高くなることを想定して上限回転速度Nmlimが算出される。このため、電源電圧Vdcやロータ22の回転速度の一時的な変動に起因して動作点が一時的に変動する場合であっても、動作点を第1領域RAに極力とどまらせることができる。
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。実施形態では、MGCU37における上限回転速度Nmlimの算出方法が変更されている。
以下、第3実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。実施形態では、MGCU37における上限回転速度Nmlimの算出方法が変更されている。
図14を用いて、MGCU37が行う過熱保護制御について説明する。図14に示す処理は、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS50では、上限回転速度Nmlimを、回転電機20のトルクを0にしつつ、ステータ巻線21に流れる電流の実効値を許容上限電流(具体的には例えば、常時許容電流)以下にできるロータ22の回転速度の上限値にする。なお、本実施形態の上限回転速度Nmlimは、第2実施形態の上限回転速度Nmlimよりも高い値となる。
ステップS51では、ステップS50で算出した上限回転速度NmlimをEVCU55に対して送信する。
以上説明した本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
EVCU55は、指令回転速度Nm*をMGCU37に送信してもよい。この場合、MGCU37は、ロータ22の回転速度を、受信した指令回転速度Nm*にフィードバック制御するための操作量として、指令トルクTrq*を算出すればよい。
・インバータを構成する半導体スイッチとしては、IGBTに限らず、例えば、ボディダイオードを内蔵するNチャネルMOSFETであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子がドレインであり、低電位側端子がソースである。
・ロータ22と駆動輪11との間の動力伝達経路に変速機が設けられていてもよい。
・EVCU55、MGCU37及びブレーキCU62の演算機能が1つのCUに集約されていてもよい。
・回転電機としては、インホイールモータに限らず、例えば、車両の車体に備えられるいわゆるオンボードモータであってもよい。
・回転電機としては、星形結線されたものに限らず、例えばΔ結線されたものであってもよい。
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
Claims (10)
- ロータ(22)及びステータ巻線(21)を有する回転電機(20)と、
蓄電部(31)と、
上,下アームスイッチ(SWH,SWL)を有し、前記ステータ巻線と前記蓄電部とを電気的に接続するインバータ(30)と、
を備えるシステムに適用されるシステムの制御装置において、
前記回転電機の指令トルク(Trq*)または指令回転速度(Nm*)のいずれかである指令値を算出する指令算出部(55)と、
算出された前記指令値に基づいて、前記回転電機のトルクを前記指令トルクに制御すべく、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う回転電機制御部(37)と、を備え、
前記回転電機制御部は、前記システムの駆動状態に基づいて、前記回転電機及び前記インバータが過熱状態にならない前記ロータの上限回転速度(Nmlim)を算出し、
前記指令算出部は、前記ロータの回転速度を、算出された前記上限回転速度以下にする保護処理を行う、システムの制御装置。 - 前記システムは、前記ロータから動力が伝達されることにより回転する駆動輪(11)を有する車両(10)に備えられ、
前記指令算出部は、前記保護処理として、
前記ロータの回転速度が前記上限回転速度になる場合における前記車両の上限走行速度(Vslim)を算出し、
前記車両の走行速度を前記上限走行速度以下にする処理を行う、請求項1に記載のシステムの制御装置。 - 前記指令算出部は、前記保護処理として、前記回転電機制御部で用いられる前記指令値を低下させることにより、前記車両の走行速度を前記上限走行速度以下にする処理を行う、請求項2に記載のシステムの制御装置。
- 前記車両は、前記駆動輪に制動力を付与する機械式のブレーキ装置(60)を備え、
前記指令算出部は、前記保護処理として、前記ブレーキ装置により前記駆動輪に制動力を付与することにより、前記車両の走行速度を前記上限走行速度以下にする処理を行う、請求項2又は3に記載のシステムの制御装置。 - 前記回転電機制御部は、
前記ロータの回転速度が速度閾値(Nth)以上になる場合、前記ステータ巻線に弱め界磁電流を流すように前記スイッチング制御を行い、
前記上限回転速度を前記速度閾値にする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステムの制御装置。 - 前記回転電機制御部は、前記上限回転速度を、界磁極を含む前記ロータの回転に伴い前記ステータ巻線に誘起される線間電圧のピーク値と、前記蓄電部の電圧とが同じになるような前記ロータの回転速度にする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステムの制御装置。
- 前記上限回転速度は、前記ロータに含まれる界磁極の温度が、該温度の取り得る範囲の下限値であるとした場合における前記線間電圧のピーク値と、前記蓄電部の電圧とが同じになるような前記ロータの回転速度である、請求項6に記載のシステムの制御装置。
- 前記回転電機制御部は、前記上限回転速度を、前記回転電機のトルクを0にしつつ、前記ステータ巻線に流れる電流を許容上限電流以下にできる前記ロータの回転速度の上限値にする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステムの制御装置。
- 前記回転電機制御部は、前記システムの駆動状態として、PWM制御により前記スイッチング制御を行う場合におけるキャリア信号の周波数、前記スイッチング制御を行う場合におけるデッドタイム、前記蓄電部の電圧、及び前記ロータに含まれる界磁極の温度のうち、少なくとも1つを用いて、前記上限回転速度を算出する、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステムの制御装置。
- ロータ(22)及びステータ巻線(21)を有する回転電機(20)と、
蓄電部(31)と、
上,下アームスイッチ(SWH,SWL)を有し、前記ステータ巻線と前記蓄電部とを電気的に接続するインバータ(30)と、
コンピュータ(37a,55a)と、
を備えるシステムに適用されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記回転電機の指令トルク(Trq*)または指令回転速度(Nm*)のいずれかである指令値を算出する処理と、
算出した前記指令値に基づいて、前記回転電機のトルクを前記指令トルクに制御すべく、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う処理と、
前記システムの駆動状態に基づいて、前記回転電機及び前記インバータが過熱状態にならない前記ロータの上限回転速度(Nmlim)を算出する処理と、
算出した前記上限回転速度を前記第1コンピュータに送信する処理と、
前記ロータの回転速度を、受信した前記上限回転速度以下にする保護処理と、を実行させる、プログラム。
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