WO2019239534A1 - 射出成形装置 - Google Patents

Abstract

金型の位置合わせが熟練を要することなく簡単に行え、金型を固定するまでの時間を短縮でき、しかも、金型の誤装着を防止して金型の破損を未然に防止できる射出成形装置を提供する。射出成形装置は、上型ベースの下面側に設けられ、上型を着脱自在に支持する上型支持機構を備える。上型支持機構は、上型レール部材と、上型挿入方向先端部が突き当たる上型ストッパ部材と、上型を上型締め具の操作によって挟み込むクランプ部材とを有する。上型締め具は、上型ベースの上方又は側方から操作可能に配置され、上型を上型ベースに固定又は固定解除する。

Description

射出成形装置

　本発明は、上型と下型とが上下に対面して取り付けられた射出成形装置に関する。

　一般に、スライドファスナーの製造においては、連続スライドファスナーチェーン（以下、単にチェーンと称する）を連続搬送し、搬送途中に設けられた複数の加工部で、それぞれ各種の加工が施される。そして、チェーンは最終的に所定長さに切断されてスライドファスナーの製品となる。
　チェーンには、エレメント（務歯）の取り付けられていないスペース部が間欠的に形成され、このスペース部の端部に、上止や下止等の止具、又は蝶棒、箱棒、及び箱からなる開具、等の各種の樹脂成形体が射出成形装置により設けられる。

　射出成形装置は、上型と下型とをチェーンを挟んで重ね合わせ、樹脂材をキャビティ内に供給することで、樹脂成形体をチェーン表面に形成する。上型と下型は、射出成形装置に設けられたベースに、ボルト等の締結部材によって固定される。このような射出成形装置等に用いられる金型固定構造が特許文献１～４に示されている。

　特許文献１には、金型取り付け金具のねじ部にテーパ部を設け、ボルトの挿入性を改善したと記載される。特許文献２は、金型部材をボルトで固定側に固定する際、一部に切欠き部を設けたクランプディスクを介して固定する構成となっている。切欠き部が金型部材と対面する位置では金型部材が着脱可能となり、対面しない位置では金型部材が強固に保持固定されると記載される。特許文献３には、金型を固定するクランプ部材の押圧部を曲面形状にして、金型の位置ずれを防止しつつ着脱可能にした構成となっている。特許文献４には、水平方向に対向配置された金型を、レバーの操作により着脱可能にした構成が記載される。

日本国実開昭５６－１２２５２１号公報 日本国実公平２－２１１４８号公報 日本国実開平１－６０７２５号公報 国際公開第９５／１５２４７号

　金型を着脱可能に固定する金型固定機構は、上記各特許文献１～４のように種々提案されているが。例えば、上方方向に並んで配置される上型、下型においては、各金型を金型固定機構へ上下方向に挿入し、挿入した金型を下側から上側に向けてボルトにより固定している。
　しかし、上型を金型固定機構に固定するには、金型固定機構に上型を下方から上方に向けて挿入するため、作業者は上型の挿入位置が視認しにくい。ボルトの取り付けの際も同様に、ボルトの挿入位置が視認しにくく、作業性が著しく低下した。また、金型の組み付け後には、型位置の微調整を行う必要があり、その作業には熟練を要していた。そのため、金型の位置合わせには時間を要し、熟練者しか作業を行えず、段取り替え作業の短縮を困難にしていた。
　また、金型固定機構には規定の金型以外の金型であっても取り付けが可能なものがあり、間違った上型と下型との組み合わせで装着できてしまう。その場合には、金型を破損させる事態を生じかねない。

　本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、金型の位置合わせが熟練を要することなく簡単に行え、金型を固定するまでの時間を短縮でき、しかも、金型の誤装着を防止して金型の破損を未然に防止できる射出成形装置を提供することにある。

　本発明は下記構成からなる。
（１）　上型を支持する上型ベースと、下型を支持する下型ベースとが、前記上型と前記下型とを上下に対面させて基台に取り付けられた射出成形装置であって、
　前記上型ベースの下面側に設けられ、前記上型を着脱自在に支持する上型支持機構を備え、
　前記上型支持機構は、
　前記上型を挿入可能に支持する上型レール部材と
　前記上型レール部材の前記上型の挿入方向先方に配置され、前記上型の挿入方向先端部が突き当たる上型ストッパ部材と、
　前記上型レール部材に支持された前記上型を、上型締め具の操作によって挟み込むクランプ部材と、
を有し、
　前記上型締め具は、前記上型ベースの上方又は側方から操作可能に配置され、前記操作により前記上型を前記上型ベースに固定又は固定解除する、射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、上型を上型支持機構に挿入して、上型ストッパ部材を上型締め具によって締めることで、上型を上型ベースに簡単に固定できる。

（２）　前記上型締め具は、前記上型ベースを上下方向に貫通して前記クランプ部材に接続される固定ボルトである、（１）に記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、上型ベースの上側から固定ボルトを締め付け又は緩めることによって、クランプ部材を動作させて、上型を作業性よく上型ベースに固定又は固定解除できる。

（３）　１本の前記上型締め具のみによって、前記上型が前記上型ベースに固定又は固定解除される、（１）又は（２）に記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、１本の固定ボルトによる簡単な作業で上型の固定と固定解除を行える。

（４）　前記クランプ部材は、前記上型の挿入方向に直交する方向の両脇側に設けられ、前記上型締め具の前記操作によって互いに接近又は離反する、（１）又は（２）に記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、一対のクランプにより上型の両脇を締め付けることで、上型を安定して固定できる。

（５）　前記上型締め具は、前記上型レール部材に支持された前記上型を前記上型ストッパ部材との間で挟み込んで固定する上型固定レバーである（１）又は（２）に記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、上型固定レバーの操作によって簡単に上型を固定できる。

（６）　前記上型レール部材は、前記上型の挿入方向に直交する方向の両脇部をそれぞれ支持する、（１）～（５）のいずれか１つに記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、上型が一対のレールによって両脇部が支持されつつ挿入されため、移動時にがたつきが生じにくく、安定した移動動作が行える。

（７）　前記下型ベースに前記下型を着脱自在に支持する下型支持機構を備え、
　前記下型支持機構は、
　前記下型を挿入可能に支持する下型レール部材と
　前記下型レール部材の前記下型の挿入方向先方に配置され、前記下型の挿入方向先端部が突き当たる下型ストッパ部材と、
　前記下型レール部材に支持された前記下型を、下型締め具の操作によって挟み込む下型クランプ部材と、
を有し、
　前記下型締め具は、前記下型ベースの上方又は側方から操作可能に配置され、前記下型を前記下型ベースに固定又は固定解除する、（１）～（６）のいずれか１つに記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、下型を簡単な操作で正確に下型ベースに固定できる。

（８）　前記下型締め具は、前記下型レール部材に支持された前記下型を前記下型ストッパ部材との間で挟み込んで固定する下型固定レバーである（７）に記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、下型固定レバーの操作によって簡単に下型を固定できる。

（９）前記下型レール部材は、前記下型の挿入方向に直交する方向の両脇部をそれぞれ支持する、（７）又は（８）に記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、下型が下型レール部材によって両脇部が支持されながら挿入されるため、挿入時にがたつきが生じにくく、安定した移動動作が行える。

（１０）　前記上型と前記下型は、スライドファスナーの止具又は開具を成形する金型である（１）～（９）のいずれか１つに記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、スライドファスナーの止具又は開具の成形において、段取り替えを簡単かつ短時間で行える。

（１１）　前記上型と前記下型の少なくとも一方には、ケーブルを介して金型側コネクタが接続され、
　前記基台は、前記金型側コネクタと係合する基台側コネクタを備える、（１０）に記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、金型側コネクタと基台側コネクタとの組み合わせに応じて、取り付ける金型が正しい金型かを簡単に識別できる。これにより、金型の誤装着を防止して、金型の破損を未然に防止できる。

（１２）　前記金型側コネクタは、成形される前記止具又は開具の種別毎にそれぞれ異なる形状を有する（１１）に記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、上型や下型を止具又は開具の種別毎に識別できる。

（１３）　前記基台側コネクタは、適用可能な金型に接続された金型側コネクタにのみ係合可能な形状を有する（１２）に記載の射出成形装置。
　この射出成形装置によれば、使用できない金型で成形されることを未然に防止できる。

　本発明によれば、金型の位置合わせが熟練を要することなく簡単に行え、金型を固定するまでの時間を短縮できる。また、金型の誤装着を防止して金型の破損を未然に防止できる。

スライドファスナー製造ラインに設けられる射出成形装置の概略構成図である。 射出成形装置の成形部の斜視図である。 図２に示す射出成形装置の成形部を背面側から見た斜視図である。 図３に示す成形部をＶ１方向から見た成形部の矢視図である。 （Ａ）は上型ユニットの上面側の斜視図、（Ｂ）は上型ユニットの下面側の斜視図である。 図４に示す上型ベースを下面側から見た斜視図である。 図６に示す上型ユニットを上型支持機構に挿入した状態を示す斜視図である。 図７のＰ１－Ｐ１線の概略断面図である。 図６に示す上型ベースと上型支持機構の分解斜視図である。 上型ベースに固定された上型レール部材の拡大斜視図である。 図６に示すＰ２－Ｐ２線の断面図である。 下型ベースと下型ユニットとの分解斜視図である。 下型ユニットを下型ベースに固定した状態を示す斜視図である。 ロック機構の一例を示す構成図である。 射出成形装置による射出成形を経て作製されたスライドファスナーの製品の一例を示す平面図である。 （Ａ）は射出成形装置により開具を射出成形した様子を示す連続ファスナーチェーンの概略平面図、（Ｂ）は下止を射出成形した様子を示す連続ファスナーチェーンの概略平面図、（Ｃ）は蝶棒を射出成形した様子を示す連続ファスナーチェーンの概略平面図である。

　以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
　図１はスライドファスナー製造ラインに設けられる射出成形装置の概略構成図である。
　本明細書において、連続ファスナーチェーン及びスライドファスナーに関しては、スライドファスナー製造ラインによる連続ファスナーチェーンの搬送方向に従い、搬送路の始端側（図１の左側）を「上流側」、搬送路の終端側（図１の右側）を「下流側」と呼称する。また、射出成形装置に関しては、連続ファスナーチェーンの搬送方向に直交する手前側（図１の紙面垂直方向の手前側）を「前側」又は「前方」、前側の反対側を「奥側」と呼称する。また、図１の上下（鉛直）方向をＺ方向、Ｚ方向に直交する左右方向（搬送方向）をＸ方向、Ｘ方向及びＺ方向に直交する紙面垂直方向をＹ方向とする。

　射出成形装置１００には、基台１１上に、連続ファスナーチェーン１３の搬送方向上流側から順に、チェーン位置決め部１５、射出成形する成形部１７、成形後の連続ファスナーチェーン１３を下流側に向けて牽引するチェーン駆動部１９が配置される。成形部１７の上方には、射出成形材料である樹脂材を供給する樹脂供給部２１が配置される。また、基台１１には、詳細を後述するコネクタ接続部２３が設けられる。

　樹脂供給部２１は、連続供給される樹脂チップを溶融する溶融樹脂形成部２５と、溶融樹脂形成部２５に接続されるシリンダ２６と、シリンダ２６の先端に設けたノズル２７と、シリンダ２６を昇降駆動する不図示のノズル移動機構と有する。シリンダ２６とノズル２７は、ノズル移動機構によって成形部１７の近傍に移動され、成形部１７に溶融樹脂を供給する。

　図２は射出成形装置１００の成形部１７の斜視図であり、図３は図２に示す射出成形装置１００の成形部１７を背面側から見た斜視図である。
　成形部１７は、図１に示す基台１１に立設された一対の支柱３１と、上型ベース３３と、下型ベース３５と、上型ユニット３７と、下型ユニット３９とを有する。

　上型ベース３３は、一対の支柱３１の先端部に固定された板状部材であって、樹脂供給部２１（図１参照）からの溶融樹脂が供給される樹脂受け部４１を有する。上型ベース３３の下面側には、側方（Ｘ方向）から水平に挿入される上型ユニット３７が支持される。

　下型ベース３５は、一対の支柱３１に昇降可能に支持され、上面側に側方（Ｘ方向）から水平に挿入される下型ユニット３９が、上型ユニット３７に対面して支持される。下型ベース３５は、不図示の昇降駆動部によって昇降駆動され、下型ユニット３９を上型ユニット３７に重ね合わせてキャビティを画成する。このキャビティに溶融樹脂が供給、加圧され、射出成形するようになっている。

　図４は図３に示す成形部１７をＶ１方向から見た成形部１７の矢視図である。
　上型ベース３３の下面側には上型支持機構４３が固定される。上型支持機構４３は、Ｘ方向に挿入される上型ユニット３７を上型ベース３３に着脱自在に固定する。下型ベース３５の上面側には下型支持機構４５が固定される。下型支持機構４５は、詳細を後述するが、Ｘ方向に挿入される下型ユニット３９を下型ベース３５に着脱自在に固定する。下型ユニット３９には一対のガイドピン５５が立設される。一対のガイドピン５５は、下型ベース３５の上昇動作によって、上型ユニット３７に形成されたガイド孔５７に挿入されるようになっている。

　図５（Ａ）は上型ユニット３７の上面側の斜視図、図５（Ｂ）は上型ユニット３７の下面側の斜視図である。
　上型ユニット（上型）３７は、上型本体４７と、上型本体４７を固定する上型固定部材４９と、上型固定部材４９に取り付けられた操作板５１とを有する。また、上型ユニット３７には、上型本体４７の種別を識別するための上型側コネクタ（金型側コネクタ）６５がケーブル６７を介して接続される。なお、本構成では上型本体４７と上型固定部材４９とが別体で形成されているが、上型ユニット３７自体が一体の金型であってもよい。

　上型固定部材４９は、上型本体４７が固定される挿入部４９ａと、挿入部４９ａより広幅に形成された基端部４９ｂを有する。挿入部４９ａは、矩形板状であって、挿入方向先端部の先端面６１と、挿入方向に延びる一対の側面６３とを有し、上面５９が平坦面に形成される。一対の側面６３は、それぞれ挿入方向に沿った段付きによって、外側側面６３ａと内側側面６３ｂ、及び外側側面６３ａと内側側面６３ｂを接続する段付き面６３ｃが形成される。つまり、挿入部４９ａの両側端部は、内側側面６３ｂから外側へ延出される鍔部を有し、鍔部の延出先端面が外側側面６３ａとなる。

　上型本体４７は、スライドファスナーの上止や下止、開具等を成形する型部４７ａ側とは反対の背面が、上型固定部材４９に当接されて、不図示のボルトによって固定される。

　挿入部４９ａには、図２，図３に示す上型ベース３３の樹脂受け部４１に対応する位置に図５に示す開口５３が形成される。また、基端部４９ｂには、図４に示す下型ユニット３９に立設された一対のガイドピン５５が挿入される一対のガイド孔５７が形成される。

　操作板５１は、基端部４９ｂの挿入部４９ａの反対側で、上型ユニット３７の挿入方向逆向きに延出される、これにより、作業者が上型ユニット３７を上型ベース３３に装着する際に、上型ユニット３７を上型ベース３３の外側で安定して把持でき、挿入操作を容易にする。

　図６は図４に示す上型ベース３３を下面側から見た斜視図であって、上型ユニット３７を上型支持機構４３に挿入する様子を上下反転させて示している。
　上型支持機構４３は、一対の上型レール部材７１Ａ，７１Ｂと、上型ストッパ部材７３と、一対のクランプ部材７５Ａ，７５Ｂとを有する。

　一対の上型レール部材７１Ａ，７１Ｂは、上型ユニット３７の挿入部４９ａのＹ方向幅分を離間して上型ベース３３の下面に固定される。また、上型レール部材７１Ａ，７１Ｂには、互いに対向する側面７７に鍔部が形成される。側面７７は、上型ユニット３７の挿入部４９ａにおける側面６３の鍔部と係合して、上型ユニット３７を水平方向に挿入可能に支持する。

　つまり、上型レール部材７１Ａ，７１Ｂの各側面７７は、内側側面７７ａと、この内側側面７７ａからＹ方向に凹んで形成された外側側面７７ｂと、内側側面７７ａと外側側面７７ｂとを接続する段付き面７７ｃとを有する。

　上型ストッパ部材７３は、上型レール部材７１Ａ，７１Ｂの上型ユニット３７の挿入方向先方に配置される。

　図７は図６に示す上型ユニット３７を上型支持機構４３に挿入した状態を示す斜視図、図８は図７のＰ１－Ｐ１線の概略断面図である。
　図７に示すように、上型ユニット３７は、作業者の操作によって上型支持機構４３へ水平方向（Ｘ方向）に沿って挿入され、上型固定部材４９の先端面６１が上型ストッパ部材７３に突き当てられる。これにより、上型ユニット３７はＸ方向に位置決めされる。

　この状態では、図８に示す上型固定部材４９における、上型ユニット３７の挿入方向に直交する方向の両脇部に形成された段付き面６３ｃが、上型レール部材７１Ａ，７１Ｂの段付き面７７ｃに支持される。また、上型固定部材４９の内側側面６３ｂが、上型レール部材７１Ａ，７１Ｂの内側側面７７ａに当接して、上型ユニット３７がＹ方向に位置決めされる。

　そして、Ｘ、Ｙ方向に位置決めされた上型ユニット３７は、図７のＹ方向両脇側に設けられたクランプ部材７５Ａ，７５Ｂによって挟み込まれ、上型支持機構４３に固定される。

　次に、クランプ部材７５Ａ，７５Ｂにより上型ユニット３７を挟み込む機構について説明する。
　図９は図６に示す上型ベース３３と上型支持機構４３の分解斜視図である。
　上型レール部材７１Ａ，７１Ｂ、及び上型ストッパ部材７３は、上型ベース３３の下面に固定ボルト８３により固定される。上型レール部材７１Ａ，７１Ｂには、クランプ部材７５Ａ，７５Ｂを収容する凹溝８１Ａ，８１Ｂが形成される。

　クランプ部材７５Ａ，７５Ｂは、内周にねじ部を有する締付孔８５と、固定孔８７とが形成される。固定孔８７に挿入される固定ボルト８９は、上型レール部材７１Ａ，７１Ｂの固定孔９１に螺合することでクランプ部材７５Ａ，７５Ｂを凹溝８１Ａ，８１Ｂに支持させる。また、締付孔８５には、上型ベース３３の貫通孔９３と、上型レール部材７１Ａ，７１Ｂの貫通孔９５とを挿通された固定ボルト９７の先端が、それぞれ螺合される。固定ボルト９７には、クランプ部材７５Ａ，７５Ｂと凹溝８１Ａ，８１Ｂと間に、コイルばね９９が介装されている。

　図１０は上型ベースに固定された上型レール部材７１Ａ，７１Ｂの拡大斜視図である。
　上型レール部材７１Ａ，７１Ｂの凹溝８１Ａ，８１Ｂは、固定孔９１の部分の溝底面８１ａよりも、貫通孔９５の部分の溝底面８１ｂが、溝深さが深く形成されている。

　図１１は図６に示すＰ２－Ｐ２線の断面図である。
　クランプ部材７５Ａ，７５Ｂは、Ｙ方向の一端が固定ボルト８９により上型レール部材７１Ａ，７１Ｂに固定され、Ｙ方向の他端が上型締め具である固定ボルト９７により支持される。

　クランプ部材７５Ａ，７５Ｂは、固定ボルト９７側の他端において、コイルばね９９により上型ベース３３から離反する方向に付勢される。そして、クランプ部材７５Ａ，７５Ｂは、固定ボルト９７による締め付けによって、図中二点鎖線で示すように、上方（図中矢印Ｔ方向）に向けて僅かに傾斜可能にされている。

　クランプ部材７５Ａ，７５Ｂの上方に向けた変位は、Ｙ方向に関して互いに接近する向きに突出させる（図中矢印Δｔ）力を生じさせる。この力は、クランプ部材７５Ａ，７５Ｂの突出先端面７５ａが、図６に示す上型ユニット３７の上型固定部材４９の側面６３（内側側面６３ｂ）をＹ方向に締め付ける力となる。

　つまり、図６に示すように、上型ユニット３７は、上型支持機構４３の一対の上型レール部材７１Ａ，７１Ｂと、一対のクランプ部材７５Ａ，７５Ｂとの間にＸ方向に沿って挿入される。そして、図７に示すように、先端面６１が上型ストッパ部材７３に突き当てられる。この状態で、図１１に示す一対の固定ボルト９７を上型ベース３３の上面側から締め付けることで、クランプ部材７５Ａ，７５Ｂが図７に示す上型ユニット３７を挟み込む。これにより、上型ユニット３７は、上型ベース３３に対して、Ｘ方向、Ｙ方向、及びＺ方向に位置決めされる。

　なお、上型ユニット３７を上型ベース３３に固定する際は、上型ユニット３７の取り付け前又は取り付け後に、図１に示す基台１１に設けられたコネクタ接続部２３の基台側コネクタ６９に接続する。このコネクタ接続についての詳細は後述する。

　次に、図４に示す下型ユニット３９を下型ベース３５に固定する機構について説明する。
　図１２は下型ベース３５と下型ユニット３９との分解斜視図、図１３は下型ユニット３９を下型ベース３５に固定した状態を示す斜視図である。

　支柱３１に昇降可能に支持された下型ベース３５は、その上面３５ａが平坦面であり、上面３５ａに下型支持機構４５が固定される。下型支持機構４５には、側方（Ｘ方向）から水平に挿入される下型ユニット３９が支持される。

　下型ユニット（下型）３９は、下型本体１１１と、下型本体１１１を固定する下型固定部材１１３とを有する。また、下型ユニット３９には、下型本体１１１の種別を識別するための下型側コネクタ（金型側コネクタ）１１５がケーブル１１７を介して接続される。なお、本構成では下型本体１１１と下型固定部材１１３とが別体で形成されているが、下型ユニット３９自体が一体の金型であってもよい。

　図１２に示す下型固定部材１１３は、下型本体１１１が固定される台座部１１３ａと、台座部１１３ａの下部に固定され、台座部１１３ａより広幅に形成された支持板部１１３ｂを有する。支持板部１１３ｂは、矩形板状であって、挿入方向先端の先端面１２１と、挿入方向に延びる一対の側面１２３とを有し、下面１２５が平坦面に形成される。

　下型本体１１１は、上型本体４７(図５(Ｂ)参照)に対応するスライドファスナーの上止や下止、開具等を成形する型部１１１ａの背面が、下型固定部材１１３に当接されて、不図示のボルトにより固定される。

　下型支持機構４５は、一対の下型レール部材１２７Ａ，１２７Ｂと、下型ストッパ部材１２９と、下型クランプ部材である下型固定レバー１３１と、下型締め具であるロック機構１４１とを有する。

　一対の下型レール部材１２７Ａ，１２７Ｂは、下型ユニット３９の支持板部１１３ｂのＹ方向幅分を離間させて、下型ベース３５の上面に固定される。下型レール部材１２７Ａ，１２７Ｂは、互いに対向する側面１３３に下型ユニット３９の支持板部１１３ｂにおける側面１２３が係合して、下型ユニット３９を水平方向へ挿入可能に支持する。

　下型ストッパ部材１２９は、下型ベース３５から垂直に立設された壁部１２９ａと、壁部１２９ａの上部に下型ユニット３９の挿入側へ向けて延出された鍔部１２９ｂを有する。図示例では、鍔部１２９ｂを一部切り欠いて壁部１２９ａが示されている。

　図１２に示すように、下型ユニット３９は、作業者の操作によって下型支持機構４５へＸ方向に挿入され、下型固定部材１１３の支持板部１１３ｂにおける先端面１２１が下型ストッパ部材１２９の壁部１２９ａに突き当てられる。これにより、下型ユニット３９はＸ方向に位置決めされる。

　この状態では、下型固定部材１１３の側面１２３が、下型レール部材１２７Ａ，１２７Ｂの側面１３３に当接して、下型ユニット３９がＹ方向に位置決めされる。

　そして、Ｘ、Ｙ方向に位置決めされた下型ユニット３９は、下型固定レバー１３１によって下型ストッパ部材１２９との間に挟み込まれ、下型支持機構４５に固定される。

　下型固定レバー１３１は、一端部１３１ａが、下型レール部材１２７Ｂの下型ユニット３９挿入側の端部で、回転可能に軸支される。また、下型固定レバー１３１の他端部１３１ｂは、下型レール部材１２７Ａの下型ユニット３９挿入側の端部に設けたロック機構１４１により固定される。

　図１４はロック機構１４１の一例を示す構成図である。
　ロック機構１４１は、下型固定レバー１３１が下型ユニット３９を下型ストッパ部材１２９に押し付けて、下型ユニット３９を固定できるものであればその構成は任意である。
　一例として示すロック機構１４１は、ロック片１４３と、ロック片１４３を下型レール部材１２７Ａの端部で回転自在に軸支するピン１４５とを有する。ロック片１４３には、摘み１４７が板厚方向に貫通して設けられる。

　作業者は、ロック片１４３を図中点線で示すように上方へ持ち上げ、下型固定レバー１３１を回転操作して、下型固定レバー１３１の他端部１３１ｂを、下型レール部材１２７Ａに形成された切欠部１２７ａに差し込む。

　そして、下型固定レバー１３１の他端部１３１ｂが、切欠部１２７ａに差し込まれた後、ロック片１４３を図中実線で示すように下方に戻す。すると、ロック片１４３は、下型固定レバー１３１の側面１３１ｃに当接ながら、摘み１４７が下型固定レバー１３１に形成された突起部１４９に接触するまで回転する。これにより、下型固定レバー１３１はロック片１４３によって回転止めされる。

　ロック機構１４１は、上記構成以外にも、下型固定レバー１３１にカバーボルトを設け、下型固定レバー１３１の閉状態で下型レール部材１２７Ａに形成された雌ねじ孔にカバーボルトを締結する構成であってもよい。いずれの場合でも、簡単な締め付け作業によって図１３に示す下型ユニット３９を下型支持機構４５に固定できる。

　また、下型ユニット３９を下型支持機構４５に固定する際は、下型ユニット３９の取り付け前又は取り付け後に、コネクタ接続部２３の基台側コネクタ６９に接続する。

　上記構成では、上型ユニット３７と下型ユニット３９の挿入方向は同一方向とされており、同じ側から挿入することで作業性を高めている。また、これに限らず、図２に示す上型ユニット３７と下型ユニット３９の挿入方向を互いに異ならせてもよい。その場合、ユニット固定のための部材の設置スペースが広くなり、設計自由度の高い構成にできる。

　図１５は射出成形装置による射出成形を経て作製されたスライドファスナーの製品の一例を示す平面図である。図１６（Ａ）は射出成形装置１００（図１参照、以降も同様）により開具１５９を射出成形した様子を示す連続ファスナーチェーン１３の概略平面図である。
　図１６（Ａ）に示す連続ファスナーチェーン１３は、スライドファスナー製造ラインにおいて種々の加工が施された後、射出成形装置１００により射出成形が施される。そして、更なる加工の後、図中Ｐ３－Ｐ３線で切断されて、図１５に示すスライドファスナーの製品が得られる。

　図１５に一例として示すスライドファスナー１５１は、一対の長尺な連続ファスナーテープ１５３の互いに対向するテープ側縁部に沿って、それぞれファスナーエレメント列１５５が設けられる。ファスナーエレメント列１５５の一端部には、上止１５７が設けられ、他端部には開具１５９が設けられる。また、一対のファスナーエレメント列１５５は、スライダー１６１によって開閉自在となっている。

　開具１５９は、箱１５９ａと箱棒１５９ｂが一体に形成され、蝶棒１５９ｃの先端（図１５の下側端部）が箱１５９ａ内に挿入される。また、開具１５９は、連続ファスナーテープ１５３に溶着された補強フィルム１６３の表面に形成される。

　これら箱１５９ａ、箱棒１５９ｂ、蝶棒１５９ｃが、射出成形装置１００の上型ユニット３７の上型本体４７と、下型ユニット３９の下型本体１１１により画成されるキャビティで射出成形される。

　図示例は、開具１５９の射出成形の例であるが、本構成の射出成形装置１００は開具１５９の成形に限らない。例えば、図１６（Ｂ）に示すように、下止１６５の成形に用いてもよく、図１６（Ｃ）に示すように、蝶棒１６７，１６９の成形に用いてもよい。

　なお、図示例では樹脂を射出成形したエレメントを備えるファスナーを例示しているが、これに限らず、コイルファスナー等、他の種類のファスナーであってもよい。

　上記構成の射出成形装置１００によれば、図２に示すように上方方向に並んで配置される上型ユニット３７、下型ユニット３９において、上型ユニット３７を射出成形装置１００に取り付ける際、上型ユニット３７を上下方向に直交する側方から水平に挿入する。そして、上方から操作可能に設けられた固定ボルト８９を締め付けて、射出成形装置１００に固定する。この手順によれば、従前のように、上型ユニット３７を射出成形装置１００の下側から上側に向けて装着する等、作業者の視認性が低下した状態で作業することがない。よって、上型ユニット３７の段取り替え作業が繁雑とならず、作業性も良好になるため、金型の位置合わせが熟練を要することなく簡単に行え、金型を固定するまでの時間を短縮できる。

　また、本構成の射出成形装置１００によれば、図２に示す上型ユニット３７が、上方からの固定ボルト９７の締め付けによって射出成形装置１００に固定され、固定ボルト９７を緩めることで固定解除される。固定ボルト９７は６０度程度の回転操作によって固定可能であり、固定ボルト９７の抜き差しは不要である。ここでいう、上方からの固定ボルト９７の締め付けとは、固定ボルト９７の頭部と軸部のうち、頭部が上方に配置され、頭部上方から六角穴に六角レンチ等の工具を係合させて回転操作することを意味する。

　また、本構成では一対の固定ボルト９７を設けているが、上型ユニット３７の着脱には、いずれか一方の固定ボルト９７のみ操作すればよい。つまり、一本の固定ボルト９７のみの締め付けと緩めによって、上型ユニット３７が上型支持機構４３Ａに固定又は固定解除できる。よって、本構成では、上型ユニット３７の交換がワンタッチで、簡単かつ速やかに行えるようになり、段取り替え時間を更に短縮できる。更に、図６に示す上述した上型支持機構４３は、一対のクランプ部材７５Ａ，７５Ｂにより上型ユニット３７を挟み込み、固定していたが、いずれか一方のクランプ部材のみ設けた構成としてもよい。

　上型ユニット３７を射出成形装置１００に挿入する方向は、本構成例では、Ｘ方向であるが、これに限らず、作業者の手前側から奥側に向けたＹ方向であってもよい。また、固定ボルト９７による締め付けは、本構成では上方から行っているが、これに限らず、側方、例えば、前方、斜め前方、斜め上方から行う構成としてもよい。上下方向から締め付けの方向を変更するには、例えばウォームギヤやかさ歯車等の適宜なギヤを組み合わせたり、支点回りに回転する部材を組み合わせたりすることで実現できる。

　また、上型ユニット３７は、下型ユニット３９の下型固定レバー１３１とロック機構１４１により固定する構成と同様に、上型固定レバーで固定する構成としてもよい。上型ユニット３７を上型固定レバーにより射出成形装置１００に固定する場合、工具を用いることなく、簡単な作業により着脱が行える。

　上述した上型ユニット３７には上型側コネクタ６５（図６参照）、下型ユニット３９には下型側コネクタ１１５（図１２参照）が接続される。
　上型側コネクタ６５は、上型本体４７の種別に応じたコネクタ種類（異なる形状のコネクタ）に設定され、上型本体４７の個体が識別可能になっている。下型側コネクタ１１５も同様に、下型本体１１１の種別に応じたコネクタ種類に設定され、下型本体１１１の個体が識別可能になっている。

　射出成形装置１００の基台１１に設けた基台側コネクタ６９は、この射出成形装置１００に適用可能な上型ユニット３７及び下型ユニット３９のみが装着されるようになっている。即ち、適用が可能な上型本体４７（図５（Ｂ）参照）に対応する上型側コネクタ６５（図５（Ａ）参照）、適用が可能な下型本体１１１に対応する下型側コネクタ１１５のみが基台側コネクタ６９と係合可能となり、他のコネクタは係合不能となっている。

　このように、上型側コネクタ６５、下型側コネクタ１１５を、上型ユニット３７、下型ユニット３９の個体識別に使用することで、射出成形装置１００に取り付けられた上型ユニット３７と下型ユニット３９とが、正しい金型であることを容易に確認できる。本構成によれば、金型の誤装着を確実に防止でき、誤装着されたまま型締めされることが未然に防止され、金型の破損を防止できる。また、ＲＦＩＤ等のタグを用いて識別する方式や、バーコード等の識別情報を持たせて識別する方法等と比較して、読み取り機器を用意する必要がないため、低コストで簡単かつ確実な識別が可能となる。

　なお、上型側コネクタ６５，下型側コネクタ１１５は、金型の個体識別用のみならず、各種のセンサや、モータ等の駆動部等に接続される信号線の接続端子が含まれていてもよい。その場合、上型側コネクタ６５、下型側コネクタ１１５を通じて電気信号を入出力することで、入力に対する出力の結果に応じた個体識別が可能となる。例えば、上型ユニット３７、下型ユニット３９を、金型の種別毎に固有の抵抗値を設定しておき、基台側コネクタ６９側から各ユニットの抵抗値を検出することで個体識別してもよい。また、上型ユニット３７、下型ユニット３９から固有の信号を出力させ、基台側コネクタ６９を通じて出力信号を検出することで個体識別してもよい。

　上記した金型の識別は、射出成形する開具や止具等の種別、サイズ、成形物のデザイン等、スライドファスナーの個体情報等に基づいて行われるが、これに限らない。例えば、上型ユニット３７と下型ユニット３９とが金型の禁忌な組み合わせか否かのみを識別する構成であってもよい。その場合、全ての金型がそれぞれ個別のコネクタ形状である必要はなく、使用するコネクタ種類の数を軽減できる。

　このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。

　１１　基台
　１３　連続ファスナーチェーン
　１７　成形部
　２３　コネクタ接続部
　３３　上型ベース
　３５　下型ベース
　３５ａ　上面
　３７　上型ユニット（上型）
　３９　下型ユニット（下型）
　４３　上型支持機構
　４５　下型支持機構
　６５　上型側コネクタ（金型側コネクタ）
　６７　ケーブル
　６９　基台側コネクタ
　７１Ａ，７１Ｂ　上型レール部材
　７３　上型ストッパ部材
　７５Ａ，７５Ｂ　クランプ部材（上型クランプ部材）
　７５ａ　突出先端面
　９７　固定ボルト（上型締め具）
１００　射出成形装置
１１３　下型固定部材
１１５　下型側コネクタ（金型側コネクタ）
１１７　ケーブル
１２７Ａ，１２７Ｂ　下型レール部材
１２９　下型ストッパ部材
１３１　下型固定レバー（下型クランプ部材）
１４１　ロック機構
１４３　ロック片（下型締め具）
１５１　スライドファスナー
１５３　連続ファスナーテープ
１５７　上止（止具）
１５９　開具
１６５　下止（止具）

Claims (13)

1. 　上型（３７）を支持する上型ベース（３３）と、下型（３９）を支持する下型ベース（３５）とが、前記上型（３７）と前記下型（３９）とを上下に対面させて基台（１１）に取り付けられた射出成形装置（１００）であって、
   　前記上型ベース（３３）の下面側に設けられ、前記上型（３７）を着脱自在に支持する上型支持機構（４３）を備え、
   　前記上型支持機構（４３）は、
   　前記上型（３７）を挿入可能に支持する上型レール部材（７１Ａ，７１Ｂ）と
   　前記上型レール部材（７１Ａ，７１Ｂ）の前記上型（３７）の挿入方向先方に配置され、前記上型（３７）の挿入方向先端部が突き当たる上型ストッパ部材（７３）と、
   　前記上型レール部材（７１Ａ，７１Ｂ）に支持された前記上型（３７）を、上型締め具（９７）の操作によって挟み込むクランプ部材（７５Ａ，７５Ｂ）と、
   を有し、
   　前記上型締め具（９７）は、前記上型ベース（３３）の上方又は側方から操作可能に配置され、前記操作により前記上型（３７）を前記上型ベース（３３）に固定又は固定解除する、射出成形装置。
2. 　前記上型締め具（９７）は、前記上型ベース（３３）を上下方向に貫通して前記クランプ部材（７５Ａ，７５Ｂ）に接続される固定ボルトである、請求項１に記載の射出成形装置。
3. 　１本の前記上型締め具（９７）のみによって、前記上型（３７）が前記上型ベース（３３）に固定又は固定解除される、請求項１又は請求項２に記載の射出成形装置。
4. 　前記クランプ部材（７５Ａ，７５Ｂ）は、前記上型（３７）の挿入方向に直交する方向の両脇側に設けられ、前記上型締め具（９７）の前記操作によって互いに接近又は離反する請求項１又は請求項２に記載の射出成形装置。
5. 　前記上型締め具（９７）は、前記上型レール部材（７１Ａ，７１Ｂ）に支持された前記上型（３７）を前記上型ストッパ部材（７３）との間で挟み込んで固定する上型固定レバーである請求項１又は請求項２に記載の射出成形装置。
6. 　前記上型レール部材（７１Ａ，７１Ｂ）は、前記上型（３７）の挿入方向に直交する方向の両脇部をそれぞれ支持する請求項１～請求項５のいずれか１項に記載の射出成形装置。
7. 　前記下型ベース（３５）に前記下型（３９）を着脱自在に支持する下型支持機構（４５）を備え、
   　前記下型支持機構（４５）は、
   　前記下型（３９）を挿入可能に支持する下型レール部材（１２７Ａ，２１７Ｂ）と
   　前記下型レール部材（１２７Ａ，１２７Ｂ）の前記下型（３９）の挿入方向先方に配置され、前記下型（３９）の挿入方向先端部が突き当たる下型ストッパ部材（１２９）と、
   　前記下型レール部材（１２７Ａ，１２７Ｂ）に支持された前記下型（３９）を、下型締め具（１４３）の操作によって挟み込む下型クランプ部材（１３１）と、
   を有し、
   　前記下型締め具（１４３）は、前記下型ベース（３５）の上方又は側方から操作可能に配置され、前記下型（３９）を前記下型ベース（３５）に固定又は固定解除する、請求項１～請求項６のいずれか１項に記載の射出成形装置。
8. 　前記下型締め具（１４３）は、前記下型レール部材（１２７Ａ，１２７Ｂ）に支持された前記下型（３９）を前記下型ストッパ部材（１２９）との間で挟み込んで固定する下型固定レバー（１３１）である請求項７に記載の射出成形装置。
9. 　前記下型レール部材（１２７Ａ，１２７Ｂ）は、前記下型（３９）の挿入方向に直交する方向の両脇部をそれぞれ支持する、請求項７又は請求項８に記載の射出成形装置。
10. 　前記上型（３７）と前記下型（３９）は、スライドファスナーの止具又は開具を成形する金型である請求項１～請求項９のいずれか１項に記載の射出成形装置。
11. 　前記上型（３７）と前記下型（３９）の少なくとも一方には、ケーブル（６７，１１７）を介して金型側コネクタ（６５，１１５）が接続され、
    　前記基台（１１）は、前記金型側コネクタ（６５，１１５）と係合する基台側コネクタ（６９）を備える、請求項１０に記載の射出成形装置。
12. 　前記金型側コネクタ（６５，１１５）は、成形される前記止具又は開具の種別毎にそれぞれ異なる形状を有する請求項１１に記載の射出成形装置。
13. 　前記基台側コネクタ（６９）は、適用可能な金型に接続された金型側コネクタ（６５，１１５）にのみ係合可能な形状を有する請求項１２に記載の射出成形装置。

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