WO2020122198A1 - コラーゲン固形物、コラーゲン固形物の製造方法、生体材料、および、生体外材料 - Google Patents

コラーゲン固形物、コラーゲン固形物の製造方法、生体材料、および、生体外材料 Download PDF

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Abstract

強度および密度が高い、コラーゲン固形物を提供する。コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、または、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物を含み、密度が50mg/cm3以上である、コラーゲン固形物を用いる。

Description

コラーゲン固形物、コラーゲン固形物の製造方法、生体材料、および、生体外材料
 本発明は、コラーゲン固形物、コラーゲン固形物の製造方法、生体材料、および、生体外材料に関する。
 動物の細胞間の結合組織または骨組織を構成するタンパク質であるコラーゲン、または、その熱変性物質であるゼラチンは、従来から、様々な用途に用いられている。
 骨に欠損が生じた場合には、完全な自己再生は困難であり、従来から、自家骨または同種の生物に由来する骨を用いた、骨再生治療が行われている。自家骨の移植は、自身の骨の一部を採取する必要があり、採取できる骨の量に限界がある。一方、同種の生物に由来する骨の移植は、他人の骨を用いるため、感染症のリスクが高い。そこで、近年、ハイドロキシアパタイトまたはβ-TCPなどのバイオマテリアルを用いて、骨再生治療が行われている。しかしながら、上述したバイオマテリアル自体は、新たに骨を作り出す能力を有しておらず、骨形成速度は自家骨と比べて大幅に劣る。また、近年、幹細胞とバイオマテリアルにて形成された足場とを用いて、骨再生治療が行われている。しかしながら、当該技術には、培養細胞施設が必要、および、コストが高い等の多くの課題をかかえている。このような状況下にあって、現在、骨再生治療のための新たな技術の開発が望まれている。
 動物の細胞間の結合組織または骨組織を構成するタンパク質であるコラーゲンは、従来から、生体内に移植される生体材料(例えば、欠損または損傷した生体組織を補完するための生体材料)として用いられている。
 一方、コラーゲンは、細胞が基材に接着するための足場を形成することができる。そこで、従来から、コラーゲンを含む水溶液によって基材をコーティングすることによって、足場を形成する技術が用いられている。
 例えば、特許文献1には、コラーゲンおよびリン酸カルシウム化合物の組合せからなる複合型骨充填材料が開示されている。特許文献2には、コラーゲン、リン酸カルシウムおよび糖を主成分とする生体材料が開示されている。非特許文献1には、グルタルアルデヒドによって架橋されたコラーゲンからなる生体材料が開示されている。
 また、特許文献3には、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用が開示されている。当該分解物は、スフェロイドの形成活性を有している。一方、特許文献4には、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を含む、分化誘導用組成物が開示されている。当該分化誘導用組成物は、スフェロイドの形成活性、および、骨分化誘導能などを有している。
 また、コラーゲンを含む水溶液によって基材をコーティングすることは、細胞培養を行う分野において、広く行われていることである。
特開2000-262608号公報 特開2009-5814号公報 WO2015/167003 WO2015/167004
L. H. H. Olde Demink et. al.,Journal of Materials science: Materials in Medicine: 6, p.460~472, 1995
 生体材料が移植される生体内の箇所は、複雑な形状を有していることが多い。生体内にて生体材料を良好に機能させるためには、生体材料の形状を、移植される箇所の形状に適合させることが重要である。しかしながら、従来の生体材料は、高い強度を有しておらず(換言すれば、柔らかく)、所望の形状に加工できないという問題点を有している。
 また、コラーゲンを含む水溶液によって基材をコーティングする技術では、基材表面に、生体内におけるコラーゲン濃度に匹敵する、高濃度のコラーゲンを吸着させることができないという問題点を有している。
 特許文献3に記載の分解物は溶液状である。なお、当該特許文献3では、当該分解物を濃縮して高密度の固形物にするという概念が開示されていない。当然のことながら、当該特許文献3には、当該固形物の接線係数についても開示されていない。また、特許文献4に記載の分化誘導用組成物も溶液状である。なお、当該特許文献4では、当該分解物を濃縮して高密度の固形物にするという概念が開示されていない。当然のことながら、当該特許文献4には、当該固形物の接線係数についても開示されていない。
 また、上述したように、特許文献3に記載の分解物、および、特許文献4に記載の分化誘導用組成物は、共に、溶液状である。これらの分解物および分化誘導用組成物を生体内に移植した場合、これらは拡散して移植された場所から失われ易く、目的の場所において生体組織(例えば、骨)を再生するためには、更なる改良の余地があった。また、これらの分解物および分化誘導用組成物によって基材をコーティングしたとしても、基材表面に、生体内におけるコラーゲン濃度に匹敵する、高濃度のコラーゲンを吸着させることができない。基材表面に、生体内におけるコラーゲン濃度に匹敵する、高濃度のコラーゲンを吸着させるためには、更なる改良の余地があった。
 また、骨(例えば、大腿骨など)などは大きな荷重が加わる生体組織であって、骨などに生体材料を移植する場合には、当該生体材料自体が高い強度を有することが求められる。また、細胞培養に用いる基材等には大きな荷重が加わる可能性、および/または、長期の培養に用いられる可能性があり、当該基材等が高い強度を有することが求められる。しかしながら、従来の材料は、高い強度を有していない(換言すれば、柔らかい)という問題点を有している。
 従来の材料において高い強度を実現するためには、コラーゲン以外の副原料(例えば、架橋剤、合成高分子)が必要であり、当該副原料は、(i)材料のコストを上げ、および/または、生体内での材料の免疫原性、炎症性、滞留性などを高くし、安全性を低下させるという問題点、および、(ii)培養する細胞に対して悪影響を与える、および/または、生体内と同じ条件にて細胞を培養できない、という問題点を有している。
 また、従来の材料では、原料の溶解度が低い、あるいは、材料の強度が低い、等の理由により、当該材料に任意の物質成分を含有させることが困難であるという問題点を有している。
 本発明は、密度および強度が高い、コラーゲン固形物を提供することを目的とする。
 コラーゲンをペプシンなどのプロテアーゼを用いて分解すると、非可溶性である沈殿物と可溶性の不純物とを多く含有し、可溶性の分解物を低濃度(後述する実施例に示すように20mg/mL以下)で含有する溶液が得られるのみである。
 本発明者らは、(i)システインプロテアーゼを用いてコラーゲンまたはアテロコラーゲンを分解すれば、可溶化した分解物を高濃度に含有する溶液を得ることができること(後述する実施例に示すように30mg/mL以上)、および、(ii)当該溶液から溶媒を除去すれば、コラーゲン分解物を高密度に含有し(後述する実施例に示すように50mg/cm以上)、および/または、接線係数が大きく(後述する実施例に示すように90kPa以上)、その結果、所望の形状に加工することができるコラーゲン固形物(以後、LASColと称す。Low Adhesive Scaffod Collagenの略)が得られること、(iii)当該コラーゲン固形物(LASCol)は、元々生体内に存在するコラーゲンを原料として作製されているため、骨再生用の生体材料、細胞培養用の生体材料として安全に再現性よく利用できること、を見出し、本発明を完成させるに至った。
〔1〕上記の課題を解決するための、本発明の一態様に係るコラーゲン固形物は、コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、または、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物を含む、コラーゲン固形物であって、上記コラーゲン固形物の密度が、50mg/cm以上のものである。
〔2〕上記の課題を解決するための、本発明の一態様に係るコラーゲン固形物は、上記コラーゲン固形物の接線係数が、90kPa以上のものである。
〔3〕本発明の一態様に係るコラーゲン固形物は、任意の物質を更に含む、コラーゲン固形物である。
〔4〕上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る生体材料は、〔1〕~〔3〕の何れか1つに記載のコラーゲン固形物を含む生体材料である。
〔5〕上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る生体外材料は、〔1〕~〔3〕の何れか1つに記載のコラーゲン固形物を含む生体外材料である。
〔6〕上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る生体材料は、〔1〕~〔3〕の何れか1つに記載のコラーゲン固形物を含む骨再生用材料である。
〔7〕上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るコラーゲン固形物の製造方法は、〔1〕~〔3〕の何れか1つに記載のコラーゲン固形物の製造方法であって、システインプロテアーゼによって、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを分解する分解工程と、上記分解工程により得られた、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物から溶媒を除去する除去工程と、を有する。
〔8〕本発明の一態様に係るコラーゲン固形物の製造方法は、上記除去工程では、上記分解工程により得られた、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物に、任意の物質を加えた後で、当該混合物から溶媒を除去する。
〔9〕本発明の一態様に係るコラーゲン固形物の製造方法は、上記除去工程では、当該除去工程にて得られたコラーゲン固形物に任意の物質を吸着させる。
 本発明の一態様によれば、密度および強度が高い、コラーゲン固形物を提供することができる。さらに、本発明の一態様によれば、所望の形状に加工しやすいコラーゲン固形物を提供することができる。さらに、本発明の一態様によれば、密度および強度が高いコラーゲン固形物を含む新規の生体材料または生体外材料を提供することができる。さらに、本発明の一態様によれば、単数または複数の任意の物質を、任意の量にて含有するコラーゲン固形物、および、当該コラーゲン固形物を含む新規の生体材料または生体外材料を提供することができる。さらに、本発明の一態様によれば、生体組織(例えば、骨)を再生または修復できる生体材料(換言すれば、骨再生用材料)を提供することができる。さらに、本発明の一態様によれば、細胞の培養に用いることができる生体外材料(換言すれば、細胞培養用材料)を提供することができる。
(a)~(c)は、本発明の実施例に係る円柱状コラーゲン固形物の切断面の像である。 (d)~(f)は、本発明の実施例に係る円柱状コラーゲン固形物の切断面の像である。 (a)および(b)は、本発明の比較例に係る円柱状アテロコラーゲン固形物の切断面の像である。 (a)は、屈曲した蛇腹状コラーゲン固形物、(b)は、伸長した蛇腹状コラーゲン固形物の像である。 (a)~(c)は、本発明の実施例に係る微小孔径管状コラーゲン固形物の像である。 (a)~(f)は、本発明の実施例に係る円柱状コラーゲン固形物のSEMおよびSEM-EDX分析の結果である。 (a)および(b)は、本発明の実施例に係る、微小孔を有する円柱状コラーゲン固形物の像である。 (a)~(h)は、本発明の実施例に係るコラーゲン固形物のSEMおよびSEM-EDX分析の結果である。 (a)~(b)は、本発明の実施例に係る、ラット大腿骨4mm欠損モデルの作製工程を示す図である。 本発明の実施例に係る、医用画像工学的評価に使用したmodified RUST scoreの評価基準を示す図である。 本発明の実施例に係る、大腿骨1mm欠損個体群、50mg/mL LASCol固形物移植個体群、100mg/mL LASCol固形物移植個体群、および150mg/mL LASCol固形物移植個体群において、移植手術直後、移植手術14日後、および移植手術28日後の骨をレントゲン撮影した像である。 本発明の実施例に係る、移植手術28日後の、大腿骨1mm欠損個体群、50mg/mL LASCol固形物移植個体群、100mg/mL LASCol固形物移植個体群、および150mg/mL LASCol固形物移植個体群における、modified RUST scoreによる骨癒合の評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る、移植手術28日後における、大腿骨1mm欠損個体群、50mg/mL LASCol固形物移植個体群、100mg/mL LASCol固形物移植個体群、および150mg/mL LASCol固形物移植個体群のμCTの像である。 本発明の実施例に係る、移植手術28日後における、100mg/mL LASCol固形物移植個体群のμCTの像である。 本発明の実施例に係る、移植手術14日後における、150mg/mL LASCol固形物移植個体群のμCTの像である。 本発明の実施例に係る、移植手術28日後における、150mg/mL LASCol固形物移植個体群のμCTの像である。 本発明の実施例に係る、移植手術28日後における、150mg/mL LASCol固形物移植個体群のラットから摘出した大腿骨の像である。 本発明の実施例に係る、Allen’s scoreによる組織学的な評価基準を示す図である。 本発明の実施例に係る、移植手術14日後および28日後における、大腿骨1mm欠損個体、および50mg/mL LASCol固形物移植個体の大腿骨の組織切片を、HE染色した像である。 本発明の実施例に係る、図19と同一の組織切片(すなわち、移植手術14日後および28日後における、大腿骨1mm欠損個体、および50mg/mL LASCol固形物移植個体の大腿骨の組織切片)をSO染色した像、および、Allen’s scoreの評価結果を示す図である。 本発明の実施例に係る、移植手術28日後に、100mg/mL LASCol固形物移植個体群の大腿骨組織切片をSO染色した像、および、Allen’s scoreの評価結果を示す図である。 本発明の実施例に係る、移植手術28日後に、150mg/mL LASCol固形物移植個体群の大腿骨組織切片をSO染色したである。 本発明の実施例に係る、移植手術28日後に、大腿骨1mm欠損個体群、50mg/mL LASCol固形物移植個体群、100mg/mL LASCol固形物移植個体群、および150mg/mL LASCol固形物移植個体群における大腿骨の組織切片を、Allen’s scoreにより評価した結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る、移植手術14日後における、CaCO含有150mg/mL LASCol固形物移植個体のμCTの像である。 (a)は、本発明の実施例に係る、移植手術35日後における、bFGF含有100mg/mL LASCol固形物移植個体のμCTの像である。(b)は、本発明の実施例に係る、移植手術35日後における、大腿骨4mm欠損個体のμCTの像である。
 本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態及び実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。本明細書中、数値範囲に関して「A~B」と記載した場合、当該記載は「A以上B以下」を意図する。
 〔1.発明者の着想点〕
 動物の細胞間の結合組織または骨組織を構成するタンパク質であるコラーゲン、または、その熱変性物質であるゼラチンは、生体内に移植される生体材料(例えば、欠損または損傷した生体組織を補完するための生体材料)、または、生体外材料(例えば、細胞培養のための生体外材料)として用い得る。
 コラーゲンおよびアテロコラーゲンは水に対する溶解度が低いため、コラーゲンまたはアテロコラーゲンが溶解した水溶液を用いて生体材料または生体外材料を調製した場合、低濃度の溶液状態のもの(ゲル)、または、低密度の固体状態のもの(スポンジ)しか調製できない。溶液状態のものは、最高濃度が20mg/mL程度であり、固体状態のものは、最高密度が26mg/cm程度である。このような低濃度または低密度のコラーゲン調製物は、生体材料または生体外材料としての力学的強度が極端に低いという欠点がある。さらに生体に存在するコラーゲンの密度は200mg/cm以上であり、従来のコラーゲン調製物では、その密度の1/10程度しか再現できない。
 これらの欠点を克服するために、コラーゲン同士を熱、光、または化学物質などによって無秩序に架橋して力学的強度を増加させる方法が考え得る。当該方法は、生体材料または生体外材料としての力学的強度を増加させる一方で、生体内の抗原性(免疫原性)を増大させる危険性を有する。また、当該方法では、空隙率が大きいスポンジ状固形物を架橋したとしても、スポンジ状固形物内の隙間を減らすことは難しい。よって、当該方法では、弾力のある固形物を得ることはできるが、木片や金属などの様に高密度な硬い固形物を得ることは不可能である。それ故に、従来、高密度なコラーゲン凍結乾燥物を生体材料または生体外材料として使う発想自体が存在しなかった。
 ゼラチンはコラーゲンよりも親水性が高く、水への溶解度が大きい。そのため、ゼラチンが溶解した水溶液を用いて生体材料または生体外材料を調製すれば、ゼラチン調製物の密度を最大800mg/cmにまで上げることができる。このようにゼラチン調製物は高密度の固体状態のものとして調製できるが、ゼラチンは水に対する溶解度が大きいため、当該ゼラチン調製物を生体内に注入した場合には、当該ゼラチン調製物がすぐに溶解する。さらに、ゼラチンは内在性のペプチダーゼによって速やかに分解されるため、ゼラチン調製物の生体内貯留性が極端に低い。ゼラチン調製物の生体内分解性を制御するために、コラーゲンと同様にゼラチンを架橋することも考え得るが、当該方法は、生体内の抗原性(免疫原性)を増大させる危険性を有する。
 つまり、コラーゲン調製物、および、ゼラチン調製物において、再現性高く架橋処理を行って同一な架橋産物を大量に回収することは、技術的に難しく、さらに架橋産物の生体内安全性にも課題が多い。従来技術では、架橋数および架橋位置が異なり、かつ、多様な分子サイズを有する架橋産物の混合物しか得られない。従来技術では、架橋数および架橋位置が同一であり、かつ、空隙率が同一の架橋産物の混合物を調製することは不可能である。
 本発明者は、コラーゲンを生体材料または生体外材料として活用するために、架橋せずに、高濃度または高密度のコラーゲン調製物を作製するための新しい技術開発の開発を試みた。生体内のコラーゲン濃度または密度に匹敵する、高濃度または高密度のコラーゲン調製物が実現されれば、当該コラーゲン調製物は、従来にない高い力学特性を持つことが予想され、生体内のみならず生体外での活用も期待される。
 高濃度または高密度のコラーゲン調製物の生体内における活用法としては、骨欠損患者の骨再生を可能とする生体材料としての活用が考えられる。具体的には、骨に欠損が生じた場合には、完全な自己再生は困難であり、従来から、自家骨または同種の生物に由来する骨を用いた、骨再生治療が行われている。自家骨の移植は、自身の骨の一部を採取する必要があり、採取できる骨の量に限界がある。一方、同種の生物に由来する骨の移植は、他人の骨を用いるため、感染症のリスクが高い。人工の骨充填材として、ハイドロキシアパタイトまたはβ-TCPなどのリン酸カルシウムを母材とした骨充填材を用いて、骨再生治療が行うことも考え得る。リン酸カルシウムと、コラーゲンまたはゼラチンとの混合物は、骨充填材として製品化されている。生体内での細胞との親和性をあげるために、リン酸カルシウムと、コラーゲンまたはゼラチンとを混合して骨充填材を形成し得るが、当該骨充填材は、骨充填材としての十分な力学的強度を有していない。それ故、当該従来技術では、力学的強度を改善するために、リン酸カルシウムの比率を、コラーゲンまたはゼラチンよりも高くしている。しかしながら、上述した骨充填材自体は、新たに骨を作り出す能力を有しておらず、骨形成速度は自家骨と比べて大幅に劣る。また、近年、幹細胞と骨充填材にて形成された足場とを用いて、骨再生治療が行われている。しかしながら、当該技術には、培養細胞施設が必要、および、コストが高い等の多くの課題をかかえている。そこで、本発明者は、骨再生治療のための新たな技術の開発を試みた。
 高濃度または高密度のコラーゲン調製物の生体内外における活用法としては、細胞培養用の立体的な足場としての活用が期待できる。従来の市販のコラーゲン溶液を足場として用いる場合、3mg/mLの低濃度であるコラーゲン溶液を基材上に塗布して足場を形成する、または、ゲル化させたコラーゲン溶液を足場として用いる。この場合、足場におけるコラーゲンの濃度は生体内環境から大きく離れているので、本来の細胞の機能や挙動を知ることは難しい。例えば、コラーゲンの濃度が低い足場上で、組織などから採取した初代細胞を培養すると、細胞周期の進行が速くなり、増殖を開始しやすくなる。この場合、初代細胞を増やすためには好都合であるが、生体内ではこのような極端な増殖は起こらない。また、このような環境では、一般的に初代細胞は脱分化しやすくなる。一度脱分化すると、初代細胞の機能が失われるので、初代細胞の機能を調べることができなくなる。つまり、従来の市販のコラーゲン溶液を用いて細胞の本来の機能を知る技術には、多くの課題があり、生体内環境を模した新しい足場を開発することが、再生医療分野、細胞生物学分野、および、発生生物学分野などにおいて急務である。
 例えば、特許文献1には、コラーゲンおよびリン酸カルシウム化合物の組合せからなる複合型骨充填材料が開示されている。特許文献2には、コラーゲン、リン酸カルシウムおよび糖を主成分とする生体材料が開示されている。非特許文献1には、グルタルアルデヒドによって架橋されたコラーゲンからなる生体材料が開示されている。
 また、特許文献3には、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、当該分解物の製造方法、および、当該分解物の利用が開示されている。当該分解物は、スフェロイドの形成活性を有している。一方、特許文献4には、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物を含む、分化誘導用組成物が開示されている。当該分化誘導用組成物は、スフェロイドの形成活性、および、骨分化誘導能などを有している。
 生体材料が移植される生体内の箇所は、複雑な形状を有していることが多い。生体内にて生体材料を良好に機能させるためには、生体材料の形状を、移植される箇所の形状に適合させることが重要である。しかしながら、従来の生体材料および生体外材料は、高い密度、かつ、高い強度(硬度)を有しておらず(換言すれば、柔らかく)、所望の形状に加工できないという問題点を有している。つまり、従来の生体材料および生体外材料は、高い空隙率を有するスポンジ状固形物であり、このような生体材料および生体外材料に対して、高い強度(硬度)を与えることができない。この問題は、タンパク質成分から調製される公知のスポンジ状固形物の全てに共通する問題であり、解決できない問題である。金属のように一様で空隙の少ない固形物をタンパク質だけで作ることは誰も想像できなかった。もし、単一のコラーゲンから、高い密度、かつ、高い強度(硬度)を有する固形物を作製することができれば、当該固形物の全く新しい用途を開くことが可能となる。もし、単一のコラーゲンから、高い密度、かつ、高い強度(硬度)を有する固形物を作製することができれば、適切な鋳型を使うことによって、例えば、立方体、円柱、円盤状、直管状、曲菅状、ネジ状、オスネジ状、メスネジ状、フィルム状など、所望の形状の固形物を作製することが可能となる。生体内に元々存在するコラーゲンを用いてこのような成型物を作ることは、画期的であり、その利用価値は計り知れない。
 特許文献3に記載の分解物は溶液状である。なお、当該特許文献3では、当該分解物を濃縮して高密度の固形物にするという概念が開示されていない。当然のことながら、当該特許文献3には、当該固形物の接線係数についても開示されていない。また、特許文献4に記載の分化誘導用組成物も溶液状である。なお、当該特許文献4では、当該分解物を濃縮して高密度の固形物にするという概念が開示されていない。当然のことながら、当該特許文献4には、当該固形物の接線係数についても開示されていない。
 事実、これまでに50mg/mL以上の濃度にて単一の未変性タンパク質を含む水溶液を凍結乾燥して作製される、高密度の固形物は知られていない。このような固形物を作製できれば、全く新しい、生体材料または生体外材料として活用できる。
 例えば、特許文献3に記載の分解物、および、特許文献4に記載の分化誘導用組成物は、共に、溶液状あるいは低密度状である。これらの分解物および分化誘導用組成物を生体内に移植した場合、これらは拡散して移植された場所から失われ易く、目的の場所において生体組織(例えば、骨)を再生するためには、更なる改良の余地があった。
 また、骨(例えば、大腿骨など)などは大きな荷重が加わる生体組織であって、骨などに生体材料を移植する場合には、当該生体材料自体が高い強度を有することが求められる。しかしながら、従来の生体材料は、高い強度を有しておらず(換言すれば、柔らかく)、移植される生体組織に制限があるという問題点を有している。
 さらに、従来から、コラーゲンは、生体外材料である、細胞培養の足場として汎用されている。しかし、従来技術では、3mg/mL程度の低濃度のコラーゲン含有水溶液を培養皿に塗布し、当該培養皿上にて細胞を培養する、あるいは、3mg/mL程度の低濃度のコラーゲン含有水溶液を培養皿上でゲル化させた後、当該培養皿上にて細胞を培養する、などを行っている。しかし、生体内でのコラーゲンの濃度は、3mg/mL程度の低濃度ではなく、高濃度である。それ故、従来技術では、生体外で、細胞を生体内に近い状態で培養することができないという問題を有している。また、培養に適した形状(例えば、立方体など)の成型体を作製することができないという課題を有している。
 従来の生体材料または生体外材料において高い強度を実現するためには、コラーゲン以外の副原料(例えば、架橋剤、合成高分子)が必要であり、当該副原料は、生体材料のコストを上げ、および/または、生体内での生体材料の免疫原性、炎症性、滞留性などを高くし、安全性を低下させるという問題点を有している。さらに、生体材料または生体外材料に多量の副原料を加えて、生体材料または生体外材料の強度を高くしても、生体材料または生体外材料に含まれるコラーゲン自体の密度を高くすることはできない。つまり、生体内に存在するコラーゲンの密度を、従来のコラーゲンを用いて再現することはできないという問題を有している。言い換えると、従来技術では、コラーゲン調製物またはゼラチン調製物から、強度が補強された、高い空隙率を有するスポンジ状固形物を作製することは可能であるが、空隙率がほとんどない金属のように一様なコラーゲン固形物またはゼラチン固形物を作製することはできなかった。スポンジ状固形物を圧縮することによって、高密度の固形物を作製することが考えられるが、圧縮力を解放すると、当該固形物は、膨張して元のスポンジ状固形物へ戻ってしまう。高密度の固形物を得るために、スポンジ状固形物を圧縮した状態で架橋することも考えられるが、架橋した固形物は自然界に存在しない人工物となる。
 また、従来の生体材料または生体外材料では、原料の溶解度が低い、あるいは、生体材料または生体外材料の強度が低い、等の理由により、当該生体材料または生体外材料に任意の物質成分を含有させることが困難であるという問題点を有している。
 本発明は、密度および強度が高いコラーゲン固形物(換言すれば、生体内環境にも近い、かつ、空隙率の低い成型体)を提供することを目的とする。
 〔2.コラーゲン固形物の製造方法〕
 本発明の一実施形態に係るコラーゲン固形物の製造方法は、(i)システインプロテアーゼによって、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを分解する(より具体的に、システインプロテアーゼによって、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの両末端を部分的に切断する)分解工程と、(ii)上記分解工程により得られた、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物から溶媒を除去する除去工程と、を有している。以下に、下記工程について説明する。
 〔2-1.分解工程〕
 上記分解工程では、コラーゲンまたはアテロコラーゲンをシステインプロテアーゼによって分解する。
 上記コラーゲンは、特に限定されず、周知のコラーゲンであればよい。コラーゲンとしては、哺乳類(例えば、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒト、ラットまたはマウスなど)、鳥類(例えば、ニワトリなど)、または、魚類(例えば、サメ、コイ、ウナギ、マグロ(例えば、キハダマグロ)、ティラピア、タイ、サケなど)のコラーゲンを用いることができる。
 更に具体的に、コラーゲンとしては、哺乳類または鳥類の真皮、腱、骨または筋膜などに由来するコラーゲン、あるいは、魚類の皮膚または鱗などに由来するコラーゲンを用いることができる。
 上記アテロコラーゲンとしては、哺乳類、鳥類または魚類のコラーゲンをプロテアーゼ(例えば、ペプシンなど)によって処理して得られる、コラーゲン分子のアミノ末端および/またはカルボキシル末端からテロペプチドが部分的に除去されているアテロコラーゲンを用いることができる。
 これらのなかでは、ニワトリ、ブタ、ヒトまたはラットのコラーゲンまたはアテロコラーゲンを用いることが好ましく、ブタまたはヒトのコラーゲンまたはアテロコラーゲンを用いることが更に好ましい。
 また、魚類のコラーゲンまたはアテロコラーゲンであれば、安全に、かつ大量に入手可能であり、ヒトに対してより安全なコラーゲン固形物を実現することができる。
 なお、魚類のコラーゲンまたはアテロコラーゲンを用いる場合には、サメ、コイ、ウナギ、マグロ(例えば、キハダマグロ)、ティラピア、タイまたはサケのコラーゲンまたはアテロコラーゲンを用いることが好ましく、マグロ、ティラピア、タイまたはサケのコラーゲンまたはアテロコラーゲンを用いることが更に好ましい。
 コラーゲンは、周知の方法によって入手することができる。例えば、哺乳類、鳥類または魚類のコラーゲンに富んだ組織をpH2~4程度の酸性溶液に投入することによって、コラーゲンを溶出することができる。更に、当該溶出液にペプシンなどのプロテアーゼを添加して、コラーゲン分子のアミノ末端および/またはカルボキシル末端のテロペプチドを部分的に除去する。更に、当該溶出液に塩化ナトリウムなどの塩を加えることによって、アテロコラーゲンを沈殿させることができる。
 アテロコラーゲンを用いる場合、熱による変性温度が、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であるアテロコラーゲンを用いることが好ましい。例えば、魚類のアテロコラーゲンを用いる場合、マグロ(例えば、キハダマグロ)、ティラピアまたはコイなどのアテロコラーゲンは熱変性温度が25℃以上であるので、これらのアテロコラーゲンを用いることが好ましい。上記構成であれば、貯蔵時の安定性、利用時の安定性に優れたコラーゲン固形物を実現することができる。
 システインプロテアーゼとしては、塩基性アミノ酸量よりも酸性アミノ酸量の方が多いシステインプロテアーゼ、酸性領域の水素イオン濃度において活性であるシステインプロテアーゼを用いることが好ましい。
 このようなシステインプロテアーゼとしては、カテプシンB[EC 3.4.22.1]、パパイン[EC 3.4.22.2]、フィシン[EC 3.4.22.3]、アクチニダイン[EC 3.4.22.14]、カテプシンL[EC 3.4.22.15]、カテプシンH[EC 3.4.22.16]、カテプシンS[EC 3.4.22.27]、ブロメライン[EC 3.4.22.32]、カテプシンK[EC 3.4.22.38]、アロライン、カルシウム依存性プロテアーゼなどを挙げることが可能である。
 これらの中では、パパイン、フィシン、アクチニダイン、カテプシンK、アロラインまたはブロメラインを用いることが好ましく、パパイン、フィシン、アクチニダイン、カテプシンKを用いることが更に好ましい。
 上述した酵素は、公知の方法によって入手することができる。例えば、化学合成による酵素の作製;細菌、真菌、各種動植物の細胞または組織からの酵素の抽出;遺伝子工学的手段による酵素の作製;などによって入手することができる。勿論、市販の酵素を用いることも可能である。
 コラーゲンまたはアテロコラーゲンを酵素(具体的には、システインプロテアーゼ)によって分解する場合には、例えば、以下の(i)~(iii)の方法にしたがえばよい。以下の(i)~(iii)の方法は、あくまでも一例であって、本発明は、これら(i)~(iii)の方法に限定されない。
 以下の(i)および(ii)の方法は、後述する(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の特定の箇所の化学結合を切断するために用いられる方法の一例であり、以下の(iii)の方法は、後述する(3)にて示されるアミノ酸配列の特定の箇所の化学結合を切断するために用いられる方法の一例である。
(i)高濃度の塩の存在下にて、コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、酵素とを接触させる方法。
(ii)高濃度の塩と接触させた後の酵素と、コラーゲンまたはアテロコラーゲンとを接触させる方法。
(iii)低濃度の塩の存在下にて、コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、酵素とを接触させる方法。
 上述した(i)の方法の具体例としては、例えば、高濃度の塩を含む水溶液中で、コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、酵素とを接触させる方法を挙げることができる。
 上述した(ii)の方法の具体例としては、例えば、高濃度の塩を含む水溶液と酵素とを予め接触させ、その後、当該酵素と、コラーゲンまたはアテロコラーゲンとを接触させる方法を挙げることができる。
 上述した(iii)の方法の具体例としては、例えば、低濃度の塩を含む水溶液中で、コラーゲンまたはアテロコラーゲンと、酵素とを接触させる方法を挙げることができる。
 上記水溶液の具体的な構成としては特に限定されないが、例えば、水を用いることが可能である。
 上記塩の具体的な構成としては特に限定されないが、塩化物を用いることが好ましい。塩化物としては、特に限定されないが、例えば、NaCl、KCl、LiClまたはMgClを用いることが可能である。
 上記高濃度の塩を含む水溶液における塩の濃度は特に限定されないが、高いほど好ましいといえる。例えば、当該濃度は、200mM以上であることが好ましく、500mM以上であることがより好ましく、1000mM以上であることがより好ましく、1500mM以上であることがより好ましく、2000mM以上であることが最も好ましい。
 上記高濃度の塩を含む水溶液における塩の濃度の上限値は、特に限定されないが、例えば2500mMであり得る。塩の濃度が2500mMよりも高くなると、タンパク質の多くが塩析してしまい、その結果、酵素によるコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解効率が低下する傾向を示す。一方、塩の濃度が2500mM以下であれば、酵素によるコラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解効率を高くすることができる。
 したがって、上記高濃度の塩を含む水溶液における塩の濃度は、200mM以上2500mM以下であることが好ましく、500mM以上2500mM以下であることがより好ましく、1000mM以上2500mM以下であることがより好ましく、1500mM以上2500mM以下であることがより好ましく、2000mM以上2500mM以下であることが最も好ましい。
 上記高濃度の塩を含む水溶液における塩の濃度が高いほど、酵素によるコラーゲンまたはアテロコラーゲンの切断箇所の特異性を上げることができる。
 上記低濃度の塩を含む水溶液における塩の濃度は特に限定されないが、低いほど好ましいといえる。例えば、当該濃度は、200mMよりも低いことが好ましく、150mM以下であることがより好ましく、100mM以下であることがより好ましく、50mM以下であることがより好ましく、略0mMであることが最も好ましい。
 上記水溶液(例えば、水)に溶解させるコラーゲンまたはアテロコラーゲンの量は特に限定されないが、例えば、100重量部~10000重量部の水溶液に対して、1重量部のコラーゲンまたはアテロコラーゲンを溶解させることが好ましい。さらに、100重量部~1000重量部の水溶液に対して、1重量部のコラーゲンまたはアテロコラーゲンを溶解させることが好ましい。
 上記構成であれば、水溶液に対して酵素が加えられた場合、当該酵素とコラーゲンまたはアテロコラーゲンとを効率よく接触させることができる。そして、その結果、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを酵素によって効率よく分解することができる。
 上記水溶液に加える酵素の量は特に限定されないが、例えば、1000重量部のコラーゲンまたはアテロコラーゲンに対して、1重量部~100重量部の酵素を加えることが好ましい。上記構成であれば、水溶液中の酵素の濃度が高いので、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを酵素によって効率よく分解することができる。さらに、100重量部のコラーゲンまたはアテロコラーゲンに対して、1重量部~10重量部の酵素を加えることが好ましい。
 水溶液中でコラーゲンまたはアテロコラーゲンと酵素とを接触させるときの他の条件(例えば、水溶液のpH、温度、接触時間など)も特に限定されず、適宜、設定することができるが以下の範囲であることが好ましい。
 1)水溶液のpHは、pH2.0~7.0が好ましく、pH2.5~6.5が更に好ましい。水溶液のpHを上述した範囲に保つために、水溶液に対して周知のバッファーを加えることが可能である。上記pHであれば、水溶液中にコラーゲンまたはアテロコラーゲンを均一に溶解することができ、その結果、酵素反応を効率よく進めることができる。
 2)温度は特に限定されず、用いる酵素に応じて温度を選択すればよい。例えば、当該温度は、15℃~40℃であることが好ましく、20℃~35℃であることがより好ましい。
 3)接触時間は特に限定されず、酵素の量、および/または、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの量に応じて接触時間を選択すればよい。例えば、当該時間は、1時間~60日間であることが好ましく、1日間~7日間であることがより好ましく、3日間~7日間であることがさらに好ましい。
 なお、水溶液中でコラーゲンまたはアテロコラーゲンと酵素とを接触させた後、必要に応じて、pHを再調整する工程、酵素を失活させる工程、および、不純物を除去する工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程を経てもよい。
 上記不純物を除去する工程は、物質を分離するための一般的な方法によって行うことができる。上記不純物を除去する工程は、例えば、透析、塩析、ゲル濾過クロマトグラフィー、等電点沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、または、疎水性相互作用クロマトグラフィーなどによって行うことができる。
 上述したように、分解工程は、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを酵素によって分解することによって行うことが可能である。このとき、分解されるコラーゲンまたはアテロコラーゲンは、生体組織中に含有された状態のものであってもよい。つまり、分解工程は、生体組織と酵素とを接触させることによって行うことも可能である。
 生体組織としては、特に限定されず、その例として哺乳類または鳥類の真皮、腱、骨または筋膜、あるいは、魚類の皮膚または鱗を用いることができる。
 高い生理活性を維持し、かつ、多量にコラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物を得るという観点からは、生体組織として真皮、腱、または骨を用いることが好ましい。
 生体組織として真皮、腱、または骨を用いる場合、酸性条件下で真皮、腱、または骨と酵素とを接触させることが好ましい。例えば、上記酸性条件としては、好ましくはpH2.5~6.5、更に好ましくはpH2.5~5.0、更に好ましくはpH2.5~4.0、最も好ましくはpH2.5~3.5である。
 より具体的に、上記分解工程では、システインプロテアーゼと真皮、腱、または骨とを接触させることによって、該真皮、該腱、または該骨に含まれるコラーゲンと、システインプロテアーゼとを接触させることが好ましい。また、上記分解工程では、200mM以上の濃度の塩の存在下にて、該真皮、該腱、または該骨と、システインプロテアーゼとを接触させることが好ましい。また、上記分解工程では、200mM以上の濃度の塩と接触させた後のシステインプロテアーゼと、該真皮、該腱、または該骨とを接触させることが好ましい。また、上記分解工程では、200mMよりも低い濃度の塩の存在下にて、該真皮、該腱、または該骨と、システインプロテアーゼとを接触させることが好ましい。
 〔2-2.除去工程〕
 除去工程は、分解工程により得られた、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物から溶媒を除去する工程である。除去工程では、溶媒のみならず、不要な低分子化合物などの不純物を除去してもよい。除去工程は、例えば、透析、限外ろ過、凍結乾燥、風乾、エバポレーター、噴霧乾燥、または、これらの組み合わせによって行われ得る。
 上記透析または限外ろ過は、溶媒(例えば水)以外の不要な低分子化合物などの不純物を除くことができる。溶媒に含まれる不要な低分子化合物の量が無視できる量になるまで、透析または限外ろ過を繰り返し行ってもよく、透析と限外ろ過とを組み合わせて行ってもよい。コラーゲン固形物が変性することを防ぐという観点から、除去工程は、低温下で行われることが好ましい。なお、上述した透析または限外ろ過等の方法は周知の方法であるので、ここでは、その説明を省略する。
 上記凍結乾燥、風乾、エバポレーターまたは噴霧乾燥は、水などの溶媒を除くことができる。コラーゲン固形物が変性することを防ぐという観点から、当該除去工程は、低温下で行われることが好ましい。凍結乾燥の前処理における凍結工程は、-80℃の超低温冷凍庫を用いて凍結させてもよく、プログラムフリーザーを用いて最終-80℃まで降温し凍結してもよく、プログラムフリーザーを用いて予備凍結後に-80℃の超低温冷凍庫を用いて凍結させてもよい。上述した凍結乾燥、風乾、エバポレーターまたは噴霧乾燥等の方法は周知の方法であるので、ここでは、その説明を省略する。
 上記除去工程(例えば、凍結乾燥工程など)では、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物を所望の形状を有する鋳型に充填し、その後、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物から溶媒を除去することが好ましい。当該構成であれば、所望の形状を有するコラーゲン固形物を容易に得ることができる。上記噴霧乾燥工程では、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物を霧状に噴霧し、その後、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物から溶媒を除去することが好ましい。当該構成であれば、所望の粉末形状を有するコラーゲン固形物を容易に得ることができる。
 上記除去工程では、上記分解工程により得られた、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物に任意の物質を加えた後に、当該混合物から溶媒を除去してもよい。より具体的に、上記除去工程では、上記分解工程により得られた、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物に、任意の溶媒に溶解した任意の物質を加えた後で、当該混合物から溶媒を除去してもよい。上記除去工程では、当該除去工程にて得られたコラーゲン固形物に任意の物質を吸着させてもよい。より具体的に、上記除去工程では、当該除去工程にて得られたコラーゲン固形物に任意の溶媒に溶解した任意の物質を吸収させてもよい。更に具体的に、上記除去工程では、当該除去工程にて得られたコラーゲン固形物に任意の溶媒に溶解した任意の物質を吸収させ、その後、当該コラーゲン固形物から、任意の物質を溶解させていた溶媒を除去してもよい。より具体的に、上記除去工程では、(i)分解工程により得られた、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物から溶媒を除去してコラーゲン固形物を得、(ii)当該コラーゲン固形物を、任意の物質を含む溶媒(換言すれば、任意の溶媒に溶解した任意の物質)に浸し、(iii)当該コラーゲン固形物から溶媒を除去してもよい。当該構成であれば、任意の物質を含有しているコラーゲン固形物を製造することができる。
 〔2-3.その他の工程〕
 本発明の一実施形態に係るコラーゲン固形物の製造方法は、上述した除去工程の後に、除去工程にて得られたコラーゲン固形物に対して更に成型処理(例えば、切削処理、研磨処理、および、貫通孔形成処理など)を加える成型工程を有していてもよい。当該構成であれば、所望の形状を有するコラーゲン固形物を容易に得ることができる。なお、当該成型処理は、周知の方法にしたがって行えばよい。
 当該成型工程には、成型物の形状に対応した凹凸を有する、適切な鋳型を用いてもよい。鋳型によって作製される成型物の形状としては、例えば、立方体、円柱、円盤、直管、曲菅、ネジ、オスネジ、メスネジ、フィルム、円錐、矢じり、六面体、多面体、多角柱、蛇腹、および、これら複数の形状が繋がった複雑な形状などが挙げられる。
 〔3.コラーゲン固形物〕
 本発明の一実施形態に係るコラーゲン固形物は、上述した〔2.コラーゲン固形物の製造方法〕の欄にて説明した製造方法によって製造され得る。本発明の一実施形態に係るコラーゲン固形物は、コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物または、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物を含むものである。以下に各構成について説明する。なお、〔2.コラーゲン固形物の製造方法〕の欄にて既に説明した構成については、以下では、その説明を省略する。
 〔3-1.コラーゲン固形物の性質〕
 本発明の一実施形態に係るコラーゲン固形物の密度としては、略50mg/cm以上が好ましく、より好ましくは略50mg/cm~略400mg/cm、より好ましくは略50mg/cm~略350mg/cm、より好ましくは略80mg/cm~略350mg/cm、より好ましくは略80mg/cm~略300mg/cm、より好ましくは略100mg/cm~略300mg/cm、より好ましくは略120mg/cm~略300mg/cm、より好ましくは略120mg/cm~略280mg/cm、より好ましくは略140mg/cm~略280mg/cm、より好ましくは略140mg/cm~略260mg/cm、より好ましくは略140mg/cm~略240mg/cm、最も好ましくは略140mg/cm~略220mg/cmである。
 コラーゲン固形物の密度の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述する実施例に記載の方法にて密度を測定することができる。
 本発明の一実施形態に係るコラーゲン固形物の接線係数としては、略90kPa以上が好ましく、より好ましくは略90kPa~略40000kPa、より好ましくは略90kPa~略35000kPa、より好ましくは略150kPa~略35000kPa、より好ましくは略200kPa~略35000kPa、より好ましくは略200kPa~略30000kPa、より好ましくは略200kPa~略25000kPa、より好ましくは略250kPa~略25000kPa、より好ましくは略300kPa~略25000kPa、より好ましくは略300kPa~略20000kPa、より好ましくは略300kPa~略15000kPa、最も好ましくは略300kPa~略10000kPaである。
 コラーゲン固形物の接線係数の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述する実施例に記載の方法にて接線係数を測定することができる。
 本発明の一実施形態に係るコラーゲン固形物は、上述した密度を有するものであってもよく、上述した接線係数を有するものであってもよく、上述した密度と接線係数との両方を有するものであってもよい。
 本発明の一実施形態に係るコラーゲン固形物中に含まれる、コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、または、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物の量は特に限定されないが、これらの分解物の量が多いほど、コラーゲン固形物の強度が向上するため、好ましい。例えば、本発明の一実施形態のコラーゲン固形物に、これらの分解物が合計で、好ましくは0.1重量%~100重量%、より好ましくは50重量%~100重量%、より好ましくは90重量%~100重量%、最も好ましくは100重量%含まれ得る。
 本発明の一実施形態のコラーゲン固形物には、コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物およびアテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物以外の構成が添加されていてもよい。これらの構成としては特に限定されない。これらの構成としては、例えば、元素(例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、クロライド、亜鉛、鉄、および銅、または、これらのイオン)、無機酸(リン酸、酢酸、および炭酸、または、これらのイオン)、有機酸(ピルビン酸、アセチルCoA、クエン酸、オキサロ酢酸、コハク酸、およびフマル酸、または、これらのイオン)、低分子化合物(例えば、CaCO)、核酸(DNA、RNA、プラスミド)、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ATP、GTP、NADH、FADH、siRNA、miRNA、脂質、アミノ酸、タンパク質、サイトカイン、成長因子(例えば、FGF、bFGF、VEGF、BMP、TGF-β、PDGF、HGF、およびIGF)、単糖(グルコース、フコース、グルコサミン)、多糖(ヒアルロン酸、トレハロース、アミロース、ペクチン、セルロース、グリコーゲン、デンプン、およびキチン)、化学合成薬剤、天然薬剤、酵素、ホルモン(テストステロン、ジヒドロテストステロン、エストロン、エストラジオール、プロゲステロン、黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺ホルモン)、抗生物質、抗がん剤、プロテオグリカン、抗体、エキソソーム、細胞破砕成分、および、これらの混合物などが挙げられる。
 本発明の一実施形態のコラーゲン固形物がコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、および、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物以外の構成を含む場合、(i)コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物および/またはアテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物と、溶媒と、上記コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物およびアテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物以外の構成成分と、を混合した後、溶媒を蒸発させて、他の成分を含有するコラーゲン固形物としてもよいし、(ii)コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物および/またはアテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物と、溶媒と、を混合し、乾燥させて得られたコラーゲン固形物に、上記コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物およびアテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物以外の構成成分を吸収させた後、不要な溶媒等を蒸発させて、他の成分を含有するコラーゲン固形物としてもよい。また、上記コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物またはアテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物と、上記コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物またはアテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物以外の複数の構成成分を混合した後、不要な溶媒等を蒸発させて、複数の構成成分を含有するコラーゲン固形物としてもよい。
 本発明の一実施形態のコラーゲン固形物に、コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物およびアテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物以外の構成が合計で、0重量%~99.9重量%、0重量%~50重量%、0重量%~10重量%、または、0重量%含まれ得る。
 本発明の一実施形態のコラーゲン固形物は、所望の形状に加工されたものであり得る。当該形状としては、例えば、円盤形、管形、円柱形、円錐形、矢じり形、六面体、多面体、多角柱形、蛇腹形、ネジ形、オスネジ形、メスネジ形、および、これら複数の形状が繋がった複雑な形状を挙げることができるが、勿論、本発明は、これらの形状に限定されない。
 〔2-2.コラーゲン固形物に含まれる、コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、および、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物〕
 上記コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、および、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物は、コラーゲンのトリプルヘリカルドメインの少なくとも一部分を含んでいるものであり得る。つまり、上記分解物は、コラーゲンのトリプルヘリカルドメインの全体を含んでいてもよいし、トリプルヘリカルドメインの一部分を含んでいてもよい。
 更に具体的に、上記コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、および、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物は、
 コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(1)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、または、XとGとの間の化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、または、
 コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメイン内の下記(2)にて示されるアミノ酸配列の、XとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、XとGとの間の化学結合、GとXとの間の化学結合、または、X14とGとの間の化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物、または、
 コラーゲンまたはアテロコラーゲンのトリプルヘリカルドメインのアミノ末端の下記(3)にて示されるアミノ酸配列の、YとYとの間の化学結合が切断されている、コラーゲンまたはアテロコラーゲンの分解物であり得る:
 (1)-G-X-X-G-X-X-G-X-X-G-(配列番号1):
 (2)-G-X-X-G-X-X-G-X-X-G-X-X-G-X-X10-G-X11-X12-G-X13-X14-G-(配列番号2):
 (3)-Y-Y-Y-G-Y-Y-G-Y-Y-G-Y-Y-G-(配列番号3):
 (但し、Gは、グリシンであり、X~X14およびY~Yは、任意のアミノ酸である)。
 本明細書において「トリプルヘリカルドメイン」とは、「Gly-X-Y」(XおよびYは任意のアミノ酸)にて示されるアミノ酸配列が、少なくとも3個以上、より好ましくは少なくとも80個以上、より好ましくは少なくとも100個以上、より好ましくは少なくとも200個以上、より好ましくは少なくとも300個以上、連続するアミノ酸配列を含むドメインであって、螺旋構造の形成に寄与するドメインを意図する。
 トリプルヘリカルドメイン内で化学結合の切断が生じているポリペプチド鎖は、コラーゲンを構成する複数種類のポリペプチド鎖のうちの何れのポリペプチド鎖であってもよい。例えば、化学結合の切断が生じているポリペプチド鎖は、α1鎖、α2鎖、α3鎖のうちの何れであってもよい。化学結合の切断が生じているポリペプチド鎖は、上述したポリペプチド鎖のなかではα1鎖またはα2鎖の少なくとも一方であることが好ましい。化学結合の切断が生じているポリペプチド鎖は、上述したポリペプチド鎖のなかではα1鎖であることが更に好ましい。
 コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、および、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物は、3つのポリペプチド鎖が螺旋構造を形成しているものであってもよい。あるいは、コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、および、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物は、3つのポリペプチド鎖が螺旋構造を形成していないもの、または、3つのポリペプチド鎖が部分的に螺旋構造を形成していないものであってもよい。なお、3つのポリペプチド鎖が螺旋構造を形成しているか否かは、公知の方法(例えば、円偏光二色スペクトル)によって確認することができる。
 コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、および、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物は、基本的に3つのポリペプチド鎖を含んでいるが、3つのポリペプチド鎖のうちの1つのポリペプチド鎖にて化学結合の切断が生じていてもよいし、3つのポリペプチド鎖のうちの2つのポリペプチド鎖にて化学結合の切断が生じていてもよいし、3つのポリペプチド鎖の全てにて化学結合の切断が生じていてもよい。
 3つのポリペプチド鎖が螺旋構造を形成している場合には、複数の螺旋構造体によって、網目状の会合体が形成されていてもよいし、線維状の会合体が形成されていてもよい。本明細書において、網目状とは、水素結合または静電的相互作用、ファンデルワールス結合などによって分子が連なって立体的な網目をつくり、当該網目の間に隙間ができている構造を意図する。本明細書において、線維状とは、水素結合または静電的相互作用、ファンデルワールス結合などによって分子が連なって形成された略直線状の構造を意図する。また、本明細書において、会合体とは、同種の分子が共有結合によらないで2分子以上が相互作用して結合し、1つの構造単位となっているものを意図する。網目状または線維状の会合体が形成されているか否かは、電子顕微鏡にて観察することによって確認することができる。
 上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列のトリプルヘリカルドメイン内における位置は、特に限定されない。例えば、上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列は、トリプルヘリカルドメインの内部に存在していてもよいが、トリプルヘリカルドメインのアミノ末端に存在していることが好ましい(換言すれば、上記(1)または(2)にて示されるアミノ酸配列の中の最もアミノ末端側に配置されている「G」が、トリプルヘリカルドメインの中の最もアミノ末端側に配置されている「G」と一致することが好ましい)。
 上記(1)、(2)および(3)にて示されるアミノ酸配列のアミノ末端側に、1個以上、5個以上、10個以上、50個以上、100個以上、150個以上、200個以上、250個以上または300個以上の「Gly-X-Y」(XおよびYは任意のアミノ酸)が連続するアミノ酸配列が存在していてもよい。また、当該(1)、(2)および(3)にて示されるアミノ酸配列のカルボキシル末端側に、1個以上、5個以上、10個以上、50個以上、100個以上、150個以上、200個以上、250個以上または300個以上の「Gly-X-Y」(XおよびYは任意のアミノ酸)が連続するアミノ酸配列が存在していてもよい。
 上記X~Xの各々は、任意のアミノ酸であり得、アミノ酸の種類は特に限定されない。また、X~Xの各々は、少なくとも一部が同じ種類のアミノ酸であってもよいし、全てが異なる種類のアミノ酸であってもよい。
 例えば、X~Xの各々は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンのうちの何れであってもよい。
 更に具体的には、X~Xのうち、X、XおよびXが同じアミノ酸であり、その他が別のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X~Xのうち、X、XおよびXからなる群から選択される少なくとも1つがプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、Xがプロリンであり、X~Xが任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、XおよびXがプロリンであり、X、X~Xが任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X、XおよびXがプロリンであり、X、XおよびXが任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X、XおよびXがプロリンであり、Xが側鎖に硫黄原子を含むアミノ酸(例えば、システインまたはメチオニン)または側鎖に水酸基を含むアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンまたはセリン)であり、XおよびXが任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X、XおよびXがプロリンであり、Xが側鎖に硫黄原子を含むアミノ酸(例えば、システインまたはメチオニン)であり、Xが脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)または側鎖に水酸基を含むアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンまたはセリン)であり、Xが任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X、XおよびXがプロリンであり、Xが側鎖に硫黄原子を含むアミノ酸(例えば、システインまたはメチオニン)であり、Xが脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)または側鎖に水酸基を含むアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンまたはセリン)であり、Xが側鎖に塩基を含むアミノ酸(例えば、アルギニン、リシンまたはヒスチジン)であってもよい。
 更に具体的には、X、XおよびXがプロリンであり、Xがメチオニンであり、Xがアラニンまたはセリンであり、Xがアルギニンであってもよい。
 上記(2)にて示されるアミノ酸配列では、X~Xの各々は、上述したX~Xと同じ構成であり得る。X~X14の具体的な構成について、以下に説明する。
 上記X~X14の各々は、任意のアミノ酸であり得、アミノ酸の種類は特に限定されない。また、X~X14の各々は、少なくとも一部が同じ種類のアミノ酸であってもよいし、全てが異なる種類のアミノ酸であってもよい。
 例えば、X~X14の各々は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンのうちの何れであってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、X、X、X10、X12およびX13が同じアミノ酸であり、その他が別のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、X、X、X10、X12およびX13からなる群から選択される少なくとも1つがプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、Xがプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、XおよびXがプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、X、XおよびX10がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、X、X、X10およびX12がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、X、X、X10、X12およびX13がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、X、X、X10、X12およびX13がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、Xが脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)であり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、X、X、X10、X12およびX13がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、XおよびX11が脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)であり、その他が任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、X、X、X10、X12およびX13がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、XおよびX11が脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)であり、X14が親水性でありかつ非解離性の側鎖を有するアミノ酸(セリン、スレオニン、アスパラギンまたはグルタミン)であってもよい。
 更に具体的には、X~X14のうち、X、X、X10、X12およびX13がプロリンまたはヒドロキシプロリンであり、Xがロイシンであり、X11がアラニンであり、X14がグルタミンであってもよい。
 上記(3)にて示されるアミノ酸配列は、トリプルヘリカルドメインのアミノ末端に位置している。つまり、YとYとの間に位置しているGは、トリプルヘリカルドメイン内の最もアミノ末端側に位置しているグリシンを示している。そして、Y、YおよびYは、コラーゲンを構成する複数種類のポリペプチド鎖内において、トリプルヘリカルドメインよりもアミノ末端側に位置しているアミノ酸を示している。
 上記Y~Yの各々は、任意のアミノ酸であり得、アミノ酸の種類は特に限定されない。また、Y~Yの各々は、少なくとも一部が同じ種類のアミノ酸であってもよいし、全てが異なる種類のアミノ酸であってもよい。
 例えば、Y~Yの各々は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンのうちの何れであってもよい。
 更に具体的には、Yがプロリンであり、YおよびYが任意のアミノ酸であってもよい。
 更に具体的には、Yがプロリンであり、YおよびYが脂肪族の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)または側鎖に水酸基を含むアミノ酸(ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンまたはセリン)であってもよい。
 更に具体的には、Yがプロリンであり、Yがアラニンまたはセリンであり、Yがバリンであってもよい。
 このとき、Y~Yの具体的な構成は、特に限定されないが、YとXとが同じアミノ酸であり、YとXとが同じアミノ酸であり、YとXとが同じアミノ酸であり、YとXとが同じアミノ酸であり、YとXとが同じアミノ酸であり、YとXとが同じアミノ酸であってもよい。
 より具体的に、XおよびYがプロリンであり、XおよびYがメチオニンであり、XおよびYがプロリンまたはロイシンであり、XおよびYがアラニン、セリンまたはメチオニンであり、XおよびYがプロリンまたはセリンであり、XおよびYがアルギニンであり、X~X14およびY~Yが任意のアミノ酸であってもよい。
 〔4.生体材料および生体外材料〕
 本発明の一実施形態に係る生体材料および生体外材料は、上述したコラーゲン固形物を含むものである。
 当該生体材料は、生体組織(例えば、骨)中に埋め込まれ得る。本発明の一実施形態に係る生体材料は、生体組織再生用の生体材料であってもよいし、生体組織修復用の生体材料であってもよい。より具体的に、本発明の一実施形態に係る生体材料は、上述したコラーゲン固形物を含む、骨再生用の生体材料(換言すれば、骨再生用材料)であってもよい。より具体的に、本発明の一実施形態に係る生体材料は、上述したコラーゲン固形物を含む、骨損傷を治療するための骨再生用の生体材料、または、骨欠損を治療するための骨再生用の生体材料、であってもよい。後述する実施例にも示すように、本発明の一実施形態に係る生体材料であれば、骨を効果的に再生することができる。
 当該生体外材料は、生体組織以外で使用するものであればよく、特に限定されない。本発明の一実施形態に係る生体外材料は、細胞培養用基材であってもよいし、形状加工が可能な高密度コラーゲン固形物からなる細胞培養用基材であってもよい。本発明の一実施形態に係る生体外材料は、上述した高密度コラーゲン固形物を含む細胞培養用基材であってもよい。より具体的に、本発明の一実施形態に係る生体外材料は、上述した高密度コラーゲン固形物を含む、フィルム状もしくはメンブレン状の細胞培養用基材、または、立方体状の細胞培養用基材であってもよい。本発明の一実施形態に係る生体外材料であれば、当該生体外材料の上で、細胞を効果的に培養することができる。
 本発明の一実施形態の生体材料および生体外材料には、コラーゲン固形物以外の構成が添加されていてもよい。これらの構成としては特に限定されない。これらの構成としては、例えば、元素(例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、クロライド、亜鉛、鉄、および銅、または、これらのイオン)、無機酸(リン酸、酢酸、および炭酸、または、これらのイオン)、有機酸(ピルビン酸、アセチルCoA、クエン酸、オキサロ酢酸、コハク酸、およびフマル酸、または、これらのイオン)、低分子化合物(例えば、CaCO)、核酸(DNA、RNA、プラスミド)、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ATP、GTP、NADH、FADH、siRNA、miRNA、脂質、アミノ酸、タンパク質、サイトカイン、成長因子(例えば、FGF、bFGF、VEGF、BMP、TGF-β、PDGF、HGF、およびIGF)、単糖(グルコース、フコース、グルコサミン)、多糖(ヒアルロン酸、トレハロース、アミロース、ペクチン、セルロース、グリコーゲン、デンプン、およびキチン)、化学合成薬剤、天然薬剤、酵素、ホルモン(テストステロン、ジヒドロテストステロン、エストロン、エストラジオール、プロゲステロン、黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺ホルモン)、抗生物質、抗がん剤、プロテオグリカン、抗体、エキソソーム、細胞破砕成分、およびこれらの混合物などが挙げられる。
 本発明の一実施形態の生体材料および生体外材料には、コラーゲン固形物が、好ましくは0.1重量%~100重量%、より好ましくは50重量%~100重量%、より好ましくは90重量%~100重量%、より好ましくは95重量%~100重量%、最も好ましくは100重量%含まれ得る。一方、本発明の一実施形態の生体材料には、コラーゲン固形物以外の構成が合計で、0重量%~99.9重量%、0重量%~50重量%、0重量%~10重量%、0重量%~5重量%、または、0重量%含まれ得る。
 上記のようにして得られた生体材料を使用する方法は、例えば、(i)コラーゲン固形物を含む生体材料を洗浄、および滅菌する洗浄工程と;(ii)当該洗浄した生体材料を、目的とする生体組織に移植する移植工程と;(iii)当該生体組織に生体材料を移植した箇所の骨癒合の進行度を評価する評価工程と、を有し得る。
 上記洗浄工程としては、例えば、有機溶媒(70%エタノール、アセトン等)による生体材料の洗浄、滅菌水による生体材料の洗浄、UV照射による生体材料の滅菌が挙げられる。上記移植工程としては、例えば、目的とする生体組織中に、生体材料を移植する方法、および、生体材料を充填する方法が挙げられる。上記評価工程としては、例えば、医用画像工学的評価、力学的評価、免疫組織化学的評価(すなわち、免疫染色による評価)および組織学的評価が挙げられる。
 上記医用画像工学的評価では、例えば、レントゲン撮影またはCT撮影によって生体材料を移植した箇所の像を取得し、所定の評価基準に準拠して当該像を区分けし、当該区分けに基づいて修復度合を評価することが可能である。
 上記力学的評価では、例えば、3点曲げ押出試験機によって生体材料を移植した箇所の力学的強度を取得し、所定の評価基準に準拠して当該像を区分けし、当該区分けに基づいて修復度合を評価することが可能である。
 上記免疫組織化学的評価(すなわち、免疫染色による評価)では、組織上の目的成分の存在および局在を顕微鏡で可視化するために、特異的な抗体を利用して標的抗原を検出する方法である。例えば、抗オステオカルシン抗体によって生体材料を移植した箇所の存在量を取得し、所定の評価基準に準拠して当該像を区分けし、当該区分けに基づいて修復度合を評価することが可能である。抗体に関しては、骨再生組織の成熟度に合わせて複数の抗体を一緒にあるいは個別に用いることができるが、これに限定されることはない。
 また、組織学的評価では、HE染色またはSO染色した後に生体材料を移植した箇所の像を取得し、所定の評価基準に準拠して当該像を区分けし、当該区分けに基づいて修復度合を評価することが可能である。
 上記のようにして得られた生体外材料を使用する方法は、例えば、(i)コラーゲン固形物を含む生体外材料を洗浄、および滅菌する洗浄工程と;(ii)当該洗浄した生体外材料を、目的とする細胞培養用の形状に整える成型工程と;(iii)当該成型した生体外材料の上に細胞を播種して培養する培養工程と;(iv)細胞の形態や機能などを評価する評価工程と、を有し得る。
 上記洗浄工程としては、例えば、有機溶媒(70%エタノール、アセトン等)による生体外材料の洗浄、滅菌水による生体外材料の洗浄、UV照射による生体外材料の滅菌が挙げられる。上記成型工程としては、例えば、希望する成型物を得る適切な鋳型に、生体外材料を注入する方法、生体外材料を充填する方法、および、生体外材料を凍結乾燥する方法が挙げられる。上記評価工程としては、例えば、細胞形態の画像評価、移動速度の評価、免疫組織化学的評価(すなわち、免疫染色による評価)、タンパク質発現量の評価および遺伝子発現量評価が挙げられる。上記培養工程は、培養する細胞に応じて、培地および培養温度等を設定し、公知の方法にしたがって行うことができる。
 〔実施例1.円柱状コラーゲン固形物の作製〕
 システインプロテアーゼであるアクチニダインを用いて、ブタ由来のI型コラーゲンに対して20℃にて7日間、分解処理を行い、3本鎖構造を含む本発明のコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物「LASCol」(Low Adhesive Scaffold Collagen、細胞低接着性(I型)コラーゲンを得た。当該LASColを1000万倍の超純水に対して透析し、不純物などを除いた後、透析後の溶液を適当な容器に入れ、-80℃の超低温冷凍庫で凍結させた。その後、凍結乾燥機(東京理科器械製、FDU-2200)で凍結乾燥した。
 次いで、当該凍結乾燥したLASCol100mgに超純水を所定の濃度(10mg/mL、30mg/mL、50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、180mg/mL)になるように加え、当該溶液を、0℃~10℃の冷蔵庫内で、3日~10日間、静置した。その間、当該溶液をときどき泡立てずに穏やかに混合し、上記凍結乾燥したLASColを完全に溶解させた。
 当該LASColが完全に溶解した溶液を円柱形の鋳型(直径:2.5mm~3.0mm、長さ:4mm~7mm)内に充填して、-80℃で凍結させた。当該凍結物を凍結乾燥機(東京理科器械製、FDU-2200)のチャンバー内に設置して、略-85℃、2.0~2.5Paの条件下にて、当該完全に凍結した溶液から水分を昇華して完全に除去した。そして、凍結乾燥後に得られたLASCol固形物を円柱形の鋳型から取り出し、円柱状LASCol固形物とした。
 比較例として、市販のペプシン処理されたI型コラーゲン(Cellmatrix TypeI-C、新田ゼラチン株式会社製)(換言すれば、コラーゲンをペプシンで分解した、「アテロコラーゲン」)を使用し、上記と同様の方法で円柱状アテロコラーゲン固形物を作製した。なお、アテロコラーゲンに超純水を添加して、アテロコラーゲン濃度が高い溶液を得ようとしたが、アテロコラーゲン濃度が18mg/mLまたは20mg/mLである溶液が得られたのみであって、20mg/mLを超えるアテロコラーゲン濃度の溶液を、アテロコラーゲンが完全に溶解した状態で得ることは物理的にできなかった。
 〔実施例2.走査型電子顕微鏡(SEM)観察〕
 カミソリを用いて、円柱状LASCol固形物または円柱状アテロコラーゲン固形物を長軸方向に半分に切断し、当該円柱状LASCol固形物または円柱状アテロコラーゲン固形物の断片を、切断面が上を向くように、SEM用カーボン両面テープで、SEM用の試料台上に貼り付けた。次いで、蒸着装置(Ion Sputter E-1030、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)によって、切断面上に白金パラジウムを5nm蒸着し、観察試料とした。
 当該観察試料を、走査型電子顕微鏡(SU3500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて撮影した(加速電圧:5kV、スポット強度:30)。その結果を図1~図3に示す。
 図1および図2は、LASColの切断面の像であって、コラーゲン密度は、それぞれ(a)10mg/cm、(b)53mg/cm、(c)81mg/cm、(d)150mg/cm、(e)209mg/cm、(f)264mg/cmである。
 図3は、比較例であるアテロコラーゲン固形物の切断面の像であって、コラーゲン密度は、それぞれ(a)18mg/cm、(b)26mg/cmである。
 図1~図3より、LASCol固形物は、アテロコラーゲン固形物よりも、分解物が密に詰まっていることがわかる。図1および図2より、溶媒に溶解するコラーゲンの濃度が高くなると、LASCol固形物の内部がより緻密になることが観察された。
 〔実施例3.蛇腹状LASCol固形物の作製〕
 上記実施例1と同様の方法で、凍結乾燥したLASColを100mg/mLとなるように超純水を加えて完全に溶解させた。当該LASColが完全に溶解した溶液を、蛇腹状の屈曲した筒状鋳型1(谷径(D1):4.5mm、外径(D2):5.1mm、長さ(L1):20.1mm、(L2):16.5mm)、または、蛇腹状の伸長した筒状鋳型2(谷径(D1):4.5mm、外径(D2):5.1mm、長さ(L3):27.5mm)内に充填して、-80℃で凍結した。
 凍結乾燥機(FDU-2200、東京理科器械製)を用いて、略-85℃、2.0~2.5Paの条件下にて、当該完全に凍結した溶液から水分を昇華して完全に除去した。そして、凍結乾燥後に得られたLASCol固形物を筒状鋳型1または筒状鋳型2から取り出し、蛇腹状LASCol固形物とした。その像を図4に示す。
 図4(a)は、屈曲した蛇腹状LASCol固形物、図4(b)は、伸長した蛇腹状LASCol固形物を示す。本発明のLASColは、所望の形状に成型することが可能であることがわかる。
 〔実施例4.微小孔径管状LASCol固形物の作製〕
 上記実施例1と同様の方法で、凍結乾燥したLASColを100mg/mLまたは150mg/mLとなるように超純水に完全に溶解させた。当該LASColが完全に溶解した溶液を、筒状鋳型3(内径(D1):4.0mm、外径(D2):6.7mm、長さ(L4):7.5mm)、筒状鋳型4(内径(D1):2.2mm、外径(D2):3.4mm、長さ(L5):29.1mm)、または、筒状鋳型5(内径(D1):0.95mm、外径(D2):2.50mm、長さ(L6):24.5mm)内に充填して、-80℃で凍結した。
 凍結乾燥機(FDU-2200、東京理科器械製)を用いて、略-85℃、2.0~2.5Paの条件下にて、当該完全に凍結した溶液から水分を昇華して完全に除去した。そして、凍結乾燥後に得られたLASCol固形物を筒状鋳型3、筒状鋳型4、または筒状鋳型5から取り出し、微小孔径管状LASCol固形物とした。その像を図5に示す。
 図5(a)は、LASColを100mg/mLのコラーゲン濃度にて含む溶液を筒状鋳型3に充填して得られた微小孔径管状LASCol固形物を示し、図5(b)は、LASColを150mg/mLのコラーゲン濃度にて含む溶液を筒状鋳型4に充填して得られた微小孔径管状LASCol固形物を示し、図5(c)は、LASColを150mg/mLのコラーゲン濃度にて含む溶液を筒状鋳型5に充填して得られた微小孔径管状LASCol固形物を示す。
 図5(a)~(c)より、LASColにおけるコラーゲン濃度が、いずれの濃度であっても、微小な中空の管状に成型された微小孔径管状LASCol固形物が得られることがわかる。
 〔実施例5.円柱状LASCol固形物の強度試験〕
 実施例1と同様の方法で、所定のコラーゲン濃度(30mg/mL、50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、180mg/mL)のLASColを含む溶液を凍結乾燥させた円柱状LASCol固形物(直径:2.5mm)、および、所定のコラーゲン濃度(20mg/mL)のアテロコラーゲンを含む溶液を凍結乾燥させた円柱状アテロコラーゲン固形物(直径:2.5mm)を得た。当該円柱状LASCol固形物および円柱状アテロコラーゲン固形物をカミソリによって切断し、直径5mm、長さ5mmの円柱状の断片を得た。
 円柱状LASCol固形物および円柱状アテロコラーゲン固形物の強度試験は、小型卓上試験機EZ TEST装置(フォース トランスドューサーSM-100N-168、株式会社島津製作所製)を用いて実施した。円柱状LASCol固形物の断片、および、円柱状アテロコラーゲン固形物の断片の長軸を上下方向に合わせ、上記小型卓上試験機EZ TEST装置の加圧部に対して長軸が垂直になるように、当該断片をセットし、常法により応力-ひずみ曲線を測定した。そして、当該曲線の傾きから、円柱状LASCol固形物および円柱状アテロコラーゲン固形物の接線係数を算出した。
 円柱状LASCol固形物および円柱状アテロコラーゲン固形物の密度は、以下の方法にしたがって測定した。つまり、株式会社ミツトヨの標準デジタルノギス(デジマチックキャリパ CD-10AX(品番))を用いて、円柱成型物の直径(mm)と長さ(mm)とを計測し、半径、長さ、および円周率から円柱の体積(cm)を計算した。さらに、セミミクロ電子分析天びん(LIBROR AEL-40SM(品番)、株式会社島津製作所社製)を用いて該円柱状の固形物の重量(mg)を計測した。重量(mg)を体積(cm)で除して密度(mg/cm)を算出した。
 円柱状LASCol固形物および円柱状アテロコラーゲン固形物の作製に用いた溶液のコラーゲン濃度と、凍結乾燥後のLASCol固形物およびアテロコラーゲン固形物の密度および接線係数を、表1に示す。
 表1より、LASColを用いると、密度および接線係数が大きいLASCol固形物が得られることが判る。一方、アテロコラーゲンを用いると、密度および接線係数が小さいアテロコラーゲン固形物しか得られないことが判る。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 〔実施例6.Ca2+、Na、Cl含浸円柱状LASCol固形物のSEM-EDX分析〕
 実施例1と同様の方法で、LASColを凍結乾燥した。次いで、当該凍結乾燥したLASColを、最終コラーゲン濃度が50mg/mLになるように5mMのCa2+と、4mMのNaと、15mMのClと、を含む超純水に添加し、当該溶液を、0℃~10℃の冷蔵庫内で、3日間~10日間、静置した。その間、当該溶液を、ときどき泡立てずに穏やかに混合し、上記凍結乾燥したLASColを完全に溶解させた。
 当該LASColが完全に溶解した溶液を円柱形の鋳型(直径:3.5mm、長さ:2mm~5mm)に充填して、実施例1と同様の方法で凍結乾燥し、その後、LASCol固形物を円柱形の鋳型から取り出し、Ca2+、Na、Cl含浸円柱状LASCol固形物とした。
 比較例として、上記5mMのCa2+と、4mMのNaと、15mMのClと、を含む超純水をCa2+、Na、Clを含まない超純水に変更した以外は同様の方法で、Ca2+、Na、Cl非含浸円柱状LASCol固形物を作製した。
 その後、実施例2と同様の方法にしたがって、走査型電子顕微鏡(SU3500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて、Ca2+、Na、Cl含浸円柱状LASCol固形物の切断面、および、Ca2+、Na、Cl非含浸円柱状LASCol固形物の切断面を撮影した(加速電圧:15kV、スポット強度:60)。さらに、SEM-EDX(Scanning Electron Microscope/Energy Dispersive X-ray Spetroscorp:走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置、OCTANE PRIME(型番)、エダックス・ジャパン株式会社製)を使用し、Ca2+、Na、Cl含浸円柱状LASCol固形物、および、Ca2+、Na、Cl非含浸円柱状LASCol固形物に含まれている各元素イオンを検出した。その結果を、図6(a)~(d)、および、表2に示す。
 図6(a)は、Ca2+、Na、Cl非含浸円柱状LASCol固形物の長軸方向に沿った切断面の像を示し、図6(b)は、Ca2+、Na、Cl非含浸円柱状LASCol固形物の長軸方向に沿った切断面のSEM-EDX分析結果を示す。図6(c)は、Ca2+、Na、Cl含浸円柱状LASCol固形物の短軸方向に沿った切断面の像を示し、図6(d)は、Ca2+、Na、Cl含浸円柱状LASCol固形物の短軸方向に沿った切断面(特に、図6(c)の四角で囲んだ領域)のSEM-EDXで分析結果を示す。表2は、図6(d)にて検出された各元素イオンの量を数値化したデータである。当該LASCol固形物は、Naと、Clと、Caの元素を全て含んでいることが証明された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 図6(a)~(d)および表2より、本発明のLASCol固形物には、Ca2+、Na、Clに代表される様々な物質成分を任意のコラーゲン濃度で複数包含させ得ることが明らかになった。つまり、凍結乾燥前に超純水に含浸させたい任意の物質成分を混合することで、容易に物質含浸コラーゲン固形物を作製することができる。
 〔実施例7.Ca2+含浸円柱状LASCol固形物のSEM-EDX分析-2〕
 100mgのLASColを50mg/mLとなるように超純水を添加した以外は、実施例1と同様の方法で作製した凍結乾燥後のLASCol固形物を円柱形の鋳型(直径:3.5mm、長さ:10mm)から取り出し、円柱状LASCol固形物とした。当該LASCol固形物を37℃に保温した10mMのCa2+を含む超純水に、保温しながら15分間浸し、再度凍結乾燥させ、Ca2+含浸円柱状LASCol固形物を作製した。
 得られたCa2+含浸円柱状LASCol固形物を実施例6と同様の方法で、走査型電子顕微鏡観察、およびSEM-EDX分析をした。その結果を図6(e)~6(f)、および、表3に示す。図6(e)は、Ca2+含浸円柱状LASCol固形物の外側面の像を示し、図6(f)は、Ca2+含浸円柱状LASCol固形物の外側面のSEM-EDX分析の結果を示す。表3は、図6(f)にて検出された各元素イオンの量を数値化したデータである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 図6(e)~(f)および表3より、本発明のLASCol固形物には、Ca2+に代表される様々な物質を包含させ得ることが明らかになった。つまり、任意の形および密度のLASCol固形物を凍結乾燥させた後に取り出し、その後、含浸させたい任意の物質成分を任意の濃度で溶解させた適切な溶液に当該LASCol固形物を浸すことにより、所望する物質成分を包含するLASCol固形物を作製することができた。本発明に係る化合物含浸LASCol固形物であれば、当該固形物に含まれているLASColの構造および性質を変化させることがないので、生体内でも使用することができる。また、実施例7において、LASCol固形物は、浸させたい任意の物質成分を含んでいる溶液に溶解することはない。それ故に、溶液中にLASCol固形物が溶解することによる、当該溶液に対する物質成分の溶解度の変化を無視できる。さらに、複数の物質成分の一方をLASColと同時に同じ溶液に溶解させて凍結乾燥し、当該物質成分を含むLASCol固形物とし、次に、他方の物質成分を溶解させた適切な溶液に当該物質成分を含むLASCol固形物を浸すことにより、所望する複数の物質成分を含有するLASCol固形物を作製することができる。本実施例では、本発明のLASCol固形物に含まれる元素イオンを、LASCol固形物を破壊することなく定量した。なお、本発明において、含浸させる物質は、特に限定されず、任意の物質であり得る。
 〔実施例8.微小孔を有する円柱状LASCol固形物〕
 上記凍結乾燥した100mgのLASColを100mg/mLのコラーゲン濃度になるように超純水に添加し、上記円柱形の鋳型(直径:2.5mm~3.0mm、長さ:4mm~7mm)を、円柱形の鋳型(直径:3.5mm、長さ:2mm~5mm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、円柱状LASCol固形物を作製した。得られた円柱状LASCol固形物に、針棒(外径:200μm)を使用して3箇所の貫通孔を開け、観察試料とした。当該観察試料を、実態顕微鏡(SZ61、オリンパス株式会社製)で撮影した。結果を、図7に示す。
 図7(a)は、上部照明により撮影した、円柱状LASCol固形物の像であり、図7(b)は、下部照明により撮影した、円柱状LASCol固形物の像である。3箇所の貫通孔は、ほとんど変形することなく維持されていた。一方、実施例1と同様の方法で作製したコラーゲン濃度20mg/mLの円柱状アテロコラーゲン固形物(直径:3.5mm、長さ:2mm~5mm)は、貫通孔を開けることができなかった(図示せず)。その理由として、円柱状アテロコラーゲン固形物は、力学的強度が弱く、空隙が多いため、孔を開けても形が一定に保てないこと、または、孔が閉じてしまうことが挙げられる。本発明に係るコラーゲン固形物であれば、任意のサイズの微小孔、および、任意の個数の微小孔を形成することができる。
 〔実施例9.Ca2+含浸円柱状LASCol固形物のSEM-EDX分析-3〕
 100mgのLASColを、最終コラーゲン濃度50mg/mLとなるように10mMのCa2+、または20mMのCa2+を含む超純水に、および、最終コラーゲン濃度100mg/mLとなるように5mMのCa2+、または10mMのCa2+を含む超純水に、それぞれ添加した以外は、実施例6と同様の方法により、凍結乾燥後のLASCol固形物を円柱形の鋳型(直径:3.5mm、長さ:5~10mm)から取り出し、Ca2+のモル濃度が異なるCa2+含浸円柱状LASCol固形物とした。
 その後、実施例2と同様の方法にしたがって、走査型電子顕微鏡(SU3500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて、Ca2+のモル濃度が異なるCa2+含浸円柱状LASCol固形物の内部を撮影した(加速電圧:15kV、スポット強度:60)。さらに、SEM-EDX(Scanning Electron Microscope/Energy Dispersive X-ray Spetroscorp:走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置、OCTANE PRIME(型番)、エダックス・ジャパン株式会社製)を使用し、Ca2+のモル濃度が異なるCa2+含浸円柱状LASCol固形物に含まれている各元素イオンを検出した。その結果を、図8(a)~(h)、および、表4に示す。
 図8(a)は、10mMのCa2+含浸円柱状LASCol固形物(最終コラーゲン濃度50mg/mL)の像を示し、図8(b)は、図8(a)の画面全体領域におけるSEM-EDX分析結果を示す。図8(c)は、20mMのCa2+含浸円柱状LASCol固形物(最終コラーゲン濃度50mg/mL)の像を示し、図8(d)は、図8(c)の画面全体領域におけるSEM-EDXで分析結果を示す。図8(e)は、5mMのCa2+含浸円柱状LASCol固形物(最終コラーゲン濃度100mg/mL)の像を示し、図8(f)は、図8(e)の画面全体領域におけるSEM-EDXで分析結果を示す。図8(g)は、10mMのCa2+含浸円柱状LASCol固形物(最終コラーゲン濃度100mg/mL)の像を示し、図8(h)は、図8(g)の画面全体領域におけるSEM-EDXで分析結果を示す。
 表4は、図8にて検出された各元素イオンの強度を数値化したデータである。コラーゲン濃度50mg/mLの分解物を用いて作製したLASCol固形物において、CaK/NKは、Nの強度(NK)を分母、Caの強度(CaK)を分子にして計算した数値である。10mMのCa2+を用いた時のCaK/NKの値を1としたとき、20mMのCa2+を用いた時のCaK/NKの値は2.0であった。また、コラーゲン濃度100mg/mLの分解物を用いて作製したLASCol固形物においても、同様に、CaK/NKを算出した。そして、5mMのCa2+を用いた時のCaK/NKの値を1としたとき、10mMのCa2+を用いた時のCaK/NKの値は1.8であった。つまり、含浸させる溶媒中のCa2+のモル濃度を2倍にすると、Ca2+含浸円柱状LASCol固形物のCaK/NKの値は、ほぼ2倍になった。換言すれば、Ca2+含浸円柱状LASCol固形物を作製したときに使用した任意の物質(例えば、Ca2+)を含む超純水中の任意の物質(例えば、Ca2+)のモル比に比例して、LASCol固形物で検出されるCaの強度(量)が大きくなることが明らかになった。したがって、Ca2+含浸円柱状LASCol固形物には、LASCol固形物を製造するときの、超純水に含まれるCa2+のモル濃度に依存した量のCaが含まれていることが証明された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 図8(a)~(h)および表4より、本発明のLASCol固形物には、所望するCa2+量を増減させて包含させ得ることが明らかになった。つまり、凍結乾燥前に超純水に含浸させたい任意の物質成分を、任意の濃度で混合することにより、所望する物質成分を必要な量で含浸させたコラーゲン固形物を容易に作製することができる。
 〔実施例10.動物実験における骨再生能の評価〕
 〔10-1.移植用円柱状LASCol固形物の作製〕
 LASColを含む溶液を円柱状に成型する前に、フィルター濾過および凍結乾燥にて滅菌した。そして、滅菌後のLASColを含む溶液を、上記実施例5と同様の方法により、所定のコラーゲン濃度(50mg/mL、100mg/mL、および150mg/mL)のLASColを含む溶液を凍結乾燥させた円柱状LASCol固形物を作製した。当該円柱状LASCol固形物の形状は、後述する大腿骨1mmの欠損骨形状と同じである。そして、当該円柱状LASCol固形物を、後述する実施例に使用した。
 〔10-2.動物〕
 本実施例では、ラットを用いた。使用したすべてのラットは、25℃、12時間毎の明暗サイクル、病原菌フリー状態にて飼育し、飼料および水は自由に摂取させた。また、全ての動物実験は、神戸大学医学部の実験ガイドラインに従って行った。
 〔10-3.ラット大腿骨欠損モデルの作製〕
 ラットに全身麻酔を施し、大腿骨を露出させた後、大腿骨の近位および遠位にそれぞれ2本ずつねじ付きK-wireを挿入し、これらを創外固定器で連結した。その後、大腿骨の骨幹部中央において、小型ボーンソーを用いて幅1mmの骨の切除を行い、ラット大腿骨1mm欠損モデルを作製した。次いで、上記所定の濃度(50mg/mL、100mg/mL、および150mg/mL)のLASColを含む溶液を凍結乾燥させた円柱状LASCol固形物をラット大腿骨1mm欠損モデルにそれぞれ移植した後、手術した部位を縫合した。当該ラットを所定の時間飼育した後、骨の再生状況を評価した。
 なお、円柱状LASCol固形物を移植しない個体群(ここで、大腿骨1mm欠損個体群と称する、すなわちコントロール)は11例(n=11)、コラーゲン濃度50mg/mLのLASColを含む溶液を凍結乾燥させた円柱状LASCol固形物を移植した個体群(ここで、50mg/mL LASCol固形物移植個体群と称する)は21例(n=21)、コラーゲン濃度100mg/mLのLASColを含む溶液を凍結乾燥させた円柱状LASCol固形物を移植した個体群(ここで、100mg/mL LASCol固形物移植個体群と称する)は4例(n=4)、およびコラーゲン濃度150mg/mLのLASColを含む溶液を凍結乾燥させた円柱状LASCol固形物を移植した個体群(ここで150mg/mL LASCol固形物移植個体群と称する)は7例(n=7)、準備した。
 図9(a)は、ねじ付きK-wireを挿入して、ラット大腿骨4mm欠損モデルを作製している像である。(b)は、当該ラット大腿骨4mm欠損モデルに、上記円柱状LASCol固形物を移植している像である。
 〔実施例11.医用画像工学的評価〕
 〔11-1.Modified RUST scoreの評価基準〕
 後述するレントゲン画像に基づく骨癒合度合の評価は、Modified RUST scoreに準拠して行った。Whelan D. B. et al. The Journal of Trauma, 2010に記載のRust(radiographic union scale in tibial)fracture scoreの評価基準を一部改変した評価基準を、本試験に使用した(図10参照)。また、本試験では、score1~score5の5段階の評価基準を使用した。当該scoreでは、数が高い程、良好に骨癒合が進行していることを示す。本実施例では、レントゲン画像に基づくModified RUST scoreが、score4および5に評価された場合に、「骨癒合」が生じていると判定した。
 〔11-2.レントゲン画像評価〕
 円柱状LASCol固形物を移植直後、14日後、および28日後において、レントゲン装置(TOSHIBA製、Qpix VPX-30E)を用いて、上記個体群を撮影した。
 図11は、大腿骨1mm欠損個体群、およびLASCol固形物移植個体群において、移植手術直後、移植手術14日後、移植手術28日後に、レントゲン撮影した像である。
 表5は、移植手術28日後に、各群において、骨癒合が生じている個体数、および、骨癒合が生じている固体の比率を算出した結果を示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 図11および表5より、大腿骨1mm欠損個体群では、11例中、2例が骨癒合しており、骨癒合の比率は18%であった。50mg/mL LASCol固形物移植個体群では、21例中、11例が骨癒合しており、骨癒合の比率は52%であった。100mg/mL LASCol固形物移植個体群では、4例中、4例が骨癒合しており、骨癒合の比率は100%であった。150mg/mL LASCol固形物移植個体群では、7例中、7例が骨癒合しており、骨癒合の比率は100%であった。すなわち、50mg/mL、100mg/mL、および150mg/mLのLASCol固形物移植個体群は、移植手術28日後には骨癒合が進行していることがわかる。
 〔11-3.Modified RUST scoreによる骨癒合評価〕
 大腿骨1mm欠損個体群、およびLASCol固形物移植個体群において、移植手術28日後の上記レントゲン画像について、Modified RUST scoreによる骨癒合の評価を行った。各個体群の平均点を算出し、図12に示した。また、各個体群間の点数を統計学的に評価した(p=0.01)。
 図12より、大腿骨1mm欠損個体群では、Modified RUST scoreは、略2点であった。一方、50mg/mL、100mg/mL、および150mg/mLのLASCol固形物移植個体群では、大腿骨1mm欠損個体群と比較して、Modified RUST scoreが高かった。さらに、100mg/mL、および150mg/mLのLASCol固形物移植個体群では、50mg/mLのLASCol固形物移植個体群と比較して、Modified RUST scoreが高かった。
 〔11-4.μCT画像評価〕
 移植手術後14日後、および28日後に、μCT装置(R_mCT;Rigaku Mechatronics Co.、 Ltd.、Tokyo、Japan)にて、CT撮影(Computed Tomography、コンピューター断層撮影)を実施し、骨癒合の進行度合を評価した。なお、ラットは、頸椎脱臼により安楽死させCT撮影に供し、次いで、後述する組織学的評価にも供した。その結果を図13~17に示す。
 図13は、移植手術28日後の大腿骨1mm欠損個体群、およびLASCol固形物移植個体群におけるCTの像である。図13より、LASCol固形物移植個体群は、いずれのLASCol固体物の濃度においても、骨の癒合が認められた。特に100mg/mL、および150mg/mLのLASCol固形物移植個体群では、完全な骨癒合が認められた。
 図14は、100mg/mL LASCol固形物移植個体群において、移植手術28日後にCT撮影した像である。A~Dは、それぞれ4個体を示す。図14より、いずれのラットにおいても、完全な骨癒合が認められた。
 図15は、150mg/mL LASCol固形物移植個体群において、移植手術14日後にCT撮影した像である。A~Dは、7個体(n=7)中、代表的な4個体の像を示す。当該像の、特に矢印が示す場所において、骨の組織形成が進行しており、骨再生が進んでいることがわかる。
 図16は、150mg/mL LASCol固形物移植個体群において、移植手術28日後にCT撮影した像である。A~Dは、7個体(n=7)中、代表的な4個体の像を示した。当該像の、特に矢印が示す場所において、移植手術14日後(上記図15)と比較して、骨の組織形成が進行しており、完全な骨癒合が認められた。
 〔実施例12.組織学的評価〕
 〔12-1.大腿骨摘出〕
 上記〔11-4.μCT画像評価〕に供した移植手術14日後、および28日後の50mg/mL、100mg/mLおよび150mg/mL LASCol固形物移植個体群から大腿骨を摘出した。図17は、移植手術28日後、150mg/mL LASCol固形物移植個体群から摘出した大腿骨の像を示す。
 図17より、大腿骨1mm欠損させたラットに、150mg/mL LASCol固形物を移植した箇所において、移植手術28日後には骨癒合が認められた。
 〔12-2.Allen’s scoreの評価基準〕
 組織学的評価において、後述する染色画像における骨癒合の進行度合は、Allen’s scoreに準拠して評価した。当該評価基準は、H. L. Allen et al. Acta Orthopaedica Scandinavica, 1980に記載の評価基準に準拠した。当該骨癒合進行度(ここで、Allen’s scoreと称する)の評価基準を図18に示す。
 〔12-3.HE染色〕
 上記〔12-1.大腿骨摘出〕にて摘出した摘出した大腿骨の組織切片を作製し、当該組織切片に対して、HE染色(Hematoxylin Eosin Stain:ヘマトキシリン・エオシン染色)を実施した。HE染色において、ヘマトキシリンは武藤化学株式会社、製品名:Mayer’s Hematoxylin、品番:30002、エオシンはWako、製品名:Eosin Y、品番:058-00062をそれぞれの使用方法に準拠して組織切片を染色した。染色後の組織切片は、光学顕微鏡(Keyence Corporation、Osaka、Japan、製品名:BA-X700)にて観察した。
 図19は、移植手術14日後、および28日後における、50mg/mL LASCol固形物移植個体群における大腿骨の組織切片、および大腿骨1mm欠損個体群(コントロール)における大腿骨の組織切片をHE染色した像である。図19より、移植手術14日後において、50mg/mL LASCol固形物移植個体群の大腿骨では、骨癒合が始まっており、さらに移植手術28日後において、移植手術14日後よりもさらに骨癒合が進行していることがわかる。
 〔12-4.SO染色〕
 上記〔12-3.HE染色〕で使用した組織切片において、SO染色(Safranin O Stain:サフラニン O染色)を実施した。SO染色において、サフラニン Oは、CHROMA-GESELLSCHAFT製、製品名:Fastgreen FCF、品番:10720、オイルレッドは、東京化成工業株式会社製、製品名:Basic Red2、品番GB01-PALOを使用し、使用方法に準拠して当該切片を染色した。染色後の組織切片は、光学顕微鏡(Keyence Corporation、Osaka、Japan、製品名:BA-X700)にて観察した。その結果を図20、22~24に示す。
 図20は、移植手術14日後、および28日後における、50mg/mL LASCol固形物移植個体の大腿骨の組織切片、および大腿骨1mm欠損個体(コントロール)の大腿骨の組織切片をSO染色した図である。図20より、移植手術14日後のいずれの大腿骨組織切片においても、オレンジ色に染色された箇所(図中、矢印)で、軟骨組織の形成が観察され、Allen’s scoreで評価した結果、いずれもGrade2であった。移植手術28日後の50mg/mL LASCol固形物移植個体において、骨癒合が進行し、Allen’s scoreによる評価はGrade4であった。一方、コントロールは、移植手術28日後でも軟骨組織(図中、矢印)が観察され、Allen’s scoreの評価結果はGrade3であり、骨癒合は不完全であった。
 図21は、移植手術28日後における100mg/mL LASCol固形物移植個体群の4個体における大腿骨の組織切片を示す。図21より、100mg/mL LASCol固形物移植個体群では、全ての個体において軟骨組織は認められず、Allen’s scoreによる評価の結果は、全てGrade4であった。すなわち、ラットに100mg/mL LASCol固形物を移植すると、移植手術28日後には、完全に骨癒合することがわかった。
 図22は、移植手術28日後における150mg/mL LASCol固形物移植個体群4個体中の4個体の大腿骨切片を示す。図22より、150mg/mL LASCol固形物移植個体群では、Allen’s scoreによる評価の結果は一部の個体において軟骨組織が認められたものの、4個体中、3例において、Grade4であった。すなわち、ラットに150mg/mL LASCol固形物を移植すると、移植手術28日後には、骨癒合進行は有意に促進されることがわかった。
 また、図23は、移植手術28日後に、50mg/mL LASCol固形物移植個体群は10個体(n=10)、100mg/mL LASCol固形物移植個体群は4個体(n=4)、150mg/mL LASCol固形物移植個体群は4個体(n=4)、大腿骨1mm欠損個体群は7個体(コントロール、n=7)において上記SO染色をし、Allen’s scoreにより評価した結果である。そして、各濃度のLASCol固形物移植個体群および大腿骨1mm欠損個体群における点数を統計学的にそれぞれ評価した。図23より、移植手術28日後において、50mg/mL LASCol固形物移植個体群は、コントロール群に比べて、Allen’s scoreの点数が高く、骨癒合が進行している傾向があった(p=0.06)。さらに、100mg/mL LASCol固形物移植個体群、および150mg/mL LASCol固形物移植個体群は、コントロール群と比較して有意にAllen’s scoreの点数が高く、骨再生が進行していた(p<0.05)。
 〔実施例13.CaCO含有LASCol固形物〕
 発明者は、カルシウム、リンなど硬組織を構成する元素は、骨形成を促進させる働きを持ち、カルシウムイオンを徐放させる骨補填材を作製すれば、骨形成を促進させる働きが期待できると考えた。具体的に、カルシウム源を炭酸カルシウムとし、これをLASCol固形物に含有させることにより、生体内でカルシウムイオンを徐放でき、骨誘導能が更に上がることが期待できるのではないかと考えた。当該仮説の下、以下の試験を行った。
 最終コラーゲン濃度150mg/mLであり、10mM 炭酸カルシウム(CaCo)を含む溶液を用いた以外は、実施例6と同じ方法により円柱状LASCol固形物を作製した。鋳型としては、円柱状の鋳型(直径:3.5mm、長さ:1mm)を使用した。ここで、得られたLASCol固形物を「CaCo含浸150mg/mL LASCol固形物」と称する。
 ラットにおいて幅1mmの大腿骨を切除した以外は、実施例10と同じ方法により大腿骨1mm欠損個体群を作製した。CaCo含浸150mg/mL LASCol固形物移植個体群を4個体(n=4)準備し、当該ラットを所定の時間飼育した後、骨の再生状況を評価した。
 移植手術後14日後に、〔11-4.μCT画像評価〕と同じ方法により、μCT装置にてCT撮影をし、骨癒合の進行度合を評価した。その結果を図24に示す。
 図24は、移植手術14日後のCaCo含浸150mg/mL LASCol固形物移植個体群における代表的なCTの像を示す。図24より、移植手術14日後で旺盛な骨の組織形成が進行していた。例えば、図24では、上述した図15と比較して、骨の再生が明らかに促進されていることがわかる。
 これらの結果から、CaCO含有LASCol固形物は、骨誘導能に加えて、骨欠損部においてカルシウムイオンを徐放させる革新的な骨補填材として臨床応用が期待できる。
 〔実施例14.bFGD含有LASCol固形物〕
 線維芽細胞増殖因子(以下bFGFとする)は、未分化間葉系幹細胞を増殖および分化させることによって骨再生を促進することが知られている。発明者は、LASCol固形物は生体内に埋入されると分解され始めるので、bFGFなどの生理活性物質を放出させ続ける徐放材としての役割を具備した骨補填剤としての機能を有すると考えた。そこで、発明者は、遺伝子組み換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(商品名:フィブラスト、科研製薬)を含有させたLASCol固形物を作製し、一般的に自然経過では骨癒合しないとされるラット大腿骨critical欠損モデルを用いて、塩基性線維芽細胞増殖因子を含有させたLASCol固形物が骨再生に与える影響について検討した。
 最終コラーゲン濃度100mg/mLであり、12μgの繊維芽細胞増殖因子(bFGF、商品名:フィブラスト、科研製薬社製)を含む溶液を用いた以外は、実施例6と同じ方法により円柱状LASCol固形物を作製した。鋳型としては、円柱状の鋳型(直径:3.5mm、長さ:4mm)を使用した。ここで、得られたLASCol固形物を「bFGF含浸100mg/mL LASCol固形物」と称する。
 実施例10と同じ方法により大腿骨4mm欠損個体群を作製した。コントロール(骨の欠損箇所に何も移植しないもの)として1個体(n=1)および、bFGF含浸100mg/mL LASCol固形物移植個体として1個体(n=1)を準備し、当該ラットを所定の時間飼育した後、骨の再生状況を評価した。
 移植手術後35日後に、〔11-4.μCT画像評価〕と同じ方法により、μCT装置にてCT撮影をし、骨癒合の進行度合を評価した。その結果を図25に示す。
 図25は、移植手術35日後における、(a)bFGF含浸100mg/mL LASCol固形物移植個体、および(b)大腿骨4mm欠損個体(コントロール)のCTの像を示す。図25より、bFGF含浸100mg/mL LASCol固形物移植個体において、骨再生が認められたが、大腿骨4mm欠損個体において骨再生が認められなかった。
 したがって、図24~25の結果より、CaCO、またはbFGF含浸LASCol固形物は、細胞移植を伴わない、新規な骨再生用材料として臨床応用が期待できることが明らかになった。
 本発明は、材料分野(例えば、骨疾患治療分野、または、細胞培養分野)に広く利用することができる。より具体的に、骨折、骨腫瘍、および骨髄炎における治療、あるいは、in vitroにおける細胞培養に広く利用することができる。

Claims (9)

  1.  コラーゲン-システインプロテアーゼ分解物、または、アテロコラーゲン-システインプロテアーゼ分解物を含む、コラーゲン固形物であって、
     上記コラーゲン固形物の密度が、50mg/cm以上である、コラーゲン固形物。
  2.  上記コラーゲン固形物の接線係数が、90kPa以上である、請求項1に記載のコラーゲン固形物。
  3.  任意の物質を更に含む、請求項1または2に記載のコラーゲン固形物。
  4.  請求項1~3の何れか1項に記載のコラーゲン固形物を含む、生体材料。
  5.  請求項1~3の何れか1項に記載のコラーゲン固形物を含む、生体外材料。
  6.  請求項1~3の何れか1項に記載のコラーゲン固形物を含む、骨再生用材料。
  7.  請求項1~3の何れか1項に記載のコラーゲン固形物の製造方法であって、
     システインプロテアーゼによって、コラーゲンまたはアテロコラーゲンを分解する分解工程と、
     上記分解工程により得られた、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物から溶媒を除去する除去工程と、を有する、コラーゲン固形物の製造方法。
  8.  上記除去工程では、上記分解工程により得られた、コラーゲン分解物またはアテロコラーゲン分解物に、任意の物質を加えた後で、当該混合物から溶媒を除去する、請求項7に記載のコラーゲン固形物の製造方法。
  9.  上記除去工程では、当該除去工程にて得られたコラーゲン固形物に任意の物質を吸着させる、請求項7に記載のコラーゲン固形物の製造方法。
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