WO2010110136A1 - 開瞼器およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

 バネ性を持つよう射出成形により湾曲形状に形成された熱可塑性樹脂からなる1本のアームと、前記アームの両端にそれぞれ結合されて上瞼と下瞼にそれぞれ引っ掛ける2つの瞼押え部とを有し、前記アームのバネ反発力によって開瞼状態を保つようにした開瞼器であって、前記瞼押え部同士を接近させる方向に荷重を加える際に発生する引張応力が最大となる部分以外の部分に、前記アームの樹脂注入部が設けられたものである。

Description

開瞼器およびその製造方法
 本発明は、眼科手術の際、あるいは、眼内への薬剤投与の際などに、上下の瞼を開くために使用される開瞼器およびその製造方法に関する。
 白内障手術、網膜硝子体手術、緑内障手術などの内眼手術や翼状片切除などの外眼手術を行う場合、角結膜およびその周囲を消毒、ドレープを掛けた後、開瞼器を使って開瞼した状態で処置を行う。また近年、先進諸国では、中途失明原因のトップである加齢黄斑変性症の治療法として血管新生阻害剤の硝子体内局所投与が有効とされ、これら薬剤の認可に伴い硝子体注射が爆発的に増えている。この血管新生阻害剤の硝子体注射は毎月~隔月の頻度で実施されるが、この際にも、その都度、開瞼器を用いて開瞼し、点眼麻酔が効いた後に注射処置を行う。このように、最近では開瞼器の使用が非常に増えている。
 従来の開瞼器は金属製のものが主流であり、その例として、図14に示すようなものが知られている(特許文献1参照)。
 図14に示す開瞼器60は、バネ性を持つ金属線材をU字状に湾曲させて形成したアーム64の両端に、上瞼と下瞼にそれぞれ引っ掛ける2つの湾曲プレートよりなる瞼押え部62をろう付け等により接合したもので、アーム64のバネ反発力によって開瞼状態を保つものである。
 各瞼押え部62は、瞼の内側に差し込まれる内側挿入片62aと瞼の外側を押える外側押え片62bとを持つ断面U字状に形成されており、患者自身の閉瞼力に負けないよう、アーム64には高い曲げ弾性率を有する線材が使用されている。
 これらの開瞼器は、アーム64の両端に設けた瞼押え部62を眼の上瞼と下瞼に引っ掛けることにより、アーム64のバネ反発力によって上瞼と下瞼を開くことができる。
 しかしながら、上述したように、最近では開瞼器が使われる場面が非常に増えてきたにもかかわらず、金属製の開瞼器だとコストが嵩むため使い捨てにすることができず、滅菌処理して何回も使わざるを得なかった。
 また、金属製の開瞼器の場合、アームの曲げ弾性率がどうしても大きくなりやすい上に、瞼に直接当たる部分が硬い材質であった。そのため、大きく開瞼できない患者の場合、バネ力が強過ぎるために痛みを覚えやすく、また、硝子体圧上昇などのトラブルを誘発することもあった。
 そこで、本発明者は、使い捨てを可能として滅菌の面倒を無くす一方、ばね作用を発揮するアームを持つタイプでありながら、しなやかな弾力性と柔らかな接触感を発揮する開瞼器を発明するに至った(特許文献2参照)。
実用新案登録第3102573号公報 特願2008-293179号
 ところで、樹脂からなる構造物においては一般には以下のような考慮事項がある。
 一つは、樹脂構造物の強度についてである。
 通常、樹脂成形方法には、ブロック状の樹脂材から構造物を削り出す方法、樹脂製型もしくは金型中で重合硬化する方法、または熱可塑性樹脂を用いた射出成形による方法がある。
 この中の熱可塑性樹脂を用いた射出成形法は、均一な製品を大量に製造するためには特に適した方法である。具体的には、この射出成形法では、射出成形機に取り付けた成形用金型内に高温で流動性をもった樹脂を注入して冷却する。次に、金型内からゲート部(以降、樹脂注入部ともいう)、ランナー及びスプールが付いた状態の成形品である樹脂構造物を取り出す。そして、前記ゲート部が切断除去される。
 通常、型中への樹脂の入り口であるゲート部は、成形品を成形する上で作業の邪魔にならない位置であって、樹脂が成形品全体に均等に充填されやすい位置に設計される。図15に示すように、線対称なU字型湾曲形状のアーム64を有する開瞼器60に例えると、前記ゲート部65はU字型湾曲形状の湾曲外側、特に線対称部分における湾曲外側に設計される。
 術者が前記開瞼器60を患者の目に装着する際、前記開瞼器60を指で強くつまんで上下瞼押え部62同士を接近させる方向に荷重を加えると、一旦、瞼押え部62間の距離が狭められ、U字型湾曲形状の湾曲内側には圧縮応力が働き、湾曲外側には引張応力が働く。この引張応力を過度に加えるとアームが破損するおそれがある。さらには、術者が開瞼器60を指でつまむ際、アームが破損しないか気にすることにより、術者に過度のストレスを与えるおそれがある。
 もう一つの考慮事項は、樹脂構造物の機能についてである。
 開瞼器に例えると、閉瞼力に負けない開瞼力を持つような反発弾性を持たせるために、アーム64の太さを金属製に比べて太くする必要がある。開瞼器60が金属製であれば直径1mm前後で達成できるのに対し、開瞼器に開瞼力を持たせようとしてアームの直径が直径3mmを超えるようにすると、手術器具がぶつかるなど手術の妨げになると共に、術野への圧迫感の原因となり好ましくない。
 本発明の目的は、適度な開瞼力を有しつつ、術者に与えるストレスを軽減し、上下瞼を開くという必要な機能を十分に果たすことができる開瞼器およびその製造方法を提供することにある。
 本発明の第一の態様は、バネ性を持つよう射出成形により湾曲形状に形成された熱可塑性樹脂からなる1本のアームと、前記アームの両端にそれぞれ結合されて上瞼と下瞼にそれぞれ引っ掛ける2つの瞼押え部とを有し、前記アームのバネ反発力によって開瞼状態を保つようにした開瞼器であって、前記アームに対し、前記瞼押え部同士を接近させる方向に曲げ荷重を加えたとき、前記アームの中立面を境界とし、前記湾曲形状の湾曲外側であって引張応力が発生する側をアーム外側とし、湾曲形状の湾曲内側であって圧縮応力が発生する側をアーム内側としたとき、前記瞼押え部同士を接近させる方向に荷重を加える際に発生する引張応力が最大となる部分以外の部分に、前記アームの樹脂注入部が設けられたものであることを特徴とする。但し、前記中立面とは、前記アームに曲げモーメントが働いたときに、前記アームの長手方向に垂直な面を切断面とする断面において前記曲げモーメントによって引張応力が働く領域と圧縮応力が働く領域とが生ずるが、これら引張応力が働く領域と圧縮応力が働く領域との境界面であって引張応力も圧縮応力も働かない面をいう。
 本発明の第二の態様は、第一の態様に記載の発明において、前記アーム外側において中立面から最も離れた部分であるアーム最外側以外の部分に、前記アームの射出成形の際の樹脂注入部が設けられたものであることを特徴とする。
 本発明の第三の態様は、第二の態様に記載の発明において、前記アーム内側に、前記アームの射出成形の際の樹脂注入部が設けられたものであることを特徴とする。
 本発明の第四の態様は、第三の態様に記載の発明において、前記アーム内側において前記中立面から最も離れた部分であるアーム最内側に、前記アームの射出成形の際の樹脂注入部が設けられたものであることを特徴とする。
 本発明の第五の態様は、第一ないし第四の態様のいずれかに記載の発明において、前記アームはU字状に湾曲形成されていることを特徴とする。
 本発明の第六の態様は、第五の態様に記載の発明において、前記アームの長手方向に対して垂直な面で切断した断面であるアーム断面の形状が略円形状であることを特徴とする。
 本発明の第七の態様は、第六の態様に記載の発明において、前記アーム断面において、略円形状中心から前記アーム最外側に向かう方向をx軸、略円形状中心を通過しx軸に対する垂直方向をy軸とし、このx-y座標系において前記アームに対する接線をy=ax+b(但し、a,bは定数)の関数で表したとき、前記アーム外側において前記アームに対する接線の傾きaの絶対値が1を超えていない部分、または前記アーム内側に、前記樹脂注入部が設けられることを特徴とする。
 本発明の第八の態様は、第六の態様に記載の発明において、前記アームは線対称形状に湾曲形成され、前記アームの対称中心部におけるアーム最内側に、前記樹脂注入部が設けられることを特徴とする。但し、前記アーム最内側とは、前記アーム内側において前記中立面から最も離れた部分をいう。
 本発明の第九の態様は、第一ないし第八の態様のいずれかに記載の発明において、前記瞼押え部同士を接近させる方向に荷重を加えた際に発生する前記バネ反発力を調整する開瞼力調整部が、前記アーム内側に設けられたことを特徴とする。
 本発明の第十の態様は、第九の態様に記載の発明において、前記開瞼力調整部によって前記アームが架け渡されたことを特徴とする。
 本発明の第十一の態様は、第九の態様に記載の発明において、前記開瞼力調整部は、前記アーム外側に発生する引張応力が最大となる部分から前記アーム内側に向かう方向に設けられる折れ抑制領域でもあることを特徴とする。
 本発明の第十二の態様は、第十一の態様に記載の発明において、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状が略円形状であり、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状において、前記アーム外側に発生する引張応力が最大となる点を含む前記アーム断面形状のアーム最外側からアーム最内側までの距離を、前記アームにかけて最大とすることを特徴とする。但し、前記アーム最外側とは、前記アーム外側において前記中立面から最も離れた部分をいい、前記アーム最内側とは、前記アーム内側において前記中立面から最も離れた部分をいう。
 本発明の第十三の態様は、第十一の態様に記載の発明において、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状が略円形状であり、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状において、前記アーム外側に発生する引張応力が最大となる点を含む前記アーム断面形状の断面積を、前記アームにかけて最大とすることを特徴とする。
 本発明の第十四の態様は、第十二の態様に記載の発明において、前記アームはU字状かつ線対称形状に湾曲形成され、対称中心部を中心として前記アームの長手方向に少なくとも4mmの範囲の部分のアームにおける、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面の断面積が、それ以外の部分の断面積よりも大きいことを特徴とする。
 本発明の第十五の態様は、第十三の態様に記載の発明において、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面の断面積において、アームの断面積が前記アーム両端部から徐々に大きく形成されることを特徴とする。
 本発明の第十六の態様は、バネ性を持つよう射出成形により湾曲形状に形成された熱可塑性樹脂からなる1本のアームと、前記アームの両端にそれぞれ結合されて上瞼と下瞼にそれぞれ引っ掛ける2つの瞼押え部とを有し、前記アームのバネ反発力によって開瞼状態を保つようにした開瞼器であって、少なくとも前記アームは射出成形法で成形するようにするとともに、前記射出成形は、前記瞼押え部同士を接近させる方向に荷重を加える際に発生する引張応力が最大となる部分以外の部分に、前記アームの樹脂注入部を設けて行うようにしたことを特徴とする開瞼器の製造方法である。
 本発明の第十七の態様は、第十六の態様に記載の発明において、前記射出成形は、前記アームの樹脂注入部をアーム内側に設けて行うようにしたことを特徴とする。但し、前記アーム内側とは、前記アームに対し、前記瞼押え部同士を接近させる方向に曲げ荷重を加えたとき、前記アームの中立面を境界とし、前記湾曲形状の湾曲内側であって圧縮応力が発生する側のことをいう。また、前記中立面とは、前記アームに曲げモーメントが働いたときに、前記アームの長手方向に垂直な面を切断面とする断面において前記曲げモーメントによって引張力が働く領域と圧縮応力が働く領域とが生ずるが、これら引張力が働く領域と圧縮応力が働く領域との境界面であって引張力も圧縮応力も働かない面をいう。
 本発明の第十八の態様は、第十六または第十七の態様に記載の発明において、前記射出成形は、U字状かつ線対称形状に湾曲形成され、対称中心部を中心としてアームの長手方向に少なくとも4mmの範囲の部分のアームにおける、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面の断面積が、それ以外の部分の断面積よりも大きいアームを形成するようにし、前記アームの対称中心部におけるアーム最内側に、前記樹脂注入部を設けて行うようにしたことを特徴とする。但し、前記アーム最内側とは、前記アーム内側において前記中立面から最も離れた部分をいう。
 本発明の第十九の態様は、第十六ないし第十八の態様のいずれかに記載の発明において、前記アームと瞼押え部との全体を熱可塑性樹脂の射出成形法で一体に成形することを特徴とする。
 本発明によれば、適度な開瞼力を有しつつ、術者に与えるストレスを軽減し、上下瞼を開くという必要な機能を十分に果たす開瞼器およびその製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態の開瞼器の構成を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は正面図、(e)は(d)のIe部の拡大図であり、(f)はA-A’のアーム断面図である。 同開瞼器の使用状態を示す図である。 本実施形態に係る開瞼器の一例を示す平面図である。 開瞼器の製造工程を説明する概略図であり、(a)は金型の平面図、(b)は金型から樹脂成型物を抜き取ったときの平面図、(c)は樹脂成型物のゲート部を切除した後の平面図である。 開瞼器の使用による折れの発生についての説明図であり、(a)は荷重と中立面を概略的に示した開瞼器の平面図、(b)はアームに働く引張応力および圧縮応力を概略的に示すBの部分の拡大平面図、(c)はアームが折れたときの開瞼器の平面図である。 本実施形態に係る開瞼器の一例を示す断面図である。 本実施形態に係る開瞼器の製造工程を説明する概略図であり、(a)は金型の平面図、(b)は金型から樹脂成型物を抜き取ったときの平面図、(c)は樹脂成型物のゲート部を切除した後の平面図、(d)は引張応力が働く際のBの部分の拡大平面図である。 本実施形態を組み合わせた開瞼器の構成を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は正面図、(e)は(d)のIe部の拡大図である。 本実施形態を組み合わせた開瞼器の構成を示し、(f)は従来の開瞼器の製造工程において、樹脂成型物のゲート部を切除する様子を示す概略平面説明図、(g)は本実施形態に係る開瞼器の製造工程において、樹脂成型物のゲート部を切除する様子を示す概略平面説明図である。 本実施形態に係る開瞼器の瞼押え部同士を接近させる方向に荷重を加えた際の瞼押え部の変位の様子を示す概略平面説明図であり、(a)はアームにおける変形しやすい領域が大きい場合の概略平面説明図、(b)は変形しやすい領域が小さい場合の概略平面説明図である。 本実施形態に係る開瞼力調整部の変形例を示す概略平面説明図である。 本実施形態に係る開瞼力調整部の変形例を示す概略平面説明図である。 本発明の別の実施形態の開瞼器の構成を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は正面図、(e)は(d)のIe部の拡大図である。 本発明の別の実施形態の開瞼器の一例を示す平面図である。 本発明の別の実施形態の開瞼器の一例を示す図であり、(e)はアームの断面図であり、(f)と(g)は開瞼器の一例を示す平面図である。 従来の開瞼器を示す図である。 樹脂注入部がアーム最外側に設けられた開瞼器であり、(a)は平面図、(b)はA-A’の断面図である。 樹脂注入部がアーム最外側に設けられる開瞼器の製造工程を説明する概略図であり、(a)は金型の平面図、(b)はアームのゲート部付近を拡大した説明平面図、(c)はアームの折れが発生する様子を示す説明平面図である。 実施例においてアームに荷重を加えたときの様子を示す説明図である。 本実施例および比較例における圧縮荷重と圧縮変位との関係を示す図である。 本実施形態に係る開瞼器、ランナーおよびスプールを示す概略説明図である。
(実施の形態1)
 以下、本発明に係る一実施形態を、図面を参照して説明する。
 図1は実施形態の開瞼器10の構成を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は正面図、(e)は(d)のIe部の拡大図、(f)はA-A’のアーム断面図である。また、図2はその使用状態を示す図である。
 図1及び図2に示すように、この開瞼器10は、バネ性を持つよう射出成形により湾曲形成された熱可塑性樹脂からなる1本のワイヤー状のアーム14と、そのアーム14の両端14aにそれぞれ結合されて眼101の上瞼102と下瞼103にそれぞれ引っ掛ける2つの瞼押え部12とを有する。
 この開瞼器10は、少なくともアーム14は熱可塑性樹脂の成形品として構成されており、アーム14のバネ反発力によって開瞼状態を保つものである。
 ここで、前記開瞼器10の各部構成について説明する。
 まず、前記開瞼器10に設けられた上下の瞼押え部12は、樹脂や金属などにより形成されるが、本実施形態では樹脂からなる場合を挙げる。 
 前記上下の瞼押え部12は、瞼の内側に差し込まれる内側挿入片12aと、瞼の外側を押える外側押え片12bとを持つ断面U字状の湾曲プレートにより構成されている。
 なお、このとき、内側挿入片12aの瞼の縁に沿う方向の長さLaよりも、外側押え片12bの瞼の縁に沿う方向の長さLbの方が大きく設定されていてもよい。
 また、図1(e)に示すように、瞼押え部12を構成する湾曲プレートの厚みが、内側挿入片12aと外側押え片12bのつながるU字状の湾曲部から両先端部に向けて徐々に薄くなるように変化している。つまり、同図における寸法t1よりも寸法t2、t3の方が小さくなっている(t1>t2=t3)。この場合、例えば、t1=約0.6mm、t2=t3=約0.4mmになっている。t1の寸法の許容幅は、例えば、0.5~0.7mmの範囲であることが好ましく、t2およびt3の寸法の許容幅は、例えば0.3~0.5mmの範囲であることが好ましい。あまり、最小厚み部分を薄くすると割れやすくなるので、最低でも割れが起きにくい厚みを確保しておく必要がある。
 なお、瞼押え部12を構成する湾曲プレートの厚みの変化は、連続的に設けてあるのが好ましいが、段階的に設けてあってもよい。
 また、断面U字状の上下の瞼押え部12は、アーム14のある側と反対側に若干の角度θ(約20°)だけ開き気味に形成されている。また、断面U字状の上下の瞼押え部12の背中部分(U字の底に相当する部分)は半径Rの曲率で凹状に湾曲している。
 このように、各瞼押え部12を、瞼102,103の内側に差し込まれる内側挿入片12aと、瞼102,103の外側を押える外側押え片12bとを持つ断面U字状の湾曲プレートで構成し、湾曲プレートの厚みを、内側挿入片12aと外側押え片12bのつながるU字状の湾曲部よりも、少なくとも内側挿入片12a側の先端部が薄くなるように変化させているので、樹脂でできている瞼押え部12の強度を保ちながら、瞼の内側に内側挿入片12aを差し込む際の患者の負担感を減らすことができる。
 例えば、従来の金属製の開瞼器においては、瞼押え部を金属板で形成する場合も線材で形成する場合も、瞼押え部の厚みを変化させることなどは非常に困難であり行われていなかったが、本実施形態のような樹脂製の開瞼器10の場合は、成形の際に金型に厚み変化に応じた寸法設定を加えておくだけで、簡単に瞼押え部12を構成する湾曲プレートに、厚みの変化を自由に与えることができる。従って、少なくとも内側挿入片12aの先端部の厚みを薄くすることによって、瞼の内側に内側挿入片12aを差し込む際の患者の負担感を減らすことができるようになる。また、内側挿入片12aの先端部の厚みを薄くするものの、その根元側であるU字状の湾曲部の厚みを厚く設定しているので、内側挿入片12aと外側押え片12bのつなぎ部分の強度を十分大きく保つことができ、割れや破損に対する耐久性を持たせることができる。
 また、内側挿入片12aよりも外側押え片12bの瞼の縁に沿う方向の長さを大きく設定しているので、内側挿入片12aを瞼102,103の裏側にスムーズに差し込むことができると同時に、図2に示すように、サイズの大きい外側押え片12bによって、上下の瞼102,103の多くの睫毛105やその根元を覆い隠すことができる。
 例えば、血管新生阻害剤の硝子体注射を行う場合は、滅菌済みの開瞼器を、ドレープを掛けていない眼101に直接装着することになるが、この開瞼器10では、外側押え片12bのサイズを大きめに設定してあることにより、図2に示すように、細菌や汚れで汚染されている可能性のある多くの睫毛105やその根元を従来よりも広い範囲で覆い隠すことができ、それにより、睫毛105に触れた注射針が眼内に挿入されることで眼内炎を発症する危険性を少なくすることができる。また、外側押え片12bのサイズが大きくなっていることにより、上下瞼102,103を広い面で押えることができるので、患者が痛みを訴えることが少なくなると共に、硝子体圧上昇などを誘発しにくくなる。
 特に、外側押え片12bの長さを16mm以上とし、内側挿入片12aの長さを15mm以下としているので、瞼102,103の裏側に内側挿入片12aを差し込む際の患者への負担感を減らしながら、瞼102,103の表側での睫毛105の押え付けにより安全な処置を行うことが可能となる。
 また、図1(d)に示すように、内側押さえ片12aの瞼の内側に挿入する方向の寸法Waを、外側押さえ片12bの同方向の寸法Wbよりも小さく設定することにより、患者への負担をさらに軽減することができる共に、着脱時の操作性を向上させることもできる。
 次に、前記瞼押え部12同士を連結するアーム14について詳述する。
 図3に示すように、アーム14はバネ性を持つようU字状に湾曲形成されていることが好ましい(図3(a))。さらには、前記アーム14は、前記2つの瞼押え12によって上下瞼を均等に押さえられるよう、前記2つの瞼押え部12の間を通る軸を対称軸とする線対称形状とされていることが好ましい(図3(b))。
 なお、アーム14の形状はバネ性を持つように湾曲形成されていればよく、アーム全体としてはU字状でありながらも、U字の底部を一部変形させることにより略W字状に湾曲形成されても構わないし(図3(c))、同じくU字状でありながらも、U字の底部を一部変形させることによりアーム14の少なくとも一方の先端付近を指で摘みやすい形に湾曲させた形状であっても構わない(図3(d))。
 なお、本実施形態におけるアーム14の湾曲形状はバネ反発力を有する湾曲形状であればよく、アーム14の外側湾曲または内側湾曲が、湾曲形状のかわりに直線形状であってもよい。さらには、アーム14が開瞼器としてバネ反発力を有していれば、アーム14の外側湾曲および内側湾曲の少なくとも一部が、湾曲形状のかわりに直線形状であってもよい。
 さらに、図1(b)のA-A’断面である図1(f)に示すように、アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状は、円形状、楕円形状、またはこれらの一部変形形状のような略円形状であってもよいし、多角形形状や矩形形状であってもよいが、術者にとってのアーム14の摘みやすさや折れにくさなどから、略円形状であることが好ましい。
 また、アーム14は熱可塑性樹脂からなり、例えばポリメチルメタクリレート(以降、PMMAともいう)からなる。他の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリサルホン、ポリフェニルサルホン、ポリエーテルポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニルサルホンなどを使用することも可能である。
 このとき、前記アーム14と前記瞼押え部12とが、樹脂の一体成形品として構成されるのが好ましい。全体を熱可塑性樹脂の一体成形で構成しているので、容易に低コストで大量生産することができる。従って、使い捨ての使用が可能となり、滅菌処理を不要として、大量の使用要求に応えることができるためである。
 さらに、アーム14と前記瞼押え部12とが、樹脂の一体成形品として構成される場合には、開瞼器10を使い捨てタイプとして使用することにより、樹脂の繰り返し疲労による破損の可能性を無くすことができるので、安全性を高めることができる。また、瞼102,103に直接触れる部分(瞼押え部12)が金属よりも硬度の低い樹脂でできていることにより、患者に対して柔らかな接触感を与えることができ、患者の負担感を減らせる。
 なお、開瞼器10を使い捨てタイプとして使用する場合には、コスト的な面からも、医療用具としての実績からも、射出成形が可能なPMMAを使用するのが最適である。
 次に、本実施形態における開瞼器10の製造方法について説明する。
 なお、この製造方法においてはアーム14と前記瞼押え部12とが、樹脂の一体成形品として構成される場合について記載するが、アーム14と瞼押え部12とが別体成形品として構成されてもよい。
 本実施形態における射出成形では、図4に示すように、射出成形機(図示せず)に取り付けた開瞼器成形用金型16(以降、金型16ともいう)内に高温で流動性をもった熱可塑性樹脂を注入する。金型16には、樹脂を注入する部分すなわち金型樹脂注入部17が設けられており、金型16のこの部分から熱可塑性樹脂を注入し、その後冷却する(図4(a))。
 次に、前記金型16から、成形品である仕上げ前開瞼器10aを取り出す。この際、前記仕上げ前開瞼器10aには、金型樹脂注入部17の型と同じ形状の樹脂注入部15(以降、ゲート部ともいう)が設けられている(図4(b))。この仕上げ前開瞼器10aのゲート部15を、熱したニッパにより切断除去して、開瞼器10を作製する(図4(c))。 
 このようにして得られる開瞼器10の作用について説明する。
 術者が開瞼器10を患者の目に装着する際、前記開瞼器10を指で強くつまんで瞼押え部12同士を接近させる方向に荷重を加える。それにより瞼押え部12間の距離を狭めた後、患者の目に開瞼器10を装着する。装着後に開瞼器10から指を放すと、アーム14自身の弾性によるバネ反発力により、患者の目に開瞼器10が固定される。
 図5に示すように、開瞼器10を指で強くつまんで瞼押え部12同士を接近させる方向に荷重を加える間、アーム14においては圧縮応力と引張応力とが発生する。ここで、前記荷重を印加することによって前記アーム14に曲げモーメントが働いたときに、前記アーム14の長手方向に垂直な面を切断面とする断面において、前記曲げモーメントによって引張応力が働く領域と圧縮応力が働く領域とが生ずる。この場合、これら引張応力が働く領域と圧縮応力が働く領域との境界面であって引張応力も圧縮応力も働かない面があり、その面を中立面18という。そして、この中立面18を境界としたとき、アーム14の湾曲形状の湾曲外側であって引張応力が発生する側をアーム外側141とし、アーム14の湾曲形状の湾曲内側であって圧縮応力が発生する側をアーム内側142とする(図5(a))。すなわち、アーム外側141には引張応力が働き、アーム内側142には圧縮応力が働く(図5(b))。特に、アーム14が線対称形状に形成されている場合は、アーム14の線対称中心部分におけるアーム外側141に引張応力が集中する。
 上述のように、前記瞼押え部12同士を接近させる方向に荷重を加える際、アーム外側141に引張応力が働く。その引張応力がアーム強度を超えると、引張応力が働く部分の中でも特に引張応力が強く働く部分が折れ起端部19となり、アーム14が折れることになる(図5(c))。
 この折れ起端部19となるおそれがある部分は、引張応力が働く部分全般すなわちアーム外側141部分であるが、具体的に折れ起端部19となりやすいのは、アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状のアーム外側141において中立面18から最も離れた部分、すなわちアーム最外側部分である。アーム14の他の部分に比べて引張応力が強く働くためである。なお、開瞼器10がU字状かつ線対称形状である場合に折れ起端部19となりやすいのは、図5(c)に示されているように、対称中心部におけるアーム外側141である。アーム14において引張応力が非常に強く働くためである。
 また、上述の部分に比べると折れ起端部19とはなりにくいが、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状が略円形状である場合、前記アーム断面形状を描いた図6に示すように、前記アーム断面において、略円形状中心から前記アーム最外側141aに向かう方向をx軸、略円形状中心を通過しx軸に対する垂直方向をy軸とし、このx-y座標系において前記アーム14に対する接線をy=ax+b(但し、a,bは定数)の関数で表したとき、前記アーム外側141において前記アーム14に対する接線の傾きaの絶対値が1を超えている部分も折れ起端部19(アーム外側における破線矢印で示す領域)となりうる。この部分は他の部分に比べて比較的アーム最外側141aに配置されており、引張応力の影響を受けやすいためである。
 なお、以降においてはアーム断面においてx軸における距離を「厚さ」、アーム断面の断面積を「太さ」とも言う。
 なお、前記中立面18は前記アーム14の厚さの中間部に位置する傾向があり、アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状が略円形状である場合はその傾向が強くなり、正円形状または正楕円形状である場合はさらにその傾向が強くなる。
 このようなアーム14の強度についての考慮事項に対して、本発明者は、前記瞼押え部12同士を接近させる方向に荷重を加える際に発生する引張応力が最大となる部分以外の部分に、前記アーム14のゲート部15を設けることにより、開瞼器10の破損のおそれを低減させることを見出した。
 なお、開瞼器10の破損に係る具体的な機構については、推測ではあるが以下の機構が考えられる。
 先にも述べたように、開瞼器10を製造する際には、射出成形することにより樹脂を金型16内に注入することになるが、開瞼器10のゲート部15においてはその際に樹脂の中の高分子鎖20が注入方向に配向することになる。
 図16に示すように、開瞼器がU字状かつ線対称形状であって対称中心部におけるアーム最外側にゲート部65が設けられるように、金型66に金型樹脂注入部67を設けた場合(図16(a))、高分子鎖20が引張応力の働く方向に対して垂直に配向しているため(図16(b))、高分子鎖20の束が引張応力により裂かれる形となり、ゲート部65が折れ起端部19となってアーム64が折れてしまう(図16(c))。
 それに対して本実施形態においては、図4などに示すように、前記瞼押え部12同士を接近させる方向に荷重を加える際に発生する引張応力が最大となる部分以外の部分に、前記アーム14のゲート部15が設けられている。
 前記アーム14に発生する引張応力が最大となる部分としては、例えば図6に示すように、アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状において中立面18から最も離れた部分であるアーム最外側141aが挙げられる。前記アーム最外側141aは、引張応力が特に働きやすい部分だからである。
 なお、前記ゲート部15は引張応力が最大となる部分以外の部分すなわち折れ起端部19になるおそれが少ない部分に設ければよく、例えばアーム14の端部14a付近にゲート部15を設けてもよい。
 具体的には、アーム14の少なくとも一方の端部断面14c(図1)から熱可塑性樹脂を注入してもよい。引張応力に対して高分子鎖20を垂直方向に配向させなくて済むためである。
 また、アーム14の端部14aにおいては、アーム内側142からはもとよりアーム外側141から熱可塑性樹脂を注入してもよい。通常、開瞼器10を使用する際、アーム14の端部14a付近には引張応力が比較的働きにくいためである。
 さらには、ゲート部15を複数設けてもよい。例えば、上下瞼押え部12とアーム14に各々ゲート部を設けて熱可塑性樹脂を注入してもよいし、アーム14にゲート部15を複数設けてもよい。この場合、複数のゲートから注入された樹脂が、引張応力の強くかかる位置で出会わないように設計した方が良い。
 また、アーム14と瞼押え部12との全体を一体成型する場合、瞼押え部12にゲート部15を設けてもよい。具体的には、患者の瞼に触れない部分である断面U字状湾曲プレートの湾曲外側にゲート部15を設けてもよい。患者に負担がかからず、しかも引張応力に対して高分子鎖20を垂直方向に配向させなくてするためである。
 図6(a)に示すように、本実施形態においてはアーム最外側141a部分にゲート15を設けなければよいが、引張応力が働くアーム外側141においては、アーム14が折れる方向すなわちx軸方向に対してできる限り平行でない方向、望ましくは垂直に樹脂を注入するのが好ましい。アーム14が折れる方向に対して高分子鎖20が平行でない方向、望ましくは垂直に配向することにより、アーム14の折れを抑制することができるためである。
 さらには、折れ起端部19となるおそれがない部分、すなわち引張応力ではなく圧縮応力が発生する部分であるアーム内側142にゲート部15を設けるのが好ましい。引張応力が発生しなければ、そもそもゲート部15における高分子鎖20の束が引き裂かれる可能性が極めて少なくなり、ゲート部15が折れ起端部19となるおそれが極めて少なくなるためである。
 具体的には、図6に示すように、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状が略円形状である場合、前記アーム垂直断面において、略円形状中心から前記アーム最外側141aに向かう方向をx軸、略円形状中心を通過しx軸に対する垂直方向をy軸とし、このx-y座標系において前記アームに対する接線をy=ax+b(但し、a,bは定数)の関数で表したとき、前記アーム外側141において前記アーム14に対する接線の傾きaの絶対値が1を超えていない部分、または引張応力の働かないアーム内側142に、前記アームのゲート部15が設けられるのが好ましい。特に、引張応力の働かないアーム内側142に、前記アームのゲート部15が設けられるのが好ましい。アーム内側142ならば引張応力の影響が少なくて済むため、ゲート部15の高分子鎖20の配向の影響を少なくすることができるためである。
 前記ゲート部15の位置としては、特に前記アーム内側142において前記中立面18から最も離れた部分であるアーム最内側142aに、前記アーム14の射出成形の際のゲート部15が設けられるのが好ましい。引張応力の影響が最も少な・BR>「部分であり、ゲート部15における高分子鎖20の束が引き裂かれる原因となる引張応力とは逆方向に、圧縮応力が強く働くためである。
 また、図7(a)~(d)に示す通り、対称中心部におけるアーム内側142に前記アームのゲート部15が設けられるように金型16に金型樹脂注入部17を設けて開瞼器10を作製するのが好ましい。さらには、高分子鎖20の束が引き裂かれる影響が少なく、圧縮応力が最も働く部分、すなわち対称中心部のアーム内側142において中立面18から最も離れた部分であるアーム最内側142aに、前記ゲート部15が設けられるのがより好ましい。
 まとめると、本実施形態においては、折れ起端部19となりやすい部分以外の部分に、アーム14のゲート部15が設けられている。折れ起端部19となりにくい場所にゲート部15を設けることにより、ゲート部15を折れ起端部19としたアーム14の破損のおそれを低減でき、製品としての強度を向上させることができる。さらには、術者が開瞼器10を指でつまむ際、アーム14が破損しないか気にすることを低減させることができ、術者に与えるストレスを軽減することができる。その上で、適度な開瞼力を有して上下瞼を開くという必要な機能を十分に果たすことができる。
 なお、本実施形態の開瞼器10においては、図8Aに示すように、U字状かつ線対称形状に湾曲形成され、対称中心部を中心としてアームの長手方向に少なくとも4mmの範囲の部分の湾曲内側が直線形状であり、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面の断面積において、対称中心部を中心としてアームの長手方向に少なくとも4mmの範囲の部分のアームの断面積が、それ以外の部分の断面積よりも大きいアームを形成するようにし、前記アームの対称中心部におけるアーム最内側142aに、前記ゲート部15を設けて行うのが好ましい。
 アーム14が上述のようになっていると、開瞼器10の製造過程において開瞼器成形用金型16から成形品である仕上げ前開瞼器10aを取り出し、熱したニッパ21により仕上げ前開瞼器10aのゲート部15を切断除去する際、アーム内側142に前記ゲート部15が設けられていたとしても、ニッパ21による作業空間を単なるU字状アームに比べて広く設けることができ、アーム14による作業の妨げを少なくすることができる(図8B(f)(g))。しかも、先にも述べたように、アーム内側142にゲート部15を設けることにより、ゲート部15を折れ起端部19としたアーム14の破損のおそれを低減でき、製品としての開瞼器の強度を向上させることができる。
 さらには、アーム全体としてはU字状でありながらも、U字状の湾曲部分に2箇所の略直角部分が設けられた略コの字形状にアーム14を形成し、前記アーム14の対称中心部におけるアーム最内側142aに前記ゲート部15を設けるのも好ましい。前記ニッパ21による作業空間をさらに広く設けることができ、アーム14による作業の妨げをさらに少なくすることができる。
 なお、本実施形態においては、前記略コの字形状は線対称形状である略コの字形状であるのが好ましいが、前記略直角部分が直角からわずかにずれた角度を有するものも含み、図3(d)のようにアーム14の一部が指で摘みやすい形に湾曲させた形状であるものも含む。
 上述のようにアーム14の対称中心部におけるアーム最内側142aにゲート部15を設ける場合、図19に示すように、U字湾曲における湾曲内側から湾曲外側へ向かう方向に熱可塑性樹脂がスプール27及びランナー28によって注入されるのが好ましい。
 具体的には、金型樹脂注入部17に設置された短い円筒状のランナー28は樹脂注入方向と略平行にアーム14のゲート部15に連結される。そして金型16に設置された長い円筒状のスプール27は、ランナー28に対して所定の角度に傾けて連結され、かつスプール27の端部付近において連結される。このようにスプール27およびランナー28を配置し、スプール27からランナー28を介してゲート部15から熱可塑性樹脂を注入し、アーム14を作製するのが好ましい。
(実施の形態2)
 以下、本発明に係る別の実施形態を、実施の形態1でも用いた図8Aを参照して説明する。
 図8Aは実施形態の開瞼器の構成を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は正面図、(e)は(d)のIe部の拡大図である。また、実施の形態1でも挙げたが、図2はその使用状態を示す図である。
 図8A及び図2に示すように、この開瞼器10は、バネ性を持つよう湾曲形成された樹脂からなる1本のワイヤー状のアーム14と、そのアーム14の両端14aにそれぞれ結合されて眼101の上瞼102と下瞼103にそれぞれ引っ掛ける2つの瞼押え部12とを有する。
 この開瞼器10は、少なくともアーム14が樹脂の成形品として構成されており、アーム14のバネ反発力によって開瞼状態を保つものである。
 ここでは主に、実施の形態1とは異なる部分について説明する。
 アーム14に働く応力を示す図5のように、本実施形態の開瞼器10においては、前記瞼押え部12同士を接近させる方向に荷重を加えると、瞼押え部12を元の位置に戻そうとするバネ反発力(以降、開瞼力ともいう)がアーム14に働く。この際、患者の閉瞼力に負けない開瞼力を有するためには、アーム14の太さを太くする必要がある。
 このようなアーム14の開瞼力についての考慮事項に対して、本発明者は、前記瞼押え部12同士を接近させる方向に荷重を加えた際に発生する前記バネ反発力を調整する開瞼力調整部23を前記アーム内側142に設けることにより、荷重を加えた際のアーム14の変形しやすい領域を増減させ、アーム14のバネ反発力を適宜コントロールすることができ、アーム14を過度に太くすることなく開瞼器10の開瞼力を確保しつつも、開瞼力の異なる多種類の開瞼器が容易に得られることを見出した。
 ここで開瞼力調整部について説明する。この開瞼力調整部は、荷重を加えた際のアーム14の変形しやすい領域を増減させるために設けられる。
 図9に示すように、一般に、前記瞼押え部12同士を接近させて同じ変位量Dだけ変位させようとした場合、このアーム14の変形しやすい領域24すなわちアーム14における変形しやすい領域24の長さが大きければ大きいほど、瞼押え部12を変位量Dだけ変位させるのに必要な荷重は小さくなる、つまり開瞼器10の開瞼力は減少することになる。
 ここで、アーム14における変形しやすい領域24の長さを決定するのは、アーム内側142において、荷重に対する支点25の位置である。本実施形態においては、前記開瞼力調整部により、この支点25の位置を調節することができる。
 この支点調節は、例えば図10に示すように、アーム内側142において、荷重を加えた際に支点25となる部分をアーム先端部分の方向へとシフトさせるように(図10(a)の破線から実線へシフト)、また、アーム先端部分の方向とは逆の方向へとシフトさせるように(図10(b)の破線から実線へシフト)前記開瞼力調整部23を設けることによって行われる。
 さらに、上瞼押え部による開瞼力と下瞼押え部による開瞼力との間に差異を持たせてもよい。具体的には、図10(c)に示すように、患者の上瞼に対する開瞼力を高めたい場合、前記開瞼力調整部23を、上瞼押え部121側においてはアーム先端方向へとシフトさせ、下瞼押え部122側においてはアーム先端方向とは逆の方向へとシフトさせる。これにより、上下瞼に対して各々所望の開瞼力を与えることができる。
 このように、前記瞼押え部12同士を接近させる方向に荷重を加えた際に発生する前記バネ反発力を調整する開瞼力調整部23を前記アーム内側142に設けることにより、アーム14を過度に太くすることなく開瞼器10の開瞼力を確保できるため、手術器具がぶつかるなど手術の妨げを抑制すると共に、術野への圧迫感を軽減することができる。さらには、前記開瞼力調整部23を設ける位置を変更するだけで、開瞼力の異なる多種類の開瞼器10が容易に得られる。
 これらの利点に加え、後で詳述するアーム14の補強という点から見ると、開瞼力調整部23を設けることにより、荷重に対する支点25を複数箇所とすることができ、引張応力が1箇所に集中することを防ぐことができる。これにより、実施の形態1と同様に、前記瞼押え部12同士を接近させた際におけるアーム14の破損のおそれを低減することができる。
 なお、射出成形により成形される熱可塑性樹脂からなり、瞼押え部12とアーム14とが一体成型された開瞼器10ならば、異なる開瞼力を有する開瞼器10を多種多量に生産することができ、この利点はさらに増大する。
 図11に示すように、開瞼器10には孔部26が形成されてもよい。言い換えると、前記開瞼力調整部23によってアーム14が架け渡されるように開瞼器10を構成してもよい(図11(a))。
 なお、前記開瞼力調整部23は、アーム14と一体成型されても別体に設けられてもよいが、大量生産する上でのコストダウンという点から、一体に設けられているのが好ましい。
 この際、例えば平面から見たときにU字状アーム14の底部に向かって凸になるように湾曲形成された開瞼力調整部23を設けてもよい(図11(b))。開瞼力調整部23が直線形状に設けられている場合に比べて、荷重を加えた際の支点をアーム先端方向とは逆の方向へとわずかにシフトさせることができ、開瞼力調整部23がアームにおける変形しやすい領域24をわずかに増加させることができる。これにより、開瞼力調整部23によって強くなった開瞼力を微調整することができる。
 これとは逆に、例えば平面から見たときにアーム先端側に向かって凸になるように湾曲形成された開瞼力調整部23を設けてもよい(図11(c))。開瞼力調整部23が直線形状に設けられている場合に比べて、荷重を加えた際に開瞼力調整部23がクッションの代わりとなり、アーム14の破損のおそれを低減することができると推察される。
 なお、ここでは直線形状に形成または湾曲形成された開瞼力調整部23について挙げたが、開瞼力調整部23の湾曲は複数回にわたってもよいし、図11(d)(e)に示すように少なくとも1回以上屈曲した形状に形成された開瞼力調整部23が設けられてもよい。
 さらに、図11(f)に示すように、前記開瞼力調整部23を複数設けてもよい。開瞼力の微妙なコントロールが可能になるためである。
 また、図11(g)に示すように、複数の孔部26が形成されるように開瞼器10が構成されてもよい。言い換えると開瞼力調整部23によってアーム14が3箇所以上で架け渡されるように開瞼器10を構成してもよい。前記開瞼力調整部23によってアーム14が架け渡される箇所を増やすことにより、適度な開瞼力が得られると共に、アーム14の補強を行うことができるためである。
 また、図11(h)に示すように、折れ起端部19となる可能性があるアーム14の部分を他の部分に比べて厚くすることにより、後述する折れ抑制領域を前記開瞼力調整部23が兼ねてもよい。
 このように、孔部26が存在するように前記開瞼力調整部23が設けられると、上述のように、適度な開瞼力を有することに加え、孔部26が存在することによりその部分の原材料費をコストダウンすることができる。特に、瞼押え部12とアーム14とが一体成型された開瞼器10ならば、異なる開瞼力を有する開瞼器10を多種多量に生産することができ、この利点はさらに増大する。
 また、孔部26を保持棒などで貫通させて保管することができ、保管が容易となる。
 さらに、孔部26の存在により術者にとって視認できる領域である術野が広がり、術者への圧迫感を軽減することができる。
 その結果、適度な開瞼力を有し、術者に与えるストレスを軽減し、上下瞼を開くという必要な機能を十分に果たす開瞼器を得ることができる。
 なお、アーム14における湾曲形状は、例えば図13Aに示すようにU字状アーム14であって、湾曲外側および/または湾曲内側が一部変形された、略コの字型である場合(図13A(a))、W字型(図13A(b))である場合、または数度にわたり湾曲している場合(図13A(c))においても、先に述べたような開瞼力調整部23を設けることにより、上述の効果を得ることができる。
 このように適度な開瞼力を有させることに加えてアーム14の破損のおそれを低減するために、前記開瞼力調整部23は、図12に示すように、前記アーム外側141に発生する引張応力が最大となる部分から前記アーム内側142に向かう方向に設けられる折れ抑制領域22でもあることが好ましい。
 前記開瞼力調整部23が折れ抑制領域22を兼ねることにより、アーム14を過度に太くすることなく開瞼器10の開瞼力を確保しつつも開瞼器10の破損のおそれを低減させることができる。
 ここで折れ抑制領域22について説明する。この折れ抑制領域22は、開瞼器10に孔部26が形成されることなく、アーム外側141に発生する引張応力が最大となる部分が折れ起端部19とならないようにするために設けられるアーム補強箇所である。
 このアーム補強は、例えば、折れが容易に起きないように引張応力が最大となる部分のアーム14に厚みを持たせたり、アーム14を太くしたりすることによって行われる。
 なお、このようにアーム14に厚みを持たせたり、アーム14を太くしたりする部分は、少なくとも引張応力が最大となる部分であればよく、その他の部分については厚くせずとも、また太くせずともよい。さらには、上述の開瞼力調整部23を設けた上で、折れ抑制領域22を別個設けてもよい。折れ抑制領域22以外の部分を厚く又は太くしないことにより、術野への圧迫感を軽減することができ、アーム14が術者の作業を妨げることを抑制するためである。
 特に、前記アーム14がU字状に湾曲形成される場合だと、前記アーム外側141に発生する引張応力が最大となる部分における前記アーム外側141の湾曲形状の曲率半径を、前記アーム内側142に発生する圧縮応力が最大となる部分における前記アーム内側142の湾曲形状の曲率半径よりも小さくすることによって折れ抑制領域22を設けることが好ましい。
 言い換えると、前記アーム外側141に発生する引張応力が最大となる部分における前記アーム外側141の湾曲形状の曲率(曲率半径の逆数)を、前記アーム内側142に発生する圧縮応力が最大となる部分における前記アーム内側142の湾曲形状の曲率(曲率半径の逆数)よりも大きくすることによって折れ抑制領域22を設けることが好ましい(図13A(d))。これにより、アーム14全体を太くするまでもなく、アーム14において引張応力が最大となり折れが発生しやすい部分を重点的に厚くすることができる。さらに、アーム外側141ではなくアーム内側142を厚くすることにより、アーム14が術者の作業を妨げることを抑制できる。
 また、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状が略円形状である場合、前記アーム断面形状において、前記アーム外側141に発生する引張応力が最大となる点を含む前記アーム断面形状のアーム最外側141aからアーム最内側142aまでの距離を、前記アーム14にかけて最大とすることによって折れ抑制領域22を設けることが好ましい(図13B(e))。実施の形態1にて述べたように、アーム14が折れにくくなるためである。さらに、アーム14全体の中でも引張応力が最大となる部分を最も厚くすることにより、アーム14全体を厚くするまでもなく、アーム14において引張応力が最大となり折れが発生しやすい部分を重点的に厚くすることができる。
 また、アーム14の太さについては、アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状において、前記アーム外側141に発生する引張応力が最大となる点を含む前記アーム断面形状の断面積を、前記アーム14にかけて最大とすることによって折れ抑制領域22を設けることするのも好ましい。これにより、アーム14の折れが発生しやすい部分を補強でき、アーム14の折れの発生を抑制することができる。アーム14の折れの発生を抑制することにより、製品としての開瞼器10の強度を向上させることができる。また、アーム14の破損を抑制しつつも閉瞼力に負けない開瞼力を持つような反発弾性を持たせるために、アーム14の太さを全体にわたって過度に太くする必要がなくなる。
 このように開瞼器を構成することにより、アーム14の厚さや太さによる術野への圧迫感を軽減させることができ、術者に与えるストレスを軽減することができる。その上で、上下瞼を開くという必要な機能を十分に果たすことができる。
 特に、前記アーム14がU字状かつ線対称形状に湾曲形成され、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状が略円形状である場合には、前記アーム14における対称中心部におけるアーム最外側141aからアーム最内側142aまでの距離を、前記アーム14にかけて最大とするのが好ましい(図13B(e))。また、前記アーム14における対称中心部の断面積が最大となるように作製するのが好ましい。
 アーム14の折れは対称中心部において発生しやすく、この部分を補強すればアーム14の折れを抑制することができるためである。さらには、対称中心部におけるアーム内側142を特に厚くおよび/または太くすることにより、アーム14全体を厚くおよび/または太くするまでもなく、アーム14の強度をコントロールすることができるためである。
 また、この場合、対称中心部を中心としてアームの長手方向に少なくとも4mmの範囲の部分(言い換えるならU字の底の部分)の湾曲内側を、湾曲形状の代わりに直線形状とし、対称中心部を中心としてアームの長手方向に少なくとも4mmの範囲の部分のアームの断面積を、それ以外の部分の断面積よりも大きくすることが好ましい。上述の条件にてアーム14を形成することにより、適度な開瞼力を得ることができるためである。
 なお、この際に上記範囲の部分のアーム14の太さを略均一としてもよい(図13B(f))。また、図13A(b)~(d)、図13B(f)のように、U字状かつ線対称形状なアーム14の湾曲形状において、アーム内側142に最大曲率部分を複数設けてもよい。アーム14がこのような形状を取ることにより、アーム内側142の複数ある最大曲率部分に引張応力が分散するため、図5に示すように引張応力が対称中心部の1箇所に集中するのを妨げることができる。
 なお、このような補強の手段としては、アーム両端部14a,14bから徐々にアームの断面積が大きくなるようにアーム14が形成されてもよい(図13B(g))。このような形状とすることにより、アーム14全体を太くする場合よりも術野が広くなり、術者のストレスを軽減することができるためである。
 また、実施の形態1と同様に、前記アーム14と前記瞼押え部12とが、射出成形により成形される熱可塑性樹脂からなり、樹脂の一体成形品として構成されていてもよい。全体を熱可塑性樹脂の一体成形で構成しているので、容易に低コストで大量生産することができる。これにより、使い捨ての使用が可能となり、滅菌処理を不要として、大量の使用要求に応えることができる。繰り返しになるが、閉瞼力は患者により異なるので、予め種々の開瞼力を有する開瞼器10を作製しておき、患者に応じて使い捨ての開瞼器10を使用することも可能となる。
 なお、本実施形態における開瞼器10の製造においては、ブロック状の樹脂材から構造物を削り出す方法、樹脂製型中もしくは金型中で重合硬化する方法、または熱可塑性樹脂を用いた射出成形による方法などの樹脂成形方法を用いてもよいが、実施の形態1との組み合わせや大量の製品を製造できるという点で射出成形が好ましい。
 以上の説明のように、この開瞼器10は、バネ性を持たせたアーム14の両端14aに2つの瞼押え部12を設けた構成であるので、図2に示すように装着して上下瞼102,103を開くという必要な機能を、使い勝手よく、十分に果たすことができる。そして、図2に示すように、樹脂製であるにも拘わらず、十分な術野を確保することができる。また、金属よりもしなやかな弾性を発揮する樹脂製のアーム14のバネ反発力によって開瞼するので、大きく開瞼できない患者の場合にも、痛みを与えることがなく、また、硝子体圧上昇などのトラブルを誘発するおそれもない。
 また、使い捨てタイプとして使用することにより、樹脂の繰り返し疲労による破損の可能性を無くすことができるので、安全性を高めることができる。また、瞼102,103に直接触れる部分(瞼押え部12)が金属よりも硬度の低い樹脂でできている場合、患者に対して柔らかな接触感を与えることができ、患者の負担感を減らせる。
 さらに、上述の通り、本発明に係る実施の形態によれば、適度な開瞼力を有しつつ、術者に与えるストレスを軽減し、上下瞼を開くという必要な機能を十分に果たすことができる。
 なお、本発明は前記実施の形態に限られることなく、種々の変形が可能である。特に、図8Aに示す開瞼器のように、前記実施の形態同士を組み合わせることにより、適度な開瞼力を有しつつ、術者に与えるストレスを軽減し、上下瞼を開くという必要な機能を十分に果たすことに対して、さらなる相乗効果を示すことが期待できる。
 特に、アーム全体としてはU字状でありながらも、U字の底部を一部変形させることにより略コの字形状に形成されかつゲート部15がアーム内側142に設けられたアーム14(実施の形態1)を実施の形態2に適用すると、前記アーム14に開瞼力調整部23が設けられた形状となり、ゲート部15を切断除去する際にニッパ21による作業空間を広く設けることができるだけでなく、アーム14の強度を向上させ、かつ開瞼力を適宜調節することができ、術者に与えるストレスを軽減するという相乗効果を有する。
 この相乗効果に加え、さらに、前記アーム14と前記瞼押え部12とが、全体を熱可塑性樹脂の一体成形品として構成される場合、上述のようなアーム強度の保持、開瞼力に対する微妙なコントロール性などのような優れた効果を有しながらも、容易に低コストで様々なバネ反発力を有する開瞼器を多種多量に生産することができ、使い捨ての使用が可能となり、滅菌処理を不要として、大量の使用要求に応えることができる。
(実施例1)
 以下、本実施例について説明する。
 図7に示すように、高温で流動性をもった熱可塑性樹脂であるPMMAを金型樹脂注入部17から金型16内に注入し、冷却した。
 次に、前記金型16から仕上げ前開瞼器10aを取り出し、ゲート部15を熱したニッパ21により切断除去して、図7に示される本実施例に係る開瞼器10を作製した。
 この際、図7(c)や図17に示すように、アーム14の湾曲形状をU字状かつ線対称形状とし、アーム14の対称中心部におけるアーム最内側142aにゲート部15を設け、U字の幅を約32mmとし、アーム14の太さを直径2.2mmとした。
(実施例2)
 また、本実施例の開瞼器10は、実施例1と同様の手法で作製した。ただし本実施例では実施例1とは異なり、図8Aに示すように、対称中心部が中心に位置する、アームの長手方向に6mmの範囲の部分の湾曲内側を直線形状とし、対称中心部を中心としてアームの長手方向に6mmの範囲の部分のアームにおける、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面の断面積が、それ以外の部分の断面積よりも大きくした。
(比較例)
 比較例の開瞼器60も、実施例1と同様の手法で作製した。ただし、比較例では実施例1~2とは異なり、図15に示すようにアーム64の対称中心部におけるアーム最外側641aにゲート部65を設けた。
 本実施例および比較例に係る開瞼器に対して、万能試験機(インストロン社製万能試験機 MINI44型)を用い、図17に示すように、アームの湾曲部分と直線部分との境界部分に対して瞼押え部同士を接近させる方向に荷重を加え、100mm/分の速度で圧縮した。その結果を図18に示す。
 実施例1および実施例2における開瞼器10では、アームの圧縮変位を15mm以上とし、圧縮荷重を25N(約2.5kg重)以上の荷重としたときでも、アームが折れることはなかった。
 その一方、比較例における開瞼器60では、アームの圧縮変位を8.5mmとし、圧縮荷重を6.4N(約0.6kg重)の荷重としたとき、ゲート部65を折れ起端部としてアームが折れた。
(実施例3)
 さらに、開瞼器を使って上下瞼を開く際、その開瞼幅は処置内容・患者個人差により異なるが、通常15mm以上開瞼することを鑑み、瞼押え部における湾曲プレートの中央部の間の距離を15mmまで押し込んだ際の反発力を、実施例1~2に加えて、アームの長手方向に10mmの範囲の部分のアームの断面積を、それ以外の部分の断面積よりも大きくした実施例3の開瞼器に対して同じく万能試験機(インストロン社製万能試験機 MINI44型)を用いて測定した。
 その結果、実施例1の開瞼器の反発力は66gfであったのに対し、実施例2の開瞼器の反発力は70gfであり、約6%上昇した。また、実施例3の開瞼器の反発力は80gfであり、約20%上昇した。
 このことにより、アーム14における対称中心部付近を太くすることにより、開瞼器10の反発力をコントロールできることが判明した。
 10   開瞼器
 10a  仕上げ前開瞼器
 102  上瞼
 103  下瞼
 12   瞼押え部
 121  上瞼押え部
 122  下瞼押え部
 12a  内側挿入片
 12b  外側押え片
 14   アーム
 141  アーム外側
 141a アーム最外側
 142  アーム内側
 142a アーム最内側
 14a  アーム両端
 14c  アーム両端における断面部
 15   ゲート部
 16   開瞼器成形用金型
 17   金型樹脂注入部
 18   中立面
 19   折れ起端部
 20   高分子鎖
 21   ニッパ
 22   折れ抑制領域
 23   開瞼力調整部
 24   変形しやすい領域
 25   支点
 26   孔部
 27   スプール
 28   ランナー
 60   開瞼器
 62   瞼押え部
 62a  内側挿入片
 62b  外側押え片
 64   アーム
 64a  アーム両端
 65   ゲート部
 66   開瞼器成形用金型
 67   金型樹脂注入部  
 

Claims (19)

  1.  バネ性を持つよう射出成形により湾曲形状に形成された熱可塑性樹脂からなる1本のアームと、前記アームの両端にそれぞれ結合されて上瞼と下瞼にそれぞれ引っ掛ける2つの瞼押え部とを有し、前記アームのバネ反発力によって開瞼状態を保つようにした開瞼器であって、
     前記アームに対し、前記瞼押え部同士を接近させる方向に曲げ荷重を加えたとき、前記アームの中立面を境界とし、前記湾曲形状の湾曲外側であって引張応力が発生する側をアーム外側とし、湾曲形状の湾曲内側であって圧縮応力が発生する側をアーム内側としたとき、
     前記瞼押え部同士を接近させる方向に荷重を加える際に発生する引張応力が最大となる部分以外の部分に、前記アームの樹脂注入部が設けられたものであることを特徴とする開瞼器。
     但し、前記中立面とは、前記アームに曲げモーメントが働いたときに、前記アームの長手方向に垂直な面を切断面とする断面において前記曲げモーメントによって引張応力が働く領域と圧縮応力が働く領域とが生ずるが、これら引張応力が働く領域と圧縮応力が働く領域との境界面であって引張応力も圧縮応力も働かない面をいう。
  2.  前記アーム外側において中立面から最も離れた部分であるアーム最外側以外の部分に、前記アームの射出成形の際の樹脂注入部が設けられたものであることを特徴とする請求項1に記載の開瞼器。
  3.  前記アーム内側に、前記アームの射出成形の際の樹脂注入部が設けられたものであることを特徴とする請求項2に記載の開瞼器。
  4.  前記アーム内側において前記中立面から最も離れた部分であるアーム最内側に、前記アームの射出成形の際の樹脂注入部が設けられたものであることを特徴とする請求項3に記載の開瞼器。
  5.  前記アームはU字状に湾曲形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の開瞼器。
  6.  前記アームの長手方向に対して垂直な面で切断した断面であるアーム断面の形状が略円形状であることを特徴とする請求項5に記載の開瞼器。
  7.  前記アーム断面において、略円形状中心から前記アーム最外側に向かう方向をx軸、略円形状中心を通過しx軸に対する垂直方向をy軸とし、このx-y座標系において前記アームに対する接線をy=ax+b(但し、a,bは定数)の関数で表したとき、前記アーム外側において前記アームに対する接線の傾きaの絶対値が1を超えていない部分、または前記アーム内側に、前記樹脂注入部が設けられることを特徴とする請求項6に記載の開瞼器。
  8.  前記アームは線対称形状に湾曲形成され、
     前記アームの対称中心部におけるアーム最内側に、前記樹脂注入部が設けられることを特徴とする請求項6に記載の開瞼器。
     但し、前記アーム最内側とは、前記アーム内側において前記中立面から最も離れた部分をいう。
  9.  前記瞼押え部同士を接近させる方向に荷重を加えた際に発生する前記バネ反発力を調整する開瞼力調整部が、前記アーム内側に設けられたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の開瞼器。
  10.  前記開瞼力調整部によって前記アームが架け渡されたことを特徴とする請求項9に記載の開瞼器。
  11.  前記開瞼力調整部は、前記アーム外側に発生する引張応力が最大となる部分から前記アーム内側に向かう方向に設けられる折れ抑制領域でもあることを特徴とする請求項9に記載の開瞼器。
  12.  前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状が略円形状であり、
     前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状において、前記アーム外側に発生する引張応力が最大となる点を含む前記アーム断面形状のアーム最外側からアーム最内側までの距離を、前記アームにかけて最大とすることを特徴とする請求項11に記載の開瞼器。
     但し、前記アーム最外側とは、前記アーム外側において前記中立面から最も離れた部分をいい、前記アーム最内側とは、前記アーム内側において前記中立面から最も離れた部分をいう。
  13.  前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状が略円形状であり、
     前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面形状において、前記アーム外側に発生する引張応力が最大となる点を含む前記アーム断面形状の断面積を、前記アームにかけて最大とすることを特徴とする請求項11に記載の開瞼器。
  14.  前記アームはU字状かつ線対称形状に湾曲形成され、
     対称中心部を中心として前記アームの長手方向に少なくとも4mmの範囲の部分のアームにおける、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面の断面積が、それ以外の部分の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項12に記載の開瞼器。
  15.  前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面の断面積において、アームの断面積が前記アーム両端部から徐々に大きく形成されることを特徴とする請求項13に記載の開瞼器。
  16.  バネ性を持つよう射出成形により湾曲形状に形成された熱可塑性樹脂からなる1本のアームと、前記アームの両端にそれぞれ結合されて上瞼と下瞼にそれぞれ引っ掛ける2つの瞼押え部とを有し、前記アームのバネ反発力によって開瞼状態を保つようにした開瞼器であって、
     少なくとも前記アームは射出成形法で成形するようにするとともに、前記射出成形は、前記瞼押え部同士を接近させる方向に荷重を加える際に発生する引張応力が最大となる部分以外の部分に、前記アームの樹脂注入部を設けて行うようにしたことを特徴とする開瞼器の製造方法。
  17.  前記射出成形は、前記アームの樹脂注入部をアーム内側に設けて行うようにしたことを特徴とする請求項16に記載の開瞼器の製造方法。
     但し、前記アーム内側とは、前記アームに対し、前記瞼押え部同士を接近させる方向に曲げ荷重を加えたとき、前記アームの中立面を境界とし、前記湾曲形状の湾曲内側であって圧縮応力が発生する側のことをいう。
     また、前記中立面とは、前記アームに曲げモーメントが働いたときに、前記アームの長手方向に垂直な面を切断面とする断面において前記曲げモーメントによって引張力が働く領域と圧縮応力が働く領域とが生ずるが、これら引張力が働く領域と圧縮応力が働く領域との境界面であって引張力も圧縮応力も働かない面をいう。
  18.  前記射出成形は、
     U字状かつ線対称形状に湾曲形成され、対称中心部を中心としてアームの長手方向に少なくとも4mmの範囲の部分のアームにおける、前記アームの長手方向に対して垂直なアーム断面の断面積が、それ以外の部分の断面積よりも大きいアームを形成するようにし、
     前記アームの対称中心部におけるアーム最内側に、前記樹脂注入部を設けて行うようにしたことを特徴とする請求項16または17に記載の開瞼器の製造方法。
     但し、前記アーム最内側とは、前記アーム内側において前記中立面から最も離れた部分をいう。
  19.  前記アームと瞼押え部との全体を熱可塑性樹脂の射出成形法で一体に成形することを特徴とする請求項16ないし18のいずれかに記載の開瞼器の製造方法。
     
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