WO2013147077A1 - 蓄電デバイス用バインダー - Google Patents
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Abstract
Description
近年では、その耐電圧性、耐酸化性、耐薬品性を活かして、高出力、高容量、及び優れたサイクル特性が要求される、電子機器用または電気自動車用の、キャパシタ、一次電池または二次電池等の蓄電デバイスにおける、バインダーとして用いられていることが知られている。
例えば特許文献1の実施例では、テトラフルオロエチレンに基づく構成単位/プロピレンに基づく構成単位のモル比率が56/44である含フッ素共重合体をバインダーとして用いて、二次電池を作製した例が記載されている。
[1]テトラフルオロエチレンに基づく構成単位(a)とプロピレンに基づく構成単位(b)のモル比率(a)/(b)が40/60~50/50であり、全構成単位のうち、前記構成単位(a)と前記構成単位(b)の合計が90モル%以上である含フッ素共重合体からなることを特徴とする蓄電デバイス用バインダー。
[3]上記[2]または[3]に記載の蓄電デバイス用バインダーと、媒体を含有する、蓄電デバイス用バインダー組成物。
[4]前記媒体が水性媒体であって、前記含フッ素共重合体からなる粒子が水性媒体中に分散している、上記[3]に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[5]前記含フッ素共重合体からなる粒子の平均粒子径が10~200nmである上記[3]または[4]に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[6]前記含フッ素共重合体の含有量が5~60質量%である上記[3]~[5]のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[7]ラテックスの状態にある上記[3]~[6]のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[8]上記[3]~[7]のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物と電池活物質とを含有する、蓄電デバイス用電極合剤。
[10]上記[9]に記載された蓄電デバイス用電極及び電解液を備える二次電池。
[11]前記二次電池が捲回型である、上記[10]に記載の二次電池。
本発明によれば、電極活物質間の密着性及び電極活物質と集電体との密着性が良好であるとともに、柔軟性が良好であり、二次電池における良好な充放電特性を実現できる蓄電デバイス用電極、これを備えた二次電池が得られる。
本発明の蓄電デバイス用バインダーはテトラフルオロエチレン(以下、TFEという)に基づく構成単位(a)、およびプロピレン(以下、Pという)に基づく構成単位(b)を特定の割合で有する含フッ素共重合体(f)からなることを特徴とする。含フッ素共重合体(f)は、TFEとPのほかに本発明の効果を損なわない範囲で、その他の単量体に基づく構成単位を有してもよい。
含フッ素共重合体(f)の全構成単位のうち、前記構成単位(a)と(b)の合計の割合は90モル%以上であり、蓄電デバイス用バインダーとして用いた場合に、良好な密着性(結着性)と、優れた柔軟性が同時に得られやすいことから、95モル%以上が好ましい。
ムーニー粘度は、JIS K6300に準じ、直径38.1mm、厚さ5.54mmのL型ローターを用い、100℃で、予熱時間を1分間、ローター回転時間を10分間に設定して測定され、主にゴムなどの高分子材料の分子量の目安である。また、値が大きいほど、間接的に高分子量であることを示す。ムーニー粘度が5~200の範囲にあると、蓄電デバイス用バインダーとして用いた場合に、良好な密着性(結着性)と、優れた柔軟性が同時に得られやすい。
含フッ素共重合体(f)は公知の重合方法により製造することができ、中でもラジカル重合法によって製造することが好ましい。ラジカル重合法は、特に限定されるものではなく、種々のラジカル重合法を用いることができる。例えば、有機または無機のラジカル重合開始剤を用いて反応を開始させる方法でもよく、ラジカル重合開始剤を用いずに、光、熱、電離放射線などによって反応を開始させる方法でもよい。
重合の形態としては、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、または溶液重合等の従来公知の重合方法により製造することができる。
具体的には、懸濁重合または乳化重合を用いると、含フッ素共重合体(f)からなる粒子が水性媒体中に分散している含フッ素共重合体ラテックスを得ることができる。該含フッ素共重合体ラテックスを蓄電デバイス用バインダー組成物の一部または全部として使用することができる。
溶液重合を用いると、含フッ素共重合体(f)が溶媒中に溶解している溶液を得ることができる。該溶液を蓄電デバイス用バインダー組成物の一部または全部として使用することができる。溶液重合における溶媒としては、例えば、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒が挙げられる。
含フッ素共重合体(f)の製造方法としては、分子量および共重合組成の調整がしやすく、生産性に優れる点から乳化重合を用いることが特に好ましい。
含フッ素共重合体(f)を乳化重合によって製造する実施形態を説明する。
乳化重合では、水性媒体、乳化剤及びラジカル重合開始剤の存在下で、TFEとPを含む単量体混合物を乳化重合して含フッ素共重合体(f)を生成させる乳化重合工程を経て含フッ素共重合体ラテックスを得る。必要に応じて、単量体混合物がTFEとPのほかにその他の単量体を含んでいてもよく、乳化重合工程においてpH調整剤を添加してもよい。
水性媒体とは、水単独、または水と水溶性有機溶剤との混合物である。水溶性有機溶剤としては、水と任意の割合で溶解できる公知の化合物を適宜用いることができる。水溶性有機溶剤としては、アルコール類が好ましく、tert-ブタノールが特に好ましい。
水性媒体中の水溶性有機溶剤の含有量は少ない方が好ましい。具体的には、水の100質量部に対して、水溶性有機溶剤は1質量部未満であり、0.5質量部以下が好ましく、0.1質量部以下がより好ましい。
特に、水性媒体として水溶性有機溶剤を含まない水を単独で用いることが好ましい。
水溶性有機溶剤の含有量が上記の範囲であると、得られる含フッ素共重合体ラテックスを蓄電デバイス用バインダー組成物として用いた場合、製造工程によって作業環境対策等の取扱いが容易であることから、好ましい。
乳化剤は、乳化重合法において使用される公知の乳化剤を適宜用いることができる。ラテックスの機械的及び化学的安定性に優れる点から、イオン性乳化剤が好ましく、アニオン性乳化剤がより好ましい。
アニオン性乳化剤としては、乳化重合法において公知のものが使用できる。具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等の炭化水素系乳化剤;ペルフルオロオクタン酸アンモニウム、ペルフルオロヘキサン酸アンモニウム等の含フッ素アルキルカルボン酸塩;下記式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)と記す。)等が挙げられる。
F(CF2)pO(CF(X)CF2O)qCF(X)COOA ・・・(I)。
式(I)中、Xはフッ素原子または炭素原子数1~3のペルフルオロアルキル基を表し、Aは、水素原子、アルカリ金属原子、または-NH4を表し、pは1~10の整数を表し、qは0または1~3の整数を表す。
F(CF2)2OCF2CF2OCF2COONH4、
F(CF2)2O(CF2CF2O)2CF2COONH4、
F(CF2)3O(CF(CF3)CF2O)2CF(CF3)COONH4、
F(CF2)3OCF2CF2OCF2COONH4、
F(CF2)3O(CF2CF2O)2CF2COONH4、
F(CF2)4OCF2CF2OCF2COONH4、
F(CF2)4O(CF2CF2O)2CF2COONH4、
F(CF2)2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4、
F(CF2)2OCF2CF2OCF2COONa、
F(CF2)2O(CF2CF2O)2CF2COONa、
F(CF2)3OCF2CF2OCF2COONa、
F(CF2)3O(CF2CF2O)2CF2COONa、
F(CF2)4OCF2CF2OCF2COONa、
F(CF2)4O(CF2CF2O)2CF2COONa等。
アニオン性乳化剤の使用量は、乳化重合工程で生成される含フッ素共重合体(f)の100質量部に対して、1.5~5.0質量部が好ましく、1.5~3.8質量部がより好ましく、1.7~3.2質量部が特に好ましい。
乳化重合で得られる含フッ素共重合体ラテックスにおける乳化剤の含有量がこの範囲であると、ラテックスの安定性に優れ、該ラテックスを蓄電デバイス用バインダー組成物として用いた場合に優れた充放電特性が得られやすい。該乳化剤の含有量が多すぎると該充放電特性が劣化しやすくなる。
pH調整剤は無機塩が好ましく、乳化重合におけるpH調整剤として公知の無機塩を用いることができる。pH調整剤としては、具体的に、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのリン酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩;などが挙げられる。リン酸塩のより好ましい具体例としては、リン酸水素二ナトリウム2水和物、リン酸水素二ナトリウム12水和物等が挙げられる。また、所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基類;硫酸、塩酸、硝酸などの酸類などを併用してもよい。
後述する乳化重合工程における水性媒体中のpHは、4~12が好ましく、6~11がより好ましい。
一方、含フッ素共重合体ラテックス中の金属分の含有量を低減させる点では、pH調整剤の使用量はできるだけ少ない方が好ましい。
pH調整剤を使用する場合の使用量は、乳化重合工程で生成される含フッ素共重合体(f)の100質量部に対して、0.001~15質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
乳化重合で使用されるラジカル重合開始剤は、水溶性重合開始剤が好ましい。水溶性重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム塩などの過硫酸類、ジコハク酸過酸化物、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩などの有機系開始剤等が挙げられる。これらのうち、過硫酸アンモニウム塩などの過硫酸類が好ましい。
ラジカル重合反応を開始させるための機構は、(i)熱分解型ラジカル重合開始剤の存在下で熱を加えてラジカル分解を生じさせる熱分解型重合開始剤系でもよく、(ii)ラジカル重合開始剤と酸化還元系触媒(いわゆるレドックス触媒)を併用するレドックス重合開始剤系でもよい。
いずれの系でも、水溶性重合開始剤の使用量は、乳化重合工程で生成される含フッ素共重合体(f)の100質量部に対して、0.0001~3質量部が好ましく0.001~1質量部がより好ましい。
ラジカル開始剤としては、含フッ素共重合体ラテックス中の金属分の含有量が少ない熱分解型ラジカル重合開始剤がより好ましい。
乳化重合工程は、公知の乳化重合法により行うことができる。例えば以下の手順で行うことができる。
まず耐圧反応器を脱気した後、該反応器内に水性媒体、乳化剤、ラジカル重合開始剤、必要に応じて、pH調整剤、及びレドックス重合開始剤系ではレドックス触媒を仕込む。次いで、所定の重合温度に昇温させた後、TFE及びPを含む単量体混合物を、所定の重合圧力になるように圧入する。また必要に応じて触媒(レドックス重合開始剤系ではロンガリット触媒等)を供給する。重合開始剤が活性化されて重合反応が開始されると、反応器内の圧力が低下し始める。すなわち重合反応の開始(反応時間の始点)は反応器内の圧力低下によって確認できる。
反応器内の圧力低下を確認してから、TFE及びPを含む単量体混合物を追加供給し、所定の重合温度及び所定の重合圧力を保ちながら、重合反応を行って含フッ素共重合体(f)を生成させる。
単量体混合物を供給しはじめてから、反応器内の圧力低下を確認した後、単量体混合物を追加供給する直前までの期間を、本明細書では初期活性化期間といい、単量体混合物を追加供給して含フッ素共重合体(f)を生成させる期間を重合反応期間という。
重合反応期間において、反応器内に追加供給される単量体混合物の組成は、得ようとする含フッ素共重合体(f)における構成単位の比率(目標組成)と同じとする。
重合反応期間で追加供給される単量体混合物の合計量が所定の値に達したら、反応器内を冷却して重合反応を停止させて(反応時間の終点)、含フッ素共重合体ラテックスを得る。
本発明において、重合反応期間で追加供給される単量体の合計量と、乳化重合工程で生成される含フッ素共重合体(f)の量とは等しいとみなす。
初期活性化期間における重合温度は、重合反応期間における重合温度と同じであることが好ましい。
初期活性化期間における重合圧力は、重合反応期間における重合圧力と同じであることが好ましい。
重合反応期間における重合圧力は1.0~10MPaGが好ましく、1.5~5.0MPaGがより好ましく、1.7~3.0MPaGが特に好ましい。重合圧力が上記の範囲であると重合速度が適切で制御しやすく、また生産性に優れる。
重合反応期間における重合圧力は1.0~10MPaGが好ましく、1.5~5.0MPaGがより好ましく、1.7~3.0MPaGが特に好ましい。重合圧力が上記の範囲であると重合速度が適切で制御しやすく、また生産性に優れる。
該ラテックスに含まれる、含フッ素共重合体(f)からなる粒子の平均粒子径は10~200nmが好ましく、20~150nmがより好ましく、20~130nmがさらに好ましく、30~100nmが特に好ましい。該平均粒子径が10~200nmの範囲であると、電極活物質の良好な結着力が得られやすい。該共重合体粒子の平均粒子径は、乳化剤の種類、添加量等、公知の方法にて調節することができる。
なお、本明細書における含フッ素共重合体(f)の粒子の平均粒子径は、大塚電子社製レーザーゼータ電位計ELS-8000等を使用して、動的光散乱法により測定した値である。
この含フッ素共重合体ラテックスを、蓄電デバイス用バインダー組成物として用いることにより、後述の実施例に示されるように、より良好な密着性と柔軟性及び良好な充放電特性が得られる。
本発明の蓄電デバイス用バインダー組成物(以下、単にバインダー組成物ということがある。)は含フッ素共重合体(f)と媒体を含有する。バインダー組成物としては、さらに含フッ素共重合体(f)以外の他の含フッ素共重合体を含んでいてもよい。
バインダー組成物が、含フッ素共重合体(f)以外の他の含フッ素共重合体を含む場合、該他の含フッ素共重合体は、TFEに基づく構成単位(a)を含んでPに基づく構成単位(b)を含まない含フッ素共重合体、該構成単位(b)を含んで構成単位(a)を含まない含フッ素共重合体、または該構成単位(a)と構成単位(b)の両方を含まない含フッ素共重合体である。好ましくは構成単位(a)を含んで構成単位(b)を含まない含フッ素共重合体である。
媒体は、前記水性媒体、または前記溶液重合における溶媒として挙げた有機溶媒が好ましい。
本発明のバインダー組成物は、下記1)2)の点で、含フッ素共重合体からなる粒子が前記水性媒体中に分散しているラテックスの状態であることが好ましい。1)製造工程おいて有機溶媒による作業環境対策等の取扱いの問題が生じる可能性が低減できる。2)含フッ素共重合体からなる粒子が比較的安定して分散しており取扱い易い。
バインダー組成物における、含フッ素共重合体(f)以外の他の含フッ素共重合体の含有量は、バインダー組成全体のうちの0~30質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
また、本発明のバインダー組成物としては、重合によって得られた含フッ素共重合体ラテックスを凝集、精製して固体の状態とし、該固体を再度、有機溶媒に溶解または水性分散媒に分散させた組成物であってもよい。
本発明のバインダー組成物において、含フッ素共重合体および媒体以外の、他の成分等の成分の含有量は10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
本発明の蓄電デバイス用電極合剤(本明細書において、単に「電極合剤」ということもある。)は、本発明のバインダー組成物を含有するほか、電極活物質を含有する。必要に応じて導電材を含有してもよく、これら以外のその他の成分を含有してもよい。
本発明で用いられる電極活物質は特に限定されず、公知のものを適宜使用できる。
正極活物質としてはMnO2、V2O5、V6O13等の金属酸化物;TiS2、MoS2、FeS等の金属硫化物;LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4等の、Co、Ni、Mn、Fe、Ti等の遷移金属を含むリチウム複合金属酸化物等;これらの化合物中の遷移金属の一部を他の金属で置換した化合物;などが例示される。さらに、ポリアセチレン、ポリ‐p‐フェニレンなどの導電性高分子を用いることもできる。また、これらの表面の一部または全面に、炭素材料や無機化合物を被覆させたものも用いることができる。
負極活物質としては例えばコークス、グラファイト、メソフェーズピッチ小球体、フェノール樹脂、ポリパラフェニレン等の高分子化合物の炭化物;気相生成カーボンファイバー、炭素繊維等の炭素質材料;が挙げられる。また、リチウムと合金化可能なSi、Sn、Sb、Al、ZnおよびWなどの金属も挙げられる。電極活物質は、機械的改質法により表面に導電材を付着させたものも使用できる。
リチウムイオン二次電池用の電極合剤の場合、用いる電極活物質は、電解質中で電位をかけることにより可逆的にリチウムイオンを挿入放出できるものであればよく、無機化合物でも有機化合物でも用いることができる。
導電材としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、及びカーボンナノチューブ等の導電性カーボンが挙げられる。
電極合剤が、導電材を含有すると、少量の導電材の添加で電気抵抗の低減効果が大きくなり好ましい。
本発明の電極合剤中の電極活物質の割合は、20~90質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましく、40~70質量%が特に好ましい。
電極合剤中の含フッ素共重合体(f)の割合は、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~8質量%が特に好ましい。電極合剤中の他の含フッ素共重合体の割合は、0~30質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0質量%が特に好ましい。
また、電極合剤が導電材を含有する場合には、電極合剤中の導電材の割合は、20質量%以下が好ましく、1~10質量%がより好ましく、3~8質量%が特に好ましい。
電極合剤中の固形分濃度は、30~95質量%が好ましく、40~85質量%がより好ましく、45~80質量%が特に好ましい。
本発明の蓄電デバイス用電極は、集電体と、該集電体上に設けられた電極活物質層を有する。該電極活物質層は、本発明の蓄電デバイス用バインダーおよび電池活物質を含有する。
集電体としては、導電性材料からなるものであれば特に限定されないが、一般的には、アルミニウム、ニッケル、ステンレススチール、銅等の金属箔、金属網状物、金属多孔体等が挙げられる。正極集電体としては、アルミニウムが好適に、負極集電体としては銅が好適に用いられる。集電体の厚さは1~100μmであることが好ましい。
電極合剤を集電体に塗布する方法としては、種々の塗布方法が挙げられる。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、及びハケ塗り法等の方法が挙げられる。塗布温度は、特に制限ないが、通常は常温付近の温度が好ましい。乾燥は、種々の乾燥法を用いて行うことができ、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線等の照射による乾燥法が挙げられる。乾燥温度は、特に制限ないが、加熱式真空乾燥機等では通常室温~200℃が好ましい。プレス方法としては金型プレスやロールプレス等を用いて行うことができる。
蓄電デバイスとしてのリチウムイオン二次電池は、本発明の蓄電デバイス用電極を正極及び負極の少なくとも一方の電極として備えるとともに電解液を備える。さらにセパレーターを備えることが好ましい。
セパレーターとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や芳香族ポリアミド樹脂などを含んでなる微多孔膜、または不織布など公知のものを用いることができる。無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コートがなされていてもよい。特にポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの微多孔性ポリオレフイン系樹脂の単層やポリエチレン樹脂の両側にポリプロピレン樹脂を積層したものが好ましい。またセパレーターの厚みは1~50μmが好ましく、1~20μmが特に好ましい。
特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。
電解質としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF5、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi等のリチウム塩が挙げられる。
例えば、本発明の蓄電デバイスとして、捲回された電極を備える蓄電デバイスを適用することが好ましく、捲回型の二次電池等に適用することが好ましい。
図1、2は捲回型の二次電池の例を示したもので、図1は正極11、セパレーター12、および負極13の構成を示す側面図であり、図2は全体構成の説明図でる。
本例の二次電池は、図1に示すように、正極11、セパレーター12、および負極13を順に積層して、渦巻状に捲回した電極群を備える。図2に示す捲回型の二次電池は、図1の電極群を、ステンレススチール製、ニッケルメッキを施した鉄製、またはアルミニウム製等の金属からなる電池ケース21に収納した後、電解液を電池ケース21内に注液した後、電池ケース21の開口部を封口板22で密封して構成されている。
(1)含フッ素共重合体の共重合組成
各例で製造した含フッ素共重合体ラテックスを、塩化カルシウムの1.5質量%水溶液に添加して、塩析させて含フッ素共重合体を凝集析出させ、イオン交換水により洗浄後、100℃のオーブンで15時間乾燥させ含フッ素共重合体を得た。
得られた含フッ素共重合体の共重合組成(TFEに基づく構成単位(a)とPに基づく構成単位(b)のモル比率(a)/(b))をフッ素含有量分析により算出した。
各例で、製造した電極(正極)を幅2cm×長さ10cmの短冊状に切り、電極合剤の塗膜面を上にして固定した。電極合剤の塗膜面にセロハンテープ(商品名、ニチバン社製)を貼り付け、該セロハンテープを10mm/minの速度で、塗膜面に対して90℃方向に剥離したときの強度(N)を5回測定し、その平均値を剥離強度とした。この値が大きいほどバインダーによる密着性(結着性)に優れていることを示す。すなわち、バインダーにより結着されている電極活物質間の密着性及び電極活物質と集電体との密着性に優れていることを示す。
(3)柔軟性
各例で製造した電極(正極)を幅2cm×長さ10cmの短冊状に切り、電極面が外側となるように、直径1mmの金属棒に巻きつけるようにして折り曲げる試験を行い、試験後の電極面を目視にて観察し、電極合剤の塗膜の割れの有無を確認した。合計100枚の電極について試験を行い、電極合剤の塗膜が割れた数を記録した。例えば100枚のうち、割れた数が1枚である場合は1/100と表記する。電極合剤の塗膜が割れない電極は柔軟性に優れていることを示す。
二次電池の充放電特性の評価は、以下に示す方法により行った。
各例で製造した正極、これと同面積のリチウム金属箔、及びポリエチレン製のセパレーターを、リチウム金属箔、セパレーター、正極の順に2016型コインセル内に積層して電池要素を作製し、LiPF6を1mol/Lの濃度で含む、エチルメチルカーボネート-エチレンカーボネート(体積比1:1)の非水電解液を添加し、これを密封することによりコイン型非水電解液二次電池を製造した。
25℃において、0.2Cに相当する定電流で4.3V(電圧はリチウムに対する電圧を表す)まで充電し、さらに充電上限電圧において電流値が0.02Cになるまで充電を行い、しかる後に0.2Cに相当する定電流で3Vまで放電するサイクルを行った。1サイクル目放電時の放電容量に対する、100サイクル目の放電容量の容量維持率(単位:%)を求め、電池の充放電測定の指標とした。容量維持率の値が高いほど充放電特性に優れる。
なお、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.5Cとはその1/2の電流値を表す。
本例ではレドックス重合開始剤を用いた。
すなわち、撹拌用アンカー翼を備えた内容積3200mLのステンレス鋼製の耐圧反応器の内部を脱気した後、該反応器に、1700gのイオン交換水、乳化剤として13.3g(生成される含フッ素共重合体Aの100質量部に対して2.7質量部)のラウリル硫酸ナトリウム、pH調整剤としてリン酸水素二ナトリウム12水和物の60g及び水酸化ナトリウムの0.9g、開始剤として過硫酸アンモニウムの16.8g(1時間半減期温度82℃)を加えた。さらに200gのイオン交換水に、レドックス触媒として0.4gのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(以下、EDTAと記す。)及び0.3gの硫酸第一鉄7水和物を溶解させた水溶液を反応器に加えた。このときの反応器内の水性媒体のpHは9.2であった。
ついで、40℃で、TFE/P=60/40(モル比)の単量体混合ガスを、反応器の内圧が2.50MPaGになるように圧入した。アンカー翼を300rpmで回転させ、水酸化ナトリウムでpHを10.0に調整したヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(以下、ロンガリットと記す。)を反応器に加え、重合反応を開始させた。
重合温度を40℃に維持して重合を進行させ、重合の進行に伴い、反応器内の圧力が低下するので、反応器の内圧が2.49MPaGに降下した時点で、TFE/P=50/50(モル比)の単量体混合ガスを自圧で圧入し、反応器の内圧を2.51MPaGまで昇圧させた。この操作を繰り返し、反応器の内圧を2.49~2.51MPaGに保持し、重合反応を続けた。TFE/Pの単量体混合ガスの圧入量の総量が500gとなった時点、反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止し、含フッ素共重合体Aを含むラテックスを得た。ラテックス中における含フッ素共重合体Aの含有量は22質量%である。
含フッ素共重合体Aの共重合組成は、(a)/(b)=50/50(モル比)であった。
含フッ素共重合体Aのムーニー粘度、平均粒子径を表1に示す(以下、同様。)
すなわち、正極活物質としてLiCoO2(AGCセイミケミカル社製、商品名「セリオンC」、タップ密度2.4g/cm3、平均粒子径:12μm)の100質量部、導電材としてアセチレンブラックの7質量部を混合し、粘度調整剤とし濃度1質量%のカルボキシメチルセルロース水溶液を40質量部加えて混練したのち、含フッ素共重合体Aラテックスを5質量部加えて電極合剤1を得た。
得られた電極合剤1を厚さ15μmのアルミニウム箔(集電体)に、ドクターブレードで乾燥後の厚さが120μmとなるように塗布し、120℃の真空乾燥機に入れて乾燥したのち、ロールプレスにて厚みが100μmとなるように圧延し、1.5cm×2.0cmに切り出し、正極1とした。
上記の方法で、密着性、柔軟性、充放電特性を評価した。評価結果を表1に示す(以下、同様)。
実施例1において、反応器に最初に圧入するモノマー混合ガスの割合をTFE/P=60/40(モル比)から、TFE/P=30/70(モル比)に変更し、重合の進行時に圧入するモノマー混合ガスの割合をTFE/P=50/50(モル比)から、TFE/P=45/55(モル比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、含フッ素共重合体Bのラテックスを得た。ラテックス中における含フッ素共重合体Bの含有量は22質量%である。含フッ素共重合体Bの共重合組成は、(a)/(b)=45/55(モル比)であった。生成した含フッ素共重合体Bの100質量部に対する乳化剤の使用量は2.7質量部である。また、実施例1と同様にして電極合剤2及び正極2を調整し、同様に評価した。
実施例1において、反応器に最初に圧入するモノマー混合ガスの割合をTFE/P=60/40(モル比)から、TFE/P=16/84(モル比)に変更し、重合の進行時に圧入するモノマー混合ガスの割合をTFE/P=50/50(モル比)から、TFE/P=40/60(モル比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、含フッ素共重合体Cのラテックスを得た。ラテックス中における含フッ素共重合体Cの含有量は22質量%である。含フッ素共重合体Cの共重合組成は、(a)/(b)=40/60(モル比)であった。生成した含フッ素共重合体Cの100質量部に対する乳化剤の使用量は2.7質量部である。また、実施例1と同様にして電極合剤3及び正極3を調整し、同様に評価した。
実施例1において、反応器に最初に圧入するモノマー混合ガスの割合をTFE/P=60/40(モル比)から、TFE/P=14/86(モル比)に変更し、重合の進行時に圧入するモノマー混合ガスの割合をTFE/P=50/50(モル比)から、TFE/P=38/62(モル比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、含フッ素共重合体Dのラテックスを得た。ラテックス中における含フッ素共重合体Dの含有量は22質量%である。含フッ素共重合体Dの共重合組成は、(a)/(b)=38/62(モル比)であった。生成した含フッ素共重合体Dの100質量部に対する乳化剤の使用量は2.7質量部である。また、実施例1と同様にして電極合剤4及び正極4を調製し、同様に評価した。
実施例1において、反応器に最初に圧入するモノマー混合ガスの割合をTFE/P=60/40(モル比)から、TFE/P=88/12(モル比)に変更し、重合の進行時に圧入するモノマー混合ガスの割合をTFE/P=50/50(モル比)から、TFE/P=56/44(モル比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、含フッ素共重合体Eのラテックスを得た。ラテックス中における含フッ素共重合体Eの含有量は22質量%である。含フッ素共重合体Eの共重合組成は、(a)/(b)=56/44(モル比)であった。生成した含フッ素共重合体Eの100質量部に対する乳化剤の使用量は2.7質量部である。また、実施例1と同様にして電極合剤5及び正極5を調製し、同様に評価した。
なお、2012年3月28日に出願された日本特許出願2012-072861号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
12 セパレーター
13 負極
21 電池ケース
22 封口板
Claims (11)
- テトラフルオロエチレンに基づく構成単位(a)とプロピレンに基づく構成単位(b)のモル比率(a)/(b)が40/60~50/50であり、
全構成単位のうち、前記構成単位(a)と前記構成単位(b)の合計が90モル%以上である含フッ素共重合体からなることを特徴とする蓄電デバイス用バインダー。 - 前記含フッ素共重合体のムーニー粘度が5~200である請求項1に記載の蓄電デバイス用バインダー。
- 請求項1または2に記載の蓄電デバイス用バインダーと、媒体を含有する、蓄電デバイス用バインダー組成物。
- 前記媒体が水性媒体であって、前記含フッ素共重合体からなる粒子が水性媒体中に分散している、請求項3に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
- 前記含フッ素共重合体からなる粒子の平均粒子径が10~200nmである請求項3または4に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
- 前記含フッ素共重合体の含有量が5~60質量%である請求項3~5のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
- ラテックスの状態にある請求項3~6のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
- 請求項3~7のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物と電池活物質を含有する、蓄電デバイス用電極合剤。
- 集電体と、該集電体上に設けられた電極活物質層を有し、前記電極活物質層が、請求項1に記載の蓄電デバイス用バインダーおよび電池活物質を含有する、蓄電デバイス用電極。
- 請求項9に記載された蓄電デバイス用電極及び電解液を備える二次電池。
- 前記二次電池が捲回型である、請求項10に記載の二次電池。
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