WO2011086822A1 - コモンモードフィルタおよびコモンモードフィルタ用インダクタ - Google Patents

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Definitions

  • an ideal common mode choke coil has a pair of coils wound around a magnetic core and a coupling coefficient close to “1”, and a line capacitance between input and output.
  • the transmission line is formed by the inter-coil capacitance with a low impedance, and the characteristic impedance is managed.
  • the characteristic impedance of the lumped constant differential delay line is matched with the differential signal, and the characteristic impedance is mismatched with the common mode noise.
  • the circuit constant is set.
  • the lumped-constant differential delay line is configured by combining two or three different differential delay elements of induction m type and all-pass type. Yes.
  • resistors R1 and R10 are connected in series or in parallel to the common mode noise attenuating inductors L1 to L4. As shown, a structure in which resistors R10 and R40 are connected between the connection points T1 to T4 and the ground, and a structure in which resistors R12 to R34 are connected between the connection points T1 to T4 are possible.
  • the common mode power can be absorbed and attenuated by these resistors.

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Abstract

【課題】 超高速差動信号を通過させ、コモンモードノイズを通過させ難くする。 【解決手段】 集中定数差動遅延線DLは、差動線路1、3中に配置された受動直列素子および受動並列素子からなる梯子型差動4端子回路において、受動直列素子にインダクタLsを、受動並列素子にキャパシタCoを配置して形成する。インダクタLsは、同一区間内の差動線路間で対をなすインダクタ間に、差動信号に対して負結合、コモンモードノイズに対して正結合となる極性の相互誘導を持たせ、差動信号に対してインダクタLsのインダクタンスと相互誘導mの相互インダクタンスの差分を直列素子として機能させ、コモンモードノイズに対してインダクタLsのインダクタンスと相互誘導mの相互インダクタンスの和分を直列素子として機能させる。集中定数差動遅延線DLは、キャパシタCo/2の接続点T1とグランド電位間にインダクタL1を接続する。

Description

コモンモードフィルタおよびコモンモードフィルタ用インダクタ
 本発明はコモンモードフィルタおよびコモンモードフィルタ用インダクタに係り、特に、超高速差動線路を伝搬する超高速差動信号を通過させる一方、望ましくないコモンモードノイズを遮断し、電磁障害も引き起こし難いコモンモードフィルタおよびコモンモードフィルタ用インダクタの改良に関する。
 電子機器においてノイズは有害な存在であることから、ノイズを除去するための多くの提案がなされている。
 特に、最近の高速シリアル伝送では、伝送速度がGHz帯と速くなって波長が短くなるから、その波長が回路パターン長の整数倍になる確率が高まり、回路パターンがアンテナとなって信号が空間に放射される電磁放射ノイズが問題となっている。
 もっとも、高速シリアル伝送では、ほとんどの場合、差動線路を用いるため、電磁界は差動線路間で結合し、差動信号を外部へ放射させ難い。
 しかしながら、差動線路のわずかな非対称性や、ICでのわずかな位相ずれ等に起因して生じるコモンモードノイズは、差動線路間を同相信号で伝播し、差動線路間の結合がないため、外部へ放射され易く、電磁放射ノイズとなり易い。
 そのため、差動線路を用いた高速シリアル伝送の分野では、コモンモードノイズ対策が必須のものとなっており、コモンモードノイズの除去手段としてコモンモード・チョークコイルが使用されることが多い。
 この種の公知例として、特開2004-266634号公報(特許文献1)のように、ノーマルモード信号の周波数帯域の下限を2MHzとした構成や、特開2000-58343号公報(特許文献2)のように、差動信号伝送用のコモンモード・チョークコイルをトロイダルコアに巻線する構成がある。
 ところで、理想的なコモンモード・チョークコイルは、図17の等価回路に示すように、磁性体磁芯に巻かれ結合係数が「1」に近い1対のコイルと、入出力間の線間容量を低く抑えたコイル間容量とによって伝送線路を形成し、特性インピーダンスを管理する構成である。
 このコモンモード・チョークコイルでは、コモンモードノイズに対して、伝送線路上に挿入される等価なインダクタンスが大きい値となり、図18の符号Scc21に示す特性のように、コモンモードノイズの通過阻止が可能である。
 他方、コモンモード・チョークコイルは、差動信号(ノーマルモード信号)に対して、インダクタンスが零に近く、しかもライン間容量と組み合わせて低損失伝送線路を形成するため、図18の符号Sdd21に示す特性のように、少ない損失で通過する。
 このような理想的なコモンモード・チョークコイルは、現状では製品化されていないので、図18は通過帯域を15GHzに設定し、本発明の効果と比較するために図示したものである。
特開2004-266634号公報 特開2000-58343号公報
 今後、伝送速度が5~10ギガビット/秒と高速化することは必至であり、その場合のクロック周波数は2.5~5GHzとなる。コモンモード・チョークコイルにおいて、波形劣化を防ぐには、少なくともその3倍の高調波である7.5~15GHzまでの差動信号を振幅劣化なく、かつ群遅延特性を平坦に通過させる必要があり、しかも、同じ帯域のコモンモードノイズを遮断させねばならない。
 しかし、上述した図17の構成では、扱う周波数が5GHzを超えると、磁性体の透磁率の低下により、差動信号回路に直列に等価的なインダクタンスが挿入されることが避けられなくなる。そのインダクタンスに対し分布容量が加わり、差動信号の振幅特性の劣化と、それに伴う群遅延特性の直線性劣化が避けられない。
 具体的にシミュレーションしてみると、そのやり方にもよるが、図17においてインダクタ間の結合係数が0.98から0.97に下がるだけで、差動信号に対する通過帯域は半分に激減する。
 従って、5GHzを超える周波数範囲で使用する場合でも、磁性体に巻かれたコイル間の結合係数を1に近い値に維持しなければならないコモンモード・チョークコイルは、その性能向上への限界がある。
 さらに、コモンモード・チョークコイルは、コモンモードノイズを、大きなインダクタンスすなわち高い直列インピーダンスで遮断するため、コモンモードノイズから見ると、入力端子部の内部が終端開放に近くなり、入力端子に印加されたコモンモードノイズに対し、入力端子部で終端開放線路と同様の応答を示す。
 そのため、入力端子部においては、印加されたコモンモードノイズと、これが開放終端的に反射された反射コモンモードノイズとが重畳され、入力端子部でのコモンモードノイズのピーク電圧が上昇する。
 入力端子部は、実装を容易にするため、シールドすることが困難でむき出しにすることが多いため、ここから電磁放射され易く、電磁障害を引き起こす要因となり得る。そのため、入力端子部でのコモンモードノイズのピーク電圧上昇は好ましくない。
 本発明者はそのような問題を解決するために、コモンモードノイズの通過を阻止するとともに反射コモンモードの発生を抑え、一層小型化の容易なコモンモードフィルタおよびコモンモードフィルタ用インダクタの提供を目的とする。
 そのような課題を解決するために本発明の請求項1に係るコモンモードフィルタは、差動線路中に直列的に配置されたインダクタを含む受動直列素子および当該差動線路間に並列的に配置されたキャパシタを含む受動並列素子からなる梯子型の差動4端子回路を有してなる集中定数差動遅延線であって、その直列素子を形成し同一区間内の差動線路間で対をなすインダクタ間に、差動信号に対しては負結合、コモンモードノイズに対しては正結合となる極性の相互誘導を持たせ、差動信号に対してはそのインダクタのインダクタンスとその相互誘導の相互インダクタンスとの差分を直列素子として機能させ、コモンモードノイズに対してはそれらインダクタンスと相互インダクタンスとの和分を直列素子として機能させるとともに、そのキャパシタが当該キャパシタと等価にして値の等しい2個の直列接続されたキャパシタからなる集中定数差動遅延線と、直列接続された当該キャパシタどうしの接続点とグランド電位との間に接続され、それらのキャパシタとともにコモンモードノイズ減衰用減衰極を形成するコモンモードノイズ減衰用インダクタ、コモンモードノイズ吸収用の抵抗、又はインダクタと抵抗の直列若しくは並列回路と、を具備している。
 しかも、上記集中定数差動遅延線のインダクタは、T型回路を形成する値の等しい4個のインダクタからなり、直列接続された2組の正結合を有するインダクタ間の相互インダクタンスを当該2組どうしで等しくするとともに差動線路間で対をなす2組のインダクタ間の相互インダクタンスを当該2組どうしで等しくし、それら差動線路間で一方の線路の入力側のインダクタと他方の線路の出力側のインダクタによる2組の相互インダクタンスを当該2組どうしで異なる値とする構成である。
 本発明の請求項2に係るコモンモードフィルタは、上記集中定数差動遅延線が、その差動信号に対して特性インピーダンスが整合し、そのコモンモードノイズに対しては特性インピーダンスが不整合となる回路定数を設定された構成となっている。
 本発明の請求項3に係るコモンモードフィルタは、上記集中定数差動遅延線が、誘導m型構成となっている。
 本発明の請求項4に係るコモンモードフィルタは、上記集中定数差動遅延線が、全域通過型構成となっている。
 本発明の請求項5に係るコモンモードフィルタは、上記集中定数差動遅延線と、それらコモンモードノイズ減衰用インダクタ、コモンモードノイズを吸収する抵抗、又はこれらインダクタと抵抗の直列若しくは並列回路とを1区間の差動遅延素子とし、その差動線路にその差動遅延素子が梯子状に複数直列配置され複数区間を構成している。
 本発明の請求項6に係るコモンモードフィルタは、上記差動遅延素子の間に集中定数差動遅延線が梯子状に直列配置されて構成されている。
 本発明の請求項7に係るコモンモードフィルタは、上記キャパシタどうしの複数の接続点間に抵抗が接続されて構成されている。
 本発明の請求項8に係るコモンモードフィルタは、上記集中定数差動遅延線が、誘導m型および全域通過型のそれら差動遅延素子中から異なる2個又は3個を複合して構成されている。
 本発明の請求項9に係るコモンモードフィルタは、上記差動遅延素子における減衰極周波数を異ならせて構成されている。
 本発明の請求項10に係るコモンモードフィルタは、上記差動線路の入出力側の差動遅延素子における減衰極の周波数を、これらの間の差動遅延素子における減衰極の周波数より高く設定して構成されている。
 本発明の請求項11に係るコモンモードフィルタ用インダクタは、上記請求項1~10のいずれか1記載のコモンモードフィルタに用いるインダクタであり、値の等しい4個の平面巻線型インダクタを上下関係で対向配置し、最上部の第1のインダクタおよび最上部から2番目の第2のインダクタの上下関係の距離を第1の距離とし、最上部から3番目の第3のインダクタおよび最上部から4番目の第4のインダクタの上下関係の距離も第1の距離とし、それら第1および第3のインダクタの上下関係の距離を第2の距離とし、それら第2および第4のインダクタの上下関係の距離も第2の距離とし、それら第1および第2のインダクタが正結合となるように直列接続され、それら第3および第4のインダクタも正結合となるように直列接続された構成にするとともに、それら第1および第2のインダクタの立体的な位置関係と第3および第4のインダクタの立体的な位置関係とを等しくし、それら第1および第3のインダクタが差動線路間で対をなし、それら第2および第4のインダクタも差動線路間で対をなすように構成している。
 このような本発明の請求項1に係るコモンモードフィルタでは、差動線路中に直列的に配置されたインダクタを含む受動直列素子および当該差動線路中に並列的に配置されたキャパシタを含む受動並列素子からなる梯子型の集中定数差動遅延線を用い、その受動直列素子を形成し同一区間内の差動線路間で対をなすそれらインダクタ間に、差動信号に対しては負結合、コモンモードノイズに対しては正結合となる極性の相互誘導を持たせ、差動信号に対しては上記インダクタのインダクタンスと上記相互誘導の相互インダクタンスとの差分を直列素子として機能させ、コモンモードノイズに対してはそれらインダクタンスと相互インダクタンスとの和分を直列素子として機能させるとともに、そのキャパシタが、当該キャパシタと等価にして値の等しい2個の直列接続されたキャパシタで形成されるとともに、直列接続されたキャパシタどうしの接続点とグランド電位との間にコモンモードノイズ減衰用インダクタ、コモンモードノイズ吸収用の抵抗、又はインダクタと抵抗の直列若しくは並列回路を接続したから、超高速差動信号を通過させる一方、望ましくないコモンモードノイズの遮断特性を一層向上し、入力端子部におけるコモンモードノイズのピーク電圧を低減し、電磁障害も引き起こし難くするとともに、直列素子として差動的に同位置にあるインダクタ間に相互誘導を持たせるべく接近した配置が可能となり、小型にして高機能のコモンモードフィルタの実現が可能となる。
 しかも、上記集中定数差動遅延線のインダクタは、T型回路を形成する値の等しい4個のインダクタからなり、直列接続された2組の正結合を有するインダクタ間の相互インダクタンスを当該2組どうしで等しくするとともに差動線路間で対をなす2組のインダクタ間の相互インダクタンスを当該2組どうしで等しくし、それら差動線路間で一方の線路の入力側のインダクタと他方の線路の出力側のインダクタによる2組の相互インダクタンスを当該2組どうしで異なる値とするから、それらインダクタ間のバランス化が容易で、1区間に必要な4個のインダクタを互いに極めて接近させて配置するとともに遅延線としての結合係数も容易に適正とすることが可能で、超小型、高性能のコモンモードフィルタを実現できる。
 本発明の請求項2に係るコモンモードフィルタでは、上記集中定数差動遅延線が、差動信号に対して特性インピーダンスを整合させ、コモンモードノイズに対しては特性インピーダンスを不整合となる回路定数に設定されたから、差動信号は整合よく通過させ、コモンモードノイズは不整合で通過を阻害する効果を得ることが可能である。
 本発明の請求項3に係るコモンモードフィルタでは、上記集中定数差動遅延線を誘導m型で構成するから、誘導m型構成において上述した効果を得ることが可能である。
 本発明の請求項4に係るコモンモードフィルタでは、上記集中定数差動遅延線を全域通過型で構成するから、全域通過型構成において上述した効果を得ることが可能である。
 本発明の請求項5に係るコモンモードフィルタでは、上記集中定数差動遅延線と、コモンモードノイズ減衰用インダクタ、コモンモードノイズを吸収する抵抗、又はこれらインダクタと抵抗の直列若しくは並列回路とを1区間の差動遅延素子とし、その差動線路に差動遅延素子を梯子状に複数直列配置し複数区間を構成するから、上述した効果に加えて、種々の特性を得ることが可能である。
 本発明の請求項6に係るコモンモードフィルタは、上記差動遅延素子の間に集中定数差動遅延線が梯子状に直列配置されて構成されているから、上述した効果に加えて、種々の特性を得ることができる。
 本発明の請求項7に係るコモンモードフィルタは、上記キャパシタどうしの複数の接続点間に抵抗が接続されて構成されているから、上記集中定数差動遅延線が2区間以上の区間構成において、上述した効果に加えて、種々の特性を得ることができる。
 本発明の請求項8に係るコモンモードフィルタでは、上記集中定数差動遅延線として、誘導m型および全域通過型の差動遅延素子中から異なる2個又は3個を複合して構成するから、種々の通過型構成において上述した効果を得ることが可能である。
 本発明の請求項9に係るコモンモードフィルタでは、上記差動遅延素子における減衰極周波数を異ならせてなるから、コモンモードノイズの通過特性を所望の特性に形成し易く、さらに入力端子部におけるコモンモードノイズのピーク電圧が周波数成分毎に分散される等、種々の特性を得ることが可能で、確実に電磁障害も引き起こし難い。
 本発明の請求項10に係るコモンモードフィルタでは、上記差動線路の入出力側の差動遅延素子における減衰極の周波数を、これらの間の差動遅延素子における減衰極の周波数より高く設定してなるから、ノイズ減衰用インダクタの値が大きくなるのを抑え、これらの値を揃え易い。
 本発明の請求項11に係るコモンモードフィルタ用インダクタでは、値の等しい4個の平面巻線型インダクタを上下関係で対向配置し、最上部の第1のインダクタおよび最上部から2番目の第2のインダクタの上下関係の距離を第1の距離とし、最上部から3番目の第3のインダクタおよび最上部から4番目の第4のインダクタの上下関係の距離も第1の距離とし、それら第1および第3のインダクタの上下関係の距離を第2の距離とし、それら第2および第4のインダクタの上下関係の距離も第2の距離とし、それら第1および第2のインダクタが正結合となるように直列接続され、それら第3および第4のインダクタも正結合となるように直列接続された構成にするとともに、それら第1および第2のインダクタの立体的な位置関係と第3および第4のインダクタの立体的な位置関係とを等しくし、それら第1および第3のインダクタが差動線路間で対をなし、それら第2および第4のインダクタも差動線路間で対をなすように構成して1区間のインダクタとしたから、上述したコモンモードフィルタ用のインダクタを具体的に実現可能である。
本発明に係る差動遅延線型コモンモードフィルタの第1の構成を示す回路図である。 図1に示す差動遅延線型コモンモードフィルタにおける差動信号に対する等価回路図である。 図1に示す差動遅延線型コモンモードフィルタのコモンモードノイズに対する等価回路図である。 図1に示す差動遅延線型コモンモードフィルタのインダクタを具体化した構成を示す斜視図である。 図4に示す差動遅延線型コモンモードフィルタ用インダクタの結合特性図である。 図4に示すコモンモードフィルタ用のインダクタにおける位置関係を説明する概略側面図である。 本発明に係るコモンモードフィルタの第2の実施の形態を示す回路図である。 図7に示す本発明のコモンモードフィルタの差動信号に対する等価回路図である。 図7に示す本発明のコモンモードフィルタのコモンモードノイズに対する等価回路図である。 図7に示す本発明のコモンモードフィルタの特性図である。 本発明に係るコモンモードフィルタの第3の実施の形態を示す回路図である。 図11に示す本発明のコモンモードフィルタの差動信号に対する等価回路図である。 図11に示す本発明のコモンモードフィルタのコモンモードノイズに対する等価回路図である。 図11に示す本発明のコモンモードフィルタの特性図である。 本発明のコモンモードフィルタに係る他の応用例を説明する図である。 本発明のコモンモードフィルタに係る他の応用例を説明する図である。 従来のコモンモード・チョークコイルの等価回路である。 図17に示す従来のコモンモード・チョークコイルの特性図である。
 以下、本発明に係るコモンモードフィルタおよびコモンモードフィルタ用インダクタの実施の形態を図面を参照して説明する。
 図1は本発明に係るコモンモードフィルタの第1の構成を示すものであり、1区間の回路構成を示す回路図である。
 図1において、差動入力端子1A、1Bと差動出力端子2A、2B間の差動線路1、3には、4個の同じインダクタンスLs/2を有する第1のインダクタ11と第2のインダクタ12、第3のインダクタ13と第4のインダクタ14が配置されており、第1のインダクタ11と第2のインダクタ12とは相互誘導が正の相互インダクタンスm1を持つように直列接続され、一方の差動線路1の直列素子が形成されている。
 第3のインダクタ13と第4のインダクタ14とは、相互誘導が正の相互インダクタンスm1を持つように直列接続され、他方の差動線路3の直列素子が形成されている。
 第1のインダクタ11と第2のインダクタ12との接続点には、同じ値を持つ2つの直列接続された一方のキャパシタCoの一端が並列素子として接続され、第3のインダクタ13と第4のインダクタ14との接続点には他方のキャパシタCoの他端が並列素子として接続されている。
 キャパシタCoどうしの接続点T1とグランド電位との間には、コモンモードノイズ減衰用のインダクタL1が接続されており、1区間の差動遅延線型コモンモードフィルタdlが構成されている。
 さらに、当該一区間内の差動線路間で対をなす第1および第3のインダクタ11、13間、第2および第4のインダクタ12、14間は、同じ相互誘導の相互インダクタンスm2を有する。差動信号に対しては、それぞれのインダクタンスLs/2と相互インダクタンスm2の差分が直列素子として機能し、コモンモード信号に対しては、それぞれのインダクタンスLs/2と相互インダクタm2との和分が直列素子として機能している。
 第2および第3のインダクタ12、13間には相互インダクタンスm3が、第1および第4のインダクタ11、14間には相互インダクタンスm4があり、相互インダクタンスm3と相互インダクタンスm4は異なった値となっている。
 すなわち、直列接続された2組の正結合する第1、第2のインダクタ11、12間および第3、第4のインダクタ13、14間の相互インダクタンスm1を当該2組どうしで等しくするとともに、差動線路1、3間で対をなす2組の第1、第3のインダクタ11、13間および第2、第4のインダクタ12、14間の相互インダクタンスm2を当該2組どうしで等しくする。さらに、それら差動線路1、3間において、入力側の第1、第3のインダクタ11、13と出力側の第2、第4のインダクタ12、14による2組の相互インダクタンスm3、m4が当該2組どうしで異なる構成となっているので、相互インダクタンスm1~m4が見かけ上、アンバランスとなっている。
 ここで、図1の回路構成を解析すると、差動信号に対して等価回路が図2のようになり、コモンモードノイズに対しては図3の等価回路が得られ、図2および図3も完全にバランスすることが分かった。
 以下、図1の回路構成が図2および図3の等価回路となることを説明する。
 一般に、遅延線の群遅延特性は、結合係数kを用いて表現した方が理解し易い。これらの関係を数式で示すと、相互インダクタンスm1の結合係数をk1、相互インダクタンスm2の結合係数をk2、相互インダクタンスm3の結合係数をk3、相互インダクタンスm4の結合係数をk4とすれば、それら結合係数k1~k4が「数1」、「数2」、「数3」および「数4」で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000004
 ここで、4個のインダクタ11、12、13、14の極性を図1のように定め、差動信号に対する直列素子としてのインダクタのインダクタンスをLo/2とすると、このLo/2は、同一区間内で入力側の正相と負相間、又は出力側の正相と負相間に位置するインダクタ間の相互誘導m2との差分となり、「数5」で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000005
 さらに、誘導m型として機能する相互誘導をmdとすると、mdは「数6」で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000006
 他方、コモンモードノイズに対しては、直列素子としてのインダクタンスをLc/2とすると、Lc/2は「数7」で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000007
 また、コモンモードノイズに対して、誘導m型として機能する相互誘導mcは「数8」で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000008
 さらに、回路解析においては、相互誘導mdの場合も、相互誘導mdとインダクタLo/2に対する比、すなわち結合係数を用いることが一般的であり、その結合係数をkdとすれば、kdは「数9」で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000009
 さらに、上述した「数1」~「数4」を「数9」に代入して全てを結合係数の式にまとめると「数10」で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000010
 すなわち、回路解析により得られた以上の数式「数5」~「数10」の結果により、図1に示す第1の構成が、図2および図3の等価回路として表現されることが分かる。
 図1に示したコモンモードフィルタは1区間の構成であったが、コモンモードフィルタに要求される特性に従って複数区間が必要な場合、図1の回路構成を複数段縦続接続することで容易に得られる。
 なお、その場合は、コモンモードノイズ減衰用のインダクタL1の値を変化させて減衰極周波数を調整したり、コモンモードノイズの電力吸収のため、コモンモードノイズ減衰用インダクタL1に対して抵抗等を直列又は並列に接続することも可能である。
 このように、図1の回路構成において、完全にバランスした等価回路が得られることは、コモンモードフィルタを具体的に製品化する場合に非常に有益である。
 なお、上記説明では、図1の構成において、相互誘導m1およびm2はバランスしていることを前提に解析を行った。さらに、相互誘導m1又はm2がアンバランスの場合についても解析したが、この場合、差動信号およびコモンモードノイズ両方に対して等価回路がバランスする構成要素は得られなかった。
 次に、図1の回路構成を具体化するために有用なインダクタを説明する。
 図4は、本発明に係る差動遅延線型コモンモードフィルタのインダクタを具体化した構成を示す透視図である。
 図4において、同じインダクタンスを有する4個の第1のインダクタ11、第2のインダクタ12、第3のインダクタ13および第4のインダクタ14が、上下方向に上側から順に所定の間隔を置いて積層するように配置されている。
 なお、これらの第1~第4のインダクタ11~14は、電子部品として構成する場合、それぞれが絶縁体基板上に導体パターンを設けて形成されるが、絶縁体基板の表示は省略してある。
 第1のインダクタ11は中心の巻き始め11Cから導体が反時計回り方向に巻回され、その終りが差動入力側リード1Aとなっている。第2のインダクタ12は中心の巻き始め12Cから導体が時計回り方向に第1のインダクタ12と同じ巻数で巻回され、その終りが差動出力側リード2Aとなっている。
 第1および第2のインダクタ11、12は、巻回方向が異なっているものの形状的に対称であり、同じインダクタンスを有する。第1および第2のインダクタ11、12は、その巻き始め11C、12Cが平面のXとY方向で一致しており、垂直のZ方向では第1の距離d1だけ離れている。更に、第1および第2のインダクタ11、12の巻き始め11C、12Cは、ビア15で電気的に接続されている。
 第1のインダクタ11と同じ形状および寸法を有する第3のインダクタ13は、中心の巻き始め13Cから導体が反時計回り方向に巻回され、その終りが差動入力側リード1Bとなっている。第2のインダクタ12と同じ形状および寸法を有する第4のインダクタ14は、中心の巻き始め14Cから導体が時計回り方向に巻回され、その終りが差動出力側リード2Bとなっている。
 第3および第4のインダクタ13、14の巻き始め13C、14Cは、平面のXとY方向で一致しており、垂直のZ方向では第1の距離d1だけ離れている。更に、第3および第4のインダクタ13、14の巻き始め13C、14Cは、ビア16で電気的に接続されている。
 すなわち、第3および第4のインダクタ13、14の構成は、第1および第2のインダクタ11、12のそれと全く同じであり、平面のXとY方向も一致しており、第2および第3のインダクタ12、13は、垂直のZ方向の距離が第3の距離d3だけ離れている。
 以上の構成の結果、第1および第3のインダクタ11、13との垂直のZ方向の距離はd2になり、第2および第4のインダクタ12、14との垂直のZ方向の距離もd2になる。
 図4から分かるように、第2の距離d2は「数11」で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000011
 そして、第1および第4のインダクタ11、14との垂直のZ方向の距離が最も大きい第4の距離d4となり、これも図4から分かるように「数12」で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000012
 すなわち、第1の距離d1および第3の距離d3が定まれば、第2の距離d2および第4の距離d4も定まる。換言すれば、第1および第2の距離d1、d2が定まれば、第3および第4の距離d3、d4が定まる。
 さらに、第1~第4のインダクタ11~14において、相互の垂直のZ方向の距離は、第1~第4の距離d1~d4までの4種類の距離が存在する。
 この図4の構成において、第1のインダクタ11の差動入力側リード1Aから電流i1が、第3のインダクタ13の差動入力側リード1Bからは電流i3が流れ込む場合、4個のインダクタ間の相互誘導は全てが正結合となる。第1の距離d1によって第1および第2のインダクタ11、12間に生じる相互誘導をm1とすれば、第3および第4のインダクタ13、14間も第1の距離d1なので、相互誘導m1となる。
 第2の距離d2によって第1および第3のインダクタ11、13間に生じる相互誘導をm2とすれば、第2および第4のインダクタ12、14間も第2の距離d2なので、相互誘導m2となる。
 さらに、第3の距離によって第2および第3のインダクタ12、13間に相互誘導m3が生じ、第1および第4のインダクタ11、14間では第4の距離d4により相互誘導m4が生じる。
 これらの4個の第1~第4のインダクタ11~14とこれらインダクタ間に存在する計6個の相互誘導m1~m4により、図1の1区間の差動遅延線型コモンモードフィルタdlを構成可能である。
 さらに、図4のインダクタによって差動遅延線型コモンモードフィルタdlを構成し、良好な特性が得られる可能性を確認するために、次のような形状寸法のインダクタで電磁界シミュレーションを行った。
 ここでは、インダクタの導体部分の断面が幅10μm、厚み5μm、インダクタの導体間のギャップ間隔10μm、インダクタのX方向とY方向の外形寸法がともに0.15mmで、巻線数3ターンの方形平面形状の第1~第4のインダクタ11~14を想定した。
 図5は、上記寸法形状の第1~第4のインダクタ11~14について、第1の距離d1を10μmで一定とし、第3の距離d3を変化させた場合の、遅延線としての結合係数kdを求めた解析結果である。なお、第1~第4のインダクタ11~14のインダクタンスは、1GHzにおいてそれぞれ1nHである。
 第3の距離d3は10μmから35μmまで変化させたが、第3の距離d3が10μmの場合の結合係数kdは0.27で、第3の距離d3が35μmの場合の結合係数kdは0.52である。
 この値の範囲は、誘導m型の回路構成とした場合に望ましい結合係数kdの0.24付近よりやや大きめであるが、許容できない値ではない。また、全域通過型の回路構成とした場合に、望ましい結合係数kdの0.42付近を充分にカバーしている。
 全域通過型の回路構成とした場合、望ましい結合係数kdが0.42となる第3の距離d3は20μmである。この場合には、第1~第4のインダクタ11~14の4個全体の厚みは0.045mmとなる。
 そのシミュレーションで評価したインダクタによって全域通過型の遅延線型コモンモードフィルタを構成した場合、1区間のインダクタの寸法は0.15mm平方、厚みが0.045mmの極めて小さい体積で得られる。
 さらに、1区間を構成する第1~第4のインダクタ11~14全体の直流抵抗は、導体材料に銅を使用した場合、1.66Ωである。例えば、これらインダクタで4区間の差動遅延線型コモンモードフィルタを構成すると、コモンモードフィルタとしての直流抵抗は6.64Ωとなる。しかし、この値は、本発明が超小型のコモンモードフィルタを構成して、小電力回路での用途を目指し、かつ差動線路の特性インピーダンスを100Ωとした場合、許容できる値である。
 さらに、誘導m型の回路構成に望ましい結合係数kdの0.24付近にすることも容易で、その1つの方法は第1の距離d1を10μmから少し増加させることである。
 その他の方法は、後述する図6に示すように、第2および第4のインダクタ12、14の平面的な位置を第1および第3のインダクタ11、13から移動させることで得られる。
 図6は、第1~第4までのインダクタ11~14を配置した概略側面図であり、上から順に第1のインダクタ11、第2のインダクタ12、第3のインダクタ13、第4のインダクタ14が垂直のZ方向に配置されている。
 第1および第2のインダクタ11、12の距離はd1、第3および第4のインダクタ13、14の距離もd1であり、第2および第3のインダクタ12、13の距離はd3である。
 図6の構成では、上述した「数11」および「数12」から第2および第4の距離d2、d4も定められるし、第2および第4のインダクタ12、14が平面的に移動した位置にあり、平面のXとY方向に距離dx、dyだけ移動している。なお、図6は側面図なので平面のXとY方向の両方は表示されず、省略された図となっている。
 その構成は、上述したシミュレーションの例で第2および第4のインダクタ12、14双方に対し、平面のX方向の移動値dxと、平面のY方向の移動値dyとをともに10μmとした場合であり、第3の距離d3が10μの場合のkdは0.22となった。すなわち、この移動により誘導m型で望ましい結合係数kdは、0.24よりも小さい値となっており、平面のX、Y方向への移動が有効な手段であることが分かる。
 図6の具体例では、平面のXとY方向の両方を移動させたが、必ずしも両方である必要はないし、両方を移動させる場合も両者が同じ値である必要はない。要は、第1および第2のインダクタ11、12との立体的な位置関係が、第3および第4のインダクタ13、14の立体的な位置関係と同じであれば良い。
 さらに、上述した図4において、最上段の第1のインダクタ11の巻終りを差動入力側リード1Aとし、3段目の第3のインダクタ13の巻終りを差動入力側リード1Bとしたが、図4の差動入力側リード1A、1Bと差動出力側リード1A、2Bを入替えることが可能なことは、回路網理論からは当然である。
 すなわち、図4の1区間のインダクタを複数組合わせて複数区間構成とする場合、1区間目の終りが上から2段目の2Aとなるので、2区間目の始めとしては、上から2段目が差動入力側リード1Aである方が接続には極めて有利である。2区間目の終りは再び1段目に戻ってくることになり、複数区間の場合のインダクタ間の接続も容易となり、極めて実用的である。
 さらに、図4では第1および第2のインダクタ11、12、第3および第4のインダクタ13、14の巻線方向が各々異なっているが、これは同じ巻線方向にして、結合が正になるような接続にしても良い。要は、図1の6個の相互誘導と同じ関係が得られれば本発明の効果が実現できる。
 以上、図1に示す本発明の回路構成は、差動線路として見かけはアンバランスである。
 しかし、差動信号とコモンモードノイズの両方に対して、等価回路が完全にバランスする解析結果が得られた。そして、コモンモードフィルタとして具体化する場合に、1区間に必要な4個のインダクタを極めて接近させて配置させることが可能で、極めて超小型に構成できる。しかも、本発明では、遅延線として最も重要な群遅延特性を決定する結合係数kdに対する自由度が高く、誘導m型でも、全域通過型でも容易に実現できる。
 従来から集中定数型遅延線を開発する場合、郡遅延特性は結合係数によって決定されるが、シングルエンドの構成の場合、結合係数の値を最適値に実現する必要のためインダクタを極めて接近させて配置させることは不可能であった。
 この点、コモンモードフィルタとしての差動遅延線では、本発明により1区間の構成に必要な4個のインダクタを極めて接近させることが可能となり、超小型、高性能のコモンモードフィルタを実現可能となった。
 図7は本発明のコモンモードフィルタに係る第2の実施の形態であり、図1に示した1区間分のコモンモードフィルタを4個用い、4区間からなる誘導mT型の梯子型差動4端子網5を構成したものである。
 同様に、差動信号に対する等価回路は、図2に示した1区間分の等価回路を4個用いて図8のようになり、コモンモードノイズに対する等価回路は、図3に示した1区間分の等価回路を4個用いて図9のようになる。
 相互誘導m1~m4に対する結合係数k1~k4、直列素子としてのインダクタンスLdおよびLc、誘導m型として機能する相互誘導mdおよびmc、さらに相互誘導mdに対する結合係数kdは、「数1」~「数10」と同じである。
 図10は、図7の構成における差動信号およびコモンモードノイズに対する特性図であり、kd=0.24、図8における1区間の遅延時間が37.5ps、特性インピーダンスが100Ωとなるように定め、相互誘導m2に対する結合係数k2=0.2、相互誘導m3に対する結合係数k3=0.3、相互誘導m4に対する結合係数k4=0.1とした場合の特性である。
 なお、以上の条件から相互誘導m1に対する結合係数k1を求める数式は「数13」で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000013
 そのため、結合係数k1はk1=0.392となる。
 この場合、図中のfc1~fc4を決める直列共振周波数は、コモンモードノイズ減衰用インダクタL1~L4の各値からmc/2を差し引いた値と2×Coで決定される。
そこで、差動遅延素子dl1~dl4の各共振周波数を以下のように設定する。
fc1は 、(L4-mc/2)と2×Co決まる直列共振周波数で、ここでは2.39GHz
fc2は (L3-mc/2)と2×Coで決まる直列共振周波数で、ここでは2.53GHz
fc3は (L2-mc/2)と2×Coで決まる直列共振周波数で、ここでは2.93GHz
fc4は (L1-mc/2)と2×Coで決まる直列共振周波数で、ここでは4.1GHz
 すると、2.36GHz以上の周波数でコモンモードノイズの減衰は-34dB以上が得られる。
 図11は本発明のコモンモードフィルタに係る第3の実施の形態であり、4区間からなる全域通過型集中定数差動遅延線の構成である。
 図11に係るコモンモードフィルタは、4個の差動遅延素子dl1~dl4からなる。各差動遅延素子dl1~dl4は、受動直列素子を形成するインダクタLsを2等分し、2等分されたインダクタLs/2どうしを直列接続するとともに互いに相互誘導m1で結合させ、2等分されたインダクタLs/2どうしの接続点の間を、上述したキャパシタの直列回路で接続した構成を有している。
 さらに、同一区間内のインダクタLs/2は、入力側の正相と負相間、および出力側の正相と負相間で相互誘導m2にて結合されており、正相出力側と負相入力側間で相互誘導m3、正相入力側と負相出力側間で相互誘導m4にて結合されているうえ、直列接続されたインダクタLs/2の両端をキャパシタCaで橋絡したものである。
 この構成も、図7の構成と同様に、本発明の主旨の1つである小型化を実現するため、各差動遅延素子dl1~dl4の1区間分を形成する4つのインダクタLs/2を互いに接近して配置させ、互いに相互誘導を持たせ、図11のように4種の相互誘導を定めている。
 図11の構成では、図7と比べて橋絡容量Caが追加されている以外は同じなので、インダクタLs/2のインダクタンス、相互誘導および結合係数は上述した「数1」~「数10」および「数13」と同様になる。
 従って、図11の構成は、差動信号に対して図12の回路定数で機能し、コモンモードノイズに対して図13の回路定数で機能する。
 この図11の構成においても、図7の構成と同様に、相互誘導mdの代わりに結合係数kdを用いて、この場合はkd=0.42、図12における1区間の遅延時間が37.5ps、特性インピーダンスは100Ωとなるように定め、さらに、相互誘導m2に対する結合係数k2=0.1、相互誘導m3に対する結合係数k3=0.15、相互誘導m4に対する結合係数k4=0.05としている。
 このような条件下で、相互誘導m1に対する結合係数k1が「数13」によって求められ、k1=0.478となる。
 図11の全域通過型集中定数差動遅延線においては、結合係数kdを誘導m型の場合より大きい値にすることが好ましい。
 さらに、橋絡容量Caが配置されているが、結合係数kdが0.42の場合、橋絡容量CaはキャパシタCoの1/10程度の値が使用される。
 図14は、図11に示すコモンモードフィルタの特性図であり、符号Sdd21は差動信号通過特性、符号Scc21はコモンモードノイズ通過特性である。
 この場合、各共振周波数fc1~fc4を決める直列共振周波数は、コモンモードノイズ減衰用インダクタL1~L4の各値からmc/2を差し引いた値と2×Coで決定される。
 そこで、各共振周波数を以下のように設定すると、2.36GHz以上の周波数でコモンモードノイズの減衰は-32dB以上が得られる。
 fc1は (L4-mc/2)と2×Co決まる直列共振周波数で、ここでは2.39GHz
 fc2は (L3-mc/2)と2×Coで決まる直列共振周波数で、ここでは2.51GHz
 fc3は (L2-mc/2)と2×Coで決まる直列共振周波数で、ここでは2.82GHz
 fc4は (L1-mc/2)と2×Coで決まる直列共振周波数で、ここでは3.66GHz
 なお、より正確には、橋絡容量Caの影響も加味する必要があるが、その影響はごくわずかであり、簡単化のためここでは無視している。
 なお、図示はしないが、全域通過型集中定数遅延線では、差動信号の振幅特性が非常に平坦であり、殆ど振幅変動がなく、また群遅延特性の平坦性にも優れている。
 全域通過型集中定数遅延線では、図14から分かるように、12GHz付近に差動信号通過特性が劣化する点があり、また12.5GHzでコモンモードノイズが通過する点がある。しかし、12GHz付近は、2.5GHzに対しては約5倍の高調波に当たるうえ、パルス信号の波形品位を保つために必要とされる3倍の高調波、すなわち7.5GHzまでの帯域では、良好な差動信号の通過とコモンモードノイズの減衰が得られているので、通常は殆ど問題とならない。もし問題となる場合には、全域通過型集中定数差動遅延線とその他の低域通過型の遅延線を組合わせることも可能である。
 さらに、上述した本発明のコモンモードフィルタは、集中定数差動遅延線として誘導m型又は全域通過型の2種で説明したが、その他の構成でも可能である。
 例えば、誘導m型が梯子型集中定数差動遅延線の直列素子であるインダクタの隣接区間で相互誘導を持つのに対し、例示はしないが、2区間以上離れた区間のインダクタ間に相互誘導を持たせた構成の遅延線も知られており、このような構成においても本発明に係る構成の応用が可能であり、同様の効果を得ることが可能である。
 以上のことから、梯子型の差動4端子回路でその受動直列素子としてインダクタを配置し、その受動並列素子にキャパシタを配置した集中定数差動遅延線を基に構成した本発明のコモンモードフィルタは、超高速差動伝送線路を伝搬する望ましい超高速差動信号を通過させる一方、望ましくないコモンモードノイズを減衰させて通過させない。さらに、反射コモンモードノイズのピーク値を抑圧して、遮断された反射コモンモードノイズの電磁放射強度を低く抑えることが可能である。
 さらに、本発明の実施例は、全て集中定数差動遅延線が複数区間構成の場合で説明した。しかし、コモンモードノイズが特定の周波数にしか存在しない場合もあり得る。その場合、例えば、図6の集中定数差動遅延線として誘導mT型1区間だけの構成とし、1つ存在する減衰極周波数をコモンモードノイズの周波数に一致させればよい。
 また、本発明のコモンモードフィルタにおいては、図15A、Bに示すように、コモンモードノイズ減衰用インダクタL1~L4に対し抵抗R1、R10を直列接続又は並列接続した構成、更には、図16に示すように、接続点T1~T4とグランド間に抵抗R10、R40を接続した構造や、接続点T1~T4間に抵抗R12~R34を接続した構成でも可能であり、このように構成することにより、コモンモード電力をこれらの抵抗で吸収減衰させることが可能である。
 要は、コモンモードノイズ減衰用インダクタ、コモンモードノイズを吸収する抵抗、又はこれらインダクタと抵抗の直列若しくは並列回路を減衰極形成回路として配置すれば良い。
 なお、本発明のコモンモードフィルタにおいて、複数区間を構成する場合、従来の差動遅延線、例えばコモンモードノイズ減衰用インダクタL1~L4を省略したものを一部に用いて直列接続することも可能である。
1 差動線路(正相側)
1A、1B 差動入力端子(入力側)
2A、2B 差動出力端子(出力側)
3 差動線路(負相側)
5 梯子型差動4端子網
Co、Co/2、Ca キャパシタ
dl 集中定数差動遅延線
dl1、dl2、dl3、dl4 差動遅延素子(差動4端子回路)
Lo、Lo/2 インダクタ
Ls/2 インダクタのインダクタンス
L1、L2、L3、L4 コモンモードノイズ減衰用インダクタ
R1、R10、R12、R23、R34 抵抗
m1、m2、m3、m4 相互誘導
T1、T2、T3、T4 接続点

Claims (11)

  1. 差動線路中に直列的に配置されたインダクタを含む受動直列素子および前記差動線路間に並列的に配置されたキャパシタを含む受動並列素子からなる梯子型の差動4端子回路を有してなる集中定数差動遅延線であって、前記直列素子を形成し同一区間内の差動線路間で対をなす前記インダクタ間に、差動信号に対しては負結合、コモンモードノイズに対しては正結合となる極性の相互誘導を持たせ、差動信号に対しては前記インダクタのインダクタンスと該相互誘導の相互インダクタンスとの差分を前記直列素子として機能させ、コモンモードノイズに対しては前記インダクタンスと前記相互インダクタンスの和分を前記直列素子として機能させるとともに、前記キャパシタが当該キャパシタと等価にして値の等しい2個の直列接続されたキャパシタからなる集中定数差動遅延線と、
     直列接続された前記キャパシタどうしの接続点とグランド電位との間に接続され、前記キャパシタとともにコモンモードノイズ減衰用減衰極を形成するコモンモードノイズ減衰用インダクタ、コモンモードノイズを吸収する抵抗、又はこれらインダクタと抵抗の直列若しくは並列回路と、
     を具備するコモンモードフィルタであり、
     前記集中定数差動遅延線のインダクタは、T型回路を形成する値の等しい4個のインダクタからなり、直列接続された2組の正結合を有する前記インダクタ間の相互インダクタンスを当該2組どうしで等しくするとともに前記差動線路間で対をなす2組の前記インダクタ間の相互インダクタンスを当該2組どうしで等しくし、前記差動線路間で一方の線路の入力側のインダクタと他方の線路の出力側のインダクタによる2組の相互インダクタンスを当該2組どうしで異なる値とすることを特徴とするコモンモードフィルタ。
  2.  前記集中定数差動遅延線は、前記差動信号に対して特性インピーダンスを整合させ、前記コモンモードノイズに対して特性インピーダンスを不整合とする回路定数が設定された請求項1記載のコモンモードフィルタ。
  3.  前記集中定数差動遅延線は、誘導m型構成である請求項1又は2記載のコモンモードフィルタ。
  4.  前記集中定数差動遅延線は、全域通過型構成である請求項1又は2記載のコモンモードフィルタ。
  5.  前記集中定数差動遅延線と、前記コモンモードノイズ減衰用インダクタ、コモンモードノイズを吸収する抵抗、又はこれらインダクタと抵抗の直列若しくは並列回路とを1区間の差動遅延素子とし、前記差動線路に前記差動遅延素子が梯子型に複数直列配置され複数区間が構成された請求項1~4いずれか1記載のコモンモードフィルタ。
  6.  前記差動遅延素子の間に前記集中定数差動遅延線が梯子状に直列配置されて構成された請求項5記載のコモンモードフィルタ。
  7.  前記集中定数差動遅延線における前記キャパシタどうしの複数の接続点間に抵抗が接続された請求項5又は6いずれか1記載のコモンモードフィルタ。
  8.  前記集中定数差動遅延線は、誘導m型および全域通過型の差動遅延素子中から異なる2個又は3個を複合した構成である請求項5~7いずれか1記載のコモンモードフィルタ。
  9.  前記差動遅延素子における前記減衰極の周波数を異ならせてなる請求項5~8いずれか1記載のコモンモードフィルタ。
  10. 前記差動線路の入出力側の前記差動遅延素子における前記減衰極の周波数を、これらの間の前記差動遅延素子における前記減衰極の周波数より高く設定してなる請求項9記載のコモンモードフィルタ。
  11.  前記請求項1~10のいずれか1記載のコモンモードフィルタに用いるインダクタであり、値の等しい4個の平面巻線型インダクタを上下関係で対向配置し、最上部の第1のインダクタおよび最上部から2番目の第2のインダクタの上下関係の距離を第1の距離とし、最上部から3番目の第3のインダクタおよび最上部から4番目の第4のインダクタの上下関係の距離も前記第1の距離とし、前記第1および第3のインダクタの上下関係の距離を第2の距離とし、前記第2および第4のインダクタの上下関係の距離も前記第2の距離とし、前記第1および第2のインダクタが正結合となるように直列接続され、前記第3および第4のインダクタも正結合となるように直列接続された構成にするとともに、前記第1および第2のインダクタの立体的な位置関係と前記第3および第4のインダクタの立体的な位置関係とを等しくし、前記第1および第3のインダクタが差動線路間で対をなし、前記第2および第4のインダクタも差動線路間で対をなすように構成して1区間のインダクタとするコモンモードフィルタ用インダクタ。
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