WO2022255307A1 - リチウムイオン二次電池用電極シート - Google Patents

リチウムイオン二次電池用電極シート Download PDF

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Abstract

本発明により、 リチウムイオン電池用活物質と、繊維状炭素と、フッ素系ポリマーと、を少なくとも含有するリチウムイオン二次電池用電極シートであって、 前記リチウムイオン二次電池用電極シートの膜厚が50~2000(μm)、引張破断強度が0.2(N/mm)以上であり、 前記繊維状炭素の平均繊維径が100~900(nm)であり、 前記繊維状炭素の電極シート中の含有量が0.1~10(質量%)、 であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極シートが提供される。

Description

リチウムイオン二次電池用電極シート
 本発明は、リチウムイオン電池用活物質と、繊維状炭素と、フッ素系ポリマーとを少なくとも含むリチウムイオン二次電池用電極シートに関する。
 リチウムイオン二次電池は、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う二次電池であり、正極にリチウム金属酸化物を電極活物質として用い、負極にグラファイトなどの炭素材を電極活物質として用いるものが主流となっている。リチウムイオン二次電池は、二次電池の中でもエネルギー密度が高い特徴を持つことから、携帯電話などの小型機器から、電気自動車などの大型機器まで、応用範囲が広がってきている。
 リチウムイオン二次電池用電極シートは、一般に、リチウムイオン電池用活物質、導電助剤、バインダー及び溶媒を含むスラリーを調製し、このスラリーを薄膜塗布した後、溶媒を除去することによって作製される。そのため、リチウムイオン電池用活物質、導電助剤、バインダー及び溶媒を均一に分散するスラリー調製工程や、溶媒除去時の乾燥工程が必要であり、製造工程が煩雑となる。また、溶媒除去時の乾燥過程で電極シートに割れが生じ易くなるため、電極シートの膜厚を大きくすることが困難である。さらに、導電性を向上させる目的で、導電助剤として繊維状炭素が用いられることがあるが、アスペクトが大きい繊維状炭素は、スラリーを薄膜塗布する過程で塗布方向に配向し易い。その結果、電極シートの機械的強度に異方性が生じ易い。
 特許文献1には、正極活物質としてコバルト酸リチウム、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン、導電材としてアセチレンブラック、溶媒としてN-メチルピロリドンを用いてスラリーを作製し、このスラリーを塗布、乾燥、ロールプレスを行うことにより、正極を作製したことが記載されている。
 特許文献2及び3には、圧延装置を用いてポリテトラフルオロエチレンをフィブリル化させることによって作製されるドライフィルムが開示されているが、繊維状炭素を用いることに関する記載は無い。
 
国際公開2014/115852公報 特表2020-522090号公報 特表2021-504877号公報
 本発明の解決しようとする課題は、溶媒を用いずに作製できるリチウムイオン二次電池用電極シート及びその製造方法を提供することにある。
 
 本発明者らは、上記の従来技術に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、電極シート内で所定の繊維状炭素を用いるとともにバインダーとしてフッ素系ポリマーを用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
 即ち、本発明の電極シートは、フッ素系ポリマーによって支持されて成る電極シートであり、その製造工程において、成膜するために溶媒を使用しないことを特徴とする。
 上記課題を解決する本発明は、以下に記載されるとおりである。
 〔1〕 リチウムイオン電池用活物質と、繊維状炭素と、フッ素系ポリマーと、を少なくとも含有するリチウムイオン二次電池用電極シートであって、
 前記リチウムイオン二次電池用電極シートの膜厚が50~2000(μm)、引張破断強度が0.20(N/mm)以上であり、
 前記繊維状炭素の平均繊維径が100~900(nm)であり、
 前記リチウムイオン二次電池用電極シート中における前記繊維状炭素の含有量が0.1~10(質量%)であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極シート。
 上記〔1〕に記載の発明は、フッ素系ポリマーによってシート形態が維持されているリチウムイオン二次電池用電極シートである。この電極シートは、スラリーを経由せずに製造されたドライフィルムと呼ばれる電極シートである。
 〔2〕 前記繊維状炭素以外の炭素系導電助剤をさらに含む〔1〕に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
 上記〔2〕に記載の発明は、繊維状炭素以外の炭素系導電助剤をさらに含む。ここでいう炭素系導電助剤は、〔1〕で規定された平均繊維径のみが相違している繊維状炭素を意味するものではない。
 〔3〕 前記繊維状炭素の平均繊維長が10~50(μm)である〔1〕に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
 〔4〕 前記繊維状炭素の充填密度0.8(g/cm)で充填した際の粉体体積抵抗率が4.00×10-2(Ω・cm)以下である〔1〕に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
 〔5〕 前記フッ素系ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである〔1〕に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
 〔6〕 前記リチウムイオン二次電池用電極シートの空隙率が5~60(体積%)である〔1〕に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
 〔7〕 前記リチウムイオン二次電池用電極シートの引張破断強度(N/mm)と膜厚(mm)との積が0.04(N/mm)以上である〔1〕に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
 〔8〕 前記リチウムイオン二次電池用電極シートの膜厚方向の電気伝導度が8.0×10-4(S/cm)以上である、〔1〕に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
 
 本発明のリチウムイオン二次電池用電極シートは、その製造工程において、成膜するための溶媒を使用しないため、製造が簡便である。
 
図1は実施例1で得られた電極シートの表面を示したSEM写真(5000倍)である。 図2は実施例1で得られた電極シートの断面を示したSEM写真(5000倍)である。 図3は実施例2で得られた電極シートの表面を示したSEM写真(5000倍)である。 図4は実施例2で得られた電極シートの断面を示したSEM写真(5000倍)である。 図5は比較例1で得られた電極シートの表面を示したSEM写真(5000倍)である。 図6は比較例1で得られた電極シートの断面を示したSEM写真(5000倍)である。 図7は比較例2で得られた電極シートの表面を示したSEM写真(5000倍)である。
(1) リチウムイオン二次電池用電極シート
 本発明のリチウムイオン二次電池用電極シート(以下、「電極シート」と略記する場合がある)は、リチウムイオン電池用活物質と、繊維状炭素と、フッ素系ポリマーと、を少なくとも含有して成る。本発明の電極シートは、電極シート中でフッ素系ポリマーが繊維状の形態を含んで分散していることが好ましい。具体的には、フッ素系ポリマーが部分的乃至全体的にフィブリル化して、当該フィブリル化したフッ素系ポリマーが繊維状炭素と協働して電極シートの形態を維持するように分散していることが好ましい。特に、フィブリル化したフッ素系ポリマーと繊維状炭素とが交絡して繊維状炭素を支持し、且つ繊維状炭素によって空隙を形成するように電極シートが構成されていることがより好ましい。このように電極シートを構成することで、所定の繊維長を有する繊維状炭素によって電極シート全体としての形態安定性を維持しつつも、電極シート内の活物質の体積変動を許容できる構成とすることができる。
 電極シートの膜厚は、50~2000μmである。電極シートの膜厚は、80μm以上であることが好ましく、100μm以上、120μm以上、150μm以上、180μm以上、200μm以上、250μm以上、300μm以上であることがこの順で好ましい。50μm未満である場合、シート形状を維持し難くなる。また、高容量セルを製造しようとする場合、セパレータや集電体を多量に使用することになり、その結果、セル内における電極シートの体積占有率が低下する。これは、エネルギー密度の観点から好ましくなく、用途がかなり制限されてしまう。特に、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう。
 電極シートの膜厚は、電極シートの安定的製造の観点から、2000μm以下である。電極シートの膜厚は1500μm以下であることが好ましく、1200μm以下、1000μm以下、800μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下であることがこの順で好ましい。
 電極シートの引張破断強度は、0.20N/mm以上であることが好ましい。引張破断強度は0.25N/mm以上であることがより好ましく、0.30N/mm以上、0.40N/mm以上、0.50N/mm以上、0.60N/mm以上、0.65N/mm以上であることがこの順で好ましい。0.20N/mm未満である場合、電池の取扱性が低下し易い。また、リチウムイオン二次電池の充放電に伴う活物質の体積変化によって、電池性能が低下し易い。
 電極シートの引張破断強度の上限値は特に限定されないが、一般的には10.0N/mm以下であり、引張破断強度は5.0N/mm以下であることが好ましく、3.0N/mm以下、2.0N/mm以下、1.5N/mm以下、1.0N/mm以下であることがこの順で好ましい。
 電極シートの引張破断強度(N/mm)と膜厚(mm)との積は、0.04(N/mm)以上であることが好ましく、0.05(N/mm)以上、0.06(N/mm)以上、0.08(N/mm)以上、0.1(N/mm)以上、0.15(N/mm)以上、0.2(N/mm)以上であることがこの順で好ましい。0.04(N/mm)未満である場合、シート形状を維持し難い。
 電極シートの引張破断強度(N/mm)と膜厚(mm)との積の上限値は、特に限定されないが、一般的には5.0(N/mm)以下であり、3.0(N/mm)以下、2.0(N/mm)以下、1.5(N/mm)以下、1.0(N/mm)以下、0.8(N/mm)以下、0.6(N/mm)以下、0.5(N/mm)以下、0.4(N/mm)以下であることがこの順で好ましい。5.0(N/mm)を超える場合、バインダーとして用いるフッ素系ポリマーの配合率が多くなり、活物質の配合率が相対的に低下するため、電池性能を低下させ易い。
 電極シートの膜厚方向の電気伝導度は、8.0×10-4S/cm以上であることが好ましい。電気伝導度は、1.0×10-3S/cm以上であることが好ましく、1.5×10-3S/cm以上、3.0×10-3S/cm以上、5.0×10-3S/cm以上、7.0×10-3S/cm以上、9.0×10-3S/cm以上、1.0×10-2S/cm以上であることがこの順で好ましい。このような電気伝導度は、導電助剤として所定の繊維状炭素を含有することにより、達成することができる。
 電極シートの膜厚方向の電気伝導度σ(S/cm)を、炭素系導電助剤の含有量Xc(質量%)で除したσ/Xcは、1.0×10-4以上であることが好ましい。
 σ/Xcは、1.5×10-4以上であることがより好ましく、2.0×10-4以上、3.0×10-4以上、4.0×10-4以上、5.0×10-4以上であることがこの順で好ましい。σ/Xcが1.0×10-4未満の場合、炭素系導電助剤の含有量を過剰にする必要があり、エネルギー密度向上の観点から好ましくない。σ/Xcの上限は特に限定されないが、一般的には1.0×10-2以下である。
 電極シートの見かけ密度は、1.0~3.0g/cmであることが好ましい。見かけ密度は、1.2g/cm以上であることがより好ましく、1.5g/cm以上、1.8g/cm以上、2.0g/cm以上であることがこの順でより好ましい。また、電極シートの見かけ密度は、2.8g/cm以下であることがより好ましく、2.5g/cm以下、2.2g/cm以下であることがこの順でより好ましい。電極シートの見かけ密度をこの範囲とすることにより、活物質の体積変化を伴う充放電サイクルを繰り返しても、電極シートにクラックを生じることが特に抑制される。また、電極シートの真密度は、2.0~4.0g/cmであることが好ましく、3.0~3.7g/cmであることがより好ましい。なお、電極シートの見かけ密度とは、後述の式(2)によって算出される密度を意味する。
 電極シートは空隙を有する。その空隙率は、5.0体積%以上60体積%以下であることが好ましい。空隙率がこの範囲であると、活物質の体積変化を伴う充放電サイクルを繰り返しても、電極シートにクラックを生じることが特に抑制される。このような空隙を有する電極シートを用いることにより、電子伝導性及びイオン伝導性が特に高く、高出力のリチウムイオン二次電池を構成することができる。空隙率は、10体積%以上であることが好ましく、15体積%以上、20体積%以上、25体積%以上、30体積%以上、35体積%以上であることがこの順で特に好ましい。空隙率の上限値は、55体積%以下であることが好ましく、50体積%以下であることがより好ましく、45体積%以下であることが特に好ましい。
 電極シートの空隙率は、繊維状炭素、フッ素系ポリマー、及び活物質の材質、大きさ、含有量、さらには電極シートを作製する際の成形条件等を制御することによって調整することができる。
 空隙率の算出方法は特に限定されないが、例えば電極シートの見かけ密度及び真密度から以下の式(1)に基づいて算出する方法や、X線CTなどのトモグラフィーにより得られた3次元画像から算出する方法などがある。
 空隙率(体積%) = (真密度 - 見かけ密度) / 真密度 ×100 ・・・式(1)
 式(1)に基づいて算出する場合には、真密度及び見かけ密度をそれぞれ測定する。真密度の測定方法は、例えば、電極シートを構成する各材料の真密度及び質量比率に基づいて算出する方法や、電極シートを粉砕後に気相置換法(ピクノメータ法)又は液相法(アルキメデス法)を用いて測定する方法がある。電極シートの見かけ密度は、例えば電極シートの質量と体積から、以下の式(2)により算出することができる。
 電極シートの見かけ密度 = 電極シートの質量 / (電極シートの膜厚 × 面積) ・・・式(2)
 
(1-2) 活物質
 本発明の電極シートは、少なくとも正極活物質又は負極活物質を含む。
 <正極活物質>
 本発明の電極シートに含まれる正極活物質としては、リチウムイオン二次電池において、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム含有金属酸化物の中から、任意のものを1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。このリチウム含有金属酸化物としては、リチウムと、Co、Mg、Mn、Ni、Fe、Al、Mo、V、W及びTiなどからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含む複合酸化物を挙げることができる。
 具体的には、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1-a、LiCo1-b、LiCoFe1-b、LiMn、LiMnCo2-c、LiMnNi2-c、LiMn2-c、LiMnFe2-c(ここで、x=0.02~1.2、a=0.1~0.9、b=0.8~0.98、c=1.2~1.96、z=2.01~2.3である。)、LiFePOなどからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。好ましいリチウム含有金属酸化物としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1-a、LiMn、LiCo1-b(ここで、x、a、b及びzは上記と同じである。)、LiFePOからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。なお、xの値は充放電開始前の値であり、充放電により増減する。
 上記正極活物質は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、当該正極活物質の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、0.05~7μmであることがより好ましく、1~7μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が10μmを超えると、大電流下での充放電反応の効率が低下してしまう場合がある。
 本発明の電極合剤層における正極活物質の含有率は、60質量%以上であることが好ましく、70~98.5質量%であることがより好ましく、75~98.5質量%であることがさらに好ましい。60質量%未満である場合、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう場合がある。98.5質量%を超える場合、フッ素系ポリマーが少な過ぎて電極合剤層にクラックが発生したり、電極合剤層が集電体から剥離する場合がある。さらに、繊維状炭素や炭素系導電助剤の含有量が少な過ぎて電極合剤層の導電性が不十分になる場合がある。
 <負極活物質>
 本発明の電極シートに含まれる負極活物質としては、リチウムイオン二次電池において、負極活物質として知られている従来公知の材料の中から、任意のものを1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料として、炭素材料、Si及びSnの何れか、又はこれらの少なくとも1種を含む合金や酸化物などを用いることができる。これらの中でもコストなどの観点からは炭素材料が好ましい。上記炭素材料としては、天然黒鉛、石油系又は石炭系コークスを熱処理することで製造される人造黒鉛、樹脂を炭素化したハードカーボン、メソフェーズピッチ系炭素材料などが挙げられる。
 天然黒鉛や人造黒鉛を用いる場合、電池容量の増大の観点から、粉末X線回折による黒鉛構造の(002)面の面間隔d(002)が0.335~0.337nmの範囲にあるものが好ましい。天然黒鉛とは、鉱石として天然に産出する黒鉛質材料のことをいう。天然黒鉛は、その外観と性状によって、結晶化度の高い鱗状黒鉛と結晶化度が低い土状黒鉛の2種類に分けられる。鱗状黒鉛はさらに外観が葉状の鱗片状黒鉛と、塊状である鱗状黒鉛とに分けられる。黒鉛質材料となる天然黒鉛は、産地や性状、種類は特に制限されない。また、天然黒鉛又は天然黒鉛を原料として製造した粒子に熱処理を施して用いてもよい。
 人造黒鉛とは、広く人工的な手法で作られた黒鉛及び黒鉛の完全結晶に近い黒鉛質材料をいう。代表的な例としては、石炭の乾留、原油の蒸留による残渣などから得られるタールやコークスを原料にして、500~1000℃程度の焼成工程、2000℃以上の黒鉛化工程を経て得たものが挙げられる。また、溶解鉄から炭素を再析出させることで得られるキッシュグラファイトも人造黒鉛の一種である。
 負極活物質として炭素材料の他に、Si及びSnの少なくとも1種を含む合金を使用することは、Si及びSnのそれぞれを単体で用いる場合やそれぞれの酸化物を用いる場合に比べ、電気容量を小さくすることができる点で有効である。これらの中でも、Si系合金が好ましい。Si系合金としては、B、Mg、Ca、Ti、Fe、Co、Mo、Cr、V、W、Ni、Mn、Zn及びCuなどからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、Siと、の合金などが挙げられる。具体的には、SiB、SiB、MgSi、NiSi、TiSi、MoSi、CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、VSi、WSi、ZnSiなどからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
 本発明の電極シートにおいては、負極活物質として、既述の材料を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、当該負極活物質の平均粒子径は10μm以下とする。平均粒子径が10μmを超えると、大電流下での充放電反応の効率が低下してしまう。平均粒子径は0.1~10μmとすることが好ましく、1~7μmとすることがより好ましい。
 電極シートにおける負極活物質の含有率は、特に制限されるものではないが、30~99質量%であることが好ましく、40~99質量%であることがより好ましく、50~95質量%であることがさらに好ましい。30質量%未満である場合、エネルギー密度の要求の高い電源用途への適用は困難となってしまう場合がある。
 
(1-3) 繊維状炭素
 本発明に用いる繊維状炭素は、炭素繊維であることが好ましく、特に導電性に優れる点でピッチを出発原料としたピッチ系炭素繊維であることがより好ましい。
 繊維状炭素の平均繊維径は、100~900nmである。平均繊維径の下限値は、200nm以上であることが好ましく、200nmを超えることがより好ましく、220nm以上であることがさらに好ましく、250nm以上であることがさらにより好ましい。平均繊維径の上限値は、700nm以下であることが好ましく、600nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがより好ましく、400nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることがより好ましい。100nm未満である場合、繊維が折損し易く、導電材として機能し難い。また、平均繊維径が100nm未満である繊維状炭素はその比表面積が大きく、電極シート内において活物質の表面を被覆してしまう。その結果、活物質の接点が減少することとなり、イオン伝導パスの形成の阻害につながる。平均繊維径が900nmを超える繊維状炭素は、電極シート内において繊維間に隙間が生じ易くなり、電極シート密度を高くすることが困難となる場合がある。
 上記100~900nmの平均繊維径を示す繊維状炭素の繊維径の分布は、100~900nmにおいて1つのピークを有してよいし、2以上のピークを有していてもよいが、通常、1つのピークを有することが好ましい。
 繊維状炭素のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、30以上であり、35以上であることが好ましく、40以上であることが好ましい。アスペクト比が30未満である場合、電極シートを製造した際に、該電極シート中において繊維状炭素による導電パスの形成が不十分になり易く、電極シートの膜厚方向の抵抗値が十分に低下しない場合がある。また、電極シートの機械的強度が不足し易い。アスペクト比の上限値は特に限定されないが、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましい。アスペクト比が大きすぎると、繊維状炭素同士が絡まり合い、電極シート中で十分に分散されないことがあり、導電パスの形成が不十分になることがある。
 本発明に用いられる炭素繊維の平均繊維長は10μm以上であることが好ましく、11μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることがさらに好ましく、13μm以上であることがさらにより好ましく、15μm以上であることが特に好ましい。また、平均繊維長は、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。このような平均繊維長の繊維状炭素を電極シート内に存在させることで、繊維状炭素の周辺に空隙を形成し、活物質の体積変動を許容するとともに、活物質の体積の増大及び減少の何れにも追従して導電パスを維持することができ、さらには電極シートが強靱となるため、強度の低下や見かけ密度の低下を抑制することができる。平均繊維長が10μm未満の炭素繊維を用いて電極シートを製造した場合、該電極シート中において導電パスの形成が不十分になり易く、電極シートの膜厚方向の抵抗値が十分に低下しない場合がある。平均繊維長が100μmを超える繊維状炭素を用いて電極シートを製造した場合、繊維状炭素が電極シート中においてその面内方向に配向し易くなる。その結果、膜厚方向への導電パスを形成し難い場合がある。
 本発明に用いられる繊維状炭素は、実質的に分岐を有さない構造であることが好ましい。ここで、実質的に分岐を有さないとは、分岐度が0.01個/μm以下であることをいう。本発明における繊維状炭素は分岐度が0であることが好ましい。ここで分岐とは、繊維状炭素が末端部以外の場所で他の繊維状炭素と結合した粒状部をいい、繊維状炭素の主軸が中途で枝分かれしていること、及び繊維状炭素の主軸が枝状の副軸を有することをいう。分岐を有する繊維状炭素としては、例えば、触媒として鉄などの金属の存在下、高温雰囲気中でベンゼン等の炭化水素を気化させる気相法によって製造した気相成長(気相法)炭素繊維(例えば昭和電工社製VGCF(登録商標))が知られている。実質的に分岐構造を有さない直線的構造である繊維状炭素は、分岐を有する繊維状炭素に比べて分散性が良好であり、長距離の導電パスを形成しやすい。なお、直線的構造とは、繊維状炭素が完全な直線構造を有している場合のほか、片端や両端が多少曲がっている場合、両端以外の部分が多少曲がっている場合を含む。
 ここで、本発明に用いられる繊維状炭素の分岐度は、電界放射型走査電子顕微鏡によって倍率5,000倍にて撮影した写真図から測定された値を意味する。
 なお、この繊維状炭素は、全体として繊維状の形態を有していればよく、例えば、上記アスペクト比の好ましい範囲未満のものが接触したり結合したりして一体的に繊維形状を有しているもの(例えば、球状炭素が数珠状に連なっているもの、極めて短い少なくとも1本または複数本の繊維が融着等によりつながっているものなど)も含む。
 本発明に用いられる繊維状炭素は、充填密度が低い状態において高い導電性を有する。充填密度が低い状態において高い導電性を有する繊維状炭素は、より低い添加濃度で導電性を付与することができる。
 具体的には、充填密度0.8g/cmで充填した際の粉体体積抵抗率が4.00×10-2Ω・cm以下であることが好ましく、3.00×10-2Ω・cm以下であることがより好ましい。4.00×10-2Ω・cmを超える場合、導電性を向上させるのに要する繊維状炭素の添加量が多くなり好ましくない。下限値は特に限定されないが、一般的には0.0001Ω・cm程度である。
 本発明に用いられる繊維状炭素は、広角X線測定により測定した隣接するグラファイトシート間の距離(d002)が0.3400nm以上であることが好ましく、0.3400nmを超えることがより好ましく、0.3410nm以上がさらに好ましく、0.3420nm以上がさらにより好ましい。また、d002は0.3450nm以下が好ましく、0.3445nm以下であることがより好ましい。d002が0.3400nm以上の場合、繊維状炭素が脆くなり難い。そのため、解砕などの加工時に、繊維が折損し難く、繊維長が保持される。その結果、長い距離の導電パスを形成し易くなる。また、リチウムイオン二次電池の充放電に伴う活物質の体積変化に追従して導電パスが維持され易い。
 本発明に用いられる繊維状炭素は、広角X線測定により測定した結晶子大きさ(Lc002)が50nm以下であることが好ましく、40nm以下、30nm以下、25nm以下であることがこの順でより好ましい。結晶子大きさ(Lc002)は大きいほど結晶性が高く、導電性が優れる。しかし、結晶子大きさ(Lc002)が大きい場合、繊維状炭素が脆くなり難い。そのため、解砕などの加工時に、繊維が折損し難く、繊維長が保持される。その結果、長い距離の導電パスを形成し易くなる。また、全固体リチウム二次電池の充放電に伴う活物質の体積変化に追従して導電パスが維持され易い。結晶子大きさ(Lc002)の下限は特に制限はないが、1nm以上であることが好ましい。
 本発明において、結晶子大きさ(Lc002)とは、日本工業規格JIS R 7651(2007年度版)「炭素材料の格子定数及び結晶子の大きさ測定方法」により測定される値をいう。
 本発明に用いられる繊維状炭素の比表面積は1m/g以上50m/g以下であることが好ましい。繊維状炭素の比表面積が1m/g未満の場合、活物質と導電助剤としての繊維状炭素との接点が確保され難く、電子伝導パスが十分に形成されないことがある。
 一方、比表面積が大きすぎると、イオン伝導パスの阻害要因になることがある。すなわち、繊維状炭素の比表面積が50m/gを超える場合、繊維状炭素が活物質の表面を覆ってしまい、イオン伝導を担う固体電解質と活物質との接点が減少し、イオン伝導が阻害されてしまうことがある。比表面積の下限は、2m/g以上であることが好ましく、3m/g以上であることがより好ましく、5m/g以上であることがさらに好ましく、7m/g以上であることが特に好ましい。比表面積の上限は、40m/g以下であることが好ましく、30m/g以下であることがより好ましく、25m/g以下であることがさらに好ましく、20m/g以下であることが特に好ましい。
 本発明に用いられる繊維状炭素は、実質的に金属元素を含有しないことが好ましい。具体的には、金属元素の含有率が合計で50ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることがさらに好ましい。金属元素の含有率が50ppmを超える場合、金属の触媒作用により電池を劣化させ易くなる。本発明において、金属元素の含有率とは、Li、Na、Ti、Mn、Fe、Ni及びCoの合計含有率を意味する。特に、Feの含有率は5ppm以下であることが好ましく、3ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましい。Feの含有率が5ppmを超える場合、特に電池を劣化させ易くなるため好ましくない。
 本発明に用いられる繊維状炭素は、繊維中の水素、窒素、灰分の何れもが0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。繊維状炭素中の水素、窒素、灰分の何れもが0.5質量%以下である場合、グラファイト層の構造欠陥が一段と抑制され、電池中での副反応抑制できるため好ましい。
 本発明に用いられる繊維状炭素は、電極シート中での分散性に特に優れている。その理由は明らかではないが、前記した構造を有すること、天然黒鉛、石油系及び石炭系コークスを熱処理することで製造される人造黒鉛や難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素などを原料とすること、製造工程で樹脂複合繊維を経由すること、等が考えられる。電極シート内において、分散性に優れるので、長距離の導電パスを形成でき、少量の含有量で優れた電池性能を発揮すると考えられる。
 本発明に用いられる繊維状炭素は、多孔質や中空構造であってもよいが、繊維状炭素の製造過程において、溶融ブレンド紡糸で得られる樹脂複合繊維を経ることが好ましい。そのため、本発明の繊維状炭素は実質的に中実であり、表面は基本的に平滑であり、前述のとおり分岐を有さない直線構造であることが好ましい。
 本発明に用いられる繊維状炭素は、その表面を化学的又は物理的に修飾し、改質してもよい。修飾物質、修飾の形式は特に限定されず、改質の目的に応じて適宜好適なものが選択される。
 以下に、繊維状炭素の修飾について説明する。
 繊維状炭素の表面を熱可塑性樹脂により修飾することにより、繊維状炭素に接着性を付与することができる。修飾方法は特に限定されないが、例えば、繊維状炭素の表面に粒子状の熱可塑性樹脂を付着及び/又は接着させる方法や; 繊維状炭素が粒子状の熱可塑性樹脂を貫くように、繊維状炭素と熱可塑性樹脂とを結合させる方法; 繊維状炭素の表面の一部を熱可塑性樹脂によって被覆する方法が挙げられる。特に、少なくとも一部の熱可塑性樹脂を粒子状に付着させることが好ましい。ここで、粒子状とは、アスペクト比が5以下、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下の形態の粒子を意味する。具体的な修飾方法としては、熱可塑性樹脂の溶液中に分散した繊維状炭素を噴霧乾燥する方法や、単量体溶液と繊維状炭素とを混合して単量体を重合する方法、繊維状炭素が分散する溶媒中で熱可塑性樹脂を析出させる方法等が挙げられる。
 修飾に用いる熱可塑性樹脂は特に限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン共重体(P-(VDF-HFP))、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フルオロオレフィン共重合体、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、フェノール樹脂等よりなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン共重体(P-(VDF-HFP))のようなフッ素原子を含む熱可塑性樹脂が好ましい。
 熱可塑性樹脂の融点は、50~250℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂の融点の下限は、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の融点の上限は、220℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
 融点が50℃未満である場合、電極シート中に分散させる過程で熱可塑性樹脂の粒子が凝集し易い。また、電池の耐熱性が低くなる。融点が250℃を超える場合、活物質や固体電解質の劣化を招く恐れがある。
 熱可塑性樹脂のガラス転移点は特に限定されないが、250℃以下であることが好ましい。ガラス転移点の上限は、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがより好ましい。
 本発明の電極シートにおける繊維状炭素の含有率は、0.1質量%以上10質量%以下である。繊維状炭素の含有率の下限は、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、1.2質量%以上であることがさらに好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましく、1.8質量%以上であることが特に好ましい。繊維状炭素の含有率の上限は、6.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましく、3.0質量%以下であることが特に好ましい。
 本発明に用いられる炭素繊維は、例えばWO2009/125857に記載の方法により製造できる。以下に一例を示す。
 先ず、熱可塑性ポリマー内にメソフェーズピッチが分散して成るメソフェーズピッチ組成物を調製する。次に、このメソフェーズピッチ組成物を溶融状態で糸状またはフィルム状に成形する。特に紡糸することが好ましい。紡糸により、熱可塑性ポリマー内に分散するメソフェーズピッチを熱可塑性ポリマー内部で引き延ばすとともに、メソフェーズピッチ組成物を繊維化して樹脂複合繊維を得る。この樹脂複合繊維は、熱可塑性ポリマーを海成分とし、メソフェーズピッチを島成分とする海島構造を有する。
 次に、得られた樹脂複合繊維に酸素を含む気体を接触させてメソフェーズピッチを安定化させて樹脂複合安定化繊維を得る。この樹脂複合安定化繊維は、熱可塑性ポリマーを海成分とし、安定化メソフェーズピッチを島成分とする海島構造を有する。
 続いて、この樹脂複合安定化繊維の海成分である熱可塑性ポリマーを除去、分離し、炭素繊維前駆体を得る。
 さらに、この炭素繊維前駆体を高温加熱して、繊維状炭素(炭素繊維)を得る。
 
(1-4) フッ素系ポリマー
 本発明の電極シートに用いられるフッ素系ポリマーとしては、十分な電気化学的安定性を有しているフッ素系ポリマーであれば用いることが可能である。また、本発明で用いるフッ素系樹脂としては、上記電極シートを形成する際に、バインダーとして作用するとともにシートを形成する際の剪断力によって容易にフィブリルを形成するものが好ましい。例えば、粒状のポリテトラフルオロエチレン樹脂にせん断応力をかけることによりポリテトラフルオロエチレン樹脂の針状繊維(フィブリル)が得られる。従来より、ポリテトラフルオロエチレン樹脂にせん断応力をかけ、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を針状繊維化させることは行われており、該針状繊維化は、フィブリル化とも呼ばれている。
 本発明の電極シートは、例えば、ロールプレス成形によりシートを形成する場合には、プレス圧力およびロール間の速度差を調節することにより剪断力を調整できる。このようなフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン共重体(P-(VDF-HFP))、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が挙げられる。これらは2種以上組み合わせて用いてもよい。この中でも、特にPTFEがフィブリル化させ易い点で好ましい。
 本発明の電極シートにおけるフッ素系ポリマーの含有率は、0.5~25質量%であることが好ましい。フッ素系ポリマーの含有率は、0.8質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上であることがこの順でより好ましい。フッ素系ポリマーの含有率は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、5質量%以下であることがこの順でより好ましい。0.5質量%未満である場合、電極シートの形状を維持し難くなる。25質量%を超える場合、電極中の活物質量が少なくなり、得られる電池のエネルギー密度が低下し易い。
 フッ素系ポリマーの平均粒子径は、50~1000nmであることが好ましく、80~500nmであることがより好ましく、100~400nmであることが特に好ましい。特に、上記の繊維状炭素の平均繊維径の0.1~10倍の範囲であることが好ましく、0.5~5倍の範囲であることがより好ましい。
 本発明の電極シートに用いられるフッ素系ポリマーは、特に限定されないが、電極シート中において、少なくともその一部がフィブリル化されていることが好ましい。フッ素系ポリマーはそのフィブリル部により網目構造を形成し、活物質および導電助剤が該網目構造に保持されることで、シート形成に寄与するとともに、引張破断強度の高い電極シートを形成することができる。また、本発明の一実施形態として、前記繊維状炭素は、少なくともその一部がフィブリルと接し、網目構造に取り込まれたり、フィブリルとからみあいながら、電極シートの厚み方向に導電パスを形成すると推定される。したがって、高い引張破断強度のみならず、厚み方向に優れた電気伝導性を示すと考えられる。
 
(1-5) 繊維状炭素以外の炭素系導電助剤
 本発明の電極シートには、上記の繊維状炭素の他に炭素系導電助剤を含むこともできる。
 繊維状炭素以外の炭素系導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、鱗片状炭素、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ(CNT)を挙げることができる。これらの炭素系導電助剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。
 これらの炭素系導電助剤の形状は特に限定されないが、カーボンブラックやアセチレンブラックなどの球状粒子であることが好ましい。炭素系導電助剤の平均粒子径(一次粒子径)は10~200nmであることが好ましく、20~100nmであることがより好ましい。これらの炭素系導電助剤のアスペクト比は、10以下であり、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
 本発明の電極シートにおける繊維状炭素以外の炭素系導電助剤の含有率は、当該電極シートに対し0.1~4質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましく、1~2質量%であることがさらに好ましい。
 前記導電助剤が、前述の繊維状炭素と上記繊維状炭素以外の炭素系導電助剤とを含む場合、電子伝導性およびイオン伝導性を両立するという観点から、前記導電助剤における前記繊維状炭素の質量割合が20質量%以上99質量%以下であり、前記繊維状炭素以外の炭素系導電助剤の質量割合が1質量%以上80質量%以下であることが好ましい。前記繊維状炭素の質量割合が40質量%以上99質量%以下であり、前記繊維状炭素以外の炭素系導電助剤の質量割合が1質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。前記繊維状炭素の質量割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが特に好ましい。前記繊維状炭素以外の炭素系導電助剤の質量割合は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。少量の繊維状炭素以外の炭素系導電助剤は、充放電サイクルの繰り返しによる活物質の体積変化を緩衝するクッションとしても作用すると考えられる。
 
(1-6) その他
 本発明の電極シートを全固体リチウムイオン二次電池に用いる場合は、固体電解質を含有しても良い。固体電解質は、従来公知の材料を選択して用いることができる。例えば、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、ポリマー電解質を挙げることができる。本発明においては、リチウムイオンの伝導性が高いことから、硫化物系固体電解質を用いることが好ましい。
 硫化物系固体電解質としては、具体的にはLi、A、Sからなる硫化物系固体電解質(Li-A-S)を挙げることができる。上記硫化物系固体電解質Li-A-S中のAは、P、Ge、B、Si、SbおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種である。このような硫化物系固体電解質Li-A-Sとしては、具体的にはLi11、70LiS-30P、LiGe0.250.75、75LiS-25P、80LiS-20P、Li10GeP12、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、LiS-SiS、LiPSCl等を挙げることができ、イオン伝導度が高いことから、特にLi11が好ましい。
 水素化物系固体電解質としては、具体的には水素化ホウ素リチウムの錯体水素化物などが挙げられる。錯体水素化物としては、例えば、LiBH-LiI系錯体水素化物およびLiBH-LiNH系錯体水素化物、LiBH-P、LiBH-Pなどが挙げられる。
 前記固体電解質は、単独で用いてもよく、必要に応じて、二種以上を併用してもよい。
 
(2) 電極シートの製造方法
 本発明の電極シートは、例えば、上記の活物質、炭素系導電助剤、及びフッ素系ポリマーを粉体の状態で混合して粉体混合物を調製し、この粉体混合物を第1のロールおよび第2のロールを有する圧延装置によってフィルム状に加圧成形して製造することができる。フッ素系ポリマーは、フィブリル化させた状態で用いることにより、シート形状を維持しやすく、自己支持型、すなわち自立性のフィルムを形成する。フッ素系ポリマーは、予めフィブリル化させた物を用いても良いし、粉体混合物の混合の際にフィブリル化させても良いし、フィルム状に加圧成形する際にフィブリル化させても良い。フッ素系ポリマーの粒子から生じるフィブリル部が相互に交絡することにより、電極シートの強度が高くなるという観点から、粉体混合物の混合の際にフィブリル化させるか、フィルム状に加圧成形する際にフィブリル化させることが好ましい。なお、粉体の混合の際には、アルコール等の揮発性溶媒を添加してもよい。
 フッ素系ポリマーをフィブリル化させる方法としては、粉体混合時にフッ素系ポリマーの粒子に剪断を付与したり、加圧成形時に第1のロールと第2のロールとに速度差を生じさせてフッ素系ポリマーの粒子に剪断を付与したりする方法が例示される。
 フッ素系ポリマーの粒子から生じるフィブリル部の繊維径は、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることがさらにより好ましく、60nm以下であることが特に好ましい。また、フッ素系ポリマーの粒子径の1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましい。さらには、ともに配合する繊維状炭素の繊維径の1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましい。
 フッ素系ポリマーの粒子から生じるフィブリル部の繊維長は1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。さらには、ともに配合する繊維状炭素の平均繊維長の1/10以上であることが好ましく、1/3以上であることがより好ましい。
 本発明のリチウムイオン二次電池用電極シートは、その製造工程においてスラリーの塗布工程を有さないため、導電助剤として使用する繊維状炭素が一方向に配向し難くなり、膜厚方向への導電性が優れ、且つ機械的強度に異方性を生じ難くなると期待される。
 さらに、溶媒中に溶解させたバインダーを用いないため、活物質や導電助剤が直接接触し易くなる。また、結着材として機能するフッ素系ポリマーの繊維によって活物質や導電助剤が支持されているため、充放電に起因して活物質の体積変化が生じても、イオン伝導性や電子伝導性を高く維持できる。そのため、電池電極抵抗を低減させるとともに、優れたサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することができると期待される。
 
 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例中の各種測定や分析は、それぞれ以下の方法に従って行った。
(繊維状炭素の形状確認)
 繊維状炭素の繊維長は、繊維状炭素(試料)を1-メチル-2-ピロリドンに分散させた希薄分散液を、画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル株式会社製、型式IF-200nano)を用いて測定を行った。繊維状炭素の平均繊維長は、個数基準による平均値である。
 繊維状炭素の繊維径は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S-2400)を用いて観察及び写真撮影を行い、得られた電子顕微鏡写真から無作為に300箇所を選択して繊維径を測定し、それらのすべての測定結果(n=300)の平均値を平均繊維径とした。
 また、平均繊維長と平均繊維径から平均アスペクト比を算出した。
(炭素繊維のX線回折測定)
 X線回折測定はリガク社製RINT-2100を用いてJIS R7651法に準拠し、格子面間隔(d002)及び結晶子大きさ(Lc002)を測定した。
(粉体体積抵抗率の測定方法)
 粉体体積抵抗率の測定は、株式会社三菱化学アナリテック社製の粉体抵抗システム(MCP-PD51)を用いて0.02~2.50kNの荷重下で四探針方式の電極ユニットを用いて測定した。体積抵抗率は充填密度の変化に伴う体積抵抗率の関係図から充填密度が0.8g/cm時の体積抵抗率の値をもって試料の粉体体積抵抗率とした。
(フッ素系ポリマーの粒径測定)
 フッ素系ポリマーの粒子径は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S-2400)を用いて観察及び写真撮影を行い、得られた電子顕微鏡写真から無作為に300箇所を選択して粒子径を測定し、それらのすべての測定結果(n=300)の平均値を平均粒子径とした。
(電極シートの引張破断強度、膜厚)
 電極シートを1cmの幅に切り出し、デジタルフォースゲージ(SHIMPO製 FGP-10)を用いて引張破断強度を測定した。
(電気伝導度)
 ポテンショスタット/ガルバノスタット(北斗電工株式会社製HA-151B)を用いて、作製した電極の膜厚方向の電極抵抗を測定した結果と、その抵抗値から算出される電気伝導度を表1に示す。
(メソフェーズピッチの製造方法)
 キノリン不溶分を除去した軟化点80℃のコールタールピッチを、Ni-Mo系触媒存在下、圧力13MPa、温度340℃で水添し、水素化コールタールピッチを得た。この水素化コールタールピッチを常圧下、480℃で熱処理した後、減圧して低沸点分を除き、メソフェーズピッチを得た。このメソフェーズピッチを、フィルターを用いて温度340℃でろ過を行い、ピッチ中の異物を取り除き、精製されたメソフェーズピッチを得た。
(繊維状炭素(CNF)の製造方法)
 熱可塑性樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(EXCEED(登録商標)1018HA、ExxonMobil社製、MFR=1g/10min)60質量部、及び上述のメソフェーズピッチの製造方法で得られたメソフェーズピッチ(メソフェーズ率90.9%、軟化点303.5℃)40質量部を同方向二軸押出機(東芝機械(株)製「TEM-26SS」、バレル温度300℃、窒素気流下)で溶融混練してメソフェーズピッチ組成物を調製した。
 次いで、このメソフェーズピッチ組成物を、口金温度を360℃として溶融紡糸することにより、繊維径90μmの長繊維に成形した。
 上記操作で得られたメソフェーズピッチ含有繊維束を、空気中において215℃で3時間保持することにより、メソフェーズピッチを安定化させ、安定化メソフェーズピッチ含有繊維束を得た。上記安定化メソフェーズピッチ含有繊維束を、真空ガス置換炉中で窒素置換を行った後に1kPaまで減圧し、該減圧状態下で、500℃で1時間保持することにより、熱可塑性樹脂を除去して安定化繊維を得た。
 ついで、この安定化繊維を窒素雰囲気下、1000℃で30分間保持して炭素化し、さらにアルゴンの雰囲気下、1500℃に加熱し30分間保持して黒鉛化した。
 ついで、この黒鉛化した炭素繊維集合体を粉砕し、粉体状の炭素繊維集合体を得た。炭素繊維は分岐のない直線構造であった。
 得られた炭素繊維は、SEM写真による分岐が確認できなかった(分岐度は0.00であった)。結晶子面間隔d002が0.3441nm、結晶子大きさLc002が5.4nm、平均繊維径が270nm、平均繊維長が15μm、平均アスペクト比が56、0.8g/cmにおける粉体体積抵抗率が0.0277Ω・cm、比表面積が10m/gであった。金属含有量は20ppm未満であった。
(繊維状炭素の表面修飾(i))
 アセトンに、P-(VDF-HFP)(アルケマ製Kynar2500-20)1質量部を溶解させ、3質量部の繊維状炭素を分散させ、分散液を作製した。スプレードライヤー(プリス製、SB39)を用いて前記分散液を噴霧乾燥させることで、繊維状炭素の表面をP-(VDF-HFP)で修飾した(以下、樹脂結合繊維(i)と略記する)。
(繊維状炭素の表面修飾(ii))
 分散させる繊維状炭素を9質量部とした他は、繊維状炭素の表面修飾(i)と同様にして、繊維状炭素の表面をVDF-HFP共重合体で修飾した(以下、樹脂結合繊維(ii)と略記する)。
(実施例1)
 活物質としてLiFePOを90質量部と、フッ素系ポリマー粒子として平均粒子径200nmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を5質量部と、炭素系導電助剤として上記で製造した繊維状炭素を5質量部とを混合し、さらに乳鉢を用いて剪断を付与した。この混合物をロールプレスを用いて繰り返し加圧してシート状に成形した。得られた電極シートの膜厚は188μmであり、引張破断強度は0.32N/mmであった。また、この電極シートの膜厚方向への電気伝導度は2.7×10-3S/cmであり、空隙率は39体積%であった。PTFEは少なくとも一部はフィブリル化しており、その繊維径はおよそ50nmであった。この電極シートの表面におけるSEM写真を図1、電極シート断面におけるSEM写真を図2に示した。これらのSEM写真によれば、繊維状炭素の他にフィブリル化したPTFEが存在していることが確認できる。
(実施例2)
 活物質としてLiFePOを87質量部と、フッ素系ポリマー粒子として平均粒子径200nmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を10質量部と、炭素系導電助剤として上記で製造した繊維状炭素を3質量部とした他は、実施例1と同様にして電極シートを得た。各種物性は表1に示した。この電極シートの表面におけるSEM写真を図3、電極シート断面におけるSEM写真を図4に示した。これらのSEM写真によれば、実施例1よりも多くのフィブリル化したPTFEが存在しており、フィブリル化したPTFEが活物質粒子及び繊維状炭素を支持し、フィブリル化したPTFEと繊維状炭素とが交絡していることも確認できる。
(比較例1)
 繊維状炭素をアセチレンブラック(以下、「AB」と略記する場合がある。「デンカブラック」(登録商標)デンカ株式会社製、75%プレス品、平均粒子径:0.036μm、比表面積:65m/g)に変更した他は、実施例1と同様にして電極シートを得た。各種物性は表1に示した。この電極シートの表面におけるSEM写真を図5、電極シート断面におけるSEM写真を図6に示した。これらのSEM写真によれば、フィブリル化したPTFEが粒子状物を支持していることが確認できる。
(比較例2)
 活物質としてLiFePOを90質量部と、フッ素系ポリマー粒子として平均粒子径200nmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を5質量部と、炭素系導電助剤として上記で製造した繊維状炭素を5質量部と、溶媒として水を230質量部とを混合してスラリーを作製した。このスラリーを集電体上に塗布して乾燥することにより電極シートを作製した。この電極シートの表面におけるSEM写真を図7に示した。このSEM写真によれば、繊維状炭素以外の繊維状物は観察できなかった。即ち、フィブリル化したPTFEが存在していないことが確認できる。得られた電極シートは、シート形状が維持できず、各種物性の測定を行うことができなかった。
(実施例3)
 膜厚を404μmとした他は、実施例1と同様にして電極シートを得た。各種物性は表1に示した。膜厚を大きくしても電気伝導度が低下することはなかった。
(実施例4)
 炭素系導電助剤として、上記で製造した繊維状炭素を4質量部、ABを1質量部とした他は、実施例1と同様にして電極シートを得た。各種物性は表1に示した。他の炭素系導電助剤を併用することにより、電気伝導度がさらに向上した。
(実施例5)
 活物質としてLiFePOを92質量部と、炭素系導電助剤として上記で製造した繊維状炭素を3質量部とした他は、実施例1と同様にして電極シートを得た。各種物性は表1に示した。
(実施例6)
 活物質としてLiFePOを93質量部と、炭素系導電助剤として上記で製造した繊維状炭素を2質量部とした他は、実施例1と同様にして電極シートを得た。各種物性は表1に示した。
(実施例7)
 炭素系導電助剤として、上記繊維状炭素の表面修飾(i)で製造した樹脂結合繊維(i)を用いた他は、実施例1と同様にして電極シートを得た。各種物性は表1に示した。樹脂結合繊維(i)を用いているため、破断強度が高くなった。
(実施例8)
 炭素系導電助剤として、上記繊維状炭素の表面修飾(ii)で製造した樹脂結合繊維(ii)を用いた他は、実施例1と同様にして電極シートを得た。各種物性は表1に示した。樹脂結合繊維(ii)を用いているため、破断強度が高くなった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001

 

Claims (8)

  1.  リチウムイオン電池用活物質と、繊維状炭素と、フッ素系ポリマーと、を少なくとも含有するリチウムイオン二次電池用電極シートであって、
     前記リチウムイオン二次電池用電極シートの膜厚が50~2000(μm)、引張破断強度が0.20(N/mm)以上であり、
     前記繊維状炭素の平均繊維径が100~900(nm)であり、
     前記リチウムイオン二次電池用電極シート中における前記繊維状炭素の含有量が0.1~10(質量%)であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極シート。
  2.  前記繊維状炭素以外の炭素系導電助剤をさらに含む請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
  3.  前記繊維状炭素の平均繊維長が10~50(μm)である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
  4.  前記繊維状炭素の充填密度0.8(g/cm)で充填した際の粉体体積抵抗率が4.00×10-2(Ω・cm)以下である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
  5.  前記フッ素系ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
  6.  前記リチウムイオン二次電池用電極シートの空隙率が5~60(体積%)である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
  7.  前記リチウムイオン二次電池用電極シートの引張破断強度(N/mm)と膜厚(mm)との積が0.04(N/mm)以上である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
  8.  前記リチウムイオン二次電池用電極シートの膜厚方向の電気伝導度が8.0×10-4(S/cm)以上である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極シート。
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