WO2021177405A1 - 表皮係止クリップ - Google Patents

Abstract

表皮係止クリップ（１０，３０）は、乗り物用シート等において、パッド（５）の溝（８）内に配置され、表皮材に取り付けられた被係止部（６ｃ）を固定する。表皮係止クリップ（１０，３０）は、基板（１１，３１）と、被係止部（６ｃ）を係止するべく基板（１１，３１）に立設された係止片（１２，３２）と、基板に立設された張出片（１３，３３）とを備える。張出片（１３，３３）がパッド（５）に支持されるため、表皮係止クリップ（１０，３０）は、パッド（５）に強固に支持される。

Description

表皮係止クリップ

　本開示は、パッドに所定の幅及び深さをもって所定の方向に延在するように設けられた溝内にて、パッドに埋設され、パッドの少なくとも一部を覆う表皮材に設けられた被係止部を固定するための表皮係止クリップに関する。

　乗り物用シートのシートクッション及びシートバックにおける着座面には、外観形状を維持するために線状の凹みが設けられることがある（図１参照）。表皮材はこの線状の凹みに吊り込まれて表皮係止クリップによってパッドに固定される。例えば特許文献１及び２には、パッドに埋設される基板と、基板に立設されて表皮材を係止する１対の係止部とを備える表皮係止クリップが記載されている。

特許第６２２８５６２号公報 特許第６３３９８０２号公報

　シートを構成する部品のレイアウトによっては、表皮係止クリップを小型化すること、特に基板の幅を狭くすることが求められる。このような場合でも表皮係止クリップをパッドに対し、強固に支持させることが望まれている。本発明は、基板が小さくともパッドに強固に支持された表皮係止クリップを提供することを目的とする。

　本発明のある実施形態は、パッド（５）に所定の幅及び深さをもって所定方向に延在するように設けられた溝（８）内にて、前記パッド（５）に埋設され、前記パッド（５）の少なくとも一部を覆う表皮材（６）に設けられた被係止部（６ｃ）を固定するための表皮係止クリップ（１０，３０，５０）であって、前記所定方向及び前記溝（８）の幅方向に沿って延在して少なくとも前記幅方向の端部において前記パッド（５）に埋設されるべき基板（１１，３１，５１）と、前記被係止部（６ｃ）を係止するべく、前記幅方向に互いに対向するように前記基板（１１，３１，５１）に立設され、互いに対向する側に係止爪（１８，３４，５４）を備えた１対の係止片（１２，３２，５２）と、前記係止片（１２，３２，５２）の少なくとも一方の前記幅方向における外側において前記基板（１１）に対向する、又は前記幅方向における前記基板（３１，５１）の端縁よりも外側に延出する張出部（２１，４０）を含む張出片（１３，３３）とを備えることを特徴とする。

　この構成によれば、基板の幅方向の両端部だけでなく、張出部がパッドに埋設されるため、基板が小さくとも表皮係止クリップがパッドに強固に支持される。

　本発明のある実施形態は、上記構成において、前記張出片（１３，３３）が、前記基板（１１，３１）に立設された立設部（２０，３９）を含み、前記張出部（２１，４０）は、前記立設部（２０，３９）の遊端側から前記基板（１１，３１，５１）の前記幅方向の外向きに延出することを特徴とする。

　この構成によれば、１対の係止片間にパッドが入り込まないように、かつ、基板、立設部及び張出部に囲まれた部分にパッドが充填されるようにパッドを成形することが容易になる。

　本発明のある実施形態は、上記構成において、前記立設部（２０，３９）が、前記所定方向に間隔をおいて前記基板（１１，３１）から延出する少なくとも１対の柱状体（２０ａ，３９ａ）を含み、前記柱状体（２０ａ，３９ａ）間に開口（２３，４１）が形成されたことを特徴とする。

　この構成によれば、開口にパッドが入り込むため、表皮係止クリップがパッドに強固に支持される。

　本発明のある実施形態は、上記構成において、前記張出片（１３，３３）は、前記所定方向における前記張出部（２１，４０）の中間部と前記基板（１１，３１）とに連結する連結体（２２，３９ｂ）を更に含むことを特徴とする。

　この構成によれば、連結体によって張出部が補強されるとともに、連結体がパッド内に埋設されるため、表皮係止クリップがパッドに強固に支持される。

　本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記張出部（２１）は、前記基板（１１）に対向し、前記張出部（２１）は、前記基板（１１）の前記幅方向の端部の対向面に平行な対向面を有することを特徴とする。

　この構成によれば、張出部と基板の幅方向の端部との間にパッドが入り込むため、表皮係止クリップがパッドに強固に支持される。また、張出部と基板の幅方向の端部と互いの対向面が平行であるため、表皮係止クリップを形成するための金型を抜き出しやすく、金型の複雑化を抑制できる。

　本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記基板（１１）の前記幅方向の前記端部に、隣接する部分に対して前記溝（８）の深さ方向にずれた段違い部分（１６）が設けられていることを特徴とする。

　この構成によれば、段違い部分にパッドが入り込むことによって表皮係止クリップがパッドに強固に支持され、段違い部分の段差を形成するための形状によって表皮係止クリップの剛性が向上する。

　本発明のある実施形態は、上記の第１の構成において、前記係止片（３２）は、前記基板（３１）に立設されて遊端部から前記係止爪（３４）を延出させる壁体（１７）を更に含み、前記係止爪（３４）は、前記基板（３１）に直交する方向から見て、前記壁体（１７）から前記幅方向の内側に延出する第１側縁（３５）と、前記壁体（１７）から前記幅方向の内側に対して前記第１側縁（３５）側に傾斜して延出する第２側縁（３６）と、前記第１側縁（３５）の延出端から前記所定方向に略平行に延在する延出端縁（３７）と、前記第２側縁（３６）及び前記延出端縁（３７）に連結し、前記所定方向に対する角度が前記第２側縁（３６）よりも小さい角取縁（３８）とを有し、１対の前記係止爪（３４）における前記第２側縁（３６）は、互いに対向していることを特徴とする。

　この構成によれば、角取縁を設けることによって、第２側縁の延長線と延出端縁の延長線との交点によって形成される角がなくなるため、表皮材の被係止部を１対の係止爪間に挿入しやすくなる。

　また、従来の表皮係止クリップでは、表皮材における被係止部が表皮係止クリップの係止部に係合した状態において線状の凹みの深さ方向に遊びがあり、被係止部が表皮係止クリップ内で揺動するおそれがあった。仮に、遊びをなくすように設計変更すると、被係止部を押し込む作業が作業員にとって難しくなるおそれがあった。このような問題に鑑み、本発明のある実施形態は、表皮材の被係止部を表皮係止クリップに取り付けやすく、表皮材の被係止部が表皮係止クリップから抜けることを抑制できる表皮係止クリップを提供することを目的とする。

　本発明のある実施形態は、パッド（５）に所定の幅及び深さをもって所定方向に延在するように設けられた溝（８）内にて、前記パッド（５）に埋設され、前記パッド（５）の少なくとも一部を覆う表皮材（６）に設けられた被係止部（６ｃ）を固定するための表皮係止クリップ（１０）であって、前記所定方向及び前記溝の幅方向に沿って延在して少なくとも前記幅方向の端部において前記パッド（５）に埋設されるべき基板（１１）と、前記被係止部（６ｃ）を係止するべく、前記幅方向に互いに対向するように前記基板（１１）に立設された壁体（１７）及び前記壁体（１７）の遊端に設けられた係止爪（１８）を備えた１対の係止片（１２）とを備え、前記幅方向における前記両壁体（１７）間にて、前記係止片（１２）に係止された前記被係止部（６ｃ）を、前記基板（１１）から離反する向きに付勢する付勢部（１４）が設けられていることを特徴とする。

　この構成によれば、被係止部を押し込むと付勢部が変形するため被係止部を表皮係止クリップに取り付けやすく、また、表皮係止クリップが被係止部を係止した状態において、被係止部は、係止爪と付勢部とによって挟持されるため、表皮係止クリップ内で揺動せず、表皮係止クリップから抜け難い。

　本発明のある実施形態は、上記構成において、１対の前記係止爪（１８）は、前記所定方向において互いにずれて配置され、一方の前記係止片（１２）の前記係止爪（１８）と他方の前記係止片（１２）の前記壁体（１７）との間の前記幅方向の離間距離は、前記被係止部（６ｃ）の前記幅よりも小さく、前記係止片（１２）は、前記離間距離が前記被係止部（６ｃ）の前記幅以上になるように弾性変形可能であることを特徴とする。

　この構成によれば、表皮係止クリップが被係止部を係止した状態においては、係止片は被係止部を係止でき、係止爪が互いに所定方向にずれて配置されているため、作業員が被係止部をこじることにより、容易に１対の係止片の上端部を被係止部の幅よりも大きくすることができ、被係止部を表皮係止クリップから取り外すことができる。

　本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記表皮係止クリップ（１０）は樹脂を素材とし、前記付勢部（１４）は、前記基板（１１）に片持ち支持された１対の板ばねを含むことを特徴とする。

　この構成によれば、基板と一体に付勢部を成形することができる。

　本発明のある実施形態は、上記構成において、１対の前記板ばねは、前記所定方向において前記係止爪の外側に設けられ、前記幅方向において互いにずれて配置されたことを特徴とする。

　この構成によれば、表皮係止クリップの形成時に金型を抜き取る方向を確保でき、金型の複雑化を抑制することができる。

　本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記係止片（１２）の各々は、前記壁体（１７）の遊端部から前記幅方向の外側に延出するガイド部（１９）を含み、前記係止爪（１８）及び前記ガイド部（１９）の前記深さの方向の上面は、互いに滑らかに連続して、前記幅方向の内側に向かうにつれて下方に向かうように傾斜していることを特徴とする。

　この構成によれば、被係止部を表皮係止クリップに係止させるために、被係止部を係止片の上部に押し付ける際、被係止部の位置が幅方向にずれていても、ガイド部が被係止部を１対の係止片間にガイドし、被係止部を１対の係止片の上部間に挿入することができる。

　本発明によれば、パッドに強固に支持された表皮係止クリップを提供することができる。

実施形態に係る表皮係止クリップが適用される車両用シートの斜視図 第１実施形態に係る表皮係止クリップのパッドに取り付けられた状態を示す正面図 第１実施形態に係る表皮係止クリップの斜視図 第１実施形態に係る表皮係止クリップの斜視図 第１実施形態に係る表皮係止クリップの平面図 第１実施形態に係る表皮係止クリップ側面図 第１実施形態に係る表皮係止クリップが被係止部材を係止した状態を示す斜視図 第１実施形態に係る表皮係止クリップと被係止部材とを示す正面図（Ａ：被係止部を押し込んだ状態、Ｂ：被係止部を係止した状態） 第２実施形態に係る表皮係止クリップの斜視図 第２実施形態に係る表皮係止クリップの斜視図 第２実施形態の変形例に係る表皮係止クリップの平面図 第２実施形態の変形例に係る表皮係止クリップの正面図

　以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。

　図１は、本発明の実施形態が適用される車両用シート１の斜視図である。車両用シート１は、車体に支持されるシートクッション２と、シートクッション２に連結されたシートバック３と、シートバック３に連結されたヘッドレスト４とを備える。シートクッション２、シートバック３及びヘッドレスト４の各々は、発泡ウレタン等の発泡樹脂からなるパッド５（図２参照）と、パッド５の着座面側を覆う表皮材６とを備える。シートクッション２及びシートバック３の着座面側の表面には、表皮材６がパッド５内に吊り込まれることによって線状に凹んだ複数の吊り込み部７が縦方向及び横方向に形成されている。

　図２は、第１実施形態に係る表皮係止クリップ１０（以下、「クリップ１０」と記す）がパッド５に埋め込まれた状態を示す。パッド５における吊り込み部７に対応する部位には、溝８が設けられている。溝８は、所定の幅及び深さをもって所定方向に延在し、深さ方向における底の反対側が開口している。以下、特に説明しない限り、「上」及び「下」の向きは、車両の上下ではなく、溝８の深さ方向における開口側及び底側を指す。表皮材６（図１参照）は、パッド５を覆う本体部６ａと、上端部において本体部６ａに連結し、溝８の延在方向に沿って延在する布状の表皮連結部６ｂと、表皮連結部６ｂの下端に連結し、溝８の延在方向に沿って延在し、表皮連結部６ｂに対して溝８の幅方向に膨出する棒状又は紐状の部材であって、クリップ１０に係止される被係止部６ｃとを備える。被係止部６ｃは、その延在方向に直交する断面において、概ね矩形をなし、上辺がＶ字状に凹み、１対の側片が下方に向かうにつれて互いに近づくようにわずかに傾斜している。被係止部６ｃは、断面視で被係止部６ｃのＶ字状の上辺の中央において、表皮連結部６ｂに連結している。表皮連結部６ｂ及び被係止部６ｃは、樹脂を素材とし、押し出し成形によって一体に成形される。

　図３～図６は、クリップ１０を示す。図２～図６に示すように、クリップ１０は、幅方向の両端部においてパッド５に埋設される基板１１と、基板１１の上面に立設されて被係止部６ｃを係止する１対の係止片１２と、幅方向における１対の係止片１２の外側において基板１１の上面に立設された１対の張出片１３と、基板１１に支持されて被係止部６ｃを上方に付勢する１対の付勢部１４とを備える。クリップ１０は、延在方向の中心及び幅方向の中心を通る上下方向の軸線に対して１８０°（３６０°／２）回転すると回転前後の形状が重なる対称形（２回対称形）をなす。クリップ１０は、樹脂を素材とする射出成形品であることが好ましい。

　基板１１は、溝８の延在方向及び幅方向に、それぞれ長手方向及び幅方向を有する板状の部分である。以下、特に説明しない限り、「所定方向」は、溝８の延在方向及び基板１１の長手方向に一致する方向を指し、「幅方向」は、溝８及び基板１１の幅方向に一致する方向を指す。基板１１の幅方向の両端部には、上下に貫通する複数の貫通孔１５が設けられている。また、基板１１の幅方向の両端部には、それぞれ、上方に平行移動するように凹んだ段違い部分１６が形成されている。

　１対の係止片１２は、溝８内に配置され得るように構成される。１対の係止片１２の各々は、基板１１に立設された壁体１７と、壁体１７の遊端部から幅方向の内側に延出して被係止部６ｃを係止する係止爪１８と、壁体１７の遊端部から幅方向の外側に延出するガイド部１９とを含む。

　壁体１７は、幅方向に略直交するように配置された板状の部分である。壁体１７は、所定方向の中央部に配置され、壁体１７の所定方向の長さは、基板１１の所定方向の長さの約１／４～１／２であることが好ましく、更に好ましくは約１／３である。

　係止爪１８は、幅方向の内側に向かうにつれて下方に傾斜するとともに、上下方向の厚さが薄くなっている。係止爪１８は、１対の係止片１２の各々に１つずつ設けられているため対をなし、１対の係止爪１８は、互いに所定方向にずれた位置に配置される。係止爪１８は、壁体１７の所定方向の中心から壁体１７の所定方向の一方の端部まで延在することが好ましい。１対の係止爪１８間の最短距離が拡がるように、平面視において、係止爪１８の所定方向の中央側の側縁は、傾斜するように切り欠かれていることが好ましく、その傾斜角度は幅方向に対して４５°であることが好ましい。１対の係止片１２の一方に設けられた係止爪１８と１対の係止片１２の他方に設けられた壁体１７との間の幅方向の離間距離は、被係止部６ｃの幅よりも小さいが、１対の係止片１２は、この離間距離が被係止部６ｃの幅以上になるように弾性変形可能である。互いに所定方向にずれて配置された１対の係止爪１８間の最短距離は、上記の離間距離と同様であるか、または、弾性変形前の状態において被係止部６ｃの幅以上である。係止爪１８から基板１１までの上下方向の離間距離は、被係止部６ｃの上下方向の高さよりも大きく、好ましくは１．５倍以上である。

　ガイド部１９は、幅方向の外側に向かうにつれて上方に傾斜する。１対の係止片１２の各々において、幅方向においてガイド部１９の少なくとも一部が係止爪１８の少なくとも一部に整合するように配置され、ガイド部１９の上面と係止爪１８の上面とは互いに滑らかに連続している。ガイド部１９は、壁体１７の所定方向の中央に配置され、その長さは、壁体１７の所定方向の長さの１／４以上であることが好ましく、更に好ましくは約１／２であり、また、壁体１７の長さと一致してもよい。

　１対の張出片１３は、パッド５内に埋め込まれ得るように配置される。１対の張出片１３は、クリップ１０の幅方向の中央を通り幅方向に直交する面に対して互いに鏡像対称形をなす。１対の張出片１３の各々は、基板１１の上面に立設された立設部２０と、立設部２０の遊端側から幅方向の外向きに延出して基板１１の幅方向の端部の上面に対向する張出部２１と、張出部２１の所定方向の中間部と基板１１の幅方向の端部とを互いに連結する連結体２２とを含む。

　立設部２０は、張出部２１の所定方向に間隔をおいて基板１１から延出して、張出部２１の所定方向の両端部に連結する１対の柱状体２０ａを含む。１対の柱状体２０ａは概ね上下方向に延在する。１対の柱状体２０ａ、基板１１及び張出部２１は、幅方向に貫通する第１開口２３を画定する。基板１１における１対の柱状体２０ａ間の部分には、上下に貫通する第２開口２４が形成されている。第２開口２４は第１開口２３に連通している。

　１対の張出片１３の各々において、張出部２１は、基板１１の幅方向の端部の上面に平行に対向する下面を有する平板部２１ａと、所定方向における平板部２１ａの両端部から上方に延出する１対の突片２１ｂとを含む。平板部２１ａの幅方向の外端は、基板１１の幅方向の外端と上下に整合する位置まで張り出している。正面視において、突片２１ｂの上縁は、円弧状をなし、柱状体２０ａの幅方向の内側の側縁に滑らかに連結している。１対の突片２１ｂの互いに対向する内面には凹部２１ｃが設けられている。

　連結体２２は、概ね上下方向に延在し、所定方向における張出部２１の中央に連結することが好ましい。連結体２２は、第２開口２４が設けられているため、幅方向において柱状体２０ａに対して外側にずれて配置される。連結体２２の上端は、平板部２１ａの幅方向の内端から外端まで延在し、連結体２２の下端は、基板１１の幅方向の端部における第１開口２３を画成する縁から基板１１の幅方向の外端まで延在する。正面視において、連結体２２の幅方向の外側の側縁は円弧状に凹んでおり、幅方向の内側の側縁は上下方向に沿って直線状に形成されている。

　１対の付勢部１４は、基板１１に片持ち支持された板ばねによって構成される。１対の付勢部１４は、被係止部６ｃを上方に向けて付勢できるように、幅方向において１対の係止片１２の内側に配置される。１対の付勢部１４は、所定方向において１対の係止片１２の外側に配置されるが、内側に配置されるように変更してもよい。１対の付勢部１４は幅方向において互いにずれた位置に配置されることが好ましい。付勢部１４の弾性変形時に付勢部１４を収容するため、基板１１における１対の付勢部１４の下方に位置する部分は、上下に貫通する第３開口２５が形成されていることが好ましい。１対の付勢部１４と係止爪１８とが被係止部６ｃを上下方向に挟持できるように、弾性変形していない状態の付勢部１４から係止爪１８までの上下方向の離間距離は、被係止部６ｃの上下方向の高さよりも小さい。また、付勢部１４は、付勢部１４から係止爪１８までの上下方向の離間距離が被係止部６ｃの上下方向の高さよりも大きくなるように、弾性変形可能である。なお、付勢部１４は、基板１１ではなく壁体１７に支持されてもよく、板ばね以外のばね、例えば圧縮コイルばねであってもよい。

　第１開口２３及び第２開口２４が設けられていること、張出部２１の下面と基板１１の幅方向の端部の上面とが互いに平行であること、並びに、１対の付勢部１４が幅方向において互いにずれた位置に配置されていることによって、クリップ１０を形成するための金型において、金型を抜き取る方向を確保でき、金型の複雑化が抑制できる。段違い部分１６における段差を生じさせる形状は、クリップ１０の剛性を高めている。被係止部６ｃが、比較的単純な形状であるため、安価に押し出し成形することができる。

　クリップ１０のパッド５への取付状態について説明する。クリップ１０は、パッド５の成形時に所定の位置に配置されることによりパッド５に固定される。基板１１の幅方向の端部と張出片１３の張出部２１との間にパッド５が入り込むため、クリップ１０がパッド５に強固に支持される。張出部２１と基板１１の幅方向の端部とを互いに連結する連結体２２は、張出部２１を補強するとともに、パッド５に埋まっているためクリップ１０のパッド５に対する位置を安定させ、クリップ１０のパッド５による支持を強固にする。また、貫通孔１５、段違い部分１６、凹部２１ｃ、第１開口２３及び第２開口２４にパッド５が入り込んでいることも、クリップ１０のパッド５に対する位置を安定させ、クリップ１０のパッド５による支持を強固にする。

　図７及び図８は、クリップ１０と被係止部６ｃとを示す（表皮連結部６ｂの図示は省略している）。図７及び図８を参照して被係止部６ｃのクリップ１０への取り付け及び取り外しについて説明する。

　作業員は、被係止部６ｃをクリップ１０に取り付けるため、被係止部６ｃを１対の係止片１２の上面に押し付ける。この時、被係止部６ｃは、幅方向にずれた状態で１対の係止片１２の上面に押し付けられても、幅方向の内側に向かうにつれて下方に傾斜したガイド部１９によって、幅方向の中央、すなわち、１対の係止片１２間に向かうようにガイドされる。被係止部６ｃが係止片１２の傾斜した上面を摺動することにより、１対の係止片１２の上部が互いに幅方向に離間するように弾性変形する。一方の係止片１２に設けられた係止爪１８と他方の係止片１２の壁体１７の幅方向の離間距離が被係止部６ｃの幅以上になると、被係止部６ｃが係止爪１８の下方に移動でき、被係止部６ｃが係止爪１８を通過すると、１対の係止片１２が弾性変形前の位置に戻る。

　作業員は、１対の付勢部１４を弾性変形させることにより、係止爪１８よりも所定の長さだけ下方に被係止部６ｃを押し付けることができる（図８（Ａ））。このため、作業員がこのように被係止部６ｃを下方まで押し下げることにより、容易に被係止部６ｃを係止爪１８よりも下方に移動させることができ、被係止部６ｃの係止爪１８への取付が容易になる。

　作業員が被係止部６ｃから手を放すと、被係止部６ｃは、１対の付勢部１４によって上方に付勢されて１対の係止爪１８に押し付けられる（図８（Ｂ））。被係止部６ｃは、１対の付勢部１４及び１対の係止爪１８の４点でクリップ１０に支持されるため、被係止部６ｃの上下への移動が規制されるとともに、所定方向を軸線とする被係止部６ｃの回転が防止される。このように、被係止部６ｃは、遊びなくクリップ１０に係止されるため、クリップ１０から抜け難くなる。

　被係止部６ｃをクリップ１０から取り外すときは、図７において矢印で示すように、所定方向における係止片１２の中心付近を通る上下方向の軸線回りに被係止部６ｃを回転させるようにこじり、１対の係止片１２の上部の互いの間隔が拡がるように１対の係止片１２を弾性変形させる。一方の係止片１２に設けられた係止爪１８と他方の係止片１２の壁体１７との互いの離間距離が被係止部６ｃの幅以上になると、被係止部６ｃをクリップ１０から取り外すことができる。１対の係止爪１８が所定方向に互いにずれて配置されているため、１対の係止片１２の上部の間に比較的容易に被係止部６ｃを取り外せる隙間を作り出すことができる。また、１対の係止爪１８の各々における所定方向の中央側の端部が平面視で傾斜しているため、１対の係止爪１８間の最短距離も大きくなり、被係止部６ｃを取り外すことが容易になる。

　図９及び図１０を参照して、第２実施形態に係る表皮係止クリップ３０（以下、「クリップ３０」と記す）について説明する。説明に当たり、第１実施形態と共通する構成については、説明を省略し、同一の符号を付す。

　クリップ３０は、幅方向の両端部においてパッド５（図２参照）に埋設される基板３１と、基板３１の上面に立設されて被係止部６ｃ（図２参照）を係止する１対の係止片３２と、幅方向における１対の係止片３２の外側において基板３１の上面に立設された１対の張出片３３とを備える。クリップ３０は、延在方向の中心及び幅方向の中心を通る上下方向の軸線に対して１８０°（３６０°／２）回転すると回転前後の形状が重なる対称形（２回対称形）をなす。クリップ３０は、樹脂を素材とする射出成形品であることが好ましい。

　基板３１は、溝８（図２参照）の延在方向及び幅方向に、それぞれ長手方向及び幅方向を有する板状の部分である。以下、特に説明しない限り、「所定方向」は、溝８の延在方向及び基板３１の長手方向に一致する方向を指し、「幅方向」は、溝８及び基板３１の幅方向に一致する方向を指す。基板３１における張出片３３が立設している部分の近傍には、上下に貫通する複数の貫通孔１５が設けられている。

　１対の係止片３２は、溝８（図２参照）内に配置され得るように構成される。１対の係止片３２の各々は、基板３１に立設された壁体１７と、壁体１７の遊端部から幅方向の内側に延出して被係止部６ｃ（図２参照）を係止する係止爪３４と、壁体１７の遊端部から幅方向の外側に延出するガイド部１９とを含む。ガイド部１９は、壁体１７が幅方向の外側に撓んだときに張出片３３に衝当しないように、張出片３３の上端よりも上方に位置する。

　係止爪３４は、側縁及び端縁を画定する形状を除いて、第１実施形態の係止片１２（図３等参照）と同様に構成されている。係止爪３４は、上方から見て、壁体１７における所定方向の一方の端部から幅方向の内側に幅方向に平行に延出する第１側縁３５と、壁体１７における所定方向の他方から幅方向の内側に対して第１側縁３５側に傾斜して延出する第２側縁３６と、第１側縁３５の延出端から所定方向の他方に向かって所定方向に平行に延在する延出端縁３７と、第２側縁３６及び延出端縁３７に連結し、所定方向に対する角度が所定方向に対する第２側縁３６の角度よりも小さい角取縁３８とを有する。角取縁３８は、上方から見て、第２側縁３６の延長線と延出端縁３７の延長線とが交差して形成される角を切り取るような線をなす。角取縁３８は、上方から見て、直線状に延在することに代えて、湾曲していて延在していてもよい。１対の係止爪３４における第２側縁３６は互いに対向し、かつ平行であり、１対の係止爪３４における角取縁３８も互いに平行である。

　１対の張出片３３は、パッド５内に埋め込まれ得るように配置される。１対の張出片３３は、クリップ３０の幅方向の中央を通り幅方向に直交する面に対して互いに鏡像対称形をなす。１対の張出片３３の各々は、基板３１の幅方向の端部における上面に立設された立設部３９と、立設部３９の遊端部に連結して、基板１１と平行に延在する張出部４０とを含む。

　立設部３９は、所定方向に間隔をおいて基板３１から上方に延出する１対の柱状体３９ａと、基板３１における１対の柱状体３９ａの間から幅方向の外側に湾曲するように上方に延出して張出部４０に連結する連結体３９ｂとを含む。張出部４０は、各々の柱状体３９ａの延出端部から幅方向の外側及び所定方向の外側に延出する第１張出部４０ａと、連結体３９ｂの上端部から幅方向の外側に延出した後に所定方向の両側に延出して第１張出部４０ａに連結する第２張出部４０ｂとを含む。各々の第１張出部４０ａには、上下に貫通する貫通孔４０ｃが設けられている。幅方向において、張出部４０の外端部は、基板３１の端縁よりも外側に位置する。所定方向において、張出部４０の両端部は、基板３１の両端縁よりも外側に位置する。クリップ３０の幅方向の両側において、基板３１の幅方向の端部、柱状体３９ａ、連結体３９ｂ、及び第２張出部４０ｂによって２つの開口４１が画成されている。

　クリップ３０は、パッド５（図２参照）の成形時に所定の位置に配置されることによりパッド５に固定される。張出部４０が上方から見て基板３１よりも外側に拡がっているため、張出部４０がパッド５に強固に支持される。このため、基板３１が比較的小さくても、表皮材６（図２参照）によるクリップ３０を引く抜く力に対する抵抗力が大きくなる。また、基板３１の貫通孔１５、張出部４０の貫通孔４０ｃ、及び開口４１の中にパッド５が入り込むため、クリップ３０がパッド５に強固に支持され、クリップ３０のパッド５に対する位置が安定する。

　クリップ３０は、第１実施形態のクリップ１０と同様に表皮材６の被係止部６ｃ（図２参照）が取り付けられるが、係止片３２に角取縁３８があるため、１対の係止爪３４間に被係止部６ｃを通すことが容易になる。

　パッド５（図２参照）を成形した後、ローラー（図示せず）をパッド５に押し付けながら転がすことで、発泡体であるパッド５の内部の気泡の大きさを調整するローラークラッシングが行われる。この時、ローラーからの荷重を受けたガイド部１９は、幅方向の外側に撓むが、張出片３３の上端よりも上方に位置するため張出片３３に衝当しない。

　図１１及び図１２を参照して、第２実施形態の変形例に係る表皮係止クリップ３０（以下、「クリップ５０」と記す）について説明する。説明に当たり、上記実施形態と共通する構成については、説明を省略し、同一の符号を付す。

　クリップ５０は、幅方向の両端部においてパッド５（図２参照）に埋設される基板５１と、基板５１の上面に立設されて被係止部６ｃ（図２参照）を係止する１対の係止片５２と、幅方向における１対の係止片５２の外側において基板５１の上面に立設された１対の張出片３３とを備える。クリップ５０は、延在方向の中心及び幅方向の中心を通る上下方向の軸線に対して１８０°（３６０°／２）回転すると回転前後の形状が重なる対称形（２回対称形）をなす。クリップ５０は、樹脂を素材とする射出成形品であることが好ましい。

　図９及び図１０に示す基板３１は、所定方向（長手方向）の長さにおいて、張出片３３よりも短いのに対して、図１１及び図１２に示す基板５１は、長手方向の長さにおいて、張出片３３と略等しい。基板５１の所定方向の両端縁と、張出片３３の所定方向の両端縁とは、幅方向において整合する位置に配置されている。このため、パッド５による基板５１の支持力が、第２実施形態の主例におけるものよりも大きくなる。

　１対の係止片５２は、溝８（図２参照）内に配置され得るように構成される。１対の係止片５２の各々は、基板５１に立設された壁体５３と、壁体５３の遊端部から幅方向の内側に延出して被係止部６ｃ（図２参照）を係止する係止爪５４と、壁体１７の遊端部から幅方向の外側に延出して張出部４０の上端よりも上方に位置する延出部５５とを含む。

　壁体５３は、所定方向から見て、上下方向における中間部が幅方向の外側に向かって屈曲又は湾曲した形状をなす。壁体５３は、表皮連結部６ｂ（図２参照）を介して被係止部６ｃ（図２参照）に上方に向かう力が加わった時に、係止爪５４を介して上方に引っ張られる力が加わる。この時、壁体５３は、屈曲又湾曲した形状が直線状の形状に近づくように弾性変形して、その力による衝撃を吸収する。

　また、所定方向から見て、壁体５３の厚さは、上部が下部に対して厚肉となっている。壁体５３の上部が厚肉であることによって強度が確保される。壁体５３の下部が薄肉であることによって撓みやすいため、被係止部６ｃを上方から挿入する際、壁体５３の下部が幅方向の外側に撓んで、１対の係止爪５４間の間隔が開き易く、被係止部６ｃを係止爪５４間に挿入するための荷重を低減できる。

　また、壁体５３の上部の上方から見た形状も、第１実施形態及び第２実施形態の主例と相違する。第１実施形態（図３参照）及び第２実施形態の主例（図９参照）では、壁体１７の上部は、上方から見て、所定方向における係止爪１８，３４が設けられた側では幅方向の内側に膨出し、所定方向におけるその反対側では幅方向の外側の膨出するように所定方向に対して屈曲している。一方、第２実施形態の本変形例においては、壁体５３の上部は、幅方向に膨出する部分はなく、所定方向に略直線状に延在している。このため、壁体５３に力が加わった時に応力が特定の箇所に集中することを避けることができる。

　係止爪５４は、上方から見たときの輪郭が略矩形である点、所定方向の長さが比較的長い点、及び先端部の下面が基板５１の表面に略平行である点で、第２実施形態の主例の係止爪３４（図９参照）と相違する。所定方向の中央側の側縁が傾斜していないこと、所定方向の端部側の側縁が、張出部４０の貫通孔４０ｃにおける中央部分よりも所定方向の外方に延びていること、及び、係止爪５４の先端部の下面が基板５１の表面に略平行であることによって、係止爪５４の被係止部６ｃに対する係合の度合いが高くなっている。

　延出部５５は、長手方向における係止爪５４が設けられた側とは反対側に配置される点、及び幅方向に対する傾斜角度が比較的小さい点で、第１実施形態（図３参照）及び第２実施形態の主例（図９参照）におけるガイド部１９と相違する。延出部５５は、所定方向から見たとき、幅方向に対して外方に向かうにしたがって上方に傾斜しているが、その傾斜角度はガイド部１９に比べて小さく、幅方向と略平行であってもよい。また、延出部５５は所定方向に略平行に延在している。このため、延出部５５の上面は、幅方向及び所定方向を含む面に対して略平行な平面又はわずかに傾斜した平面となる。延出部５５の上面は、クリップ５０を射出成形する際に脱型のためにエジェクターピンによって押し出される部分である。エジェクターピンの先端は、傾斜のほとんどない平面である延出部５５の上面に当接するため、シンプルな形状とすることができる。延出部５５は、張出部４０の上端よりも上方に位置するため、第２実施形態の主例のガイド部１９と同様に、ローラークラッシング時に張出部４０に衝当しない。

　以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本発明は、車両用シートだけでなく、車両以外の乗り物用シートや、パッド及び表皮材を備え吊り込み部を有する他の物品に適用できる。段違い部は、下方に凹むように変更してもよい。張出片は、係止片の壁体が立設部を兼ね、張出部が係止片の壁体から幅方向の外側に延出するように変更してもよい。第１実施形態の付勢部及び／又は段違い部部分を第２実施形態に係るクリップに設けてもよい。第２実施形態の係止片の形状を第１実施形態に係るクリップに適用してもよい。本出願のパリ条約に基づく優先権主張の基礎出願の全内容及び本出願中で引用された従来技術の全内容は、それに言及したことをもって本願明細書の一部とする。

５：パッド
６：表皮材
６ｃ：被係止部
８：溝
１０，３０，５０：表皮係止クリップ
１１，３１，５１：基板
１２，３２，５２：係止片
１３，３３：張出片
１４：付勢部
１６：段違い部分
１７，５３：壁体
１８，３４，５４：係止爪
１９：ガイド部
２０，３９：立設部
２０ａ，３９ａ：柱状体
２１，４０：張出部
２１ａ：平板部
２２，３９ｂ：連結体
２３：第１開口（開口）
３５：第１側縁
３６：第２側縁
３７：延出端縁
３８：角取縁
４１：開口

Claims (7)

1. 　パッドに所定の幅及び深さをもって所定方向に延在するように設けられた溝内にて、前記パッドに埋設され、前記パッドの少なくとも一部を覆う表皮材に設けられた被係止部を固定するための表皮係止クリップであって、
   　前記所定方向及び前記溝の幅方向に沿って延在して少なくとも前記幅方向の端部において前記パッドに埋設されるべき基板と、
   　前記被係止部を係止するべく、前記幅方向に互いに対向するように前記基板に立設され、互いに対向する側に係止爪を備えた１対の係止片と、
   　前記係止片の少なくとも一方の前記幅方向における外側において前記基板に対向する、又は前記幅方向における前記基板の端縁よりも外側に延出する張出部を含む張出片と
   を備えることを特徴とする表皮係止クリップ。
2. 　前記張出片が、前記基板に立設された立設部を含み、前記張出部は、前記立設部の遊端側から前記基板の前記幅方向の外向きに延出することを特徴とする請求項１に記載の表皮係止クリップ。
3. 　前記立設部が、前記所定方向に間隔をおいて前記基板から延出する少なくとも１対の柱状体を含み、前記柱状体間に開口が形成されたことを特徴とする請求項２に記載の表皮係止クリップ。
4. 　前記張出片は、前記所定方向における前記張出部の中間部と前記基板とに連結する連結体を更に含むことを特徴とする請求項３に記載の表皮係止クリップ。
5. 　前記張出部は、前記基板に対向し、
   　前記張出部は、前記基板の前記幅方向の前記端部の対向面に平行な対向面を有することを特徴とする請求項１に記載の表皮係止クリップ。
6. 　前記基板の前記幅方向の前記端部に、隣接する部分に対して前記溝の深さ方向にずれた段違い部分が設けられていることを特徴とする請求項１に記載の表皮係止クリップ。
7. 　前記係止片は、前記基板に立設されて遊端部から前記係止爪を延出させる壁体を更に含み、
   　前記係止爪は、前記基板に直交する方向から見て、前記壁体から前記幅方向の内側に延出する第１側縁と、前記壁体から前記幅方向の内側に対して前記第１側縁側に傾斜して延出する第２側縁と、前記第１側縁の延出端から前記所定方向に略平行に延在する延出端縁と、前記第２側縁及び前記延出端縁に連結し、前記所定方向に対する角度が前記第２側縁よりも小さい角取縁とを有し、
   　１対の前記係止爪における前記第２側縁は、互いに対向していることを特徴とする請求項１に記載の表皮係止クリップ。

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