WO2014115246A1

WO2014115246A1 - 飛翔昆虫捕獲装置

Info

Publication number: WO2014115246A1
Application number: PCT/JP2013/051204
Authority: WO
Inventors: 憲三岩尾; 泰法武田; 雅夫加藤; 信一佃
Original assignee: 株式会社タケダ
Priority date: 2013-01-22
Filing date: 2013-01-22
Publication date: 2014-07-31
Also published as: JP6139406B2; JPWO2014115246A1

Abstract

【課題】作業環境に優れ、雨等によっても捕獲性能が低下し難く、低コストであり、かつ交換や廃棄が容易な飛翔昆虫捕獲装置を提供する。【解決手段】本発明の飛翔昆虫捕獲装置は、平板状をなし、表面に飛翔昆虫を粘着可能な粘着層２５ｂが設けられた２枚の捕集板２５と、両捕集板２５を起立状態で支持可能な支持台２１とを備えている。両捕集板２５は、プラスチック製段ボールからなる基板２５ａと、基板２５ａに塗布された粘着層２５ｂとからなる。

Description

飛翔昆虫捕獲装置

　本発明は飛翔昆虫捕獲装置に関する。

　ハエ、蚊、虻、蚋、蜂等の飛翔昆虫は社会において害虫である場合がある。このため、従来、ハエ取り紙によって飛翔昆虫を捕獲することが行われていた。このハエ取り紙は、一般的には、帯状の紙と、この紙の表面に粘着剤が塗布されてなり、飛翔昆虫を粘着可能な粘着層とからなる。

　しかし、ハエ取り紙は、風によって姿勢が安定せず、人やペットが粘着層に付着して不快感を覚えるおそれがある。このため、特許文献１等に開示された飛翔昆虫捕獲装置も提案されている。この飛翔昆虫捕獲装置は、複数枚の捕集板と支持台とを備えている。各捕集板は、上下に細長い平板状をなし、表面に飛翔昆虫を粘着可能な粘着層が設けられている。各捕集板は、基板と、この基板に塗布された粘着層とからなる。基板は、ボール紙、木板、合成樹脂板等からなる。支持台は、各捕集板を上下に長い放射状や角柱状に組み付けて地表に対して起立状態で支持可能になっている。この飛翔昆虫捕獲装置は、風があっても姿勢が安定し、人等が粘着層に付着するおそれを防止することが可能である。

特開２００４－０９７２０３号公報

　しかし、従来の飛翔昆虫捕獲装置も種々の点で十分ではない。

　すなわち、飛翔昆虫の中には、刺咬性を有していたり、牛等から吸血を行うサシバエ(Stomoxys calcitrans、stable fly）等が存在する。これらサシバエ等は、人や動物に対して痛みを与えたり、病気を感染させたりする等、社会に対して特に悪影響を及ぼす。例えば、月刊「畜産技術」（（社）畜産技術協会出版　２０１１年６月号、第１６～１９頁　乳用牛の生産性向上を目指した「簡易低コスト型サシバエ防虫ネット」執筆者：永井秀樹）によれば、牛や馬は、サシバエによりストレスを感じ、異常行動を起こす。また、同報告によれば、牛は、立ったまま日中を過ごすことにより、肢蹄に負担を生じ、採食料の減少等々に伴い、産乳量の減少と、増体への悪影響とが生じている。

　このようなことから、畜産農家において、飛翔昆虫、特にサシバエ等を避けるため、一般的なハエ取り紙を使用しようとすると、ハエ取り紙が風によって予想しない方向に変位し、作業員や牛等に付着することから、作業環境が悪化してしまう。

　また、上記特許文献１の飛翔昆虫捕獲装置を畜産農家において使用しようとすると、基板がボール紙や木板である場合には、雨や牛舎等内水分によって基板が劣化し、飛翔昆虫の捕獲性能が低下するおそれがある。また、基板が合成樹脂板である場合には、合成樹脂板が高価であるとともに、中実であるために大重量であることから、飛翔昆虫の捕獲に多大なコストが必要になるとともに、飛翔昆虫捕獲装置の交換や廃棄が面倒であるという問題がある。

　本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、作業環境に優れ、雨等によっても捕獲性能が低下し難く、低コストであり、かつ交換や廃棄が容易な飛翔昆虫捕獲装置を提供することを解決すべき課題としている。

　本発明の飛翔昆虫捕獲装置は、平板状をなし、表面に飛翔昆虫を粘着可能な粘着層が設けられた捕集板と、
　前記捕集板を起立状態で支持可能な支持台とを備え、
　前記捕集板は、プラスチック製段ボールからなる基板と、前記基板に塗布された前記粘着層とからなることを特徴とする（請求項１）。

　本発明の飛翔昆虫捕獲装置では、一般的なハエ取り紙と異なり、平板状の捕集板を採用しているため、捕集板が風によって予想しない方向に変位し難く、作業員や牛等に付着し難い。

　また、この飛翔昆虫捕獲装置では、基板がプラスチック製段ボールからなる。このプラスチック製段ボールは、ボール紙や木板に比べ、粘着層が浸透しにくい性質を有するため、雨等によって劣化し難い。また、基板がプラスチック製段ボールからなるため、合成樹脂板よりも安価であるとともに、中空であるために軽量化されている。

　したがって、本発明の飛翔昆虫捕獲装置では、作業環境に優れ、雨等によっても捕獲性能が低下し難く、低コストであり、かつ交換や廃棄が容易である。

　本発明の飛翔昆虫捕獲装置は、特にサシバエ等のハエやヒトスジシマ蚊（Aedes (Stegomyia) albopictus、Asian Tiger Mosquito）等の蚊等、牛やヒト等から吸血を行ったりする吸血性飛翔昆虫を捕獲する場合に用いて好適である。

　サシバエを捕獲する場合、発明者らの試験結果によれば、飛翔昆虫捕獲装置は、高さが９０ｃｍ以下であることが好ましい。より好ましくは５０ｃｍ以下であることが好ましい。サシバエは、地上より９０ｃｍ以下、より多くは５０ｃｍ以下を集中して飛行する傾向が多いからである。

　また、ヒトスジシマ蚊を捕獲する場合、発明者らの試験結果によれば、飛翔昆虫捕獲装置は、高さが８０ｃｍ以下であることが好ましい。ヒトスジシマ蚊は、地上から８０ｃｍ程度までの高さで飛行していることが多いからである。

　これらのため、本発明の飛翔昆虫捕獲装置では、捕集板が地表から０～９０ｃｍの高さに位置することが好ましい。これにより、吸血性飛翔昆虫を自然な状態で好適に捕集板へと誘引することができる。

　発明者らの試験結果によれば、サシバエを捕獲する場合、捕集板自体の大きさは、１辺が３０ｃｍ以上の正方形又は長方形であることが好ましい。サシバエは、直線状に勢いよく飛行し、着地する性質を有していることから、狭い面積の部分には着地し難い。この意味で捕集板自体は、特許文献１のように細長い平板状であるよりも、１辺が３０ｃｍ以上の正方形又は長方形であることが好ましい。

　プラスチック製段ボールとしては、ポリプロピレンで使用されたプラスチック製段ボール製、ポリカーボネートで使用されたプラスチック製段ボール製等のものを採用することができる。

　ヒトスジシマ蚊を捕獲する場合は黒色等、濃色の捕集板で高い捕獲能力を発揮できることがわかっているが、サシバエを捕獲する場合は捕集板の色の違いによる捕獲能力に差はほとんどみられない。本発明の飛翔昆虫捕獲装置は、捕集板が青色を呈していることが好ましい。青色は清潔感があるとともに、粘着させた飛翔昆虫が目立ちやすいので、交換や廃棄の時期を正確に把握できる。

　粘着層を基板に塗布する手段としては、スプレーによってもよく、刷毛やローラによってもよく、ディッピングによってもよい。捕集板の表裏で飛翔昆虫を捕獲する場合には、捕集板の表面ばかりでなく、捕集板の裏面にも粘着層を塗布する。

　支持台は、木材、金属板、プラスチック製段ボール、発泡スチロール等であり得る。

　支持台は、平板状のプラスチック製段ボールからなる素材が立体形状に組み立てられたものであることが好ましい（請求項２）。この場合、設置前には支持台及び捕集板を平板状にすることが可能になり、設置前の飛翔昆虫捕獲装置の持ち運びが容易になる。また、支持台もプラスチック製段ボールからなることから、捕集板の基板と同様、雨等によって劣化し難いとともに、安価かつ軽量化される。

　支持台は、素材が三つの平板部を有する三角柱形状に折り曲げられてなり得る。また、捕集板は、粘着層が外側に向くように二つ又は三つの平板部の表面に設けられ得る（請求項３）。この場合、折り畳むことにより、設置前の飛翔昆虫捕獲装置の持ち運びが容易になる。また、展開することにより、飛翔昆虫捕獲装置を容易に設置できる。そして、複数枚の捕集板を用いることで、長期間の捕集効果を維持することが可能となる。また、三角柱の内部を後述の重量物を保持するための空間にすることが可能である。

　支持台は、中央に位置する平板部である中央平板部と、中央平板部の一端側に位置する平板部である一端側平板部と、中央平板部の他端側に位置する平板部である他端側平板部とを有し得る。この支持台は、不使用時には、中央平板部に一端側平板部及び他端側平板部が重ねられて折り畳まれていることが好ましい（請求項４）。この場合、飛翔昆虫捕獲装置を容易に折り畳み、容易に展開することができる。

　支持台が発泡スチロールからなれば、プラスチック製段ボール製の基板とともに、飛翔昆虫捕獲装置全体が軽量化され、持ち運びが容易になる。また、支持台が発泡スチロールであれば、飛翔昆虫捕獲装置の製造コストを低廉化するとともに、長期に使用しても紙や木材のように腐食するおそれもない。さらに、使用が終わればそのまま飛翔昆虫捕獲装置を廃棄することが容易である。

　支持台と捕集板との間には、捕集板を着脱可能とする着脱手段が設けられていることが好ましい（請求項５）。この場合、飛翔昆虫を大量に捕獲した捕集板を支持台から外し、新たな捕集板を取り付けることが容易になる。このため、支持台を使い続ける一方、捕獲能力を回復することができるため、ランニングコストの低廉化を実現できる。

　着脱手段は、支持台に設けられ、捕集板を差し込んで支持し、捕集板を引き抜いて外すことが可能なガイドであることが好ましい（請求項６）。このようなガイドにより、捕集板を容易に脱着することが可能になる。差し込む方向及び引き抜く方向は上下や水平に限定されない。

　ガイドは、平板状のプラスチック製段ボールからなることが好ましい（請求項７）。この場合、ガイドもプラスチック製段ボールからなることから、捕集板の基板と同様、雨等によって劣化し難いとともに、安価かつ軽量化される。

　支持台には、転倒を抑制可能な転倒抑制手段が設けられていることが好ましい（請求項８）。この転倒抑制手段により、風等によって飛翔昆虫捕獲装置が転倒することを抑制し、長期に亘って安定して効果を発揮することができる。

　転倒抑制手段は、支持台に形成され、重量物が保持される凹部又は空間であることが好ましい（請求項９）。この場合、重量物さえ用意すれば、その重量物を凹部や空間によって保持することにより、飛翔昆虫捕獲装置の転倒を有効に防止することができる。重量物さえ用意すれば、その重量物を凹部や空間によって保持することにより、飛翔昆虫捕獲装置の転倒を有効に防止することができる。

　重量物は、容器と、容器内に充填された流体とを有することが好ましい（請求項１０）。容器は、ペットボトル等のプラスチック製の容器、紙製の容器、金属製の容器、陶器製の容器等を採用することができる。流体としては、水、油、土砂、ゲル状の物質等を採用することができる。

　支持台は、複数枚の捕集板を互いに平行に支持し得る。そして、一端側の捕集板と他端側の捕集板とは各々粘着層を外側に向けていることが好ましい（請求項１１）。この場合、一端側の捕集板と他端側の捕集板とで飛翔昆虫を捕獲することができる。なお、平行とは、幾何学的に完全な平行である必要はない。

　複数枚の互いに平行な捕集板を採用した飛翔昆虫捕獲装置は、最も外側に位置する捕集板以外は未使用のものとすることができる。複数枚の互いに平行な捕集板を採用する場合、捕集板同士の間隔は１～２ｃｍであることが好ましい。１ｃｍ未満の間隔では捕集板同士が接着し易い。２ｃｍを超えた間隔では、間隔内に飛翔昆虫が飛来したり、異物が侵入し、未使用の捕集板に粘着してしまい、使用時の粘着性を低下させてしまうおそれがある。

　発明者らは以下の発明についても完成した。
（１）平板状をなし、接触又は近接した飛翔昆虫を電撃によって攻撃可能な電撃グリッドが表面に設けられた捕集板と、
　前記捕集板を起立状態で支持可能な支持台とを備え、
　前記捕集板は、プラスチック製段ボールからなる基板と、前記基板に導電性インクにより印刷された前記電撃グリッドとからなり、
　前記支持台には、前記捕集板の下方に設けられ、前記電撃によって落下する前記飛翔昆虫を捕獲する捕獲ケージが形成されていることを特徴とする飛翔昆虫捕獲装置。

　家畜や人間の感染症を媒介する飛翔昆虫の体内に生息する病原体を検定（ヴァイラス・アセイという。）するためには、その昆虫を生きたまま捕獲する必要がある。（１）の飛翔昆虫捕獲装置では、電撃により飛翔昆虫を気絶させ、落下した飛翔昆虫を捕獲ケージ内に捕獲することができる。

（２）前記支持台には、前記捕集板と水平面に対して下り傾斜した天板との間に形成され、前記捕獲ケージ内に連通する捕獲口が形成されている（１）記載の飛翔昆虫捕獲装置。

　この場合、一時的に気絶した飛翔昆虫が天板上を転がり、捕獲口から捕獲ケージ内に落下し、飛翔昆虫を捕獲することができる。下り傾斜は水平面に対して３０～４５°であることが好ましい。捕獲口は幅１ｃｍ程度で水平方向に延びることが好ましい。

（３）前記捕獲口には、前記電撃グリッドの下端部が挿入されている（２）記載の飛翔昆虫捕獲装置。

　この場合、捕獲ケージ内で蘇生した飛翔昆虫が捕獲口を認知し、捕獲口近傍の電撃グリッドに着地すれば、再び電撃で気絶して落下する。これにより、飛翔昆虫が逃亡するのを防ぐことができる。電撃グリッドは、捕獲ケージ内に５～１０ｃｍ程度挿入されていることが好ましい。

　本発明の飛翔昆虫捕獲装置は、作業環境に優れ、雨等によっても捕獲性能が低下し難く、低コストであり、かつ交換や廃棄が容易である。

実施例１の飛翔昆虫捕獲装置の斜視図である。実施例１の飛翔昆虫捕獲装置の断面図である。実施例２の飛翔昆虫捕獲装置の一使用状態を示す斜視図である。実施例２の飛翔昆虫捕獲装置の他の使用状態を示す斜視図である。実施例２の飛翔昆虫捕獲装置に係り、組立前の状態を示す平面図又は側面図である。図（Ａ）は素材の裏面図であり、図（Ｂ）はその素材の表面図である。図（Ｃ）は捕集板の表面図である。図（Ｄ）は組立前の飛翔昆虫捕獲装置の側面図である。参考例の飛翔昆虫捕獲装置の斜視図である。参考例の飛翔昆虫捕獲装置の断面図である。

　初めに、以下の試験１～４を行った。

（試験１）
１．目的
　家畜を吸血するサシバエを簡易な有色板で誘引できれば、飛翔昆虫捕獲装置の設計、製作、低コスト化が容易になる。そこで、数種類のカラーのプラスチック製段ボール（住化プラステック（株）製「サンプライ（登録商標）」、ポリプロピレン製）（以下、プラダンという。）からなる基板を用意し、各基板を用いた捕集板により誘引効果を調査した。

２．方法
（１）日時：予備試験　平成24年9月28日10：30～17：00
　　　　　　本格試験　平成24年10月2日10：30～17：00
（２）場所：愛知県農業総合試験場　畜産研究部牛舎（長久手市）
（３）色種別：白色、赤色、黒色、青色、黄色
（４）捕獲方法：粘着スプレー缶（丸善薬品産業（株）製「金竜」）を用いて各基板にスプレー塗布し、各基板上に粘着層を形成した捕集板を用意した。各捕集板の粘着層にサシバエが着地して粘着する。

３．結果
（１）予備試験の結果
　9月28日10：30に牛舎内に各捕集板を設置し、夕方までのサジバエの捕獲数をカウントした。結果を表１に示す。

（２）本格試験の結果
　基礎試験の結果から、サシバエが好んで青色の基板を用いた捕集板に着地することが判明したので、幅８５ｃｍ×高さ６２ｃｍの同色の捕集板を製作し、改めて10月2日10：30に牛舎内の牧草地側に設置した。

　その結果、10:30～11:30のわずか１時間で１１５匹のサシバエがその捕集板に着地し、捕獲された。

４．考察
　青色の捕集板での捕獲の様子は上記のとおりであり、捕獲した飛翔昆虫は全てサシバエであった。周囲のサシバエの母集団は牛一頭ごとに２０匹程度がまとわりついている状況で、特に多いということは無かったが、青色の捕集板を好んで着地する現象が観察された。10：30～11：30の１時間で捕獲されたサシバエが１１５匹という多数であった。その結果、牛の足にまとわりつくサシバエがほとんどいなくなるとともに、サシバエも捕獲されなくなったため、引き揚げた。

　夕方、連絡によれば、約２倍の２１５匹まで増加していた。試験中の観察により、どこからともなく一直線で勢いよく着地してくるサシバエや捕集板の前面の空中でサシバエが盛んに交尾する光景も見られ、サシバエは、体格が大きい点を除けば、蚊とほとんど同じ行動をしていることに気付いた。このことは、青色の捕集板への積極的な着地特性の発見とともに大きな収穫である。

５．まとめ
（１）牛舎内において、サシバエは青色の捕集板で容易に誘引できることが判明した。ただし、高度は５０ｃｍ以下を好む。
（２）サシバエは基本的に蚊と同じ行動パターンをしていると考えた方が良いと思われる。
（３）今回の試験の結果から、牛舎内の各種フェンスに沿って取り付ける腰高で、箱形の捕獲装置が最も商品化が早いと期待される。
（４）サシバエの駆除については、関係者が長年取り組んできてなお有効な方法が見つからないという状況の中、今回の試験によれば、既存の捕獲装置と比べ、安価、簡単、かつ大量にサシバエの捕獲ができることがわかった。

（試験２）
１．目的
　試験１の結果を受け、今回、終日での捕獲性能を３日連続で調査したので、その結果を報告する。

２．方法
（１）日時：終日捕獲性能試験　平成24年10月17日～19日
（２）場所：愛知県農業総合試験場　畜産研究部牛舎（長久手市）
（３）捕獲方法：前回の基礎試験で用いた幅８５ｃｍ×高さ６２ｃｍの青色の捕集板を継続して使用し、サシバエを捕獲した。

３．結果
　捕集板は牛舎内の通路側に設置した。サシバエは捕集板の下部に集中して捕集された。捕獲数のデータは表２に示すとおりであった。

４．考察
　幅８５ｃｍ×高さ６２ｃｍの青色の捕集板により、６４９匹のサシバエを一日で捕獲できた。捕集板の全面が真っ黒であり、粘着層の余地が無い状態であるため、これがほぼ日最大捕獲性能と考えられる。

　その後、捕獲数が減少していったのは、捕獲によりサシバエの絶対数が減ったものと考えられる。それが本当であり、かつ、それに伴って牛への吸血回数が減れば、捕獲装置の設置の意義が一気に高まる。

　愛知農業総合試験場サイドの話では、これまでサシバエ用のハエ取り紙等、昔から多種に亘って商品はあるが、充分な性能を発揮するものが無いため、“古くて新しい”テーマとして、今回、研究課題に挙げたとのことである。

５．まとめ
（１）牛舎内において、サシバエは捕集板で多数のサシバエを捕獲できることがより明確になった。やはり、高度は５０ｃｍ以下を好むことも再確認された。
（２）今回の試験結果から、次年度は以下の研究課題が想定される。
　ア．現行のバラックセットを標準化し、商品化する。
　イ．それを用いて、サシバエの短期の環境棲息密度減少と吸血抑制効果を明確にする。
　ウ．併せて、サシバエ発生初期からの設置による根本的なサシバエ抑制効果を明確にする。

６．付記
　試験１の結果から、牛舎内の各種フェンスに沿って取り付ける腰高で箱形の捕獲装置の商品イメージを提案した。実際に、幅３５ｃｍ×長さ５０ｃｍ×奥行き１０ｃｍのトロ箱（発泡スチロール製）で捕獲を試みた。この結果、サシバエは、縁には良く留まるものの、奥行き（空間）を警戒し、浅くても底面ではほとんど捕獲できないことが分かった。商品化に当たって、サシバエの特性に注意すべきことを教えられた。

（試験３）
１．目的
　試験１、２の結果を受けて、今回、色別の捕集板を同一の高さに設置して捕獲性能を調査したので、その結果を報告する。

２．方法
（１）日時：捕獲性能試験　平成24年11月7日～13日
（２）場所：愛知県農業総合試験場　畜産研究部牛舎（長久手市）
（３）捕獲方法：白色、赤色、黒色、青色及び黄色のプラダン製の基板に粘着層を形成して各捕集板（２０ｃｍ×３０ｃｍ）とした。各捕集板を地面から５０ｃｍ高の鉄柵に吊り下げ、粘着によりサシバエを捕獲した。

３．結果
　牛舎を外周する鉄柵の下部に上述の各色の捕集板を設置した。サシバエはいずれの捕集板においても良く捕獲されることが観察された。

　試験期間中の捕獲数のデータは表３に示すとおりであり、捕集板の色による捕獲数の違いが認められた。

　捕集板の色の違いによる誘引効果としては、白色、赤色及び青色はほぼ同等に効果が高いこと、黄色、黒色の順で誘引効果が低いことという結果が得られた。なお、黒色の捕集板で捕獲性能が低い傾向は、試験１でも見られた。

４．考察
　サシバエの飛翔数は日々の気象により大きく変動することが明らかになった。特に、11月8日の捕獲数減少は急な冷え込みによるものと考えられる。その後、気温の回復とともにいずれの捕集板でも捕獲数の増加が見られた。白色、赤色及び青色の捕集板で誘引効果が高いことが判明したが、三者間に特に有意差はないと考えられる。

５．まとめ
　５色の捕集板をサシバエが好んで飛翔する低い位置で、かつ高さを揃えて設置することで、高さの違いを払拭して色の違いによる誘引効果の違いを試験した。その結果、白色、赤色及び青色の捕集板でほぼ同様の高い誘引効果を示すことが分かった。

　商品化に当たっては、環境負荷となるプラスチックの使用量と材料コストの削減との観点から、厚さの薄い青色のプラダンを使用することになると予想している。なお、プラダンが薄くてもサシバエの捕獲のための捕集板の形成は可能である。

（試験４）
１．目的
　試験１～３の結果に基づき、実施例１の捕獲装置を試作する。また、その捕獲装置を用いて捕獲性能、コスト、実用性等を調査し、商品モデルの概略の仕様を決定する。さらに、競合他社製品との比較試験を行い、商品としての優位性について評価する。

２．方法
（１）実施例１の捕獲装置の試作
　図１及び図２に試作した捕獲装置を示す。この捕獲装置は、支持台１と、この支持台１に設けられた合計６枚の捕集板３とからなる。

　支持台１は、底板５と、この底板５から垂直に立ち上げられた一対の支持壁７、９とを有している。各支持壁７、９は、互いに対面している。両支持壁７、９の上端には、互いを連結する連結棒１１が固定されている。この捕獲装置では、底板５、両支持壁７、９及び連結棒１１として木材を採用している。

　支持壁７には、着脱手段としての第１～８ガイド１３ａ～１３ｈが固定されている。また、支持壁９にも、第１～８ガイド１５ａ～１５ｈが固定されている。第１～８ガイド１３ａ～１３ｈと第１～８ガイド１５ａ～１５ｈとは、互いに対面している。第１～８ガイド１３ａ～１３ｈ、１５ａ～１５ｈは下方から上方に向かって延びている。

　支持台１の一端側から他端側に向かって第１～８ガイド１３ａ～１３ｈ、１５ａ～１５ｈが設けられている。左右の第１ガイド１３ａ、１５ａと左右の第８ガイド１３ｈ、１５ｈとは同一形状の板状をなしている。左右の第２～７ガイド１３ｂ～１３ｇ、１５ｂ～１５ｇは、第１、８ガイド１３ａ、１３ｈより幅が狭く、同一形状の板状をなしている。

　両第１ガイド１３ａ、１５ａと両第２ガイド１３ｂ、１５ｂとの間に支持台１の一端側の捕集板３が支持されている。両第２ガイド１３ｂ、１５ｂと両第３ガイド１３ｃ、１５ｃとの間にその捕集板３の他端側に位置する捕集板３が支持されている。両第３ガイド１３ｃ、１５ｃと両第４ガイド１３ｄ、１５ｄとの間にその捕集板３の他端側に位置する捕集板３が支持されている。

　両第８ガイド１３ｈ、１５ｈと両第７ガイド１３ｇ、１５ｇとの間に支持台１の他端側の捕集板３が支持されている。両第７ガイド１３ｇ、１５ｇと両第６ガイド１３ｆ、１５ｆとの間にその捕集板３の一端側に位置する捕集板３が支持されている。両第６ガイド１３ｆ、１５ｆと両第５ガイド１３ｅ、１５ｅとの間にその捕集板３の一端側に位置する捕集板３が支持されている。

　各捕集板３同士の間隔は１～２ｃｍである。各捕集板３は、青色又は黒色の平板状をなすプラダンからなる基板３ａと、これらの基板３ａの表面に粘着剤が塗布された粘着層３ｂと、これらの基板３ａの裏面に粘着剤が塗布された粘着層３ｃとからなる。基板３ａは幅４２ｃｍ×高さ５０ｃｍである。基板３ａ及び粘着層３ｂ、３ｃのその他の条件は試験１～３と同様である。

　支持台１の第１～８ガイド１３ａ～１３ｈ、１５ａ～１５ｈ間に合計６枚の捕集板３を上方から差し込んで支持した。この際、支持台１の一方側には青色の捕集板３を３枚差し込み、支持台１の他方側には黒色の捕集板３を３枚差し込んだ。また、粘着層３ｂ、３ｃが外面になるようにした。こうして、捕獲装置を得た。この捕獲装置は、幅４７ｃｍ×奥行き２８ｃｍ×高さ６２ｃｍである。

（２）実施例１の捕獲装置の捕獲性能試験
　愛知県農業総合試験場の畜産研究部の牛舎の餌場の横に実施例１の捕獲装置を設置し、サシバエの終日の捕獲性能を調査した。
　試験日は10月29日～31日の3日間とした。

（３）競合他社製品との捕獲性能比較試験
　比較例１～３を用意した。比較例１はハエトリ紙である。比較例２は、温室コナジラミ等のごく小さい虫の捕獲用に用いられる強力粘着テープである。比較例３は、市販の捕獲装置「ステーブルフライ・トラップ（米国製、総代理店：アイピー通商）」である。

　同牛舎にて、実施例１の捕獲装置と比較例１～３とで比較試験を行った。試験は11月12日に行った。

３．結果
（１）実施例１の捕獲装置の捕獲性能
　表４に３日分の捕獲数のデータを表４に示す。いずれも基礎試験の結果と同程度の捕獲性能を示した。また、基礎試験の時と同様に捕獲数の逓減が見られた。

（２）競合他社製品との捕獲性能比較試験
　競合他社製品の単品を各々横並びに配置した状況で得られた各々の捕獲データの結果は表５のとおりである。実施例１の捕獲装置が最も高い捕獲性能を示した。

　実施例１の捕獲装置では、一般的なハエ取り紙と異なり、平板状の各捕集板３を採用しているため、各捕集板３が風によって予想しない方向に変位し難く、作業員や牛等に付着し難い。

　また、この捕獲装置では、各捕集板３の基板３ａがプラダンである。このプラダンは、ボール紙や木板に比べ、粘着層３ｂが浸透しにくい性質を有するため、雨等によって劣化し難い。また、基板３ａがプラダンであるため、合成樹脂板よりも安価であるとともに、中空であるために軽量化されている。

　したがって、この捕獲装置では、作業環境に優れ、雨等によっても捕獲性能が低下し難く、低コストであり、かつ交換や廃棄が容易である。

　また、この捕獲装置では、支持台１と各捕集板３との間に第１ガイド１３ａ～１３ｈ、１５ａ～１５ｈが設けられている。これら第１ガイド１３ａ～１３ｈ、１５ａ～１５ｈにより、上方から捕集板３を差し込んだり、上方へ引き抜いたりすることにより、複数枚の捕集板３を着脱可能としている。この場合、サシバエを大量に捕獲した捕集板３を支持台１から外し、新たな捕集板３を取り付けることが容易になる。このため、支持台１を使い続ける一方、捕獲能力を回復することができるため、ランニングコストの低廉化を実現できる。

　また、実施例１の捕獲装置では、支持台１が複数枚の捕集板３を互いに平行に支持している。そして、一端側の捕集板３と他端側の捕集板３とは各々粘着層３ｂを外側に向けている。このため、一端側の捕集板３と他端側の捕集板３とで飛翔昆虫を捕獲することができる。最も外側に位置する捕集板３以外は未使用のものである。

　なお、この捕獲装置では、支持台１が大重量の木製であるため、そのままで転倒し難いが、支持台１に凹部を設け、この凹部に重量物を保持することによりさらに転倒を抑制することも可能である。支持台１を発泡スチロール等の軽量な材料で構成した場合には、このような凹部を設けることがより好ましい。

４．考察
（１）基板に対するサシバエの色の認識と実施例１の捕獲装置における捕集板の色との関係について
　今回の商品化試験結果と基礎試験結果との間で難解な現象が生じた。つまり、試験１と試験３とのいずれにおいても、黒色の捕集板によるサシバエの誘引効果は有意に低いことが報告された。

　しかし、実施例１の捕獲装置では、黒色の捕集板の方が青色の捕集板よりも優れる結果となった。しかも、青色の捕集板では、下部に集中するのに対し、黒色の捕集板では、全面に亘って捕獲された。これは、コストの高い粘着スプレー缶を使わざるを得ない現状では優れた特性であると言える。

　数種類の色の捕集板を並べた場合では、確かにサシバエの反応は黒色を敬遠した。これに対し、実施例１の捕獲装置は立体構造であり、一面が全面黒色あるいは青色であり、横並びの中から好みの色を選択できるわけではない。サシバエが色に反応している訳では無いと考えると、その着地は単なる休憩と思われる。それゆえ、全面に着地が見られると考えると、一応説明が着く。本報告では、以上の考察に留める。

（２）競合他社製品との優位性の比較について
　農業試験場が準備した他者競合製品の中に比較例３、つまりサシバエの専用捕獲器が含まれていた。比較例３は米国製であり、国内のＩ社が総代理店として輸入しているものである。ハエトリ紙も含め、いずれの資材も基本的に同じ原理であることから、商品としての競合はコストパフォーマンス、取り扱い易さ、廃棄容易性といった評価項目に絞られると考える。

　以下に、評価の検討例を示す。
＜コストパフォーマンス等の検討例＞
　比較例３は、その粘着面積から見て、実施例１の捕獲装置の捕集板一枚分と同様、最大２００匹程度で廃棄処分と考えられる。価格が２,６２５円／台であるので、そのコストパフォーマンスは１３円／匹となる。実施例１の捕獲装置は、捕集板を６枚取替え可能なので、価格を３，０００円／台と仮定すると、２．５円／匹となり、はるかに優位である。比較例２は温室コナジラミ等のごく小さい虫の捕獲用であるが、これでサシバエの捕獲を行った場合は、２円／匹と試算される。

　比較例１、２は数字の上ではコストパフォーマンスが高くなるが、リボン、テープが暖簾の状態になり、しかも粘着性のものが風でハタメクため、現場で作業環境が確保できない。また、設置と廃棄との場面で取り扱いにくいため、非現実である。設置と廃棄とにおいては、元の箱に入れてゴミ回収に出すだけで良い点は実施例１の捕獲装置と比較例３とが同レベルである。

５．まとめ
　家畜のヒステリー症状の緩和のため、いまの時代にハエ（但し、吸血性のサシバエ）を取るという古くて新しいテーマを愛知県農業総合試験場が新規研究テーマとして取り上げ、その装置開発と普及に協力する立場で当社との共同研究が今年から開始された。発明者である岩尾の年齢では、ハエを取ると言えば、ハエトリ紙で事足りると思っていたが、ハエと瓜二つのサシバエという特殊なハエの捕獲技術開発であり、普通のハエトリ紙では通用しないという現実が出発点であった。幸いに、既報のとおり、予想よりもスムーズに実施例１の捕獲装置の開発にこぎつけることが出来た。

　以上の試験１～４に基づき、実施例２の捕獲装置を完成させた。この捕獲装置は、図３及び図４に示すように、支持台２１と、２枚の捕集板２５とからなる。

　支持台２１は、図５（Ａ）及び（Ｂ）に示すように、平板状をなし、長方形状の青色（ライトブルー）のプラダンからなる素材２３が折り曲げられているものである。

　素材２３は、中央に位置する中央平板部２３ａと、中央平板部２３ａの一端側に位置する一端側平板部２３ｂと、中央平板部２３ａの他端側に位置する他端側平板部２３ｃとを有している。素材２３の長手方向の一端には、一端側平板部２３ｂと他端側平板部２３ｃとを接続するための粘着テープ２９が設けられている。組立前の粘着テープの粘着層には、図示しない保護シートが設けられている。

　中央平板部２３ａと一端側平板部２３ｂとの間には、折り込み線２３ｄが形成されているとともに、折り込み線２３ｄと同一方向に延びるスリット２３ｅが形成されている。また、中央平板部２３ａと他端側平板部２３ｃとの間にも、折り込み線２３ｆが形成されているとともに、折り込み線２３ｆと同一方向に延びるスリット２３ｇが形成されている。折り込み線２３ｄと折り込み線２３ｆとは平行である。折り込み線２３ｄと折り込み線２３ｆとの間隔は、中央平板部２３ａの幅が一端側平板部２３ｂ及び他端側平板部２３ｃの幅よりもやや大きくなるように設定されている。

　図５（Ｂ）に示すように、一端側平板部２３ｂの表面には、折り込み線２３ｄの両端側に位置するように、長方形状のガイド２７ａ、２７ｂが固定されている。各ガイド２７ａ、２７ｂは折り込み線２３ｄの両端側のみが一端側平板部２３ｂに固定されている。また、他端側平板部２３ｆの表面にも、折り込み線２３ｆの両端側に位置するように、長方形状のガイド２７ｃ、２７ｄが固定されている。各ガイド２７ｃ、２７ｄも折り込み線２３ｆの両端側のみが他端側平板部２３ｃに固定されている。各ガイド２７ａ～２７ｄも平板状の青色（ライトブルー）のプラダンからなる。また、各ガイド２７ａ～２７ｄと一端側平板部２３ｂ又は他端側平板部２３ｃとの固定の方法としては、ステープラ、接着、熱溶着等が採用され得る。各ガイド２７ａ～２７ｄが着脱手段である。

　図５（Ｃ）に示すように、各捕集板２５は、平板状の青色（ライトブルー）のプラダンからなる基板２５ａと、基板２５ａの縁を除いた表面に粘着剤が塗布されてなる粘着層２５ｂとからなる。組立前の各捕集板２５の粘着層２５ｂには、保護シート２５ｃが設けられている。

　支持台２１は、図５（Ｄ）に示すように、不使用時には、素材２３が折り込み線２３ｄ、２３ｆで折り込まれ、中央平板部２３ａに一端側平板部２３ｂ及び他端側平板部２３ｃが重ねられることにより、折り畳まれている。また、２枚の捕集板２５がこの支持台２１とともに梱包される。こうして、不使用時の捕獲装置は、設置前には支持台２１及び両捕集板２５を平板状にすることが可能であることから、持ち運びが容易となっている。

　この捕獲装置を使用する場合、素材２３を展開する。そして、粘着テープ２９により、一端側平板部２３ｂと他端側平板部２３ｃとを接続する。これにより、図３及び図４に示すように、支持台２１は三角柱形状となり、支持台２１内には、中央平板部２３ａ、一端側平板部２３ｂ及び他端側平板部２３ｃによって囲まれた空間３１が形成される。

　また、ガイド２７ａ、２７ｂ内に捕集板２５を差し込むとともに、ガイド２７ｃ、２７ｄ内に捕集板２５を差し込む。そして、両捕集板２５の保護シート２５ｃを剥がす。こうして、この捕獲装置は容易に設置される。

　この捕獲装置は、図３に示すように、壁等に沿って立てて使用され得る。この際、牛舎の地面に捕獲装置を設置するのであれば、空間３１における中央平板部２３ａと一端側平板部２３ｂとの間や中央平板部２３ａと他端側平板部２３ｃとの間において、棒３３ａ、３３ｂを地面に突き刺す。

　また、この捕獲装置は、図４に示すように、倒されて使用され得る。この際、空間３１内における中央平板部２３ａ上に重量物３５を載置する。重量物３５としては、水を充填したペットボトル等を採用することができる。

　空間３１、棒３３ａ、３３ｂ及び重量物３５が転倒抑制手段となる。空間３１に設けられた棒３３ａ、３３ｂや重量物３５により、風等によって捕獲装置が転倒することを抑制し、長期に亘って安定して効果を発揮することができる。

　そして、この捕獲装置では、使用中、２枚の捕集板２５によって長期間の捕集効果を維持することが可能である。そして、サシバエやヒトスジシマ蚊を大量に捕獲すれば、それらの捕集板２５を支持台２１から外す。次いで、未使用の捕集板２５を別途購入し、新たな捕集板２５を容易に取り付けることができる。このため、支持台２１を使い続ける一方、捕獲能力を回復することができるため、ランニングコストの低廉化を実現できる。

　また、この捕獲装置では、支持台２１の素材２３及びガイド２７ａ～２７ｄもプラダンからなることから、両捕集板２５の基板２５ａと同様、雨等によって劣化し難いとともに、安価かつ軽量化される。他の作用効果は実施例１の捕獲装置と同様である。

（参考例）
　発明者らは以下の捕獲装置も完成した。この捕獲装置は、図６及び７に示すように、支持台４１と、捕集板４３とからなる。

　捕集板４３は、平板状をなし、長方形状の青色（ライトブルー）のプラダンからなる基板４３ａと、基板４３ａの表面に形成され、接触又は近接した飛翔昆虫を電撃によって攻撃可能な電撃グリッド４３ｂとからなる。電撃グリッド４３ｂは、黒鉛を含有する導電性インクを印刷することにより形成されている。電撃グリッド４３ｂは黒色を呈している。電撃グリッド４３ｂには、１．５Ｖの単三電池を２本内蔵した図示しない給電装置が接続され、スイッチのＯＮによって１８００Ｖの電圧が印加されるようになっている。

　支持台４１は、捕集板４３を背面側において起立状態で支持可能な箱形をなしている。この支持台４１内には、捕集板４３の下方に位置し、電撃グリッド４３ｂの電撃によって落下する飛翔昆虫を捕獲する捕獲ケージ４１ａが形成されている。

　すなわち、支持台４１は、水平面に対して３０～４５°で下り傾斜した天板４１ｂを有している。捕集板４３と天板４１ｂとの間には、捕獲ケージ４１ａ内に連通する捕獲口４１ｃが形成されている。捕獲口４１ｃは幅１ｃｍ程度で水平方向に延びている。捕獲口４１ｃには、電撃グリッド４３ｂの下端部が５～１０ｃｍ程度挿入されている。

　この捕獲装置では、飛翔昆虫が捕集板４３に接触したり、近接したりすれば、その飛翔昆虫を電撃グリッド４３ｂによって電撃によって気絶させる。気絶した飛翔昆虫は、天板４１ｂの上面を転がり、又は滑り、捕獲口４１ｃから捕獲ケージ４１ａ内に捕獲することができる。

　捕獲ケージ４１ａ内で蘇生した飛翔昆虫が捕獲口４１ｃを認知し、捕獲口４１ｃから逃げようと捕集板４３を這い上がろうとすることがある。この飛翔昆虫は、捕獲口４１ｃ近傍で電撃グリッド４３ｂに接触したり、近接し、再び電撃で気絶して落下することとなる。これにより、この捕獲装置では、飛翔昆虫が逃亡するのを防ぐことができる。

　この捕獲装置によるサシバエの捕獲試験を2012年11月12～13日に行った。場所は愛知県農業総合試験場（長久手市）畜産研究部の牛舎である。

　サシバエの活動シーズンは過ぎていたため、飛翔数は減少している状況ではあったが、12日16：30には捕獲ケージ４１ａ内に活発に活動する34匹のサシバエを確認し、生きたまま捕獲するための捕獲装置の実用性が確認された。

　以上において、本発明を試験１～４及び実施例１、２に即して説明したが、本発明は実施例１、２に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。

　本発明は、ハエ、蚊、虻、蚋、蜂等の飛翔昆虫を捕獲する装置に利用可能である。

　３ｂ、２５ｂ…粘着層
　３、２５…捕集板
　１、２１…支持台
　３ａ、２５ａ…基板
　２３…素材
　２３ａ、２３ｂ、２３ｃ…平板部（２３ａ…中央平板部、２３ｂ…一端平板部、２３ｃ…他端平板部）
　１３ａ～１３ｈ、１５ａ～１５ｈ、２７ａ～２７ｄ…第１～８ガイド、ガイド、着脱手段
　３１、３５…転倒抑制手段（３１…空間、３５…重量物）

Claims

　平板状をなし、表面に飛翔昆虫を粘着可能な粘着層が設けられた捕集板と、
　前記捕集板を起立状態で支持可能な支持台とを備え、
　前記捕集板は、プラスチック製段ボールからなる基板と、前記基板に塗布された前記粘着層とからなることを特徴とする飛翔昆虫捕獲装置。
　前記支持台は、平板状のプラスチック製段ボールからなる素材が立体形状に組み立てられたものである請求項１記載の飛翔昆虫捕獲装置。
　前記支持台は、前記素材が三つの平板部を有する三角柱形状に折り曲げられてなり、
　前記捕集板は、前記粘着層が外側に向くように二つ又は三つの前記平板部の表面に設けられている請求項２記載の飛翔昆虫捕獲器。
　前記支持台は、中央に位置する前記平板部である中央平板部と、前記中央平板部の一端側に位置する前記平板部である一端側平板部と、前記中央平板部の他端側に位置する前記平板部である他端側平板部とを有し、
　前記支持台は、不使用時には、前記中央平板部に前記一端側平板部及び前記他端側平板部が重ねられて折り畳まれている請求項３記載の飛翔昆虫捕獲器。
　前記支持台と前記捕集板との間には、前記捕集板を着脱可能とする着脱手段が設けられている請求項１乃至４のいずれか１項記載の飛翔昆虫捕獲装置。
　前記着脱手段は、前記支持台に設けられ、前記捕集板を差し込んで支持し、前記捕集板を引き抜いて外すことが可能なガイドである請求項５記載の飛翔昆虫捕獲装置。
　前記ガイドは、平板状のプラスチック製段ボールからなる請求項６記載の飛翔昆虫捕獲装置。
　前記支持台には、転倒を抑制可能な転倒抑制手段が設けられている請求項１乃至７のいずれか１項記載の飛翔昆虫捕獲装置。
　前記転倒抑制手段は、前記支持台に形成され、重量物が保持される凹部又は空間である請求項８記載の飛翔昆虫捕獲装置。
　前記重量物は、容器と、前記容器内に充填された流体とを有する請求項９記載の飛翔昆虫捕獲装置。
　前記支持台は、複数枚の前記捕集板を互いに平行に支持し、
　一端側の前記捕集板と他端側の前記捕集板とは各々前記粘着層を外側に向けている請求項１乃至１０のいずれか１項記載の飛翔昆虫捕獲装置。