WO2014033845A1

WO2014033845A1 - エレベーター装置

Info

Publication number: WO2014033845A1
Application number: PCT/JP2012/071736
Authority: WO
Inventors: 賢二蔀; 坂井　満; 誠秀羽田
Original assignee: 株式会社日立製作所
Priority date: 2012-08-28
Filing date: 2012-08-28
Publication date: 2014-03-06
Also published as: CN104583108A; CN104583108B

Abstract

　上昇時と下降時とで異なるかごの定格速度を有するエレベータにあって、調速機に係る省スペース化、及び構造の簡易化を図ることのできるエレベータ装置を提供するため、水平軸（９ｅ）に支持されて調速ロープ（９ａ）の上端が巻き掛けられた綱車（９ｂ）と、従動鎖歯車（９ｈ１）、（９ｈ２）を２種類（歯数違い）配置すると共に、伝動用鎖（９ｆ）を２種類のいずれかの従動鎖歯車（９ｈ１）、（９ｈ２）にスライド可能とし、かごの運転方向に応じてスライド手段（９Ｃ）を介して伝動用鎖（９ｆ）を従動鎖歯車（９ｈ１）、（９ｈ２）に掛け代えさせ、駆動傘歯車（９Ａ１）及び従動傘歯車（９Ａ２）により、調速部（９Ａ）で上昇時の所定の過速度を検出すると共に、下降時の所定の過速度を検出するようにしたものである。

Description

エレベーター装置

　本発明は、上昇時と下降時とで異なるかごの定格速度を有するエレベーター装置に関し、並びに、そのエレベーター装置の調速機に係わるものである。

　エレベーター装置には、一般に、昇降体、例えばかこの昇降速度を常時監視し、かごが所定の過速状態に陥った際にかごを非常停止させる調速機が備えられている。

　調速機は、かごの昇降速度が定格速度を超えて第１過速度に達すると、かごを駆動する巻上機及び巻上機を制御する制御装置の電源をそれぞれ遮断することにより、巻上機を停止せしめ、かごを安全に停止させる。また、調速機は、何らかの原因によりかごの下降速度が第１過速度を超えて第２過速度に達すると、かごに設けられた非常止め装置を動作させて、かごを機械的に非常停止させる。

　近年、ビルの高層化に伴うエレベーター装置の高速化及び長行程化が進んでおり、このようなエレベーター装置にあっては、かごの昇降による急激な気圧変化が発生し、乗客に耳がつんとなる耳閉感を与える。人間の耳は気圧が下がる側、即ちかごの上昇時の方が、気圧が上がる側、即ちかごの下降時より順応しやすい特性があるため、上昇方向のかごの定格速度（移動速度）より、下降方向の定格速度を低く設定し、耳閉感の低減を図ったエレベーター装置が要求されている。

　このようなエレベーター装置にあって、所定の過速状態に陥ったかごを非常停止させるため、従来、上部調速機とは別に下部調速機を設け、上部綱車と下部綱車との間に調速機ロープを巻き掛け、下降時と上昇時とで、過速度を別々に検出、監視可能としたものが提案されている（例えば、特許文献１参照）。

特開２００２－１２０９７９号公報

　しかしながら、前述した特許文献に記載のものを含む従来のエレベーター装置では、昇降路の頂部及び底部に配置される綱車にそれぞれ別個の調速機を設ける必要があり、多大な占有スペースを要すると共に、部品点数が増加して設備コストが掛かるという課題があった。

　本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、上昇時と下降時とで異なるかごの定格速度を有するエレベーターにあって、調速機に係る省スペース化、及び部品点数の低減を図ることのできるエレベーター装置を提供することにある。

　前記目的を達成するために、本発明のエレベーター装置は、上昇時と下降時とで異なる昇降体の定格速度を有するエレベーター装置であって、昇降路に配置され、巻上機によって駆動される主ロープに連結されてガイドレールに沿って上昇、下降する昇降体と、昇降体に連結された無端状をなす調速機ロープと、調速機ロープの上端が巻き掛けられた綱車と、綱車の回転が伝動され、昇降体の昇降速度を検出して監視し、昇降体が規定の過速状態になったときに昇降体を停止させる調速機とを有する。さらに、本発明のエレベーター装置は、当該調速機が、綱車の回転が伝動される調速機構を有し、当該調速機構は、昇降体が上昇のときの綱車の回転が伝動され、上昇時の所定の速度を検出する上昇時の調速機構と、昇降体が下降のときの綱車の回転が伝動され、下降時の所定の速度を検出する下降時の調速機構とが組み込まれてなり、上昇時の調速機構と下降時の調速機構との一方を動作させる制御を行うものである。

　本発明によれば、上昇時と下降時とで異なるかごの定格速度を有するエレベーター装置にあって、調速機に係る省スペース化を図って装置の設備コストを低減することができる。

図１は本発明が適用されるエレベーター装置の全体概略図である。図２は本発明に係るエレベーター装置の調速部の第１の実施例を示す　　　　　概略構成図である。図３は図２におけるＡ－Ａ線に沿う矢視図である。図４は図３におけるＢ－Ｂ線に沿う矢視図である。図５は本発明に係るエレベーター装置の調速部の第２の実施例を示す　　　　　概略構成図である。図６は図５におけるＣ－Ｃ線に沿う矢視図である。

　本発明の実施の形態のエレベーター装置は、上昇時と下降時とで異なるかごの定格速度を有するエレベーター装置にであって、上昇時と下降時とで異なるかごの過速度検出を行う調速機を有する。すなわち、本発明の実施の形態のエレベーター装置の調速機には、上昇時の調速機構と下降時の調速機構が組み込まれており、それぞれが上昇時と下降時の昇降速度監視を行う。

　そして、当該調速機の具体的な構成の一例は、昇降路に配置されると共に昇降体に連結された無端状をなす調速機ロープと、調速機筐体に軸支される水平軸に支持され、前記調速機ロープの上端が巻き掛けられた綱車と、前記綱車の回転中心の水平軸と同心に配置された駆動鎖歯車と、この駆動鎖歯車の回転が伝動用鎖にて伝動される従動鎖歯車と、従動鎖歯車の回転中心となる従動軸と、この従動軸に固定される駆動傘歯車と、駆動傘歯車と噛み合う従動傘歯車と、この従動傘歯車に固定される鉛直軸とを備える。

　さらに、この鉛直軸の上端部に枢持されたアームと、このアームの下端に固定されたフライボールと、前記鉛直軸に嵌合された滑り筒と、前記鉛直軸に嵌合されて前記鉛直軸の上端と前記滑り筒との間に配置され、前記滑り筒を下方へ付勢するばねとを有するフライボール式の調速部等の調速部を備える。

　また、上昇時と下降時とで異なるかごの昇降速度監視を行うために、前記従動鎖歯車又は駆動鎖歯車の一方を２種類（歯数違いで）配置すると共に、前記伝動用鎖を従動鎖歯車又は駆動鎖歯車の２種類の一方に任意に掛け代え可能とし、前記かごの運転方向に応じて前記伝動用鎖を、従動鎖歯車又は駆動鎖歯車の２種の一方に掛け代えさせる構成としたものである。

　このように構成した本発明の実施の形態のエレベーター装置では、例えば、歯数の異なる従動鎖歯車を２種類設けて掛け替え可能とした場合、駆動鎖歯車と従動鎖歯車の歯数（減速比）が上昇方向及び下降方向で、あらかじめ設定される。そして、かごが上昇方向又は下降方向の運転に移る際、伝動用鎖を上昇方向用従動鎖歯車、又は下降方向用従動鎖歯車に掛け代え、従動鎖歯車の回転が伝動される駆動傘歯車及び従動傘歯車により、フライボール式の調速部等の調速部に綱車の回転を伝達し、かごの昇降時の所定の過速度が検出可能となる。

　すなわち、伝動用鎖を上昇方向用従動鎖歯車に掛けることによって、上昇時の調速機構が働き、又は伝動用鎖を下降方向用従動鎖歯車に掛け代えることによって、下降時の調速機構が働くように制御される調速機構が備えられた調速機が構成されている。これにより、本発明の実施の形態のエレベーター装置では、上昇方向における所定の過速度を検出すると共に、下降方向における所定の過速度を検出し、規定の昇降体の停止動作を行う。

　このように、上昇用及び下降用の２種類の従動鎖歯車（又は駆動鎖歯車）を配置し、運転方向に応じて伝動用鎖を掛け代えて使用するという簡易な構造とすることで、上昇時と下降時とで昇降体の異なる定格速度を有するエレベーターにおいて、調速機に係る省スペース化、及び部品点数の低減を図ることができる。

　また、本発明の実施の形態のエレベーター装置は、前記昇降体の運転方向に応じて前記伝動用鎖を2種類の従動鎖歯車（又は駆動鎖歯車）の一方にスライドさせる掛け代え手段が、モーターと、従動鎖歯車（又は駆動鎖歯車）の下部に配置された掛け代え用鎖歯車、及び前記伝動用鎖のテンションを調節するローラを有して成る構成としている。

　このように構成した本発明の実施の形態では、昇降体外または昇降体内の操作盤の操作結果が伝達され、昇降体の上昇または下降を制御する制御部による昇降体の運転方向の切替えに応じて、モーターが駆動され、掛け代え用鎖歯車を介して伝動用鎖が一方の従動鎖歯車（又は駆動鎖歯車）にスライドされる。その結果、従動軸に固定される駆動傘歯車、駆動傘歯車と噛み合う従動傘歯車、この従動傘歯車に固定される鉛直軸を介して、フライボール式の調速部により所定の過速度が検出可能となる。このように、モーター及び掛け代え用鎖歯車を用いるという比較的単純な構造により、確実に伝動用鎖の掛け代えを行うことができるのである。

　以下、本発明に係るエレベーター装置の実施例を図に基づき説明する。

　以下の実施例は本発明の実施形態の具体例を示すものであり、本発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。

　また、実施例を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略することがある。　
　<実施例１>
　本発明の実施例のエレベーター装置は、図１に例示するように、建屋に形成される昇降路１と、昇降路１の直上に設けられた機械室２と、昇降路１を昇降する昇降体、即ちかご３及びつり合いおもり４と、かご３とつり合いおもり４とに連結される主ロープ５と、機械室２に設置され、主ロープ５を駆動する巻上機６と、昇降路１に立設され、かご３の昇降を案内するかご用ガイドレール７と、昇降路１に立設され、つり合いおもり４の昇降を案内するつり合いおもり用ガイドレール８と、かご３の昇降速度を監視し、かご３が所定の過速状態に陥った際にかご３を非常停止させる調速機９と、かご３に設けられ、かご３を機械的に非常停止させる非常止め装置１０とを備えている。

　また、本実施例の調速機９は、図１に例示するように、昇降路１に配置され、無端状をなす調速機ロープ９ａと、調速機ロープと昇降体を連結する連結部材１１と、後述する水平軸に固定されて調速機ロープ９ａの上端の湾曲部が巻き掛けられた綱車９ｂと、昇降路１の下部に配設され、調速機ロープ９ａの下端の湾曲部が巻き掛けられた張り車９ｃとを備えている。引き上げロッド１２は連結部材１１と連結リンク機構（図示を略）を介して結合され、かごの制動時に非常止め装置１０に設けられた楔状の制動子（図示を略）を引き上げて制動子をガイドレールに摺接する。

　第１の実施例のエレベーター装置の調速機９においては、図２、図３及び図４に示すように、綱車９ｂは、調速機筐体９ｄに軸支された水平軸９ｅに支持されている。

　図２、図３に一例を示す様に、調速機９の調速機構９Ａは、綱車９ｂの回転中心と同心に配置された駆動鎖歯車９ｇ１と、この駆動鎖歯車９ｇ１と伝動用鎖９ｆにて伝動される従動鎖歯車９ｈ１、９ｈ２と従動軸９ｉ１を備える。さらに、この従動軸９ｉ１と固定される駆動傘歯車９Ａ１と噛み合う従動傘歯車９Ａ２と、この従動傘歯車９Ａ２に固定される鉛直軸９Ａ３とを備える。さらに、この鉛直軸９Ａ３の上端部に枢持されたアーム９Ａ４と、このアーム９Ａ４の下端に固定されたフライボール９Ａ５と、鉛直軸９Ａ３に嵌合された滑り筒９Ａ６と、アーム９Ａ４と滑り筒９Ａ６を連結するアーム連結部材９Ａ８を備える。さらに、鉛直軸９Ａ３に嵌合されて鉛直軸９Ａ３の上端と滑り筒９Ａ６との間に配置され、滑り筒９Ａ６を下方へ付勢するばね９Ａ７とを備えている。

　伝動用鎖９ｆを水平方向にスライドさせるスライド手段９Ｃは、モーター９Ｃ１と、このモーター９Ｃ１と従動鎖歯車９ｈ１、９ｈ２の下部に配置された図３に示す掛け代え用鎖歯車９Ｃ３との間に配置される駆動アーム９Ｃ２とを備えている。

　また、掛け代え用鎖歯車９Ｃ３の下側には、伝動用鎖９ｆを従動鎖歯車９ｈ１、９ｈ２に掛け代え時の伝動用鎖９ｆのテンションを調節するためのテンション用ばね９Ｃ５、テンション調節ローラ９Ｃ４を設置してある。

　滑り筒９Ａ６には、調速リンク機構１３が結合され、調速リンク機構１３は昇降体停止用スイッチ１４のスイッチ部１５の接点を操作する。すなわち、かご３の昇降速度が定格速度を超えて第１過速度に達すると、アーム９Ａ４の下端に固定されたフライボール９Ａ５が遠心力によって外側に開き、滑り筒９Ａ６が矢印で示される様に上方に持ち上げられて調速リンク機構１３を引き上げ、これによって昇降体停止用スイッチ１４のスイッチ部１５の接点が操作される。

　そして、第１の実施例のエレベーター装置では、かご３の昇降による急激な気圧変化により、乗客の耳がつんとなる耳閉感を低減するため、上昇方向の定格速度ＵＳより、下降方向の定格速度ＤＳを低く設定してある。

　これに応じて、上昇時の調速機構９Ａは、かご３の昇降速度が定格速度を超えて第１過速度１．３ＵＳに達すると、かご３を駆動する巻上機６の電源及びこの巻上機６を制御する制御装置の電源をそれぞれ遮断する。

　一方、調速機構９Ａは、かごの下降時には、かご３の昇降速度が定格速度を超えて第１過速度１．３ＤＳに達すると、かご３を駆動する巻上機６の電源及びこの巻上機６を制御する制御装置の電源をそれぞれ遮断し、巻上機の停止動作を行う。また、何らかの原因によりかごの下降速度が第１過速度を超えて第２過速度１．４ＤＳに達すると、かご３に設けられた非常止め装置１０を動作させて、かご３を機械的に非常停止させる。

　このように上昇方向における所定の過速度を検出すると共に、下降方向における所定の過速度を検出するため、駆動鎖歯車９Ａ１と従動鎖歯車９ｈ１、９ｈ２の歯数とその比（減速比）を上昇方向及び下降方向であらかじめ設定されており、非常止め装置の的確な動作が行われる構成となっている。

　以下、本発明の実施例におけるエレベータ装置の調速機の動作とエレベーター装置の非常停止動作について説明する。

　第１の実施例のエレベーター装置にあっては、かご外またはかご内の操作盤の操作結果が伝達され、昇降体の上昇または下降を制御する制御装置（図示を略）による昇降体の運転方向の切替えに応じて、例えば、かご３が上昇運転に移る際、スライド手段９Ｃのモーター９Ｃ１が動作し、駆動アーム９Ｃ２を介して掛け代え用鎖歯車９Ｃ３が駆動され、伝動用鎖９ｆを図２、図３及び図４の従動鎖歯車９ｈ２方向にスライドさせ、伝動用鎖９ｆを、従動鎖歯車９ｈ２に掛け代え駆動傘歯車９Ａ１と噛み合う従動傘歯車９Ａ２を回転させる。この状態でかご３が上昇することにより、調速機ロープ９ａの動作により綱車９ｂが回転し、この回転が駆動鎖歯車９ｇ１、伝動用鎖９ｆ、従動鎖歯車９ｈ２、駆動傘歯車９Ａ１及び従動傘歯車９Ａ２を介して鉛直軸９Ａ３に伝達される。

　そして、鉛直軸９Ａ３の回転速度に応じてフライボール９Ａ５が公転し、遠心力によりばね９Ａ７の付勢力に抗して上昇する。このフライボール９Ａ５の上昇により滑り筒９Ａ６が矢印で示す様に上昇変位する。そして、鉛直軸９Ａ３の回転速度、すなわち、かご３の昇降速度が定格速度ＵＳを超えて第１過速度１．３ＵＳに達したときに、調速リンク機構１３を介して昇降体停止用スイッチ１４のスイッチ部１５操作され、昇降体停止スイッチが動作し、巻上機６の電源が遮断されて巻上機が停止し、かご３の上昇が停止される。

　また、かごの上昇または下降を制御する制御装置による昇降体の運転方向の切替えに応じて、かご３が下降運転に移る際、スライド手段９Ｃのモーター９Ｃ１が動作し、駆動アーム９Ｃ２を介して掛け代え用鎖歯車９Ｃ３が駆動され、伝動用鎖９ｆを図２、図３及び図４の従動鎖歯車９ｈ１方向にスライドさせ、伝動用鎖９ｆを、従動鎖歯車９ｈ１に掛け代え、駆動傘歯車９Ａ１と噛み合う従動傘歯車９Ａ２を回転させる。

　この状態でかご３が下降することにより、調速機ロープ９ａの動作により綱車９ｂが回転し、この回転が駆動鎖歯車９ｇ１、伝動用鎖９ｆ、従動鎖歯車９ｈ１、駆動傘歯車９Ａ１及び従動傘歯車９Ａ２を介して鉛直軸９Ａ３に伝達される。そして、鉛直軸９Ａ３の回転速度に応じてフライボール９Ａ５が公転し、遠心力によりばね９Ａ７の付勢力に抗して上昇する。このフライボール９Ａ５の上昇により矢印に示す様に滑り筒９Ａ６が上昇変位する。

　そして、鉛直軸９Ａ３の回転速度、すなわち、かご３の昇降速度が定格速度ＤＳを超えて第１過速度１．３ＤＳに達したときに昇降体停止用スイッチ１４が動作し、巻上機６の電源が遮断され、かご３が停止される。さらに、何らかの原因によりかご３が下降方向にさらに過速し、第１過速度１．３ＤＳを超えて第２過速度１．４ＤＳに達したときには、図示しないキャッチウェートで調速機ロープ９ａの把持動作が行われ、図１に示した連結部材１１を介して引き上げロッド１２の引き上げ動作が行われ、非常止め装置１０を作動させることにより、かご３の非常停止動作が行われる。

　第１の実施例によれば、上昇時と下降時とでかご３の定格速度が異なるエレベーター装置において、調速機９に係る省スペース化を図って、設備コストを低減することができる。また、調速機９における上昇及び下降の切替え動作は、スライド手段９Ｃにより掛け代え用鎖歯車９Ｃ３をスライドさせ、伝動用鎖９ｆを従動鎖歯車９ｈ２に掛け代え、駆動傘歯車９Ａ１と噛み合う従動傘歯車９Ａ２を回転させる、又は伝動用鎖９ｆを従動鎖歯車９ｈ１に掛け代え、駆動傘歯車９Ａ１と噛み合う従動傘歯車９Ａ２を回転させるという比較的単純なものであるため、装置の堅牢性及び信頼性を容易に高いものとすることができる。さらに、昇降体停止用スイッチ１４は上昇時と下降時とで同一のものを使用することができ、１個の昇降体停止用スイッチで良い。これは、上昇時と下降時とでかご３の定格速度が異なるエレベーター装置であっても、上昇時、下降時の昇降速度は従動鎖歯車９ｈ１、９ｈ２の掛け代え動作によって鉛直軸９Ａの回転速度に伝動され、昇降体停止用スイッチの操作が一義的に定まるからである。　
　<実施例２>
　次に、本発明に係るエレベーター装置の第２の実施例を図５、図６に基づき説明する。なお、前述した実施例と同等のものには同一符号が付してある。

　第２の実施例の調速機の調速機構１９Ａでは、図５及び図６に示すように、綱車１９ｂは、調速機筐体１９ｄに軸支された水平軸１９ｅに支持されている。調速部１９Ａは、綱車１９ｂの回転中心と同心に配置された駆動鎖歯車１９ｇ１、１９ｇ２とを備える。この駆動鎖歯車１９ｇ１、１９ｇ２の回転は伝動用鎖１９ｆにて従動鎖歯車１９ｈ１に伝動される。上昇方向における所定の過速度を検出すると共に、下降方向における所定の過速度を別個に検出するため、駆動鎖歯車１９ｇ１，１９ｇ２と従動鎖歯車１９ｈ１の歯数とその比（減速比）が駆動鎖歯車１９ｇ１，１９ｇ２において設定されている。

　本実施例の調速機構１９Ａは、調速機筐体１９ｄに軸支された水平軸１９ｅに固定され、綱車１９ｂの回転中心と同心に配置された駆動鎖歯車１９ｇ１、１９ｇ２とを有する。さらに、この駆動鎖歯車１９ｇ１、１９ｇ２から伝動用鎖１９ｆにて回転が伝動される従動鎖歯車１９ｈ１と、従動軸１９ｉ１と、この従動軸１９ｉ１に固定される駆動傘歯車１９Ａ１と、この駆動傘歯車１９Ａ１と噛み合う従動傘歯車１９Ａ２と、この従動傘歯車１９Ａ２に固定される鉛直軸１９Ａ３を備える。さらに、この鉛直軸１９Ａ３の上端部に枢持されたアーム１９Ａ４と、このアーム１９Ａ４の下端に固定されたフライボール１９Ａ５と、鉛直軸１９Ａ３に嵌合された滑り筒１９Ａ６と、アーム１９Ａ４と滑り筒１９Ａ６を連結するアーム連結部材１９Ａ８を備える。さらに、鉛直軸１９Ａ３に嵌合されて鉛直軸１９Ａ３の上端と滑り筒１９Ａ６との間に配置され、滑り筒１９Ａ６を下方へ付勢するばね９Ａ７とを備えている。

　本実施例の調速機構１９Ａにおいて、伝動用鎖９ｆを水平方向にスライドさせるスライド手段１９Ｃは、モーター１９Ｃ１と、このモーター１９Ｃ１と駆動鎖歯車１９ｇ１、１９ｇ２の下部に配置された掛け代え用鎖歯車１９Ｃ３との間に配置される駆動アーム１９Ｃ２とを備えている。

　また、掛け代え用鎖歯車１９Ｃ３の下側には、伝動用鎖９ｆを駆動鎖歯車１９ｇ１、１９ｇ２に掛け代え時の伝動用鎖９ｆのテンションを調節するためのテンション用ばね１９Ｃ５、テンション調節ローラ１９Ｃ４を設置してある。

　本実施例の調速機構１９Ａにおいて、滑り筒１９Ａ６には、図２の実施例と同様に、かご３の昇降速度が定格速度を超えて第１過速度に達したときに、滑り筒１９Ａ６の矢印で示す様な上昇によって動作する調速リンク機構（図５では省略。図２の１３）が結合され、この調速リンク機構によって操作される昇降体停止用スイッチ（図５では省略。図２の１４）が設けられている。

　第２の実施例にあっては、かご外またはかご内の操作盤の操作結果が伝達され、昇降体の上昇または下降を制御する制御装置（図示を略）により、かごが上昇運転に移る際、スライド手段１９Ｃのモーター１９Ｃ１が動作し、駆動アーム１９Ｃ２を介して掛け代え用鎖歯車１９Ｃ３が駆動され、伝動用鎖９ｆを図５及び図６の駆動鎖歯車１９ｇ１方向にスライドさせ、伝動用鎖９ｆ、駆動鎖歯車１９ｇ１に掛け代え、駆動傘歯車１９Ａ１と噛み合う従動傘歯車１９Ａ２を回転させる。この後の動作は前述したものと同等であるため説明を省略する。一方、昇降体の上昇または下降を制御する制御装置により、かご３が下降運転に移る際、スライド手段１９Ｃのモーター１９Ｃ１が動作し、駆動アーム１９Ｃ２を介して掛け代え用鎖歯車１９Ｃ３が駆動され、伝動用鎖９ｆを図５及び図６の駆動鎖歯車１９ｇ２方向にスライドさせ、伝動用鎖９ｆ、駆動鎖歯車１９ｇ２に掛け代え駆動傘歯車１９Ａ１と噛み合う従動傘歯車１９Ａ２を回転させる。この後の動作は前述したものと同等であるため説明を省略する。

　第２の実施例と前述した第１の実施例との違いは、第１の実施例は、伝動用鎖９ｆをスライド手段９Ｃにより運転方向に合わせて従動鎖歯車９ｈ１、９ｈ２に掛け代えようとしたが、第２の実施例は、伝動用鎖９ｆをスライド手段１９Ｃにより運転方向に合わせて駆動鎖歯車１９ｇ１、１９ｇ２に掛け代えようとしたものであり、この第２の実施例でも第１の実施例と同等の効果を得ることができる。

　以上の実施例においては、調速機の従動鎖歯車又は駆動鎖歯車の一方に対して、歯数を異ならしめて２種類を配置すると共に、伝動用鎖を前記従動鎖歯車又は駆動鎖歯車の前記２種類の歯車に掛け代えるモーター、掛け替え駆動アーム、および掛け替え用歯車を備えた掛け替え機構を有し、前記かごの上下の運転方向に応じて、前記従動鎖歯車又は駆動鎖歯車の前記２種類の一方の歯車に、前記伝動用鎖を従動鎖歯車に掛け代えさせ、上昇時と下降時とで異なる昇降体の速度検出を行う制御装置とを有するエレベーター装置とした。一方、駆動鎖歯車と従動鎖歯車の組み合わせの切り替えのためには、伝動用鎖を用いる他に、他の手段、例えば変速ギアのような複数の伝動歯車の組み合わせを用意し、切り替える方法ももちろん可能である。

  １　昇降路　
  ２　機械室　
  ３　昇降体（かご）　
  ４　つり合いおもり　
  ５　主ロープ　
  ６　巻上機　
  ７　かご用ガイドレール　
  ８　つり合いおもり用ガイドレール　
  ９　調速機　
  ９ａ　調速機ロープ　
  ９ｂ　綱車　
  ９ｃ　張り車　
  ９ｄ、１９ｄ　調速機筐体　
  ９ｅ、１９ｅ　水平軸　
  ９ｆ、１９ｆ　伝動用鎖　
  ９ｇ１、１９ｇ１、１９ｇ２　駆動鎖歯車　
  ９ｈ１、９ｈ２、１９ｈ１　従動鎖歯車　
  ９ｉ１、９ｉ２　従動軸　
  ９Ａ、１９Ａ　調速機構　
  ９Ａ１、１９Ａ１　駆動傘歯車　
  ９Ａ２、１９Ａ２　従動傘歯車　
  ９Ａ３、１９Ａ３　鉛直軸　
  ９Ａ４、１９Ａ４　アーム　
  ９Ａ５、１９Ａ５　フライボール　
  ９Ａ６　滑り筒　
  ９Ａ７、１９Ａ７　ばね　
９Ａ８、１９Ａ８　アーム連結部材
  ９Ｃ、１９Ｃ　スライド手段　
  ９Ｃ１、１９Ｃ１　モーター　
  ９Ｃ２、１９Ｃ２　駆動アーム　
  ９Ｃ３、１９Ｃ３　掛け代え用鎖歯車　
  ９Ｃ４、１９Ｃ４　テンション調節ローラ　
  ９Ｃ５、１９Ｃ５　テンション用ばね　
  １０　非常止め装置　
  １１　連結部材　
  １２　引き上げロッド　
１３　調速リンク機構　
１４　昇降体停止用スイッチ
１５　スイッチ部

Claims

　上昇時と下降時とで異なる昇降体の定格速度を有するエレベーター装置であって、昇降路に配置され、昇降体に連結された無端状をなす調速機ロープと、調速機筐体に軸支される水平軸に支持され、前記調速機ロープの上端が巻き掛けられた綱車と、前記綱車の回転中心と同心に配置された駆動鎖歯車と、前記駆動鎖歯車から伝動用鎖にて伝動される従動鎖歯車と、調速機筐体に軸支され、前記従動歯車の回転中心をなす従動軸と、この従動軸に固定される駆動傘歯車と、駆動傘歯車と噛み合う従動傘歯車と、当該従動傘歯車に固定される鉛直軸と、当該鉛直軸の上端部に枢持されたアームと、このアームの下端に固定されたフライボールと、前記鉛直軸に嵌合された滑り筒と、前記鉛直軸に嵌合されて前記鉛直軸の上端と前記滑り筒との間に配置され、前記滑り筒を下方へ付勢するばねと、前記アームと前記すべり筒を連結するアーム連結部材とを有するフライボール式調速部を備える調速機とを有し、前記調速機の前記従動鎖歯車又は駆動鎖歯車の一方に対して、歯数を異ならしめて２種類を配置すると共に、前記伝動用鎖を前記従動鎖歯車又は駆動鎖歯車の前記２種類の歯車に掛け代える掛け替え機構を有し、前記昇降体の上下の運転方向に応じて、前記従動鎖歯車又は駆動鎖歯車の前記２種類の一方の歯車に、前記伝動用鎖を従動鎖歯車に掛け代えることを特徴としたエレベーター装置。
　請求項１において、前記昇降体の運転方向に応じて前記伝動用鎖をスライドさせるスライド手段が設けられ、当該スライド手段は、モーターと、このモーターと掛け代え用鎖歯車との間に配置される駆動アームを有して成ることを特徴とするエレベーター装置。
　上昇時と下降時とで異なる昇降体の定格速度を有するエレベーター装置であって、昇降路に配置され、巻上機によって駆動される主ロープに連結されてガイドレールに沿って昇降する昇降体と、昇降体に連結されるとともに無端状をなす調速機ロープと、前記調速機ロープの上端が巻き掛けられた綱車と、前記綱車の回転が伝動され、前記昇降体の昇降速度を検出、監視して、前記昇降体が規定の過速状態になったときに前記昇降体を停止させる調速機とを有し、当該調速機は、前記綱車の回転が伝動される調速機構とを有し、当該調速機構には、前記昇降体が上昇のときの前記綱車の回転が伝動され、上昇時の所定の速度を検出する上昇時の調速機構と、前記昇降体が下降のときの前記綱車の回転が伝動され、下降時の所定の速度を検出する下降時の調速機構とが組み込まれてなり、前記上昇時の調速機構と下降時の調速機構との一方を動作させる制御を行う制御装置とを有することを特徴とするエレベーター装置。
請求項３において、前記調速機構において、前記綱車は、調速機筐体に軸支される水平軸に支持され、前記綱車の回転中心と同心に配置された駆動歯車と、前記駆動鎖歯車の回転が伝動される従動歯車と、調速機筐体に軸支され、前記従動歯車の回転中心をなす従動軸と、この従動軸に固定される駆動傘歯車と、駆動傘歯車と噛み合う従動傘歯車と、当該従動傘歯車に固定される鉛直軸とを有し、当該鉛直軸の回転速度によって前記綱車の回転速度を検出して、前記昇降体の昇降速度を監視する調速機構であり、前記駆動歯車又は従動歯車の一方に対して、歯数を異ならしめて２種類を配置すると共に、前記駆動歯車の回転速度を従動歯車に伝動する伝動機構であって、前記駆動歯車又は従動歯車の前記２種類の歯車の一方を介して当該伝動を行う伝動機構を有し、前記昇降体の上下の運転方向に応じて、前記駆動鎖歯車又は従動鎖歯車の前記２種類の一方の歯車を介して、前記伝動機構が前記綱車の回転速度を前記鉛直軸に伝動して、前記上昇時の調速機構と下降時の調速機構を構成したことを特徴とするエレベーター装置。
請求項４において、前記伝動機構は伝動用鎖を備え、当該伝動用鎖を前記駆動鎖歯車又は従動鎖歯車の前記２種類の一方の歯車に掛け替えることにより、前記昇降体の上下の運転方向に応じて、前記駆動鎖歯車又は従動鎖歯車の前記２種類の一方の歯車を介して、前記伝動用鎖が前記綱車の回転速度を前記鉛直軸に伝動して、上昇時の調速機構と下降時の調速機構を構成することを特徴とするエレベーター装置。
請求項４において、前記伝動機構は伝動用歯車を備え、当該伝動用歯車を前記駆動鎖歯車又は従動鎖歯車の前記２種類の一方の歯車に掛け替えることにより、前記昇降体の上下の運転方向に応じて、前記駆動鎖歯車又は従動鎖歯車の前記２種類の一方の歯車を介して、前記伝動用歯車が前記綱車の回転速度を前記鉛直軸に伝動して、上昇時の調速機構と下降時の調速機構を構成することを特徴とするエレベーター装置。
　請求項５または６において、上昇時の調速機構と下降時の調速機構の両方によって操作される昇降体停止用のスイッチを有することを特徴とするエレベーター装置。
　請求項５または６において、前記昇降体の運転方向に応じての前記伝動機構の掛け替えは、モーターと、掛け替え用歯車と、前記モーターと前記掛け代え用鎖歯車との間に配置される駆動アームを有して成る掛け替え機構により操作されることを特徴とするエレベーター装置。
請求項５または６において、前記調速機は、前記鉛直軸の上端部に枢持されたアームと、このアームの下端に固定されたフライボールと、前記鉛直軸に嵌合された滑り筒と、前記鉛直軸に嵌合されて前記鉛直軸の上端と前記滑り筒との間に配置され、前記滑り筒を下方へ付勢するばねと、前記アームと前記すべり筒を連結するアーム連結部材とを有するフライボール式の調速部を備え、当該調速部が前記鉛直軸の回転速度を検出し、前記昇降体の上昇、下降時における昇降体停止用のスイッチが操作されることを特徴とするエレベーター装置。