WO2015049932A1 - ローラチェーン - Google Patents

Abstract

　内リンク（１３）を構成する一対のリンクプレート（１２）は、ピン（２５）を介し、外リンク（１５）を構成する一対のリンクプレート（１４）に対して回動自在に連結されている。ピン（２５）は、外側のリンクプレートのピン挿入孔（２８）に挿入されている。円筒状のブシュ（２０）は、内側のリンクプレート（１２）のブシュ挿入孔（１８）に嵌入されている。ピン（２５）は、ブシュ（２０）の孔に挿通されている。ローラ（２２）は、ブシュ（２０）の外周面に取り付けられている。ブシュ（２０）は、二つのブシュ部材（２１）からなる。ブシュ部材（２１）は、筒部（２１ａ）と、筒部（２１ａ）の端部に形成されたフランジ部（２１ｂ）とを有している。

Description

ローラチェーン

　本発明は、ローラチェーンに関する。

　一般に、この種のローラチェーンは、直列に配置された複数のリンクを回動可能に連結して構成されている。複数のリンクのそれぞれは、対向して配置される一対のリンクプレートにより構成されている。隣り合うリンクのリンクプレートの端部は、ピン及びブシュにより回動自在に互いに連結されている。ブシュは、一対のリンクプレートに対して、両リンクプレート間の距離を保つように組み付けられている。ローラは、ブシュに支持された状態で回転する。ローラチェーンは、ローラにスプロケットを噛み合わせた状態で、ローラチェーンの長手方向に移動する（例えば、特許文献１，２参照）。

　例えば、特許文献１に開示のローラチェーンは、複数の外リンクと複数の内リンクとから構成されている。ブシュは、内リンクを構成する一対のリンクプレート（内プレート）に組み付けられている。ローラは、ブシュに対して回転可能に支持されている。内プレートの前端及び後端には、ブシュの両端が圧入されるブシュ孔が形成されている。外リンクを構成する一対の外プレートの前端及び後端には、ピンの両端が圧入されるピン孔が形成されている。ブシュの両端が内プレートのブシュ孔に圧入されると共に、ブシュ内に挿入されたピンの両端が外プレートのピン孔に圧入されている。これにより、内リンクと外リンクとが交互に連結されている。

　この種のローラチェーンは、潤滑油等を使用できないドライな環境で使用される。この場合、ピン及びブシュ間の摺動面に焼き付きが発生したり、ブシュ及びローラの摺動面に焼き付きが発生したりする。このため、ローラチェーンの部品間の摩耗によりローラチェーンが伸びてしまう。一方、軽量化及び低騒音化や、摩耗及び焼き付けを抑制するため、金属ブシュから樹脂ブシュに変更することが考えられる。樹脂ブシュに使用により、上記の問題は抑制される。

　しかし、リンクプレートに対する樹脂ブシュの嵌合は、金属ブシュのそれに比べて弱い。このため、ローラチェーンに大きな力が作用した状態でローラチェーンを繰り返し使用すると、リンクプレートに対する樹脂ブシュの嵌合が弛む。その結果、リンクプレートから樹脂ブシュが抜ける虞がある。つまり、金属製のリンクプレートに樹脂ブシュを嵌合した場合、金属ブシュを嵌合したときに比べて、リンクプレートからブシュが抜け易い。このように、ブシュの両端の一方が内プレートから抜けると、内プレート間の幅が広くなり、内プレートと外プレートとが接触し易くなる。その結果、リンクに屈曲不良が生じる虞がある。

　リンクプレートに金属ブシュが嵌合される構成を採用したローラチェーンであっても、ローラチェーンの使用中に、リンクプレートに対する金属ブシュの嵌合が弛むことはある。この場合も、上記と同様の課題が生じる。

特開２００８－１８９４０８号公報 特開平０６－２２７６３２号公報

　本発明の目的は、リンクプレートに対するブシュの嵌合が弛んでリンクプレート間の間隔が広がることを抑制でき、リンクの屈曲不良の発生を抑制できるローラチェーンを提供することにある。

　上記課題を解決するため、本発明の第一の態様によれば、対向して配置される一対のリンクプレートからなる複数のリンクと、隣り合うリンクのリンクプレートの端部同士を回動自在に連結するピンと、ピンを中心に回転するローラとを備えたローラチェーンが提供される。ローラチェーンは、内側のリンクを構成する一対のリンクプレートの孔に嵌合された円筒状のブシュであって、ピンがリンクの連結部分で外側のリンクを構成する一対のリンクプレートの孔に挿通されると共にブシュの孔に挿入される円筒状のブシュと、内側のリンクを構成する一対のリンクプレート間に配置され、ブシュにより回転可能に支持されるローラと、ブシュに設けられ、ブシュがリンクプレートの孔から内側へ抜けることを防止する抜止部とを備えている。

　例えば、リンクの連結部分において、内側のリンクを構成する一対のリンクプレート間の間隔が長くなることがある。この場合、内側のリンクプレートと外側のリンクプレートとの摺動抵抗が大きくなり、リンクの屈曲不良が発生する虞がある。この点、本願発明によれば、ブシュの抜止部により、ブシュがリンクプレートから内側へ抜けなくなり、リンクプレートに対するブシュの嵌合が弛まなくなる。このため、両リンクプレート間の間隔を、必要な大きさに確保することができる。よって、内側のリンクプレートと外側のリンクプレートとの接触抵抗が小さく抑えられるため、リンクの屈曲不良の発生を抑制することができる。

　上記のローラチェーンにおいて、ブシュは、二つのブシュ部材からなり、二つのブシュ部材は、内側のリンクを構成する一対のリンクプレートの孔に外側からそれぞれ嵌入され、ブシュ部材は、リンクプレートの孔に挿通される筒部と、筒部の端部に設けられるフランジ部とを有し、フランジ部は、リンクの連結部分で内側のリンクプレートと外側のリンクプレートとの間に配置されると共に、抜止部として機能することが好ましい。

　この構成によれば、ブシュ部材のフランジ部により、ブシュ部材が一対のリンクプレートから内側へ抜けなくなる。また、両リンクプレートに外力が加えられて両リンクプレートが押し広げられても、各リンクプレートは、各リンクプレートの孔に嵌入されたブシュ部材と共に移動することができる。これにより、リンクプレートに対するブシュ部材の嵌合が弛み難くなる。また、フランジ部が内側のリンクプレートと外側のリンクプレートとの間に介在されることで、両リンクプレートの間隔が確保されると共に、両リンクプレートの接触が回避される。さらに、ブシュが二つのブシュ部材に分割されているため、チェーンがねじられても、ブシュに作用するねじれ応力を緩和することができる。また、二つのブシュ部材の筒部は、両筒部の端面が突き当たった状態で内側の両リンクプレート間の間隔を適正に保つことのできる長さを有している。これにより、内側の両リンクプレートを接近させる向きに外力が加えられても、筒部の端面が突き当たることで、両リンクプレート間の間隔を適正に保つことができる。

　上記のローラチェーンにおいて、ブシュは、リンクプレートの孔に嵌入される筒部と、筒部の端部に設けられかつ抜止部として機能するフランジ部とを有し、筒部は、内側のリンクを構成する一対のリンクプレートの孔を貫通し、筒部のフランジ部と反対側の端部には、抜止部材が取着されていることが好ましい。

　この構成によれば、一対のリンクプレートの孔を貫通した筒部の両端には、フランジ部と抜止部材とが設けられている。これにより、リンクプレートからブシュが抜けなくなる。

　上記のローラチェーンにおいて、二つのブシュ部材の筒部は、大径部と、大径部よりも小さい外径を有する小径部とを有し、大径部は、抜止部付近に形成されかつリンクプレートの孔に嵌合され、小径部は、抜止部と反対側に形成されかつリンクプレートの孔を挿通可能であることが好ましい。

　この構成によれば、ブシュ部材をリンクプレートに装着するとき、筒部の小径部を、軽い力で、リンクプレートの孔に挿入することができる。一方、筒部の大径部をリンクプレートの孔に挿入する際にはある程度の力を要するものの、筒部をリンクプレートの孔に確実に嵌合させることができる。

　上記のローラチェーンにおいて、ブシュは樹脂からなることが好ましい。
　この構成によれば、ブシュが樹脂製であるため、金属製のブシュの使用時に問題となるリンクプレートの焼き付けを防止できる。具体的には、リンクの連結部分で両リンクプレート間に樹脂製の抜止部が介在されるため、リンクプレートの焼き付けを抑制できる。

　上記のローラチェーンにおいて、フランジ部の厚さは、リンクの連結部分において内側のリンクプレートと外側のリンクプレートとの間隔よりも小さいことが好ましい。
　この構成によれば、抜止部が、内側のリンクプレートと外側のリンクプレートとの間に隙間を有して配置される。このため、抜止部と内側のリンクプレート、及び抜止部と外側のリンクプレートとの接触抵抗を小さく抑えることができる。

本発明の第１実施形態に係るフラットタイプのローラチェーンを示す斜視図。 ローラチェーンの平面図。 ローラチェーンの分解斜視図。 ブシュ部材が内リンクに嵌合された状態を示す部分平面図。 （ａ）は内リンクが適正位置にあるときのブシュ部材の位置を示す部分平面図、（ｂ）は内リンクが押し広げられたときのブシュ部材の位置を示す部分平断面図。 本発明の第２実施形態に係るオフセットタイプのローラチェーンを示す部分平面図。 （ａ），（ｂ）は変形例のブシュを示す部分断面図。 （ａ），（ｂ）は変形例のブシュを示す部分断面図。 （ａ），（ｂ）は変形例のブシュを示す部分断面図。

（第１実施形態）
　以下、本発明のローラチェーンを具体化した第１実施形態について図１～図５（ｂ）を参照して説明する。

　図１及び図２に示すように、ローラチェーン１１（以下、チェーンと称す）は、内リンク１３と外リンク１５とを備えている。内リンク１３は、チェーン１１の幅方向Ｙに対向して配置される一対のリンクプレート１２からなる。外リンク１５は、幅方向Ｙに対向して配置される一対のリンクプレート１４からなる。内リンク１３は、外リンク１５よりも狭いリンクプレート１２間の間隔を有している。外リンク１５は、内リンク１３よりも広いリンクプレート１４間の間隔を有している。内リンク１３及び外リンク１５は、チェーン１１の長手方向Ｘに沿って交互に配置されている。また、隣り合う両リンク１３，１５を構成するリンクプレート１２，１４の端部同士が回動自在に連結されている。

　チェーン１１は、長手方向Ｘに引っ張られて移動する。つまり、チェーン１１の移動方向は、チェーン１１の長手方向Ｘと一致する。リンクプレート１２，１４は、チェーン１１の長手方向Ｘに延びている。リンクプレート１２，１４の長手方向の中央部は、湾曲状に少し括れている。リンクプレート１２，１４の長手方向の両端は、丸みを帯びている。内リンク１３を構成する一対のリンクプレート１２は、互いに平行に配置されている。外リンク１５を構成するリンクプレート１４も、互いに平行に配置されている。チェーン１１は、フラットタイプのチェーンである。このため、各リンク１３，１５の一方の端部と他方の端部とでは、リンクプレート１２，１４間の間隔がそれぞれ同じである。リンクプレート１２，１４は、ステンレス又は鋼材等からなり、鍛造により製造されている。図２及び図３に示すように、リンクプレート１２の両端のそれぞれには、円形のブシュ挿入孔１８が形成されている。ブシュ挿入孔１８は、リンクプレート１２をその厚さ方向に貫通している。

　図１～図３に示すように、内リンク１３を構成する一対のリンクプレート１２には、円筒状のブシュ２０が組み付けられている。ブシュ２０は、二つの合成樹脂製のブシュ部材２１からなる。各ブシュ部材２１は、リンクプレート１２の外側からブシュ挿入孔１８にそれぞれ嵌入される。二つのブシュ部材２１は、同一形状を有している。ブシュ部材２１は、筒部２１ａと、円環状のフランジ部２１ｂとを有している。筒部２１ａは、リンクプレート１２の外側からブシュ挿入孔１８に嵌入されてリンクプレート１２の内側へ突出する。フランジ部２１ｂは、筒部２１ａの端部から筒部２１ａの径方向外側へ延びている。フランジ部２１ｂの外径は、ブシュ挿入孔１８の外径よりも大きい。これにより、ブシュ部材２１がブシュ挿入孔１８からリンクプレート１２の内側へ抜けることを防止する。つまり、ブシュ部材２１は抜け止めとして機能する。

　図４に示すように、筒部２１ａは、大径部２１ｃと、大径部２１ｃよりも小さい外径を有する小径部２１ｄとを有している。大径部２１ｃは、ブシュ挿入孔１８に嵌合可能な外径を有している。小径部２１ｄは、筒部２１ａとブシュ挿入孔１８の壁面との間に隙間を有する外径を有している。フランジ部２１ｂがリンクプレート１２の外面に接するまで筒部２１ａがブシュ挿入孔１８に差し込まれると、大径部２１ｃはブシュ挿入孔１８の内側に配置され、小径部２１ｄはブシュ挿入孔１８からリンクプレート１２の内側に突出する。大径部２１ｃと小径部２１ｄとの間の部分は、テーパ状に形成されている。つまり、筒部２１ａの外径は、大径部２１ｃと小径部２１ｄとの間の境界部で徐々に変化する。

　図１～図４に示すように、円筒状のローラ２２は、ブシュ２０の外周面に取り付けられている。ローラ２２は、一対のリンクプレート１２間で回転する。小径部２１ｄは、ローラ２２の支持に用いられる。小径部２１ｄの外径は、ローラ２２の孔２２ａの内径よりも小さい。小径部２１ｄは、ローラ２２の孔２２ａの両開口端からそれぞれ挿入されている。これにより、ローラ２２は、二本の小径部２１ｄの外周面に取り付けられている。ローラ２２は、小径部２１ｄを中心に回転する。つまり、ローラ２２は、内側のリンクプレート１２に嵌入されたブシュ２０の外周面に取り付けられ、かつ外側のリンクプレート１４のピン挿入孔２８とブシュ２０の孔２１ｅとに挿入されたピン２５を中心に回転する。

　ブシュ部材２１をリンクプレート１２のブシュ挿入孔１８に嵌入するとき、まず、小径部２１ｄがブシュ挿入孔１８に挿入される。小径部２１ｄの外径はブシュ挿入孔１８の内径より小さいため、この過程では、小径部２１ｄを、抵抗なく軽い力で、ブシュ挿入孔１８に挿入することができる。その後、筒部２１ａの基端付近までブシュ挿入孔１８に差し込むとき、大径部２１ｃがブシュ挿入孔１８に嵌入される。このように、小径部２１ｄは軽い力でブシュ挿入孔１８に挿入することができ、大径部２１ｃを嵌入するときにのみ力を加えればよい。

　図２及び図５（ａ）に示すように、一対の筒部２１ａの先端面を互いに突き当てた状態で、内側のリンクプレート１２間の間隔は、ローラ２２の軸方向の長さよりも若干広い。このときの両リンクプレート１２間の間隔が、適正範囲である。このため、ローラ２２の端面がリンクプレート１２の内面に強く接することはない。よって、ローラ２２とリンクプレート１２との間に大きな摺動抵抗は発生しない。

　図５（ａ）に示すように、ブシュ２０は、二つのブシュ部材２１からなる。各ブシュ部材２１は、一対のリンクプレート１２のそれぞれに嵌合されている。また、フランジ部２１ｂの厚さは、内リンク１３のリンクプレート１２と外リンク１５のリンクプレート１４との間隙よりも小さい。このため、図５（ｂ）に示すように、内側のリンクプレート１２は、フランジ部２１ｂが外リンク１５のリンクプレート１４の内面に接するまで、幅方向Ｙに移動可能である。

　図３に示すように、外リンク１５を構成する一対のリンクプレート１４の長手方向の両端には、ピン挿入孔２８が形成されている。ピン挿入孔２８には、円柱状のピン２５が挿入されている。内リンク１３を構成する一対のリンクプレート１２のブシュ挿入孔１８にブシュ部材２１がそれぞれ嵌入され、更に、二つのブシュ部材２１の孔２１ｅにピン２５が挿通されている。外側のリンクプレート１４は、二つのブシュ部材２１及びピン２５を介して、内リンク１３のリンクプレート１２に回動自在に連結されている。

　ピン２５の両端は、一対のリンクプレート１４のピン挿入孔２８に嵌合されている。これにより、内リンク１３と外リンク１５とが、ピン２５及びブシュ部材２１により、リンクプレート１２及びリンクプレート１４の端部同士で回動可能に連結されている。

　図２、図３、図５（ａ）及び図５（ｂ）に示すように、ピン２５の一方の端部は、外側のリンクプレート１４のピン挿入孔２８に挿入されて、他方の端部よりも大きな外径を有するようにかしめられている。一方のリンクプレート１４には、二本のピン２５が固定されている。各ピン２５は、両リンクプレート１２間に配置されたローラ２２と、ローラ２２を支持するブシュ部材２１の孔２１ｅとに挿入される。ピン２５の他方の端部は、外側のリンクプレート１４のピン挿入孔２８に挿入されて、かしめられている。このようにして、ピン２５は、一対の外側のリンクプレート１４に固定される。尚、ブシュ２０の内径は、ピン挿入孔２８の径よりも若干大きい。これにより、ピン２５は、ピン挿入孔２８に嵌合されると共に、ブシュ部材２１の孔２１ｅに回転可能に挿通される。

　次に、チェーン１１の作用について図２、図５（ａ）及び図５（ｂ）を参照して説明する。
　図示しないが、内リンク１３のリンクプレート１２に組み付けられたローラ２２には、スプロケットが噛合されている。図２に示すように、チェーン１１は、回転するスプロケットをローラ２２に噛み合わせることで、チェーン１１の長手方向に移動する。

　チェーン１１の移動時、両リンクプレート１２には、それらの間隔を押し広げるように外力が作用することがある。この点、第１実施形態によれば、ブシュ２０は二つのブシュ部材２１からなり、各ブシュ部材２１は一対のリンクプレート１２のそれぞれ嵌入されている。このため、図５（ａ）及び図５（ｂ）に示すように、ブシュ部材２１は、リンクプレート１２と共に幅方向Ｙに移動することができる。このとき、各ブシュ部材２１の筒部２１ａの先端面は離間するため、各ブシュ部材２１には負荷がかからない。このため、リンクプレート１２のブシュ挿入孔１８とブシュ部材２１との嵌合は弛まない。よって、ブシュ部材２１がブシュ挿入孔１８から抜けることもない。

　このため、金属製のブシュ部材に比べ変形し易くブシュ挿入孔１８との嵌合が弛み易い樹脂製のブシュ部材２１を採用したとしても、ブシュ挿入孔１８とブシュ部材２１との嵌合が弛まなくなり、ブシュ部材２１がブシュ挿入孔１８から抜けなくなる。

　また、ブシュ部材２１は、筒部２１ａの端部にフランジ部２１ｂを有している。フランジ部２１ｂがリンクプレート１２の外面に接することで、リンクプレート１２に対するブシュ部材２１の嵌合位置が内側へずれることもない。

　さらに、リンクプレート１２，１４間の間隔は、フランジ部２１ｂの厚みよりも広い。このため、一対のリンクプレート１２の間隔が適正範囲内であるとき、通常は、フランジ部２１ｂが外側のリンクプレート１４の内面に強く接することはない。フランジ部２１ｂがリンクプレート１４に接触しても、フランジ部２１ｂ及びリンクプレート１４間に生じる接触抵抗は比較的小さい。また、リンクプレート１２に外力が加えられて、リンクプレート１２が外側へ変位することもある。この場合、第１実施形態によれば、内側のリンクプレート１２と外側のリンクプレート１４との間に、樹脂製のフランジ部２１ｂが介在されている。これにより、金属部材であるリンクプレート１２，１４の接触が回避される。このため、リンクプレート１２，１４には、リンクプレート１２，１４の接触抵抗による屈曲不良が生じ難くなる。しかも、フランジ部２１ｂは、円環状に形成され、かつリンクプレート１２，１４の短手方向の幅よりも小さい外径を有している。この構成によれば、リンクプレート１２，１４とフランジ部２１ｂとの摩擦抵抗が小さく抑えられるため、リンクプレート１２，１４の屈曲不良が更に生じ難くなる。

　筒部２１ａの長さは、両リンクプレート１２間の間隔が適正範囲であるときに一対の筒部２１ａの先端面が突き当たるように設定されている。この場合、両リンクプレート１２に外力が加えられて両リンクプレート１２が接近する場合であっても、両筒部２１ａの先端面が突き当たるため、両リンクプレート１２の間隔を、ローラ２２の幅よりも広くして維持することができる。これにより、ローラ２２の端面とリンクプレート１２の内面との接触抵抗が小さく抑えられるため、ローラ２２を円滑に回転させることができる。

　また、ブシュ部材２１の筒部２１ａは、ローラ２２が装着される小径部２１ｄを有している。小径部２１ｄの外径は、ブシュ挿入孔１８の内径よりも小さい。この場合、チェーン１１の製造過程で、小径部２１ｄを、軽い力で、リンクプレート１２のブシュ挿入孔１８に挿入することができる。また、筒部２１ａは、ブシュ挿入孔１８に嵌合される大径部２１ｃを有している。この場合、ブシュ部材２１をリンクプレート１２に組み付ける際、筒部２１ａの挿通の完了と共に、大径部２１ｃがブシュ挿入孔１８に嵌合される。よって、リンクプレート１２に対するブシュ部材２１の組み付けが容易に行える。

　従って、第１実施形態によれば、以下の効果が得られる。
　（１）フランジ無し樹脂ブシュの場合、チェーンがねじれてローラが傾いたとき、一対のリンクプレートはローラの端面に押圧されて広げられる。また、これにより、樹脂ブシュがリンクプレートから内側へ抜けることもある。このように、内側のリンクプレートが押し広げられると、内側のリンクプレートと外側のリンクプレートとの接触抵抗が大きくなり、リンクの屈曲不良が生じる。この点、第１実施形態のチェーン１１は、フランジ部２１ｂを有する二つのブシュ部材２１を使用する。この場合、フランジ部２１ｂがリンクプレート１２の外面に接することで、ブシュ部材２１の軸方向内側への移動が規制される。このため、一対のリンクプレート１２が押し広げられても、ブシュ部材２１がブシュ挿入孔１８からリンクプレート１２の内側へ抜けなくなる。よって、ブシュ２０のリンクプレート１２に対する嵌合位置がずれなくなり、筒部２１ａがリンクプレート１２の内側へ突出する量も適正な量に維持される。よって、両リンクプレート１２の間隔を、リンクに屈曲不良を生じさせることのない適正な範囲内に収めることができる。

　（２）ブシュ部材２１は樹脂からなる。ブシュ部材２１のフランジ部２１ｂは、内側のリンクプレート１２と外側のリンクプレート１４との間に介在されることで、樹脂スペーサとして機能する。これにより、金属部材であるリンクプレート１２，１４の接触が回避されるため、リンクプレート１２，１４のピン２５周辺での発熱を抑制することができ、焼き付きを防止することができる。また、リンクプレート１２，１４の摺動による金属粉の発生を抑制することもできる。よって、チェーン１１は、潤滑油を使用できない食品製造ラインや放熱され難い真空環境での使用に適している。

　（３）ブシュの両端を支持する一対のリンクプレートがねじれて、ブシュの両端にそれぞれ異なる方向の力が加えられることがある。剛性材料からなる円筒状のブシュを一つだけ用いた場合、リンクプレートがねじれられるとブシュも大きくねじられるため、ブシュとリンクプレートとの嵌合が弛む虞がある。この点、第１実施形態によれば、ブシュ２０は、二つのブシュ部材２１からなる。各ブシュ部材２１は、リンクプレート１２の外側からブシュ挿入孔１８にそれぞれ嵌入される。各ブシュ部材２１の筒部２１ａは同軸上に配置され、各筒部２１ａの先端面は僅かな隙間を隔てて配置されている。この構成によれば、ブシュ２０が軸方向に二つに分割されているため、ブシュ２０のねじれによる変形を抑制することができる。よって、ブシュ２０とリンクプレート１２との嵌合を弛み難くすることができる。

　（４）ブシュ部材２１の筒部２１ａは、リンクプレート１２のブシュ挿入孔１８に嵌合される大径部２１ｃと、ローラ２２が装着される小径部２１ｄとを有している。この構成によれば、ブシュ部材２１をブシュ挿入孔１８に嵌入するとき、小径部２１ｄを、軽い力で、ブシュ挿入孔１８に挿入することができる。小径部２１ｄを挿入し終えた後、筒部２１ａの挿通の完了と共に、大径部２１ｃがブシュ挿入孔１８に嵌合される。よって、リンクプレート１２に対するブシュ部材２１の組み付けが容易に行える。

　（５）フランジ部２１ｂの厚さは、内リンク１３のリンクプレート１２と外リンク１５のリンクプレート１４との間隙よりも小さい。この構成によれば、フランジ部２１ｂは、内側のリンクプレート１２と外側のリンクプレート１４との間に隙間を有して配置される。このため、フランジ部２１ｂとリンクプレート１２，１４との接触抵抗を小さく抑えることができる。

　（６）ブシュ２０は、同一形状を有する二つのブシュ部材２１からなる。このため、部品の種類が少なくなり、部品の製造コストを低減することができる。
（第２実施形態）
　以下、本発明の第２実施形態について図６を参照して説明する。なお、第２実施形態における第１実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。

　図６に示すように、ローラチェーン３１は、各リンク３２の両端のうち一方と他方とでリンクプレート３３間の間隔を異ならせたオフセットタイプのローラチェーンである。ローラチェーン３１には、第１実施形態のブシュ構造が採用されている。第１実施形態のフラットタイプのローラチェーン１１は、二種類のリンクプレート１２，１４を使用するのに対し、第２実施形態のオフセットタイプのローラチェーンは、一種類のリンクプレートを使用する。リンクプレート３３は、ステンレス又は鋼材等の金属からなり、鍛造によって形成されている。

　リンク３２は、両リンクプレート３３間の間隔を狭くした第１端部３４と、両リンクプレート３３間の間隔を広くした第２端部３５とを有している。リンク３２の第１端部３４は、別のリンク３２の第２端部３５を構成する両リンクプレート３３間に挿入されている。この状態で、ブシュ部材２１の筒部２１ａが、第１端部３４を構成する両リンクプレート３３のブシュ挿入孔３６に取着されている。また、一対の筒部２１ａの小径部２１ｄが、ローラ２２の内側に挿入されている。これらにより、ローラ２２は、筒部２１ａに支持された状態で回転する。つまり、ローラ２２は、第１端部３４を構成する両リンクプレート３３間で、ブシュ２０の外周面に取り付けられている。

　ピン２５は、第２端部３５を構成する両リンクプレート３３のピン挿入孔３７に挿入されると共に、ブシュ部材２１の筒部２１ａに挿通されている。これらにより、リンク３２の両リンクプレート３３の端部は、他のリンク３２の両リンクプレート３３の端部に回動自在に連結されている。ブシュ２０は、二つのブシュ部材２１からなる。各ブシュ部材２１は、第１端部３４を構成する両リンクプレート３３のブシュ挿入孔３６に外側からそれぞれ嵌入されている。フランジ部２１ｂの厚さは、リンク３２の連結部分において第１端部３４のリンクプレート３３と第２端部３５のリンクプレート３３との間隔よりも小さい。

　従って、第２実施形態によれば、第１実施形態の効果（１）～（６）と同等の効果を得ることができる。
　なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。

　・図７（ａ）に示すように、ブシュ２０は、樹脂製のブシュ部材４１と、抜止部材としての樹脂製のリング部材４２とから構成してもよい。ブシュ部材４１は、筒部４１ａと、筒部４１ａの端部に設けられたフランジ部４１ｂとを有している。筒部４１ａは、両リンクプレート１２のブシュ挿入孔１８を貫通する長さを有している。筒部４１ａは、一方のリンクプレート１２のブシュ挿入孔１８に挿入されている。筒部４１ａの先端は、他方のリンクプレート１２のブシュ挿入孔１８を貫通して外側に突出している。円環状をなすリング部材４２は、筒部４１ａの先端に嵌合されている。

　・図７（ｂ）に示すように、ブシュ部材４１は、筒部４１ａの先端に抜止部材としての樹脂製の止め輪４３が取着される構成を採用してもよい。止め輪４３として、例えば、Ｃ型又はＥ型の止め輪が使用される。この場合、筒部４１ａの先端には、溝部４１ｃが形成されている。止め輪４３は、溝部４１ｃに差し込まれて装着されている。止め輪４３は、部分的に、溝部４１ｃから外側に突出している。この突出部分により、リンクプレート１２からのブシュ部材４１の抜けが防止される。よって、樹脂製のブシュ２０がリンクプレート１２から抜けなくなる。また、フランジ部４１ｂ、筒部４１ａ及び留め具４３はいずれも樹脂製の部品である。樹脂製の部品が内側のリンクプレート１２と外側のリンクプレート１４との間に介在されることで、両リンクプレート１２，１４に焼き付きが生じるのを防止することができる。

　・図８（ａ）に示すように、ブシュ２０は、両端にフランジ部を有しない円筒状の樹脂製の筒部４５であってもよい。この場合、筒部４５の両端は、一対のリンクプレート１２のブシュ挿入孔１８に嵌合されている。また、リンクプレート１２の外側に突出した筒部４５の両端は、かしめられて抜止部４５ａを形成している。抜止部４５ａは、筒部４５の端部を溶融し扁平状に潰して形成される。また、抜止部４５ａの両端又は一端を底鋲に替え、底鋲により抜止部を形成してもよい。

　・図８（ｂ）に示すように、ブシュ２０は、ストレート型の筒部材４７であってもよい。この場合、筒部材４７は、一対のリンクプレート１２のブシュ挿入孔１８に嵌入されている。また、留め具４８が、一対のリンクプレート１２の外面から突出した筒部材４７の両端に取着されている。尚、筒部材４７の両端に取着される留め具４８は、同種であってもよく、又は異種であってもよい。留め具４８として、筒部材４７の外周面に装着される樹脂製のリング部材４２であってもよく、又は、溝部４７ａに取着されるＣ型又はＥ型の止め輪４３であってもよい。

　・ブシュは、金属製であってもよい。図９（ａ）に示すブシュ２０は、金属製の二つのブシュ部材２１からなる。この構成によれば、一対のリンクプレート１２が押し広げられても、フランジ部２１ｂにより、リンクプレート１２に対するブシュ部材２１の嵌合位置がずれることはない。

　・図９（ｂ）に示すように、ストレート型の円筒状のブシュ部材５０の両端に、環状の凹部５０ａをそれぞれ形成してもよい。ブシュ部材５０の両端の外径は、凹部５０ａ以外の部分の外径よりも小さい。リンクプレート１２の外側に突出したブシュ部材５０の両端には、樹脂製のリング部材５１が嵌合されている。リング部材５１の端面は、ブシュ部材５０の両端よりも外側に配置されている。また、リング部材５１が、リンクプレート１２，１４の間に介在されている。これらにより、リンクプレート１２，１４の焼き付きを防止できる。

　図７（ａ）～図９（ｂ）に示すように、筒状のブシュ部材の両端のうち一方の端部にフランジ部を形成し、他方の端部に抜止部材を取着してもよい。また、ストレート型の筒部材の両端に、同種又は異種の抜止部材を取着してもよい。図７（ａ）～図９（ｂ）に示すリンク連結構造は、第２実施形態のオフセットタイプのローラチェーンに適用してもよい。

　・ブシュを構成する一方のブシュ部材の筒部の径を、他方のブシュ部材の筒部の径と異ならせてもよい。また、一方のブシュ部材の筒部を、他方のブシュ部材の筒部に挿通してもよい。この場合、ローラは、他方のブシュ部材の筒部の外周面に取着される。

　・また、一方のブシュ部材の筒部の長さを、他方のブシュ部材の筒部の長さと異ならせてもよい。
　・ブシュを構成する一対のブシュ部材の筒部の先端同士を固定してもよい。例えば、筒部の先端において、凹部と凸部とを周方向に交互に形成してもよい。この場合、凹部と凸部とを係合させることで、両ブシュ部材の筒部の先端同士を連結することができる。凹部と凸部は、例えば、キー溝と十字キーの組合せであってもよい。また、両ブシュ部材の筒部の先端面同士を熱溶着したり、振動溶着したりしてもよい。

　・ブシュとローラとの間に、樹脂製又は金属製のスリーブを設けてもよい。スリーブは両ブシュ部材の筒部間の隙間を被覆可能な長さを有していることが好ましい。
　・ブシュは、金属ブシュ、セラミックブシュであってもよい。

　・ローラチェーン１１は、ドライ環境で使用される非潤滑油系のローラチェーンに限定されず、潤滑油系のローラチェーンとして使用してもよい。例えば、ブシュ２０の内周面とピン２５の外周面との間に、潤滑油を介在させてもよい。また、各リンクのリンクプレートの全体を、含油樹脂でコーティングしてもよい。

Claims (6)

1. 対向して配置される一対のリンクプレートからなる複数のリンクと、隣り合うリンクのリンクプレートの端部同士を回動自在に連結するピンと、前記ピンを中心に回転するローラとを備えたローラチェーンであって、
   　内側のリンクを構成する一対のリンクプレートの孔に嵌合された円筒状のブシュであって、前記ピンが前記リンクの連結部分で外側のリンクを構成する一対のリンクプレートの孔に挿通されると共に前記ブシュの孔に挿入される円筒状のブシュと、
   　内側のリンクを構成する一対のリンクプレート間に配置され、前記ブシュにより回転可能に支持されるローラと、
   　前記ブシュに設けられ、前記ブシュが前記リンクプレートの孔から内側へ抜けることを防止する抜止部と
   　を備えたことを特徴とするローラチェーン。
2. 請求項１に記載のローラチェーンにおいて、
   　前記ブシュは、二つのブシュ部材からなり、
   　前記二つのブシュ部材は、内側のリンクを構成する一対のリンクプレートの孔に外側からそれぞれ嵌入され、
   　前記ブシュ部材は、前記リンクプレートの孔に挿通される筒部と、前記筒部の端部に設けられるフランジ部とを有し、
   　前記フランジ部は、前記リンクの連結部分で内側のリンクプレートと外側のリンクプレートとの間に配置されると共に、前記抜止部として機能することを特徴とするローラチェーン。
3. 請求項１に記載のローラチェーンにおいて、
   　前記ブシュは、前記リンクプレートの孔に嵌入される筒部と、前記筒部の端部に設けられかつ前記抜止部として機能するフランジ部とを有し、
   　前記筒部は、内側のリンクを構成する一対のリンクプレートの孔を貫通し、
   　前記筒部の前記フランジ部と反対側の端部には、抜止部材が取着されていることを特徴とするローラチェーン。
4. 請求項２に記載のローラチェーンにおいて、
   　前記二つのブシュ部材の筒部は、大径部と、前記大径部よりも小さい外径を有する小径部とを有し、
   　前記大径部は、前記抜止部付近に形成されかつ前記リンクプレートの孔に嵌合され、
   　前記小径部は、前記抜止部と反対側に形成されかつ前記リンクプレートの孔を挿通可能であることを特徴とするローラチェーン。
5. 請求項１～４のいずれか一項に記載のローラチェーンにおいて、
   　前記ブシュは樹脂からなることを特徴とするローラチェーン。
6. 請求項２又は４に記載のローラチェーンにおいて、
   　前記フランジ部の厚さは、前記リンクの連結部分において内側のリンクプレートと外側のリンクプレートとの間隔よりも小さいことを特徴とするローラチェーン。

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