JP2022045715A - スピーカー用振動板、スピーカー用振動板の製造方法、及びスピーカー - Google Patents

スピーカー用振動板、スピーカー用振動板の製造方法、及びスピーカー Download PDF

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Ryuta Sakai
和美 中原
Kazumi Nakahara
和志 黒柳
Kazushi Kuroyanagi
朗 重田
Akira Shigeta
和幸 稲垣
Kazuyuki Inagaki
弘幸 熊倉
Hiroyuki Kumakura
伸一 土井
Shinichi Doi
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Abstract

【課題】音圧の高いスピーカー用振動板、スピーカーを得る。【解決手段】スピーカー用振動板1は、熱可塑性樹脂中に炭素繊維11がランダムに配向された強化繊維層10と、前記強化繊維層10を挟むように配置された熱可塑性樹脂層20とを備えている。スピーカー用振動板1の目付量が60g/m2以上120g/m2以下であることが好ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、スピーカー用振動板、スピーカー用振動板の製造方法、及びスピーカーに関する。
スピーカー用振動板には、弾性率が高くて剛性があること、内部損失が大きいことといった機能面の特性が要求される。こうした特性を備えるスピーカー用振動板として、従来から、紙パルプシート、金属シート、樹脂シート等の材料が採用されている。しかし、従来のスピーカー用振動板は、必ずしも要求される特性を十分満足するものではないのが実情である。例えば、紙パルプシートは適度な内部損失を有しているが、弾性率及び剛性に関しては十分とは言えず、十分な音速を得ることができない。金属シートは高い剛性を有しているが、重量があって内部損失が小さいために金属特有の固有音が発生しやすい。また、樹脂シートは金属シートに比べて軽量であって内部損失は大きいものの、剛性が十分とは言えず十分な音速を得ることができない。
特許文献1には、熱可塑性樹脂をインジェクション成形することにより形成された樹脂製のスピーカー用振動板に係る発明が記載されている。ここでは、熱可塑性樹脂材料としてプロピレンのみからなる重合体に、マイカ系材料を含有させることで、軽量であっても剛性に優れた樹脂製のスピーカー用振動板が得られるとされている。
特開2004-363882号公報
ところで、近年の車両の燃費効率およびデザイン性の観点から、車両に搭載するスピーカーに対して、軽量化、小型化の要請が大きくなっている。この点、スピーカー用振動板を軽量化することによって得られる音圧上昇により、スピーカーの駆動源を小型化、軽量化することができるため、車両燃費の向上や取付性の向上に貢献することができる。また、車載オーディオ機器の出力を下げることによる車両の消費電力の低下にも貢献することができる。こうした点から、車載スピーカーに適用するスピーカー用振動板の材料として、軽量な樹脂シートは有効である。
しかし、軽量化を追及して樹脂シートの厚みを薄くすると、スピーカー振動板に必要な剛性を確保することが難しいといった問題がある。また、特許文献1に記載されるようなインジェクション成形によるスピーカー振動板ではさらなる薄肉化が難しく、十分な軽量化を実現できないといった問題もある。そのため、剛性を確保しつつ音圧を上げるといった観点からはなお改善の余地があるものである。
本発明は、従来のこうした問題を解決するためになされたものであり、その目的は、音圧の高いスピーカー用振動板、スピーカー用振動板の製造方法、及びスピーカーを提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明のスピーカー用振動板は、熱可塑性樹脂中に炭素繊維がランダムに配向された強化繊維層と、前記強化繊維層を挟むように配置された熱可塑性樹脂層とを備えている。
上記の構成によれば、樹脂材料とすることで軽量化を図りつつ、スピーカー用振動板に必要な剛性を、ランダムに配向された炭素繊維によって付与することができる。そのため、音圧の高いスピーカー用振動板を実現することができる。また、強化繊維層が熱可塑性樹脂層で挟まれているため、強化繊維層内への水透過を抑制することができる。車載用スピーカー等に適用する場合に必要な水密性を実現することができる。
上記の課題を解決するために、本発明のスピーカー用振動板の製造方法は、上記スピーカー用振動板の製造方法であって、炭素繊維を含有する不織布シートと、熱可塑性樹脂シートとを積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体を金型内でプレス成形するプレス成形工程とを備えている。
上記の構成によれば、薄肉で軽量であって音圧が高く、水密性に優れたスピーカー用振動板を容易に成形することができる。
上記の課題を解決するために、本発明のスピーカーは、上記スピーカー用振動板を備えている。
上記の構成によれば、軽量であり、音圧の高いスピーカーを得ることができる。
本発明によれば、音圧の高いスピーカー用振動板、及びスピーカーを得ることができる。
本実施形態のスピーカー用振動板が取り付けられた振動系の断面図。 スピーカー用振動板の拡大断面図。 強化繊維層と熱可塑性樹脂層の積層構造の音響特性について示す図。 試験例での周波数スペクトルについて説明する図。
以下、本発明を具体化したスピーカー用振動板(以下、振動板という。)について説明する。本実施形態の振動板1は、車両に搭載される車載用スピーカーに適用されるものである。
図1に示すように、本実施形態の振動板1は、円錐(コーン)形状をしている。振動板1の外周はエッジ2により支持されているとともに、振動板1の中心部はフレーム3に固定されたダンパー4により支持されている。また、振動板1の中心部にはセンターキャップ5が取り付けられているとともに、音響信号電流を流すためのボイスコイル6が接着されている。これらによりスピーカーの振動系が構成されており、振動系の外周はフレーム3で支持されている。
振動板1は音響特性を左右する部材であるため、その材料の選定は重要である。
図2に示すように、本実施形態の振動板1は、熱可塑性樹脂中に炭素繊維11が配向された強化繊維層10と、強化繊維層10を挟むように配置された熱可塑性樹脂層20を有する積層構造をなしている。強化繊維層10は、熱可塑性樹脂中に比較的短い炭素繊維11がランダムに配向されて構成されている。炭素繊維11の長さは、3~13mm程度であることが好ましく、5~7mmであることがより好ましい。炭素繊維11の長さが13mm程度以下であると、炭素繊維11がこれより長い場合と比較して、熱可塑性樹脂中で炭素繊維11の偏りが生じ難くなって炭素繊維11が適度に分散する。これにより、成形された振動板1での炭素繊維11の分散状態が良好となる。また、炭素繊維11の長さが3mm程度以上であると、炭素繊維11がこれより短い場合と比較して、振動板1の剛性が向上する。振動板1は、こうした長さの炭素繊維11がランダムに配向された強化繊維層10を有していることで、振動板1の軽量化と、振動板1に要求される剛性の向上の両立を図ることができる。これにより、音圧に優れた振動板1とすることができる。
強化繊維層10を構成する熱可塑性樹脂の材質は特に限定されない。その材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等が挙げられる。
熱可塑性樹脂層20は、強化繊維層10を挟むように強化繊維層10の両面に積層されている。そのため、強化繊維層10中に配向された炭素繊維11は、振動板1の表面に露出しない状態となっており、これにより、振動板1の内部に水又は水蒸気等の湿気が浸入することが抑制されて振動板1の水密性が担保される。熱可塑性樹脂層20を構成する熱可塑性樹脂の種類も特に限定されない。強化繊維層10を構成する熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂層20を構成する熱可塑性樹脂とは同じ種類であることが好ましい。
強化繊維層10と熱可塑性樹脂層20の境界は、明確に区別される場合も、明確に区別されない場合も含む。これは後に説明する製造工程において、強化繊維層10を構成する熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂層20を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融して一体化して、その境界部分が明瞭に認識できなくなる場合があるからである。そのため、炭素繊維11が存在する部分より外面側が熱可塑性樹脂層20であり、炭素繊維11が存在する部分が強化繊維層10と定義する。
図2に点線で示すように、熱可塑性樹脂層20が存在することにより、強化繊維層10中の炭素繊維11が振動板1の表面に露出しない状態となっている。熱可塑性樹脂層20が振動板1の表面に存在していることで、振動板1の水密性を担保することができる。
強化繊維層10と熱可塑性樹脂層20とを備えた振動板1の目付量は、60g/m以上100g/m以下であることが好ましく、70g/m以上90g/m以下であることがより好ましい。目付量がこの範囲であると、従来の熱可塑性樹脂製の振動板と比較して、中音域での音圧が上がることでクリアな音として知覚される。また、振動板1として必要な剛性が付与されて物理的強度が向上し、高音域での音圧の上がり幅が顕著となる。
振動板1の密度は、0.5g/cm以上1.0g/cm以下であることが好ましく、0.6g/cm以上0.9g/cm以下であることがより好ましい。密度がこの範囲であると、従来の熱可塑性樹脂製の振動板と比較して、中音域での音圧がおおよそ3dB以上上がり、高音域での音圧がおおよそ10dB以上上がる。
また、振動板1の厚みは、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。後に説明するように、振動板1をプレス成形で形成することにより、薄肉化することが可能であり、これにより、軽量でありながら適度な目付量、密度を備えた剛性に優れた振動板1となる。
次に、振動板1の製造方法について説明する。
振動板1の製造工程は、炭素繊維を含有する不織布シートと、熱可塑性樹脂シートとを積層して積層体を形成する積層工程と、前記積層体を金型内でプレス成形するプレス成形工程とを備えている。
積層工程で積層する不織布シートは、熱可塑性樹脂繊維と炭素繊維とを含有する不織布シート(以下、炭素繊維不織布シートという。)である。炭素繊維不織布シートは、従来公知の乾式法、湿式法のいずれで形成されたものであってもよく、熱可塑性樹脂繊維と炭素繊維とが絡み合った状態で内部に含有されている。
積層工程で使用する炭素繊維不織布シートのVf(Fiber Volume Content、繊維体積含有率(%))は、15%以上45%以下であることが好ましく、25%以上35%以下であることがより好ましい。Vfがこの範囲であると、炭素繊維が適度に分散して炭素繊維不織布シートでの炭素繊維の偏りが抑制される。これにより、成形された振動板1では、炭素繊維が良好な分散状態となる。
積層工程では、同形状に切断した炭素繊維不織布シート、及び2枚の熱可塑性樹脂シートを準備し、炭素繊維腐食シートの両面に熱可塑性樹脂シートを積層して積層体を形成する。このとき、必要に応じてプレシート成形してもよい。プレシート成形とは、プレス成形に先立って積層体を平板状にプレスする工程である。プレシート成形することにより、炭素繊維不織布シートと熱可塑性樹脂シートとが仮接合されて、互いのずれが抑制される。
次に、振動板1の形状のキャビティが形成された金型内に積層体を載置してプレス成形を行う。積層体のプレス成形により、炭素繊維不織布シートを構成する熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂が熱溶融して一体化して、強化繊維層10及び熱可塑性樹脂層20が積層された振動板1が成形される。
プレス成形時の温度、圧力、プレス時間等は適宜設定することができる。炭素繊維不織布シートを構成する熱可塑性樹脂繊維や、熱可塑性樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて調整すればよい。また、プレス成形時の温度、圧力、プレス時間等は、熱可塑性樹脂層20を構成する熱可塑性樹脂と、強化繊維層10を構成する熱可塑性樹脂とが完全に一体化しないように設定することが好ましい。熱可塑性樹脂層20が振動板1の表面に存在するように設定することで、水密性が担保された振動板1を得ることができる。
プレス成形時には、炭素繊維不織布シートと熱可塑性樹脂シートの境界部分近傍では、これらシートの一部が熱溶融して一体化することにより、炭素繊維不織布シート由来の熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂とが混在した状態となる。これにより、振動板1においては、強化繊維層10を構成する熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂層20を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融して一体化して、その境界部分が明瞭に認識できなくなる状態となる。そのため、強化繊維層10は、ほぼ炭素繊維不織布シート由来の部分で形成される場合もあれば、炭素繊維不織布シートに熱可塑性樹脂シート由来の熱可塑性樹脂が混在した状態で形成される場合がある。同様に、熱可塑性樹脂層20は、ほぼ熱可塑性樹脂シート由来の部分で形成される場合もあれば、熱可塑性樹脂シートに炭素繊維不織布シート由来の熱可塑性樹脂が混在した状態で形成される場合もある。
プレス成形後に金型内から積層体を取り出し、周囲の余剰部分を切断等することにより振動板1が得られる。
次に、本実施形態の振動板1の作用について説明する。
図1に示すように、スピーカーの外部から、音響信号電流がボイスコイル6に入力されると、入力された電流値に応じて、ボイスコイル6が振幅する。このボイスコイル6の振幅に伴って、振動板1も振動する。振動板1の振動が、周囲の空気を振動させることによって音波を発生させる。
本実施形態の振動板1は、炭素繊維11がランダムな方向に配向された強化繊維層10を備えている。そのため、炭素繊維11同士の過度の重なりが抑制され、その結果として、強化繊維層10が薄肉化されている。これにより、振動板1全体の厚みが抑制されるとともに軽量化されることによって高い音圧が得られる。そして、炭素繊維11を含有することで振動板1に剛性が付与されるために十分な音速が得られる。
この点、繊維強化樹脂製の振動板として、織物、編物状の炭素繊維に熱可塑性樹脂が含浸されたプリプレグや、一方向に長い炭素繊維が配向されたプリプレグを使用したものが知られている。こうしたプリプレグから成形した振動板では、炭素繊維由来のうねりが発生して、振動板の内部にピンホールが発生し易い。ピンホールの発生を抑制するためには、ある程度の樹脂量が必要となって厚くなり易く、その分重量化が避けられない。剛性を備えている一方で、高い音圧が得られない。本実施形態の振動板1は、強化繊維層10を挟むように配置された熱可塑性樹脂層20により、強化繊維層10のピンホールを熱可塑性樹脂層20がカバーする積層構造を有し、振動板1の振動が周囲の空気を振動させる際の、ピンホールによる空気振動の漏れを抑制する。これにより、樹脂量を抑制した薄く軽い振動板1でありながら、振動板1の振動を効率よく空気の振動に変換することができ、振動板1の音圧を高くすることができる。
また、本実施形態の振動板1は、強化繊維層10中の炭素繊維11が良好な分散状態で配向されている。そのため、振動板1の振動時には、振動板1の内部で炭素繊維11による効果的な内部摩擦が生じ、その結果、優れた内部損失が実現される。
次に、本実施形態の振動板1の効果について説明する。
(1)本実施形態の振動板1は、熱可塑性樹脂中に炭素繊維11がランダムに配向された強化繊維層10と、強化繊維層10を挟むように配置された熱可塑性樹脂層20とを備えている。そのため、軽量化を図りつつ、ランダムに配向された炭素繊維11によって振動板1に剛性を付与することができる。これにより、振動板1の音圧を高くすることができる。
(2)強化繊維層10が熱可塑性樹脂層20で挟まれており、強化繊維層10中の炭素繊維11が振動板1の表面に露出しない状態となっている。そのため、強化繊維層10内への水透過を抑制することができ、車載用スピーカー等に適用する場合に必要な水密性を実現することができる。
(3)本実施形態の振動板1の製造方法は、炭素繊維11を含有する炭素繊維不織布シートと、熱可塑性樹脂シートとを積層して積層体を形成する積層工程と、積層体を金型内でプレス成形するプレス成形工程とを備えている。そのため、インジェクション成形による振動板に比べて薄肉とすることができる。軽量であって水密性に優れたスピーカー用振動板を容易に成形することができる。
上記実施形態は、以下のように変更することができる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
・振動板1は、強化繊維層10、熱可塑性樹脂層20以外の他の層構成を有していてもよい。例えば、熱可塑性樹脂層20の表面に加飾層を有していてもよく、補強層、接着層等を有していてもよい。これらの各層を有している場合であっても、目付量、密度、厚み等を所定範囲に調整することで、軽量で剛性に優れ、音圧の高い振動板1とすることができる。
・振動板1は、車載用スピーカー以外に適用されてもよい。
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)熱可塑性樹脂中に炭素繊維がランダムに配向された強化繊維層と、前記強化繊維層を挟むように配置された熱可塑性樹脂層とを備え、密度が0.5g/cm以上1.0g/cm以下であるスピーカー用振動板。
密度が上記範囲であることにより、中音域での高い音圧を実現できるだけでなく、高音域での伸びのある音を実現することができる。
(ロ)熱可塑性樹脂中に炭素繊維がランダムに配向された強化繊維層と、前記強化繊維層を挟むように配置された熱可塑性樹脂層とを備え、厚みが200μm以下であるスピーカー用振動板。
厚みが200μm以下であることにより、軽量であり音圧の高い振動板が得られる。
(ハ)熱可塑性樹脂中に炭素繊維がランダムに配向された強化繊維層と、前記強化繊維層を挟むように配置された熱可塑性樹脂層とを備え、炭素繊維の長さが約3~10mmであるスピーカー用振動板。
上記範囲の長さの炭素繊維がランダムに配向された強化繊維層を有していることで、振動板の軽量化と、振動板に要求される剛性の向上の両立を図ることができる。これにより、音圧に優れた振動板とすることができる。
<振動板の素材の選定>
まず、振動板の音圧特性が、質量と厚みにより影響されることを踏まえ、振動板の素材を選定するために以下のシート状のサンプルを作成してその性能を評価した。
(サンプル1)
炭素繊維にポリカーボネート(PC)が含浸された炭素繊維不織布シートの両面に、熱可塑性樹脂シートとしてのポリカーボネートシートを積層してプレス成形したものをサンプル1として使用した。炭素繊維不織布シートは、長さが約6mmの炭素繊維とポリカーボネート繊維とが浮遊した状態で湿式法で調製した。炭素繊維不織布シートの目付量は112g/m、Vfは35%である。また、サンプル1の総厚みは約150μmであった。
(サンプル2)
炭素繊維にポリプロピレン(PP)が含浸された炭素繊維不織布シートの両面に、熱可塑性樹脂シートとしてのポリプロピレンシートを積層してプレス成形したものをサンプル2として使用した。炭素繊維不織布シートは、長さが約6mmの炭素繊維とポリプロピレン繊維とが浮遊した状態で湿式法で調製した。炭素繊維不織布シートの目付量は70g/m、Vfは25%である。また、サンプル2の総厚みはサンプル1と同程度である。
(サンプル3)
炭素繊維にポリプロピレンが含浸された炭素繊維不織布シートの両面に、熱可塑性樹脂シートとしてのポリプロピレンシートを積層してプレス成形したものをサンプル3として使用した。炭素繊維不織布シートは湿式法で調製し、炭素繊維不織布シート中の炭素繊維の長さは約6mm、目付量は70g/m、Vf30%である。サンプル3の総厚みはサンプル1と同程度である。
(サンプル4)
炭素繊維にポリプロピレンが含浸された炭素繊維不織布シートの両面に、熱可塑性樹脂シートとしてのポリプロピレンシートを積層してプレス成形したものをサンプル4として使用した。炭素繊維不織布シートは湿式法で調製し、炭素繊維不織布シート中の炭素繊維の長さは約6mm、目付量は70g/m、Vf36%である。サンプル4の総厚みはサンプル1と同程度とした。
(サンプル5)
エポキシ樹脂をマトリクスとした炭素繊維強化樹脂製シート材(テナックス(登録商標)プリプレグ製品番号112、帝人株式会社製)をプレス成形したものをサンプル5とした。サンプル5の総厚みはサンプル1と同程度とした。
(サンプル6)
ポリプロピレンシートをサンプル6とした。サンプル6の総厚みはサンプル1と同程度とした。
各サンプルについて、振動リード法によって、密度、弾性率、内部損失、及び音速を測定し、振動板としての音響特性を評価した。測定結果を表1に示した。
Figure 2022045715000002
表1より、炭素繊維不織布シートと熱可塑性樹脂シートを積層してプレス成形したサンプル1~4は、炭素繊維強化樹脂製シート材やポリプロピレンシートと比較して、密度が小さく軽量であった。中でも、炭素繊維不織布シートとポリプロピレンシートとを積層して成形したサンプル2~4は、炭素繊維強化樹脂製シート材であるサンプル5と比較して、それぞれ密度が54.0%、69.8%、71.7%小さく軽量であった。この結果から、炭素繊維不織布シートと熱可塑性樹脂製シートとを積層してプレス成形したものを振動板として使用した場合、炭素繊維の長繊維が一方向に配向されたいわゆる炭素繊維強化樹脂製プリプレグや、熱可塑性樹脂シートからなるものに比べて、音圧を高めることができることがわかった。
各サンプルの内部損失と音速の結果を図3に示した。サンプル1~4は、弾性率の大きい炭素繊維強化樹脂製シート材を使用したサンプル5と比べて内部損失が大きく、弾性率の小さいポリプロピレンシートを使用したサンプル6と比べて音速が大きい結果が得られた。この結果から、炭素繊維がランダムに配向された強化繊維層と、強化繊維層の両面に熱可塑性樹脂層が積層されたサンプル1~4を使用した場合、サンプル5を使用した場合に比べて、共振しにくくバランスのとれた良好な音響特性を有する振動板が得られることがわかった。なお、目付量が112g/mの炭素繊維不織布シートを積層したサンプル1では、総目付量は約100g/m程度となる。振動板としての目付量を100g/m以下とすることで、内部損失、音速がともに良好な振動板となることがわかった。なお、図3では、従来から使用されている紙パルプ材料、金属材料、樹脂材料からなる振動板の音響特性の範囲を、点線、実線、二点鎖線で囲んで示している。
<振動板の作成>
素材選定での知見を踏まえ、実際に振動板を作成して音響特性を評価した。
(試験例1)
目付量60g/m、Vf35%の炭素繊維不織布シートの両面に、厚さ15μmのポリプロピレンシートをそれぞれ積層した平板状のシートを、振動板形状のキャビティを有する金型内に配置した。金型内で常温でプレスしたまま加温し、温度180℃、圧力5MPaで、5分間プレス成形して振動板を得た。炭素繊維不織布シート中の炭素繊維の長さは約6mmである。得られた振動板の総目付量、総厚み、密度、質量を測定した。また、振動リード法によって、弾性率、内部損失、及び音速を測定した。その結果を表2に示した。以下、同様である。
(試験例2)
試験例1と同様の炭素繊維不織布シートの両面に、厚さ10μmのポリプロピレンシートをそれぞれ積層した平板状のシートを、試験例1と同様の条件でプレス成形して振動板を得た。得られた振動板についての測定項目は試験例1と同様である。
(試験例3)
目付量60g/m、Vf25%の炭素繊維不織布シートの両面に、厚さ10μmのポリプロピレンシートをそれぞれ積層した平板状のシートを、試験例1と同様の条件でプレス成形して振動板を得た。炭素繊維不織布シート中の炭素繊維の長さは約6mmである。
(試験例4)
目付量50g/m、Vf35%の炭素繊維不織布シートの両面に、厚さ5μmのポリプロピレン不織布シートをそれぞれ積層して平板状にプレスした(プレシート成形)。プレシート成形後のシートの両面に、厚さ10μmのポリプロピレン不織布シートをそれぞれ積層して、振動板形状のキャビティを有する金型内に配置し、試験例1と同様の条件でプレス成形して振動板を得た。炭素繊維不織布シート中の炭素繊維の長さは約6mmである。
(試験例5)
プレシート成形後のシートの両面に積層するポリプロピレン不織布シートの厚さをそれぞれ15μmとしたこと以外は、試験例4と同様である。
(試験例6)
目付量50g/m、Vf35%の炭素繊維不織布シートの両面に、厚さ5μmのポリプロピレンシートをそれぞれ積層してプレシート成形した。プレシート成形後のシートの表面を、350℃に調整したIRヒータで10秒加熱し、すぐさま圧力0.2MPaで、5秒プレス成形して振動板を得た。炭素繊維不織布シート中の炭素繊維の長さは約6mmである。
(試験例7)
目付量50g/m、Vf35%の炭素繊維不織布シートの両面に、厚さ5μmのポリプロピレンシートをそれぞれ積層してプレシート成形した。その後、試験例1と同様の条件でプレス成形して振動板を得た。炭素繊維不織布シート中の炭素繊維の長さは約6mmである。
(比較例1)
ポリプロピレンシートのみを金型内に積層して、試験例1と同様の条件でプレス成形して振動板を得た。振動板の総目付量、総厚み、密度、質量は表2に示したとおりである。
(比較例2)
現行の車載用のスピーカー用振動板として、ポリプロピレンを金型内でインジェクション成形したもの(株式会社JVCケンウッド製、KFC-1696PS)を使用した。振動板の総目付量、総厚み、密度、質量は表2に示したとおりである。
Figure 2022045715000003
(各振動板の音圧の測定)
試験例1~7、比較例1~2の各振動板について、音圧を測定した。音圧の測定は、一般社団法人電子情報技術産業協会のJEITA規格 RC-8124Cで規定する周波数レスポンス正弦波法により行い、中音域である500Hzでの音圧、及び高音域である16kHzでの音圧を測定した。また、得られた音圧測定結果値を用いて、中音域500Hzを中心とした1/3オクターブ周波数の遮断周波数である450~560Hz、高音域16kHzを中心とした1/3オクターブ周波数の遮断周波数である14~18kHzの周波数範囲内での音圧の平均値を算出した。
Figure 2022045715000004
試験例1~7の振動板の音圧特性を、現行品である比較例2の音圧特性と比較して評価した。評価基準は以下のとおりとした。
◎;中音域で3dB以上、高音域で10dB以上、現行品より音圧が上がっている。
〇;中音域で3dB以上、高音域で5dB以上、現行品より音圧が上がっている。
△;中音域で1dB以上、現行品より音圧が上がっている。
表2、表3より、炭素繊維がランダムに配向された強化繊維層と、強化繊維層の両面に熱可塑性樹脂層が積層された試験例1~7の振動板では、現行品のスピーカー用振動板である比較例2と比較して、中音域での音圧が上がっていた。特に、試験例1~5では、比較例2に対して3dB以上上がっており、人の話し声のような周波数帯域での音圧の上がり幅が顕著であると言える。スピーカー用振動板に要求される性能として高い評価が得られるものであった。
試験例1~7の振動板は、これらと同程度の厚さとなるようにポリプロピレンシートのみで成形した比較例1の振動板と比較して、表3に示す450~560Hzの周波数領域での音圧の変化は観察されなかったものの、300~450Hzの周波数領域での音圧が顕著に上がっていた。図4には、試験例3と比較例1、2との周波数スペクトルを示している。これによれば、試験例3の振動板は、比較例1の振動板に比べて、300~450Hzの周波数領域で最大で5dB程度の音圧の上昇が観察された。比較例1の振動板では、炭素繊維が存在しないことによって剛性がとれていないために強度が足りず、振動板が撓んだような振動になっているのに対し、炭素繊維不織布シート由来の炭素繊維を含有することによって振動板に必要な剛性が担保できているものと考えられる。
また、表2、表3より、振動板の目付量が60g/m以上である試験例1~5の振動板では、現行品である比較例2の振動板と比較して、中音域での音圧が3dB以上上がっており、その上がり幅が顕著であった。また、高音域での音圧は現行品と比較して5dB以上上がっていた。14~18kHzの周波数領域での音圧が伸びており、こうした現象は、例えば紙パルプで形成された振動板とは大きく異なるものである。不織布シート由来の炭素繊維を含有することによって、振動板に必要な剛性が確保され、物理的強度の向上によって高音域での音圧が上がっているものと考えられる。この点は図4にも示されるように、試験例3の振動板は、3~18kHzの周波数領域において、比較例1、2の振動板に比べて音圧の顕著な上昇が観察された。
表2、表3より、密度が0.6g/cm以上0.9g/cm以下である試験例1~3の振動板では、現行品である比較例2の振動板と比較して、中音域での音圧が3dB以上上がっており、かつ、高音域での音圧が10dB以上上がっていた。密度がこの範囲であることにより高音域での音圧の上がり幅が顕著であった。
さらに、厚みが100μm以下である試験例2、3の振動板では、比較例2の振動板と比較して、高音域での音圧が15dB前後上がっていた。
1…振動板(スピーカー用振動板)

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂中に炭素繊維がランダムに配向された強化繊維層と、
    前記強化繊維層を挟むように配置された熱可塑性樹脂層と
    を備えたスピーカー用振動板。
  2. 目付量が60g/m以上100g/m以下である請求項1に記載のスピーカー用振動板。
  3. 密度が0.6g/cm以上0.9g/cm以下である請求項2に記載のスピーカー用振動板。
  4. 厚みが100μm以下である請求項3に記載のスピーカー用振動板。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のスピーカー用振動板の製造方法であって、
    炭素繊維を含有する不織布シートと、熱可塑性樹脂シートとを積層して積層体を形成する積層工程と、
    前記積層体を金型内でプレス成形するプレス成形工程とを備えているスピーカー用振動板の製造方法。
  6. 請求項1~4のいずれか一項に記載のスピーカー用振動板を備えたスピーカー。
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