JP7204816B2 - ペットフード - Google Patents
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Description
(1)ペットフード全量に対して、分離大豆タンパクを乾物換算で5質量%~40質量%含有し、コーングルテンミールを含有しないペットフード(ただし、月桂樹葉の親水性溶媒抽出物質、脱油月桂樹葉の親水性溶媒抽出物質及び月桂樹葉の親水性溶媒抽出物質の脱油物質からなる群から選ばれる物質を主成分として含有するアミラーゼ阻害物質を配合してなるペットフードを除く)。
(2)前記ペットフード全量に対して、βコングリシニンを乾物換算で5質量%~10質量%含有する(1)に記載のペットフード。
(3)動物性タンパク質源原料の含有量が、前記ペットフード全量に対して、20質量%以下である(1)または(2)に記載のペットフード。
(4)リンの含有量が、前記ペットフード全量に対して、乾物換算で0.4質量%~1.3質量%であり、カルシウム含有量が、前記ペットフード全量に対して、乾物換算で0.5質量%~1.6質量%である(1)~(3)のいずれかに記載のペットフード。
本発明において、タンパク質源原料とは、ペットフード中のタンパク質量を好ましい範囲のものとするためにペットフードに添加される材料のうち、主としてタンパク質を含有する動物又は植物由来の加工製品を言う。タンパク質源原料は、具体的には、ケルダール法によって測定されるタンパク質含有量が40質量%以上であることが好ましい。タンパク質源原料には、豚や鶏等の肉を加工して得ることができる動物性タンパク質源原料と、大豆やトウモロコシ等の穀類を加工して得ることができる植物性タンパク質源原料とが含まれる。なお、本明細書において、穀物のタンパク質含有量は、20質量%未満であるため、本明細書で定義する穀物と、本明細書で定義するタンパク質源原料とは異なる。
本明細書においては、動物の肉を主成分としない牛脂や鶏脂等の動物性油脂、および、単に乾燥した穀物であって、特別な加工をしていない穀物は、タンパク質を含有する原料であっても、タンパク質源原料には含めないものとする。
動物性タンパク質源原料は、例えば、チキンミール、ポークミール、ミートミール、フィッシュミール等のミール類が挙げられる。ただし、ミール類は、動物性原料の不可食部(ミネラルを多く含む骨、内臓等)を加熱処理し、脱脂後、乾燥、粉末にしたものであるため、ミネラルの調節が難しい場合がある。
植物性タンパク質源原料は、具体例としては、大豆の加工製品、および、トウモロコシの加工製品のコーングルテンミール、小麦グルテン等がある。植物性タンパク質源原料は、動物性タンパク質源原料と比べて、総ミネラルの含有量が少なく、又、相対的に製品ロット毎のミネラルの含有量の変動幅が極めて小さい。
本実施形態に係るペットフードは、ペットフード全量に対して、大豆原料を乾物換算で5質量%~40質量%含有し、コーングルテンミールを含有しない。
コーングルテンミールとは、トウモロコシの加工製品であり、トウモロコシからでん粉を製造する際にできる副産物で、分離したタンパク質部分を脱水乾燥したものである。 また、本実施形態に係るペットフードの前記大豆原料は、分離大豆タンパクであることが好ましい。
さらに、本実施形態に係るペットフードは、前記ペットフード全量に対して、βコングリシニンを乾物換算で5質量%~10質量%含有することが好ましい。
大豆原料とは、大豆由来の原料のことをいう。大豆由来のタンパク質は、動物性タンパク質にアミノ酸バランスが似ているが、動物性タンパク質源原料よりもミネラル含有が少なく、油脂含量がほぼ無いので、栄養設計を組みやすい。大豆原料は、大豆から作られ、例えば、分離大豆タンパク、濃縮大豆タンパク、脱脂大豆、丸大豆等が挙げられる。
分離大豆タンパクは、大豆を脱脂した後、水で抽出して得た豆乳に酸を加えるとホエーとカードが出来るが、カード部分を遠心分離またはフィルターで分別し、中和、乾燥、粉砕したものである。分離大豆タンパクは、濃縮大豆たんぱくに比べてタンパク質含量が高い。分離大豆タンパクは、99.9%がタンパク質成分であり、製品の原材料表示には、「大豆たんぱく」として表示され、その他の大豆製品とは原材料表示の名称が異なる。
βコングリシニンは、大豆タンパク質を構成する3つのタンパク質の一つである。大豆タンパク質は、グリシニン、βコングリシン、LP(脂質と会合しているタンパク質)の3つから成り、βコングリシニンの含有量により、大豆タンパク質の含有量を算出することが出来る。
例えば、大豆タンパク質が約100%(99.9%)である分離大豆タンパクを分析すると、βコングリシニンが約40%含まれていることが明らかになっている。大豆の機能と科学.2012.pp.31.(著:小野伴忠、下山田真、村本光二)において、分離大豆タンパクは、7Sタンパク質(βコングリシニン+γコングリシニン+塩基性7Sグロブリン)の含量が41%、2Sタンパク質(αコングリシニン)が16%、11Sタンパク質(グリシニン)が31%、15Sタンパク質が3%含まれているという報告がある。また、電気泳動による分析では、βコングリシニン含量は、分離大豆タンパクの全質量に対し、27.8%含まれることがわかっている。
動物性タンパク質源原料の含有量が前記の好ましい範囲内である場合、動物性タンパク質源原料の含有量を抑えつつ、嗜好性を向上しやすい。また、ペットフード中のミネラル含有量をコントロールしやすい。
前記変動幅(L)が上記の好ましい範囲内であると、製品ロット毎のぶれを防ぎやすく、品質の安定した製品を提供しやすい。
総ミネラル含有量の変動幅(L)は、1ロット当たり50kg~100kgの製品ロットの10ロット間における製品ロット毎の総ミネラル含有量(乾物換算)の最大値(質量%)と最小値(質量%)の差分のことをいうものとする。
前記変動幅(Lp)が上記の好ましい範囲内であると、ペットフード中のリン含有量をコントロールしやすくなり、腎臓の健康維持を促進することができる。腎臓は、糸球体におけるろ過、尿細管からの再吸収によって、身体全体のリンの調節機能を担っている。そのため、ペットフード中のリン含有量を適切な範囲に保つことで、腎臓への負担が少なくなり、腎臓の健康維持を促進することができる。
リン含有量の変動幅(Lp)は、1ロット当たり50kg~100kgの製品ロットの10ロット間における製品ロット毎のリン含有量(乾物換算)の最大値(質量%)と最小値(質量%)の差分のことをいうものとする。
ペットフード中のリンの含有量及びカルシウムの含有量が上記の好ましい範囲内であると、ペットフード中のリン、カルシウムの含有量を所定範囲内の設計としつつ、製品毎のミネラル成分含有量の変動を抑えやすくなる。
カルシウムおよびリンは、生体内のカルシウム代謝と恒常性維持に密接に関係しており、摂取されるカルシウムとリンの割合がCa:P=2~1:1の比率であることが好ましい。カルシウムとリンの割合が上記の好ましい範囲内であると、カルシウムとリンの割合をより厳密に調整することができる。また、総合栄養食基準を満たすためには、上記カルシウムとリンの割合を満たす必要がある。
本実施形態に係るペットフードは上記の構成を満たすものであればよく、原料は限定されない。ペットフードの製造において公知の原料を用いることができる。
粉体原料の例としては穀類(トウモロコシ、小麦、米、大麦、燕麦、ライ麦等)、デンプン類(小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、甘藷デンプン、サゴデンプン等)、植物性タンパク質源原料(小麦グルテン等)、肉類(鶏肉、牛肉、豚肉、鹿肉、ミール類(チキンミール、豚ミール、牛ミール、これらの混合ミール)等)、魚介類(魚肉、ミール類(フィッシュミール)等)、野菜類、補助ミネラル、粉状の添加物(ビタミン類、アミノ酸、フレーバー原料、繊維、着色料、嗜好剤等)が挙げられる。
ミール類とは肉類または魚介類を圧縮させ細かく砕いた粉体を意味する。
嗜好剤としては、動物原料エキス、植物原料エキス、酵母エキス(ビール酵母エキス、パン酵母エキス、トルラ酵母エキス)、酵母(ビール酵母、パン酵母、トルラ酵母等)の乾燥物等が挙げられる。
本実施形態に係るペットフードは、ミネラル成分を補う補助ミネラルを含有していてもよい。本実施形態に係るペットフードは、動物性タンパク質源原料の一部または全てが植物性タンパク質源原料に置き換えられているため、動物性タンパク質源原料由来のミネラル含有量のばらつきが極めて小さい。そのため、補助ミネラルの添加によって、ペットフード中のリンの含有量およびカルシウム含有量を上述した所望の範囲内となるようにより厳密に調整することが出来る。
ミネラル成分を補う補助ミネラルは、目的とするミネラルの種類と量に応じて適宜選定可能である。例えば、カルシウム源としては、炭酸カルシウムやリン酸カルシウム等が、リン源としては、リン酸カルシウム等が、カリウム源としては塩化カリウム等が挙げられる。
また、生物由来の貝殻や卵殻、ミルクカルシウム、骨カルシウム等も同様に、ペットフード中のリンの含有量およびカルシウム含有量を上述した所望の範囲内となるようにより厳密に調整する補助ミネラルとして用いることが出来る。
なお、本実施形態に係るペットフードは、補助ミネラルの添加によってペットフード中の総リン含有量および総カルシウム含有量を調整しなくてもよい。本実施形態において、補助ミネラルは、あくまでもリン含有量およびカルシウム含有量の下限値が一定の範囲内になるように添加するものである。補助ミネラルの添加量を最小限とすると、製品ロット毎の総ミネラル含有量のぶれを防ぎやすく、品質の安定した製品を提供しやすい。
原料の配合は特に限定されない。得ようとするフード粒の栄養組成を満たすとともに、良好な成形性が得られるように設定することが好ましい。
配合例としては、大豆原料5~40質量%、穀類40~75質量%、動物性タンパク質源原料0~20質量%、ビタミン類2~5質量%、油脂類2~20質量%、残りはその他の成分、合計100質量%が挙げられる。より具体的な配合例としては、大豆原料5~40質量%、穀類40~75質量%、動物性タンパク質源原料0~20質量%、ビタミン類2~5質量%、油脂類2~20質量%、繊維源原料0~1質量%、補助ミネラル0~1.5質量%、嗜好性向上剤0~2.5質量%が挙げられる。
油脂類は植物性油脂でもよく、動物性油脂(鶏油、豚脂(ラード)、牛脂(ヘット)、乳性脂肪等)でもよい。コーティング剤は動物性油脂を含むことが好ましく、特に牛脂を含むことが好ましい。
本実施形態に係るペットフードを構成するフード粒の形状は、ペットが食するのに好適な形状であればよく、特に制限されない。例えば球状、多角体状、柱状、ドーナッツ状、板状、碁石状、クローバー状等、あらゆる形状が適用可能である。また、フード粒の大きさは、ペットが一口で頬張れる小粒形状であってもよいし、ペットが複数回にわたって噛り付くことができる大粒形状であってもよい。
例えば、フード粒の大きさは最短径及び最長径が、共に3~30mmであることが好ましく、共に6~16.5mmであることがより好ましく、共に7~13mmであることがさらに好ましい。
本実施形態に係るペットフードを製造する方法は、公知の方法を用いることができ、上述の本実施形態の構成を満たせば、特に限定されない。公知の方法としては、下記、造粒工程、乾燥工程、コーティング工程の順でペットフードを製造する方法がある。
造粒工程は、原料混合物を造粒して粒を得る工程である。
造粒工程としては、原料を混合して原料混合物とし、該原料混合物を粒状に成形(造粒)する方法等が挙げられる。
造粒工程とし、具体的には、エクストルーダーを用いて粒(膨化粒)を製造する方法が挙げられる。
エクストルーダーを用いて粒を製造する方法は、例えば「小動物の臨床栄養学 第5版」(Michael S. Hand、Craig D. Thatcher, Rebecca L. Remillard, Philip Roudebusg、Bruce J. Novotny 編集、Mark Morris Associates 発行;2014年;p.209~p.215)に記載されている方法が適用できる。
乾燥工程は、上記造粒工程により、得られた粒を乾燥する工程である。
粒を乾燥する方法としては、自然に乾燥させる方法、温風を吹き付けて乾燥させる方法、減圧して乾燥させる方法、フリーズドライで乾燥させる方法等の公知の方法が挙げられる。これらの乾燥方法の中でも、温風を吹き付けて乾燥させる方法が、ペットフードの嗜好性を高める観点で好ましい。
コーティング工程は、上記乾燥工程により、得たれたフード粒を粗牛脂、調味料又は香料等を含むコーティング剤でコーティングする工程である。
フード粒をコーティングする方法は、特に限定されず、例えば、真空コート法を用いることができる。真空コート法は、加温した粒と油脂等を接触又は付着させた状態で、減圧する方法である。前記コーティング剤は、液状であっても粉末状であってもよい。前記コーティングによりペットの嗜好性(食いつき)を向上させることが出来る。
分離大豆タンパク、濃縮大豆タンパク、チキンミール、コーングルテンミールの市販の製品について、ミネラル(カルシウム、リン)含有量をICP発光分析法(分析機器名:ICP-735(アジレント・テクノロジー株式会社製))によって測定した。ミネラルの含有量(乾物換算)の最小値(Min (%DM))及びミネラルの含有量(乾物換算)の最大値(Max (%DM))から、ミネラルの含有量の変動幅(最大値-最小値)を求めた。
試験例1~4で用いた市販の製品を表1に示す。また、試験例1~4のリン含有量の変動幅の分析結果を表2に示し、試験例1~4のカルシウム含有量の変動幅を表3に示す。
濃縮大豆タンパクとは、脱皮した大豆を脱脂した後、エタノールおよび水の混液で糖類等を除去し、更に加熱して成長阻害物質を不活性化させて、粉末にしたものである。
<ペットフードの製造>
表4に示す配合で、総合栄養食ペットフードを構成する原料を混合した。表4に示す配合は、乾物換算の値である。分離大豆タンパクは、市販製品を用いた。得られた原料混合物をエクストルーダーに投入し、混練しながら100~140℃で、1~5分間の加熱処理を施してデンプン成分をアルファ化し、エクストルーダーの出口で粒状に押出造粒すると同時に膨化させた。得られた粒に対して、乾燥機を用いて125℃で15分間の乾燥処理を行い、それぞれ10kgを1ロットとして、10ロットのペットフードを得た。得られたペットフードについて、ミネラル(カルシウム、リン)含有量(乾物換算)をICP発光分析法(分析機器名:ICP-735(アジレント・テクノロジー株式会社製))によって測定し、製品ロット毎のミネラルの含有量の変動幅を評価測定した。
ミネラルの含有量(乾物換算)の最小値(Min (%DM))及びミネラルの含有量(乾物換算)の最大値(Max (%DM))から、ミネラルの含有量の変動幅(最大値-最小値)を求めた。
変動幅の評価結果を表5に示す。
表4~5に示される結果から、タンパク質源原料に分離大豆タンパクを用いることにより、製品ロット間におけるミネラル含有量の変動幅が極めて小さくなり、ペットフード中のミネラル(リン・カルシウム)成分量を厳密に一定の範囲にコントロールできることが確認された。
嗜好性評価試験として、2歳以上13歳以下の小型犬20匹をモニターとして、給与量各125g、2日間の2ボウルテストを実施した。実施例1の分離大豆タンパク由来のタンパク質含有量と比較例1のコーングルテンミール由来のタンパク質含有量が等量になるよう、分離大豆タンパクとコーングルテンミールの配合比を調整した。また、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3についても、分離大豆タンパク由来のタンパク質含有量とコーングルテンミール由来のタンパク質含有量が等量となるよう、分離大豆タンパクとコーングルテンミールの配合比を調整した。原材料配合比を表6に示す。また、実施例1~3のペットフードについて、ペットフード全量に対するβコングリシニンの含有量(乾物換算)をサンドイッチELISA法により測定した。結果を表7に示す。
また、嗜好性評価試験の結果を表8に示す。表6に示す原材料配合比は、乾物換算の値である。嗜好性評価は、表8に示すとおり、タンパク質含有量が等量の実施例と比較例で比較した。
また、動物性タンパク質源原料を多く含んだ実施例1および比較例1に対し、動物性タンパク質源原料の配合比が低い実施例2~3と比較例2~3との比較から、分離大豆タンパクを含み、かつ、動物性タンパク質源原料の配合比が低いペットフードの方がより好まれることがわかった。
Claims (4)
- ペットフード全量に対して、分離大豆タンパクを乾物換算で5質量%~40質量%含有し、コーングルテンミールを含有しない、膨化粒であるペットフード(ただし、月桂樹葉の親水性溶媒抽出物質、脱油月桂樹葉の親水性溶媒抽出物質及び月桂樹葉の親水性溶媒抽出物質の脱油物質からなる群から選ばれる物質を主成分として含有するアミラーゼ阻害物質を配合してなるペットフード、並びにウェットフード用の模造肉片を除く)。
- 前記ペットフード全量に対して、βコングリシニンを乾物換算で5質量%~10質量%含有する請求項1に記載のペットフード。
- 動物性タンパク質源原料の含有量が、前記ペットフード全量に対して、20質量%以下である請求項1または2に記載のペットフード。
- リンの含有量が、前記ペットフード全量に対して、乾物換算で0.4質量%~1.3質量%であり、カルシウム含有量が、前記ペットフード全量に対して、乾物換算で0.5質量%~1.6質量%である請求項1~3のいずれか一項に記載のペットフード。
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