WO2010106676A1 - 植物の色素量を増加させる方法 - Google Patents

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Abstract

 ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を、植物に導入する工程を含むことを特徴とする植物の色素量を増加させる方法。

Description

植物の色素量を増加させる方法
 本発明は、トランスジェニック植物の花、果実等の色素量を増加させる方法に関する。
 植物が生育するためには、窒素、リン、カリウム等の多量必須元素と、鉄、マンガン、ホウ素等の微量必須元素とが必要である。しかしながら、例えば、鉄は地殻中の元素の約5%を占め、元素として4番目に多いとされているにもかかわらず、地球上の耕地土壌の約30%は、潜在的な鉄欠乏地帯と言われている。このような土壌では、土壌のpHが上昇しアルカリ性を示すため土壌中の鉄が不溶態の形で存在し、鉄の溶解度が極めて低くなる。このため、このような土壌に生育した植物は、可溶性の鉄が少ないことにより、鉄欠乏クロロシスとなり、生育が阻害されるか又は枯死する。
 高等植物は、このような溶けにくい鉄を獲得するために、2つの戦略(Strategy)をとっている(非特許文献1)。図1に、植物の鉄取り込み機構を模式的に示す(図1は、後述する非特許文献6から引用した)。StrategyI(図1a)は、イネ科を除く高等植物の鉄獲得機構である。これは、土壌中の3価の不溶体鉄を根の細胞表面に存在する3価鉄還元酵素により還元し、2価鉄のトランスポーターで吸収する機構である。例えば、シロイヌナズナの根に特異的に発現する2価鉄のトランスポーターIRT1(Iron Regulated Transporter 1)(非特許文献2)は、3価鉄還元酵素の遺伝子FRO2(Ferric Reductase Oxidase 2)(非特許文献3)によって還元された2価鉄を吸収する。また、StrategyIにおいては、プロトンATPaseにより放出されたプロトンが根圏のpHを低下させ、さらにフェノール性酸の分泌により、鉄の可溶化を促進し、FROの効率を高める。
 一方、StrategyII(図1b)は単子葉植物のイネ科植物にのみ見られる鉄獲得機構である。イネ科植物は鉄欠乏状態で、ファイトシデロフォア(phytosiderophore;鉄キレーター)であるムギネ酸類を土壌に分泌する。イネ科植物は、このムギネ酸類により土壌中の3価鉄をキレートして「Fe(III)-ムギネ酸類」錯体を形成し、該錯体のまま鉄を根から吸収する(非特許文献4)。ムギネ酸は、鉄欠乏オオムギの根から分泌される、最初に構造決定された鉄キレート物質である(非特許文献5)。その後、ムギネ酸の生合成やオオムギでのFe(III)-ムギネ酸類錯体の取り込みなど、ムギネ酸の特徴が研究されてきた(非特許文献6)。他のイネ科植物から数種の関連化合物が単離及び同定されたが、これらの化合物は、ムギネ酸類と総称されている。このムギネ酸類の分泌と「Fe(III)-ムギネ酸類」錯体トランスポーターの機能とによって、イネ科植物がアルカリ耐性であると考えられる。ムギネ酸類の分泌量はオオムギ、コムギ>ライムギ、エンバク>トウモロコシ>イネの順で多く、これは鉄欠乏耐性の強さの順序と一致する。鉄欠乏状態で葉にYellow stripeを示すトウモロコシ(Zea mays)の変異体からムギネ酸類鉄錯体のトランスポーター遺伝子(ZmYS1)が単離されたが(非特許文献7)、その遺伝子からコードされるタンパク質は、鉄以外に、銅、亜鉛、コバルト及びニッケルの錯体も取り込み、また、植物細胞内の鉄輸送に関与している、ムギネ酸の前駆体、ニコチアナミン鉄錯体も輸送することが報告されている(非特許文献8及び9)。この遺伝子のホモログ検索が行われ、該遺伝子は植物及び微生物界に存在するオリゴペプチドトランスポーターファミリーであることが分かり、イネから36~76%のホモロジーを有する遺伝子(OsYSL)が18個、シロイヌナズナから8個見つかっている(非特許文献10)。このうち、イネのOsYSL2(非特許文献11)、及びシロイヌナズナのAtYSL2(特許文献1、非特許文献12)が、ムギネ酸鉄錯体は輸送せず、ニコチアナミン錯体のみを輸送することが報告されている。
 本発明者らは、イネやトウモロコシよりムギネ酸類の分泌量が多いオオムギ(Hordeum vulgare)の鉄欠乏状態の根から、ムギネ酸鉄錯体トランスポーターの遺伝子(HvYS1)を同定し、そのタンパク質の機能解析を行った(非特許文献13及び特許文献2)。この遺伝子は鉄欠乏状態の根で表皮細胞に特異的に強く発現していた。また、この遺伝子産物は、ムギネ酸鉄錯体を特異的に取り込むトランスポーターであることが分かった。最近、イネのOsYSL15がHvYS1同様にムギネ酸類鉄錯体特異的トランスポーターであることが報告された(非特許文献14)。
 イネ科植物のトランスポーターの機能を明らかにするために種々の研究がなされ、ファイトシデロフォアに関与する遺伝子を分離し、該遺伝子を導入したトランスジェニック植物が種々提案されている。例えばイネにデオキシムギネ酸からムギネ酸を生合成する酵素の遺伝子IDS3を導入して、ムギネ酸分泌を可能にし、同じくムギネ酸生合成経路中の酵素であるニコチアナミン・アミノ基転移酵素(NAAT)をコードする遺伝子を導入して鉄欠乏耐性を改善したイネが(非特許文献15及び特許文献3参照)、また、シスエレメント転写因子IDEF1を導入することによりアルカリ培地での鉄欠乏耐性が改善されたイネが製造されている(非特許文献16及び特許文献4参照)。
 しかしながら、イネ科以外の植物にムギネ酸類鉄トランスポーターを発現させて、その機能を調べた例はこれまで報告されていない。
先行技術文献
特表2005-501502号公報 国際公開WO2006/126294 特開2001-17012号公報 特開2005-006599号公報
Romheld, V. et al. Plant physiol. 1986, 80, 175-180. Eido, D. et al. Proc Natl. Acad. Sci. 1996, 93, 5624-5628. Robinson, N. J. et al. 1997, Nature, 1999, 397, 694-697. Takagi , S. et al. J. Plant. Nutr. 1984, 7, 469-477. Takemoto, T. et al. Proc. Jpn. Acad. 1978, 54-B, 469-473. 糸川嘉則監修、「ミネラルの科学と最新応用技術」 シーエムシー出版2008年 pp136-144(著者 村田佳子、岩下孝) Curie, C. et al. Nature 2001, 409, 346-349. Schaaf G. et al. J. Biol. Chem. 2004, 279, 9091-9096. Roberts, L. A. et al. Plant Physiol. 2004, 135, 112-120. Curie, C. et al. Ann. Bot. (Lond) 2009,103, 1-11. Koike, S. et al. Plant J. 2004, 39, 415-424. DiDonato, R. J. et al. Plant J. 2004, 439,403-414. Murata, Y. et al. Plant J. 2006, 46, 563-572. Inoue, H. et al. J. Biol. Chem. 2009,284, 3470-3479. Takahashi, M. et al. Nat. Biotechnol. 2001, 19, 466-469. Kobayashi, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2007, 104, 19150-19154.
 本発明は、植物に外来性遺伝子を導入することにより植物の色素量を増加させる方法、及び植物の花等の色を改変する方法を提供することを目的とする。
 本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ね、イネ科以外の植物としてペチュニアに、鉄欠乏状態で育てたオオムギ(Hordeum vulgare L.)から単離したトランスポーター遺伝子(配列番号1)を導入してペチュニア形質転換体を作製し、該ペチュニア形質転換体をデオキシムギネ酸鉄錯体含有水耕栽培で栽培して生育させ、その根から取り込まれたデオキシムギネ酸鉄錯体を検出し、さらに、該ペチュニア形質転換体の生育、鉄含量、植物体の色、及びアルカリ耐性能について検証した。その結果、植物体全体を観察したところ、トランスポーター遺伝子(配列番号1)を導入したペチュニア形質転換体は、コントロールのペチュニア非形質転換体と比較して花の色が顕著に濃いことを見出し、さらに、このペチュニア形質転換体における濃い花色の発現は、該ペチュニアの花の色素量が増加したためであることを見出し、ムギネ酸金属錯体のトランスポーター遺伝子を植物に導入することにより、植物の色素量を増加させることができることに想到した。さらに、土壌からムギネ酸鉄錯体を植物体内に取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子を導入すれば、植物にアルカリ耐性も付与することができるため、従来生育不能であったアルカリ土壌でも生育できるトランスジェニック植物を得ることができることを見出した。本発明者らは、この知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成させるに至った。
 すなわち、本発明は、以下の(1)~(11)に関する。
(1)ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子を、植物に導入する工程を含むことを特徴とする植物の色素量を増加させる方法。
(2)トランスポータータンパク質が、ムギネ酸金属錯体を選択的に取り込むタンパク質である前記(1)に記載の方法。
(3)トランスポータータンパク質が、ムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込むタンパク質である前記(1)に記載の方法。
(4)トランスポータータンパク質が、イネ科植物由来のトランスポータータンパク質である前記(1)に記載の方法。
(5)トランスポータータンパク質が、オオムギ由来のトランスポータータンパク質である前記(1)に記載の方法。
(6)トランスポータータンパク質をコードする遺伝子が、配列番号1で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号1のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである前記(1)に記載の方法。
(7)植物の色素が、フラボノイドである前記(1)に記載の方法。
(8)植物の色素が、アントシアニンである前記(1)に記載の方法。
(9)植物の花、花托、種子、果実、茎、根及び葉からなる群より選択される少なくとも一種において色素量を増加させる前記(1)に記載の方法。
(10)ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子の、植物の色素量を増加させるための使用。
(11)ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子を、植物に導入する工程を含むことを特徴とする植物の色を改変する方法。
 本発明はまた、ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子の、植物の色を改変するための使用、に関する。
 本発明によれば、植物の色素量を増加させることができるため、植物の花、果実等の色を深く及び/又は濃くすることができる。このため、新しい色の花、果実等を有する植物を創製することができる。さらに本発明によれば、植物にアルカリ耐性等を付与することができるため、植物の生産能を高めることも可能となる。
図1は、植物の鉄取り込み機構の模式図である。 図2は、プラスミドMac-HvYS1-mas-pBinPlusの模式図である。 図3は、ムギネ酸鉄錯体トランスポーター遺伝子HvYS1を含むベクターを導入したペチュニア形質転換体の根のパラフィン切片を抗体染色することにより、HvYS1にコードされるタンパク質の発現を調べた結果を示す図である。 図4はFT-ICR MS(ネガティブESI)により、図2に示すプラスミドを導入したペチュニア形質転換体の根の抽出物中のデオキシムギネ酸鉄錯体の分子イオンピークを検出した結果を示す図である。 図5は、図2に示すプラスミドを導入したペチュニア形質転換体及びコントロールであるペチュニア非形質転換体の花の写真である。 図6は、図2に示すプラスミドを導入したペチュニア形質転換体及びコントロールであるペチュニア非形質転換体の花の色を比較した写真である。 図7は、図2に示すプラスミドを導入したペチュニア形質転換体及びコントロールであるペチュニア非形質転換体の花色の濃さを色差計により測定した結果を示す図である。 図8は、図2に示すプラスミドを導入したペチュニア形質転換体及びコントロールであるペチュニア非形質転換体の花のマルビジン量を測定した結果を示す図である。 図9は、pH5.8のEDTA-Fe(III)添加培地(a)若しくはDMA-Fe(III)添加培地(b)、又はpH8.0のEDTA-Fe(III)添加培地(c)若しくはDMA-Fe(III)添加培地(d)をそれぞれ水耕培地として用いて、2週間栽培した、図2に示すプラスミドを導入したペチュニア形質転換体及びコントロールであるペチュニア非形質転換体の写真である。図9(e)は、水耕培地上のポリプロピレン製フロート上における各植物体の位置を示す。 図10は、図9dに示すpH8.0のDMA-Fe(III)添加培地で生育したペチュニア形質転換体及びコントロールであるペチュニア非形質転換体の全長の写真である。 図11a~dは、図9dに示すpH8.0のDMA-Fe(III)添加培地で生育したペチュニア形質転換体及びコントロールであるペチュニア非形質転換体の生育を比較した結果を示す図であり、図11eは、図9cに示すpH8.0のEDTA-Fe(III)添加培地又は図9dに示すpH8.0のDMA-Fe(III)添加培地で生育したペチュニア形質転換体及びコントロールであるペチュニア非形質転換体の鉄濃度(鉄含有量/乾燥質量(mg/g))を比較した結果を示す図である。
 本発明の植物の色素量を増加させる方法は、ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子を、植物に導入する工程を含む。
 本発明においては、ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子を植物に導入して該植物を形質転換することにより、該植物の色素量を増加させることができる。
 ムギネ酸金属錯体とは、ムギネ酸類が、金属イオンと配位結合して形成するキレート化合物をいう。金属イオンとしては、2価又は3価の鉄イオン、銅イオン、亜鉛イオン、マンガンイオン、マグネシウムイオン、モリブデンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、カドミウムイオン等が挙げられる。本発明におけるムギネ酸金属錯体としては、ムギネ酸鉄錯体が好ましい。ムギネ酸鉄錯体とは、ムギネ酸類が鉄イオン、好ましくは3価の鉄イオンと配位結合して形成するキレート化合物をいう。
 ムギネ酸類としては、例えばムギネ酸、2’-デオキシムギネ酸、3-ヒドロキシムギネ酸、3-エピヒドロキシムギネ酸、アベニン酸、ディスティコン酸、エピヒドロキシデオキシムギネ酸又はアベニン酸等が挙げられる。好ましくは、2’-デオキシムギネ酸である。
 トランスポータータンパク質とは、物質の細胞膜を介した輸送を担う細胞膜上に存在するタンパク質をいうが、本明細書においては、ムギネ酸金属錯体の細胞膜輸送を担うタンパク質を意味する。ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質は、ムギネ酸金属錯体を選択的に取り込む活性を有するタンパク質が好ましく、ムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性を有するタンパク質(以下、ムギネ酸鉄トランスポータータンパク質とも言う。)がより好ましい。例えば、「ムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む」とは、他の化合物、例えば鉄以外の金属とムギネ酸類から形成される錯体化合物や、ムギネ酸アナログの例えばニコチアナミンが2価鉄イオンと配位して形成するキレート錯体化合物等よりも、ムギネ酸鉄錯体を優先して細胞外から細胞内に移送又は輸送することをいう。
 ムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込むトランスポータータンパク質としては、イネ科植物由来、例えばオオムギ、コムギ、ライムギ、エンバク、トウモロコシ、ソルガム又はイネ由来のトランスポータータンパク質が好ましく、中でも、オオムギ由来のトランスポータータンパク質が好ましい。すなわち本発明におけるトランスポータータンパク質をコードする遺伝子(本明細書において、トランスポーター遺伝子と略記することもある。)としては、イネ科植物由来のトランスポータータンパク質をコードする遺伝子が好ましく、オオムギ由来のトランスポータータンパク質をコードする遺伝子がより好ましい。
 本発明におけるトランスポーター遺伝子としては、トランスポータータンパク質をコードするポリヌクレオチドであればよい。ポリヌクレオチドとしては、DNA又はRNAを用いることができる。好ましくは、トランスポータータンパク質をコードするDNAを用いる。DNAは、ゲノムDNAの配列でもよいし、cDNA配列であってもよい。トランスポーター遺伝子は、例えば、該遺伝子を含むDNA断片の塩基配列が既知であれば、その配列に従って合成したDNA断片又はRNA断片を使用することが出来る。また、該遺伝子のゲノムDNA又はcDNAを鋳型としたPCRによって、又は該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることにより、本発明におけるトランスポーター遺伝子を得ることができる。DNA配列が不明の場合であっても、トランスポータータンパク質間で保存されているアミノ酸配列をもとにハイブリダイゼーション法、PCR法により断片を取得することが可能である。さらに他の既知のトランスポーター遺伝子配列を基に設計したミックスプライマーを用い、ディジェネレートPCRによって断片を取得することが可能である。
 本発明におけるトランスポーター遺伝子は、例えば、国際公開WO2006/126294に記載されている方法に従って得ることができ、通常、まずトランスポータータンパク質をコードするmRNAの供給源からmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを調製し、次いで、例えば3’-RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)、5’-RACE及び/又は5’/3’-RACEを行なうことにより、目的のトランスポーター遺伝子を得ることができる。
 トランスポータータンパク質をコードするmRNAの供給源としては、例えば水耕栽培したイネ科の植物、例えばオオムギ、コムギ、ライムギ、エンバク、トウモロコシ、ソルガム又はイネ、好ましくはオオムギの根を用いることができる。さらに、トランスポーター遺伝子は、通常は鉄欠乏環境下に発現する遺伝子であるため、鉄イオンフリー又はアルカリ性条件下で鉄イオンを3価の水不溶性とした環境下に曝露させたイネ科植物(好ましくはオオムギ)の根を好適に用いることができる。また、イネ科植物(好ましくはオオムギ)の種子を水耕栽培して、生育させたイネ科植物(好ましくはオオムギ)の根を用いてもよい。またカルス又は無菌条件下で育てたイネ科植物(好ましくはオオムギ)の培養細胞等でもよく、目的とする遺伝子のmRNAを含んでいる細胞であればその種類は問わない。
 本発明においては、トランスポータータンパク質をコードする遺伝子が、配列番号1で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであることが好ましい。配列番号1で示される塩基配列は、オオムギ(Hordeum vulgare L.)由来のムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込むトランスポータータンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列である。オオムギ由来のムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込むトランスポータータンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列については、オオムギ由来のHvYS1(Hordeum Vulgare Yellow Stripel)遺伝子(配列番号2)が、DDBJにAccession No.AB214183で登録されており、配列番号1で示される塩基配列は、このオオムギ由来のHvYS1遺伝子(配列番号2)のコード領域(第169~2202番目)のポリヌクレオチドの塩基配列である。配列番号1で示される塩基配列にコードされる、オオムギ(Hordeum vulgare L.)のトランスポータータンパク質のアミノ酸配列を、配列番号3に示す。
 本発明においては、配列番号1で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド(配列番号1のポリヌクレオチド)と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドも、本発明におけるトランスポータータンパク質をコードする遺伝子として好適に用いることができる。
 本発明においては配列番号1で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は、配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド(配列番号2のポリヌクレオチド)と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドも、本発明におけるトランスポータータンパク質をコードする遺伝子として好適に用いることができる。
 「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、例えば、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドの部分配列をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるポリヌクレオチドを意味する。なお、ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、特に11.45節”Conditions for Hybridization of Oligonucleotide Probes”に記載されており、ここに記載の条件を使用し得る。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチドが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間及び塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。好ましい「ストリンジェントな条件」は、高ストリンジェントな条件である。また、本発明における「ストリンジェントな条件」とは、より好ましくは、(1)通常約90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の同一性を有するポリヌクレオチド同士がハイブリダイズし、それより同一性が低いポリヌクレオチド同士がハイブリダイズしない条件、又は、(2)約0.1~2倍程度の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる。)、温度約65℃程度でのハイブリダイズする条件をいう。
 2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセント(%)は、視覚的検査や数学的計算により決定することができるが、コンピュータープログラムを使用して2つのポリヌクレオチドの配列情報を比較することにより決定するのが好ましい。配列比較コンピュータープログラムとしては、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlから利用できるBLASTNプログラム(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10):バージョン2.2.7が挙げられる。
 本発明におけるトランスポーター遺伝子としては、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。なお、前記数個とは好ましくは20個以下、さらに好ましくは10個以下、例えば、通常1~10個、好ましくは1~9個、中でも好ましくは1~8個、より好ましくは1~7個、さらに好ましくは1~6個、さらにより好ましくは1~5個、特に好ましくは1~4個、特に好ましくは1~3個、中でも特に好ましくは1~2個、又は最も好ましくは1個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が好ましい。ここで、アミノ酸配列について、「1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加」とは、遺伝子工学的手法、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により生じうる、又は天然に生じうる程度の数が、欠失、置換若しくは付加等されていることを意味する。
 さらに、上記配列番号3のアミノ酸配列と、通常約60%以上の同一性を有するタンパク質、好ましくは約70%以上の同一性を有するタンパク質、より好ましくは約80%以上の同一性を有するタンパク質、さらに好ましくは約90%以上の同一性を有するタンパク質、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の同一性を有するタンパク質であって、かつムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性を有する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子も、本発明における本発明おけるトランスポーター遺伝子として好ましい。上記アミノ酸配列について「同一性」とは、タンパク質の一次構造を比較し、配列間において各々の配列を構成するアミノ酸残基の一致の程度の意味である。
 2つのアミノ酸配列の同一性パーセントは、視覚的検査及び数学的計算によって決定することができる。また、コンピュータープログラムを用いて同一性パーセントを決定することもできる。そのようなコンピュータープログラムとしては、例えば、BLAST、FASTA(Altschulら、 J. Mol. Biol., 215:403-410(1990))、及びClustalW等が挙げられる。特に、BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は、Altschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されたもので、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)やDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから公的に入手することができる(BLASTマニュアル、Altschulら NCB/NLM/NIH Bethesda, MD 20894;Altschulら)。また、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス)、DINASIS Pro(日立ソフト)、Vector NTI(Infomax)等のプログラムを用いて決定することもできる。
 本発明におけるトランスポーター遺伝子は、コードされるタンパク質においてムギネ酸金属錯体(好ましくは、ムギネ酸鉄錯体)を選択的に取り込む活性が保持されている限り、トランスポーター遺伝子の塩基配列の一部が他の塩基と置換されていてもよく、削除されていてもよく、また新たに塩基が挿入されていてもよく、さらには塩基配列の一部が転位されていてもよい。これら誘導体のいずれも本発明に用いることができる。上記の一部とは、例えばアミノ酸残基換算で、好ましくは20個以下、さらに好ましくは10個以下、例えば、1乃至数個(通常1~10個、好ましくは1~9個、中でも好ましくは1~8個、より好ましくは1~7個、さらに好ましくは1~6個、さらにより好ましくは1~5個、特に好ましくは1~4個、中でも特に好ましくは1~3個、最も好ましくは1~2個)であってよい。
 上記トランスポーター遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の公知の方法又はこれに準ずる方法により、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(タカラバイオ社製)やMutant-G(タカラバイオ社製)等)を用いて、あるいは、タカラバイオ社製のLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキット等を用いて行うことができる。
 上記トランスポーター遺伝子によりコードされるタンパク質がムギネ酸金属錯体を選択的に取り込む活性を有することは、酵母、大腸菌等にトランスポーター遺伝子を導入して形質転換し、形質転換された酵母等を、ムギネ酸金属錯体を添加した培地で培養することにより確かめることができる。
 例えばムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性を有することは、例えば出芽酵母サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)二重変異体fet3fet4(DDY4株)に、トランスポーター遺伝子を導入して形質転換し、形質転換された酵母を、ムギネ酸鉄(III)錯体を添加した培地で培養することにより確かめることができる。DDY4株は、2価鉄の取込み系に欠損を持ち、鉄制限培地では生育することができず(Eide,Dら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996年,第93巻,p.5624-5628)、かつ、ムギネ酸(III)鉄錯体を利用して生育することができない(Loulergue,C.Gene,1998年,第225巻,p.47-57)酵母であるので、ムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性能を有する酵母はムギネ酸鉄(III)錯体を添加した培地で生育し、該活性能を有さない酵母は生育できない。
 また、トランスポーター遺伝子によりコードされるタンパク質が、例えばムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性を有することは、アフリカツメガエル卵母細胞等で細胞膜電位変化等の観察を行うことによっても、確かめることができる。細胞膜電位変化の測定は、ムギネ酸鉄錯体を含有する溶液をトランスポーター遺伝子を導入した卵母細胞に添加し、該卵母細胞膜に発現したトランスポータータンパク質を介して取り込まれるムギネ酸鉄錯体に伴っておこる卵母細胞の細胞膜電位変化を膜電位固定法等により、細胞膜内外の電位を電極で直接測定等することにより行うことが可能である。
 トランスポーター遺伝子を植物に導入する際には、通常、まずPCRにより増幅させたトランスポーター遺伝子を、ベクターに導入する。通常、この得られたトランスポーター遺伝子を含むベクターを宿主である植物に導入して、植物中でトランスポーター遺伝子を増幅させる。
 トランスポータータンパク質をコードするDNAを増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーセットとして、例えば、オオムギ由来のムギネ酸鉄トランスポータータンパク質をコードする遺伝子(配列番号1)については、国際公開WO2006/126294の実施例で使用されたプライマーセット(配列番号4で示される塩基配列からなるプライマー及び5で示される塩基配列からなるプライマー)などが挙げられる。
 PCR法は、公知のPCR装置、例えばサーマルサイクラーなどを利用することができる。PCRのサイクルは、公知の技術にしたがって行なわれてよく、例えば、変性、アニーリング、伸張を1サイクルとし、通常10~100サイクル、好ましくは、約20~50サイクルである。PCRの鋳型としては、上述のトランスポーター遺伝子を含むDNA断片を用いて、PCR法により該遺伝子のcDNAを増幅することができる。PCR法によって得られた遺伝子は、適当なクローニングベクターに導入することができる。クローニング法としては、pGEM-T easy vector system(Promega社製)、TOPO TA-cloning system(Invitrogen社製)、Mighty Cloning Kit(Takara社製)などの商業的に入手可能なPCRクローニングシステムなどを使用することもできる。
 「ベクター」とは、遺伝子を細胞内へ導入する働きを持つ物質であればよく、例えば、プラスミド、ウイルスベクター等が挙げられるが、これらに限定されない。
 本発明におけるトランスポーター遺伝子を植物に導入するためのベクターは、該トランスポーター遺伝子を含み、植物に導入された際に、該トランスポーター遺伝子を発現するものであればよく、トランスポーター遺伝子以外の構造は特に限定されない。本発明におけるトランスポーター遺伝子を植物に導入するためのベクターは、例えば、該遺伝子を植物中で発現させるために、さらに、トランスポーター遺伝子の発現に必要なプロモーター等の調節配列を含むことが好ましい。さらにベクターは、例えば他のタンパク質のための認識配列等を形成する非発現DNAセグメントを含むこともできる。
 本発明において用いられるベクターは、基礎となるベクター(以下の説明では、便宜上、基礎ベクターと称する)のマルチクローニングサイトに、上記トランスポーター遺伝子、プロモーター及びターミネーター等を組み込んで構築すればよい。ここで、上記基礎ベクターとしては、宿主である植物中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えばプラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。プラスミドDNAとしては、例えばpUC18、pUC19等のpUC系プラスミド;pBI221等の植物細胞宿主用プラスミド、又は、pWTT23132(DNAP社製)、Gateway(Invitrogen社製)等のバイナリーベクター等が挙げられる。
 プロモーターとしては、宿主である植物中で発現できるものであればいずれを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35S RNAプロモーター、rd29A遺伝子プロモーター又はrbcSプロモーター等の植物由来のプロモーター、或いはカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターのエンハンサー配列をアグロバクテリウム由来のマンノピン合成酵素プロモーター配列の5’側に付加したmac-1プロモーター等のような構成的プロモーター等が好ましい。さらに、tacプロモーター等のように、人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。また、植物の遺伝子由来の種々のプロモーターを利用することも出来る。例えば、植物体の根で発現する遺伝子、例えば、ムギネ酸金属錯体トランスポーター遺伝子等のプロモーター配列も利用できる。本発明においては、導入したトランスポーター遺伝子が植物において恒常的に発現することが好ましいことから、構成的プロモーターを用いることが好ましく、中でもmac-1プロモーターが好ましい。mac-1プロモーターを用い構築されたベクターが植物ゲノム中に挿入された場合、該プロモーターの下流に連結された遺伝子(HvYS1)が植物体のほとんど全ての器官で、いずれの成長段階においても高レベルで発現し得る。
 ターミネーターとしては、宿主である植物中で発現できるものであればいずれを用いてもよく、例えば、35Sターミネーター、rps16ターミネーター、CaMV35Sターミネーター等が挙げられる。
 また、本発明おいて用いられるベクターは、遺伝子が導入された形質転換体(トランスジェニック植物)を選択するための遺伝子(選択マーカー配列)を有することが好ましい。トランスジェニック植物を識別するための遺伝子としては、特に限定されず、自体公知のものを用いてよい。該遺伝子としては、例えば、各種の薬剤耐性遺伝子又は植物の栄養要求性を相補する遺伝子等が挙げられる。より具体的には、例えば、ハイグロマイシン、ネオマイシン耐性遺伝子(G418耐性)、クロラムフェニコール耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子又は除草剤クロルスルフロン耐性遺伝子等が挙げられる。また、該遺伝子の上流及び下流には、該遺伝子を認識するためのプロモーター及びターミネーターを有することが好ましい。
 本発明において用いるベクターには、トランスポーター遺伝子に加え、さらに他の遺伝子、例えばムギネ酸類の生合成酵素をコードする遺伝子等を共に導入し得る。上記トランスポーター遺伝子に加えムギネ酸類の生合成酵素をコードする遺伝子がベクターに導入されると、該ベクターで形質転換される植物は、ムギネ酸鉄錯体等のムギネ酸金属錯体を選択的に取り込む機能に加え、ムギネ酸類を植物体自身で生合成し土壌に分泌し得るので、例えば、ムギネ酸類を含まないアルカリ土壌においてもムギネ酸鉄錯体を取り込むことができ得る。ムギネ酸類の生合成酵素をコードする遺伝子としては、例えば特開2001-17181号公報に記載の36kDaタンパク質をコードする遺伝子や、特開2001-17012号公報に記載のニコチアナミン・アミノ基転移酵素をコードする遺伝子等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、前記他の遺伝子には、前記他の遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつムギネ酸類を生合成する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も包含される。ストリンジェントな条件は上記と同様である。
 本発明に係るベクターの作製方法については、特に限定されるものではなく、上記基礎ベクターに、上述した各DNAセグメント(プロモーター、ターミネーター、トランスポーター遺伝子、薬剤耐性遺伝子等)を所定の順序となるように導入すればよい。
 本発明の方法においては、上記トランスポーター遺伝子を含むベクターを目的の植物に導入すればよく、ベクターの導入方法や条件等は制限されない。植物への遺伝子(ベクター)の導入方法としては、例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンスやアグロバクテリウム・リゾゲネスを利用した間接導入法(Heiei,Y.ら、Plant J.,6,271-282,1994、Takaiwa,F.ら、Plant Sci.111,39-49,1995);エレクトロポレーション法(Tada,Y.ら、Theor.Appl.Genet,80,475,1990)、ポリエチレングリコール法(Datta,S.K.ら、Plant Mol Biol.,20,619-629,1992)、パーティクルガン法(Christou,P.ら、Plant J.2,275-281,1992、Fromm,M.E.,Bio/Technology,8,833-839,1990)などに代表される直接導入法を用いることも可能である。中でも、例えばペチュニア等については、国際公開WO2006/085699でも用いているアグロバクテリウムを用いて植物に遺伝子を導入する方法が好ましい。
 アグロバクテリウムを用いて植物に遺伝子を導入する方法は、Plant J.,5,81,1994に記載された方法に従って行うことができ、通常、まず上記ベクターを、Vir領域を有するプラスミドを持つアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)に導入する。そして、目的の植物体に該アグロバクテリウムを感染させ、培地で培養を行う。この際、前述のようにベクターが選択マーカー配列を有していれば、例えば、該アグロバクテリウムを感染させた植物を、薬剤等を含有する培地で培養することによって、ベクターが導入されたトランスジェニック植物を容易に選択できる。
 アグロバクテリウム法により植物にベクターを導入する形質転換法は、国際公開WO2006/085699、Suzuki et al.(2000)Mol.Breeding 6,p239-246等に記載されており、これらに記載の方法に従って行うことができる。
 上記ベクターにより遺伝子が導入された植物を増殖又は生育させる方法、栽培する方法等については特に限定されるものではなく、トランスポーター遺伝子の種類、植物の種類等に応じた条件を適宜用いることができる。
 本発明において、形質転換の対象となる植物は、トランスポーター遺伝子により形質転換され、該遺伝子がコードするトランスポータータンパク質が発現し、結果として色素量が増加する植物であれば特に限定されない。本発明における植物は、好ましくは、色素を含む及び/又は色素合成する能力がある植物である。植物の色素としては、植物に含まれる色素性を有する化合物であればよく、例えば、フラボノイド、カロテノイド等が挙げられる。本発明における植物の色素は、好ましくはフラボノイドであり、本発明の方法の好ましい態様の1つは、植物のフラボノイド量を増加させることである。フラボノイドを含む及び/又はフラボノイドを合成する能力がある植物は、本発明における形質転換の対象として好適である。フラボノイドとしては、アントシアニン、オーロン、カルコン等が挙げられる。中でも、アントシアニンが好ましく、本発明のより好ましい態様の1つは、植物のアントシアニン量を増加させることである。例えば、ムギネ酸鉄トランスポーター遺伝子を導入した場合には、植物のアントシアニン量を効果的に増加させることができる。
 本発明の方法は、植物のアントシアニン量を増加させるのに好適である。
 アントシアニンには、そのアグリコンであるアントシアニジンのヒドロキシ基の位置により、デルフィニジン、シアニジン、ペラルゴジニン、オーランチニジン等がある。またヒドロキシ基がメトキシ化されているものも存在する。デルフィニジンのメトキシ体としては、マルビジン、ペチュニジン等が挙げられる。シアニジンのメトキシ体としては、ペオニジンが挙げられる。
 本発明における植物の色素としては、デルフィニジン、シアニジン及びペラルゴジニンからなる群より選択される少なくとも1種が好適であり、本発明の方法は、このような色素を増加させるために好適である。中でも、デルフィニジン及び/又はマルビジンがさらに好ましく、マルビジンが特に好ましい。このような色素を含む及び/又は合成する能力がある植物は、本発明における形質転換の対象として特に好適である。
 本発明において、トランスポーター遺伝子を使って形質転換される植物としては、単子葉植物又は双子葉植物が好ましい。より具体的には、例えば、ナス科植物(例えば、ナス、トマト、トウガラシ、ジャガイモ、タバコ、チョウセンアサガオ、ホオズキ、ペチュニア、カリブラコア、ニーレンベルギア等)、マメ科植物(例えば、ダイズ、アズキ、ラッカセイ、インゲンマメ、ソラマメ、ミヤコグサ等)、バラ科植物(例えば、イチゴ、ウメ、サクラ、バラ、ブルーベリー、ブラックベリー、ビルベリー、スグリ(カシス)、ラズベリー等)、ナデシコ科(カーネーション、カスミソウ等)、キク科(キク、ガーベラ等)、ラン科(ラン等)、サクラソウ科(シクラメン等)、リンドウ科(トルコギキョウ、リンドウ等)、アヤメ科(フリージア、アヤメ、グラジオラス等)、ゴマノハグサ科(キンギョソウ、トレニア等)、ベンケイソウ科(カランコエ)、ユリ科(ユリ、チューリップ等)、フウロソウ科(ペラルゴニウム、ゼラニウム等)、モクセイ科(レンギョウ等)、ブドウ科植物(例えば、ブドウ)、ツバキ科植物(例えば、ツバキ、チャノキ等)、イネ科植物(例えば、イネ、オオムギ、コムギ、エンバク、ライムギ、トウモロコシ、アワ、ヒエ、コウリャン、牧草類)、クワ科植物(例えば、クワ、ホップ、コウゾ、ゴムノキ、アサ等)、アカネ科植物(例えば、コーヒーノキ、クチナシ等)、ブナ科植物(例えば、ナラ、ブナ、カシワ等)、ヒルガオ科植物(サツマイモ等)、ゴマ科植物(ゴマ等)、ミカン科植物(例えば、ダイダイ、ユズ、ウンシュウミカン、サンショウ等)又はアブラナ科植物(赤キャベツ、ハボタン、ダイコン、シロイヌナズナ等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
 また、アントシアニンを含む植物又はその一部(組織)の例として、例えば、クワ、クランベリー、スグリ(カシス)、ハスカップ、ブルーベリー、ブラックベリー、プルーン、ビルベリー、アサイー、ブドウ、ラズベリー、ナス、黒米、黒大豆(黒豆)、黒ゴマ、イチゴ等の果実又は種子;赤キャベツ、ハボタン、赤ブドウ等の葉;サツマイモ(特にムラサキイモ)、ダイショ(ベニイモ)等の魂茎;バラ、キク、カーネーション、キンギョソウ、シクラメン、ラン、トルコギキョウ、フリージア、ガーベラ、グラジオラス、カスミソウ、カランコエ、ユリ、ペラルゴニウム、ゼラニウム、ペチュニア、トレニア、チューリップ、レンギョウ、シロイヌナズナ及びミヤコグサ等の花弁等が挙げられる。
 遺伝子を導入することにより得られたトランスジェニック植物において目的遺伝子が発現したことの確認は、例えば、ムギネ酸鉄トランスポーター遺伝子を導入した場合には、得られたトランスジェニック植物の根からRNAを調製し、その遺伝子特異的なプライマーを用いたRT-PCRによって、その産物をアガロースゲル電気泳動し該当するバンドを検出することによって行うことができる。
 また、トランスジェニック植物の根から全可溶性タンパク質を抽出し、それを電気泳動で分離してメンブレンにブロッティングした後、該当するバンドを検出することによっても、トランスポータータンパク質の発現を確認することができる。
 本発明において得られるトランスジェニック植物は、導入されたトランスポーター遺伝子の発現によりトランスポータータンパク質を生産するものであるが、このトランスポーター遺伝子は特に根の表皮細胞に発現することが好ましい。根の表面に導入したトランスポーター遺伝子が発現することにより、土壌中のムギネ酸金属錯体(好ましくは、ムギネ酸鉄(III)錯体)の取り込みが容易となる。トランスジェニック植物の根における該遺伝子の発現は、組織学的染色により確認できる。組織学的染色は、公知の方法により行なうことができる。
 なお、上記の遺伝子工学又は生物工学の操作については、市販の実験書、例えば、1982年発行のモレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、1989年発行のモレキュラー・クローニング第2版(Molecular Cloning, 2nd ed.)コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)等に記載された方法に従って容易に行うことができる。
 このようにして得られたトランスジェニック植物においては、導入されたトランスポーター遺伝子の発現によって鉄等の金属の取り込み量が増えることにより、植物において色素量が増加する。このため、該色素が含まれる及び/又は該色素を合成する植物の色を濃く及び/又は色を深くすることができ、植物の色を改変することができる。本発明において植物とは、例えば、植物体全体でも、植物体の一部でもよく、また、プロトプラスト、カルス等の植物細胞であってもよい。植物体の一部としては、花(花を構成する花弁、がく、雄蕊(花粉を含む)及び雌蕊等のうち1又は2以上)、花托、種子、果実、茎、根(根茎又は塊茎)、葉等の植物体の組織又は植物体の一部が挙げられる。本発明の好ましい態様の1つは、植物の花、花托、種子、果実、茎、根及び葉からなる群より選択される少なくとも一種において色素量を増加させることである。例えば、花弁等の花の色、果実の色等を深く及び/又は濃くすることにより、これまでにない色の花、果実等を有する植物を創製することができる。また、例えば、フラボノイド等の色素には抗酸化作用、紫外線防止作用等があることから、植物の色素量を増加させることにより、植物の抗酸化作用、紫外線防止作用、ストレス防御作用等を高めることもできる。
 本発明の方法によれば、トランスポーター遺伝子を導入していないコントロールの植物(植物体全体又はその一部分)と比較して、例えば、該遺伝子を導入した植物のアントシアニン量を、通常約1.05倍以上増加させることができる。好ましくは、約1.1倍以上、より好ましくは、約1.2倍以上、さらに好ましくは、約1.5倍以上増加させる。
 植物の色素量の測定は、公知の方法に従って行うことができ、例えばアントシアニン量は、Yukihisa Katsumoto et al. Plant Cell Physiol. 2007, 48, 1589-1600、又は国際公開WO2005/017147の実施例2に記載の方法に従って測定することができる。
 さらに、本発明により得られるトランスジェニック植物は、例えば、最も鉄欠乏耐性に強い、つまりアルカリ土壌下でも3価の鉄イオンを体内に摂取できるオオムギ由来のトランスポーター遺伝子が導入された場合には、ムギネ酸類鉄錯体摂取メカニズムを利用することにより、従来生育不能であったアルカリ土壌でも生育できる。このようなトランスジェニック植物は、例えばアルカリ土壌のような、2価鉄不含であるが3価鉄やムギネ酸鉄錯体を含有する土壌において栽培でき、アルカリ耐性を有するものである。すなわち本発明の方法によれば、さらに、植物にアルカリ耐性を付与することができる。また、本発明により得られるトランスジェニック植物は、例えば、ムギネ酸鉄トランスポータータンパク質をコードする遺伝子が導入された場合には、光合成に必要な鉄が効率よく吸収されるため、生長が速いという特徴を持ち、植物の生産性を向上できる。
 ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子の、植物の色素量を増加させるための使用も、本発明の1つである。ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子の、植物の耐アルカリ性を向上させるための使用も、本発明の1つである。トランスポーター遺伝子及びその好ましい態様、並びに植物への導入方法等は、上述と同様である。
 ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子を、植物に導入する工程を含む植物の色を改変する方法も、本発明の1つである。本発明の方法によれば、植物の色素量を増加させることができ、これにより植物の色を濃く及び/又は色を深くすることができる。このため、植物又はその部分の色を改変することができる。本発明の好ましい態様は、上述した植物の色素量を増加させる方法と同様である。
 ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子の、植物の色を改変するための使用も、本発明の1つである。トランスポーター遺伝子及びその好ましい態様、並びに植物への導入方法等は、上述と同様である。
実施例
 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
 本実施例において、分子生物学的手法は特に断らない限り、国際公開WO96/25500又はMolecular Cloning(Sambrook et al.,(1989),Cold Spring Harbour Laboratory Press)に記載されている方法に従った。
(HvYS1遺伝子を導入したペチュニア形質転換体の作製)
(I)HvYS1cDNAのクローニング
 HvYS1cDNAのクローニングは、国際公開WO2006/126294の実施例1に記載した方法に従って行ない、オオムギ(品種Morex)の根から配列番号2で示されるポリヌクレオチドからなる塩基配列を得た。配列番号2で示されるポリヌクレオチドからなる塩基配列は、HvYS1(Hordeum Vulgare Yellow Stripel)と命名されている(DDBJ Accession No.AB214183)。なお、配列番号2で示される塩基配列において、第169~2202番目の塩基配列が、オオムギトランスポータータンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列(配列番号1)である。
 HvYS1発現ベクターの構築、及びペチュニア(Petunia hybrida、品種サフィニアパープルミニ、サントリー社製)の形質転換は、以下に示すように国際公開WO2006/126294の実施例1に記載した方法に従って行った。
(II) HvYS1発現ベクターの構築
 (i)pCGP1394(Tanaka et al.,1995,Plant Cell Physiol,36:1023-1031に記載)をHindIII及びSacIIで消化して得られる約1.3kbのDNA断片と、(ii)pCGP1394をPstIで消化後ブランティングキット(TaKaRa社製)を用いて平滑末端化し、さらにSacIIで消化して得られる約2kbのDNA断片と、(iii)pBinPLUS(van Engelen et al.,1995,Trangenic Research,4,288-290)をSacIで消化後同様に平滑末端化しさらにHindIIIで消化した約12kbのDNA断片の、(i)~(iii)3種のDNA断片をライゲーションして得られるプラスミドをpSPB185とした。
 HvYS1はTOPO-TAクローニングキット(Invitrogen社製)を用い、PERII-TOPOのベクターに以下のプライマーで増幅したPCR産物をサブクローニングした。
フォワードプライマー: 5’-GCTCTAGAAT GGACATCGTC GCC-3’(配列番号4)
リバースプライマー: 5’-CCCAAGCTTT TAGGCAGCAG GTAG-3’(配列番号5)
 上記フォワードプライマーは、HvYS1翻訳領域5’末端に制限酵素サイトとしてXbaI配列(GCTCTAGA)を付加したものであり、リバースプライマーは、HvYS1翻訳領域3’末端に制限酵素サイトとしてHindIII配列(CCCAAGCTT)を付加したものである。
 このHvYS1を含有するプラスミド(サブクローニングされたPERII-TOPOベクター)を、まずHindIIIで消化し、突出する末端をブランティングキット(TaKaRa社製)を用いて平滑末端化し、さらにXbaIで消化して約2kbのHvYS1を含有するDNA断片を取り出した。別途、増幅したpSPB185をKpnIで消化し、末端を同様に平滑末端化し、さらにXbaIで消化して約14kbのDNA断片を得た。次いで、前記HvYS1を含有するDNA断片と約14kbのDNA断片とをライゲーションして連結し、図2に示すプラスミドMac-HvYS1-mas-pBinPlusを作製した。このプラスミドは、植物において、HvYS1をMacプロモーター(Comai et al.,1990,Plant Mol Biol,15,373-381)により構成的に発現させることを目的としている。
(III) ペチュニアの形質転換
 引き続いて、公知の方法(Plant J.,5,81,1994)に基づいて、Mac-HvYS1-mas-pBinPlusを用いてアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens strain Ag10)を形質転換した。次いで、該形質転換されたアグロバクテリウムをペチュニア(Petunia hybrida、品種サフィニアパープルミニ(サントリー社製))に感染させ、HvYS1の翻訳領域遺伝子をペチュニアに導入し、ペチュニア形質転換体(形質転換体T-1株~T-22株)を得た。
 すべての植物を16時間照射(60μE.冷白色蛍光灯)のもとで23±2℃に保持した。根が2~3cmの長さに達したとき、ペチュニア形質転換体を、15cmの培養ポット中のオートクレーブ殺菌されたDebco 51410/2ポットミックスに移植した。4週間後、植物を同じポットミックスを用いる15cmのポットに再移植し、そして14時間照射(300μE.ハロゲン化水銀灯)のもとで23℃にて保持した。
(ペチュニア形質転換体のHvYS1遺伝子の発現とHvYS1タンパク質の局在)
 導入されたHvYS1のRT-PCR法による検出は、国際公開WO2006/126294「ムギネ酸鉄錯体選択的トランスポーター遺伝子」の実施例6に記載した方法で行った。その結果、HvYS1を導入した形質転換体では、HvYS1由来のPCR産物として予想される755bpにバンドが検出され、HvYS1遺伝子がペチュニアに導入されていることを確認した。HvYS1遺伝子を導入していない通常のペチュニアにおいてはGAPDHのPCR産物(約1000bp)は検出されたが、HvYS1由来のPCR産物は検出されなかった。
 HvYS1タンパク質の局在は、抗体染色法により、明らかにした。HvYS1抗体として、非特許文献13(Murata, Y. et al. Plant J. 2006, 46, 563-572)に記載の方法でポリクローナル抗体を作製した。ペチュニア形質転換体の根及びコントロールのペチュニアの根の横断面方向の、厚さ5μMのパラフィン切片を作製した。これらのパラフィン切片を脱パラフィン後、ブロッキング液(1%BSA/PBS)に室温1時間反応させ、その後HvYS1抗体をブロッキング液で100倍希釈したものを各切片に50μLかけて、チャンバーボックスに並べて、4℃の暗所で15時間反応させた。これをPBST(PBS+0.05%Tween20)で10分×4回洗浄後、二次抗体、Alexa Fluor 488(goat anti-rabbit、Invitrogen社製)をブロッキング液で1000倍希釈したものと、室温で1時間反応させた。これをPBSTで10分×4回洗浄後、水溶性の封入剤、CRYSTAL/MOUNT(Biomeda Corp.)で封入した。これをNIKON ECLIPSE顕微鏡で観察し、AQUA-Lite(浜松フォトニクス)で画像処理を行った。HvYS1抗体によって染色されたHvYS1タンパク質は、該抗体に結合した蛍光色素(緑色の蛍光を発する)によって検出される。図3a~dはそれぞれ、ペチュニア形質転換体及びペチュニア非形質転換体(コントロール)の根の横断面方向の切片を免疫染色したものの顕微鏡写真である(白いスケールバー:100μm)。図3aは、ペチュニア形質転換体の根の横断方向の切片をHvYS1抗体で染色したもの、図3bは、ペチュニア形質転換体の根の横断方向の切片をHvYS1抗体を使用せずに染色したブランク、図3cは、ペチュニア非形質転換体の根の横断方向の切片をHvYS1抗体で染色したもの、図3dは、ペチュニア非形質転換体の根の横断方向の切片を、HvYS1抗体を使用せずに染色したブランクである。図3a~dにおいて、灰色に見える部分が緑色の蛍光部分であり、抗体が結合したHvYS1タンパク質である。非形質転換体(図3c)ではHvYS1の発現が見られなかったが、形質転換体(図3a)の根のすべての細胞膜にHvYS1トランスポーターが発現していた。
(デオキシムギネ酸鉄錯体含有培地でのペチュニア形質転換体の水耕栽培)
 ペチュニアは、鉄獲得機構Iをもつ(図1a)。しかし、ナス科であるペチュニアは本来、鉄獲得機構II(図1b)を持たないものである。そこで、ムギネ酸鉄錯体トランスポーターHvYS1を導入して作製したペチュニア形質転換体を、デオキシムギネ酸(DMA)鉄錯体を添加した培地で栽培することにより、該ペチュニア形質転換体がイネ科植物のもつ鉄獲得機構II(図1b)を利用することができるかを検証した(図1は、非特許文献6から引用した)。アッセイに用いたデオキシムギネ酸は、イネやトウモロコシが分泌しているファイトシデロフォアであり、本発明者らは、既に簡便でかつ高収率の合成方法を確立している(日本国特許第4117009号、又はKosuke Namba et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 7060-7063.)。
 実施例1で作製した形質転換体T-12株、T-14株及びT-15株及び非形質転換体コントロールを、根が3cmに伸びた段階で水耕栽培へ移した。水耕栽培の培地には、pH5.8のMS培地を用い、これに、含有鉄としてエチレンジアミン4酢酸鉄錯体(EDTA-Fe(III))50μM又はデオキシムギネ酸鉄錯体(DMA-Fe(III))50μMを添加した。栽培においては、該培地に通気しながら各ペチュニアを2週間~4週間生育させた。培地は1週間に2度交換した(つまり、3又は4日に1度交換した)。
 この4週間水耕栽培したペチュニア非形質転換体及びペチュニア形質転換体の花の色を、以下の実施例5において分析した。
(ペチュニア形質転換体の根からデオキシムギネ酸鉄錯体の検出)
 植物内でのムギネ酸類鉄錯体の検出方法として、ナノエレクトロスプレーイオン化、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(Nano-electrospray Ionization Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance Mass Spectrometry:以下、単に「Nano-ESI-FTICR MS」と記載する)の高分解能質量分析法を用いた。FT-ICR MSによる、合成ムギネ酸鉄錯体やカドミウム錯体の検出はすでに報告されている(Gunther Weber et al. Rapid Commun. Mass Spectom. 2006, 20, 973-980及びAnderson R. Meda et al. Plant Physiol. 2007, 143, 1761-1773)が、多くの成分が含まれている植物抽出物からムギネ酸鉄錯体のFT-ICRMSによる分子イオンピークを検出したのは、本願が初めてである。
 実施例3で得られた、デオキシムギネ酸鉄錯体(DMA-Fe(III))(50μM)含有MS培地、又はEDTA-Fe(III)(50μM)含有MS培地で2週間水耕栽培したペチュニア形質転換体及び非形質転換体それぞれの根をEGTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸)含有水で2回洗浄後、-80℃で保存した。そのうち約3gを液体窒素中乳鉢で粉砕して1gあたり2mLの滅菌水を加えた。2mLエッペンチューブにサンプルを移し、まず、遠心機(トミー精機、MX-150)を用いて、13、000gで10分、4℃で遠心後、上清をとり、さらにBeckman卓上超遠心機(Beckman COULTER、optimaTLX)で100,000g、60分、4℃遠心後、上清を採った。この上清をゲルろ過カラムクロマト(ガラスカラム:3mm×300mm(GL Sciences Inc.)、充填剤:Sephadex G-10(GE Healthcare UK Ltd.)、パッキング:湿式、HPLCシステム:Agilent model 1100 liquid chromatograph、流速:0.03mL/min、移動相:Water(HPLCグレード、Merck)、UV:330nm、サンプル量:5μL)にアプライし、31~34分の溶出フラクションを得た。このフラクションを用いて、Nano-ESI-FTICR MSの高分解能質量分析を行った。
 Nano-ESI-FTICR MSの分析条件は、MS機器:Apex-Q94e(Bruker社製)、イオン源:Apollo2 dual source、極性:ネガティブ、タイムドメイン:2M、キャリブラント:NaI(0.1mg/mL in 50% i-PrOH)、積算:50~500回で行った。
 図4a~dに、Nano-ESI-FTICR MSのスペクトルを示す。図4aは、ペチュニア形質転換体の根の抽出物、図4bは、ペチュニア非形質転換体の根の抽出物について測定したスペクトルである。デオキシムギネ酸鉄錯体の分子イオンピークは、356=[DMA(分子量;304)-4H+Fe(III)]-1である。図4a及びbのペチュニアはいずれも、DMA-Fe(III)添加MS培地で水耕栽培したものである。図4cは、EDTA-Fe(III)添加MS培地で栽培したペチュニア形質転換体の根の抽出物のNano-ESI-FTICR MSスペクトルである。図4dは、EDTA-Fe(III)添加MS培地で栽培したペチュニア非形質転換体の根の抽出物のNano-ESI-FTICR MSスペクトルである。
 デオキシムギネ酸鉄錯体(DMA-Fe(III))添加培地にて水耕栽培したペチュニア形質転換体の根においてのみ、デオキシムギネ酸鉄錯体を検出し(図4a~d)、遺伝子導入したトランスポーターが機能して、デオキシムギネ酸鉄錯体を選択的に培地から植物体内にとりこむ機能を有していることが示された。
(水耕栽培したペチュニア形質転換体の花色解析)
 実施例3で得られた、4週間(28日)水耕栽培したペチュニア非形質転換体及びペチュニア形質転換体の花の色を、以下のようにして分析した。
(I)目視による花色の観察
 ペチュニア非形質転換体(コントロール)及びペチュニア形質転換体(形質転換体T-14株及びT-15株)の花(花弁)の色を目視で観察した。図5aは、温室水耕栽培28日目のコントロールのペチュニアの写真である。図5bは、温室水耕栽培28日目のコントロールのペチュニアの花の写真である。図5c及びdはそれぞれ、温室水耕栽培28日目の形質転換体T-14株(図5c)及びT-15株(図5d)の花の写真である。図6は、コントロール及びペチュニア形質転換体の花(花弁)の色を比較した写真であり、aがコントロール、bがペチュニア形質転換体の花である。このように、図5a~d及び図6より、形質転換体の方がコントロールより明らかに花の色(赤紫色)が濃いことが観察された。一方、葉の色(緑色)及び茎の色(黄緑色)は、ペチュニア形質転換体及びペチュニア非形質転換体(コントロール)で差が観察されなかった(図5a~d)。
(II)花のpHの測定方法
 -80度で1時間以上凍結したペチュニアの花弁約2gを、ホモジナイザーを用いて絞り、搾汁液を得た。これを、pHメーター(F-22、堀場製作所社製)に微小電極6069-10C(堀場製作所社製)を接続してpHを測定した。コントロール及びペチュニア形質転換体の花のpHには、表1に示すように差がなかった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
(III)色差計による花色の測定
 花色測定は分光測定計CM2022(ミノルタ社製、日本)を用いて、Y Katsumoto et al. Plant Cell Physiol. 2007, 48, 1589-1600、又は国際公開WO2005/017147の実施例1に記載した方法に従って行った。具体的には、分光測定計CM2022(ミノルタ社製、日本)を用いて、10度視野、D65光源で測定し、色彩管理ソフトSpectraMagic(ミノルタ社製、日本)により解析を行なった。ペチュニア形質転換体及び非形質転換体の花の色差を図7に示す。ペチュニア形質転換体は、コントロールである非形質転換体に比べて、色差計で色の濃さを表すhue値が約半分であり、これは、花の色が濃いことを示している。
(IV) アントシアニンの分析
 花弁色素アントシアニン(マルビジン)の分析は高速液体クロマトグラフイー(HPLC)を用いて、Y Katsumoto et al. Plant Cell Physiol. 2007, 48, 1589-1600、又は国際公開WO2005/017147の実施例2に記載した方法に従って行った。具体的な手順は、以下の通りである。
 凍結乾燥した花弁0.5gをスパーテルで潰し、これを4mLの0.1%TFAを含む50%アセトニトリル中で20分間、超音波下で抽出し、3600rpm×10分、5℃にて遠心分離した。上澄みを採取し、0.45μmのフィルターでろ過した(Cosmonice Filter W、13mm/0.45μm)。この抽出液のアントシアニン量を、以下の分析条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。
HPLC装置:島津LC10A(島津製作所社製)
紫外可視分光光度検出器:SPD-M10A(島津製作所社製)
カラム:Shodex DE-413L(4.6mmΦ×25cm、昭和電工社製)
流速:0.6mL/分
圧力:90kg/cm
カラム温度:40℃
移動層:A液 0.5%(v/v)TFA(トリフルオロ酢酸)水溶液
    B液 0.5%(v/v)TFAを含有する50%アセトニトリル水溶液
グラジエント:B液20%から100%のグラジエント15分の後、B液100%でイソクラティック溶出を行なった。
注入量:15μL
検出:島津フォトダイオードアレイ検出器SPD-M10AVP(島津製作所社製)により、250-600nmの波長領域を検出し、520nmの吸光度の面積により、各アントシアニンを定量した。
 定量については、標品と保持時間(R.T.)とλmaxの一致したピークを520nmの面積で定量した。約100本の分析に1回、80%アセトニトリルで40分洗浄した。標品として、MALVIDIN CHLORIDE(ChromaDex社製)を使用した。
 上記方法により測定した、EDTA-Fe(III)添加培地又はDMA-Fe(III)添加培地で水耕栽培したペチュニア形質転換体及び非形質転換体のマルビジン量(乾燥質量あたりのマルビジン量:マルビジン(mg)/乾燥質量(g))を図8に示す。この結果から、ペチュニアのアントシアニン色素であるマルビジン量が約2倍増えていることが明らかになった。
 以上の結果から、花の写真(図6)に示されるように、ペチュニア形質転換体が非形質転換体より色が濃く見えるのは、花弁における単位質量あたりの色素量が増えたためであることが示された。
(ペチュニア形質転換体のアルカリ耐性能の検証1)
 ペチュニア形質転換体(形質転換体 T-12株、T-14株及びT-15株)のアルカリ耐性を調べるために、pH5.8又はpH8.0のアルカリ水耕培地でペチュニア非形質転換体(コントロール)及び形質転換体を生育させた。水耕栽培は、図9に示すように、ポリプロピレン製フロート(ポリプロピレン板)を水耕培地上に浮かべて行った。図9eに、水耕培地上のポリプロピレン製フロートにおける各植物体の栽培位置を示す。図9eに示すように、ポリプロピレン板に8個穴を開け、上からコントロール、T-12株、T-14株及びT-15株について、各々2つずつエッペンチューブ底に穴をあけて植物を差込み、各々の根が水耕培地に触れるようにした。培地は、MGRL培地(Fujiwara T. et al, Plant Physiol.1992、 vol.99, 263-268, 1992)に、含有鉄としてエチレンジアミン4酢酸鉄錯体(EDTA-Fe(III))20μM又はデオキシムギネ酸鉄錯体(DMA-Fe(III))20μMを添加し、栽培中、培地に通気しながら、該培地で2週間生育させた。培地のpHは、1N KOHで調節した。図9aは、pH5.8のEDTA-Fe(III)添加培地、図9bは、pH5.8のDMA-Fe(III)添加培地、図9cは、pH8.0のEDTA-Fe(III)添加培地、図9dは、pH8.0のDMA-Fe(III)添加培地でそれぞれ生育させたコントロール(上1列目)と形質転換体 T-12株(上から2列目)、T-14株(上から3列)、及びT-15株(上から4列目)とをトレーで栽培した写真である。EDTA-Fe(III)を添加したアルカリ培地(図9c)では、コントロール及び形質転換体ともにクロロシスを起こし、生育が悪かった。しかし、DMA-Fe(III)添加培地(図9d)では、形質転換体である上から2、3及び4列(上から順に、形質転換体T-12株、T-14株及びT-15株)は一番上のコントロールに比べてアルカリ耐性を示した。
(ペチュニア形質転換体のアルカリ耐性能の検証2)
 ペチュニア形質転換体(T-14株及びT-15株の2株)及びコントロール(ペチュニア非形質転換体)各々を、pH8.0のデオキシムギネ酸鉄錯体20μM含有MGRL培地(Fujiwara T. et al,Plant Physiol.1992、vol99,263-268,1992)で2週間水耕栽培した後、目視により生育を観察し(図10a~c)、さらに、生育(地上部及び根各々の質量及び長さ)及び根の鉄濃度を測定した(図11a~e)。鉄濃度は、Vert G. et al. Plant Cell 2002, vol. 14, 1223-1233に記載の方法に従って、根を洗浄後、60℃の乾燥機で2日乾燥し、その質量を乾燥質量とした。鉄濃度の測定では、この根の乾燥物に2Nの硝酸を加えて、湿式灰化法により、溶解し、島津原子吸光光度計AA-6800で鉄濃度を測定した。
 図10aは、非形質転換体(コントロール)の写真であり、図10bは、形質転換体T-14株の写真であり、図10cは、形質転換体T-15株の写真である。
 図11aは非形質転換体、形質転換体 T-14株及びT-15株の地上部の長さ(cm)の測定結果を、図11bは、非形質転換体、形質転換体 T-14株及びT-15株の地上部の質量(g)の測定結果を、図11cは、非形質転換体、形質転換体 T-14株及びT-15株の根の長さ(cm)の測定結果を、図11dは、非形質転換体、形質転換体 T-14株及びT-15株の根の質量(g)の測定結果を、それぞれ示す。図11eは、pH8.0のEDTA-Fe(III)添加培地又はpH8.0のDMA-Fe(III)添加培地で生育させた非形質転換体、形質転換体 T-14株及びT-15株それぞれの根の鉄濃度(根の鉄濃度:根の鉄含有量/乾燥質量(mg/g))を測定した結果を示す図である。
 図11a~e中、*は、有意差検定 p<0.01を示し、**は、有意差検定 p<0.05を示す。図10a~c及び図11a~dより、ペチュニア形質転換体において、地上部及び根の質量、並びに地上部及び根の長さ共にコントロールの約1.5~2倍に生育しており、図11eより、植物体内の鉄濃度もペチュニア形質転換体の方がコントロールより若干増えており、ペチュニア形質転換体がアルカリ耐性を示すことが分かった。
 本発明によれば、植物の色素量を増加させることができるため、花等の色を濃く及び/又は色を深くすることができる。さらに本発明によれば、植物にアルカリ耐性を付与することができる。従って本発明は、農業、園芸等の分野等において有用である。

Claims (11)

  1.  ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子を、植物に導入する工程を含むことを特徴とする植物の色素量を増加させる方法。
  2.  トランスポータータンパク質が、ムギネ酸金属錯体を選択的に取り込むタンパク質である請求の範囲第1項に記載の方法。
  3.  トランスポータータンパク質が、ムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込むタンパク質である請求の範囲第1項に記載の方法。
  4.  トランスポータータンパク質が、イネ科植物由来のトランスポータータンパク質である請求の範囲第1項に記載の方法。
  5.  トランスポータータンパク質が、オオムギ由来のトランスポータータンパク質である請求の範囲第1項に記載の方法。
  6.  トランスポータータンパク質をコードする遺伝子が、配列番号1で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号1のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつムギネ酸鉄錯体を選択的に取り込む活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである請求の範囲第1項に記載の方法。
  7.  植物の色素が、フラボノイドである請求の範囲第1項に記載の方法。
  8.  植物の色素が、アントシアニンである請求の範囲第1項に記載の方法。
  9.  植物の花、花托、種子、果実、茎、根及び葉からなる群より選択される少なくとも一種において色素量を増加させる請求の範囲第1項に記載の方法。
  10.  ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子の、植物の色素量を増加させるための使用。
  11.  ムギネ酸金属錯体を取り込むトランスポータータンパク質をコードする遺伝子を、植物に導入する工程を含むことを特徴とする植物の色を改変する方法。
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