WO2017033884A1 - 車両操舵装置 - Google Patents
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Abstract
反力モータを二つ備えることで、一つの反力モータに失陥が生じてもステアバイワイヤ制御の続行が可能であり、かつ転舵装置を制御する制御手段に失陥が生じても、前記二つのモータを制御する制御手段が利用できて、制御手段の有効活用によりステアバイワイヤ制御の続行が可能なようにする。車両操舵用制御装置(16)は、二つの反力モータ(8a,8b)をそれぞれ制御する第一の制御手段(17)および第二の制御手段(18)と、前記転舵装置(6)を制御する第三の制御手段(19)とを有する。第一および第二の制御手段(17,18)は、前記転舵装置(6)を制御可能な予備指令部(17c,18c)を有する。第三の制御手段(19)が失陥したときに、前記第一および第二の制御手段(17,18)のいずれか一方の予備指令部(17c;18c)を転舵装置(6)に接続する故障判定信号切替手段(20)が設けられる。
Description
本出願は、2015年8月27日出願の特願2015-167772および2015年12月24日出願の特願2015-251314の優先権を主張するものであり、それらの全体を参照により本願の一部をなすものとして引用する。
この発明は、ステアバイワイヤ方式の車両操舵装置に関し、より具体的には、転舵用の転舵軸と機械的に連結されていないステアリングホイールで操舵される自動車等の車両の操舵装置に関する。
自動車のステアリングホイールと、前輪を転舵する転舵装置とが機械的に連結されていないステアバイワイヤ方式の車両操舵装置が知られている。ステアバイワイヤ方式は、ステアリングホイールに操舵反力を与える反力アクチュエータ(反力付与部)と、転舵装置とから構成され、自動車の挙動に応じてステアリングホイールに操舵反力を与えるとともに、転舵装置内のアクチュエータを制御して前輪を転舵する。
ステアバイワイヤ方式は、車速などの車両状況に応じた車輪転舵の自動制御ができることから、車両の安定走行や運動性能の向上を可能とするものとして期待されている。しかし、万一、反力アクチュエータ(反力付与部)や転舵装置に不具合が発生した場合、その対策が重要である。
その対策として、正常時はステアリングホイールと転舵装置とが完全に切り離された状態で電子制御により転舵を行うが、異常時においてはステアリングホイールと転舵装置とを機械的に接続するためのクラッチを備えたステアバイワイヤ方式の車両操舵装置がある。この車両操舵装置では、クラッチ締結後は反力アクチュエータまたは転舵装置の少なくとも一方をアシスト付与手段とする電動パワーステアリング制御に切り替える。
ただし、ステアバイワイヤ方式の利点を活かすためには、何らかの不具合が発生してもできるだけ冗長性能を確保することが望まれ、ステアバイワイヤ機能を維持できなくなった場合に限り、電動パワーステアリング制御、またはマニュアルステアリングへの移行を実施する。
特許文献1に記載のステアバイワイヤ式操舵装置の制御装置によると、車両のステアリングホイールに操舵反力を与える反力付与部と、転舵角を可変とする転舵装置と、前記ステアリングホイールの操舵の動作を前記転舵装置に機械的に連結および解除できるクラッチを備え、第一の制御手段としての反力コントローラと、第二の制御手段としての転舵コントローラと、さらにこれら二つの制御手段の機能失陥時のバックアップ機能を、第三の制御手段としての予備制御手段に実装することで、転舵コントローラと反力コントローラが失陥しても、ステアバイワイヤ制御が続行可能としている。
しかしながら、特許文献1の制御装置では、予備制御手段としての第三の制御手段に対し、通常時は監視機能としてのみ使用されるため、この第三の制御手段の出力は操舵装置の機能に寄与しない。従って、第一の制御手段か第二の制御手段のいずれか一方に加えて、予備制御手段としての第三の制御手段が同時に失陥した場合は、ステアバイワイヤ制御を維持することができない。
この発明の目的は、反力モータを二つ備えることで、いずれか一つの反力モータに失陥が生じても、ステアバイワイヤ制御の続行が可能であり、かつ転舵装置を制御する制御手段に失陥が生じても、前記二つのモータを制御する制御手段が利用できて、制御手段の有効活用によりステアバイワイヤ制御の続行が可能な車両操舵装置を提供することである。
以下、便宜上理解を容易にするために、実施形態の符号を参照して説明する。
この発明の一構成に係る車両操舵装置は、第一および第二の反力モータ8a,8bを有し、これら第一および第二の反力モータ8a,8bの少なくとも一方によって車両のステアリングホイール2に操舵反力を与える反力付与部3と、前記ステアリングホイール2の操舵角を用いて、前記車両の車輪4,5の転舵角を変更する転舵装置6と、前記反力付与部3および前記転舵装置6を制御する車両操舵用制御装置16とを備えたステアバイワイヤ制御の車両操舵装置において、
前記車両操舵用制御装置16は、
前記第一の反力モータ8aを制御する第一の制御手段17であって、前記転舵装置6を制御するように構成された第一の予備指令部17cを有する第一の制御手段17、
前記第二の反力モータ8bを制御する第二の制御手段18であって、前記転舵装置6を制御するように構成された第二の予備指令部18cを有する第二の制御手段18、
前記転舵装置6を制御する第三の制御手段19、および
前記第三の制御手段19の失陥を監視して失陥と判定したときに、前記第一の予備指令部17cまたは前記第二の予備指令部18cを前記転舵装置6に作動的に接続する故障判定信号切替手段20を有する。
この発明の一構成に係る車両操舵装置は、第一および第二の反力モータ8a,8bを有し、これら第一および第二の反力モータ8a,8bの少なくとも一方によって車両のステアリングホイール2に操舵反力を与える反力付与部3と、前記ステアリングホイール2の操舵角を用いて、前記車両の車輪4,5の転舵角を変更する転舵装置6と、前記反力付与部3および前記転舵装置6を制御する車両操舵用制御装置16とを備えたステアバイワイヤ制御の車両操舵装置において、
前記車両操舵用制御装置16は、
前記第一の反力モータ8aを制御する第一の制御手段17であって、前記転舵装置6を制御するように構成された第一の予備指令部17cを有する第一の制御手段17、
前記第二の反力モータ8bを制御する第二の制御手段18であって、前記転舵装置6を制御するように構成された第二の予備指令部18cを有する第二の制御手段18、
前記転舵装置6を制御する第三の制御手段19、および
前記第三の制御手段19の失陥を監視して失陥と判定したときに、前記第一の予備指令部17cまたは前記第二の予備指令部18cを前記転舵装置6に作動的に接続する故障判定信号切替手段20を有する。
このように、前記転舵装置6に作動的に接続された前記第一または第二の予備指令部17c(18c)で前記第三の制御手段19の制御を代行することにより、ステアバイワイヤ制御を続行可能とする。
なお、前記二つの反力モータ8a,8bは、好ましくは、1台だけの駆動であっても、車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与できる出力を有する。
この構成の車両操舵装置によると、反力付与部3が二つの反力モータ8a,8bを備えるため、いずれか一方の反力モータ8a(8b)に失陥が生じても、他方の正常な反力モータ8b(8a)によりステアバイワイヤ制御の続行が可能である。また、前記二つの反力モータ8a,8bのそれぞれに制御手段17,18を対応させ、制御手段17,18には転舵装置6を制御するように構成された第一および第二の予備指令部17c,18cをそれぞれ装備し、かつ転舵装置6を制御する第三の制御手段19が失陥したときに、前記二つの制御手段17,18のいずれか一方の予備指令部17c(18c)を前記転舵装置6に作動的に接続する故障判定信号切替手段20を設けたため、前記第三の制御手段19が失陥しても、ステアバイワイヤ制御が続行可能となる。
前記第一および第二の予備指令部17c,18cは、それぞれ、前記反力モータ8a,8bを制御する第一および第二の制御手段17,18に設けられるため、十分なバックアップ機能を備えることができ、転舵角制御用の別途の制御手段を設ける必要がない。
このように、二つの反力モータ8a,8bを備えることで、いずれか一つの反力モータ8a(8b)に失陥が生じても、ステアバイワイヤ制御の続行が可能であり、かつ転舵装置6を制御する第三の制御手段19に失陥が生じても、前記二つの反力モータ8a,8bを制御する制御手段17,18を利用できて、これら制御手段17,18の有効活用によりステアバイワイヤ制御の続行が可能となる。
好ましい実施形態において、前記第一の予備指令部17cは、さらに、第二の反力モータ8bを制御するように構成され、前記第二の予備指令部18cは、さらに、前記第一の反力モータ8aを制御するように構成されても良い。すなわち、前記各予備指令部17c,18cは、前記二つの反力モータ8b,8aを制御する予備指令の機能を有していても良い。この構成の場合、第一および第二の制御手段17,18に第一および第二の予備指令部17c,18cを設けたことによって、失陥時における転舵装置6の制御、および二つの反力モータ8a,8bの制御の機能が得られ、第一および第二の予備指令部17c,18cを設けただけの簡素な構成で、より優れた冗長機能が得られる。
好ましい実施形態において、前記第一および第二の反力モータ8a,8bのいずれか一方8a(8b)が失陥したときに、他方の正常な反力モータ8b(8a)のみで前記ステアリングホイールに操舵反力を与えても良い。これにより、ステアバイワイヤ制御が続行可能となる。このように、二つの反力モータ8a,8bのいずれか一方8a(8b)が失陥したときに、他方の正常な反力モータ8b(8a)とその正常な反力モータ8b(8a)の制御手段18(17)とで反力付与を行うようにした場合、二つの反力モータ8a,8bのいずれか一つが失陥してもステアバイワイヤ制御を続行することができる。この場合に、一つの反力モータで反力付与を行うため、正常時と同様なモータ出力では、付与される反力が半減するが、正常である場合の出力よりも大きな出力で前記反力付与を行うようにしても良い。その場合に、車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を行うようにしても良い。
好ましい実施形態において、前記第一および第二の制御手段17,18のいずれか一方17(18)が失陥したときに、前記第一および第二の制御手段17,18のうちの他方の制御手段18(17)のみが、対応する前記反力モータ8b(8a)を制御しても良い。これにより、ステアバイワイヤ制御が続行可能となる。この場合に、前記正常な第二または第一の制御手段18(17)の対応する反力モータ8b(8a)は、二つの制御手段17,18が正常である場合の出力よりも大きな出力で前記反力付与を行うようにしても良い。
このように、前記第一および第二のいずれか一方の制御手段17,18が失陥したときに、他方の正常な制御手段17,18による制御により、正常な制御手段17,18に対応する反力モータで反力付与を行うようにした場合、前記第一および第二のいずれか一方の制御手段17,18が失陥してもステアバイワイヤ制御を続行することができる。この場合に、一つの反力モータ8a,8bで反力付与を行うため、正常時と同様なモータ出力では、付与される反力が半減するが、正常である場合の出力よりも大きな出力で前記反力付与を行うようにしても良い。この場合に、車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を行うようにしても良い。
好ましい実施形態において、前記第一および第二の制御手段17,18のいずれか一方17(18)および前記第三の制御手段19が失陥していると前記故障判定信号切替手段20が判定すると、前記第一および第二の制御手段17,18のうちの他方の制御手段18(17)が、対応する反力モータ8b(8a)のみで前記ステアリングホイール2に操舵反力を与えさせ、前記故障判定信号切替手段20が、前記他方の制御手段18(17)の前記予備指令部18c(17c)を前記転舵装置6に作動的に接続することで、この予備指令部18c(17c)が前記転舵装置6を制御しても良い。これにより、前記第三の制御手段19が代行されて、ステアバイワイヤ制御が続行可能となる。
この構成の場合、第一の制御手段17および前記第二の制御手段18のいずれか一方17(18)と、前記第三の制御手段19とが失陥していても、正常な他方の制御手段18(17)で対応する反力モータ8b(8a)の一つを駆動して反力を付与でき、またその正常な他方の制御手段18(17)の予備指令部18c(17c)による代行により転舵装置6の転舵モータ15を駆動し、ステアバイワイヤ制御を続行することができる。
この場合も、第一の制御手段17および第二の制御手段18のうちの正常な制御手段18(17)は、二つの反力モータ8a,8bで駆動する場合よりも大きなトルクが出力されるように対応する反力モータ8b(8a)に指令を与えても良い。この場合に、車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を行うようにしても良い。
好ましい実施形態において、さらに、前記ステアリングホイール2の操舵動作を前記転舵装置6に機械的に伝える連結状態と連結解除状態とを切換えるクラッチ13を備え、前記故障判定信号切替手段20は、前記第一の制御手段17と前記第二の制御手段18の両方が失陥していると判定した場合、当該車両操舵の制御を、前記ステアバイワイヤ制御から、前記クラッチ13を連結させ、前記転舵装置6の転舵モータ15によるアシスト力を付与する電動パワーステアリング制御に移行させるようにしても良い。この構成の場合、第一および第二の両方の制御手段17,18が失陥していても、電動パワーステアリング制御によって操舵し、車両の走行を行うことができる。
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明から、より明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の符号は、同一または相当する部分を示す。
この発明の一実施形態に係る車両操舵装置の概念構成を示すブロック図である。
図1の車両操舵装置における反力付与部の一例を示す断面図である。
図2の反力付与部をIII-III線から見た平面図である。
図1の車両操舵装置における車両操舵用制御装置の概念構成を示すブロック図である。
図4の車両操舵用制御装置の状態遷移図である。
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1は、この車両操舵装置の概略構成図を示す。この車両操舵装置100は、機械的な構成部分である車両操舵機構1と、この車両操舵機構1を制御する車両操舵用制御装置16とで構成される。この車両操舵用制御装置は、電子制御ユニット16から構成される。車両操舵装置100は、通常時には自動車をステアバイワイヤ方式で転舵するもので、異常時にはステアリングホイール2と転舵装置6とを機械的に接続して、ステアリングホイール2の操舵により直接転舵を行うように構成されたバックアップ機能を備える。
車両操舵機構1は、主な構成を説明すると、運転者が操舵するステアリングホイール2と、ステアリングホイール2に操舵反力を与える反力付与部3と、ステアリングホイール2と反力付与部3を連結する操舵軸10と、一対の、転舵輪である前輪4,5を転舵させる転舵装置6と、異常時にステアリングホイール2の回転力を転舵装置6に伝達するクラッチ13と、反力付与部3とクラッチ13とを連結している第1連結軸11およびクラッチ13と転舵装置6とを連結している第2連結軸12とから構成される。電子制御ユニット16は、車両操舵機構1の反力付与部3、転舵装置6、およびクラッチ13を制御する。
反力付与部3は、操舵トルク検出器7、反力生成部8および回転角検出器9を備える。
転舵装置6は、転舵モータ15と、この転舵モータ15の回転を直線運動に変換して前記一対の前輪4,5を支持する機構に伝える運動変換機構(図示せず)と、転舵軸の転舵角を検出する転舵角検出器14とを備える。
このステアバイワイヤ式の車両操舵機構1を制御するための電子制御ユニット16は、反力付与と転舵角調整に関する制御とを行う。
図2に、反力付与部3の概略構成図を示す。
反力付与部3には、図1のステアリングホイール2と共に回転する操舵軸10と、二つの反力モータ8a,8b(図3参照)を持つ反力生成部8と、前記反力モータ8a,8bの回転を減速して前記操舵軸10に伝達する減速機構31とを備える。図1のクラッチ13が非連結状態にある際、反力付与部3は、転舵装置6の転舵量、前輪4,5からの荷重、車速の検出信号、前記操舵トルク検出器(例えばトルクセンサ)7からの信号、および操舵角等を用いて、定められた演算規則に従って決定される操舵反力を発生させる。転舵装置6は、操舵角や操舵トルク検出器7からの信号等を用いて前記転舵モータ15を制御して前輪4,5の転舵を行う。
反力付与部3には、図1のステアリングホイール2と共に回転する操舵軸10と、二つの反力モータ8a,8b(図3参照)を持つ反力生成部8と、前記反力モータ8a,8bの回転を減速して前記操舵軸10に伝達する減速機構31とを備える。図1のクラッチ13が非連結状態にある際、反力付与部3は、転舵装置6の転舵量、前輪4,5からの荷重、車速の検出信号、前記操舵トルク検出器(例えばトルクセンサ)7からの信号、および操舵角等を用いて、定められた演算規則に従って決定される操舵反力を発生させる。転舵装置6は、操舵角や操舵トルク検出器7からの信号等を用いて前記転舵モータ15を制御して前輪4,5の転舵を行う。
図3に、反力付与部3の構成(図2のIII-III 矢視)を示す。前記2つの反力モータ8a,8bは、操舵軸10の軸心に垂直な平面内において互いに平行にそれらモータ8a,8bのモータ軸心が位置するように、かつ操舵軸10の両側に位置するように配置されている。前記2つの反力モータ8a,8bは、いずれも、運転に支障が発生しない最低限の反力での反力付与が単独でも可能な出力を有する。操舵軸10に、ウォームホイールからなる大歯車32が設けられている。この大歯車32に、前記各反力モータ8a,8bの出力軸にそれぞれ設けられたウォームからなる2つの小歯車33,33が反対側で噛み合っている。これら大歯車32と2つの小歯車33とで、前記減速機構31が構成される。
前記操舵軸10は、ハウジング41の各分割ハウジング41a,41b(図2)にそれぞれ設けられた軸受42,43によりハウジング41に回転自在に支持されている。前記ウォームからなる小歯車33,33は、前記ハウジング41(図2)に軸受44a,44b,45a,45bによって回転自在に支持されている。
次に、このステアバイワイヤ式操舵装置の制御装置である電子制御ユニット16の概念構成を図4に示す。
電子制御ユニット16は、反力付与部3を制御する、第一の制御手段17および第二の制御手段18と、転舵装置6(図1)を制御する第三の制御手段19と、故障判定部20aと、制御信号切替部21と、モータドライブ回路22とで構成される。故障判定信号切替手段20は、前記故障判定部20aと前記制御信号切替部21とで構成される。前記モータドライブ回路22は、各反力モータ8a,8b、および転舵モータ15のそれぞれに対して個別に設けられているが、一つのブロックで代表して図示している。
前記第一ないし第三の制御手段17,18,19は、それぞれが独立した装置である電気制御ユニットで構成され、以下の説明において、それぞれECU1,ECU2,ECU3と称する場合がある。
第一の制御手段17(ECU1)と第二の制御手段18(ECU2)とは、反力付与部3に内蔵された反力モータ8a,8bをそれぞれ制御する。
第一の制御手段17(ECU1)は、第一の反力モータ8aを制御するための第一反力指令部17aを備え、この他に、第二の制御手段18(ECU2)と第三の制御手段19(ECU3)の異常状態を監視する相互監視部17bと、後述の第一の予備指令部17cとを備える。第一の制御手段17(ECU1)には、図1に示すステアリングホイール2の操舵角を検出するための回転角検出器9と、ステアリングホイール2から操舵軸10に伝達した操舵トルクを検出する操舵トルク検出器7が接続される。
第二の制御手段18(ECU2)は、第二の反力モータ8bを制御するための第二反力指令部18aを備え、この他に、第一の制御手段17(ECU1)と第三の制御手段19(ECU3)の異常状態を監視する相互監視部18bと、後述の第二の予備指令部18cとを備える。第二の制御手段18(ECU2)には、図1に示すステアリングホイール2の操舵角を検出するための回転角検出器9と、ステアリングホイール2から操舵軸10に伝達した操舵トルクを検出する操舵トルク検出器7が接続される。
第三の制御手段19(ECU3)は、転舵モータ15を制御するための転舵角指令部19aを備え、この他に、第一の制御手段17(ECU1)と第二の制御手段18(ECU2)の異常状態を監視する相互監視部19bを備える。第三の制御手段19(ECU3)には、図1に示す前記操舵輪4,5の転舵角を検出する転舵角検出器14が接続される。
さらに、第一の制御手段17(ECU1)および第二の制御手段18(ECU2)は、第三の制御手段19(ECU3)の失陥対策として、それぞれ第一および第二の予備指令部17c,18cを備える。
これら第一および第二の予備指令部17c,18cは、第三の制御手段19(ECU3)に備えた転舵指令部19aに代替えして転舵モータ15を駆動することができる。従って、第三の制御手段19(ECU3)が故障判定部20によって異常と判定された場合、故障判定部20からの判定結果を受け、第一の制御手段17(ECU1)の第一の予備指令部17cと第二の制御手段18(ECU2)の第二の予備指令部18cのいずれか一方が、第三の制御手段19(ECU3)に代替えして転舵モータ15を制御することが可能である。従って、ステアバイワイヤ制御を続行することが可能である。
これら第一および第二の予備指令部17c,18cは、転舵モータ15を予備的に駆動するための指令を主目的とするが、反力モータ8a、8b側のモータ駆動のための指令部として兼用することが可能である。従って、第一の制御手段17(ECU1)が、故障判定部20aによって異常と判定された場合、故障判定部20aからの判定結果を受け、第二の制御手段18(ECU2)が、第一の制御手段17(ECU1)に代替えして第一の反力モータ8aを制御することが可能である。従って、ステアバイワイヤ制御を続行することが可能である。
第二の制御手段18(ECU2)が、故障判定部20aによって異常と判定された場合、故障判定部20aからの判定結果を受け、第一の制御手段17(ECU1)が、第二の制御手段18(ECU2)に代替えして第二の反力モータ8bを制御することが可能である。従って、ステアバイワイヤ制御を続行することが可能である。
故障判定信号切替手段20の故障判定部20aは、第一の制御手段17(ECU1)、第二の制御手段18(ECU2)および第三の制御手段19(ECU3)にそれぞれ備えられた相互診断部17b,18b,19bの判定結果を受けて、第一の制御手段17(ECU1)、第二の制御手段18(ECU2)および第三の制御手段19(ECU3)それぞれの故障の状況を判定する。故障診断方法は、種々の方法が採用可能であるが、ここで説明は省略する。
制御信号切替部21は、故障判定部20aから出力された判定結果を受けて、以下の機能を果たす。
例えば、第一の制御手段17(ECU1)が、故障判定部20aによって異常と判定された場合、故障判定部20aからの判定結果を受け、第二の反力モータ8bと第二の制御手段18(ECU2)により、ステアバイワイヤ制御が続行する。この場合に、運転に支障が発生しない最低限の反力を付与させるようにしても良い。
上記の「運転に支障が発生しない最低限の反力」を付与するトルク指令は、例えば、第二の制御手段18(ECU2)の第二反力指令部18aが、前記故障判定部20aからの判定結果に応答して、正常時とは異なる値のトルク指令を、定められた規則に従って生成して出力する。
第1の反力モータ8aが故障したときも、第一の制御手段17(ECU1)が異常と判定された場合の上記の処理と同様の処理が第二の反力モータ8bと第二の制御手段18(ECU2)により行われる。
上記と同様に、第二の制御手段18(ECU2)が、故障判定部20aによって異常と判定された場合は、故障判定部20aからの判定結果を受け、第一の反力モータ8aと第一の制御手段17(ECU2)により、ステアバイワイヤ制御を続行する。この場合に、運転に支障が発生しない最低限の反力を付与させるようにしても良い。
上記の「運転に支障が発生しない最低限の反力」を付与するトルク指令は、例えば、前記と同様に、第一の制御手段17(ECU1)の第一反力指令部17aが、前記故障判定部20aからの判定結果に応答して、正常時とは異なる値のトルク指令を、定められた規則に従って生成して出力する。
第2の反力モータ8bが故障したときも、第二の制御手段18(ECU2)が異常と判定された場合の上記の処理と同様の処理が第一の反力モータ8aと第一の制御手段17(ECU1)により行われる。
第三の制御手段19(ECU3)が、故障判定部20aによって異常と判定された場合、故障判定部20aからの判定結果を受け、第一の制御手段17(ECU1)の第一の予備指令部17cと第二の制御手段18(ECU2)の第二の予備指令部18cのいずれか一方が、第三の制御手段19(ECU3)に代替えして転舵モータ15を制御することが可能とされる。従って、ステアバイワイヤ制御を続行することが可能である。第三の制御手段19(ECU3)に代替えして第一の制御手段17(ECU1)と第二の制御手段18(ECU2)とのいずれを用いるようにするかは、これら第一の制御手段17(ECU1)または第二の制御手段18(ECU2)等に規則等として定めておく。
図5にバックアップ状態への状態遷移図を示す。
なお、図中において、F1~F3は、それぞれ、第一の制御手段17(ECU1)の失陥、第二の制御手段18(ECU2)の失陥、および第三の制御手段19(ECU3)の失陥の状況を示す。
なお、図中において、F1~F3は、それぞれ、第一の制御手段17(ECU1)の失陥、第二の制御手段18(ECU2)の失陥、および第三の制御手段19(ECU3)の失陥の状況を示す。
正常状態においては、第一の制御手段17(ECU1)と第二の制御手段18(ECU2)の組合せと、第三の制御手段19(ECU3)とによって、正常なステアバイワイヤ制御を実行する。(ステップS1)。
第一の制御手段(ECU1)17が故障判定部20aによって異常と判定された場合(F1)は、第二の制御手段18(ECU2)と、第三の制御手段19(ECU3)とによって、ステアバイワイヤ制御を続行させることが可能となる(ステップS2)。この場合、例えば車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を継続し、ステアバイワイヤ制御を続行させる。
第三の制御手段19(ECU3)が故障判定部20aによって異常と判定された場合(F3)は、第一の制御手段17(ECU1)と、第二の制御手段18(ECU2)とによって、ステアバイワイヤ制御を続行させることが可能となる(ステップS3)。ここで、第一の予備指令部17cまたは第二の予備指令部18cが転舵装置6を制御する。
第二の制御手段18(ECU2)が故障判定部20aによって異常と判定された場合(F2)は、第一の制御手段17(ECU1)と、第三の制御手段19(ECU3)とによって、車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を継続することでステアバイワイヤ制御を続行させることが可能となる(ステップS4)。
第一の制御手段17(ECU1)と第三の制御手段19(ECU3)の二つの制御手段が、故障判定部20aによって、異常と判定された場合(F1&F2)は、第二の制御手段18(ECU2)によって、車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を継続し、転舵装置6を第二の予備指令部18cが制御することでステアバイワイヤ制御を続行させることが可能となる(ステップS5)。
第二の制御手段18(ECU2)と第三の制御手段19(ECU3)の二つの制御手段が、故障判定部20aによって、異常と判定された場合(F2&F3)は、第一の制御手段17(ECU1)によって、車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を継続し、転舵装置6を第一の予備指令部17cが制御することでステアバイワイヤ制御を続行させることが可能となる(ステップS6)。
第一の制御手段17(ECU1)と第二の制御手段18(ECU2)の二つの制御手段が、故障判定部20aによって、異常と判定された場合(F1&F2)は、即座にクラッチ13が連結され、ステアバイワイヤ制御から、転舵装置6の転舵モータ15によるアシスト力を付与する電動パワーステアリング制御へ切り替えられる(ステップS7)。
第一の制御手段17(ECU1)と第二の制御手段18(ECU2)と第三の制御手段19(ECU3)との全てが、故障判定部20aによって、異常判定された場合(F1&F2&F3)は、ステアリングホイール2と転舵装置6がクラッチ13により連結され、これにより、ステアリングホイール2によって転舵を直接行うように切り替えられる(ステップS8)。
なお、これらの切り替えを可能にするため、転舵装置6に装備された転舵角検出器14(図1参照)の信号は、常時、第一の制御手段17(ECU1)、第二の制御手段18(ECU2)、および第三の制御手段19(ECU3)に並列に入力される。
この構成の車両操舵装置によると、上記のように、反力付与部3は反力を付与する最低限の出力を有するモータとして、反力モータ8a,8bの二つを設置した構成とし、その反力モータ8a,8bの二つのそれぞれに制御手段17,18を設置し、さらにそれぞれの制御手段17,18には転舵装置用の第一および第二の予備指令部17c,18cを装備したため、転舵装置6の制御手段19、または反力付与部3の二つの反力モータ8a,8bのうちのいずれかの制御手段17,18が失陥しても、ステアバイワイヤ制御が続行可能となる。
言い換えると、反力付与部3の反力モータ8a,8bの二つを制御するそれぞれの制御手段17,18が同時に失陥しない限り、車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を継続することで、ステアバイワイヤ制御が続行可能となる。また、第一および第二の制御手段17,18に第一および第二の予備指令部17c,18cをそれぞれ設けたことによって、失陥時における転舵装置6の制御、および二つの反力モータ15の制御の機能が得られ、第一および第二の予備指令部17c,18cを設けただけの簡素な構成で、より優れた冗長機能が得られる。
反力付与部3は二つの反力モータ8a,8bで構成するため、二つの反力モータ8a,8bのいずれか一方が失陥した際にも、他方の正常な反力モータで車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を継続することで、ステアバイワイヤ制御を続行が可能となる。
また、上記のように車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を継続することで、ステアバイワイヤ制御を維持でき状態遷移のパターンを経済的に増加させることができる。図5の状況F1および状況F2の場合、従来では電動パワーステアリング制御へと遷移していたが、この実施形態では上記のステップS2およびS3のようにステアバイワイヤ制御を維持することができる。
また、二つの反力モータ8a,8bのいずれか一つが失陥したときに(ステップS2、S4)、正常な反力モータ8a,8bで車両運転に支障のない最低限の反力で反力付与を継続することで、ステアバイワイヤ制御の続行が可能となる。
前記二つの反力モータ8a,8bは、通常はその協調動作により反力を付与し、万一一方のモータが失陥した場合は、操舵に大きな影響を与えない程度の反力が他方のモータにより付与されればよいため、モータを小型化できる。
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2…ステアリングホイール
3…反力付与部
6…転舵装置
8a,8b…反力モータ
16…電子制御ユニット(車両操舵用制御装置)
17…第一の制御手段
17c…第一の予備指令部
18…第二の制御手段
18c…第二の予備指令部
19…第三の制御手段
20…故障判定信号切替手段
3…反力付与部
6…転舵装置
8a,8b…反力モータ
16…電子制御ユニット(車両操舵用制御装置)
17…第一の制御手段
17c…第一の予備指令部
18…第二の制御手段
18c…第二の予備指令部
19…第三の制御手段
20…故障判定信号切替手段
Claims (6)
- 第一および第二の反力モータを有し、これら第一および第二の反力モータの少なくとも一方によって車両のステアリングホイールに操舵反力を与える反力付与部と、
前記ステアリングホイールの操舵角を用いて、前記車両の車輪の転舵角を変更する転舵装置と、
前記反力付与部および前記転舵装置を制御する車両操舵用制御装置とを備えたステアバイワイヤ制御の車両操舵装置において、
前記車両操舵用制御装置は、
前記第一の反力モータを制御する第一の制御手段であって、前記転舵装置を制御するように構成された第一の予備指令部を有する第一の制御手段、
前記第二の反力モータを制御する第二の制御手段であって、前記転舵装置を制御するように構成された第二の予備指令部を有する第二の制御手段、
前記転舵装置を制御する第三の制御手段、および
前記第三の制御手段の失陥を監視して失陥と判定したときに、前記第一の予備指令部または前記第二の予備指令部を前記転舵装置に作動的に接続する故障判定信号切替手段を有する、車両操舵装置。 - 請求項1に記載の車両操舵装置において、前記第一の予備指令部は、さらに、第二の反力モータを制御するように構成され、第二の予備指令部は、さらに、前記第一の反力モータを制御するように構成された、車両操舵装置。
- 請求項1または請求項2に記載の車両操舵装置において、前記第一および第二の反力モータのいずれか一方が失陥したときに、他方の正常な反力モータのみで前記ステアリングホイールに操舵反力を与える、車両操舵装置。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両操舵装置において、前記第一および第二の制御手段のいずれか一方が失陥したときに、前記第一および第二の制御手段のうちの他方の制御手段のみが、対応する反力モータを制御する、車両操舵装置。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両操舵装置において、前記第一および第二の制御手段のいずれか一方および前記第三の制御手段が失陥していると前記故障判定信号切替手段が判定すると、前記第一および第二の制御手段のうちの他方の制御手段が、対応する反力モータのみで前記ステアリングホイールに操舵反力を与えさせ、前記故障判定信号切替手段が、前記他方の制御手段の前記予備指令部を前記転舵装置に作動的に接続することで、この予備指令部が前記転舵装置を制御する車両操舵装置。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両操舵装置において、さらに、
前記ステアリングホイールの操舵動作を前記転舵装置に機械的に伝える連結状態と連結解除状態とを切換えるクラッチを備え、
前記故障判定信号切替手段は、前記第一の制御手段と前記第二の制御手段の両方が失陥していると判定した場合、当該車両操舵の制御を、前記ステアバイワイヤ制御から、前記クラッチを連結させ、前記転舵装置の転舵モータによるアシスト力を付与する電動パワーステアリング制御に移行させる車両操舵装置。
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