WO2013141369A1 - 電気音響変換装置の振動板、およびその製造方法 - Google Patents

電気音響変換装置の振動板、およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

 基材を有し、当該基材の少なくとも片側の面に金属またはセラミック材よりなる40ナノメートル以下の厚さの薄膜層をスパッタ処理により形成した電気音響変換装置の振動板。

Description

電気音響変換装置の振動板、およびその製造方法
 この発明は、スピーカなどの電気音響変換装置の振動板に関し、特に、ソフトドーム型のスピーカ振動板のように分割振動を発生させる程度の柔軟性を有する振動板に関する。
 電気音響変換装置の振動板は、分割振動が殆ど発生しないといった高い剛性を有しているか否かによって概ね二種類に大別される。分割振動を殆ど発生させないほど高い剛性を有する振動板の一例としては所謂ハードドーム型のスピーカ振動板が挙げられる。一方、前者ほど剛性が高くなく、分割振動を発生させる程度の柔軟性を有する振動板の一例としては所謂ソフトドーム型のスピーカ振動板が挙げられる。これらドーム型のスピーカ振動板は、例えば織布や不織布などに樹脂を含浸させてドーム状に成形した基材に、塗装、蒸着、鍍金または含浸などによる表面処理を施して形成されたものが多い。このような表面処理を施すことの主な目的は、紫外線や湿気等に起因する劣化を防止すること、剛性の確保および意匠性の向上である。
日本国特開2011-71707号公報
 しかし、塗装、蒸着、鍍金、含浸などの表面処理では、振動板の重量や剛性が処理の前後で著しく変化することがあり、分割振動を発生させる程度の柔軟性を残す必要のある振動板の製造には適さない場合がある。また、表面処理による重量の変化が大きいため、重量が軽いことが好ましい高域再生ドライバ用のスピーカ振動板に対して低域再生ドライバ用のスピーカ振動板と同じ表面処理を施すことはできず、スピーカシステム全体としての美観の統一が図れないなど意匠性に影響が生じる場合もある。
 本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、電気音響変換装置の振動板に分割振動を発生させる程度の柔軟性を残しつつ、振動板の劣化防止や意匠性の確保を可能にする技術を提供することを目的とする。
 上記課題を解決するために本発明は、基材を有し、当該基材の少なくとも片側の面に金属またはセラミック材よりなる40ナノメートル以下の厚さの薄膜層をスパッタ処理により形成した電気音響変換装置の振動板、を提供する。また、上記課題を解決するために、本発明は、シート状部材の少なくとも片側の面に、金属またはセラミック材よりなる40ナノメートル以下の厚さの薄膜層をスパッタ処理により形成するスパッタ処理工程と、前記スパッタ処理工程を経た前記シート状部材から振動板を成形する成形工程と、を有する電気音響変換装置の振動板の製造方法、を提供する。さらに、上記課題を解決するために、本発明は、基材を有し、当該基材の少なくとも片側の面に金属またはセラミック材よりなる40ナノメートル以下の厚さの薄膜層をスパッタ処理により形成した振動板を有する電気音響変換装置、を提供する。
 上記シート状部材の具体例としては、従来技術におけるものと同様に、合成繊維からなる織布や不織布、柔軟性を有する樹脂フィルムやシート状のゴムなどが挙げられるが、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(以下、「PBO」と称する)を用いた織布が特に好ましい。PBOは、引張弾性率が有機系の合成繊維の中では最高レベル(パラアラミド繊維に比べて約2倍)であり、また、適度な内部損失を有しているため、スピーカなどの電気音響変換装置の振動板の基材の構成材料として好適だからである。
 本発明に係る振動板において少なくとも外側の面(ボイスコイルと対向する面と反対側の面)に薄膜層を形成しておけば、紫外線や湿気等を遮断し、紫外線や湿気等に起因する振動板の劣化を防止することができる。加えて、本発明に係る振動板においては、薄膜層の厚さが鍍金や蒸着等による場合と比較して充分に薄い(鍍金や蒸着等による場合は概ねマイクロメートルオーダの厚さとなる)ため、分割振動を発生させる程度の柔軟性が振動板に残される。本発明に係る振動板において薄膜層の厚さを40ナノメートル以下としたのは、薄膜層の厚さが40ナノメートル以下であれば、薄膜層を形成する金属やセラミック材の種類によらず、分割振動を発生させる程度の柔軟性を残すことができるとの実験結果が得られたからである。
 また、前記薄膜層の厚さは20ナノメートル以上であってもよい。
 なお、特許文献1には、シート状部材により形成されたドーム型の基材の表面にスパッタ処理により0.2マイクロメートル(すなわち、200ナノメートル)の厚さで金をコーティングしてスピーカ振動板を製造する技術の開示がある。しかし、特許文献1に開示のスピーカ振動板におけるコーティング層の厚さは鍍金や蒸着により形成する場合よりは薄いものの、本発明における薄膜層よりは厚く、分割振動を発生させる程度の柔軟性を残せないことが本願発明者の行った実験により判明した。これは、特許文献1に開示の技術は分割振動を殆ど発生させないほど高い剛性を有するスピーカ振動板の製造技術だからである。つまり、特許文献1に開示の技術は本願発明とは全く異なる技術である。
 また、本発明に係る振動板においては、鍍金や蒸着による場合や特許文献1に開示の技術に比較して薄膜層の厚さが薄いため、薄膜層を形成することによる重量への影響が必然的に小さくなる。このため、スピーカシステムに含まれる高域再生用ドライバと低域再生ドライバの両方に本発明を適用すれば、高域再生ドライバ用のスピーカ振動板に対して低域再生ドライバ用のスピーカ振動板と同じ表面処理を施して美観の統一を図ることが可能になる。加えて、本願発明者の行った実験によれば、本発明をスピーカ振動板に適用した場合、表面処理(薄膜層の形成)に用いる素材に応じてスピーカ再生音の音色など再生音質に相違が生じることが判明した。したがって、スピーカシステムに含まれる高域再生用ドライバと低域再生ドライバの両方に本発明を適用すれば、高域再生ドライバ用のスピーカ振動板と低域再生ドライバ用のスピーカ振動板に対して同一の表面処理を施すことができるため、スピーカシステム全体としての再生音質に統一感を持たせることが可能になる。逆に、高域再生ドライバ用のスピーカ振動板と低域再生ドライバ用のスピーカ振動板とで各々異なる表面処理を施し、各々の再生音域に応じた音質の微調整を行うこともできると考えられる。
 より好ましい態様においては、基材の少なくとも片側の面に異種材料により複数の薄膜層を形成する態様が考えられる。本願出願人の行った実験によれば、薄膜層を構成する素材に応じて音質調整の効果が異なることが判明した。このため、異種材料により複数の薄膜層を基材の少なくとも片側の面に形成する態様においては、各薄膜層を形成する素材の選択によって、よりきめ細やかな音質調整を行うことが可能になる。
(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る振動板16を備えたスピーカユニット1の一例を示す図である。 (A)~(E)は、同振動板16の製造工程を説明するための図である。
 以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
(A:構成)
 図1は、本発明の一実施形態に係る振動板16を備えたスピーカユニット1の一例を示す図である。より詳細に説明すると、図1(A)は、同スピーカユニット1の正面透視図であり、図1(B)は同スピーカユニット1の振動板ユニットの正面図である。このスピーカユニット1は、所謂ソフトドーム型スピーカ装置であり、図1(A)に示すように、ヨーク11Aおよび11Bと、マグネット12と、プレート13と、フレーム19と、パッキン20と、振動板ユニット21とを有している。振動板ユニット21は、ボビン14、ボイスコイル15、振動板16、およびロールエッジ17を有している。本実施形態において振動板16とロールエッジ17は一体成形されている。
 ヨーク11A、ヨーク11B、マグネット12、およびプレート13は、磁気回路10を構成する。磁気回路10において、プレート13の外周部とヨーク11Bの内周部の間に設けられた磁気ギャップSには、ボイスコイル15が挿入されている。ボイスコイル15はボビン14に巻きつけられており、ボビン14は端部が振動板16とロールエッジ17の境界部に接続されている。
 振動板16は、外部から入力された音声信号に応じて振動し、音波を発生する。振動板16およびロールエッジ17は、片側の面(表面と裏面の何れか一方)に金属またセラミック材よりなる薄膜層がスパッタ処理により形成されたシート状部材に樹脂を含浸させたものを、図1(A)に示す形状に一体成形したものである。図1(A)に示すように、振動板16はドーム状に成形されている。以下では、振動板16のボイスコイル15に対向する側の面を「振動板16の内側の面」と呼び、反対側の面を「振動板16の外側の面」と呼ぶ。本実施形態では、上記薄膜層が外側の面に位置するように振動板16は成形されており、この薄膜層の厚さに本実施形態の特徴がある。詳細については後述するが、この薄膜層は、振動板16に分割振動を発生させる程度の柔軟性が残される程度の厚さとなるように20ナノメートル以上40ナノメートル以下の厚さで形成されている。
 本実施形態では、上記シート状部材として合成繊維布、より正確には、PBOを用いた織布が使用されている。PBOは、一般にザイロン(登録商標)という商品名で知られている。PBOは、引張弾性率が有機系の合成繊維の中では最高レベルであり、パラアラミド繊維に比べて約2倍である。PBOは、適度な内部損失を有している。本実施形態において振動板16およびロールエッジ17の製造に用いられるPBO織布(図2におけるPBO織布116)は、PBOの繊維のみで織られ、図1(B)に示すように繊維の方向が揃えられた縦糸及び横糸が格子状に織られている。
 ロールエッジ17は、振動板16の外周部に沿って形成され、断面が弧状の凸部17Aと、断面が平面状の保持部17Bから成る。凸部17Aの内周部は振動板16に連なっており、凸部17Aの外周部は保持部17Bに連なっている。保持部17Bは、ヨーク11Bの上部に配された環状のパッキン20と、フレーム19と、により挟まれた状態で支持される。フレーム19は、振動板16の外周部に対向して設置されている。振動板ユニット21は、ボビン14、ボイスコイル15、振動板16、及びロールエッジ17が一体的に構成されているので、取り付けや交換を容易に行うことができる。
 以上がスピーカユニット1の構成である。
(B:製造工程)
 次に、図2に基づいて、振動板16およびロールエッジ17からなる成形品の製造工程を説明する。この製造工程は、振動板16の基材となるシート状部材(前述したように、本実施形態ではPBO織布116)の表面と裏面のうちの一方(振動板16の外側の面となる面)に金属またはセラミック材よりなる薄膜層をスパッタ処理により形成するスパッタ処理工程と、このスパッタ処理工程を経たシート状部材から、振動板16およびロールエッジ17よりなる成形品を成形する振動板成形工程と、に大別される。さらに、振動板成形工程は、含浸工程、コーティング工程、成形工程、およびカット工程に細分される。
(B-1:スパッタ処理工程)
 このスパッタ処理工程は、図2(A)に示すように、ロール101から供給されるPBO織布116をスパッタリング装置102のターゲット102Aと試料台102Bの間を通過させ、PBO織布116の片側の面(本実施形態では、ターゲット102Aに対向する側の面)に20ナノメートル以上40ナノメートル以下の厚さの薄膜層を形成する工程である。以下では、このスパッタ処理工程を経たPBO織布116(すなわち、片側の面に薄膜層が形成されたPBO織布116)のことを「PBO織布116A」と呼ぶ。PBO織布116の厚みや面密度については、スピーカのサイズや音域等の条件に応じて選択すると良い。高音用スピーカの場合には、できる限り軽量であることが望ましいので、例えば0.2ミリメートルといったかなり薄いPBO織布を使用すれば良い。一方、低音用スピーカの場合には、ある程度の重量が必要なため、例えば、1ミリメートル程度の厚めのPBO織布を使用すれば良い。
 薄膜層を形成する素材としては、金属(例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン、金、モネル合金など)またはセラミック材を用いるようにすれば良い。モネル合金とは、60%以上のニッケルと30%程度の銅とを含む耐腐食性に優れた合金であり、100円(日本円)硬貨の鋳造に用いられていることや、旧500円(日本円)硬貨の鋳造に用いられたことが一般に知られている。本発明者の行った実験によれば、薄膜層を形成する素材の種類によってスピーカユニット1から出力した音の音質が異なることが判明した。したがって、薄膜層の形成に用いる素材については、どのような音質の音をスピーカユニット1に出力させるかに応じて定めるようにすれば良い。
 ここで、薄膜層の厚さを20ナノメートル以上40ナノメートル以下とした理由は以下の通りである。まず、第1に、薄膜層の厚さの下限である20ナノメートルというのは現時点のスパッタ処理において形成可能な膜厚の下限値である。薄膜層の厚さは当該薄膜層を設ける目的(紫外線に起因する劣化防止など)を担保することができる限り、振動板16の柔軟性の確保という観点から見れば薄ければ薄いほうが好ましいことは言うまでもない。そこで、本実施形態では、現時点でスパッタ処理により成形可能な膜厚の下限値を上記薄膜層の厚さの下限値としたのである。
 第2に、薄膜層の厚さは、後述する振動板製造工程を経て製造される振動板16に分割振動を殆ど発生させないほど高い剛性を与えるものであってはならない。この観点から、薄膜層の厚さは200ナノメートル未満であることが好ましい。薄膜層の厚さが200ナノメートル以上になると、振動板16において分割振動は殆ど発生せず、ソフトドーム型のスピーカ振動板というよりは、むしろハードドーム型のスピーカ振動板となってしまうからである。
 加えて、本願発明者の行った実験によれば、薄膜層の厚さが40ナノメートル以下であれば、薄膜層を形成する素材の種類によらず、後述する振動板製造工程を経て製造される振動板16に分割振動を発生させる程度の柔軟性を残せることが判明した。例えば、アルミニウムは比較的柔らかい金属の代表であり、チタンは比較的硬い金属の代表である。したがって、アルミニウムにより薄膜層を形成する場合とチタンにより薄膜層を形成する場合とでは、ハードドーム型のスピーカ振動板となってしまう薄膜層の限界的な厚さは必然的に異なるはずである。しかしながら、薄膜層の厚さを40ナノメートル以下にしておけば、比較的硬い金属の代表であるチタンを用いて薄膜層を形成したとしても、振動板製造工程を経て製造される振動板16に分割振動を発生させる程度の柔軟性を残せることが上記実験より判った。これが、薄膜層の厚さを20ナノメートル以上40ナノメートル以下とした理由である。
(B-2:含浸工程)
 この含浸工程では、図2(B)に示すように、PBO織布116Aを樹脂含浸装置103の樹脂槽103Aを通過させ、PBO織布116Aの全体に樹脂を含浸させる。以下、樹脂を含浸させたPBO織布116Aを「PBO織布116B」と称する。樹脂含浸は、PBO織布116Aを次の成形工程で熱プレスにより振動板形状に成形するために行う。PBO織布116Aに含浸させる樹脂としては、任意のものが使用可能である。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、またはメラミン樹脂等の熱硬化性合成樹脂材を用いることが考えられる。
(B-3:コーティング工程)
 このコーティング工程は、目止めの為、PBO織布116Bに対してラテックスによるコーティングを施す工程である。このコーティング工程は、上記含浸工程と同様の方法により実現される。より詳細に説明すると、このコーティング工程では、図2(C)に示すように、PBO織布116Bをコーティング装置104(含浸工程における樹脂含浸装置103に対応)のラテックス槽104A(含浸工程における樹脂槽103Aに対応)を通過させてラテックスによるコーティングを施し、さらに、コーティング後、余分なラテックスを取り除くためにブレード104Bおよび104Cによるしごきを施す。以下では、このコーティング工程を経たPBO織布116Bを「PBO織布116C」と称する。
(B-4:成形工程)
 この成形工程では、図2(D)に示すように、熱プレス装置105の金型105Aと金型105Bの間に、薄膜層が金型105Aと対向するようにPBO織布116Cをセットする。そして、金型105Aと金型105Bによる熱プレスによって、PBO織布116Cから、外周部に沿ってロールエッジ17を有するドーム形状の成形品116Dを成形する。なお、成形工程において、熱プレス成形は必須ではなく、成形品116Dを所定の形状(本実施形態では、外周部に沿ってロールエッジ17を有するドーム形状)に成形できるのであれば、単にプレス成形でも良い。
(B-5:カット工程)
 このカット工程では、図2(E)に示すように、カット装置106の金型106Aと金型106Bにより、成形品116Dからロールエッジ17の保持部17Bのさらに外周側の不要部分をプレスカットする。これにより、外側の面に薄膜層が形成された振動板16とロールエッジ17とからなる成形品116Eの作成が完了する。
 以上の製造工程により製造した成形品116Eにおける振動板16とロールエッジ17の境界部に、ボイスコイル15が巻き付けられたボビン14を接着して、振動板ユニット21を作成する。そして、別工程で組み立てたスピーカユニット1のヨーク11Bの上部に環状のパッキン20を配して、ロールエッジ17の保持部17Bを、パッキン20とフレーム19とにより挟み込むように取り付けると、スピーカユニット1の完成である。
 本実施形態の振動板16では、基材となるPBO織布の外側の面に薄膜層が形成されているため、このPBO織布が光(例えば、紫外線)や湿気にさらされず、PBO織布が劣化しにくく、耐久性が向上する。このような劣化防止効果を主眼に置くのであれば、上記薄膜層を形成する素材として金やモネル合金を用いるようにすれば良い。金やモネル合金は非常に酸化しにくいので、金やモネル合金からなる薄膜層でコーティングすることで振動板16の外側の面の劣化を防止し、高級感を保つことができるからである。なお、金やモネル合金は比重の大きい金属(モネル合金の比重は鉛と同等)であるが、薄膜層の厚さを20ナノメートル以上40ナノメートル以下の範囲に収めておけば、アルミニウムなどの比重の小さい金属を用いた場合は勿論、金やモネル合金などの比重の大きい金属を用いて薄膜層を形成したとしても、振動板16全体の重量に対する影響はさほど大きくはない。
 また、上記薄膜層の厚さは、蒸着や鍍金による場合に比較して充分薄いことは勿論、特許文献1に開示の技術と比較しても充分に薄く、振動板16に分割振動を発生させる程度の柔軟性が残され、振動板16はソフトドーム型のスピーカ振動板として機能する。また、薄膜層を形成する素材を適宜選択することで所望の再生音質を得ること(換言すれば、薄膜層を形成する素材の選択によって再生音質の微調整を行うこと)もできる。
 以上説明したように本実施形態によれば、ソフトドーム型のスピーカ振動板において、基材の劣化防止や意匠性の確保のための表面処理を施すことと、分割振動が発生する程度の柔軟性を確保することとを両立させることが可能になる。
(C:変形)
 以上本発明の実施形態について説明したが、以下に述べる変形を加えても勿論良い。
(1)上記実施形態では、振動板16の基材を構成するシート状部材としてPBO織布を用いたが、他の合成繊維(例えば、パラアラミド繊維(ケブラー(登録商標))、ポリエチレン、PAN系カーボンのような高弾性の合成繊維)を用いた織布を用いても良く、また不織布を用いても良い。また、柔軟性を有するシート状の樹脂フィルムやシート状のゴムなどを用いても良い。要は、柔軟性を有するとともにスパッタ処理による表面処理が可能なシート状部材であれば良い。
(2)上記実施形態では、ソフトドーム型のスピーカへの本発明の適用例を説明したが、本発明の適用対象はドーム型スピーカに限定されるものではなく、コーン型スピーカ或いは平板型スピーカ等であっても良い。例えば、スピーカシステムに含まれるツイータとウーハの両者に本発明を適用し、各々のスピーカ振動板に対して同一の表面処理を施して意匠性の統一および再生音質の統一を図ることも可能である。前述したように、本発明に係るスピーカ振動板の表面に形成される薄膜層は、塗装や蒸着、鍍金などにより形成されるものに比較して充分に薄いことは勿論、特許文献1に開示されたスピーカ振動板におけるコーティング層に比較しても薄く、薄膜層の形成によってスピーカ振動板の重量が大きく変化させることはなく、また、分割振動を発生させる程度の柔軟性を維持することができるからである。また、本発明の適用対象はスピーカの振動板に限定されるものではなく、マイクロホンの振動板であっても良い。要は、音(振動)と電気信号の相互変換を行う電気音響変換装置の振動板であって、分割振動を発生させる程度の柔軟性を要求される振動板であれば、本発明を適用することが可能である。
(3)上記実施形態では、振動板16の基材の外側の面に薄膜層を形成したが内側の面にも薄膜層を形成しても良く、また、内側の面にのみ薄膜層を形成しても良い。要は、振動板16の基材の少なくとも片側の面に薄膜層が形成される態様であれば良い。例えば、紫外線等による劣化を考慮する必要がない場合や意匠性の向上を図る必要がない場合には、基材の外側の面に薄膜層を形成する必要はない。また、基材の外側と内側の両面に薄膜層を形成する場合には、外側の面に形成する薄膜層については紫外線等による劣化から基材を保護するという観点から素材の選択を行い、内側の面に形成する薄膜層については音質調整を主目的として素材の選択を行うといったことも考えられる。ただし、基材の両面に薄膜層を形成する場合には、それら薄膜層によって振動板16の柔軟性が損なわれないように各薄膜層の厚さを定める必要がある。なお、振動板16の外側の面と内側の面の両方に薄膜層を形成する場合には、前述したPBO織布116Aに換えて表面と裏面の両方にスパッタ処理による薄膜層の形成を行ったPBO織布を用いて含浸工程以降の各工程を実行すれば良い。また、振動板16の内側の面にのみ薄膜層を形成する場合には、PBO織布116Cの表裏を裏返して(すなわち、薄膜層の形成された面が金型105Bに対向するようにPBO織布をセットして)、図2(D)に示す成形工程以降の各工程を行えば良い。
(4)上記実施形態では、振動板16の外側の面に一層の薄膜層を形成する場合について説明したが、材質の異なる複数の薄膜層を同振動板16の外側の面に形成しても良い。具体的には、素材を異ならせて複数回のスパッタ処理工程を行うことでPBO織布の片側の面に異種材料によりなる複数の薄膜層を形成し、このPBO織布を用いて振動板製造工程を実行すれば良い。また、上記実施形態の成形品116Eを振動板16の外側の面がターゲット102と対向するようにスパッタリング装置102のターゲット102Aと試料台102Bの間にセットし、上記実施形態におけるものとは異なる素材でスパッタ処理を施すことで、振動板16の外側の面に材質の異なる複数の薄膜層を積層しても良い。また、このようなカット工程後のスパッタ処理工程を素材を変えつつ複数回行っても良い。なお、カット工程の後工程として1または複数回のスパッタ処理工程を行う場合には、振動板成形工程に先立つスパッタ処理工程を省略することも勿論可能である。
 また、振動板16の内側の面(或いは外側と内側の両面)に材質の異なる複数の薄膜層を形成しても良く、一方の面には一層の薄膜層を形成し他方の面には材質の異なる複数の薄膜層を形成しても良い。前述したようにスピーカユニット1の再生音質は薄膜層を形成する素材の影響を受けるのであるから、振動板16の少なくとも片側の面に材質の異なる複数の薄膜層を形成することで、再生音質をよりきめ細やかに調整することが可能になる。なお、このように振動板16の少なくとも片側の面に材質の異なる複数の薄膜層を形成する態様においても、振動板16の柔軟性が損なわれないように各薄膜層の厚さを定める必要があることは言うまでも無い。
 本出願は、2012年3月22日出願の日本特許出願、特願2012-065594に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
 本発明の電気音響変換装置の振動板によれば、振動板に分割振動を発生させる程度の柔軟性を残しつつ、振動板の基材の劣化防止や振動板の意匠性の確保を可能にする。
 1…スピーカユニット、10…磁気回路、11A,11B…ヨーク、12…マグネット、13…プレート、14…ボビン、15…ボイスコイル、16…スピーカ振動板、17…ロールエッジ、19…フレーム、20…パッキン、21…振動板ユニット。

Claims (7)

  1.  基材を有し、当該基材の少なくとも片側の面に金属またはセラミック材よりなる40ナノメートル以下の厚さの薄膜層をスパッタ処理により形成した電気音響変換装置の振動板。
  2.  少なくとも片側の面に前記薄膜層が形成された前記基材はシート状部材であり、前記シート状部材に樹脂を含浸させる請求項1に記載の振動板。
  3.  前記シート状部材は、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールを用いた織布である請求項1または2に記載の振動板。
  4.  前記薄膜層は異種材料により形成された複数の薄膜層である請求項1ないし3の何れか1項に記載の振動板。
  5.  前記薄膜層の厚さは20ナノメートル以上である請求項1ないし4の何れか1項に記載の振動板。
  6.  シート状部材の少なくとも片側の面に、金属またはセラミック材よりなる40ナノメートル以下の厚さの薄膜層をスパッタ処理により形成するスパッタ処理工程と、
     前記スパッタ処理工程を経た前記シート状部材から振動板を成形する成形工程と、
     を有する電気音響変換装置の振動板の製造方法。 
  7.  基材を有し、当該基材の少なくとも片側の面に金属またはセラミック材よりなる40ナノメートル以下の厚さの薄膜層をスパッタ処理により形成した振動板を有する電気音響変換装置。
PCT/JP2013/058318 2012-03-22 2013-03-22 電気音響変換装置の振動板、およびその製造方法 WO2013141369A1 (ja)

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