WO2017046859A1 - 車両用交流発電機 - Google Patents

Abstract

　本発明の車両用交流発電機は、ポールコア（１０）に環状に固定されたファン（１１ｂ）の周方向に、翼間隔のピッチが狭い部分（６３）とピッチが広い部分（６２）を設け、ピッチの狭い部分（６３）には、隣接する２つ以上の爪磁極（６０）のそれぞれの端面に２つ以上の翼部（５４）が接触して配設される。このような構成により、回転により生じる翼部（５４）の変形を抑制しつつ、ファン（１１ｂ）から発生する騒音の増大を抑制することができる。

Description

車両用交流発電機

　この発明は、回転子の回転に伴って固定子コイルより交流電圧が出力される交流発電機に関するもので、特に、車載バッテリの充電および車載電気装置へ電力を供給する車両用交流発電機に係るものである。

　近年、車両用交流発電機では、車外騒音低減の社会的要請や車室内静粛性向上による商品性向上の狙いからエンジン騒音が低下してきている。これに伴い比較的高速で回転する車両用交流発電機のファン騒音が耳障りとなってきた。このファン騒音とは、ファンによる径方向への冷却風とこの風により冷却される固定子のコイルエンドや磁極等との干渉音、およびファン自体の回転で発生する風切り音などである。例えば、特許文献１の図１９に示すように、回転子の８極の爪磁極のうち、回転軸に対し対称に位置する一対の爪磁極上に、ファンを構成する翼が2つずつ接触するように配置され、その他の爪磁極上には翼が１つ接触するように配設された場合が開示されている。

特許３２７９２５８号公報 特開平３－２１８２４１号公報

　従って、２つずつ接触するように配置された２つの翼の間隔は狭く、１つずつ配置された翼の間隔はこれに比べ広くなっている。このような翼の配置の場合、翼の間隔が狭い翼で発生する騒音の周波数と、間隔が広い翼で発生する騒音の周波数とが大きく異なることになり、翼間隔が広い翼で発生する騒音の周波数と爪磁極から発生する騒音の周波数が一致すると、より大きな騒音になることがある。
　また、翼間隔の狭い翼が回転軸に対し対向して配置されているので、翼間隔の周期的な変化が１８０度おきとなり、この周期性により発生する騒音が強め合って増大することなどが懸念される。

　この発明に係わる車両用交流発電機は、フレームの内部に収容され、爪磁極を有し、回転軸と同期して回転するポールコアと、ポールコアに環状に固定される冷却ファンとを備え、冷却ファンの回転により外部から導入される冷却風をフレーム内に通風させ、この冷却風により固定子巻線および交流出力整流素子を冷却するようにした車両用交流発電機において、冷却ファンは、主板と主板から立設した複数の翼とからなる翼部を備え、翼部は、ポールコアの極数よりも多く配設されると共に、隣接した２つ以上の爪磁極のそれぞれの端面に２つ以上の翼部が接触していることを特徴とする。

　この発明の車両用交流発電機によれば、回転により生じる翼部の変形を抑制しつつ、ファンから発生する騒音の増大を抑制することができる。

この発明の実施の形態１における車両用交流発電機の縦断面図である。 この発明の実施の形態１における車両用交流発電機の回転子の斜視図である。 この発明の実施の形態１におけるリヤファンの上面図である。 この発明の実施の形態１におけるリヤファンの翼ピッチ番号とピッチとの関係を示す図である。

実施の形態１．
　図１はこの発明の実施の形態１に係る車両用交流発電機１の縦断面図である。
図１において、車両用交流発電機１は、それぞれ略椀形状のアルミニウム製フロントブラケット２とリヤブラケット３からなるケーシング４と、このケーシング４に一対の軸受５を介して回転自在に支持された軸６と、ケーシング４のフロント側に延出する軸６の端部に固着されたプーリ７と、軸６に固定されてケーシング４内に配設された回転子８と、この回転子８の回転軸方向１８の両端面に固定されたファン１１ａ、１１ｂと、回転子８を囲繞するようにケーシング４に固定された固定子１２と、ケーシング４のリヤ側に延出する軸６の延出部に固定され、回転子８に電流を供給する一対のスリップリング１５と、各スリップリング１５の表面に摺動する一対のブラシ１６と、これらのブラシ１６を収容するブラシホルダ１７と、リヤブラケット３のリヤ側に配置されて、固定子１２で生じた交流電圧の大きさを調整する電圧調整器２２と、リヤブラケット３のリヤ側に配置されて、電圧調整器２２などと外部装置（図示せず）との信号の入出力を行うコネクタ２４と、リヤブラケット３のリヤ側に配置されて、固定子１２で生じる交流電圧を直流電圧に整流する整流装置３０と、ブラシホルダ１７、電圧調整器２２、整流装置３０を覆うようにリヤブラケット３に装着された保護カバー４０とを備えている。

　回転子８は、励磁電流が流されて磁束を発生する界磁巻線９と、界磁巻線９を覆うように設けられ、その磁束によって磁極が形成されるポールコア１０とを備えている。固定子１２は、円筒状の固定子鉄心１３と、固定子鉄心１３に巻装され、回転子８の回転に伴い、界磁巻線９からの磁束の変化で交流が生じる固定子巻線１４とを備えている。
　固定子１２は、固定子鉄心１３をフロントブラケット２およびリヤブラケット３の開口端に軸方向両側から挟持されて回転子８を取り囲むように配設されている。
　リヤ側の軸受５は、リヤブラケット３に設けられた軸受取付け部２５にフォルダ２６を介して固定されている。

　図２は、車両用交流発電機１のリヤ側から見た回転子８の斜視図である。ポールコア１０の端面は、シャフト５９付近からポールコア１０の爪磁極６０の側面面取り部６１に渡って平面であり、その平面部にリヤファン１１ｂが溶接などにより固定されている。回転子８は回転方向（矢印５０の方向）に回転する。リヤファン１１ｂは、主板５１に翼５２の外郭に概ね沿った溝を形成し、曲げ加工により成形させる加工法により製造されており（例えば特許文献２、図７参照）、翼５２の外郭よりも少し大きい穴５３が翼に対し回転方向に形成される。翼溝端部５４は、溝の内周側端部であり、翼成形後も主板５１上に残る。隣り合う翼溝端部５４よりも径方向（矢印５５の方向）外側の主板５１、及び翼５２を合わせた翼部５６が回転子８が回転した際に遠心力を受け、大きく変形しようとする。

　また、翼５２は、主板５１と翼の根元で連結し、直角に立設されている。そして、図３のリヤファン１１ｂの上面図に示すように、翼５２は、中心が回転方向の後方に位置する後縁側の円弧形状５２ａと、中心が回転方向の前方に位置する前縁側の円弧形状５２ｂとを滑らかに接続した、外周端である後縁から内周端である前縁に向って回転方向の前方に徐々に変位するＳ字状の断面形状に形成されている。さらに、図２に示す通り、翼５２の高さｈが、前縁５８から翼５２の翼先端５７に向かって徐々に高くなっている。

　次にこのような構成の車両用交流発電機１の動作について説明する。なお、車両用交流発電機１では、１６極、９６スロットの６相交流発電機として動作するが、極数、スロット数はこれに限定されない。
　車両用交流発電機１では、電流がバッテリ（図示せず）からブラシ１６およびスリップリング１５を介して回転子８の界磁巻線９に供給され、磁束が発生する。この磁束により、Ｎ極とＳ極とがポールコア１０の外周面に周方向に交互に形成される。一方エンジンの回転トルクがエンジンの出力軸からベルト（図示せず）およびプーリ７を介して軸６に伝達され、回転子８が回転する。これにより回転磁界が固定子１２の固定子巻線１４に与えられ、起電力が固定子巻線１４に発生する。この起電力で発生する交流電流が整流装置３０で整流されてバッテリを充電し、あるいは車載の電気負荷に供給される。

　ファン１１ａ、１１ｂは、回転子８に連動して回転する。フロント側では、冷却空気がフロント側吸気孔２ａからフロントブラケット２内に吸気され、回転軸方向１８に回転子８近傍まで流れ、そこでフロントファン１１ａにより遠心方向に曲げられ、フロント側排気孔２ｂから排出される。リヤ側では、冷却空気が保護カバー４０に設けられた吸い込み口から保護カバー４０内に吸気され、プラス側ヒートシンク３１およびマイナス側ヒートシンク３２に設けられた放熱フィンの間を通ってリヤブラケット３のリヤ側吸気孔３ａに向かって流れ、回転軸方向１８と反対方向に回転子８近傍まで流れ、そこで、リヤファン１１ｂにより遠心方向に曲げられ、リヤ側排気孔３ｂから排出される。

　固定子１２で発生する熱の一部は、コイルエンド１２ａから、ファン１１ａ、１１ｂにより径方向外方に曲げられて、フロント側排気孔２ｂおよびリヤ側排気孔３ｂから排出される冷却空気に放熱され、また、一部の熱は、フロントブラケット２およびリヤブラケット３に伝導し、フロント側排気孔２ｂの複数のフロント側１９およびリヤ側リブ２０から冷却空気に放熱され、固定子１２が冷却される。また、整流装置３０のプラス側整流素子およびマイナス側整流素子はプラス側ヒートシンク３１およびマイナス側ヒートシンク３２に設けられた放熱フィン間を流通する冷却風によって冷却される。

　ここで、本発明に係るリヤファン１１ｂおよびポールコア１０について説明する。
　車両用交流発電機１の回転子８は、エンジンの回転数の２倍から３倍で回転するため、１００００ｒｐｍ以上で高速回転することが頻繁である。高速回転により大きな遠心力が翼５２を含む翼部５６にかかり、翼の材料が持つ許容応力を超えると翼部５６が径方向外側、及び回転軸方向１８と反対側に移動するように変形する。
　翼部５６が上記のように変形すると、翼５２の高さｈが下がることと同義になり、リヤファン１１ｂが生成する冷却風の風量が低下し、各部品温度を上昇させてしまう。また、翼先端５７が径方向外側に移動することになり、固定子１２を構成するコイルエンド１２ａや固定子鉄心１３に衝突し破損してしまう恐れがある。

　このような冷却性能低下や破損を生じさせないためには、翼５２を含む翼部５６の変形を抑制する必要がある。
　ポールコア１０から発生する騒音の周波数は、極数に起因し、本構成の場合、回転数の８倍となるため、翼枚数を８枚にした場合、回転数の８倍の騒音の周波数が強め合い、騒音が増大する。
騒音の増大を抑制し、冷却風量を確保するためには、翼枚数を極数より多くする必要があるが、板金に切れ目を入れ、曲げ加工で製造するようなファンの場合、反回転方向には翼５２の根元と連結した主板５１があり、回転方向には主板５１が無いため、隣り合う翼の翼溝端部５４間の円周方向距離が小さくなり、翼部５６は変形しやすくなる。

　また、図２に示すように、翼５２のピッチの広い部分６２とピッチの狭い部分６３を円周方向に一か所ずつ設ける。翼ピッチ番号とピッチとの関係を図４で示す。翼ピッチ番号は、図３に示すように、翼ピッチが狭い部分６３のピッチのひとつを翼ピッチ番号１とし、これを起点とし、各ピッチに反時計回りに割り振られた番号である（図３においては、翼ピッチ番号１３まで割り振られる）。ピッチの狭い部分６３は、隣り合うピッチをわずかに変化させる。一方、ピッチの広い部分６２の平均的な翼ピッチの大きさを、ピッチの狭い部分６３の平均的な翼ピッチの１．３倍から１．５倍とし、かつピッチの広い部分６２の中央付近にあたるピッチ（図４中、翼ピッチ番号１１、１２）を変化させ、その変化量をピッチの狭い部分６３のピッチと同程度の大きさとする。さらに、ポールコア１０の極数よりも多い翼５２を配置することで、翼間隔の周期性により発生する騒音の増大を抑制することができる。

　ただし、このような構成にすると、ピッチの狭い部分６３にある翼部５６の翼溝端部５４間の円周方向距離がさらに小さくなってしまう。
　そこで、翼部５６の変形を抑制するため、ピッチの狭い部分６３にある翼５２について、例えば１つの爪磁極６０ａの端面の平面部と、２つの翼部５６ａ、５６ｂが接触するように配置し、翼部５６ａの翼溝端部５４ａに近い側を爪磁極６０ａの端面の平面部と接触させ、外周側は隣接する爪磁極６０ｂとの間になるように配置する。もう１つの翼部５６ｂは翼部５６ｂの外周側を爪磁極６０ａの端面の平面部と接触させ、翼溝端部５４ｂに近い側を隣接する爪磁極６０ｃとの間になるよう配置する。このような構成により、１つの爪磁極６０と２枚の翼５２との位置関係を１つの構成体とし、それを翼５２のピッチの狭い部分６３に隣り合わせで配置することで翼の変形を抑制しつつ騒音の増大も抑制している。
このように実施の形態１では、爪磁極６０と翼５２を配置することで、回転により生じる翼部の変形を抑制することができ、風量の低下による冷却性の低下などを抑制することができ、かつ、ファンから発生する騒音の増大を抑制することができる。
なお、この発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。また、本実施の形態では、リヤ側についてのみ言及したが、フロント側でもファンおよびポールコアを本実施の形態と同様の関係とすれば、騒音低減や翼部の変形の抑制など同様の効果を得ることができる。

　１　車両用交流発電機、２　フロントブラケット、２ａ　フロント側吸気孔、２ｂ　フロント側排気孔、３　リヤブラケット、４　ケーシング、５　軸受、６　軸、７　プーリ、８　回転子、９　界磁巻線、１０　ポールコア、１１ａ　フロントファン、１１ｂ　リヤファン、１２　固定子、１３　固定子鉄心、１４　固定子巻線、１５　スリップリング、１６　ブラシ、１７　ブラシホルダ、１８　回転軸方向、１９　フロント側リブ、２０　リヤ側リブ、２２　電圧調整器、２４　コネクタ、２５　軸受取付け部、２６　フォルダ、３０　整流装置、３１　プラス側ヒートシンク、３２　マイナス側ヒートシンク、４０　保護カバー、５１　主板、５２　翼、５３　穴、５４、５４ａ、５４ｂ　翼溝端部、　５６、５６ａ、５６ｂ　翼部、５７　翼先端、６０、６０ａ、６０ｂ、６０ｃ　爪磁極。

Claims (5)

1. 　フレームの内部に収容され、爪磁極を有し、回転軸と同期して回転するポールコアと、前記ポールコアに環状に固定されるファンとを備え、前記ファンの回転により外部から導入される冷却風を前記フレーム内に通風させ、この冷却風により固定子巻線および交流出力整流素子を冷却するようにした車両用交流発電機において、前記ファンは、主板と前記主板から立設した翼とからなる翼部を備え、前記翼部は、前記ポールコアの極数よりも多く配設されると共に、隣接した２つ以上の前記爪磁極のそれぞれの端面に２つ以上の前記翼部が接触していることを特徴とする車両用交流発電機。
2. 　前記翼は、前記主板に前記翼の外郭に沿った溝が形成され、曲げ加工により立設され、前記翼の外郭より大きい穴が、前記翼の回転方向前方に形成されることを特徴とする請求項１記載の車両用交流発電機。
3. 　第１の爪磁極の端面の平面部と２つの前記翼部が接触するように配置され、第１の翼部の前記溝の内周側端部に近い側を前記第１の爪磁極の端面の平面部と接触し、先端側は、隣接する第２の爪磁極と前記第１の爪磁極との間になるように配置され、第２の翼部の先端側を前記第１の爪磁極の端面の平面部と接触し、前記第２の翼部の前記溝の内周側端部に近い側を、前記第２の爪磁極とは反対側で前記第１の爪磁極と隣接する第３の爪磁極との間になるように配置されたことを特徴とする請求項２記載の車両用交流発電機。
4. 　前記翼は、中心が前記回転軸の回転方向の後方に位置する後縁側の円弧形状と、中心が前記回転方向の前方に位置する前縁側の円弧形状とをＳ字状の断面形状が形成されるように滑らかに接続されたことを特徴とする請求項１から３のいずれか一項に記載の車両用交流発電機。
5. 　前記ファンに立設された翼は周方向に第１の領域と第２の領域を有し、前記第１の領域の翼のピッチは、前記第２の領域の翼のピッチより広く、隣り合うピッチの角度差が前記第２の領域の翼のピッチと同程度の大きさとなる部分を有することを特徴とする請求項１から４のいずれか一項に記載の車両用交流発電機。

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