WO2010084894A1 - 磁性光硬化樹脂で作成した回転構造体およびそれを使用した磁気駆動マイクロアクチュエータ - Google Patents
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Abstract
本発明は、磁性光硬化樹脂を用いて作成した回転構造体およびそれを使用した磁気駆動マイクロチュエータを提供することにある。 本発明の磁気駆動マイクロアクチュエータは、磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって実際に作製された回転子と、この回転子の周りに配置した電磁コイル対とから構成され、電磁コイル対で回転磁場を印加することにより回転子を回転させることを特徴としている。このアクチュエータによれば、微小流量を連続流で送液可能なマイクロスクリューポンプおよび狭所空間を移動する泳動マクロマシン等を達成することができる。
Description
本発明は、本発明者らが先に開発に成功した磁性光硬化樹脂を用いて作成した回転構造体およびそれを使用した磁気駆動マイクロアクチュエータに関するものである。
光硬化性樹脂を用いた光造形装置及び光造形法についてはこれまで種々の技術が提案されている(特許文献1~特許文献4)。
上記各文献に記載された光硬化樹脂と、今回使用する磁性光硬化樹脂とは以下の点で相違している。
引用文献1のものは微粒子を均一に分散する上で難点があるのに対し、本発明で使用する磁性光硬化樹脂は増粘剤混合により光硬化樹脂を高粘度化(流動性を悪く)することで微粒子の凝集・沈殿を抑制し、均一分散を実現しており、この樹脂は攪拌を継続的に行わなくても、均一分散を長時間維持可能である。
引用文献2のものは、磁性物体は光造形中に不規則運動させることを前提とし、補強材を攪拌することを目的としているが、本発明において使用する磁性光硬化樹脂は磁性微粒子を造形中に運動させず、完成した立体構造物自体に磁性を持たせることができる。
引用文献3のものは光硬化樹脂のはじきを改善するために磁性微粒子を混ぜているが、本発明は所定量(例えば50wt%)の磁性微粒子を混合させて構成した樹脂であり、磁性アクチュエータやセンサなどに応用することができる。
引用文献4のものは、光硬化樹脂に粉体を混ぜ剛性を増加させることで、作製時にサポートの形成を不要とすることを目的としているが、本発明は完成した立体構造物を磁性アクチュエータやセンサなどに応用するために磁性微粒子を混ぜた樹脂である。
引用文献1のものは微粒子を均一に分散する上で難点があるのに対し、本発明で使用する磁性光硬化樹脂は増粘剤混合により光硬化樹脂を高粘度化(流動性を悪く)することで微粒子の凝集・沈殿を抑制し、均一分散を実現しており、この樹脂は攪拌を継続的に行わなくても、均一分散を長時間維持可能である。
引用文献2のものは、磁性物体は光造形中に不規則運動させることを前提とし、補強材を攪拌することを目的としているが、本発明において使用する磁性光硬化樹脂は磁性微粒子を造形中に運動させず、完成した立体構造物自体に磁性を持たせることができる。
引用文献3のものは光硬化樹脂のはじきを改善するために磁性微粒子を混ぜているが、本発明は所定量(例えば50wt%)の磁性微粒子を混合させて構成した樹脂であり、磁性アクチュエータやセンサなどに応用することができる。
引用文献4のものは、光硬化樹脂に粉体を混ぜ剛性を増加させることで、作製時にサポートの形成を不要とすることを目的としているが、本発明は完成した立体構造物を磁性アクチュエータやセンサなどに応用するために磁性微粒子を混ぜた樹脂である。
従来の磁気駆動マイクロアクチュエータは、エネルギー供給の配線なしで駆動が可能であり、エネルギー供給源を外部に配置することができるため、閉空間での遠隔駆動が可能である。この特長はマイクロ流体デバイス内での流体制御や人体内での駆動を目的としたアクチュエータとして有効であり、今までに様々な磁気駆動マイクロアクチュエータが開発されている。
磁性材料の微細加工は電気メッキ、ポリマー材料のスクリーンプリントやモールディングなどがあるが、これらは作製可能な構造が基本的に2次元的な構造に制約される。
一方で、磁性マイクロ部品を組み立てて立体マイクロマシンを作製した例はあるが、この方法は高度な技術を要するため、構造が小型化・複雑化するにつれて作製が困難になる。
光造形法はラピッドプロトタイピングを基とした微細加工法であり、複雑な立体マイクロ構造物を容易にかつ短時間に作製可能とする。しかしその反面、使用可能な材料が光で固まるポリマー材料に限定されるため、材料の選択性に問題があった。近年ではこの問題を克服すべく、光造形法に適用可能な機能性光硬化樹脂が開発されている。しかし、磁性構造を立体的に作製可能な材料は未だ存在しない。
一方、本発明者等は複雑な磁性立体構造物を作製するために、先に光造形に適用可能な磁性光硬化樹脂の開発に成功した(特願2008−331701)。この磁性光硬化樹脂は通常の光硬化樹脂に磁性微粒子と増粘剤を添加して調合されたものである。
本発明はこの磁性光硬化樹脂で作成した回転構造体およびそれを使用した磁気駆動マイクロアクチュエータを提供せんとするものであり、本発明によれば、作製方法にマイクロ光造形法を用いることにより、従来よりも小型でかつ精度の良い磁気駆動アクチュエータ(スクリュー型アクチュエータや泳動マイクロマシン等)を提供することができる。
磁性材料の微細加工は電気メッキ、ポリマー材料のスクリーンプリントやモールディングなどがあるが、これらは作製可能な構造が基本的に2次元的な構造に制約される。
一方で、磁性マイクロ部品を組み立てて立体マイクロマシンを作製した例はあるが、この方法は高度な技術を要するため、構造が小型化・複雑化するにつれて作製が困難になる。
光造形法はラピッドプロトタイピングを基とした微細加工法であり、複雑な立体マイクロ構造物を容易にかつ短時間に作製可能とする。しかしその反面、使用可能な材料が光で固まるポリマー材料に限定されるため、材料の選択性に問題があった。近年ではこの問題を克服すべく、光造形法に適用可能な機能性光硬化樹脂が開発されている。しかし、磁性構造を立体的に作製可能な材料は未だ存在しない。
一方、本発明者等は複雑な磁性立体構造物を作製するために、先に光造形に適用可能な磁性光硬化樹脂の開発に成功した(特願2008−331701)。この磁性光硬化樹脂は通常の光硬化樹脂に磁性微粒子と増粘剤を添加して調合されたものである。
本発明はこの磁性光硬化樹脂で作成した回転構造体およびそれを使用した磁気駆動マイクロアクチュエータを提供せんとするものであり、本発明によれば、作製方法にマイクロ光造形法を用いることにより、従来よりも小型でかつ精度の良い磁気駆動アクチュエータ(スクリュー型アクチュエータや泳動マイクロマシン等)を提供することができる。
このため、本発明が採用した技術解決手段は、
磁性光硬化樹脂で作製された回転子と、この回転子を駆動させるための電磁コイルとから構成される磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記に記載の磁性光硬化樹脂は、硬磁性を有する磁性光硬化樹脂であることを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記に記載の磁性光硬化樹脂は、基材となる材料がアクリル系、エポキシ系、オキセタン系、ウレタン系、シリコン系等の光硬化樹脂のいずれかであり、添加される磁性微粒子が希土類微粒子、フェライト微粒子等のいずれかであり、添加される増粘剤がヒュームドシリカ、炭酸カルシウムのいずれかである磁性光硬化樹脂であることを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記回転子が光造形法によって作製されたことを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記回転子に電磁コイルによって 回転磁場を印加し、前記回転子を回転駆動させることを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記回転子がスクリュー形状をしていることを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記に記載の磁気駆動マイクロアクチュエータを用いたことを特徴とするマイクロスクリューポンプである。
また、前記マイクロスクリューポンプは、磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって作成されたスクリューと、このスクリューを挿入するマイクロ流路と、マイクロ流路の周囲の半径方向に配置した電磁コイル対とから構成され、電磁コイル対で回転磁場を印加することによりスクリューを回転させることを特徴とするマイクロスクリューポンプである。
また、前記記載の磁気駆動マイクロアクチュエータを用いたことを特徴とする泳動マイクロマシンである。
また、前記泳動マイクロマシンは、磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって作製されたスクリューと、このスクリューの周りに配置した電磁コイルとから構成され、電磁コイル対で回転磁場を印加することによりスクリューを回転させることを特徴とする泳動マイクロマシンである。
磁性光硬化樹脂で作製された回転子と、この回転子を駆動させるための電磁コイルとから構成される磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記に記載の磁性光硬化樹脂は、硬磁性を有する磁性光硬化樹脂であることを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記に記載の磁性光硬化樹脂は、基材となる材料がアクリル系、エポキシ系、オキセタン系、ウレタン系、シリコン系等の光硬化樹脂のいずれかであり、添加される磁性微粒子が希土類微粒子、フェライト微粒子等のいずれかであり、添加される増粘剤がヒュームドシリカ、炭酸カルシウムのいずれかである磁性光硬化樹脂であることを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記回転子が光造形法によって作製されたことを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記回転子に電磁コイルによって 回転磁場を印加し、前記回転子を回転駆動させることを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記回転子がスクリュー形状をしていることを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータである。
また、前記に記載の磁気駆動マイクロアクチュエータを用いたことを特徴とするマイクロスクリューポンプである。
また、前記マイクロスクリューポンプは、磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって作成されたスクリューと、このスクリューを挿入するマイクロ流路と、マイクロ流路の周囲の半径方向に配置した電磁コイル対とから構成され、電磁コイル対で回転磁場を印加することによりスクリューを回転させることを特徴とするマイクロスクリューポンプである。
また、前記記載の磁気駆動マイクロアクチュエータを用いたことを特徴とする泳動マイクロマシンである。
また、前記泳動マイクロマシンは、磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって作製されたスクリューと、このスクリューの周りに配置した電磁コイルとから構成され、電磁コイル対で回転磁場を印加することによりスクリューを回転させることを特徴とする泳動マイクロマシンである。
本発明の第1実施例に係る発明によれば、
磁性光硬化樹脂と光造形法を用いて磁気駆動スクリュー型アクチュエータを作製することで、従来よりも小型なマイクロスクリューポンプを提供できる。
このマイクロスクリューポンプは以下のユニークな特徴を持っている。
1)微小流量の連続流送液
2)周波数に対する線形応答
3)粘度に依存しない流量効率
この特徴はマイクロ流体デバイスで大いに活かすことができる。例えば、精密分析用のマイクロポンプとしての利用が期待される。
本発明の第2実施例に係る発明によれば、
磁性光硬化樹脂と光造形法を用いて磁気駆動スクリュー型マイクロ回転子を作製し、外部電磁コイルで生成した回転磁場によって回転子を駆動させることで、配線なしで駆動可能であり、かつ従来よりも小型化された泳動マイクロマシンを提供できる。このマイクロマシンは、血管の中を通って狭所空間の患部へ到達して治療する将来のマイクロサージェリロボットとして有効である。
磁性光硬化樹脂と光造形法を用いて磁気駆動スクリュー型アクチュエータを作製することで、従来よりも小型なマイクロスクリューポンプを提供できる。
このマイクロスクリューポンプは以下のユニークな特徴を持っている。
1)微小流量の連続流送液
2)周波数に対する線形応答
3)粘度に依存しない流量効率
この特徴はマイクロ流体デバイスで大いに活かすことができる。例えば、精密分析用のマイクロポンプとしての利用が期待される。
本発明の第2実施例に係る発明によれば、
磁性光硬化樹脂と光造形法を用いて磁気駆動スクリュー型マイクロ回転子を作製し、外部電磁コイルで生成した回転磁場によって回転子を駆動させることで、配線なしで駆動可能であり、かつ従来よりも小型化された泳動マイクロマシンを提供できる。このマイクロマシンは、血管の中を通って狭所空間の患部へ到達して治療する将来のマイクロサージェリロボットとして有効である。
図1は磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作成された直径0.5mmのスクリュー型マイクロ回転子の写真である。
図2は磁気駆動スクリュー型マイクロアクチュエータをもちいたマイクロスクリューポンプの駆動原理説明図である。
図3はマイクロスクリューポンプの流量特性である。
図4は磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作成された直径0.1mmのスクリュー型マイクロ回転子の写真である。
図5は泳動マイクロマシンの駆動原理説明図である。
図6は泳動マイクロマシンの泳動特性を示すグラフである。
図2は磁気駆動スクリュー型マイクロアクチュエータをもちいたマイクロスクリューポンプの駆動原理説明図である。
図3はマイクロスクリューポンプの流量特性である。
図4は磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作成された直径0.1mmのスクリュー型マイクロ回転子の写真である。
図5は泳動マイクロマシンの駆動原理説明図である。
図6は泳動マイクロマシンの泳動特性を示すグラフである。
1 キャピラリ
2 流体
3 回転子
4 電磁コイル対
5 キャピラリ
6 流体
7 回転子
8 ヘルムホルツコイル対
2 流体
3 回転子
4 電磁コイル対
5 キャピラリ
6 流体
7 回転子
8 ヘルムホルツコイル対
本発明に係る発明は、磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって作製された回転子と、この回転子の周りに配置した電磁コイル対とから構成され、電磁コイル対で回転磁場を印加することにより回転子を回転させることを特徴としている。
先ずはじめに、本発明において使用する磁性光硬化樹脂について簡単な説明をしたのち、具体的アクチュエータについての説明をする。
〔磁性光硬化樹脂〕について
光硬化樹脂の主成分はポリマーであるので、強磁性を示さない。磁性と光硬化性を両立した磁性光硬化樹脂は通常の光硬化性樹脂に磁性微粒子を添加することにより実現される。従来からSU−8に磁性微粒子を添加することによる感光性磁性材料はすでに開発されているが、SU−8は溶剤を使用しているため光造形法に適用することはできない。
本発明者等はポリマーマトリックスとして無溶媒の光硬化樹脂を使用し、この樹脂に磁性微粒子と一緒に増粘剤を添加した磁性光硬化樹脂の開発に成功した。
具体的には、光硬化樹脂に所定量の磁性微粒子及び所定量の増粘材を混入し攪拌して構成したことを特徴とする磁性光硬化樹脂であり、前記光硬化樹脂は、エポキシ系樹脂であり、前記磁性微粒子は、フェライト微粒子であることを特徴とする磁性光硬化樹脂であり、さらに前記増粘剤はヒュームドシリカ、炭酸カルシウムのいずれかである磁性光硬化樹脂である。
この光硬化樹脂の粘度の増加により、微粒子は大きな粘性抵抗を受ける。この粘性抵抗は磁力による引力の抗力となるため、磁性微粒子の凝集を抑制する役割を果たす。しかも、光硬化樹脂は増粘剤を混ぜると塑性流体性を示すため、分散状態を長期間維持することもできる。
本発明者等はポリマーマトリックスとして無溶媒の光硬化樹脂を使用し、この樹脂に磁性材料を添加した。しかし、ただ単に磁性微粒子を光硬化樹脂に添加しただけでは磁性微粒子が凝集してしまう。そこで、光硬化樹脂SCR770(ディーメック)に平均粒子径1.3μmのフェライト微粒子FA−700(戸田工業)を10wt%添加し、ARE250(シンキー)で10分間攪拌した後、ガラス基板に滴下し光学顕微鏡で分散の様子を観察した。その結果、攪拌直後から凝集しはじめ、1時間後には完全に鎖状に凝集してしまった。これは磁性微粒子自体が持つ磁力により、微粒子が相互に引きあうために起こる。
このような不均一な凝集は作製精度や歩留まりの低下、アクチュエータの性能の悪化につながるため、好ましくない。また、磁性微粒子は光硬化樹脂よりも比重が高いため、時間が経つにつれて重力により微粒子が沈殿してしまう。従来例としてセラミックや金属微粒子の分散剤として界面活性剤を用いたものがあるが、磁性微粒子においては磁力の引力に打ち勝つだけの効果は得られない。
そこで、本発明ではこの凝集を克服するために、光硬化樹脂に磁性微粒子と一緒に増粘剤を添加した。この光硬化樹脂の粘度の増加により、微粒子は大きな粘性抵抗を受ける。
この粘性抵抗は磁力による引力の抗力となるため、磁性微粒子の凝集を抑制する役割を果たす。しかも、光硬化樹脂は増粘剤を混ぜると塑性流体性を示すため、分散状態を長期間維持することもできることが判明した。
前記磁性光硬化樹脂は、基材となる材料がアクリル系、エポキシ系、オキセタン系、ウレタン系、シリコン系等の光硬化樹脂のいずれかであり、添加される磁性微粒子が希土類微粒子、フェライト微粒子等のいずれかであり、添加される増粘剤がヒュームドシリカ、炭酸カルシウムのいずれかである磁性光硬化樹脂を使用する。
なお、この「磁性光硬化樹脂」についての詳細は本出願人が出願している特願2008−331701に記載されており、本発明はこの磁性光硬化樹脂について発明の要旨があるのではないので樹脂についてのさらなる詳細な説明は省略する。
上記磁性光硬化樹脂を使用したアクチュエータについて
第1実施例(スクリューポンプ)
マイクロポンプは小型で、流体を微小流量で送り出すことができる特徴から、マイクロ流体デバイス用のポンプとして用いられている。マイクロポンプには、マイクロダイアフラムポンプに代表される機械的なポンプから電気浸透流マイクロポンプのような非機械ポンプなど、その駆動原理や特徴は様々である。
マイクロスクリューポンプは、可動部となるスクリューの回転運動をらせん構造によって流体を押し出す力へと変換し、送液する。機械ポンプとして代表的であるマイクロダイアフラムポンプはダイアフラムを往復運動させて送液するため拍動流になるが、マイクロスクリューポンプは連続流で送液可能である。高粘度流体を送液可能である利点もある。
さらには電気浸透流マイクロポンプと比べて、マイクロスクリューポンプは、機械的に流体を送り出すため、適用可能な流体の範囲が広い。
このような優れた特長を持つにも関わらず、マイクロスクリューポンプに関する報告は今までほとんどない。この理由の1つは、作製構造が2次元に限定される従来の微細加工では、スクリューのような複雑な3次元形状を作り出すことが難しいことが挙げられる。
この問題を解決する方法として、マイクロアセンブリングによって作製された磁気駆動スクリュー型マイクロ回転子と電磁コイル対から成るスクリュー型マイクロアクチュエータを用いたマイクロスクリューポンプが開発されている。このマイクロスクリューポンプは、スクリュー型マイクロ回転子を流体で満たされたチューブの中に挿入し。外部に配置した電磁コイルによって生成した回転磁場を回転子に印加し、回転駆動させることで流体を送液する。
しかし、マイクロアセンブリングでは、小型で精度の良いスクリュー型マイクロ回転子を作製することは難しく、このスクリュー型マイクロ回転子の大きさは直径1mmに留まっている。作製可能なスクリューの形状も制限される。また、スクリューポンプは、チューブ壁面とスクリュー型マイクロ回転子のギャップは可能な限り小さいほうが望ましいが、従来では100μm以上と大きい。
上記の背景から本発明者等は、磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作製された磁気駆動スクリュー型マイクロ回転子と電磁コイルから成るスクリュー型マイクロアクチュエータを使用したマイクロスクリューポンプの開発に成功した。
作製方法に光造形法を用いることで、今までよりも小型でかつ粘度の良いスクリュー型マイクロ回転子を実現可能であり、回転子と流路の壁のギャップを数十μmまで狭くすることができる。光造形法は構造物をスケーラブルに作製することが容易であり、様々な大きさのスクリュー型マイクロ回転子を作製でき、さらに形状も自由に作製できる。
以下図面を参照して第1実施例について具体的構成を説明する。
図1は磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作成された直径0.5mm のスクリュー型マイクロ回転子の写真であり、図2は磁気駆動スクリュー型マイクロアクチュエータをもちいたマイクロスクリューポンプの駆動原理説明図であり、図3はマイクロスクリューポンプの流量特性図である。
図1において、1はキャピラリ、2はキャピラリ内を流れる流体、3はスクリュー型マイクロ回転子、4はキャピラリ周囲に直角に配置した電磁対コイルである。
スクリュー型マイクロ回転子3は、フェライト微粒子が50wt%添加された磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって実際に作製された。なお光造形法は従来公知であり、本発明の特徴でもないため詳細な説明は省略する。
光造形法によって作成した回転子3の大きさはφ0.5mm、、長さ2mm、らせんピッチ1mmである。半径方向に着磁された回転子は、電磁コイル対4で回転磁場を印加することで回転磁場に追従して回転運動し、アクチュエータとなる。この回転子3を流体で満たされたキャピラリ1のマイクロ流路の中に挿入して回転運動させると、回転運動を自身のらせん構造によって軸方向に流体を押し出す力へと変換し、マイクロスクリューポンプとなる。
流体を押し出す力はスクリュー型マイクロ回転子を推進させる力をしても働くため、このアクチュエータをマイクロスクリューポンプとして使用する場合、スクリュー型マイクロ回転子をマイクロ流路内の一ヶ所で拘束して回転運動させる必要がある。
スクリュー型マイクロ回転子3を流路内の一定の場所に留まらせて回転運動させるために、磁気トラップを用いた。磁気トラップは、電磁コイルで生成された磁場の勾配力によって回転子を拘束する方法である(図2参照)。回転子3は電磁コイル4によって生成された磁場勾配によりコイルへ近づく方向への引力を受ける。この力が回転子の推進力の抗力となり、回転子は電磁コイル付近に留まりながら回転運動し、流体を送液する。
磁気トラップによるマイクロスクリューポンプの駆動実験を行った。図1に示すφ0.5mmのスクリュー型マイクロ回転子を一様な内径0.53mmのガラスキャピラリに挿入した。このガラスキャピラリに動粘度1cSt、10cSt、100cStのシリコンオイルをそれぞれ注入し、キャピラリを水平に配置した。そしてキャピラリの周りに2対の電磁コイルを直交して配置した。大きな磁場勾配を得るために、電磁コイルのヨークの先端は針状にし、コイル先端が可能な限り流路に近づくようにした。この電磁コイル対でキャピラリの軸を中心とした回転磁場を生成した。電磁コイルの交差点での磁場強度は45mTであった。それぞれの流体において、磁場の回転数と流量の関係を測定した。
図3は実験から得られたマイクロスクリューポンプの流量特性である。図3より、スクリュー型マイクロアクチュエータがマイクロスクリューポンプとして流体を微小流量で送り出すことができることが確認できた。また、その流量は回転数に対して線形的に増加した。流体の粘度によって最大流量は異なるが、流量効率(回転数に対する流量)は粘度に依存しないことが示された。
第2実施例(泳動マイクロマシン)
以下図面を参照して第2実施例について具体的構成を説明する。
図4は磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作成された直径0.1mm のスクリュー型マイクロ回転子の写真、図5は泳動マイクロマシンの駆動原理説明図、図6は泳動マイクロマシンの泳動特性を示すグラフである。
図5において、5はキャピラリ、6はキャピラリ内に満たされた流体、7はスクリュー型マイクロ回転子、8はキャピラリ周囲に配置したヘルムホルツコイル対である。
ワイヤレス駆動可能なマイクロマシンは特定の場所に拘束されることなく、2次元平面もしくは3次元空間を自由に移動可能である。また、従来のマイクロマシンでは困難な狭い空間に侵入することができる利点も持っている。
このワイヤレス駆動マイクロマシンの駆動原理は様々があるが、その中で、磁力は真空中、気中、液中の様々な環境下で利用可能であり、不透明体で囲われた閉所空間でも遠隔的にエネルギー供給・制御可能である優れた特徴を持っている。
磁気駆動マイクロマシンは駆動方法により2種類に大別できる。1つは磁場の勾配力を利用する方法であり、電磁コイルもしくは永久磁石によって生成された磁場によって生じる磁気引力をマイクロマシンの推進力に利用する。この方法は、振動磁場の生成が必要なく、制御システムが単純である利点があるが、比較的大きな磁場を発生させなければならなく、磁場生成源となる電磁コイルおよび磁石が大きくなる欠点がある。
2つ目は、電磁コイルによって生成された振動もしくは回転磁場によってマイクロマシンを振動・回転させ、この振動・回転運動を機械的に推進力に変換して利用する方法である。この方法は、制御システムが複雑化するが、振動・回転運動を機械的に推進力に変換することで、比較的弱い磁場でも駆動可能であるマイクロマシンを実現できる。
今までに、この振動・回転磁場を利用した多くの泳動マイクロマシンが開発されてきた。このような磁気駆動マイクロマシンは人体内でも駆動可能であることから、将来のマイクロサージェリ用マイクロマシンとして有望である。
本発明者等は従来よりも小型化された泳動マイクロマシンの実現を目的として、磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作製された磁気駆動スクリュー型マイクロ回転子と電磁コイルから成る泳動マイクロマシンの開発に成功した。
図4は、フェライト微粒子が50wt/%添加された磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって実際に作製されたスクリュー型マイクロ回転子7であり、大きさは直径0.1mm、長さ1mm、らせんピッチ0.2mmである。この直径は人の髪の毛とほぼ同じである。
図5に泳動マイクロマシンの駆動原理を示す。スクリュー型マイクロ回転子7を半径方向に着磁し、この回転子7を流体6で満たされたガラスキャピラリ5内に挿入する。そして、キャピラリ5を水平に配置する。キャピラリの周りに直交したヘルムホルツコイル対8を配置する。このヘルムホルツコイル対8で回転磁場を生成し、回転子に印加する。回転子は磁場に追従して回転運動し、回転子7のらせん構造は回転運動を流体を後方へと押し出す力へと変換する。この流体を押し出す反力は回転子を前方へ推進させる力となり、スクリュー型マイクロ回転子は泳動マイクロマシンとしてキャピラリ内を自由に移動することができる。
泳動マイクロマシンの駆動実験を行った。図4のスクリュー型マイクロ回転子を水で満たされた内径0.2mmのガラスキャピラリに挿入し、外部からヘルムホルツコイル対で1mTの回転磁場を印加した。そして、磁場の回転数と泳動速度の関係を測定した。
図6は、実験から得られた泳動マイクロマシンの泳動特性である。図6から、泳動マイクロマシンの速度は磁場の回転数に対して線形的に比例することが確認できる。また、磁場の回転の向きを反転させれば、反対方向へ泳動させることができる。図6より、そのときの速度は順方向のときと変わらない。
以上のべたように、本発明者等は磁性と光硬化性を両立した新たなコンポジット材料である“磁性光硬化樹脂”の開発に成功し、その樹脂を使用して上述したアクチュエータの開発に成功した。
上記実施例では磁性粒子としてフェライトのみを添加しているが、当然ながら希土類微粒子も適用可能である。したがって、要求される磁化特性に合わせて微粒子を選定することができる。最終的に、この材料を光造形法に適用し、従来技術では作り得ない複雑な立体磁性構造体の作製に成功した。
なお、回転子の形状は実施例のようなスクリュー形状に限定されることはない。回転子の作製手法である光造形法は多様な立体形状を作製することができるため、マイクロスクリューポンプや泳動マイクロマシンの用途以外の磁気駆動マイクロアクチュエータも実現することができる。またスクリュー型マイクロ回転子も実施例の大きさ及び形状に限定されることはなく、要求仕様に合わせて大きさおよび形状を変えることができる。
以上実施例をあげて本発明について説明したが、本発明は上記実施例に限定されることはない。
また本発明はその精神また主要な特徴から逸脱することなく、他の色々な形で実施することができる。そのため前述の実施例は単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。更に特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
〔磁性光硬化樹脂〕について
光硬化樹脂の主成分はポリマーであるので、強磁性を示さない。磁性と光硬化性を両立した磁性光硬化樹脂は通常の光硬化性樹脂に磁性微粒子を添加することにより実現される。従来からSU−8に磁性微粒子を添加することによる感光性磁性材料はすでに開発されているが、SU−8は溶剤を使用しているため光造形法に適用することはできない。
本発明者等はポリマーマトリックスとして無溶媒の光硬化樹脂を使用し、この樹脂に磁性微粒子と一緒に増粘剤を添加した磁性光硬化樹脂の開発に成功した。
具体的には、光硬化樹脂に所定量の磁性微粒子及び所定量の増粘材を混入し攪拌して構成したことを特徴とする磁性光硬化樹脂であり、前記光硬化樹脂は、エポキシ系樹脂であり、前記磁性微粒子は、フェライト微粒子であることを特徴とする磁性光硬化樹脂であり、さらに前記増粘剤はヒュームドシリカ、炭酸カルシウムのいずれかである磁性光硬化樹脂である。
この光硬化樹脂の粘度の増加により、微粒子は大きな粘性抵抗を受ける。この粘性抵抗は磁力による引力の抗力となるため、磁性微粒子の凝集を抑制する役割を果たす。しかも、光硬化樹脂は増粘剤を混ぜると塑性流体性を示すため、分散状態を長期間維持することもできる。
本発明者等はポリマーマトリックスとして無溶媒の光硬化樹脂を使用し、この樹脂に磁性材料を添加した。しかし、ただ単に磁性微粒子を光硬化樹脂に添加しただけでは磁性微粒子が凝集してしまう。そこで、光硬化樹脂SCR770(ディーメック)に平均粒子径1.3μmのフェライト微粒子FA−700(戸田工業)を10wt%添加し、ARE250(シンキー)で10分間攪拌した後、ガラス基板に滴下し光学顕微鏡で分散の様子を観察した。その結果、攪拌直後から凝集しはじめ、1時間後には完全に鎖状に凝集してしまった。これは磁性微粒子自体が持つ磁力により、微粒子が相互に引きあうために起こる。
このような不均一な凝集は作製精度や歩留まりの低下、アクチュエータの性能の悪化につながるため、好ましくない。また、磁性微粒子は光硬化樹脂よりも比重が高いため、時間が経つにつれて重力により微粒子が沈殿してしまう。従来例としてセラミックや金属微粒子の分散剤として界面活性剤を用いたものがあるが、磁性微粒子においては磁力の引力に打ち勝つだけの効果は得られない。
そこで、本発明ではこの凝集を克服するために、光硬化樹脂に磁性微粒子と一緒に増粘剤を添加した。この光硬化樹脂の粘度の増加により、微粒子は大きな粘性抵抗を受ける。
この粘性抵抗は磁力による引力の抗力となるため、磁性微粒子の凝集を抑制する役割を果たす。しかも、光硬化樹脂は増粘剤を混ぜると塑性流体性を示すため、分散状態を長期間維持することもできることが判明した。
前記磁性光硬化樹脂は、基材となる材料がアクリル系、エポキシ系、オキセタン系、ウレタン系、シリコン系等の光硬化樹脂のいずれかであり、添加される磁性微粒子が希土類微粒子、フェライト微粒子等のいずれかであり、添加される増粘剤がヒュームドシリカ、炭酸カルシウムのいずれかである磁性光硬化樹脂を使用する。
なお、この「磁性光硬化樹脂」についての詳細は本出願人が出願している特願2008−331701に記載されており、本発明はこの磁性光硬化樹脂について発明の要旨があるのではないので樹脂についてのさらなる詳細な説明は省略する。
上記磁性光硬化樹脂を使用したアクチュエータについて
第1実施例(スクリューポンプ)
マイクロポンプは小型で、流体を微小流量で送り出すことができる特徴から、マイクロ流体デバイス用のポンプとして用いられている。マイクロポンプには、マイクロダイアフラムポンプに代表される機械的なポンプから電気浸透流マイクロポンプのような非機械ポンプなど、その駆動原理や特徴は様々である。
マイクロスクリューポンプは、可動部となるスクリューの回転運動をらせん構造によって流体を押し出す力へと変換し、送液する。機械ポンプとして代表的であるマイクロダイアフラムポンプはダイアフラムを往復運動させて送液するため拍動流になるが、マイクロスクリューポンプは連続流で送液可能である。高粘度流体を送液可能である利点もある。
さらには電気浸透流マイクロポンプと比べて、マイクロスクリューポンプは、機械的に流体を送り出すため、適用可能な流体の範囲が広い。
このような優れた特長を持つにも関わらず、マイクロスクリューポンプに関する報告は今までほとんどない。この理由の1つは、作製構造が2次元に限定される従来の微細加工では、スクリューのような複雑な3次元形状を作り出すことが難しいことが挙げられる。
この問題を解決する方法として、マイクロアセンブリングによって作製された磁気駆動スクリュー型マイクロ回転子と電磁コイル対から成るスクリュー型マイクロアクチュエータを用いたマイクロスクリューポンプが開発されている。このマイクロスクリューポンプは、スクリュー型マイクロ回転子を流体で満たされたチューブの中に挿入し。外部に配置した電磁コイルによって生成した回転磁場を回転子に印加し、回転駆動させることで流体を送液する。
しかし、マイクロアセンブリングでは、小型で精度の良いスクリュー型マイクロ回転子を作製することは難しく、このスクリュー型マイクロ回転子の大きさは直径1mmに留まっている。作製可能なスクリューの形状も制限される。また、スクリューポンプは、チューブ壁面とスクリュー型マイクロ回転子のギャップは可能な限り小さいほうが望ましいが、従来では100μm以上と大きい。
上記の背景から本発明者等は、磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作製された磁気駆動スクリュー型マイクロ回転子と電磁コイルから成るスクリュー型マイクロアクチュエータを使用したマイクロスクリューポンプの開発に成功した。
作製方法に光造形法を用いることで、今までよりも小型でかつ粘度の良いスクリュー型マイクロ回転子を実現可能であり、回転子と流路の壁のギャップを数十μmまで狭くすることができる。光造形法は構造物をスケーラブルに作製することが容易であり、様々な大きさのスクリュー型マイクロ回転子を作製でき、さらに形状も自由に作製できる。
以下図面を参照して第1実施例について具体的構成を説明する。
図1は磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作成された直径0.5mm のスクリュー型マイクロ回転子の写真であり、図2は磁気駆動スクリュー型マイクロアクチュエータをもちいたマイクロスクリューポンプの駆動原理説明図であり、図3はマイクロスクリューポンプの流量特性図である。
図1において、1はキャピラリ、2はキャピラリ内を流れる流体、3はスクリュー型マイクロ回転子、4はキャピラリ周囲に直角に配置した電磁対コイルである。
スクリュー型マイクロ回転子3は、フェライト微粒子が50wt%添加された磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって実際に作製された。なお光造形法は従来公知であり、本発明の特徴でもないため詳細な説明は省略する。
光造形法によって作成した回転子3の大きさはφ0.5mm、、長さ2mm、らせんピッチ1mmである。半径方向に着磁された回転子は、電磁コイル対4で回転磁場を印加することで回転磁場に追従して回転運動し、アクチュエータとなる。この回転子3を流体で満たされたキャピラリ1のマイクロ流路の中に挿入して回転運動させると、回転運動を自身のらせん構造によって軸方向に流体を押し出す力へと変換し、マイクロスクリューポンプとなる。
流体を押し出す力はスクリュー型マイクロ回転子を推進させる力をしても働くため、このアクチュエータをマイクロスクリューポンプとして使用する場合、スクリュー型マイクロ回転子をマイクロ流路内の一ヶ所で拘束して回転運動させる必要がある。
スクリュー型マイクロ回転子3を流路内の一定の場所に留まらせて回転運動させるために、磁気トラップを用いた。磁気トラップは、電磁コイルで生成された磁場の勾配力によって回転子を拘束する方法である(図2参照)。回転子3は電磁コイル4によって生成された磁場勾配によりコイルへ近づく方向への引力を受ける。この力が回転子の推進力の抗力となり、回転子は電磁コイル付近に留まりながら回転運動し、流体を送液する。
磁気トラップによるマイクロスクリューポンプの駆動実験を行った。図1に示すφ0.5mmのスクリュー型マイクロ回転子を一様な内径0.53mmのガラスキャピラリに挿入した。このガラスキャピラリに動粘度1cSt、10cSt、100cStのシリコンオイルをそれぞれ注入し、キャピラリを水平に配置した。そしてキャピラリの周りに2対の電磁コイルを直交して配置した。大きな磁場勾配を得るために、電磁コイルのヨークの先端は針状にし、コイル先端が可能な限り流路に近づくようにした。この電磁コイル対でキャピラリの軸を中心とした回転磁場を生成した。電磁コイルの交差点での磁場強度は45mTであった。それぞれの流体において、磁場の回転数と流量の関係を測定した。
図3は実験から得られたマイクロスクリューポンプの流量特性である。図3より、スクリュー型マイクロアクチュエータがマイクロスクリューポンプとして流体を微小流量で送り出すことができることが確認できた。また、その流量は回転数に対して線形的に増加した。流体の粘度によって最大流量は異なるが、流量効率(回転数に対する流量)は粘度に依存しないことが示された。
第2実施例(泳動マイクロマシン)
以下図面を参照して第2実施例について具体的構成を説明する。
図4は磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作成された直径0.1mm のスクリュー型マイクロ回転子の写真、図5は泳動マイクロマシンの駆動原理説明図、図6は泳動マイクロマシンの泳動特性を示すグラフである。
図5において、5はキャピラリ、6はキャピラリ内に満たされた流体、7はスクリュー型マイクロ回転子、8はキャピラリ周囲に配置したヘルムホルツコイル対である。
ワイヤレス駆動可能なマイクロマシンは特定の場所に拘束されることなく、2次元平面もしくは3次元空間を自由に移動可能である。また、従来のマイクロマシンでは困難な狭い空間に侵入することができる利点も持っている。
このワイヤレス駆動マイクロマシンの駆動原理は様々があるが、その中で、磁力は真空中、気中、液中の様々な環境下で利用可能であり、不透明体で囲われた閉所空間でも遠隔的にエネルギー供給・制御可能である優れた特徴を持っている。
磁気駆動マイクロマシンは駆動方法により2種類に大別できる。1つは磁場の勾配力を利用する方法であり、電磁コイルもしくは永久磁石によって生成された磁場によって生じる磁気引力をマイクロマシンの推進力に利用する。この方法は、振動磁場の生成が必要なく、制御システムが単純である利点があるが、比較的大きな磁場を発生させなければならなく、磁場生成源となる電磁コイルおよび磁石が大きくなる欠点がある。
2つ目は、電磁コイルによって生成された振動もしくは回転磁場によってマイクロマシンを振動・回転させ、この振動・回転運動を機械的に推進力に変換して利用する方法である。この方法は、制御システムが複雑化するが、振動・回転運動を機械的に推進力に変換することで、比較的弱い磁場でも駆動可能であるマイクロマシンを実現できる。
今までに、この振動・回転磁場を利用した多くの泳動マイクロマシンが開発されてきた。このような磁気駆動マイクロマシンは人体内でも駆動可能であることから、将来のマイクロサージェリ用マイクロマシンとして有望である。
本発明者等は従来よりも小型化された泳動マイクロマシンの実現を目的として、磁性光硬化樹脂および光造形法を用いて作製された磁気駆動スクリュー型マイクロ回転子と電磁コイルから成る泳動マイクロマシンの開発に成功した。
図4は、フェライト微粒子が50wt/%添加された磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって実際に作製されたスクリュー型マイクロ回転子7であり、大きさは直径0.1mm、長さ1mm、らせんピッチ0.2mmである。この直径は人の髪の毛とほぼ同じである。
図5に泳動マイクロマシンの駆動原理を示す。スクリュー型マイクロ回転子7を半径方向に着磁し、この回転子7を流体6で満たされたガラスキャピラリ5内に挿入する。そして、キャピラリ5を水平に配置する。キャピラリの周りに直交したヘルムホルツコイル対8を配置する。このヘルムホルツコイル対8で回転磁場を生成し、回転子に印加する。回転子は磁場に追従して回転運動し、回転子7のらせん構造は回転運動を流体を後方へと押し出す力へと変換する。この流体を押し出す反力は回転子を前方へ推進させる力となり、スクリュー型マイクロ回転子は泳動マイクロマシンとしてキャピラリ内を自由に移動することができる。
泳動マイクロマシンの駆動実験を行った。図4のスクリュー型マイクロ回転子を水で満たされた内径0.2mmのガラスキャピラリに挿入し、外部からヘルムホルツコイル対で1mTの回転磁場を印加した。そして、磁場の回転数と泳動速度の関係を測定した。
図6は、実験から得られた泳動マイクロマシンの泳動特性である。図6から、泳動マイクロマシンの速度は磁場の回転数に対して線形的に比例することが確認できる。また、磁場の回転の向きを反転させれば、反対方向へ泳動させることができる。図6より、そのときの速度は順方向のときと変わらない。
以上のべたように、本発明者等は磁性と光硬化性を両立した新たなコンポジット材料である“磁性光硬化樹脂”の開発に成功し、その樹脂を使用して上述したアクチュエータの開発に成功した。
上記実施例では磁性粒子としてフェライトのみを添加しているが、当然ながら希土類微粒子も適用可能である。したがって、要求される磁化特性に合わせて微粒子を選定することができる。最終的に、この材料を光造形法に適用し、従来技術では作り得ない複雑な立体磁性構造体の作製に成功した。
なお、回転子の形状は実施例のようなスクリュー形状に限定されることはない。回転子の作製手法である光造形法は多様な立体形状を作製することができるため、マイクロスクリューポンプや泳動マイクロマシンの用途以外の磁気駆動マイクロアクチュエータも実現することができる。またスクリュー型マイクロ回転子も実施例の大きさ及び形状に限定されることはなく、要求仕様に合わせて大きさおよび形状を変えることができる。
以上実施例をあげて本発明について説明したが、本発明は上記実施例に限定されることはない。
また本発明はその精神また主要な特徴から逸脱することなく、他の色々な形で実施することができる。そのため前述の実施例は単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。更に特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
本発明は、磁性光硬化樹脂を用いて小型アクチュエータなどを容易に作成することができる。
Claims (10)
- 磁性光硬化樹脂で作製された回転子と、この回転子を駆動させるための電磁コイルとから構成される磁気駆動マイクロアクチュエータ。
- 請求項1に記載の磁性光硬化樹脂は、硬磁性を有する磁性光硬化樹脂であることを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータ。
- 請求項1若しくは2に記載の磁性光硬化樹脂は、基材となる材料がアクリル系、エポキシ系、オキセタン系、ウレタン系、シリコン系等の光硬化樹脂のいずれかであり、添加される磁性微粒子が希土類微粒子、フェライト微粒子等のいずれかであり、添加される増粘剤がヒュームドシリカ、炭酸カルシウムのいずれかである磁性光硬化樹脂であることを特徴とする磁気駆動マイクロアクチュエータ。
- 前記回転子が光造形法によって作製されたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の磁気駆動マイクロアクチュエータ。
- 前記回転子に電磁コイルによって 回転磁場を印加し、前記回転子を回転駆動させることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の磁気駆動マイクロアクチュエータ。
- 前記回転子がスクリュー形状をしていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の磁気駆動マイクロアクチュエータ。
- 前記請求項6に記載の磁気駆動マイクロアクチュエータを用いたことを特徴とするマイクロスクリューポンプ。
- 前記マイクロスクリューポンプは、磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって作成されたスクリューと、このスクリューを挿入するマイクロ流路と、マイクロ流路の周囲の半径方向に配置した電磁コイル対とから構成され、電磁コイル対で回転磁場を印加することによりスクリューを回転させることを特徴とする請求項7に記載のマイクロスクリューポンプ。
- 請求項6に記載の磁気駆動マイクロアクチュエータを用いたことを特徴とする泳動マイクロマシン。
- 前記泳動マイクロマシンは、磁性光硬化樹脂を用いて光造形法によって作製されたスクリューと、このスクリューの周りに配置した電磁コイルとから構成され、電磁コイル対で回転磁場を印加することによりスクリューを回転させることを特徴とする請求項9に記載の泳動マイクロマシン。
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