WO2014115847A1

WO2014115847A1 - スラスト軸受

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Publication number: WO2014115847A1
Application number: PCT/JP2014/051561
Authority: WO
Inventors: 直陸大森
Original assignee: 株式会社Ihi
Priority date: 2013-01-28
Filing date: 2014-01-24
Publication date: 2014-07-31
Also published as: JP6221244B2; CA2899407C; CN104937291A; US9677609B2; EP2949953A1; KR20170041284A; CN104937291B; CA2899407A1; US20150330443A1; EP2949953A4; JP2014145388A; CA2968870C; KR101803025B1; CA2968870A1; EP2949953B1; KR20150102120A; KR101727104B1

Abstract

　回転軸（１）に設けられたスラストカラー（４）に対向して配置されるスラスト軸受（３，３Ａ，３Ｂ）は、スラストカラーに対向して配置されるトップフォイル（１０）と、トップフォイルを支持するバックフォイル（２０）と、バックフォイルを支持する円環状のベースプレート（３０）と、を備える。バックフォイルは、複数のバックフォイル片（１１）を有し、トップフォイルは、複数のトップフォイル片（２１）を有する。トップフォイル片の、回転軸の回転方向上流側の部分には、ベースプレートに固定される固定部（１３）が形成されている。また、固定部の、回転軸の回転方向下流側に位置する固定辺（１２）は、ベースプレートの半径方向内側から外側に向かうに従い回転軸の回転方向下流側に近づくように直線状に延びている。

Description

スラスト軸受

　本発明は、スラスト軸受に関する。
　本願は、２０１３年１月２８日に日本に出願された特願２０１３－０１３１７０号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

　従来、高速回転体用の軸受として、回転軸に設けられたスラストカラーに対向して配置されてこのスラストカラーを支持するスラスト軸受が知られている。このようなスラスト軸受としては、フォイル式のスラスト軸受、すなわちスラストフォイル軸受がよく知られている。このスラストフォイル軸受は、振動や衝撃によって発生する回転軸の動き(スラストカラーの軸方向変位や傾き)を吸収できるように、軸受面が柔軟なフォイル(金属製薄板)によって形成されており、軸受面の下にこの軸受面を柔軟に支持するためのフォイル構造を有している。

　このようなスラストフォイル軸受の一形態として、円環板を周方向に分割した複数のフォイル片（トップフォイル片）によって円輪（円環）状の軸受面を形成し、これらトップフォイル片をそれぞれ波板形状のフォイル片（バンプフォイル片）で支持した構造が知られている（例えば、特許文献１参照）。各々のトップフォイル片（厚さ１００μｍ程度）はスラストカラーに対して傾斜角を有して配置されており、これによってスラストカラーとトップフォイル片との間の軸受隙間は側面視くさび形に形成される。すなわち、スラストカラー（回転軸）の回転方向上流側から下流側に向かうに連れて軸受隙間が狭くなるように形成されている。したがって、軸受隙間が広い側(上流側)から軸受隙間が狭い側（下流側）に向かってスラストカラーが回転すると、潤滑流体がくさび状の軸受隙間の狭い部分に流れ込み、軸受の負荷能力が発揮される。

　トップフォイル片は、スラストカラー（回転軸）の回転方向上流側の端辺のみがベースプレートに固定されており、この端辺が固定辺として構成されている。軸受荷重が増加すると、この固定辺(上流側の端辺)を支点としてトップフォイルは水平（スラストカラーの被支持面と平行）になるように変位してその傾斜角が減少し、傾斜角が０．１°程度になったときにスラスト軸受は最大負荷能力を発生する。一方、バンプフォイル片は山の稜線がトップフォイル片の下流側端辺に平行になるように配置され、バンプフォイル片におけるスラストカラー（回転軸）の回転方向下流側の端辺のみがベースプレートに固定されている。すなわち、バンプフォイル片の上流側の端辺は自由端となっている。

　バンプフォイル片がこのように配置され固定されているので、トップフォイル片に発生する流体潤滑膜の圧力が軸受隙間の狭い側(下流側)で高くなる。よって、この部位を高い剛性で支持することにより、軸受の負荷能力を高めることができる。

日本国特開平１０－３３１８４７号公報

　前記のスラストフォイル軸受構造では、トップフォイル片の下流側端辺の位置で軸受隙間が最も狭くなっており、高負荷時にはこの位置での隙間がサブミクロンに達する場合がある。すなわち、この下流側端辺の位置ではトップフォイル片とスラストカラーとの接触が起こり易くなっており、接触が起こるとトップフォイル等が損傷して軸受寿命が低下し、最悪の場合焼き付きが生じる可能性がある。

　本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、トップフォイル片の下流側端辺及びその近傍がスラストカラーに接触するのを防止し、これによって軸受寿命の低下や焼き付き等を防止した、スラスト軸受を提供することを目的とする。

　本発明者は前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
　スラストカラーとの接触を回避するには、トップフォイル片の自由端となる下流側端辺をスラストカラーに対して常に平行にしておくのが望ましい。しかし、トップフォイル片は、ベースプレートに固定された固定辺となる上流側端辺と自由端である下流側端辺との間隔が、ベースプレートの半径方向内側から外側に向かうに従い漸次拡がっている。このため、トップフォイル片の外周縁はその内周縁よりも長くなっている。ここで、軸受荷重の変化等を原因として、固定辺である上流側端辺を支点（回動中心）としてトップフォイル片がベースプレートから遠ざかるように又は近づくように変位（回動）すると、内周縁よりも長い外周縁は、内周縁よりも大きく変位する。よって、トップフォイル片の変位時において、自由端である下流側端辺の外周縁寄りの部分と、内周縁寄りの部分とのそれぞれの高さに違いが生じる場合がある。すなわち、トップフォイル片の外周縁の長さ（上流側端辺と下流側端辺との間の距離）が内周縁の長さ（上流側端辺と下流側端辺との間の距離）に比べて長くなるため、トップフォイル片が前記したように変位することにより、下流側端辺ではその外周縁寄りの部分の変位量が内周縁寄りの部分の変位量よりも大きくなる。
　従って、トップフォイル片が固定辺を支点として変位すると、下流側端辺の外周縁寄りの部分又は内周縁寄りの部分がスラストカラーに接触し易くなる可能性がある。また、トップフォイル片の自由端となる下流側端辺がスラストカラーに対して非平行に配置されると、ベースプレートの半径方向において軸受隙間（特に軸受隙間が狭い側）が変化してしまい、適切な軸受の負荷能力を確保できなくなる可能性がある。

　例えば、トップフォイル片の下流側端辺がスラストカラーと平行になるように、上流端側の曲げ加工を調整しつつトップフォイルをベースプレートに固定したとしても、負荷の増加などによってトップフォイル片の傾斜角が小さくなると、下流側端辺とスラストカラーとの平行状態が壊れてしまう場合がある。
　本発明者はこのような知見に基づきさらに鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させた。

　すなわち、本発明の第１の態様では、回転軸に設けられたスラストカラーに対向して配置されるスラスト軸受は、前記スラストカラーに対向して配置されるトップフォイルと、前記トップフォイルの、前記スラストカラーに対向する面と反対側の面に対向して配置されて、前記トップフォイルを支持するバックフォイルと、前記バックフォイルの、前記トップフォイル寄りの側と反対の側に配置されて、前記バックフォイルを支持する円環状のベースプレートと、を備える。前記バックフォイルは、前記ベースプレートの周方向に配列された複数のバックフォイル片を有し、前記トップフォイルは、前記複数のバックフォイル片の上にそれぞれ配設された複数のトップフォイル片を有する。前記トップフォイル片の、前記回転軸の回転方向上流側の部分には、前記ベースプレートに固定される固定部が形成されている。また、前記固定部の、前記回転軸の回転方向下流側に位置する固定辺は、前記ベースプレートの半径方向内側から外側に向かうに従い前記回転軸の回転方向下流側に近づくように直線状に延びて、前記半径方向に延びる直線に対して傾斜している。

　本発明の第１の態様によれば、ベースプレートに固定される固定部中の固定辺が、ベースプレートの半径方向内側から外側に向かうに従い回転軸の回転方向下流側に近づくように直線状に延びて、上記半径方向に延びる直線に対して傾斜している。このため、トップフォイル片の外周縁の長さ（上流側端辺と下流側端辺との間の距離）が内周縁の長さ（上流側端辺と下流側端辺との間の距離）に近くなり、したがってトップフォイル片が固定辺を支点（回動中心）としてベースプレートから遠ざかるように又は近づくように変位（回動）し、その傾斜角が変化しても、下流側端辺の外周縁寄りの部分が内周縁寄りの部分に比べて大きく変位してしまうことが抑えられる。よって、トップフォイル片の傾斜角が変化しても、トップフォイル片の自由端となる下流側端辺が、スラストカラーに対して平行に近い状態を維持できる。

　本発明の第２の態様では、前記第１の態様のスラスト軸受において、前記固定辺は、前記トップフォイル片における前記回転軸の回転方向上流側に位置する第１端辺の両端の間の位置から、前記トップフォイル片の外周縁まで延びて形成されている。
　本発明の第２の態様によれば、固定辺の長さが短くなることによって固定辺近傍の剛性が低減され、トップフォイル片が固定辺を支点として変位し易くなる。したがって、例えばスラストカラーが一対のトップフォイルによって挟み込まれているような場合に、始動トルクが低減する。また、回転軸が回転を開始した後も、トップフォイル片が容易にかつ円滑に変位するため、トップフォイル片の最適傾斜角が得られ易くなり、軸受の負荷能力が向上する。

　本発明の第３の態様では、前記第１の態様のスラスト軸受において、前記トップフォイル片における前記回転軸の回転方向上流側の第１端辺は、前記トップフォイル片の内周縁から外周縁に向かって延びる内側辺と、この内側辺の前記外周縁寄りの端部から前記外周縁にまで延びる外側辺とを有する。また、前記外側辺に、前記固定辺が設けられている。
　本発明の第３の態様によれば、固定辺の長さが短くなることによって固定辺近傍の剛性が低減され、トップフォイル片が固定辺を支点として変位し易くなる。したがって、例えばスラストカラーが一対のトップフォイルによって挟み込まれているような場合に、始動トルクが低減する。また、回転軸が回転を開始した後も、トップフォイル片が容易にかつ円滑に変位するため、トップフォイル片の最適傾斜角が得られ易くなり、軸受の負荷能力が向上する。

　本発明の第４の態様では、前記第２又は第３の態様のスラスト軸受において、前記固定辺は、前記トップフォイル片における前記回転軸の回転方向下流側の第２端辺に対して平行に形成されている。
　本発明の第４の態様によれば、トップフォイル片の固定辺と回転軸の回転方向下流側の第２端辺とが平行に形成されているので、スラストカラーの回転時においてスラスト荷重が変化しトップフォイル片が固定辺を支点として変位しても、トップフォイル片の自由端となる下流側端辺がスラストカラー（スラストカラーの被支持面）に対して常に平行になる。

　本発明の第５の態様では、前記第１～第４の態様のいずれか１つのスラスト軸受において、前記トップフォイル片は、前記固定辺における前記回転軸の回転方向下流側の近傍に、前記トップフォイル片の他の部分に比べて薄肉に形成された薄肉部を有している。
　本発明の第５の態様によれば、固定辺の近傍に薄肉部が形成されているので、トップフォイル片における薄肉部よりも回転軸の回転方向下流側の部分がより容易にかつ円滑に変位できる。したがって、例えばスラストカラーが一対のトップフォイルによって挟み込まれているような場合に、始動トルクが低減する。また、回転軸が回転を開始した後も、トップフォイル片が容易にかつ円滑に変位するため、トップフォイル片の最適傾斜角が得られ易くなり、軸受の負荷能力が向上する。

　本発明の第６の態様では、前記第１～第５の態様のいずれか１つのスラスト軸受において、前記バックフォイル片は、複数の山部と複数の谷部とを交互に形成した波板状に形成されるとともに、前記複数の山部の隣り合う方向が前記固定辺の延在方向と交差するように配置されている。また、前記複数の山部の高さが、前記固定辺寄りに位置する前記バックフォイル片の端部から前記回転軸の回転方向下流側に向かうに従い漸次高くなっている。
　本発明の第６の態様によれば、バンプフォイル片によってトップフォイル片を弾性的に支持することができる。

　本発明の第７の態様では、前記第１～第５の態様のいずれか１つのスラスト軸受において、前記ベースプレートには、前記複数のバックフォイル片をそれぞれ支持する複数の支持領域が設けられ、各支持領域に、前記固定辺が設けられた位置から前記回転軸の回転方向下流側の端辺側に向かうに従い漸次高さが増加する傾斜面が形成されている。
　本発明の第７の態様によれば、この傾斜面上にバックフォイル片を介してトップフォイル片を配設することにより、トップフォイル片の高さを傾斜面に沿って精度よく変化させることができる。また、その際にバックフォイル片については、その高さを変化させることなく一定の高さに作製すればよく、したがってその加工コストを抑えることができる。

　本発明の第８の態様では、前記第７の態様のスラスト軸受において、前記バックフォイル片は、複数の山部と複数の谷部とを交互に形成した波板状に形成されるとともに、前記複数の山部の隣り合う方向が前記傾斜面の傾斜方向に一致するように配置されている。
　本発明の第８の態様によれば、バンプフォイル片によってトップフォイル片を弾性的に支持することができる。

　本発明の第９の態様では、前記第６又は第８の態様のスラスト軸受において、前記バンプフォイル片は、前記回転軸の回転方向下流側の端辺で前記ベースプレートに固定されている。
　本発明の第９の態様によれば、トップフォイル片に発生する流体潤滑膜の圧力が軸受隙間の狭い側、すなわち回転軸の回転方向下流側で高くなるようにするべく、軸受隙間の回転方向下流側の部分を高い剛性で支持することができ、これによって軸受の負荷能力を高めることができる。

　本発明のスラスト軸受によれば、トップフォイル片の自由端となる下流側端辺を、スラストカラーに対して平行に近い状態に維持できる。よって、この下流側端辺及びその近傍がスラストカラーに接触するのを防止することができ、これによって軸受寿命の低下や焼き付き等を防止することができる。

本発明に係るスラスト軸受が適用されるターボ機械の一例を示す模式図である。本発明に係るスラスト軸受の第１実施形態を示す図であり、スラストカラーを挟んだ状態のスラスト軸受の側面図である。本発明に係るスラスト軸受の第１実施形態を示す図であり、一部を断面視したスラスト軸受の平面図である。図３Ａの３Ｂ－３Ｂ線矢視断面図である。本発明に係るスラスト軸受の第１実施形態を示す図であり、バンプフォイル片の形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。トップフォイル片の形状や固定辺、固定部の形状等についての変形例を示すための、トップフォイル片の平面図である。トップフォイル片の形状や固定辺、固定部の形状等についての変形例を示すための、トップフォイル片の平面図である。トップフォイル片の形状や固定辺、固定部の形状等についての変形例を示すための、トップフォイル片の平面図である。トップフォイル片の形状や固定辺、固定部の形状等についての変形例を示すための、トップフォイル片の平面図である。本発明に係るスラスト軸受の第２実施形態を示す図であり、一部を断面視したスラスト軸受の平面図である。図５Ａの５Ｂ－５Ｂ線矢視断面図である。本発明に係るスラスト軸受の第２実施形態を示す図であり、バンプフォイル片の形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。

　以下、図面を参照して本発明のスラスト軸受を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
　図１は、本発明のスラスト軸受が適用されるターボ機械の一例を模式的に示す側面図であり、図１中符号１は回転軸、符号２は回転軸の先端部に設けられたインペラ、符号３は本発明に係るスラスト軸受である。

　回転軸１には、インペラ２が形成された先端の近傍にスラストカラー４が固定されている。このスラストカラー４を挟持するようにして一対のスラスト軸受３が配置されている。
　また、インペラ２は静止側となるハウジング５内に配置されており、インペラ２とハウジング５との間にチップクリアランス６が形成されている。
　また、回転軸１には、スラストカラー４より中央寄りの部分に、ラジアル軸受７が設けられている。

　図２，３Ａ～３Ｃは、このような構成のターボ機械に適用されたスラスト軸受３の第１実施形態を示す図である。図２はスラストカラー４を挟んだ状態のスラスト軸受３の側面図である。図３Ａは一部を断面視したスラスト軸受３の平面図である。図３Ｂは図３Ａの３Ｂ－３Ｂ線矢視断面図である。図３Ｃはバンプフォイル片の形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。

　図２に示すようにこの第１実施形態では、スラスト軸受３Ａ（３）はスラストカラー４を挟んでその両側にそれぞれ配置されている。これら一対のスラスト軸受３Ａ（３）は、共に同じ構成となっており、回転軸１に固定された円板状のスラストカラー４に対向して配置された円環状（円筒状）の装置であり、回転軸１を囲んで設けられている。スラストカラー４の両面（回転軸１の軸方向における両面）は被支持面として構成されており、一対のスラスト軸受３Ａ（３）は、スラストカラー４の両被支持面にそれぞれ対向して支持するように配置されている。

　スラスト軸受３Ａは、スラストカラー４に対向して配置されたトップフォイル１０と、このトップフォイル１０の、前記スラストカラー４に対向する面と反対側の面に対向して配置されたバックフォイル２０と、このバックフォイル２０の、前記トップフォイル１０寄りの側と反対の側に配置された円環板状のベースプレート３０と、を備えて構成されている。なお、ベースプレート３０は、円環板状に限定されず、回転軸１の軸方向に延びる円筒状であってもよい。
　本実施形態では、一対のスラスト軸受３Ａ、３Ａの、それぞれのベースプレート３０、３０間に、二点鎖線で示す円筒状の軸受スペーサ４０が挟持されており、ベースプレート３０、３０は締結ボルト４１によって軸受スペーサ４０を介して連結されている。また、一方のベースプレート３０の外面が、締結ボルト４１によってハウジング５に固定されている。したがって一対のスラスト軸受３Ａ、３Ａは、スラストカラー４を挟んだ状態で締結ボルト４１によってハウジング５に固定されている。

　ベースプレート３０は、図３Ａに示すように円環板状で金属製の部材であり、その外周部に前記締結ボルト４１を挿通するための貫通孔４２が複数（本実施形態では８個）形成されている。このベースプレート３０には、前記スラストカラー４に対向する面に、前記バックフォイル２０やトップフォイル１０を支持するための支持領域が設けられている。本実施形態では、後述するようにバックフォイル２０が複数枚（６枚）のバックフォイル片２１を有し、トップフォイル１０が複数枚（６枚）のトップフォイル片１１を有して構成されている。したがってベースプレート３０には、その表面を周方向に６分割（６つに等分割）してなる６つの支持領域３１が形成されている。なお、本実施形態での６つの支持領域３１は設計上の領域であり、これら支持領域３１を含むベースプレート３０の表面は均一な平面となっている。

　各支持領域３１には、図２に示したようにそれぞれバックフォイル片２１及びトップフォイル片１１がこの順に配置され、支持領域３１によって支持されている。ベースプレート３０、バックフォイル片２１、及びトップフォイル片１１は、回転軸１の軸方向に積層されている。
　図３Ａ～３Ｃに示すようにバックフォイル２０は、ベースプレート３０の周方向に配列された６枚のバックフォイル片２１を有して形成されている。これらバックフォイル片２１は、ベースプレート３０の複数の支持領域３１上にそれぞれ配置され、これによってベースプレート３０の周方向に配列されている。また、これらバックフォイル片２１は、後述するトップフォイル片１１より平面視で僅かに小さく形成され、したがって図３Ａに示すようにベースプレート３０上にてスラストカラー４に向けて露出することなく、トップフォイル片１１に覆われている。

　これらバックフォイル片２１からなるバックフォイル２０は、フォイル（薄板）で形成されており、トップフォイル１０（トップフォイル片１１）を弾性的に支持する。このようなバックフォイル２０としては、例えば、バンプフォイル、日本国特開２００６－５７６５２号公報や日本国特開２００４－２７０９０４号公報などに記載されているスプリングフォイル、日本国特開２００９－２９９７４８号公報などに記載されているバックフォイルなどが用いられる。なお、日本国特開２００６－５７６５２号公報や日本国特開２００４－２７０９０４号公報に記載されているスプリングフォイル、日本国特開２００９－２９９７４８号公報に記載されているバックフォイルは、ラジアル軸受に用いられるフォイルであるが、これらを平面状に展開して平面視円環板状に形成すれば、スラスト軸受に用いられるフォイルとなる。

　本実施形態では、図３Ｃに示すようにバックフォイル２０がバンプフォイルからなり、したがってバックフォイル片２１はバンプフォイル片からなっている。このようなバックフォイル片２１（バンプフォイル片）は、厚さ数百μｍ程度のフォイル（金属製薄板）がプレス成形によって波板状に成形され、図３Ｃに示すように全体が矩形に近い略五角形状に形成されている。

　このように波板状に成形されたバックフォイル片２１は、ベースプレート３０に接する谷部２２と、トップフォイル片１１に接する山部２３とが交互に配置されて形成されている。これら谷部２２及び山部２３は、図３Ａに示すように後述するトップフォイル片１１の固定辺１２の延在方向と直交する方向に配列されている。すなわち、谷部２２及び山部２３の配列方向（谷部２２及び山部２３の隣り合う方向、複数の山部２３の隣り合う方向）は、前記固定辺１２の延在方向と直交する方向に形成されている。したがって谷部２２及び山部２３は、それぞれ前記固定辺１２と平行に延びるように形成されている。

　これら谷部２２および山部２３は、それぞれほぼ等間隔で形成されている。また、山部２３の高さは、前記固定辺１２寄りに位置するバックフォイル片２１の端部からその反対側、すなわち図３Ａ中に矢印Ｒで示す回転軸１（スラストカラー４）の回転方向の下流側（回転の進行側）に向かうに連れて、一定の高さずつ高くなるように形成されている（図３Ｂ参照）。
　また、バックフォイル片２１は、回転軸１の回転方向下流側の端辺２１ａが、後述するトップフォイル片１１における回転軸１の回転方向下流側の端辺１１ｃ（第２端辺）と平面視した状態でほぼ一致する位置に配置されている。バックフォイル片２１は、この端辺２１ａとなる谷部２２の形成方向に沿って、ベースプレート３０にスポット溶接（点付溶接）され、固定されている。

　その際、バックフォイル片２１の端辺２１ａは、全体が連続する一つの谷部２２によって形成されているため、この谷部２２全体を容易にベースプレート３０に溶接することができる。したがって、バックフォイル片２１の溶接による固定を容易に行うことができる。
　なお、ベースプレート３０への端辺２１ａの固定については、スポット溶接以外にも、例えばネジ止めなどによって行うことができる。

　トップフォイル１０も、図３Ａに示すようにベースプレート３０の周方向に配列された６枚のトップフォイル片１１を有して形成されている。これらトップフォイル片１１は、厚さ数百μｍ程度の金属製の薄板（フォイル）を用いて、扇形からその頂点を含む部分を切り除いて内周縁（ベースプレート３０の半径方向内側の縁）及び外周縁（ベースプレート３０の半径方向外側の縁）をそれぞれ円弧状とし、さらに回転軸１（スラストカラー４）の回転方向上流側における縁部の外周縁寄りの部分を切り欠いた形状に形成されている。このような形状のトップフォイル片１１は、ベースプレート３０の各支持領域３１上にて前記バックフォイル片２１を覆ってそれぞれ配置され、ベースプレート３０の周方向に等間隔で配列されて全体として略円環板状に配置されたことにより、トップフォイル１０を形成している。

　なお、トップフォイル片１１は支持領域３１より平面視で僅かに小さく形成されるとともに、バックフォイル片２１より平面視で僅かに大きく形成されている。これによって複数のトップフォイル片１１は、互いに干渉することなく、また、バックフォイル片２１をスラストカラー４に向けて露出させることなく、その上面を覆った状態で各支持領域３１に配置されている。ただし、本発明はこれに限定されることなく、トップフォイル片１１をバックフォイル片２１と平面視で同じ大きさに形成してもよく、あるいは、平面視でバックフォイル片２１より小さく形成してもよい。

　また、このトップフォイル片１１の、回転軸１（スラストカラー４）の回転方向上流側の部分には固定部１３が形成されている。この固定部１３によってトップフォイル片１１はベースプレート３０に固定されている。この固定部１３でのベースプレート３０への固定は、前記バックフォイル片２１の端辺２１ａと同様に、スポット溶接（点付溶接）によってなされている。なお、この固定部１３のベースプレート３０への固定についても、スポット溶接以外に、例えばネジ止めなどで行うこともできる。

　固定部１３は、回転軸１（スラストカラー４）の回転方向上流側に設けられていれば、面状であっても直線状であってもよいが、本実施形態では直線状に形成された固定辺１２として構成されている。すなわち、本実施形態の固定部１３と固定辺１２は同一の位置に配置されているが、後述するように本発明の固定辺は、固定部１３の、回転軸１の回転方向下流側に位置する辺として構成されている。
　トップフォイル片１１における回転軸１（スラストカラー４）の回転方向上流側の端辺１１ｅ（第１端辺）は、本実施形態では、トップフォイル片１１の内周縁から外周縁に向かって延びる内側辺１１ａと、内側辺１１ａの上記外周縁寄りの端部からトップフォイル片１１の外周縁（半径方向外側の縁）にまで延びる外側辺１１ｂとを有して形成されている。このような端辺１１ｅのうちの外側辺１１ｂに、ベースプレート３０に固定されている固定辺１２が設けられている。

　また、トップフォイル片１１は、その回転軸１の回転方向上流側の端辺１１ｅのうち内側辺１１ａと、回転軸１の回転方向下流側の端辺１１ｃ（第２端辺）が、回転軸１を中心にして、すなわち回転軸１の中心軸を中心にしてその半径方向（ベースプレート３０の半径方向と同一）に延びる直線にそれぞれ略一致するように配置されている。したがって、固定辺１２となる前記外側辺１１ｂは、トップフォイル片１１の内周縁寄りの位置から外周縁寄りの位置に向かうに連れて回転軸１の回転方向下流側に近づくように、回転軸１を中心としてその半径方向に延びる直線に対して傾斜して形成されている。言い替えれば、固定辺１２は、ベースプレート３０の半径方向内側から外側に向かうに従い回転軸１の回転方向下流側に近づくように直線状に延びて、ベースプレート３０の上記半径方向に延びる直線に対して平面視で傾斜して配置されている。特に、本実施形態では、固定辺１２はトップフォイル片１１における回転軸１の回転方向下流側の端辺１１ｃに対して、平行に形成されている。

　なお、トップフォイル片１１の形状、並びに固定辺１２及び固定部１３の形状等については、図３Ａに示す構成に限定されることなく、種々の形態を採用することができる。
　例えば、図４Ａに示すように矢印で示す回転軸１（スラストカラー４）の回転方向の上流側でかつ外周縁寄りの部分を切り欠くことなく、略台形形状（扇形からその頂点を含む部分を切り取った形状）にトップフォイル片１１を形成した場合に、図３Ａに示した固定辺１２と対応する位置のみをスポット溶接等によってベースプレート３０に固定し、この固定箇所を固定辺１２（固定部１３）としてもよい。
　この場合に、固定辺１２は、トップフォイル片１１における回転軸１の回転方向上流側の端辺１１ｅ（第１端辺）の両端の間の位置からトップフォイル片１１の外周縁まで延びて形成され、回転軸１やベースプレート３０の半径方向に延びる直線（回転方向上流側の端辺１１ｅ）に対して傾斜して形成されている。
　なお、この場合、固定辺１２より回転軸１の回転方向上流側でかつ外周縁寄りに位置する部位１１ｄは、負荷能力の点ではほとんど機能しない。しかしながら、この部位１１ｄを切り欠く加工を省略できるため、図３Ａに示したトップフォイル片１１に比べてその加工を容易にでき、製作コストを低減できる。

　また、前記したように回転軸１（スラストカラー４）の回転方向上流側でかつ外周縁寄りの部分を切り欠くことなく、略台形形状にトップフォイル片１１を形成した場合、図４Ｂに示すように、切り欠くことなく残した部位１１ｄを含んで、すなわち部位１１ｄと固定辺１２とを含む箇所全体を、固定部１３としてもよい。この場合、部位１１ｄと固定辺１２とを含む箇所全体にスポット溶接等が施される。このように固定部１３を形成した場合、この固定部１３は回転軸１の回転方向下流側に位置する直線状の固定辺１２を含んで形成される。言い替えれば、固定辺１２は、固定部１３の、回転軸１の回転方向下流側に位置する辺として構成されている。この固定辺１２は、トップフォイル片１１の内周縁寄りの位置から外周縁寄りの位置に向かうに連れて回転軸１の回転方向下流側に近づくように直線状に延びて、回転軸１を中心としてその半径方向に延びる直線（回転方向上流側の端辺）に対して傾斜して形成されている。

　また、図３Ａ，４Ａ，４Ｂに示した構成では、回転軸１の回転方向上流側の端辺の一部、あるいはその途中から折れ曲がった（傾斜した）部分を固定辺１２としたが、図４Ｃに示すように、回転軸１の回転方向上流側の端辺全体を固定辺１２としてもよい。その場合、回転軸１の回転方向上流側の部位を斜めに切り欠き、回転方向上流側の端辺を、回転軸１を中心としてその半径方向に延びる直線Ｐ１に対して傾斜して形成する。すなわち、内周縁から外周縁に向かうに連れて（ベースプレート３０の径方向内側から外側に向かうに従い）回転軸１の回転方向下流側に近づくように直線状に延びて、固定辺１２を前記半径方向に延びる直線Ｐ１に対して傾斜して形成する。

　なお、図４Ｃにおいて、固定辺１２より回転軸１の回転方向上流側を切り欠くことなく、図４Ｃ中に二点鎖線で示すようにそのまま残しておいてもよい。また、この二点鎖線で示した箇所も含めて固定部１３としてもよい。さらに、固定辺１２を端辺１１ｃと平行に形成してもよい。
　図４Ｃでは図示しないが、バックフォイル片２１の山部２３は、端辺１１ｃと平行に延びている。このため、複数の山部２３の配列方向（隣り合う方向、図４Ｃの左右方向）は、固定辺１２の延在方向と直交しておらず、交差している。このように、複数の山部２３の隣り合う方向と固定辺１２の延在方向とが交差するように、トップフォイル片１１や固定辺１２が構成されていてもよい。

　また、図３Ａでは、固定辺１２を回転軸１の回転方向下流側の端辺１１ｃに対して平行となるように形成した。しかし、図４Ｄに示すように固定辺１２としては、トップフォイル片１１の内周縁寄りの位置から外周縁寄りの位置に向かうに連れて（ベースプレート３０の径方向内側から外側に向かうに従い）回転軸１の回転方向下流側に近づくように直線状に延びて、回転軸１を中心としてその半径方向に延びる直線Ｐ１に対して傾斜して形成されていれば、固定辺１２の直線Ｐ１に対する傾きが、端辺１１ｃに対して平行な直線Ｐ２の直線Ｐ１に対する傾きより小さくてもよい。

　また、このトップフォイル片１１は、図３Ｂに示すようにその固定辺１２の近傍で曲げ加工されており、これによってバックフォイル片２１の山部２３の高さと略同一の高さを確保できるように立ち上げられ、固定辺１２より端辺１１ｃに近い部分が山部２３上に載せられている。
　一方、端辺１１ｃ（トレーディングエッジ）は、ベースプレート３０等に固定されることなく単にバックフォイル片２１の山部２３上に支持された自由端となっている。

　本実施形態ではバックフォイル片２１を、前記したようにその谷部２２及び山部２３がトップフォイル片１１の固定辺１２の延在方向と直交する方向に配列されるように配置している。したがってこれら谷部２２や山部２３が、トップフォイル片１１の固定辺１２や端辺１１ｃと平行に延在している。よって、このバックフォイル片２１上に載置されることによってトップフォイル片１１は、前記山部２３の配列方向（複数の山部２３の隣り合う方向、固定辺１２に直交する方向）に沿って固定辺１２の近傍から端辺１１ｃに向かうに連れて、漸次ベースプレート３０の内面（スラストカラー４に対向する面）から遠ざかるように傾斜して配置されている。なお、軸受荷重が加えられていない状態では、トップフォイル片１１は、バックフォイル片２１の山部２３によって設定された初期傾斜角で傾斜して配置されている。

　初期傾斜角とは、荷重がゼロのときのベースプレート３０に対するトップフォイル片１１の傾斜角である。また、傾斜角とは、図３Ｃに示すようにバックフォイル片２１の山部２３の高さ増加量によって決まる角度（勾配）θである。本実施形態の傾斜角は、トップフォイル片１１とベースプレート３０の内面との間の角度である。なお、この傾斜角は、トップフォイル片１１とスラストカラー４の被支持面との間の角度に等しい。したがって、荷重が増すとバックフォイル片２１の山部２３がベースプレート３０に向けて押し込まれ、その全体が平坦化することにより、トップフォイル片１１もベースプレート３０に向けて変位し、傾斜角θは初期傾斜角より小さくなる。

　このような構造において、トップフォイル片１１はその固定辺１２と端辺１１ｃとが平行に配置されており、これを支持するバックフォイル片２１は、その山部２３の配列方向が固定辺１２と直交している。そのため、トップフォイル片１１の自由端となる端辺１１ｃは、初期傾斜角の状態でも、また、スラストカラー４の回転によってトップフォイル片１１を介してバックフォイル片２１に荷重が加わり、傾斜角θが小さくなった際にも、そのベースプレート３０からの高さが常に一定になる。すなわち、端辺１１ｃにおける、外周縁寄りの部分の高さと内周縁寄りの部分との高さとが、上記傾斜角が変化する場合でも同様に変化する。

　すなわち、固定辺１２に直交する方向において、固定辺１２から端辺１１ｃにおける外周縁寄りの部分までの長さ（外周縁の長さ）と、固定辺１２から端辺１１ｃにおける内周縁寄りの部分までの長さ（内周縁の長さ）とが互いに同一となっているため、トップフォイル片１１が固定辺１２を支点（回動中心）として、ベースプレート３０から遠ざかるように又は近づくように変位（回動）しても、下流側端辺１１ｃはその外周縁寄りの部分と内周縁寄りの部分との高さが同じになる。よって、上記傾斜角が変化した場合であっても、トップフォイル片１１の自由端となる下流側端辺１１ｃは、スラストカラー４に対して常に平行となる。

　また、トップフォイル片１１は、図３Ｂに示すように固定辺１２の近傍、すなわち固定辺１２における回転軸１の回転方向下流側の近傍に、その他の部位に比べて薄肉に形成された薄肉部１４を有している。薄肉部１４は、固定辺１２に沿って直線状に形成されており、トップフォイル片１１を構成するその他の部位の厚さ（数百μｍ程度）の、５０％～７０％程度の厚さに形成されている。このような薄肉部１４の形成は、例えばエッチング加工によって行うことができる。なお、潤滑流体の流れに影響しないように、薄肉部１４は、トップフォイル片１１のバックフォイル片２１寄りの面に形成されている。

　また、この薄肉部１４は、図３Ｂに示すように、バックフォイル片２１における複数の山部２３のうちの固定辺１２に最も近い山部２３の頂点（稜線）に接しないように、形成されている。すなわち、薄肉部１４は、固定辺１２と固定辺１２寄りに位置する山部２３の頂点（稜線）との間に位置するように、その幅が設定されている。これにより、トップフォイル片１１は、薄肉部１４以外の箇所（その他の部位）が全ての山部２３上に載ってこれらに均等に支持されて、図３Ｃに示した傾斜角θが維持される。また、薄肉部１４を形成したことにより、薄肉部１４よりも端辺１１ｃに近い部分がより容易にかつ円滑に固定辺１２を支点として（又は薄肉部１４を支点として）変位（回動）できる。さらに、このような薄肉部１４を形成することにより、薄肉部１４以外の箇所の肉厚を、従来に比べて厚くすることも可能になる。

　次に、このような構成からなるスラスト軸受３Ａ（３）の作用について説明する。
　本実施形態では、図２に示したようにスラスト軸受３Ａをスラストカラー４の両側に設けている。このようにスラストカラー４の両側にスラスト軸受３Ａを設けることにより、スラスト方向におけるスラストカラー４（回転軸１）の移動量を極力抑えることができる。すなわち、スラスト移動量を小さくすることにより、図１に示したチップクリアランス６を狭くした場合でもインペラ２等のハウジング５への接触を防止でき、チップクリアランス６を狭くすることでターボ機械等の流体性能を向上することができる。

　スラスト方向の移動量を極力抑えるため、両スラスト軸受３Ａはスラストカラー４に対して大きな隙間が生じないように近接して設置される。これにより、両スラスト軸受３Ａのトップフォイル片１１（トップフォイル１０）はスラストカラー４（スラストカラー４の被支持面）に対して僅かに押し付けられた状態になる。その際、本実施形態ではトップフォイル片１１に薄肉部１４を形成しているので、端辺１１ｃ寄りの部位が変位し易く（曲がり易く）なっている。そのため、押し付け量に応じて生じる押し付け力（反力）が小さくなっており、これにより、始動トルクが小さくなっている。

　すなわち、従来では荷重が増大したときにトップフォイル片の傾斜角が最適角になるように、予め最適角より大きい傾斜角がトップフォイル片に付けられている。したがって、回転停止状態ではトップフォイル片はスラストカラー４を両面から挟み込み、押し付けられた状態(プリロードが掛かった状態)となる。しかしながら、従来ではトップフォイル片の上流側端辺がその全長に渡ってベースプレートに固定されており、トップフォイル片の肉厚も一定であることから、スラストカラー４への押し付け力(プリロード)が強く、始動トルクが大きくなる場合がある。
　これに対して本実施形態では、前記したように固定辺１２の長さを上流側の端辺１１ｅの全体の長さより短くし、さらにトップフォイル片１１に薄肉部１４を形成しているため、生じる押し付け力（反力）が低減され、始動トルクが小さくなる。

　また、回転軸１が回転してスラストカラー４が回転を始めると、スラストカラー４とトップフォイル片１１は擦れ合いつつ、両者の間に形成された側面視くさび形の空間（軸受隙間）に周囲流体が押し込まれる。スラストカラー４が一定の回転速度に達すると、両者の間に流体潤滑膜が形成される。この流体潤滑膜の圧力によってトップフォイル片１１（トップフォイル１０）はバックフォイル片２１（バックフォイル２０）に押し付けられ、トップフォイル片１１はスラストカラー４から離間し、スラストカラー４はトップフォイル片１１に対して非接触で回転する。

　スラスト荷重が加わると、トップフォイル片１１はさらにバックフォイル片２１へ押され、トップフォイル片１１の傾斜角θは小さくなる。その際、トップフォイル片１１は回転軸１の回転方向上流側の固定辺１２を支点として変位する（曲がる）が、自由端となる下流側の端辺１１ｃは固定辺１２と平行になっているので、トップフォイル片１１の変位が進行しても端辺１１ｃのスラストカラー４との平行状態が維持される。

　したがって、スラスト荷重がさらに増加して流体潤滑膜の膜厚がさらに薄くなったとしても、トップフォイル片１１のスラストカラー４に対する接触が抑制されているため、結果としてより高いスラスト荷重を支持することが可能になる。

　本実施形態のスラスト軸受３Ａ（３）にあっては、ベースプレート３０に固定される固定辺１２を、トップフォイル片１１の内周縁寄りの位置から外周縁寄りの位置に向かうに連れて回転軸１の回転方向下流側（端辺１１ｃ）に近づくように、回転軸１を中心としてその半径方向に延びる直線に対して傾斜させて形成するとともに、端辺１１ｃに対して平行に形成している。このため、トップフォイル片１１が固定辺１２を支点として、ベースプレート３０から遠ざかるように又は近づくように変位しても、下流側端辺１１ｃの立ち上がり量をその外周縁寄りの部分と内周縁寄りの部分とで同じにすることができる。よって、スラストカラー４の回転時においてスラスト荷重が変化しても、トップフォイル片１１の自由端となる下流側端辺１１ｃをスラストカラー４に対して常に平行に維持することができ、したがってトップフォイル片１１等がスラストカラー４に接触して損傷することによる軸受寿命の低下や焼き付き等を防止することができる。

　また、固定辺１２は、トップフォイル片１１における回転軸１の回転方向上流側の端辺１１ｅの両端の間の位置から、外周縁まで延びて形成されている。このため、固定辺１２の長さを上流側の端辺１１ｅの全体より短くすることができ、これによってトップフォイル片１１を変位し易く（曲がり易く）し、始動トルクを低減することができる。また、回転軸１が回転を開始した後も、トップフォイル片１１が容易にかつ円滑に変位するため、最適傾斜角（例えば０．１°程度）が得られ易くなり、軸受の負荷能力が向上する。

　また、トップフォイル片１１の、固定辺１２における回転方向下流側の近傍部に薄肉部１４を形成しているので、荷重がかかった際に端辺１１ｃに近い部分がより容易にかつ円滑に変位できるようになり、したがって始動トルクが低減する。また、回転軸１が回転を開始した後も、トップフォイル片１１が容易にかつ円滑に変位するため、最適傾斜角が得られ易くなり、負荷能力が向上する。

　高いスラスト荷重を受けているときには流体潤滑膜の圧力が高くなるので、トップフォイル片１１のバックフォイル片２１に直接支えられていない部分、すなわちバックフォイル片２１の谷部２２上に位置する箇所が撓み、ここから圧力が逃げて負荷能力が低下する可能性がある。

　しかし、本実施形態ではトップフォイル片１１の固定辺１２の近傍に薄肉部１４を形成しているので、トップフォイル片１１が変位する（曲がる）動きを妨げることなく、従来に比べてトップフォイル片１１の板厚を厚くすることが可能である。したがって、このようにトップフォイル片１１の板厚を厚くことにより、バックフォイル片２１に支えられていない部分での撓みを少なくすることができ、負荷能力の低下を抑制することができる。

　次に、本発明のスラスト軸受３の第２実施形態について説明する。
　第２実施形態のスラスト軸受３Ｂ（３）が第１実施形態のスラスト軸受３Ａ（３）と主に異なるところは、図５Ａ～５Ｃに示すように、ベースプレート３０の前記支持領域３１に傾斜面３２を形成した点と、バックフォイル片２１の複数の山部２３の高さを、全て同一にした点である。なお、図５Ａは一部を断面視したスラスト軸受３の平面図、図５Ｂは図５Ａの５Ｂ－５Ｂ線矢視断面図、図５Ｃはバンプフォイル片の形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。

　本実施形態では、図５Ａに示すように各支持領域３１における、前記バックフォイル片２１及びトップフォイル片１１を支持する領域全体に、トップフォイル片１１の固定辺１２が設けられた位置から下流側の端辺１１ｃに対向する位置に向かうに連れて高さが増加する傾斜面３２が形成されている。
　すなわち、傾斜面３２を、図５Ｂに示すように固定辺１２、およびこれに平行な端辺１１ｃに対して直交する方向に傾斜させて形成している。

　また、バックフォイル片２１については、前記第１実施形態と同様に、ベースプレート３０に接する谷部２２と、トップフォイル片１１に接する山部２３とを交互に配置した波板状に形成している。ただし、本実施形態では、図５Ｂ，５Ｃに示すように、複数の山部２３の高さを全て同一に形成している。

　また、谷部２２及び山部２３については、前記第１実施形態と同様に、トップフォイル片１１の固定辺１２の延在方向と直交する方向に配列させている。すなわち、谷部２２及び山部２３の配列方向を前記固定辺１２の延在方向と直交する方向とし、傾斜面３２の傾斜方向に一致させている。これにより、バックフォイル片２１の山部２３は、その高さがベースプレート３０の傾斜面３２の傾斜方向に沿って、すなわち回転軸１の回転方向の下流側に向かうに連れて、所定の高さずつ高くなっている。つまり、複数の山部２３の頂点の高さについては、第１実施形態と見かけ上同一になっている。したがって、このバックフォイル片２１上に配置されるトップフォイル片１１は、その傾斜角θが、第１実施形態と同様に形成される。本実施形態では、トップフォイル片１１の傾斜角θは、図５Ｃに示すように傾斜面３２の傾斜角θによって決定される。

　本実施形態のスラスト軸受３Ｂ（３）にあっても、固定辺１２を端辺１１ｃに対して平行に形成しているので、トップフォイル片１１が固定辺１２を支点として、ベースプレート３０から遠ざかるように又は近づくように変位しても、下流側端辺１１ｃの立ち上がり量（高さ）をその外周縁寄りの部分と内周縁寄りの部分とで同じにすることができる。よって、スラストカラー４の回転時においてスラスト荷重が変化しても、トップフォイル片１１の自由端となる下流側端辺１１ｃをスラストカラー４に対して常に平行にすることができ、したがって軸受寿命の低下や焼き付きを防止することができる。

　また、ベースプレート３０の各支持領域３１に傾斜面３２を形成し、バックフォイル片２１の複数の山部２３の高さを全て同一にするとともに、山部２３の配列方向を傾斜面３２の傾斜方向に一致させている。このため、この傾斜面３２上にバックフォイル片２１を介してトップフォイル片１１を配設することにより、トップフォイル片１１の高さを傾斜面３２に沿って精度よく変化させることができる。すなわち、トップフォイル片１１に所定の傾斜角θを付与することができる。また、その際にバックフォイル片２１については、山部２３の高さを変化させることなく一定の高さに作製すればよく、したがってその加工コストを抑えることができる。よって、このスラスト軸受３Ｂ（３）によれば、加工を容易にして量産性を向上させ、コストの低減化を図ることができる。また、加工が容易になって品質のバラツキが少なくなるため、設計時に予測した軸受性能（例えば軸受負荷能力）が得やすくなる。

　なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
　例えば、前記実施形態ではバックフォイル２０又はトップフォイル１０を６つのバックフォイル片２１（バンプフォイル片）又は６つのトップフォイル片１１で各々構成し、したがってベースプレート３０の支持領域３１もこれに合わせて６つ形成（設定）した。しかし、バックフォイル片２１（バンプフォイル片）やトップフォイル片１１は、複数であれば５つ以下でも７つ以上であってもよい。その場合、支持領域３１の数も、バックフォイル片２１（バンプフォイル片）やトップフォイル片１１の数と同じになる。

　また、第２実施形態においてベースプレート３０の支持領域３１に傾斜面３２を形成する場合、バックフォイル片２１が載る面全体を傾斜面３２とするのに代えて、支持領域の一部を平坦面とし、バックフォイル片２１の一部を傾斜面上に、残部を平坦面上に配置してもよい。その場合に、平坦面は傾斜面の上側（端辺１１ｃ寄り、下流側）に形成してもよく、下側（固定辺１２寄り、上流側）に形成してもよい。さらに、傾斜面の両側（上流側及び下流側）に平坦面をそれぞれ形成してもよい。
　また、トップフォイル片やバンプフォイル片の形状、支持領域上へのトップフォイル片やバンプフォイル片の配置、傾斜面の傾斜方向など、前記実施形態以外にも種々の形態を採用することが可能である。

　本発明は、回転軸に設けられたスラストカラーに対向して配置されてこのスラストカラーを支持するスラスト軸受に利用することができる。

１　回転軸
３，３Ａ，３Ｂ　スラスト軸受
４　スラストカラー
１０　トップフォイル
１１　トップフォイル片
１１ａ　内側辺
１１ｂ　外側辺
１１ｃ　端辺（第２端辺）
１１ｅ　端辺（第１端辺）
１２　固定辺
１３　固定部
１４　薄肉部
２０　バックフォイル
２１　バックフォイル片
２１ａ　端辺
２２　谷部
２３　山部
３０　ベースプレート
３１　支持領域
３２　傾斜面

Claims

　回転軸に設けられたスラストカラーに対向して配置されるスラスト軸受であって、
　前記スラストカラーに対向して配置されるトップフォイルと、
　前記トップフォイルの、前記スラストカラーに対向する面と反対側の面に対向して配置されて、前記トップフォイルを支持するバックフォイルと、
　前記バックフォイルの、前記トップフォイル寄りの側と反対の側に配置されて、前記バックフォイルを支持する円環状のベースプレートと、を備え、
　前記バックフォイルは、前記ベースプレートの周方向に配列された複数のバックフォイル片を有し、
　前記トップフォイルは、前記複数のバックフォイル片の上にそれぞれ配設された複数のトップフォイル片を有し、
　前記トップフォイル片の、前記回転軸の回転方向上流側の部分には、前記ベースプレートに固定される固定部が形成され、
　前記固定部の、前記回転軸の回転方向下流側に位置する固定辺は、前記ベースプレートの半径方向内側から外側に向かうに従い前記回転軸の回転方向下流側に近づくように直線状に延びて、前記半径方向に延びる直線に対して傾斜しているスラスト軸受。
　前記固定辺は、前記トップフォイル片における前記回転軸の回転方向上流側に位置する第１端辺の両端の間の位置から、前記トップフォイル片の外周縁まで延びて形成されている請求項１に記載のスラスト軸受。
　前記トップフォイル片における前記回転軸の回転方向上流側の第１端辺は、前記トップフォイル片の内周縁から外周縁に向かって延びる内側辺と、該内側辺の前記外周縁寄りの端部から前記外周縁にまで延びる外側辺とを有し、
　前記外側辺に、前記固定辺が設けられている請求項１に記載のスラスト軸受。
　前記固定辺は、前記トップフォイル片における前記回転軸の回転方向下流側の第２端辺に対して平行に形成されている請求項２又は３に記載のスラスト軸受。
　前記トップフォイル片は、前記固定辺における前記回転軸の回転方向下流側の近傍に、前記トップフォイルの他の部分に比べて薄肉に形成された薄肉部を有している請求項１～４のいずれか一項に記載のスラスト軸受。
　前記バックフォイル片は、複数の山部と複数の谷部とを交互に形成した波板状に形成されるとともに、前記複数の山部の隣り合う方向が前記固定辺の延在方向と交差するように配置され、前記複数の山部の高さが、前記固定辺寄りに位置する前記バックフォイル片の端部から前記回転軸の回転方向下流側に向かうに従い漸次高くなっている請求項１～５のいずれか一項に記載のスラスト軸受。
　前記ベースプレートには、前記複数のバックフォイル片をそれぞれ支持する複数の支持領域が設けられ、各支持領域に、前記固定辺が設けられた位置から前記回転軸の回転方向下流側に向かうに従い漸次高さが増加する傾斜面が形成されている請求項１～５のいずれか一項に記載のスラスト軸受。
　前記バックフォイル片は、複数の山部と複数の谷部とを交互に形成した波板状に形成されるとともに、前記複数の山部の隣り合う方向が前記傾斜面の傾斜方向に一致するように配置されている請求項７に記載のスラスト軸受。
　前記バンプフォイル片は、前記回転軸の回転方向下流側の端辺で前記ベースプレートに固定されている請求項６又は８に記載のスラスト軸受。