WO2013129636A1

WO2013129636A1 - ペットフード

Info

Publication number: WO2013129636A1
Application number: PCT/JP2013/055598
Authority: WO
Inventors: 順哉迫田; 貴博臼井
Original assignee: ユニ・チャーム株式会社
Priority date: 2012-02-29
Filing date: 2013-02-28
Publication date: 2013-09-06
Also published as: US20150044355A1; JPWO2013129636A1; EP2820959A4; JP6162682B2; EP2820959A1; CN104135869A; CA2864518A1

Abstract

　ミネラル成分の厳密な調整を求められる高齢猫用等のペットフードにおいて、ミネラル成分を厳密に調整して品質の安定化を図りつつ、同時に嗜好性にも優れたペットフードを提供すること。　植物由来のタンパク質源材料を、ペットフード中に１２質量％以上２０質量％以下配合し、動物由来のタンパク質源材料を、ペットフード中に２０質量％以下配合し、各粒の嵩比重が、３９．０ｇ／１００ｍｌ以上４６．０ｇ／１００ｍｌ以下であり、製品ロット数１０当たりの製品ロット毎のミネラル含有量の変動幅が１．０％以下であるペットフードとする。

Description

ペットフード

　本発明は、ペットフードに関する。詳しくは、猫等の愛玩動物の尿石の発生を予防しうるものであり、且つ、嗜好性も良好なペットフードに関する。

　犬や猫において尿路における結石が生じる場合がある事は周知の事実である。又、ペットフード中のミネラル成分が、尿のｐＨや成分に対する影響度が大きく、この障害を改善するため、例えば特許文献１には、ペットフード中のカルシウムやリン等のミネラル成分の含有量を特定の範囲に限定することによってイヌ科の尿路の調子を良好に維持できることが開示されている。

特表２００３－５１８９３８号公報

　上記の通り、尿ｐＨや尿成分に対する影響度が大きいミネラル成分を調整することにより、尿結石の発生を抑制できることは周知である。例えば、尿石の発生を特に抑制することを求められる高齢猫用のペットフードにおいては、その製造に際し、ミネラル成分を厳密に一定の範囲に限定することが求められる。

　一方、従来の一般的な猫用ペットフードには、タンパク質源として、チキンミールやフィッシュミール等の動物由来のたん白質源が含有されている。これらの動物由来のタンパク質源は同時にミネラル源ともなり、又、嗜好性をも向上させるものである。しかし、これらの動物由来のタンパク質源は、製品ロット毎のミネラル成分の含有量の変動幅が大きい。そのため、ミネラル成分の含有量の厳密な調整が求められる高齢猫用のペットフード等の製造においては、これらの動物由来のタンパク質源が品質の安定性を低下させる要因となっていた。

　そこで、高齢猫用のペットフード等の製造においては、タンパク質源として動物由来のチキンミールやフィッシュミール等に代えて、製品ロット毎のミネラル含有量の変動幅が相対的に小さいコーングルテン等の植物由来のタンパク質源を用いることが考えられる。これにより、高齢猫用のペットフード等の製造において、ミネラル成分の含有量を厳密に調整して品質の安定性を高めることができる。

　しかし、動物由来のタンパク質源に代えて植物由来のタンパク質源を使用すると嗜好性が低下して食べる量が減ってしまうという問題があった。即ち、尿石の発生を抑制することを求められる高齢猫用のペットフード等、ミネラル成分を厳密に調整する必要のあるペットフードにおいては、ミネラル成分の厳密な調整のために嗜好性を犠牲にせざるを得ないのが現状となっており、この点につき更なる改善が求められていた。

　本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ミネラル成分を厳密に調整して品質の安定化を図りつつ、同時に嗜好性にも優れたペットフードを提供することにある。

　本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、主たるタンパク質源として植物由来のタンパク質源を用いる場合であっても、ペットフードの嵩密度を一定の範囲に調整することによって、嗜好性の低下を充分に防止できることを見出し本発明を完成するに至った。具体的には本発明は以下のものを提供する。

　（１）　粒状のペットフードであって、嵩比重が、３８．５ｇ／１００ｍｌ以上５０．０ｇ／１００ｍｌ以下であり、ロット数１０の製品ロット間における総ミネラル含有量の最大値－最小値で定義される変動幅が１．０％以下であるペットフード。

　（２）　前記製品ロット毎のリン含有量の変動幅が０．２％以下である（１）に記載のペットフード。

　（３）　植物由来のタンパク質源材料を、ペットフード中に１２質量％以上２０質量％以下含有し、動物由来のタンパク質源材料を、ペットフード中に２０質量％以下含有する（１）又は（２）に記載のペットフード。

　（４）　前記植物由来のタンパク質源材料がコーングルテンである（１）から（３）のいずれかに記載のペットフード。

　（５）　前記コーングルテンを、ペットフード中に１２質量％以上２０質量％以下含有する（１）から（４）のいずれかに記載のペットフード。

　（６）　粒状のペットフードの製造方法であって、タンパク質含有量が４０質量％以上８０質量％以下である植物由来のタンパク質源材料の含有量が１２質量％以上であり、タンパク質含有量が４０質量％以上８０質量％以下である動物由来のタンパク質源材料の含有量が２０質量％以下である、タンパク質源材料を含むペットフード原材料を膨化させながら粒状に加工する膨化造粒工程を備え、
　前記膨化造粒工程においては、前記ペットフードの嵩比重が３８．５ｇ／１００ｍｌ以上５０．０ｇ／１００ｍｌ以下となるように、ペットフード原材料の膨化量を調整するペットフードの製造方法。

　（７）　前記膨化造粒工程におけるペットフード原材料の膨化量の調整を、エクストルーダー及び／又はプレコンディショナー内に充填する水蒸気量の調整によって行うことを特徴とする（６）に記載のペットフードの製造方法。

　本発明によれば、主たるタンパク質源材料として植物由来のタンパク質源材料を用いることにより、ミネラル成分の厳密な調整を可能としたペットフードであって、且つ、嗜好性に優れたペットフードを提供することができる。

　以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。

＜ペットフードの基本配合＞
　本発明において、ペットフードとは、愛玩動物に提供される飼料を言う。愛玩動物は、人間に飼育され、人間と生活を共にする動物を言い、種類は特に限定されない。本実施形態では、ペットフードは、猫用として説明する。このペットフードは、猫の年齢や性質に合わせた所望の栄養成分を含有する飼料である。

　本実施形態におけるペットフードは、水分率１２質量％以下の乾燥した粒状の固形物であり、いわゆるドライタイプである。本発明のペットフードは、この粒状の固形物の嵩比重を特定の範囲に限定的に調整することによって、植物由来のタンパク質源材料を主たるタンパク質源としたペットフードでありながら、嗜好性の低下を最小限に止めたことを特徴とするものである。

　まず、ペットフードに用いられる原材料と配合について説明する。原材料は本発明の特徴であるタンパク質源材料を除き、従来公知の配合とすることができ特に限定されない。その一例を挙げれば、トウモロコシ等の穀類１０～６０質量％と、ビートパルプ等の繊維源材料０～１０質量％と、動物性油脂２～２０質量％と、単体成分としてのミネラル類・ビタミン類１～３質量％と、肉や野菜のエキス等からなりアミノ酸を含有する嗜好性向上材料０．１～４．０質量％と、１２質量％以下の適量の水分とが含まれ、この他に下記に詳しく説明するタンパク質源材料が１０～４０質量％含まれる。

＜タンパク質源材料＞
　本発明において、タンパク質源材料とは、ペットフード中のタンパク質量を好ましい範囲のものとするためにペットフードに添加される材料のうち、主としてタンパク質を含有する動物又は植物由来の加工製品を言う。具体的には、ケルダール法によって測定されるタンパク質含有量が４０質量％以上８０質量％以下であることが好ましい。これには、豚や鶏等の肉を加工して得ることができる動物由来のタンパク質源材料と、トウモロコシ等の穀類を加工して得ることができる植物由来のタンパク質源材料とが含まれる。

　植物由来のタンパク質源材料の具体例としては、コーングルテン等トウモロコシの加工製品を挙げることができる。後に実施例において示す通り、これらはいずれも、下記の動物由来のタンパク質源材料と比べて、総ミネラルの含有量が少なく、又、相対的に製品ロット毎のミネラルの含有量の変動幅が極めて小さいものである。それらのうち、低コスト入手可能で、且つ、ミネラル含有量の安定性にも優れたコーングルテンを好ましく用いることができる。尚、本発明におけるコーングルテンとは、とうもろこしの精製過程においてタンパク質を分離して得られるものをいう。尚、植物由来のタンパク質源材料に含まれる総ミネラルの含有量は、加熱灰化法によって測定される粗灰分としての数値で一般的に７％以下である。尚、以下、本明細書において総ミネラルの含有量とは、特に他の記載が無い限り、上記数値のことを言うものとする。

　動物由来のタンパク質源材料の具体例としては、ポークミール、チキンミール、及びフィッシュミール等、動物の肉を主たる構成成分とする加工品を挙げることができる。これらはいずれも、タンパク質源であると同時にアミノ酸を含有し、旨味成分としてペットフードの嗜好性の向上に寄与しうるものであるが、後に実施例において示す通り、上記の植物由来のタンパク質源材料と比べて、総ミネラルの含有量が多く、又、相対的に製品ロット毎のミネラルの含有量の変動幅が非常に大きいものである。尚、動物由来のタンパク質源材料に含まれる総ミネラルの含有量は、加熱灰化法によって測定される粗灰分としての数値で一般的に１０％以上２０％以下である。但し、動物由来のタンパク質源材料であっても、例えば牛脂カス等ミネラル成分を実質的に含まないものもあり、これらについては、ミネラル成分のばらつきの問題の要因とはならないため、所定の含有量範囲内であれば植物由来のタンパク質源材料と好ましく併用することができる。例えば、牛脂カスについては、１０％以上１５％未満含まれるようにすることが好ましい。

　ここで、本明細書においては、動物の肉を主成分とはしない牛脂や鶏脂等の動物性油脂、及び、単なる乾燥以外の特段の加工を施さないトウモロコシや小麦粉等の穀物については、タンパク質を含有する材料であっても、上記のタンパク質源材料には含めないものとする。本発明の本質的特徴は、上記定義による「動物由来のタンパク質源材料」の含有量の減量と、上記定義による「植物由来のタンパク質源材料」の含有量の増量が、品質の安定性を確保する上で不可分の要請事項となっている状況の下で、ミネラル成分調整の安定性と嗜好性保持の両立という優れた効果を奏するものである。よって、上記の動物性油脂や穀物等の含有量は、本発明の範囲を限定する必須の構成要件とはなり得ないからである。

　本発明においては、上記タンパク質源材料として、植物由来のタンパク質源材料を主たるタンパク質源材料として用いることが好ましい。ペットフード中の植物由来のタンパク質源材料の含有量は１２質量％以上であり、１５質量％以上であることが好ましい。又、ペットフード中の動物由来のタンパク質源材料の含有量は２０質量％以下であり、１８質量％以下であることが好ましい。ペットフード中のタンパク質源材料の構成を上記範囲とすることにより、ペットフードに求められるタンパク質量を確保しつつ、タンパク質源材料由来のミネラル含有量を下げることもでき、又、ペットフード製品の製品ロット毎の含有量を安定的に適切な範囲に調整することができる。本発明のペットフードによれば、製品ロット毎のミネラルの含有量の変動幅を１．０％以下とすることができる。本明細書において、製品ロット毎のミネラルの含有量の変動幅というときは、１ロット当たり５０ｋｇ～１００ｋｇの製品ロットの１０ロット間における製品ロット毎のミネラルの含有量の最大値（質量％）と最小値（質量％）の差分のことをいうものとする。

　従来、動物由来のタンパク質源材料としてポークボーンミールやチキンミール等が多用されているが、本発明では、ポークボーンミールやチキンミール等の魚類以外の動物由来のミールについては、含有量が０質量％であること、即ち全く使用しないことが好ましい。但し、フィッシュミール等の魚類由来のミールについては、上記の動物由来の各種ミールに替えて、ω３脂肪酸源、タンパク質源材料として１０質量％以下の含有量の範囲で好ましく用いることができる。

　尚、ペットフード中の総ミネラルの含有量については、ペットフードの用途、目的に応じて１％以上８％の範囲で適宜調整すればよいが、例えば６歳以上の高齢猫用のペットフードとしては、結石予防の観点から総ミネラルの含有量が３％から５％の範囲内となるように、各ミネラルの含有量を調整することが好ましい。

　又、ペットフード中のミネラルのうち、とりわけリンの含有量を特定の範囲に限定することによって尿路の調子を良好に維持できることが分かっている。このため、特に、ペットフード中のリンの総量については、０．５０％以上０．７５％以下の範囲内となるように、各ミネラルの含有量を調整することが更に好ましい。尚、上述の通り、本発明のペットフードは、タンパク質源材料として、植物由来のタンパク質源材料を主たるタンパク質源材料として用いるものであることにより、製品ロット毎のリン含有量の変動幅を０．２％以下とすることができる。よって、高い精度で上記の好ましい範囲内にリン含有量を調整することができる。

＜無機化合物＞
　本発明においては、ミネラル成分を補う無機化合物を更に含有してもよい。本発明においては、動物性タンパク質源材料の一部が植物性タンパク質源材料に置き換えられていることにより、タンパク質源由来のミネラルの含有量のばらつきが極めて小さいため、無機化合物の添加によって、上述した所望の範囲に総ミネラルの含有量を厳密に調整することができる。

　ミネラル成分を補う無機化合物は、目的とするミネラルの種類と量に応じて適宜選定可能であるが、例えば、カルシウム源としては炭酸カルシウムやリン酸カルシウム等が、リン源としてはリン酸カルシウム等が、カリウム源としては塩化カリウム等が例示できる。

＜嗜好性向上材料＞
　本発明において、嗜好性向上材料とは、嗜好性を向上させるためにペットフードに添加されるアミノ酸を含有する添加材料であり、ペットフードの粒表面上にコーティングされるものを言う。例として、肉エキス、魚エキス、野菜エキス、酵母エキス等、或いはそれらのエキスを含有する旨味剤であるダイジェストを挙げることができる。これらのうち２種類以上を組み合わせて用いることが好ましい。

＜ペットフード粒の嵩比重＞
　本発明のペットフードは、タンパク質源材料として動物由来のタンパク質源材料の含有量を減じて、植物由来のタンパク質源材料の含有量を増加させるものであるが、そのような原材料配合比とすることによって、ミネラル成分調整の安定性が増す一方で、動物の肉等に含まれるアミノ酸等の旨味成分が減少して嗜好性は低下する。但し、本発明のペットフードにおいては、後述する製造方法によって、ペットフード粒の嵩比重を特定の範囲に調整することによって、嗜好性の低下を最低限に止めるものである。これにより、従来両立が困難であったミネラル成分の安定した調整と好ましい嗜好性の保持を同時に可能としている。

　本発明のペットフードは、ペットフードの嵩比重が、３８．５ｇ／１００ｍｌ以上５０．０ｇ／１００ｍｌ以下であり、好ましくは４０．０ｇ／１００ｍｌ以上４４．０ｇ／１００ｍｌ以下である。このように嵩比重を特定範囲に限定することにより、ミネラル成分の安定した調整を行いつつ、嗜好性の低下を最小限に止めることができる。嵩比重が上記範囲未満であると嗜好性が劣り成形安定性も不十分となり、又、上記範囲を超えると嗜好性が大きく劣る。

＜ペットフードの嵩比重の測定方法＞
　測定容器として、ステンレス製の１Ｌ円筒形容器を用いる。ペットフード粒を自由落下によって、測定容器に溢れるまで流入させる。ペットフード粒が溢れたところで、測定容器の上面から過剰のペットフード粒を注意深くすり落とす。あらかじめ測定しておいた空の測定用容器の質量を差し引くことによって，測定容器中のペットフードの質量（ｍ_０）を測定する。式ｍ_０／１０によって嵩比重（ｇ／１００ｍｌ）を計算する。以上の測定を３回繰り返し行い、その測定値の平均値を、ペットフードの嵩比重（ｇ／１００ｍｌ）とする。

＜ペットフードの製造方法＞
　本発明のペットフードは、膨化造粒工程を含む以下に説明する方法で製造することができる。先ず、膨化造粒工程においては、上述した原材料のうち、アミノ酸を含有する嗜好性向上材料以外のその他の原材料を、攪拌機で混合し、混合した原材料を、ＤＤＣプレコンディショナー等のプレコンディショナーに通し、そこで、蒸気、水、油及びその他の必要な添加物が混合した原材料に添加される。その後、エクストルーダ（加圧押出造粒機）で加熱及び加圧しながら押し出し、切断することによって粒状に成型する。成型した粒は、ドライヤーで乾燥し、乾燥した粒を冷却する。そして、冷却後に、粒の表面に噴霧や塗布により嗜好性向上材料を適宜コーティングする。

　上記の膨化造粒工程では、加熱及び加圧しながらの押し出し時に、ＤＤＣプレコンディショナーや、エクストルーダー内において添加する水蒸気量を増減することによって、原材料の組成を変更せずに、膨化を抑制又は促進し、嵩比重を適宜増大又は減少させて、ペットフードの嵩比重を適切な値に調整することができる。このようにして、嵩比重を適切な範囲に調整することによって、ミネラル成分の含有量を厳密に調整するために、植物由来のタンパク質源材料を主たるタンパク質源としたペットフード原材料の組成を全く変更せずに、そのような原材料からなるペットフードの嗜好性を向上させることができる。

　尚、ペットフードの形状や大きは特に限定されないが、一例を挙げれば、径が５～１５ｍｍ、厚みが２～５ｍｍ程度の粒状物とすることが好ましい。

　又、本発明のペットフードは、尿石発生防止を目的とするフード以外のペットフードであっても、ミネラル成分の厳密な調整を必須とするものであれば嗜好性を改良することができる。本発明の構成を備えつつ嗜好性を改善したものである限り、そのようなその他のペットフードについても本発明の範囲内である。

　又、本発明のペットフードは、猫用だけでなく、犬用のペットフードに用いることにより、犬用のペットフードの嗜好性を改良することができる。これらの発明についても本発明の範囲内である。

＜ペットフードの包装体（袋）＞
　本発明のペットフードは、５０ｇ～５００ｇの小分け袋に分包された上で、更に、小分け袋３～１０袋程度を防湿性を備える袋に梱包したものを、１包装体（袋）の商品として、需要者に提供することが好ましい。この小分け袋ごとのミネラル含有量の変動幅についても１％以下、又、特に高齢猫の下部尿路の健康維持に影響の大きいリン含有量についても２％以下の変動幅で厳密に好ましい範囲に調整されている。

　尚、猫の１日のペットフードの適性摂取量は、体重３～４ｋｇの小型の猫の場合、５５～７０ｇ／日、体重４～６ｋｇの中型の標準的な猫で、７０～９５ｇ／日、体重６～７ｋｇの比較的大型の猫で、９５～１０５ｇ／日である。ペットフードの好ましくない加湿や酸化を防ぐ上で、小分け袋は１週間程度で与えきれる量であることが好ましい。

　包装体（袋）の表面には、本発明の特長的な効用である、「猫の下部尿路の健康維持促進」と「高い嗜好性」の両立について、簡潔な表示を記載することが好ましい。高齢猫用のペットフードに求められるこの２つ効能は、従来、背反する効能であり、その両立は難しかった。しかし、本発明のペットフードは独自の配合によってこの２つの効能の発現を高いレベルで実現している。そのことを、例えば、「下部尿路の健康維持用」「とびつくおいしさ」といった端的で明快な表現で包装体の表面に記載することが好ましい。これにより、従来品との差別化を図り新たな需要を喚起することができる。

　以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はそれにより限定されない。

　＜ペットフードの製造＞
　表１に配合比率を示す原材料のうち、嗜好性向上材料を除く材料を攪拌機で混合し、混合したそれらの原材料を、ＤＤＣプレコンディショナーによって水蒸気、油を添加し、更にエクストルーダ（加圧押出造粒機）で加熱及び加圧しながら押し出し、切断して、粒状に成型した。更に、成型した粒をドライヤーにて乾燥し、乾燥した粒を更に冷却する。次に、冷却された粒の表面に嗜好性向上材料を塗布することによりコーティングを行った。以上の工程により、１粒あたり径が５～１５ｍｍ、厚みが２～５ｍｍ程度の粒状物として実施例と比較例の粒状のペットフードをそれぞれ製造した。尚、表１中、ダイジェストとは、魚エキスと肉エキスを含有する蛋白質の分解物である。

　実施例１と比較例１、又、比較例２と比較例３は同一の原材料組成であるが、それぞれ、エクストルーダー及びＤＤＣプレコンディショナー内の水蒸気量を増減して、嵩比重のみが異なるものとなるようにした。

　実施例、比較例、それぞれのペットフードについて、上述した「ペットフードの嵩比重の測定方法」によって、嵩比重を測定した結果は表１に示す通りであった。

　又、下記に詳細を説明するそれぞれのペットフードについての製品ロット毎のミネラルの含有量の変動幅（表３に詳細記載）についても、表１に追記した。

　尚、実施例、比較例、それぞれのペットフードのケルダール法によって測定されるタンパク質含有量については、実施例と比較例２が２８．０質量％であり、比較例１が２９．０質量％であった。又、実施例の総ミネラルの含有量については、４．０４３％であった。

　＜ミネラル含有量の安定性の評価＞
　実施例、比較例２において、それぞれ主たるタンパク質源材料として用いたコーングルテンミールと、チキンミールについて、１０ロットの製品ロットについて、製品ロット毎のミネラル（カルシウム、リン）の含有量を従来公知のＩＣＰ発光分析法によって測定し、製品ロット毎の含有量の変動幅を評価測定した。結果を表２に示す。

　実施例と比較例２のペットフード、それぞれ１００ｋｇを１ロットとして、１０ロットのペットフードにおいて、ロット毎のミネラルの含有量（総ミネラルの含有量とリン含有量）を総ミネラルの含有量は加熱灰化法によって、リン含有量はＩＣＰ発光分析法によって測定し、製品ロット毎のミネラルの含有量の変動幅を評価測定した。結果を表３に示す。

　表１、表２及び表３より、実施例においては、ミネラルの含有量の変動幅が極めて小さく、それに対し、動物由来のタンパク質源材料を用いた比較例２においては、変動幅が極めて大きいものとなることが分かる。これらの測定結果から、ペットフード中のミネラル成分量を厳密に一定の範囲に限定する上では、実施例の配合が好ましく、実施例のペットフードは品質安定性に優れるものであることが分かる。特にミネラル成分の調整により尿石の発生を抑制することを求められる６歳以上の高齢猫用のペットフードとして好ましいものであることが分かる。

　＜嗜好性測定試験＞
　以下の方法によって、実施例、比較例のペットフードについて、嗜好性測定試験を行った。結果を表４に示す。

　まず、実施例と比較例２の第１組、比較例１と比較例２の第２組、比較例２と比較例３の第３組の、計３組のペットフードを準備した。各組について、２０匹の２歳以上の猫をモニターとして２日間でテストした。
　第１日は、第１組目のペットフードのうち、一方を左から、他方を右から、猫１匹に対して７０ｇずつ同時に給与し、猫が食べた量を１時間後に測定した。
　当該猫１匹が第１日に食べた合計のペットフードの重量のうち、実施例のペットフードの摂食量と比較例１のペットフードの摂食量を百分率で求めた。モニターである２０匹の猫から得られた百分率を平均して、第１日の結果とした。
　第２日は、第１組目のペットフードのうち、一方を右から、他方を左から、猫１匹に対して７０ｇずつ同時に給与し、猫が食べた量を１時間後に測定した。
　当該猫１匹が第２日に食べた合計のペットフードの重量のうち、実施例のペットフードの摂食量と比較例１のペットフードの摂食量を百分率で求めた。モニターである２０匹の猫から得られた百分率を平均して、第２日の結果とした。
　最後に、第１日と第２日の結果を平均して、最終結果である摂食量の比（嗜好性）を求めた。この嗜好性の数値が高い程、モニターである猫が好んで摂食したことを示す。
　第２組、第３組のペットフードについても、第１組のペットフードと同様に評価した。

　上述した通り、植物由来のタンパク質源材料を用いたペットフード（実施例、比較例１）は、動物由来のタンパク質源材料を用いたペットフード（比較例２、比較例３）よりも、品質安定性に優れるものであるが、第２組の結果より、動物由来のタンパク質源に代替して植物由来のタンパク質源材料を用いたペットフード（比較例１）は、同様の嵩比重を有する動物由来のタンパク質源材料を用いたペットフード（比較例２）と比較して嗜好性が低下する。しかし、第１組の結果より、ペットフード粒の嵩比重を高めたペットフード（実施例）は、植物由来のタンパク質源材料を主たるタンパク源とするものでありながら、充分に高い嗜好性を備えるものであることが理解できる。

Claims

　粒状のペットフードであって、
　嵩比重が、３８．５ｇ／１００ｍｌ以上５０．０ｇ／１００ｍｌ以下であり、
　ロット数１０の製品ロット間における総ミネラル含有量の最大値－最小値で定義される変動幅が１．０％以下であるペットフード。
　前記製品ロット毎のリン含有量の変動幅が０．２％以下である請求項１に記載のペットフード。
　植物由来のタンパク質源材料を、ペットフード中に１２質量％以上２０質量％以下含有し、
　動物由来のタンパク質源材料を、ペットフード中に２０質量％以下含有する請求項１又は２に記載のペットフード。
　前記植物由来のタンパク質源材料がコーングルテンである請求項１から３のいずれかに記載のペットフード。
　前記コーングルテンを、ペットフード中に１２質量％以上２０質量％以下含有する請求項１から４のいずれかに記載のペットフード。
　粒状のペットフードの製造方法であって、
　タンパク質含有量が４０質量％以上８０質量％以下である植物由来のタンパク質源材料の含有量が１２質量％以上であり、タンパク質含有量が４０質量％以上８０質量％以下である動物由来のタンパク質源材料の含有量が２０質量％以下である、タンパク質源材料を含むペットフード原材料を膨化させながら粒状に加工する膨化造粒工程を備え、
　前記膨化造粒工程においては、前記ペットフードの各粒の嵩比重が３８．５ｇ／１００ｍｌ以上５０．０ｇ／１００ｍｌ以下となるように、ペットフード原材料の膨化量を調整するペットフードの製造方法。
　前記膨化造粒工程におけるペットフード原材料の膨化量の調整を、エクストルーダー及び／又はプレコンディショナー内に充填する水蒸気量の調整によって行うことを特徴とする請求項６に記載のペットフードの製造方法。