WO2017221514A1

WO2017221514A1 - 収納容器用切断刃、および、収納容器

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Publication number: WO2017221514A1
Application number: PCT/JP2017/014593
Authority: WO
Inventors: 孝幸関; 有紀飯田
Original assignee: 株式会社クレハ
Priority date: 2016-06-22
Filing date: 2017-04-07
Publication date: 2017-12-28
Also published as: TW201800199A

Abstract

巻き戻りの発生を抑えつつ、フィルムをうまく切断することができる収納容器用切断刃、および、収納容器が提供される。切断刃（４０）は、包装フィルム（５０）の収納容器（１０）に用いられる。切断刃（４０）は、収納容器（１０）に取り付けられる第１面と、第１面とは反対側の面であって、当該切断刃（４０）による包装フィルム（５０）の切断の際に包装フィルム（５０）に接する第２面と、を有し、少なくとも第２面は、算術平均粗さが０．１μｍ以上０．４μｍ未満である粗面領域を含む。

Description

収納容器用切断刃、および、収納容器

　本発明は、包装フィルムを収納するための収納容器用の切断刃、および、この切断刃を備える収納容器に関する。

　ロール状に巻かれた包装フィルムを収納するための収納容器が知られている。こうした収納容器は、上面が開口した箱状であって一方向に延びる本体部と、本体部の開口に対して開閉可能に構成された蓋部とを備えている。詳細には、本体部は、本体部の底部を構成する底壁部と、底壁部から立設する周壁部とを備え、上記開口は、周壁部の上縁によって囲まれている。周壁部は、互いに向かい合う前壁部と後壁部とを含み、前壁部と後壁部は、本体部の長手方向に沿って延びている。蓋部は、本体部の後壁部の上縁から延びて、蓋部が閉じられているときに上記開口を覆う上壁部と、上壁部から延びて、蓋部が閉じられているときに前壁部に重なる延出部とを備えている。延出部において蓋部が閉じられているときに前壁部と対向する面の端部には、鋸刃状の切断刃が、刃先が延出部から突出するように取り付けられている。包装フィルムは、本体部の長手方向をロールの軸方向として本体部が囲む空間に収納され、収納容器から引き出されて切断刃によって切断された後、食品等の包装のために使用される。

　包装フィルムの切断の際には、包装フィルムの使用者は、延出部と前壁部との間から包装フィルムを引き出した状態で延出部および切断刃を前壁部に向けて押し付け、切断刃を包装フィルムに刺し込むことによって包装フィルムを切断する。ここで、包装フィルムの切断後に、ロールから延びている包装フィルムの端部が、本体部の内部に戻ってしまう、「巻き戻り」と呼ばれる現象が生じることがある。巻き戻りが発生すると、包装フィルムの端部が本体部内のロールに密着して識別し難くなり、使用者が次に包装フィルムを引き出そうとする際に包装フィルムの端部を見つけ出す作業が煩雑となる場合がある。

　巻き戻りが発生する原因の１つは、包装フィルムの切断の際に切断刃が包装フィルムに押し付けられることに起因して、切断後の包装フィルムの端部が切断刃にはりつくことである。切断刃に包装フィルムの端部がはりついた状態で蓋部が開けられると、包装フィルムの端部が延出部とともに本体部の開口に向けて引き上げられ、巻き戻りが生じやすくなる。

　巻き戻りの発生を抑えるための方策の１つとしては、例えば、特許文献１に記載された切断刃のように、切断刃の表面に凸部を設けて、切断刃のなかで包装フィルムの切断の際に包装フィルムと接する部分の面積を低減することが挙げられる。

　また、特許文献２には、前板の平滑性を高め、掩蓋片裏面に装着した金属板の表面粗さを調整することにより、フィルムの切断端部が掩蓋片を離した後、確実に前板に付着することで、ラップフィルムの紙箱への巻込みを防止することが記載されている。

特開２０１０－２６９８１５号公報特開平３－６９４４４号公報特開２０１６－１３７５４１号公報

　包装フィルムと切断刃との密着の程度は、包装フィルムの切断の際に切断刃において包装フィルムと接する面の表面状態によって変わるため、切断刃における上記面の表面状態を適切に制御することも、巻き戻りの発生を抑えるための方策の１つである。例えば、特許文献２のように、表面状態をザラザラにすることにより巻き戻りを抑制することが考えられるが、ザラザラにしすぎるとフィルム切断時にフィルムが滑り、うまく切断できないことがあった。

　本発明は、巻き戻りの発生を抑えつつ、フィルムをうまく切断することができる収納容器用切断刃、および、収納容器を提供することを目的とする。

　上記課題を解決するための収納容器用切断刃は、包装フィルムの収納容器に用いられる切断刃であって、前記収納容器に取り付けられる第１面と、前記第１面とは反対側の面であって、当該切断刃による前記包装フィルムの切断の際に前記包装フィルムに接する第２面と、を有し、少なくとも前記第２面は、算術平均粗さが０．１μｍ以上０．４μｍ未満である粗面領域を含む。

　上記課題を解決するための収納容器は、包装フィルムを収納するための収納容器であって、前記包装フィルムを収納する空間である収納空間を区画する箱状の本体部であって、当該本体部の底部を構成する底壁部と、前記底壁部から立設する周壁部とを備え、前記周壁部の縁によって囲まれた開口が前記収納空間の端部を構成する前記本体部と、前記開口に対して開閉可能に構成された蓋部であって、当該蓋部が閉じられているときに、前記周壁部の縁から延びて前記開口を覆う上壁部と、前記上壁部からさらに延びて前記周壁部と重なる延出部とを備える前記蓋部と、前記蓋部が閉じられているときに前記延出部において前記周壁部と対向する面の端部に取り付けられている切断刃と、を備え、前記切断刃は、上記収納容器用切断刃である。

　上記構成によれば、粗面領域の表面粗さが十分に粗いため、包装フィルムの切断の際に、第２面が包装フィルムに押し付けられたとしても、第２面が包装フィルムに強く密着することを抑制できる。その結果、収納容器が開けられたときに、包装フィルムが収納容器の蓋部とともに引き上げられるほどに強く切断刃にはりつくことが抑えられるため、包装フィルムの巻き戻りの発生が抑えられつつ、フィルムをうまく切断することができる。

　上記収納容器用切断刃において、ポリ塩化ビニリデンからなる包装フィルムに対する前記粗面領域のズリ密着強度が１０ｇｆ以下であり、前記ズリ密着強度は、前記粗面領域を有する対象物に対し２５ｍｍ幅の前記包装フィルムを密着させ、２２℃、３１％ＲＨの環境下にて試験速度３００ｍｍ／ｍｉｎで前記対象物と前記包装フィルムとを互いに反対の方向に、これらの密着面に対して水平に引っ張るとき、前記対象物に対して前記包装フィルムを動かすために要する最小の力を、複数の前記対象物について測定して平均した値であってもよい。

　上記収納容器用切断刃において、前記粗面領域の光沢度は、４０％未満であってもよい。
　上記構成によれば、包装フィルムの巻き戻りの発生が好適に抑えられつつ、フィルムをうまく切断することができる。

　上記収納容器用切断刃は、主成分としてポリエステル樹脂を含んでもよい。
　上記構成によれば、十分な切断性能を有し、かつ、上記粗面領域を含む第２面を有する切断刃の実現が容易である。

　上記収納容器において、前記周壁部は、前記蓋部が閉じられているときに前記延出部と対向する位置に、滑り抑制部を備えてもよい。
　上記構成によれば、滑り抑制部によって、包装フィルムの切断の際に周壁部に対して包装フィルムが滑ることを抑制できるため、包装フィルムが切断しやすい。また、このように包装フィルムの滑りが抑えられる結果、包装フィルムの巻き戻りの発生も抑えられる。

　本発明によれば、収納容器に収納された包装フィルムの巻き戻りの発生を抑えつつ、フィルムをうまく切断することができる。本発明の他の形態及び利点は本発明の技術的思想の例を示している図面と共に以下の記載から明らかとなる。

収納容器の一実施形態について、蓋部が閉じられている状態での収納容器の斜視構造を、引き出された包装フィルムおよび使用者の手とともに示す斜視図。一実施形態の収納容器について、蓋部が開かれている状態での収納容器の斜視構造を、引き出された包装フィルムとともに示す斜視図。切断刃の一実施形態について、切断刃の平面構造を示す平面図。

　図１～図３を参照して、収納容器用切断刃、および、収納容器の一実施形態について説明する。図１は、閉じられている収納容器を、引き出された包装フィルムおよび包装フィルムを引き出している使用者の手とともに示す図であり、図２は、開けられている収納容器を、引き出された包装フィルムとともに示す図である。

　図１が示すように、収納容器１０は、本体部２０と蓋部３０と切断刃４０とを備えており、蓋部３０が閉じている状態においては、一方向に延びる略直方体形状を有する。
　本体部２０は、１つの面が開口した箱状を有し、詳細には、本体部２０は、前壁部２１、後壁部２２、底壁部２３、および、２つの側壁部２４を備えている。底壁部２３は本体部２０の底部を構成し、前壁部２１と後壁部２２と側壁部２４とは、底壁部２３から立設する周壁部を構成している。なお、図１および図２では、水平面に底壁部２３が当接するように収納容器１０が配置された状態を基準として、底壁部２３に対して底壁部２３から延びる周壁部の先端側を上側、この周壁部の先端に対して底壁部２３の位置する側を下側として説明する。すなわち、本体部２０は、上記水平面に沿った方向である左右方向に延び、上記水平面に直交する方向である上下方向の上方向に向かって開放されている。

　前壁部２１は、左右方向に延びる略矩形板状を有し、後壁部２２および底壁部２３も、前壁部２１とほぼ同形の板状を有している。前壁部２１と後壁部２２とは、上記水平面に沿った方向であって左右方向に直交する方向である前後方向に向かい合っている。底壁部２３は、前壁部２１と後壁部２２との間に位置し、底壁部２３の前後方向の一方の縁は前壁部２１の下縁と繋がり、底壁部２３の前後方向の他方の縁は後壁部２２の下縁と繋がっている。

　２つの側壁部２４は、互いにほぼ同形の略矩形板状を有し、左右方向に向かい合っている。２つの側壁部２４の一方は、その前後方向の両縁および下縁にて、前壁部２１、後壁部２２、および、底壁部２３における左右方向の一方の縁と繋がり、２つの側壁部２４の他方は、その前後方向の両縁および下縁にて、前壁部２１、後壁部２２、および、底壁部２３における左右方向の他方の縁と繋がっている。

　蓋部３０は、上記開口に対して開閉可能に構成されており、上壁部３１と延出部３２と２つの横壁部３３とを備えている。上壁部３１は、底壁部２３とほぼ同形の略矩形板状を有し、後壁部２２の上縁から延びている。蓋部３０が閉じられているとき、上壁部３１は上記開口を覆い、底壁部２３と上下方向に向かい合う。

　延出部３２は、板状を有し、上壁部３１における後壁部２２の上縁と繋がっている縁とは反対側の縁から延び、蓋部３０が閉じられているとき、本体部２０の外側で前壁部２１の一部と重なる。延出部３２は、蓋部３０が閉じた状態での上下方向の幅が、左右方向の中央部で最も大きくなる形状を有している。換言すれば、蓋部３０が閉じた状態での延出部３２の下縁である先端縁３２ａは、左右方向の両端部よりも中央部が底壁部２３に近づくように屈曲している。

　２つの横壁部３３は、互いにほぼ同形の略矩形板状を有している。蓋部３０が閉じられているとき、２つの横壁部３３の一方の上縁は、上壁部３１における左右方向の一方の縁と繋がり、かつ、この横壁部３３における前後方向の一方の縁は、延出部３２における左右方向の一方の縁と重なる。そして、蓋部３０が閉じられているとき、２つの横壁部３３の一方は、本体部２０の外側で側壁部２４の一方の一部と重なる。また、蓋部３０が閉じられているとき、２つの横壁部３３の他方の上縁は、上壁部３１における左右方向の他方の縁と繋がり、かつ、この横壁部３３における前後方向の一方の縁は、延出部３２における左右方向の他方の縁と重なる。そして、蓋部３０が閉じられているとき、２つの横壁部３３の他方は、本体部２０の外側で側壁部２４の他方の一部と重なる。

　切断刃４０は、鋸刃状に並ぶ複数の刃先を有する板状の刃である。切断刃４０は、延出部３２において、蓋部３０が閉じられているときに、前壁部２１と対向する面の端部に、複数の刃先が延出部３２の先端縁３２ａから突出するように、先端縁３２ａに沿って取り付けられている。切断刃４０は、蓋部３０が閉じた状態において左右方向の両端部よりも中央部が底壁部２３に近づくように屈曲した形状を有している。

　図２が示すように、蓋部３０は、上壁部３１と後壁部２２との境界部分を軸として、本体部２０に対して回転可能に構成されており、この蓋部３０の回転によって、蓋部３０が開閉される。

　前壁部２１は、蓋部３０が閉じた状態において延出部３２と対向する位置に、滑り抑制部２５を有している。滑り抑制部２５は、包装フィルム５０が前壁部２１の外側面に対して滑ることを抑える機能を有している。すなわち、滑り抑制部２５は、前壁部２１の外側面内において滑り抑制部２５以外の部分よりも包装フィルム５０との密着性が高い部分であり、ＵＶニス等のニスの塗布や樹脂フィルムの貼り付け等によって形成されている。また、滑り抑制部２５は、前壁部２１において、前壁部２１の長手方向である左右方向の全幅に渡って設けられていてもよく、長手方向に沿って断続的に設けられていてもよく、長手方向の一部分に設けられていてもよい。

　なお、前壁部２１は、前壁部２１の一部が切り出されて、前壁部２１の他の部分から本体部２０の外側に向かって浮き上がるように構成されたフラップを備え、フラップに滑り抑制部２５が設けられていてもよい。

　本体部２０は、包装フィルム５０を収納するための収納空間Ｓを区画しており、すなわち、前壁部２１、後壁部２２、底壁部２３、および、２つの側壁部２４によって囲まれた空間が収納空間Ｓである。本体部２０における開口は、前壁部２１の上縁、後壁部２２の上縁、および、各側壁部２４の上縁、すなわち、周壁部における底壁部２３とは反対側の縁によって囲まれ、収納空間Ｓの端部を構成している。

　包装フィルム５０は、例えば円筒形状を有する紙製の管に巻き付けられてロール状とされ、ロールの軸方向を左右方向として収納空間Ｓに収納される。本体部２０を構成する各壁部の大きさは、収納対象の包装フィルム５０のロールの大きさに応じて、このロールを収納可能な大きさの収納空間Ｓを区画できる大きさであればよい。

　こうした本体部２０と蓋部３０とは、例えば１枚の厚紙の折り曲げによって形成される。各壁部および延出部３２の各々は、複数の板状部材が積層された積層体であってもよいし、厚紙以外の樹脂製など紙以外の材質であってもよい。延出部３２への切断刃４０の取り付けは、例えば、延出部３２と切断刃４０との間にシーラント材や接着層を配して、超音波接着によって行われる。なお、切断刃４０の刃先は、包装フィルム５０の使用時に延出部３２から露出していればよく、包装フィルム５０を収納した収納容器１０の保管時や運搬時には、他の部材によって覆われていてもよい。

　包装フィルム５０の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニリデンが挙げられる。
　以上のように構成される収納容器１０に収納された包装フィルム５０を使用するとき、使用者は、例えば、一方の手で包装フィルム５０を延出部３２と前壁部２１の間から引き出してその先端を把持し、他方の手で蓋部３０を閉じた収納容器１０を握るとともに延出部３２の中央部分を親指で押さえて、先の図１に矢印Ａで示す方向に収納容器１０を回転させる。これにより、切断刃４０の刃先が包装フィルム５０に刺さり、包装フィルム５０が切断される。このとき、切断刃４０と前壁部２１との間には、包装フィルム５０が挟まれる。

　図３を参照して、切断刃４０の詳細構成について説明する。
　図３が示すように、切断刃４０は、帯状に延びる形状であって、延出部３２の先端縁３２ａに沿った形状、すなわち、略Ｖ字状の形状を有している。切断刃４０が略Ｖ字状の形状を有していることによって、包装フィルム５０の幅方向の中央部に切断刃４０の刃先が刺さりやすいため、包装フィルム５０の切断が容易である。

　なお、切断刃４０は直線状に延びる形状を有していてもよいし、延出部３２の先端縁３２ａは切断刃４０の形状に準じて、全体として左右方向に延びていればよい。
　切断刃４０は、延出部３２の内側面、すなわち、延出部３２において蓋部３０が閉じられているときに前壁部２１と対向する面に取り付けられる面である第１面４０Ｆと、第１面４０Ｆとは反対側の面であって、蓋部３０が閉じられているときに前壁部２１の外側面と対向する第２面４０Ｓとを有している。第２面４０Ｓは、すなわち、包装フィルム５０の切断の際に、包装フィルム５０に接する面である。

　第２面４０Ｓの面性状を示す特性について、以下に説明する。
　第２面４０Ｓの表面粗さに関し、算術平均粗さＲａは、０．１μｍ以上０．４μｍ未満であることが好ましく、より好ましくは０．１５μｍ以上０．３μｍ以下である。また、第２面４０Ｓの最大高さＲｚは、１．０μｍ以上２．５μｍ以下であることが好ましい。算術平均粗さＲａおよび最大高さＲｚは、ＪＩＳ　Ｂ　０６０１：２００１に準拠する方法によって測定される値である。

　算術平均粗さＲａが０．１μｍ以上０．４μｍ未満であれば、第２面４０Ｓが粗く、包装フィルム５０を切断する際に、第２面４０Ｓが包装フィルム５０に押し付けられたとしても、第２面４０Ｓが包装フィルム５０に強く密着することが抑えられる。その結果、蓋部３０が開けられたときに、包装フィルム５０が延出部３２とともに引き上げられるほどに強く切断刃４０にはりつくことが抑えられるため、包装フィルム５０の巻き戻りの発生が抑えられる。

　また、切断刃と包装フィルムとの密着の程度が弱すぎると、包装フィルムの切断の際に包装フィルムが滑り、包装フィルムが切断しにくくなる。切断刃における包装フィルムと接する面の算術平均粗さＲａが０．４μｍ未満であれば、切断刃の表面が粗すぎないため、こうした包装フィルムの滑りが抑えられる。

　また、第２面４０Ｓの光沢度は、４０％未満であることが好ましく、より好ましくは３５％以下である。光沢度は、ＪＩＳ　Ｚ　８７４１：１９９７の「鏡面光沢度－測定方法」に準拠した平行光方式によって測定される値である。

　第２面４０Ｓの光沢度が４０％未満であれば、第２面４０Ｓが粗く、包装フィルム５０を切断する際に、第２面４０Ｓが包装フィルム５０に押し付けられたとしても、第２面４０Ｓが包装フィルム５０に強く密着することが抑えられる。その結果、蓋部３０が開けられたときに、包装フィルム５０が延出部３２とともに引き上げられるほどに強く切断刃４０にはりつくことが抑えられるため、包装フィルム５０の巻き戻りの発生が抑えられる。

　第２面４０Ｓの包装フィルム５０に対する密着強度に関し、ズリ密着強度は、１０ｇｆ以下であることが好ましく、５ｇｆ以下であることがより好ましい。ズリ密着強度は、包装フィルムと対象物との密着強度を表す指標であり、ＪＩＳ　Ｚ－０２３７：２００９の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠する方法によって測定される値である。

　具体的には、ズリ密着強度は、２５ｍｍ幅のポリ塩化ビニリデンからなる包装フィルムと対象物とを加圧により密着させ、包装フィルムと対象物とを互いに反対の方向に、これらの密着面に対して水平に引っ張るとき、対象物に対して包装フィルムを動かすために要する最小の力を、複数の対象物について測定して平均した値である。測定は、２５ｍｍ幅の包装フィルムを用いて、２２℃、３１％ＲＨの環境下にて試験速度３００ｍｍ／ｍｉｎの条件で行われる。

　第２面４０Ｓの面性状を示す特性が上記条件を満たしていれば、第２面４０Ｓが粗く、包装フィルム５０を切断する際に、第２面４０Ｓが包装フィルム５０に押し付けられたとしても、第２面４０Ｓが包装フィルム５０に強く密着することが抑えられる。その結果、蓋部３０が開けられたときに、包装フィルム５０が延出部３２とともに引き上げられるほどに強く切断刃４０にはりつくことが抑えられるため、包装フィルム５０の巻き戻りの発生が抑えられる。

　第１面４０Ｆの面性状については、延出部３２への接着を好適に行うことが可能であれば、その特性に特に制約はない。第１面４０Ｆの面性状を示す特性は、第２面４０Ｓの面性状を示す特性と一致していてもよいし、異なっていてもよい。

　切断刃４０の構成材料は特に限定されず、切断刃４０は、例えば、樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。面性状を示す特性が上記条件を満たす第２面４０Ｓを実現するためには、切断刃４０が、主成分として樹脂を含むとともに添加剤を含み、添加剤の種類やその添加量によって切断刃４０の有する面の面性状が調整されることが好ましい。なお、切断刃４０の主成分は、切断刃４０を構成する成分のなかで最も高い含有率を有する成分であり、例えば、切断刃４０のなかで５０質量％以上の含有率を有する成分である。

　切断刃４０の主成分の樹脂としては、例えば、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ＰＥＥＫ（ポリエーテルエーテルケトン）樹脂、ＰＥＳ（ポリエーテルサルフォン）樹脂等が挙げられる。なかでも、切断刃４０の主成分はポリエステル樹脂であることが好ましい。

　用いることができる添加剤としては、特に限定されるものではない。例えば、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、非晶性ポリエステル系樹脂、非晶性ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂や、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、タルク等の無機材料が挙げられる。

　なお、切断刃４０に対するレーザ加工やエンボス加工、粉体等の塗布によって、面性状を示す特性が上記条件を満たす第２面４０Ｓを形成してもよい。
　なお、切断刃４０のより具体的な例としては、特許文献３に記載のフィルムカッターをあげることができる。

　なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
　・切断刃４０の第２面４０Ｓの全体が、面性状を示す特性について上記実施形態に記載の条件を満たしていなくともよい。第２面４０Ｓが、上記実施形態に記載の条件を満たす粗面領域を含む構成であれば、第２面４０Ｓが粗面領域を含まない構成と比較して、少なくとも粗面領域にて包装フィルム５０に対する切断刃４０の密着の程度は弱められるため、包装フィルム５０の巻き戻りの発生は抑制される。

　なお、粗面領域は、切断刃４０の全幅に渡って設けられていてもよいし、部分的に設けられていてもよい。部分的に設けられている場合には、少なくとも切断刃４０の長さ方向の中央部に設けられていることが好ましく、第２面４０Ｓにおける粗面領域以外の部分は、粗面領域よりも平滑であることが好ましい。中央部は、切断刃４０の長さ方向の中心からその両側に均等に広がり、切断刃４０の長さ方向に、切断刃４０の全長に対して５％以上５０％以下の長さを有することが好ましい。こうした構成によれば、包装フィルム５０の切断の際に包装フィルム５０に特に強く押し付けられる第２面４０Ｓの中央部にて、包装フィルム５０が切断刃４０にはりつくことが抑えられ、中央部以外の部分では、切断刃４０に対して包装フィルム５０が滑ることが抑えられる。したがって、包装フィルム５０の好適な切断と巻き戻りの発生の抑制とが可能である。

　［実施例］
　上述した切断刃および収納容器について、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。

　＜実施例１＞
　ポリ乳酸が主成分であり、厚みが約２５０μｍ、算術平均粗さが０．１６２７μｍである切断刃を用意した。

　＜実施例２＞
　ポリ乳酸が主成分であり、厚みが約２５０μｍ、算術平均粗さが０．１７３２μｍである切断刃を用意した。

　＜実施例３＞
　ポリ乳酸が主成分であり、厚みが約２５０μｍ、算術平均粗さが０．２９８９μｍである切断刃を用意した。

　＜実施例４＞
　ポリ乳酸が主成分であり、厚みが約２５０μｍ、算術平均粗さが０．１９１５μｍである切断刃を用意した。

　＜比較例１＞
　ポリ乳酸が主成分であり、厚みが約２５０μｍ、算術平均粗さが０．０５０１μｍである切断刃を用意した。

　＜面性状の評価＞
　実施例１～４および比較例１の切断刃の有する面性状の評価として、下記項目の評価を行った。

　（表面粗さ）
　ＪＩＳ　Ｂ　０６０１：２００１に準拠して、東京精密社製のＳＵＲＦＣＯＭ　１５００ＤＸ２（接触式）を用いて、下記の条件で、算術平均粗さＲａおよび最大高さＲｚを測定した。
・測定長さ　　　　切断刃の幅方向と直交する方向（長さ方向）に４．０ｍｍ
・カットオフ波長　０．８ｍｍ
・測定レンジ　　　±６４．０μｍ
・測定速度　　　　０．１５ｍｍ／ｓ
・カットオフ種別　ガウシアン
・傾斜補正　　　　最小二乗直線補正
・触針半径　　　　２μｍＲ
・触針材質　　　　ダイヤモンド
・測定力　　　　　０．７５ｍＮ
　（光沢度）
　各実施例および比較例ごとに、幅７．５ｍｍ×長さ２５ｍｍ以上の大きさを有する５つのサンプルを準備し、日本電色工業社製のグロスメータ（ＶＧ２０００）を用い、ＪＩＳ
　Ｚ　８７４１の「鏡面光沢度－測定方法」に準拠した平行光方式で、入射角６０°で各サンプルの光沢度を測定した。このとき、光源と受光器との並列方向を、切断刃の幅方向に相当する方向とした場合と、切断刃の長さ方向に相当する方向とした場合との２方向について測定を行った。各実施例および比較例について、測定方向ごとに、５つのサンプルの光沢度の平均値を算出して、算出された値を各実施例および比較例の光沢度とした。

　（ズリ密着強度）
　各実施例および比較例ごとに、幅７ｍｍ×長さ２５ｍｍの大きさを有する５つのサンプルを準備し、各サンプルに対し下記の手順でズリ密着強度を測定した。各実施例および比較例について、５つのサンプルのズリ密着強度の平均値を算出して、算出された値を各実施例および比較例のズリ密着強度とした。
（１）サンプルを、鉄板の表面に両面テープで貼り付ける。
（２）鉄板の表面のなかでサンプルが貼り付けられていない部分を、包装フィルムが貼りつかないように、表面に艶加工が施されていない紙で覆い、サンプルの上に２５ｍｍ幅に切断した包装フィルムを配置する。なお、包装フィルムの切断時に切断刃に触れる面は、ロールの外側に向けられた面であるため、この面がサンプルに接触するように包装フィルムを配置する。包装フィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンからなる包装フィルムであって、生産から１０カ月が経過した包装フィルムを用いた。
（３）不織布（例えばキムワイプ（登録商標））を用いて、包装フィルムをサンプルに擦りつけ、サンプルと包装フィルムとを圧着させる。
（４）エー・アンド・デイ社製テンシロン万能材料試験機（ＲＴＧ－１２１０）にサンプルと包装フィルムとをセットして、試験環境２２℃、３１％ＲＨ、試験速度３００ｍｍ／ｍｉｎで、サンプルと包装フィルムとをこれらの密着面と水平方向に引っ張り、サンプルに対して包装フィルムが動いたときに加えられていた力を求める。サンプルと包装フィルムとの引っ張り方向のなす角度は１８０°である。

　＜評価結果＞
　実施例１～４および比較例１について、表面粗さ、光沢度、および、ズリ密着強度の測定結果を、表１に示す。

　表１が示すように、算術平均粗さＲａが０．１μｍ以上である実施例１～４は、算術平均粗さＲａが０．１μｍよりも小さい比較例１と比べて、光沢度が小さく、ズリ密着強度が大幅に低下している。具体的には、実施例１～４の光沢度は、切断刃の幅方向と長さ方向とのいずれにおいても４０％未満であり、実施例１～４のズリ密着強度は、１０ｇｆ以下である。

　＜巻き戻り発生頻度の評価＞
　コートボール紙から形成された本体部および蓋部を準備し、実施例１～４の切断刃を超音波接着によって蓋部に取り付けて、収納容器を形成し、この収納容器のサンプルを各々３つ作製した。同様に、比較例１の切断刃を取り付けた収納容器のサンプルを３つ作製した。そして、ポリ塩化ビニリデンからなる包装フィルムであって、生産から８カ月が経過した包装フィルムを各サンプルの収納容器に収納した。各サンプルについて収納容器から包装フィルムを引き出して切断した後に蓋部を開けることを１００回行い、蓋部を開けたときに、切断刃に包装フィルムが密着して、包装フィルムの端から端までが前壁部よりも持ち上がった回数を測定した。なお、収納容器の滑り抑制部は、メンディングテープでマスキングして、滑り抑制部が機能しない状態で上記試験を行った。

　表２に、実施例１～４およびと比較例１との各々について、３つのサンプルにおける包装フィルムが持ち上がった回数の平均値を示す。

　表２が示すように、実施例１～４の切断刃を備える収納容器を用いた場合、比較例１の切断刃を備える収納容器を用いた場合と比較して、包装フィルムが持ち上がった回数が大幅に減少することが確認された。

　＜カット力の評価＞
　実施例１～４および比較例１の切断刃を用いた収納容器各１つを巻き戻り発生頻度の評価と同様に作製し、収納容器のサンプルを得た。当該容器内に収納されたポリ塩化ビニリデンのラップフィルムを常温保管環境下（２３℃、５０％ＲＨ）でモニターが２００回カットし、その時のカット力を測定した。カット力が５．３５Ｎ以下は○として表３に示す。

　表３が示すように、ズリ密着強度が高い比較例１と同じく、カット力は５．３５Ｎ以下であることが確認され、実施例１～４の切断刃は切断性も良好であることが確認された。

　したがって、包装フィルムと接する面の算術平均粗さＲａが０．１μｍ以上の切断刃であれば、切断刃が包装フィルムに強く密着することが抑えられるため、包装フィルムの巻き戻りの発生が抑えられることが確認された。また、ズリ密着強度や光沢度を用いて面性状を表すと、包装フィルムと接する面のズリ密着強度が１０ｇｆ以下の切断刃、また、包装フィルムと接する面の光沢度が４０％未満の切断刃であれば、包装フィルムの巻き戻りの発生が抑えられる。

　実施例１～４のように、ポリ塩化ビニリデンからなる包装フィルムに対する切断刃の密着性を低下させることができる。
　以上、実施例を参照して説明したように、上記実施形態の切断刃および収納容器によれば、以下に示す効果を得ることができる。

　（１）切断刃４０において、包装フィルム５０の切断の際に包装フィルム５０に接する第２面４０Ｓの算術平均粗さＲａが０．１μｍ以上０．４μｍ未満である構成では、第２面４０Ｓが粗く、包装フィルム５０を切断する際に、第２面４０Ｓが包装フィルム５０に押し付けられたとしても、第２面４０Ｓが包装フィルム５０に強く密着することが抑えられる。その結果、蓋部３０が開けられたときに、包装フィルム５０が延出部３２とともに引き上げられるほどに強く切断刃４０にはりつくことが抑えられるため、包装フィルム５０の巻き戻りの発生が抑えられる。

　（２）切断刃４０における第２面４０Ｓのポリ塩化ビニリデンからなる包装フィルムに対するズリ密着強度が１０ｇｆ以下である構成では、上記（１）と同様に包装フィルム５０の切断に際して第２面４０Ｓが包装フィルム５０に強く密着することが抑えられるため、包装フィルム５０の巻き戻りの発生が抑えられる。

　（３）切断刃４０における第２面４０Ｓの光沢度が４０％未満である構成では、上記（１）と同様に包装フィルム５０の切断に際して第２面４０Ｓが包装フィルム５０に強く密着することが抑えられるため、包装フィルム５０の巻き戻りの発生が抑えられる。

　（４）切断刃４０が主成分としてポリエステル樹脂を含む構成では、十分な切断性能を有するとともに、上記面性状に関する条件を満たす第２面４０Ｓを有する切断刃の実現が容易である。

　（５）前壁部２１が、蓋部３０が閉じられているときに延出部３２と対向する位置に、滑り抑制部２５を備える構成では、滑り抑制部２５によって、包装フィルム５０の切断時に前壁部２１に対して包装フィルム５０が滑ることが抑えられるため、包装フィルム５０が切断しやすく、良好なカット性を得ることができる。また、滑り抑制部２５によって、前壁部２１に対して包装フィルム５０が滑ることが抑えられる結果、包装フィルム５０の巻き戻りの発生も抑えられる。

　本発明がその技術的思想から逸脱しない範囲で他の特有の形態で具体化されてもよいということは当業者にとって明らかである。例えば、実施形態（あるいはその１つ又は複数の態様）において説明した特徴のうちの一部を省略したり、いくつかの特徴を組合せてもよい。本発明の範囲は、添付の請求の範囲を参照して、請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲と共に確定されるべきである。

　１０…収納容器、２０…本体部、２１…前壁部、２２…後壁部、２３…底壁部、２４…側壁部、２５…滑り抑制部、３０…蓋部、３１…上壁部、３２…延出部、３２ａ…先端縁、３３…横壁部、４０…切断刃、４０Ｆ…第１面、４０Ｓ…第２面、５０…包装フィルム、Ｓ…収納空間。

Claims

　包装フィルムの収納容器に用いられる切断刃であって、
　前記収納容器に取り付けられる第１面と、
　前記第１面とは反対側の面であって、当該切断刃による前記包装フィルムの切断の際に前記包装フィルムに接する第２面と、を有し、
　少なくとも前記第２面は、算術平均粗さが０．１μｍ以上０．４μｍ未満である粗面領域を含む
　収納容器用切断刃。
　ポリ塩化ビニリデンからなる包装フィルムに対する前記粗面領域のズリ密着強度が１０ｇｆ以下であり、
　前記ズリ密着強度は、前記粗面領域を有する対象物に対し２５ｍｍ幅の前記包装フィルムを密着させ、２２℃、３１％ＲＨの環境下にて試験速度３００ｍｍ／ｍｉｎで前記対象物と前記包装フィルムとを互いに反対の方向に、これらの密着面に対して水平に引っ張るとき、前記対象物に対して前記包装フィルムを動かすために要する最小の力を、複数の前記対象物について測定して平均した値である
　請求項１に記載の収納容器用切断刃。
　前記粗面領域の光沢度は、４０％未満である
　請求項１または２に記載の収納容器用切断刃。
　前記切断刃は、主成分としてポリエステル樹脂を含む
　請求項１～３のいずれか一項に記載の収納容器用切断刃。
　包装フィルムを収納するための収納容器であって、
　前記包装フィルムを収納する空間である収納空間を区画する箱状の本体部であって、当該本体部の底部を構成する底壁部と、前記底壁部から立設する周壁部とを備え、前記周壁部の縁によって囲まれた開口が前記収納空間の端部を構成する前記本体部と、
　前記開口に対して開閉可能に構成された蓋部であって、当該蓋部が閉じられているときに、前記周壁部の縁から延びて前記開口を覆う上壁部と、前記上壁部からさらに延びて前記周壁部と重なる延出部とを備える前記蓋部と、
　前記蓋部が閉じられているときに前記延出部において前記周壁部と対向する面の端部に取り付けられている切断刃と、を備え、
　前記切断刃は、請求項１～４のいずれか一項に記載の収納容器用切断刃である
　収納容器。
　前記周壁部は、前記蓋部が閉じられているときに前記延出部と対向する位置に、滑り抑制部を備える
　請求項５に記載の収納容器。