WO2015146782A1 - 撓み噛み合い式歯車装置 - Google Patents
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Abstract
撓み噛み合い式歯車装置は、第1の歯数を有する第1内歯歯車(11)と、第2の歯数を有し、第1内歯歯車と同軸に並置された第2内歯歯車(12)と、前記第1の歯数と等しい第3の歯数を有する外歯歯車(20)と、前記撓み外歯歯車の径方向内側に配置された波動発生器(30)とを備える。波動発生器(30)は、該撓み外歯歯車(20)を撓ませることによって、該撓み外歯歯車(20)の第1噛合領域(α1)を前記第1内歯歯車(11)に噛合させ、かつ、該撓み外歯歯車(20)の第2噛合領域(α2)を第2内歯歯車(12)に噛合させるとともに、前記撓み外歯歯車(20)の撓み形状を回転させるように構成されている。前記撓み外歯歯車(20)は、軸線方向において第2噛合領域(α2)が存在する側であって前記第1噛合領域(α1)を除く箇所に、他の部分と比較してリム厚の厚い厚肉部(50)を備える。
Description
本発明は、撓み噛み合い式歯車装置に関する。
従来では、撓み噛み合い式歯車装置は、内歯歯車の径方向内側に配置される撓み外歯歯車と、この撓み外歯歯車の径方向内側に配置された波動発生器とを備える。波動発生器は、当該撓み外歯歯車を撓ませることによって撓み外歯歯車を内歯歯車に対して部分的に噛合させるとともに、その撓み形状を回転させることが可能である。例えば、特許文献1に記載の撓み噛み合い式歯車装置は第1及び第2の内歯歯車を備える。第1及び第2の内歯歯車は、異なる歯数を有して同軸に並置されている。撓み外歯歯車は、これら二つの内歯歯車の双方に対して噛合する。
また、このような撓み噛み合い式歯車装置においては、その撓み外歯歯車の剛性が、伝達可能なトルクの大きさ、つまりはトルク伝達容量を決定する重要な要素である。上記特許文献1には、その撓み外歯歯車の剛性を左右する筒状部の厚み、すなわち、リム肉厚に関する最適設計方法が記載されている。
しかしながら、剛性を高めるべくリム厚を厚くすることによって、撓み外歯歯車の可撓性が低下する。このことは、更なる性能の向上を図る上での障害であり、上記の技術には、なお改善の余地が残っている。
本発明の目的は、高い剛性を有するとともに可撓性に優れた撓み外歯歯車を備える撓み噛み合い式歯車装置を提供することにある。
一態様では、撓み噛み合い式歯車装置を提供する。撓み噛み合い式歯車装置は、第1の歯数を有する第1内歯歯車と、前記第1の歯数と異なる第2の歯数を有し、第1内歯歯車と同軸に並置された第2内歯歯車と、前記第1の歯数と等しい第3の歯数を有し、前記第1内歯歯車及び第2内歯歯車の径方向内側に配置される撓み外歯歯車と、前記撓み外歯歯車の径方向内側に配置された波動発生器とを備える。波動発生器は、該撓み外歯歯車を撓ませることによって、該撓み外歯歯車の第1噛合領域を前記第1内歯歯車に対して部分的に噛合させ、かつ、該撓み外歯歯車の第2噛合領域を第2内歯歯車に対して部分的に噛合させるとともに、前記撓み外歯歯車の撓み形状を回転させるように構成されている。前記撓み外歯歯車は、軸線方向において前記第2噛合領域が存在する側であって前記第1噛合領域を除く箇所に、他の部分と比較してリム厚の厚い厚肉部を備える。
[第1の実施形態]
以下、撓み噛み合い式歯車装置に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1~図3に示すように、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1は、径方向外側に延びるフランジ2aを有した扁平略円筒状のハウジング2と、このハウジング2の軸方向一端(図3中、左側)に形成された開口部2bを閉塞する略円板状の蓋部材3と、を備えている。
以下、撓み噛み合い式歯車装置に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1~図3に示すように、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1は、径方向外側に延びるフランジ2aを有した扁平略円筒状のハウジング2と、このハウジング2の軸方向一端(図3中、左側)に形成された開口部2bを閉塞する略円板状の蓋部材3と、を備えている。
図3~図5に示すように、これらのハウジング2及び蓋部材3が形成するケース10内には第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12が同軸に設けられている。第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12は、異なる歯数を有する。第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の径方向内側には、撓み外歯歯車20が配置されている。尚、本実施形態では、この撓み外歯歯車20は、樹脂から形成されている。この撓み外歯歯車20の径方向内側には、波動発生器30が設けられている。波動発生器30は、当該撓み外歯歯車20を略楕円形状に撓ませることによって、該撓み外歯歯車20を上記第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12に対して部分的に噛合させるとともに、その撓められた楕円形状、すなわち、撓み形状を回転させることが可能である。
詳述すると、図3に示すように、ハウジング2の底部2cには、貫通孔31が形成されている。この貫通孔31の一端(図3中、左側)に略円板状のフランジ33aを有した第1軸状部材33が挿通されている。本実施形態の第1内歯歯車11は、そのフランジ33aの周縁を囲む態様で上記第1軸状部材33と一体に形成されている。
具体的には、本実施形態の第1軸状部材33のフランジ33aはケース10内に配置されている。第1軸状部材33は、この状態で、貫通孔31内に設けられた軸受(滑り軸受)2e,2fに軸支されている。これにより、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1では、その第1軸状部材33と一体に設けられた第1内歯歯車11が、ケース10内において同軸回転する。
また、本実施形態の第2内歯歯車12は、蓋部材3と一体に形成されている。尚、本実施形態では、この蓋部材3は、その開口部2bが形成されたハウジング2の軸方向端部に締結される。これにより、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1では、そのケース10内に配置された第2内歯歯車12が、回転不能な状態で上記第1内歯歯車11と同軸に配置される。
さらに詳述すると、図1~図3に示すように、本実施形態では、蓋部材3の中央部には、貫通孔35が設けられている。この貫通孔35には、第2軸状部材36が挿通されている。本実施形態の波動発生器30は、この第2軸状部材36と一体に回転する回転体としてのキャリヤ38と、このキャリヤ38により回転自在に支持された複数のローラ40と、を備える。
具体的には、図3~図6に示すように、本実施形態のキャリヤ38は、第2軸状部材36に対して相対回転不能に固定される軸部38aと、この軸部38aの一端から径方向外側に延設された腕部38bと、この腕部38bから軸部38aの軸線方向(図3中、左右方向)に延設された支持軸38cと、を備えている。
本実施形態のキャリヤ38において、軸部38aは、貫通孔35に設けられた軸受(滑り軸受)3aによって回転自在に支持されている。この軸部38aは、スプライン嵌合により上記第2軸状部材36と同軸に固定されている。この軸部38aを軸方向に貫通する第2軸状部材36の先端は、上記第1軸状部材33のフランジ33aに設けられた軸受(滑り軸受)33bに軸支されている。
また、本実施形態のキャリヤ38において、腕部38bは、上記軸部38aを中心とする回転対称形状、詳しくは長尺略菱形状に形成されている。この腕部38bには、周方向に均等間隔(180°間隔)で配置された二つの支持軸38cが設けられている。
一方、本実施形態のローラ40は略円柱状であり、樹脂をから形成されている。本実施形態の波動発生器30は、上記各支持軸38cに軸支された二つのローラ40を備えている。
即ち、本実施形態の波動発生器30では、その二つのローラ40が撓み外歯歯車20の内周面20sに当接することにより、当該撓み外歯歯車20を略楕円形状に撓ませて上記第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の双方に噛合させる。駆動トルクの入力に基づくキャリヤ38の回転により各ローラ40の当接位置が周方向移動する。これによって、その撓み外歯歯車20の撓み形状を回転させる。
ここで、本実施形態の第2内歯歯車12の歯数は、第1内歯歯車11の歯数よりも僅かに大きい。尚、この第1内歯歯車11と第2内歯歯車12との間の歯数差は、例えば、二歯程度に設定される。撓み外歯歯車20の歯数は、第1内歯歯車11と等しい。
つまり、上記のように波動発生器30が撓み外歯歯車20の撓み形状を回転させるとき、その第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12に対する噛合位置もまた周方向に移動する。本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1では、これにより、その歯数差に基づいて、第1内歯歯車11と第2内歯歯車12とが相対回転する。
尚、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1では、そのフランジ2aを利用してハウジング2を固定することにより、当該ハウジング2とともにケース10を構成する蓋部材3と一体に形成された第2内歯歯車12が固定要素となる。これにより、第2内歯歯車12は、その波動発生器30に連結された第2軸状部材36を入力軸とし、第1内歯歯車11と一体に形成された第1軸状部材33を出力軸とする減速装置として機能する。
(撓み外歯歯車の強化構造)
次に、本実施形態における撓み外歯歯車の強化構造について説明する。
図7に示すように、撓み外歯歯車20は、その軸線方向(図7中、左右方向)に同軸に並置された第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の双方に噛合する。換言すると、撓み外歯歯車20は、その軸線方向における第1端(図7中、右側)に第1内歯歯車11に対する噛合領域(第1噛合領域α1)を有し、第2端(図7中、左側)に第2内歯歯車12に対する噛合領域(第2噛合領域α2)を有している。本実施形態の撓み外歯歯車20は、その軸線方向において第2噛合領域が存在する側であって第1噛合領域α1を除く箇所に、他の部分と比較してリム厚の厚い厚肉部50を備えている。厚肉部50は、外歯歯車20からその歯部20aを除いた筒形状の部分である。
次に、本実施形態における撓み外歯歯車の強化構造について説明する。
図7に示すように、撓み外歯歯車20は、その軸線方向(図7中、左右方向)に同軸に並置された第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の双方に噛合する。換言すると、撓み外歯歯車20は、その軸線方向における第1端(図7中、右側)に第1内歯歯車11に対する噛合領域(第1噛合領域α1)を有し、第2端(図7中、左側)に第2内歯歯車12に対する噛合領域(第2噛合領域α2)を有している。本実施形態の撓み外歯歯車20は、その軸線方向において第2噛合領域が存在する側であって第1噛合領域α1を除く箇所に、他の部分と比較してリム厚の厚い厚肉部50を備えている。厚肉部50は、外歯歯車20からその歯部20aを除いた筒形状の部分である。
詳述すると、本実施形態の撓み外歯歯車20は、その第2噛合領域α2におけるリム厚D2が、第1噛合領域α1を含め、他の部分のリム厚D1よりも厚くなるように形成されている(D2>D1)。つまり、本実施形態では、その第2噛合領域α2に厚肉部50が形成されている。具体的には、図6に示すように、この厚肉部50は、撓み外歯歯車20の内周面20sに当該撓み外歯歯車20の全周に亘る帯状の突出部51を有する態様で形成されている。本実施形態では、これにより、その優れた可撓性を確保しつつ、撓み外歯歯車20の剛性を高めることが可能である。
また、図8に示すように、本実施形態では、波動発生器30の当接部材を構成する各ローラ40は、その撓み外歯歯車20の内周面20sに対する当接面40sを有し、当接面40sには、突出部51に対応する凹部52が形成されている(図6参照)。
具体的には、本実施形態のローラ40は、上記第1噛合領域α1において撓み外歯歯車20の内周面20sに当接する部分(第1当接領域β1)の直径R1よりも上記第2噛合領域α2において撓み外歯歯車20の内周面20sに当接する部分(第2当接領域β2)の直径R2が小さくなるように形成されている(R2<R1)。本実施形態では、この直径差(ΔR=R1-R2)の2分の1、つまりは「凹部52の深さ」は、撓み外歯歯車20に設定されたリム厚差(ΔD=D2-D1)と略等しい値(ΔR/2≒ΔD)に設定される。これによって、その第1当接領域β1及び第2当接領域β2が略均等な面圧で撓み外歯歯車20の内周面20sに当接することが可能である。
以上、本実施形態によれば、以下のような利点を得ることができる。
(1)即ち、撓み外歯歯車20は、第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の双方に噛合する。第1内歯歯車11の歯数は、撓み外歯歯車20の歯数と等しい。第2内歯歯車12の歯数は、撓み外歯歯車20の歯数と異なる。したがって、第2内歯歯車12に対する噛合領域(第2噛合領域α2)に加わる負荷は、第1内歯歯車11に対する噛合領域(第1噛合領域α1)における負荷と比較して、より大きい。その軸線方向において第2噛合領域α2が存在する側であって第1噛合領域α1を除く箇所におけるリム厚を他の部分のリム厚よりも厚くすることによって、優れた可撓性を確保しつつ、効果的に、撓み外歯歯車20の剛性を高めることができる。
(1)即ち、撓み外歯歯車20は、第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の双方に噛合する。第1内歯歯車11の歯数は、撓み外歯歯車20の歯数と等しい。第2内歯歯車12の歯数は、撓み外歯歯車20の歯数と異なる。したがって、第2内歯歯車12に対する噛合領域(第2噛合領域α2)に加わる負荷は、第1内歯歯車11に対する噛合領域(第1噛合領域α1)における負荷と比較して、より大きい。その軸線方向において第2噛合領域α2が存在する側であって第1噛合領域α1を除く箇所におけるリム厚を他の部分のリム厚よりも厚くすることによって、優れた可撓性を確保しつつ、効果的に、撓み外歯歯車20の剛性を高めることができる。
つまり、撓み外歯歯車20の剛性を高めることで、異なる歯数を有した第2内歯歯車12と撓み外歯歯車20との間に噛み合い位相のズレ(所謂「歯飛び」)が生じ難くなる。これにより、そのトルク伝達容量の向上と耐用期間の延長を図ることができる。また、その優れた可撓性によって、撓み外歯歯車20を撓めるため及びその撓み形状を保持するために必要な力が小さくなる。これにより、高いトルク伝達効率を確保することができる。更に、第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12に対する十分な噛み合い代を確保することができる。これにより、その撓み噛み合い式歯車装置1を安定的に動作させることができる。
(2)撓み外歯歯車20は、第2噛合領域α2におけるリム厚D2が、第1噛合領域α1を含め、他の部分のリム厚D1よりも厚くなるように形成される(D2>D1)。
この場合、歯数の異なる第2内歯歯車12との噛み合いにより大きな負荷が加わる第2噛合領域α2に厚肉部50が形成される。その結果、優れた可撓性を確保しつつ、効果的に、撓み外歯歯車20の剛性を高めることができる。
この場合、歯数の異なる第2内歯歯車12との噛み合いにより大きな負荷が加わる第2噛合領域α2に厚肉部50が形成される。その結果、優れた可撓性を確保しつつ、効果的に、撓み外歯歯車20の剛性を高めることができる。
(3)上記厚肉部50は、撓み外歯歯車20の内周面20sに形成された突出部51を有する。波動発生器30の当接部材を構成する各ローラ40の当接面40sには、前記突出部51に対応する凹部52が形成される。
この場合、撓み外歯歯車20の軸線方向に沿って設定されたリム厚差に依らず、略均等な面圧で当該撓み外歯歯車20の内周面20sに各ローラ40が当接することが可能になる。これにより、その撓み外歯歯車20を軸線方向の全域に亘って略均一に撓め、及びその均一な撓み形状を維持したまま回転させることができる。また、その撓み外歯歯車20の内周面20sに形成された突出部51と各ローラ40の当接面40sに形成された凹部52とが干渉するので、撓み外歯歯車20と各ローラ40との間の相対的な軸線方向移動が規制される。これにより、第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12と撓み外歯歯車20との間の良好な噛合状態を維持することができる。その結果、より高いトルク伝達効率を確保することができる。
[第2の実施形態]
以下、撓み噛み合い式歯車装置に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
以下、撓み噛み合い式歯車装置に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
図9~図11に示すように、本実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1Bは、上記第1の実施形態における撓み噛み合い式歯車装置1との比較において、その撓み外歯歯車20B(20)及び波動発生器30B(30)の形状が相違する。
詳述すると、本実施形態の撓み外歯歯車20Bもまた、その軸線方向(図10中、左右方向)において第2噛合領域α2が存在する側であって第1噛合領域α1を除く箇所に、他の部分と比較してリム厚の厚い厚肉部50Bを備えている。本実施形態の撓み外歯歯車20Bは、第1噛合領域α1と第2噛合領域α2との間の中間領域α3に、第1噛合領域α1及び第2噛合領域α2を含め、他の部分のリム厚D0よりも厚いリム厚D3(最大値)を有した厚肉部50Bを有している(D3>D0)。
具体的には、この厚肉部50Bは、撓み外歯歯車20Bの内周面20sにリング状の突出部51Bを有する態様で形成されている。撓み外歯歯車20Bの軸線方向に沿った突出部51Bの断面形状は、略半円形である。本実施形態では、これにより、その優れた可撓性を確保しつつ、撓み外歯歯車20Bの剛性を高めることが可能である。
更に、本実施形態においてもまた、波動発生器30Bの当接部材を構成する各ローラ40Bは、その撓み外歯歯車20Bの内周面20sに対する当接面40sを有し、当接面40sには、突出部51Bに対応する凹部52Bが形成されている。
具体的には、図11に示すように、本実施形態では、各ローラ40Bの当接面40sにおける第1当接領域β1と第2当接領域β2との間の中間領域β3には、その各ローラ40Bの全周に亘って凹部52Bが形成されている。凹部52Bは、上記撓み外歯歯車20Bの内周面20sに形成された突出部51Bの断面形状と略等しい略半円形の断面形状を有する。
また、本実施形態のローラ40Bの直径は、この凹部52Bの底部52bにおいて最小となる。ローラ40Bは、この凹部52Bの底部52bにおける直径R3と他の部分の直径R0との間の直径差(ΔR=R0-R3)の2分の1、つまりは「凹部52Bの深さ」が、上記撓み外歯歯車20Bに設定されたリム厚差(ΔD=D3-D0)よりも大きな値となるように形成されている(ΔR/2>ΔD)。
以上、本実施形態においてもまた、上記第1の実施形態と同様、優れた可撓性を確保しつつ、効果的に、撓み外歯歯車20の剛性を高めることができる。本実施形態の構成を採用することにより、以下のような特徴的な利点を得ることができる。
(1)即ち、軸線方向に同軸に並置された第1内歯歯車11及び第2内歯歯車12の双方に噛合する撓み外歯歯車20Bには、当該撓み外歯歯車20Bを捩じ切るような「せん断応力」が作用する。従って、上記のように、この「せん断応力」が強く作用する第1噛合領域α1と第2噛合領域α2との間の中間領域α3に限定して厚肉部50Bを設定することで、優れた可撓性を確保しつつ、効果的に、撓み外歯歯車20Bの剛性を高めることができる。
(2)厚肉部50Bは、撓み外歯歯車20Bの内周面20sに形成された突出部51Bを有する。波動発生器30Bの当接部材を構成する各ローラ40Bの当接面40sには、突出部51Bに対応する凹部52Bが形成される。各ローラ40Bは、その凹部52Bの底部52bにおける直径R3と他の部分の直径R0との間の直径差の2分の1、つまりは「凹部52Bの深さ」が、撓み外歯歯車20Bに設定されたリム厚差よりも大きな値となるように形成される。
この場合、軸線方向のリム厚差に依らず、略均等な面圧で当該撓み外歯歯車20Bの内周面20sにローラ40Bが当接することができる。詳しくは、その第1噛合領域α1及び第2噛合領域α2に対して第1当接領域β1及び第2当接領域β2を当接させることができる。
(3)また、金型を用いて撓み外歯歯車20Bを樹脂成形する場合には、その型割面を厚肉部50Bに設定するとよい。これにより、高い剛性を確保することができるともに、その製造を容易化することができる。
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1(1B)では、第2内歯歯車12は固定要素である。第2内歯歯車12は、波動発生器30(第2軸状部材36)を入力要素とし、第1内歯歯車11(第1軸状部材33)出力要素とした減速装置として機能する。しかし、これに限らず、第1内歯歯車11が固定要素であってもよい。2入力1出力、或いは1入力2出力の差動機構として用いられてもよい。
・上記各実施形態の撓み噛み合い式歯車装置1(1B)では、第2内歯歯車12は固定要素である。第2内歯歯車12は、波動発生器30(第2軸状部材36)を入力要素とし、第1内歯歯車11(第1軸状部材33)出力要素とした減速装置として機能する。しかし、これに限らず、第1内歯歯車11が固定要素であってもよい。2入力1出力、或いは1入力2出力の差動機構として用いられてもよい。
・上記第1の実施形態では、第2噛合領域α2に厚肉部50が形成され、第2の実施形態では、第1噛合領域α1と第2噛合領域α2との間の中間領域α3に厚肉部50Bが形成される。しかし、これに限らず、撓み外歯歯車の軸線方向において第2噛合領域α2が存在する側であって第1噛合領域α1を除く箇所の全域、即ち第2噛合領域α2及び中間領域α3に亘って厚肉部が形成されてもよい。また、厚肉部50を第2噛合領域α2に設ける場合、必ずしも当該第2噛合領域α2の全てを厚肉部50としなくともよい。同様に、厚肉部50Bを中間領域α3に設ける場合についてもまた、その中間領域α3の全てを厚肉部50としなくともよい。第2噛合領域α2及び中間領域α3について、それぞれ部分的に厚肉部を形成してもよい。
・上記各実施形態では、撓み外歯歯車20(20B)及び各ローラ40(40B)は、樹脂から形成されるが、例えば、金属を用いる等、その材質は任意に変更してもよい。
・上記各実施形態では、各ローラ40(40B)の当接面40sには、厚肉部50(50B)の設定により撓み外歯歯車20(20B)の内周面20sに形成された突出部51(51B)に対応する凹部52(52B)が形成される。しかし、これに限らず、例えば、撓み外歯歯車20(20B)の突出部51(51B)が小さい場合等には、このような凹部52(52B)は、必ずしも形成しなくともよい。
・上記各実施形態では、各ローラ40(40B)の当接面40sには、厚肉部50(50B)の設定により撓み外歯歯車20(20B)の内周面20sに形成された突出部51(51B)に対応する凹部52(52B)が形成される。しかし、これに限らず、例えば、撓み外歯歯車20(20B)の突出部51(51B)が小さい場合等には、このような凹部52(52B)は、必ずしも形成しなくともよい。
・上記第1の実施形態では、ローラ40における第1当接領域β1と第2当接領域β2との直径差(ΔR=R1-R2)の二分の1、つまりは「凹部52の深さ」が、撓み外歯歯車20側のリム厚差(ΔD=D2-D1)と略等しい値(ΔR/2≒ΔD)に設定されるが、そのリム厚差よりも大きい値としてもよい(ΔR/2>ΔD)。
・また、第2の実施形態におけるローラ40Bについては、凹部52Bの底部52bにおける直径R3と他の部分の直径R0との間の直径差(ΔR=R0-R3)の2分の1、つまりは「凹部52Bの深さ」が、上記撓み外歯歯車20Bに設定されたリム厚差(ΔD=D3-D0)と略等しい値となるように形成してもよい(ΔR/2≒ΔD)。
・上記各実施形態では、周方向に均等間隔(180°間隔)で配置された一対のローラ40を当接部材とした波動発生器30(30B)を用いる。しかし、これに限らず、例えば、楕円ボールベアリングを用いる構成であってもよい。また、図12に示すように、放射状に配置された複数のスポーク61と、これらの複数のスポーク61を互いに連結する可撓性を有した円環状の連結部62と、楕円カム63と、を備えた波動発生器30Cを用いてもよい。各スポーク61の第1端は、撓み外歯歯車20Cの内周面20sに当接する。各スポーク61の第2端は、楕円カム63に当接する。このような波動発生器30Cを用いる場合についてもまた、その当接部材の当接面(スポーク61の端面)に、撓み外歯歯車の内周面に形成された突出部に対応する凹部を形成するとよい。
・また、各ローラ40(40B)は、必ずしも一部材により形成されなくともよい。例えば、第1当接領域β1及び第2当接領域β2を構成する二つのローラ部材であってもよく、これらに加えて中間領域β3を構成する3つ目のローラ部材を備えてもよい。このような分割構造を採用することより、その製造を容易化することができる。
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を利点とともに記載する。
(イ)前記波動発生器は、駆動トルクに基づき回転する回転体と、該回転体により回転自在に支持された複数の当接部材と、を備える。
(イ)前記波動発生器は、駆動トルクに基づき回転する回転体と、該回転体により回転自在に支持された複数の当接部材と、を備える。
このような波動発生器を用いる場合には、撓み外歯歯車の撓み形状を一定に保持することが重要となる。この場合、各請求項の構成を適用することによって、より顕著な効果を得ることができる。
(ロ)前記撓み外歯歯車は、前記第2噛合領域において前記撓み外歯歯車の内周面から突出する前記突出部を有する。
(ハ)前記撓み外歯歯車は、前記第1噛合領域と前記第2噛合領域との間の中間領域において前記撓み外歯歯車の内周面から突出する前記突出部を有する。
(ハ)前記撓み外歯歯車は、前記第1噛合領域と前記第2噛合領域との間の中間領域において前記撓み外歯歯車の内周面から突出する前記突出部を有する。
Claims (6)
- 第1の歯数を有する第1内歯歯車と、
前記第1の歯数と異なる第2の歯数を有し、第1内歯歯車と同軸に並置された第2内歯歯車と、
前記第1の歯数と等しい第3の歯数を有し、前記第1内歯歯車及び第2内歯歯車の径方向内側に配置される撓み外歯歯車と、
前記撓み外歯歯車の径方向内側に配置された波動発生器であって、該撓み外歯歯車を撓ませることによって、該撓み外歯歯車の第1噛合領域を前記第1内歯歯車に対して部分的に噛合させ、かつ、該撓み外歯歯車の第2噛合領域を第2内歯歯車に対して部分的に噛合させるとともに、前記撓み外歯歯車の撓み形状を回転させるように構成された波動発生器と、を備え、
前記撓み外歯歯車は、軸線方向において前記第2噛合領域が存在する側であって前記第1噛合領域を除く箇所に、他の部分と比較してリム厚の厚い厚肉部を備える撓み噛み合い式歯車装置。 - 前記厚肉部は、前記撓み外歯歯車の内周面に形成された突出部を有し、
前記波動発生器は、前記撓み外歯歯車の内周面に当接する当接部材を有し、該当接部材の当接面には、前記突出部に対応する凹部が形成されている、請求項1に記載の撓み噛み合い式歯車装置。 - 前記厚肉部は、前記第2噛合領域に形成されている、請求項1又は2に記載の撓み噛み合い式歯車装置。
- 前記厚肉部は、前記第1噛合領域と前記第2噛合領域との間の中間領域に形成されている、
請求項1~3の何れか一項に記載の撓み噛み合い式歯車装置。 - 前記当接部材は、前記撓み外歯歯車の周方向に複数配置されたローラである、請求項2に記載の撓み噛み合い式歯車装置。
- 前記波動発生器は、複数のスポークと、該複数のスポークを互いに連結する連結部と、1つのカムとを有し、
各スポークは第1端と第2端とを有し、該第1端は、前記撓み外歯歯車の内周面に当接し、該第2端は、前記カムに当接する、
請求項1に記載の撓み噛み合い式歯車装置。
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