WO2022249680A1 - リサイクル炭素繊維収束体組成物、およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

回収されたトウ状の収束体を再利用のためにマトリックス樹脂と混練りする作業が一層安定し、且つ製造された成形体の物性が一層安定したものになるような実用化技術の確立を課題とする。 炭素繊維強化型熱硬化性樹脂成形体から取り出されたリサイクル炭素繊維収束体と、前記炭素繊維の表面に存在する第1の化学的官能基との間で化学的親和性を示す第2の化学的官能基を有する表面改質剤とを含有するリサイクル炭素繊維収束体組成物であり、前記リサイクル炭素繊維収束体は、炭素繊維がアモルファスカーボンでトウ状に収束されており、前記リサイクル炭素繊維収束体組成物の全体を100質量%としたとき前記表面改質剤を0.1~1質量%含有し、且つ前記リサイクル炭素繊維収束体組成物を600℃×60分の条件で加熱して測定したときの残留炭素量が1~5質量%であるリサイクル炭素繊維収束体組成物。

Description

リサイクル炭素繊維収束体組成物、およびその製造方法
 本発明は、炭素繊維強化型熱硬化性樹脂(以下、CFRPということがある)成形体から回収されたリサイクル炭素繊維(以下、rCFということがある)収束体を含む組成物、およびその製造方法に関するものである。
 炭素繊維を熱硬化性マトリックス樹脂中に混練配合して成形されたCFRP成形体は、これまで航空宇宙機やレーシングカーといった高強度および高弾性が要求される構造体素材として重用されてきたが、近年益々活用場面が拡がり、例えば、風力発電のブレードや圧縮天然ガスボンベ(以下、CNGボンベということがある)といった厚肉成形体への活用が高まっている。CFRP成形体は、上述のような大型製品だけでなく、テニスラケットなどのスポーツ用品の骨格体や、ノート型パソコン、タブレット端末、スマートフォンなどの身近な電子機器の筐体としての利用も多くなっている。
 CFRP成形体の市場がこのように拡大してくると、それに伴って使用済みのCFRP成形体や製造時のトリミングで発生したCFRP端材或いはプリプレグ端材が大量に廃棄されることになり、資源の有効活用という視点から見て、合理的且つ経済的な回収技術の確立が望まれる。しかし現時点では有用な回収技術が確立されていないため、大部分はそのまま埋め立て処理に付されているというのが実情である。ところがCFRP成形体中の炭素繊維は導電性を有するので、埋め立て土壌中からCFRP成形体の断片が空中に飛散することで、近辺の電気機器に電気障害や電波障害を惹起し、或いは人体に不測の悪影響を及ぼすという問題があった。また誤って焼却処理に付される場合であっても、その処理工程の中で炭素繊維が飛散すると同様の問題を引き起こす恐れがあることなどが指摘されている。他方、CFRP成形体の利用拡大傾向は、炭素繊維の更なる生産増強を求めているが、炭素繊維を新たに生産するには多大なエネルギー消費が必要であり、コスト高を招くだけでなく、二酸化炭素の排出量を高めるという環境上の問題が憂慮される。そこでCFRP成形体から炭素繊維を効率的に回収する技術の開発が求められるという最初の課題に戻ってくる。
 このような回収技術としては、例えば特許文献1、2など、および本発明者も著者に加わって発表した非特許文献1が知られており、更に本発明者らが開発して出願公開された特許文献3などが知られている。特許文献1には、炭素繊維強化プラスチックを、酸素濃度が3~18体積%の範囲内で、温度が300~600℃の範囲内のガス雰囲気下で燃焼させないで加熱処理することでプラスチックを熱分解する炭素繊維強化プラスチックの処理方法が示されている。特許文献2には、樹脂で結合された炭素繊維群を100μm~3mmの範囲の繊維状に粉砕後、分級して繊維長を整え、各分級品の1種又は2種以上を、粉砕物の分解ガスの充満下、350~500℃で加熱分解する炭素短繊維の製造方法が記載されている。非特許文献1には、CFRP成形体を赤外加熱式炉の中に配置し、流速0.3m/分の空気流を形成しつつ、昇温速度50℃/分で400℃まで加熱して120分保持して炭素繊維を回収する方法が開示されている。特許文献3は、CFRP成形体を、400℃以上480℃を超えない温度域で加熱することを条件とし、その際300℃に到達した後加熱終了までの区間は、雰囲気ガス中の酸素濃度を15~19体積%に制御し、かつ300℃に到達した後350℃に至るまでの区間で少なくとも1時間保持すると共に、400℃以上の温度域で少なくとも30分間の保持を行うことを骨子とする方法によって、平均繊維長6~100mmの炭素繊維が熱硬化樹脂に由来するアモルファスカーボン前駆体でトウ状に収束され、且つポテンシャル水素量が質量基準で600~8000ppmであるリサイクル炭素繊維収束体として製造できることを示したものである。
特開平6-99160号公報 特開平11-50338号公報 特開2018-202810号公報
牛越憲治、小松信之、杉野守彦「CFRPの熱分解法によるリサイクル」、材料、社団法人日本材料学会、1995年4月、Vol.44,No.499、pp428-431
 特許文献1、2や非特許文献1の技術手段で回収される炭素繊維は、CFRP成形体を構成していたマトリックス樹脂をほぼ完全除去したバラバラ状態として得られるものであって、繊維長を最適長さに且つ均質に入手することは極めて困難であった。例えば繊維長が長いものは、互いに絡まり合った綿状外観を呈する故に、補強繊維としての再利用に当たってバージン樹脂との2軸押出し機を用いた混練作業、例えば樹脂の混練工程中へのサイドフィーダーによる供給作業を行うこと自体が物理的に困難であった。仮に困難を乗り越えて混練作業を行ったとしても樹脂中に効率よく均等分散させることができなかった。逆に繊維長が短いものは、粉状外観を呈して環境中に飛散されやすくなって、しばしば発煙したような状況を呈して作業環境の悪化をもたらすだけでなく電気機器の電気障害を惹起するという問題の他、繊維長が短すぎてマトリックス樹脂に対する強化機能が期待できなくなるという本質的な欠陥を抱えるものであった。なお回収された炭素繊維の繊維長を揃えるための分級は極めて困難であり、繊維長が不均一なままでの使用については上記のような問題を回避することができず、仮に分級できたとしても繊維長が長すぎたり短すぎたりするものは、そもそも再利用価値がない故に廃棄するしかなく、回収技術としての完成度は著しく低いと言わざるを得なかった。
 これらに対して特許文献3に係る上記技術では、回収工程の温度管理と酸素濃度管理により平均繊維長6mm~100mmの炭素繊維が、熱硬化樹脂に由来するアモルファスカーボン前駆体によってトウ状に収束されたものとして回収できるので、炭素繊維の再利用/活用技術が一気に実用レベル(SDGsに認定されるサスティナブル材料)になったとして脚光を浴びつつある。
 本発明者らはこの技術の実用化に向けて更に検討を進めていく中で、回収対象品として市中から集められてくるCFRP成形体、あるいはその原材料のプリプレグ端材の形状や大きさ、特に板状体における板厚が不均一であること、そのことによってCFRP成形体の処理条件の適/不適を生じて、回収されたトウ状の収束体の外観上に不都合がないにも拘わらず、これを再利用のためにマトリックス樹脂と混練りする段階で、作業上の安定性や製造された成形体の物性の安定性に若干の問題を生じることが分った。
 本発明においては、回収されたトウ状の収束体を再利用のためにマトリックス樹脂と混練りする作業において、2軸押出し機のノズルから吐出されるリサイクル炭素繊維(rCF)と樹脂の混錬物における繊維の分離が少なく安定したストランドを形成でき、一層安定し、且つ製造された成形体の物性が一層安定したものになるような実用化技術の確立を課題とするものである。
 本発明は、以下の通りである。
 [1] 炭素繊維強化型熱硬化性樹脂成形体から取り出されたリサイクル炭素繊維収束体と、前記炭素繊維の表面に存在する化学的官能基(以下、第1の化学的官能基という)との間で化学的親和性を示す化学的官能基(以下、第2の化学的官能基という)を有する表面改質剤とを含有するリサイクル炭素繊維収束体組成物であり、前記リサイクル炭素繊維収束体は、炭素繊維が樹脂残渣を実質的に含まないアモルファスカーボンでトウ状に収束されており、前記リサイクル炭素繊維収束体組成物の全体を100質量%としたとき前記表面改質剤を0.1~1質量%含有し、且つ前記リサイクル炭素繊維収束体組成物を600℃×60分の条件で加熱して測定したときの残留炭素量が1~5質量%であることを特徴とするリサイクル炭素繊維収束体組成物。
 [2] 前記第1の化学的官能基は、カルボキシル基、アルデヒド基、カルボニル基より選ばれる少なくとも1種であり、前記第2の化学的官能基は、水酸基、エポキシ基、アクリロイル基、フェニル基、アクリル基、ウレタン基、シラノール基、シロキサン基、エステル基、イミド基、ニトリル基、ステアリン酸基、マレイン酸基より選ばれる少なくとも1種である[1]に記載のリサイクル炭素繊維収束体組成物。
 [3] [1]または[2]に記載のリサイクル炭素繊維収束体組成物から形成されることを特徴とするシート。
 [4] [1]または[2]に記載されたリサイクル炭素繊維収束体組成物を製造する方法であって、炭素繊維強化型熱硬化性樹脂成形体を、加熱炉内で400℃以上、480℃以下の温度域の温度まで加熱し、炭素繊維が樹脂残渣を実質的に含まないアモルファスカーボンでトウ状に収束されているリサイクル炭素繊維収束体を得る工程と、得られたリサイクル炭素繊維収束体と、前記炭素繊維の表面に存在する第1の化学的官能基との間で化学的親和性を示す第2の化学的官能基を有する表面改質剤の含有液とを接触させた後、乾燥させる工程とを含み、前記リサイクル炭素繊維収束体を得る工程では、前記炭素繊維強化型熱硬化性樹脂成形体を、少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域で、加熱炉内の燃焼ガスの流動下で加熱した後、400℃以上、480℃以下の温度域で、酸素濃度を16~18体積%とした雰囲気ガス中で少なくとも30分間保持することを特徴とするリサイクル炭素繊維収束体組成物の製造方法。
 [5] 前記加熱炉内の燃焼ガスの平均流動速度を0.1~10m/秒とする[4]に記載の製造方法。
 [6] 前記300℃以上、400℃以下の温度域での加熱は、前記炭素繊維強化型熱硬化性樹脂成形体からの発煙が終了するまで行う[4]または[5]に記載の製造方法。
 本発明によれば、炭素繊維強化型硬化性樹脂成形体から取り出されたリサイクル炭素繊維収束体を、該収束体に含まれる炭素繊維との間で化学的親和性を示す化学的官能基を有する表面改質剤と混合した組成物としているため、リサイクル炭素繊維収束体を再利用するためにマトリックス樹脂と混練りする作業を一層安定なものとすることができる。また、本発明のリサイクル炭素繊維収束体組成物から形成されるシートは、機械的特性が良好となる。また、本発明によれば製造された成形体の物性を一層安定なものとすることができる。
図1は、CFRP成形体を熱処理したときの状態を説明するための模式図であり、(a)は熱処理前のCFRP成形体の模式図、(b)は300℃~400℃で熱処理したときの状態を示す模式図、(c)は400℃~480℃で熱処理したときの状態を示す模式図、(d)は500℃で熱処理したときの状態を示す模式図、(e)は600℃で熱処理したときの状態を示す模式図である。 図2の(f)は、図1の(b)に示したCFRP成形体について、円Cで囲んだ表面部を拡大して示した模式図であり、図2の(g)は、図1の(d)に示したCFRP成形体について、円Dで囲んだ表面部を拡大して示した模式図である。
 本発明に係るリサイクル炭素繊維(rCF)収束体組成物は、炭素繊維強化型熱硬化性樹脂(CFRP)成形体から取り出されたリサイクル炭素繊維収束体と、前記炭素繊維の表面に存在する第1の化学的官能基との間で化学的親和性を示す第2の化学的官能基を有する表面改質剤とを含有するリサイクル炭素繊維収束体組成物である。そして、前記リサイクル炭素繊維収束体は、炭素繊維が樹脂残渣を実質的に含まないアモルファスカーボンでトウ状に収束されており、前記リサイクル炭素繊維収束体組成物の全体を100質量%としたとき前記表面改質剤を0.1~1質量%含有し、且つ前記リサイクル炭素繊維収束体組成物を600℃×60分の条件で加熱して測定したときの残留炭素量が1~5質量%であるところに特徴を有している。
 本発明に係るrCF収束体組成物に含まれるrCF収束体は、CFRP成形体から取り出されたものである。CFRP成形体は、熱硬化性樹脂成形体中に補強材としての炭素繊維を分散させたものであり、炭素繊維から見れば熱硬化性樹脂で結合されたものと言うことができる。ここで、結合剤となる熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
 CFRP成形体は、具体的には、航空宇宙機(例えば、ロケット、人工衛星、軍用機、旅客機、ヘリコプターブレードなど)、レーシングカー、オートバイク、自転車、鉄道車両、深海探査船、レース舟艇、測定機器、搬送用ロボットアーム、風力発電のブレード、圧縮天然ガスタンク(CNGタンク)、ゴルフシャフト、テニスラケット、釣り竿、車いす、人工骨などの構造体や、ノート型パソコン、タブレット、スマートフォンなどの携帯機器の筐体などとして用いられている。
 rCF収束体は、こうしたCFRP成形体から取出して得られたものであり、炭素繊維がアモルファスカーボンでトウ状に収束されている。アモルファスカーボンとは、熱硬化性樹脂を加熱炉内で少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域で、加熱炉内の燃焼ガスの流動下で加熱した後、400℃以上、480℃以下の温度域で、酸素濃度を16~18体積%とした雰囲気ガス中で少なくとも30分間保持することにより生成する炭素成分である。アモルファスカーボンは、熱硬化性樹脂の残渣を実質的に含有していないものである。「実質的に」とは、rCF収束体の全体を100質量%としたとき、熱硬化性樹脂の残渣が5質量%以下であることを意味する。また、rCF収束体のポテンシャル水素量は8000ppm以下を満足することが好ましい。
 上記ポテンシャル水素量は、水素分析装置を用いて測定できる。水素分析装置としては、例えば、HORIBA製の「EMGA-821」を用いることができる。
 トウ状とは、束状を意味する。炭素繊維がアモルファスカーボンでトウ状に収束されているとは、多数の炭素繊維が揃えられており、炭素繊維同士がアモルファスカーボンで結着されて束状になっていることを意味する。なお、rCF収束体に含まれるアモルファスカーボンは、rCF収束体をCFRP等の原料として用いる過程で炭素繊維から分離し、コンパウンド樹脂に混入するが、混入したアモルファスカーボンはコンパウンド樹脂より化学安定性が高いため、CFRP等の機械的特性には殆ど影響を及ぼさない。アモルファスカーボンの有無は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて確認できる。
 rCF収束体を構成する炭素繊維の平均繊維長は特に限定されないが、例えば、6mm~100mmが好ましい。上記炭素繊維の平均繊維長が6mm未満では、炭素繊維が短すぎるため、rCF収束体を用いて得られるCFRP成形体の機械的特性を充分に高められないことがある。従って、上記炭素繊維の平均繊維長は6mm以上が好ましく、より好ましくは8mm以上、更に好ましくは10mm以上、特に好ましくは25mm以上である。しかし、上記炭素繊維の平均繊維長が長くなり過ぎるとハンドリング性が悪くなることがあり、本発明に係るrCF収束体組成物を成形機へ供給しにくくなり、リサイクル原料として用いることが難しくなる。従って、上記炭素繊維の平均繊維長は100mm以下が好ましく、より好ましくは80mm以下、更に好ましくは50mm以下である。
 rCF収束体を構成する炭素繊維の数は特に限定されないが、rCF収束体のハンドリング性を一層高める観点から、例えば、500本~480000本が好ましい。上記炭素繊維の数は、より好ましくは1000本以上、更に好ましくは5000本以上である。上記炭素繊維の数は、より好ましくは400000本以下、更に好ましくは300000本以下である。
 本発明に係るrCF収束体組成物は、上記rCF収束体に加えて、表面改質剤を含有しており、該表面改質剤は、rCF収束体に含まれる炭素繊維の表面に存在する第1の化学的官能基との間で化学的親和性を示す第2の化学的官能基を有するところに特徴がある。表面改質剤を含有することにより、rCF収束体を例えば2軸押出成形機へ供給してリサイクル原料として用いても炭素繊維の繊維切れを防止できるため、発塵を抑えることができ、作業性を改善できる。また、表面改質剤を含有することにより、rCF収束体をリサイクル原料として用いるときに混練するマトリックス樹脂との濡れ性が良好となるため、製造された成形体の機械的特性を向上できる。
 rCF収束体の形成には、主にC-C間の共有結合に加え若干のイオン結合と、カルボキシル基(-COOH基)に由来する水素結合が混在していると考えられる。rCF表面に形成されたアモルファスカーボン表面にはカルボキシル基(-COOH基)が存在するが、最新のCFRP技術では、衝撃値向上剤としてPES樹脂(ポリエーテルサルフォン樹脂)が添加されることで-SO(n=2~4)が含まれており、主にイオン結合性がある。こうした共有結合、イオン結合、水素結合があることを化学的親和性ありと判断する。これらの反応性基ですべての表面が覆われておらず、rCF表面やアモルファスカーボン表面は炭素骨格が露出しており化学的親和性「なし」と判断する。従ってアモルファスカーボン上に存在する官能基の結合力を更に向上することが本発明の趣旨であり、複合化する樹脂の種類に合わせて、rCF等の表面の活性を向上させる。
 炭素繊維の表面に存在する第1の化学的官能基とは、具体的には、カルボキシル基、アルデヒド基、カルボニル基より選ばれる少なくとも1種であるが、-SO(n=2~4)が発生することもある。-SOは、熱硬化性マトリックス樹脂のエポキシ樹脂に耐衝撃性を改善するために添加される熱可塑性樹脂(具体的には、PES樹脂)由来である。
 上記第1の化学的官能基との間で化学的親和性を示す第2の化学的官能基とは、具体的には、水酸基、エポキシ基、アクリロイル基、フェニル基、アクリル基、ウレタン基、シラノール基、シロキサン基、エステル基、イミド基、ニトリル基、ステアリン酸基、マレイン酸基より選ばれる少なくとも1種であり、なかでも、水酸基、エポキシ基、アクリル基、ウレタン基、エステル基、イミド基、ニトリル基より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、特に、水酸基、アクリル基、イミド基、ニトリル基より選ばれる少なくとも1種を含有することがより好ましい。
 上記表面改質剤としては、例えば、アクリル酸エステルエマルジョン接着剤、水溶性エポキシ樹脂、或いは樹脂の内部離型剤として用いられるステアリン酸またはマレイン酸、並びにその塩などが挙げられる。アクリル酸エステルエマルジョン接着剤は、例えば、東亜合成株式会社から入手できる。無水マレイン酸は、例えば、三菱ケミカル株式会社から入手できる。
 上記表面改質剤は、rCF収束体組成物の全体を100質量%としたとき0.1~1質量%の範囲で含有している必要がある。表面改質剤の量が0.1質量%を下回ると表面改質剤が少なすぎるため、rCF収束体がホグレやすくなり、例えば押出成形機へ供給してリサイクル原料として用いる際に発塵を抑えることができず、作業環境を改善できない。また、表面改質剤が少ない場合は、rCF収束体をリサイクル原料として用いても、混練するマトリックス樹脂との濡れ性を改善できないため、製造される成形体の機械的特性を高めることができない。従って表面改質剤の量は、0.1質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。しかし表面改質剤の量が1質量%を超えると、表面改質剤が多すぎるため、乾燥、切断工程中の剥離は多くなり、更には樹脂との接着強度を損なうというデメリットがある。従って表面改質剤の量は、1質量%以下であり、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
 rCF収束体組成物に含まれる表面改質剤の量は、110℃×1時間の水分乾燥後における質量と、250℃における質量との差(減量)で測定できる。また、更に精度を上げ、複数の成分を同定するためには、表面処理された繊維を溶剤で洗浄し減圧乾燥後定量するほか赤外線吸収法、GPC等で同定する。
 本発明に係るrCF収束体組成物は、600℃×60分の条件で加熱して測定したときの残留炭素量が1~5質量%である。残留炭素量とは、rCF収束体組成物に含まれる炭素量であって、600℃以下の温度域で揮発する炭素量の割合を意味する。残留炭素量が1質量%以上であることにより、rCF収束体組成物をマトリックス樹脂中へ混練する際に、非常に良好なホグレ性とマトリックス樹脂への分散性と良好な親和状態が全域に亘って極めて均一に進むため、マトリックス樹脂に対するrCF収束体の混練り性を改善できる。残留炭素量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは3.5質量%以上である。一方、残留炭素量が5質量%以下であることにより、マトリックス樹脂との混練操作に際し、ホグレが滑らかに進行し、急激なホグレによる飛散、つまり発塵状態の形成を適切に抑制する効果が一層高いものとなり、作業環境として極めて優れたものを維持できる。残留炭素量は、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。
 残留炭素量は、例えば、熱重量測定(TG)装置を用いてrCF収束体組成物を加熱したときの重量変化を測定し、600℃で60分間加熱する前の質量と、加熱後の質量に基づいて下記式で算出できる。
残留炭素量(質量%)=[加熱前の質量-加熱後の質量]/[加熱前の質量]×100
 熱重量測定を行う雰囲気は特に限定されず、大気雰囲気でよい。また、残留炭素量は、サンプルを坩堝に入れて大気中で加熱し、加熱前後における質量の減少量を測定することによっても算出できる。
 なお、原材料がプリプレグ端材の場合は、加熱条件を500℃×60分としてもよい。プリプレグ端材は、CFRP端材と比較して、マトリックス樹脂との密着が少なく、マトリックス樹脂の炭化温度が低く、炭化生成物の密度も低いためである。
 本発明に係るrCF収束体組成物は、上記rCF収束体と、上記表面改質剤とを含むものであるが、他の成分として、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴム成分が含まれていてもよい。EPDMは-SOとの親和性がよく、PP樹脂との接着性を改善できる。
 本発明で得られるrCF収束体組成物を用いれば、リサイクル炭素繊維束を原寸のまま平面に並べ、ステッチミシンで結合することにより、任意の広幅のノンクリンプシートを製造できる。このノンクリンプシートは、リサイクル炭素繊維束が一方向に揃っている。そのため、広幅シートの炭素繊維束方向を0度、±45度、90度と角度を変えて積層することにより、連続rCFによる補強構造の骨格とすることができる。
 上記シートは、炭素繊維束が一方向に揃っているrCFシートであり、繊維の重なりがなく、アモルファスカーボンで結束されたトウ状のrCFが平面状に均一に並べられたものであるため、樹脂を容易に含浸させることができる。そのため、トウ状同士の配列を乱すことなく、熱可塑性樹脂含浸広幅UDシートを製造できる。得られたシートを所定の方向に積層し圧縮プレス機を行うことにより、任意の3D構造成型品を得ることができる。
 なお、表面改質剤を含有しない場合は、熱可塑性樹脂を含浸しにくいため、シートを製造する際に、例えば、加圧が必要となる。長時間加圧すると、トウ内の崩れや、トウ状結束物間のズレや崩れが発生し、シートの強度が低下する。
 次に、本発明に係るリサイクル炭素繊維(rCF)収束体組成物の製造方法について説明する。
 上記rCF収束体組成物は、(1)CFRP成形体を、加熱炉内で400℃以上、480℃以下の温度域の温度まで加熱し、炭素繊維が樹脂残渣を実質的に含まないアモルファスカーボンでトウ状に収束されているrCF収束体を得る工程と、(2)得られたrCF収束体と、前記炭素繊維の表面に存在する第1の化学的官能基との間で化学的親和性を示す第2の化学的官能基を有する表面改質剤の含有液とを接触させた後、乾燥させる工程とを含む方法によって製造できる。そして、前記(1)のrCF収束体を得る工程では、(1a)前記CFRP成形体を、少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域で、加熱炉内の燃焼ガスの流動下で加熱した後、(1b)400℃以上、480℃以下の温度域で、酸素濃度を16~18体積%とした雰囲気ガス中で少なくとも30分間保持する必要がある。
 少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域において、加熱炉内の燃焼ガスを流動させた状態で加熱することにより、CFRP成形体に含まれるマトリックス樹脂(熱硬化性樹脂)を乾留除去する。加熱炉内の燃焼ガスを流動させた状態で加熱することにより、CFRP成形体の表面が乾留雰囲気を構成する空気中の酸素ポテンシャルによって荒らされるのを極力回避しつつ、マトリックス樹脂の乾留除去を十分に進行させることができる。但し、この乾留除去によってマトリックス樹脂を100%除去するのではなく、炭素繊維をトウ状に収束させるために必要な程度の量に見合うアモルファスカーボンは残しておく。
 300℃以上、400℃以下の温度域で加熱した後は、引き続いて400℃以上、480℃以下の温度域の温度まで加熱する。このときアモルファスカーボンを安定化させるために、雰囲気ガス中に含まれる酸素濃度を16~18体積%の範囲に制御すると共に、この温度域での保持時間を少なくとも30分間とする。
 このように、CFRP成形体の熱処理条件を2段階に分けて綿密に制御することによって、残留炭素量を上記した範囲に調整できる。
 炭素繊維強化型熱硬化性樹脂(CFRP)成形体を熱処理したときの状態変化を、図面を用いて説明する。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや符号等を省略することがあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
 図1は、CFRP成形体を熱処理したときの状態を説明するための模式図である。図1の(a)は、熱処理前のCFRP成形体を示しており、Aは炭素繊維、斜線で示したBはマトリックス樹脂を示している。
 CFRP成形体のマトリックス樹脂の熱分解は、加熱時の昇温条件とその温度域によって大きく変化する。図1の(b)は、300℃~400℃で熱処理したときの状態を示す模式図である。マトリックス樹脂の熱分解は、300℃付近から開始するがCFRP成形体の内部から熱分解ガスが発生し、(b)に示すように内部まで均一に加熱されると、熱硬化樹脂が一旦軟化し、内部に発生した分解ガスが表面に放出される。ここで、表面とは、CFRP成形体の表面だけでなく、300℃まで昇温過程あるいは300℃~400℃の間の熱分解によって生じるディラミネーション(炭素繊維UDシートあるいは炭素繊維クロスの積層間に層間剥がれが発生する)の隙間を意味し、内部に発生した分解ガスが放出され、ディラミネーションの空間から系外へ放出されるが、この反応を継続させると、気孔が連続的に形成され、開空孔として内部で発生した分解ガスのガス流路が確保できる。
 図1の(b)に示したCFRP成形体について、円Cで囲んだ表面部を拡大して示した模式図を図2の(f)に示す。(f)に示すように、表面の気孔に、マトリックス内部のオープンポアが繋がり、ガス流路Lが形成されている。従って、熱処理時には、炭素繊維Aの周囲に存在するアモファスカーボンが均一に酸素のアタックを受けて除去されるため、炭素繊維A表面へのダメージは抑えられる。
 図1の(c)は、図1の(b)の後、更に400℃~480℃に昇温して熱処理したときの状態を示す模式図である。(c)に示すように、400℃~480℃に昇温すると、オープンポア(開空孔)は広がり、炭素繊維A表面のマトリックス樹脂Bは、炭化生成物であるアモルファスカーボンαを残してガス化する。
 一方、図1の(a)に示したCFRP成形体を500℃で熱処理したときの状態を示す模式図を図1の(d)に示す。リサイクル反応時間を重視して500℃に比較的短時間で昇温すると、(d)に示すように、CFRP成形体のマトリックス樹脂Bは、表面から分解を始め、ガス化して放出されるが、外部加熱により遅れて加熱された内部が約300℃になると分解ガスが発生する。内部で発生した分解ガスの一部は表面から放出されるが、一部は内部に留まり、空孔として集積する。また、CFRP成形体表面に存在するマトリックス樹脂Bは、一部が完全に除去され、炭素繊維Aが表面に露出する。炭素繊維A間に存在するマトリックス樹脂内や、CFRP成形体表面に近い部分は、炭化が進み層状をなして内部からのガス放出を遮断する。
 図1の(d)に示したCFRP成形体について、円Dで囲んだ表面部を拡大して示した模式図を図2の(g)に示す。(g)に示すように、500℃に加熱すると、表面のアモルファスカーボンは除去され、綿状の炭素繊維になり表面の酸化も進む。CFRP成形体の表面から供給される酸素はアモルファスカーボン層によって遮断され、内部への拡散は困難になり、CFRP成形体の内部に残留気泡pが取り残されると共にアモルファスカーボン層に取り巻かれた炭素繊維Aは固定されたままになる。
 図1の(e)は、図1の(d)の後、更に600℃に昇温して熱処理したときの状態を示す模式図である。(d)に示すように、600℃に昇温すると、マトリックス樹脂が炭化して炭化層が除去された炭素繊維Aとそれに引き続く気孔やガス放出口を含まないアモルファスカーボン層、更に中心部には、ガス放出口を遮断されたクローズドポア(閉空孔)Pが存在し、一部はガス放出が不完全なまま樹脂分として残留する。従来では、500℃以上の高温で樹脂を除去していたため、すでに露出された表面の炭素繊維Aは酸化による腐食が進み本来の機械的性能を再現することができなかった。また、内部には、除去しきれないアモルファスカーボンに加え、未分解樹脂も一部存在していた。
 以下、本発明に係るrCF収束体組成物の製造方法について詳述する。
 (1)rCF収束体を得る工程
 rCF収束体を得る工程では、CFRP成形体を、400℃以上、480℃以下の温度域まで加熱する。加熱到達温度を400℃以上、480℃以下の温度域とすることにより、炭素繊維が樹脂残渣を実質的に含まないアモルファスカーボンでトウ状に収束されているrCF収束体を得ることができる。また、rCF収束体組成物に含まれる残留炭素量を所定の範囲に調整できる。即ち、加熱到達温度が400℃を下回ると加熱不足となり、アモルファスカーボンが過剰に残存し、炭素繊維を単繊維の集合体にまで分離できない。従って加熱到達温度は、400℃以上とし、好ましくは410℃以上、より好ましくは420℃以上である。しかし、加熱到達温度が480℃を超えると過剰加熱となり、アモルファスカーボンの除去が進みすぎ、炭素繊維表面が不活性な平滑面となって収束力が無くなり、マトリックス樹脂と混練りする際の作業性を改善できない。また、アモルファスカーボンの除去の均一性を維持できなくなり、CFRP等を得るために必要なマトリックス樹脂との濡れ性が悪くなり、安定した物性のrCF収束体が得られない。従って加熱到達温度は480℃以下とし、好ましくは470℃以下、より好ましくは460℃以下である。
 (1a)少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域
 CFRP成形体を、400℃以上、480℃以下の温度域まで加熱するにあたり、少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域では、加熱炉内の燃焼ガスの流動下で加熱する。燃焼ガスを流動させた状態でCFRP成形体を加熱することにより、CFRP成形体を燃焼させることなく均一に加熱することができる。
 少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域における加熱炉内の燃焼ガスの平均流動速度は、例えば、0.1m/秒以上が好ましい。燃焼ガスの平均流動速度を0.1m/秒以上とすることにより、CFRP表面の温度を容易に制御できるため、加熱ムラを生じさせることなく、均一に加熱できる。燃焼ガスの平均流動速度は、より好ましくは0.5m/秒以上であり、更に好ましくは1m/秒以上である。加熱炉内における燃焼ガスの平均流動速度は大きい方が好ましく、平均流動速度が大きいほど、CFRP成形体の表面からの表面拡散速度が大きくなり、内部拡散速度及び熱拡散速度が向上するため、熱硬化性樹脂の分解速度および分解後の炭化速度を大きくすることができる。燃焼ガスの平均流動速度の上限は特に限定されないが、平均流動速度が大きくなりすぎると加熱炉内に装入したCFRP成形体の質量によっては飛散することがある。従って燃焼ガスの平均流動速度は10m/秒以下とすることが好ましく、より好ましくは9m/秒以下、更に好ましくは8m/秒以下である。加熱炉内における燃焼ガスの流動速度は、加熱炉内に送風機を設けることによって制御できる。加熱炉内における燃焼ガスの流動速度は、加熱炉内にガス流量計を設けることによって測定できる。
 少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域で加熱するときの雰囲気ガス中の酸素濃度は特に限定されないが、例えば、16~18体積%とすることが好ましい。酸素濃度が16体積%を下回ると、同じ処理温度でも熱分解速度定数が極端に低下し、十分な熱分解が行われないだけでなく、排気ガスに未分解樹脂が混入し、煤状あるいはタール状となり、排気系の管壁に蓄積するだけでなく、通常炭化水素系ガスの酸化を行う酸化触媒が被毒し、活性を失うことがある。酸素濃度が18体積%を超えると、酸素の内部拡散速度が増加して内部での発熱量が増加するが、内部で発熱した酸化発熱の拡散速度は増加できず、表面への到達が遅れ高速熱流で表面から除去できないため、内部発熱の制御ができず、ついには燃焼状態になることがある。
 少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域における雰囲気ガス中の酸素濃度は、予熱された空気を加熱炉内の雰囲気ガス流に混合することにより制御することが好ましい。
 CFRP成形体を室温から300℃まで加熱するときの雰囲気ガス中の酸素濃度も特に限定されないが、例えば、酸素濃度は13~19体積%の範囲に制御することが好ましい。酸素濃度を13体積%以上とすることにより、不完全燃焼ガスを排出することなく加熱できる。酸素濃度は、より好ましくは14体積%以上、更に好ましくは15体積%以上である。しかし、酸素濃度が19体積%を超えると酸素が過剰となり、不均一燃焼したり、加熱炉内で爆発が起こることがある。従って、酸素濃度は19体積%以下が好ましく、より好ましくは18体積%以下、更に好ましくは17体積%以下である。
 CFRP成形体は、少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域で、熱硬化性樹脂の分解反応が終息するまで加熱することが好ましい。分解反応が終息しないまま400℃以上に加熱するとCFRP成形体の酸化が急激に起こるため、温度制御し難くなって、白煙や異臭が発生することがあり、作業環境が悪くなる。また、CFRP成形体の温度が急上昇し、CFRP成形体の内部に発生するガスが成形体外へ充分に放出されないため、爆発する虞がある。また、急激な酸化により綿状化し、トウ状を形成できないことがある。
 分解反応の終息は、CFRP成形体からの発煙の有無を観察することにより判断でき、発煙が終了した時点を分解反応の終息点と判断すればよい。分解反応が終息した時点では、異臭が発生していないことを確認することが好ましい。また、加熱炉内や加熱炉から排ガスを排出する経路における雰囲気ガス中のガス濃度(例えば、酸素濃度など)を測定し、ガス濃度が安定したことを確認することが好ましい。
 少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域での保持時間は、熱硬化性樹脂の分解反応が終息するまでの時間とする必要があるが、例えば、1時間以上が好ましく、5時間以下が好ましい。上記保持時間とは、300℃以上、400℃以下の温度域における滞在時間を意味し、温度上昇のプロセスの中で300℃に到達した時点から400℃に到達するまでの時間を意味する。
 (1b)400℃以上、480℃以下の温度域
 300℃以上、400℃以下の温度域でCFRP成形体の分解反応が終息したことが確認された後は、400℃以上、480℃以下の温度域に加熱する。400℃以上、480℃以下の温度域に加熱することによって炭素繊維が樹脂残渣を実質的に含まないアモルファスカーボンでトウ状に収束された収束体を得ることができる。アモルファスカーボンは、樹脂残渣を含まないことが好ましい。
 400℃以上、480℃以下の温度域での加熱は、酸素濃度を16~18体積%とした雰囲気ガス中で行う必要がある。酸素濃度が16体積%を下回ると、アモルファスカーボンが生成しにくくなるため、炭素繊維をトウ状に収束できない。また、残留炭素量が過剰になるため、マトリックス樹脂と混練りする作業性を改善できない。また、成形体の物性を安定化できない。更には分解ガスの生成に時間がかかり、分解後に生成する空隙がクローズドポア(閉空孔)となり熱分解速度が低下するとともに、不均一相を生成する。従って酸素濃度は16体積%以上とし、好ましくは16.3体積%以上、より好ましくは16.5体積%以上とする。しかし酸素濃度が18体積%を超えると、熱硬化性樹脂の分解速度が大きくなり、アモルファスカーボンを生成させないまま一部が燃焼状態となって酸化除去されるため、炭素繊維を均一なトウ状に収束できず、綿状と塊状の共存状態となる。また、残留炭素量が少なくなり過ぎるため、マトリックス樹脂と混練りする作業性を改善できない。また、成形体の物性を安定化できない。従って酸素濃度は18体積%以下とし、好ましくは17.8体積%以下、より好ましくは17.5体積%以下とする。加熱炉内の雰囲気中の酸素濃度は、酸素濃度計で測定すればよい。
 400℃以上、480℃以下の温度域での保持時間は、少なくとも30分間とする。この温度域で少なくとも30分間保持することによって、rCF収束体の炭素繊維同士を結合するアモルファスカーボン量を適切に調整でき、残留炭素量を適切な範囲に調整できるため、収束体を望ましい硬さに精密に調整できる。また、マトリックス樹脂と混練りする作業性を改善できる。また、成形体の物性を安定化できる。保持時間が30分未満では、アモルファスカーボン量が多くなり、残留炭素量が過剰になるため、炭素繊維同士が強固に結合した塊状となる。その結果、rCF収束体の安定計量が難しくなり、また押出機への安定供給も難しくなるため、上記rCF収束体を、リサイクルのための原料として用いることは困難となる。従って保持時間は30分間以上とし、好ましくは60分間以上、より好ましくは90分間以上である。上記保持時間の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、例えば、180分間以下が好ましく、より好ましくは150分間以下、更に好ましくは120分間以下である。上記保持時間とは、400℃以上、480℃以下の温度域における滞在時間を意味し、温度上昇のプロセスの中で400℃に到達した時点から480℃に到達するまでの時間を意味する。
 400℃以上、480℃以下の温度域では、加熱炉内の燃焼ガスを流動させなくてもよいが、流動させることが好ましい。燃焼ガスの流動下で加熱することにより、加熱ムラが抑えられてCFRP成形体を均一に加熱することができる。400℃以上、480℃以下の温度域において加熱炉内の燃焼ガスを流動させる場合は、燃焼ガスの平均流動速度を、上述した300℃以上、400℃以下の温度域で加熱するときの燃焼ガスの平均流動速度よりも遅くしたり、逆に速くしてもよいが、同じであってもよい。
 上記加熱は、上記CFRP成形体由来の熱分解ガス(樹脂のモノマー、熱分解炭化水素等)が存在していてもよく、また、これら熱分解ガスが酸素と反応し燃焼したCO等が存在していてもよい。更にこれらのガスに酸素含有ガスを混合しつつ行ってもよい。酸素含有ガスを混合することによって、雰囲気ガス中の酸素濃度を制御できる。酸素濃度の微増と雰囲気ガスの循環によって、化学平衡状態を大きく変化させず、樹脂の熱分解と熱分解ガスの酸化反応を進め、結果的にマトリックス樹脂をアモルファスカーボンに変換できる。また反応を緩やかに進めることにより、臭気を伴う分解ガスは、例えば、燃焼室へ導入し、完全燃焼させ、熱源として用いつつ、追加の排ガス処理を殆ど必要としない燃焼ガスとして、一部は炭素繊維回収炉に再循環し、残りは系外に、脱臭装置を通って放出すればよい。
 混合する酸素含有ガスとしては、例えば、空気を用いればよいが、酸素ガスや、酸素ガスを含む不活性ガスなどを用いてもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスなどを用いればよい。
 400℃以上、480℃以下の温度域で加熱保持した後は、300℃以下まで冷却する。冷却時における雰囲気ガス中の酸素濃度は特に限定されず、例えば、大気中で冷却すればよい。
 同一の加熱炉で繰り返し処理する場合は、例えば、処理終了時に熱源を遮断し、雰囲気ガスの循環を継続させ、400℃以下でrCF収束体を取り出した後、約300℃まで冷却した加熱炉に新しいCFRP成形体を装入し、CFRP成形体の温度が300℃以下で安定化していることを確認してから次のバッチ処理を開始すればよい。
 上記CFRP成形体は、使用済の回収品でもよいし、規格外品として回収されたものでもよい。また、製造時に発生したプリプレグ端材や、トリミング除去品等であってもよい。こうしたCFRP成形体は、発生源によって明確に分離し、トレ―サビリティーを厳密に管理することが好ましい。また、製品にリサイクルグレードを明記する際には、市場からの回収品に限定し、工程内における回収リサイクル品と明確に区分することが好ましい。上記CFRP成形体の表面に、例えば、メッキ層や塗膜層が形成されている場合は、加熱する前にメッキ層や塗膜層を予め除去しておくことが好ましい。
 (2)表面改質剤の含有液と接触させた後、乾燥させる工程
 上記(1)で得られたrCF収束体を、炭素繊維の表面に存在する第1の化学的官能基との間で化学的親和性を示す第2の化学的官能基を有する表面改質剤の含有液とを接触させた後、乾燥させることにより、本発明のリサイクル炭素繊維収束体組成物を製造できる。
 表面改質剤の含有液とは、表面処理剤自体でもよいし、表面処理剤を水または有機溶媒に分散または溶解させた液であってもよい。表面処理剤を分散または溶解させるために用いる溶媒としては、例えば、酢酸エチル、MEK、トルエン、エタノール、IPA、メタノール及びそれらの混合溶剤などが挙げられる。表面処理剤を分散または溶解させた含有液に含まれる表面処理剤の濃度は、例えば、0.01~0.0001質量%であることが好ましい。
 rCF収束体と、表面改質剤含有液とを接触させる方法は特に限定されず、例えば、加熱炉から取り出したrCF収束体を表面改質剤含有液に浸漬させる方法や、rCF収束体に対して表面改質剤含有液を吹き付ける方法などが挙げられる。
 rCF収束体と、表面改質剤含有液とを接触させた後は、乾燥させる。乾燥温度は、例えば、110℃~180℃とすることが好ましい。乾燥温度を110℃以上とすることにより、水分量あるいは溶媒残留を減少させることができる。乾燥温度は、より好ましくは115℃以上であり、更に好ましくは120℃以上である。しかし、乾燥温度が180℃を超えると表面改質剤の一部が揮発除去あるいは空気中で熱分解されるおそれがあり、表面改質剤の残存量が少なくなり過ぎることがある。従って、乾燥温度は160℃以下が好ましく、より好ましくは135℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
 乾燥時間は、rCF収束体を乾燥棚に100mm厚さに均一に散布した状態で、例えば、60分~180分とすることが好ましい。
 こうして得られた上記rCF収束体組成物は、CFRP成形体やCFRTP成形体の原料として好適に用いることができる。上記rCF収束体組成物を、押出成形機へ供給し、別途供給される熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂と混合し、公知の条件で成形することによって、CFRP成形体やCFRTP成形体とすることができる。
 上記rCF収束体組成物は、特に、押出成形機のサイドフィーダーから供給するサイドフィード用として好適に用いることができる。
 上記押出成形機の種類は特に限定されず、例えば、単軸スクリュー押出機や多軸スクリュー押出機などが挙げられる。単軸スクリュー押出機とは、一軸押出機であり、多軸スクリュー押出機とは、例えば、二軸押出機や一軸と二軸の複合機などである。
 本願は、2021年5月28日に出願された日本国特許出願第2021-090412号に基づく優先権の利益を主張するものである。上記日本国特許出願第2021-090412号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
 以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
 [実験1]
 実験1では、使用済み圧縮天然ガスタンク(CNGタンク)の両端のドーム部分を切り落として円筒状にし、内部のアルミニウム容器を予め分離除去したCNGタンクを、炭素繊維強化型熱硬化性樹脂成形体として用いた。円筒状のCNGタンクは、直径が約40cm×長さが約152cm×厚みが約1cmであった。なお、両端の口金部分のみ切り落とし、ドーム部から円筒部を直線的にカットした状態で入炉することも可能であり、その場合はアルミライナーがそのまま回収され、半分に分離されたrCFが積層状態で回収され、より繊維長の長いrCFが回収できるため、後の切断が容易になる。
 円筒状のCNGタンクを円周方向の長さが均等になるように4つに切断し、分割した。円筒状のCNGタンクを構成する熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂であった。4つに分割したCNGタンクを加熱炉へ装入し300℃~400℃で90分保持し、樹脂分の炭化を行った後、400℃以上、470℃以下の温度域の温度まで加熱した。4つに分割したCNGタンクは、互いに重ねずに、隙間を作り、加熱炉内の燃焼ガスがCNGタンク表面に均一に接触するように配置した。即ち、CNGタンクは、その長手方向と、雰囲気ガスの流動方向が同方向(並行)となるように配置した。
 加熱炉の蓋を閉め、加熱炉の排気部に設けられた耐熱ファンを動作させ、加熱炉内の温度が300℃に到達した時点から加熱終了までの区間において、加熱炉内の燃焼ガスを循環させた。加熱炉内における燃焼ガスの平均流動速度は0.05m/秒とした。また、加熱炉に設けられた速度可変ブロアから空気を取り込み、加熱炉内の雰囲気ガス中の酸素濃度をジルコニア式酸素センサーで測定し18体積%に制御した。加熱炉内における雰囲気ガス中の酸素濃度は、加熱炉内の温度が300℃に到達した時点から400℃まで18体積%、400℃から加熱終了までの区間において16体積%とした。加熱炉内の温度が300℃に到達した時点から400℃に到達するまでの区間における保持時間は1.5時間とした。加熱炉内の温度が300℃に到達した時点から400℃に到達するまでの区間における平均昇温速度は50℃/分とした。予め実験炉で400℃に到達する直前の時点において、CFRP成形体の分解状態を確認し、分解反応が終息した場合は、引き続き加熱し、昇温させた。分解反応の終息は、実験炉での確認と共に発煙の発生の有無を観察し、発煙が発生していない場合を分解反応が終息したと判断した。また、異臭の発生の有無についても観察し、異臭が発生していないことも確認した。分解反応の終息を確認した後、加熱到達温度を470℃に設定して加熱した。400℃以上、470℃以下の温度域では30分間保持した。加熱終了後、冷却し、rCF収束体を得た。得られたrCF収束体は熱硬化性樹脂に由来するアモルファスカーボンでトウ状に収束されていた。rCF収束体の質量に占めるアモルファスカーボンの質量割合は5%であり、rCF収束体のポテンシャル水素量は8000ppmであり、樹脂残渣を実質的に含んでいなかった。
 rCF収束体に含まれる炭素繊維の表面には、第1の化学的官能基としてカルボキシル基(-COOH基)が存在していた。rCF収束体を構成する炭素繊維の平均繊維長は2000mm、炭素繊維の数は平均24000本であった。
 次に、得られたrCF収束体と、表面改質剤の含有液とを接触させた後、乾燥し、リサイクル炭素繊維収束体組成物を製造した。表面改質剤として東亜合成株式会社社製の「アクリル酸エステルエマルジョン接着剤」を準備し、「アクリル酸エステルエマルジョン接着剤」に水を添加してアクリル酸エステルエマルジョン接着剤の固形分が2質量%である表面改質剤の含有液を調製した。表面改質剤には、第2の化学的官能基として水酸基(-OH基)を含んでおり、この第2の化学的官能基は、炭素繊維の表面に存在する第1の化学的官能基であるカルボキシル基(-COOH基)との間で化学的親和性を示す。
 rCF収束体を、表面改質剤の含有液に5分間浸漬させることによりrCF収束体と表面改質剤の含有液とを接触させた。接触後、ローラーで軽く絞ってから乾燥させた。乾燥は、120℃で行った。得られたrCF収束体組成物の全体を100質量%としたとき、表面改質剤は0.3質量%とした。得られたrCF収束体組成物を蓋つき坩堝に入れ600℃で、60分間加熱し、残留炭素量を測定した。その結果、リサイクル炭素繊維収束体組成物の全体を100質量%としたとき、残留炭素量は1.2質量%であった。
 乾燥後、炭素繊維の長さが約25mmとなるように切断した。rCF収束体組成物を切断しても発塵が殆どないため、切断機の切断速度の90%以上まで切断速度を上げることができ、またrCF収束体組成物の供給量も増やすことができたため、単位時間あたりの切断量を25kg/時間(200mm幅切断機)とすることができた。
 次に、25mmに切断したリサイクル炭素繊維収束体組成物を二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、メインフィーダーから供給した6ナイロン樹脂(宇部興産製 1013B)で混錬し、ストランド(押し出ししたヌードル状)を形成後ペレタイザーで6mm長にペレタイズした。6ナイロン100質量部に対して、リサイクル炭素繊維収束体組成物を40質量%配合したペレットを、日精樹脂製180トン射出成型機で成形体を製造した。
 リサイクル炭素繊維収束体組成物はサイドフィーダーから供給しても発塵せず、作業環境の悪化は認められなかった。また、表面処理されたリサイクル炭素繊維収束体組成物はアモルファスカーボン収束材が機能し樹脂温度委で加熱されたサイドフィーダー内でも保持強度が損なわれず、6ナイロン樹脂と速やかに混練りされその時点で均一な解繊状態が得られ、作業性が良好であった。
 次に、得られた成形体の機械的特性を評価した。機械的特性は、JIS K7161-2/1A/5に基づいて引張破壊強さおよび引張破壊伸びを測定した。その結果、引強破壊強さは252.2MPa、引張破壊伸びは1.66%であった。また、シャルピー衝撃強さを、JIS K7111-1/1eAに基づき、ノッチ有りで、23℃で測定した。その結果、9kJ/mであった。
 [実験2]
 実験1において、得られたリサイクル炭素繊維収束体組成物と、PES樹脂を混合し、リサイクル炭素繊維収束体を用いて熱可塑性樹脂を強化した成形体を製造した。成形体の製造には、二軸押出機を用い、サイドフィーダーからリサイクル炭素繊維収束体組成物を供給した。熱可塑性樹脂100質量部に対して、リサイクル炭素繊維収束体組成物を55質量%配合し、成形体を製造した。リサイクル炭素繊維収束体組成物はサイドフィーダーから供給しても発塵せず、作業環境の悪化は認められなかった。また、リサイクル炭素繊維収束体組成物は、PES樹脂と速やかに混練りされ、作業性が良好であった。二軸押出機の先端に、厚さ7mm×幅90mmの押出口(ダイ)を取り付け、押出しにより板状成形体を製造した。得られた板状成形体の比重は1.34となり、理論値とほぼ等しかった。得られた板状成形体を金型に挿入し、熱プレス成型してスマートフォン形状の成形品を得た。得られた成形品の機械的特性を評価した結果、曲げ強度はマグネシウムダイキャストに匹敵し、曲げ弾性率は40GPaを上回った。
 [実験3]
 実験2で得られた厚さ7mm×幅90mmの板状成形体をそのまま熱ロールに挿入し、厚さが0.5mmになるまで延伸し、幅が約20mmの帯状成形体を製造した。
 [実験4]
 実験4では、上記実験1において表面改質剤を用いずに成形体を製造した。即ち、上記実験1において、加熱終了後、冷却して得られたrCF収束体と、熱可塑性樹脂を混合し繊維強化成形体を製造した。冷却して得られたrCF収束体は、炭素繊維の長さが約25mmとなるように切断したが、切断時に発塵が発生したため、切断機の切断速度の60%程度の速度でしか切断できなかった。またrCF収束体組成物の供給量を増やすことができなかったため、単位時間あたりの切断量は5kg/時間に留まった。熱可塑性樹脂としては、6ナイロン樹脂を用いた。成形体の製造には、二軸押出機を用い、サイドフィーダーからrCF収束体を供給した。熱硬化性樹脂100質量部に対して、rCF収束体を30質量%配合し、成形体を製造した。rCF収束体をサイドフィーダーから供給すると、上記実験1よりも発塵し、上記実験1と比較すると作業環境が若干悪かった。また、上記実験1と比べると、rCF収束体は、6ナイロン樹脂との混練り性がやや悪かった。
 次に、得られた成形体の機械的特性を上記実験1と同様に評価した。その結果、引強破壊強さは233MPa、引張破壊伸びは1.3%、シャルピー衝撃強さは6.8kJ/mであった。

Claims (6)

  1.  炭素繊維強化型熱硬化性樹脂成形体から取り出されたリサイクル炭素繊維収束体と、
     前記炭素繊維の表面に存在する化学的官能基(以下、第1の化学的官能基という)との間で化学的親和性を示す化学的官能基(以下、第2の化学的官能基という)を有する表面改質剤と
    を含有するリサイクル炭素繊維収束体組成物であり、
     前記リサイクル炭素繊維収束体は、炭素繊維が樹脂残渣を実質的に含まないアモルファスカーボンでトウ状に収束されており、
     前記リサイクル炭素繊維収束体組成物の全体を100質量%としたとき前記表面改質剤を0.1~1質量%含有し、且つ
     前記リサイクル炭素繊維収束体組成物を600℃×60分の条件で加熱して測定したときの残留炭素量が1~5質量%であるリサイクル炭素繊維収束体組成物。
  2.  前記第1の化学的官能基は、カルボキシル基、アルデヒド基、カルボニル基より選ばれる少なくとも1種であり、
     前記第2の化学的官能基は、水酸基、エポキシ基、アクリロイル基、フェニル基、アクリル基、ウレタン基、シラノール基、シロキサン基、エステル基、イミド基、ニトリル基、ステアリン酸基、マレイン酸基より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のリサイクル炭素繊維収束体組成物。
  3.  請求項1または2に記載のリサイクル炭素繊維収束体組成物から形成されるシート。
  4.  請求項1または2に記載されたリサイクル炭素繊維収束体組成物を製造する方法であって、
     炭素繊維強化型熱硬化性樹脂成形体を、加熱炉内で400℃以上、480℃以下の温度域の温度まで加熱し、炭素繊維が樹脂残渣を実質的に含まないアモルファスカーボンでトウ状に収束されているリサイクル炭素繊維収束体を得る工程と、
     得られたリサイクル炭素繊維収束体と、前記炭素繊維の表面に存在する第1の化学的官能基との間で化学的親和性を示す第2の化学的官能基を有する表面改質剤の含有液とを接触させた後、乾燥させる工程とを含み、
     前記リサイクル炭素繊維収束体を得る工程では、前記炭素繊維強化型熱硬化性樹脂成形体を、少なくとも300℃以上、400℃以下の温度域で、加熱炉内の燃焼ガスの流動下で加熱した後、400℃以上、480℃以下の温度域で、酸素濃度を16~18体積%とした雰囲気ガス中で少なくとも30分間保持するリサイクル炭素繊維収束体組成物の製造方法。
  5.  前記加熱炉内の燃焼ガスの平均流動速度を0.1~10m/秒とする請求項4に記載の製造方法。
  6.  前記300℃以上、400℃以下の温度域での加熱は、前記炭素繊維強化型熱硬化性樹脂成形体からの発煙が終了するまで行う請求項4または5に記載の製造方法。
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