WO2010074077A1 - 磁気記憶媒体製造方法、磁気記憶媒体、および情報記憶装置 - Google Patents

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Abstract

 イオンドーピング方式を用いつつも、磁化反転磁界のバラつきを抑えて磁気記憶媒体を製造することができる製造方法、そのような製造方法で製造された磁気記憶媒体および情報記憶装置を提供することを目的とし、サンプルへのイオン注入による飽和磁化消失度を計測する消失度計測過程(ステップS103)と、計測された消失度で、保護領域を除いた他の領域について局所的に飽和磁化が消失したときに保護領域での磁化反転磁界が所定の磁化反転磁界と等しくなるという前提で、飽和磁化消失前の磁性膜の異方性磁界を算出する異方性磁界算出過程(ステップS104)と、その算出された異方性磁界を有する磁性膜を形成し、その磁性膜への局所的なイオン注入を行なってビットパターンド型の磁気ディスクを完成させる磁気ディスク製造処理(ステップS108)とを実行する。

Description

磁気記憶媒体製造方法、磁気記憶媒体、および情報記憶装置
 本件は、磁気記憶媒体を製造する製造方法、磁気記憶媒体、および磁気記憶媒体を備えた情報記憶装置に関する。
 ハードディスクドライブ(HDD)は、データの高速アクセス及び高速転送が可能な大容量記憶装置として、情報記憶装置の主流になっている。このHDDについては、これまでも高い年率で面記録密度が高まっており、現在でもさらなる記録密度向上が求められている。
 HDDの記録密度を向上させるためには、トラック幅の縮小や記録ビット長の短縮が必要であるが、トラック幅を縮小させると、隣接するトラック同士で、いわゆる磁気的な干渉が生じ易くなる。この干渉とは、即ち、記録時において磁気記録情報が目的外の隣接トラックに重ね書きされてしまう現象や、再生時において目的外の隣接トラックからの漏洩磁界によるクロストークが起きてしまう現象を総称したものである。これらの現象は、いずれも再生信号のS/N比の低下を招き、エラーレートの劣化を引き起こす要因となる。
 一方、記録ビット長の短縮を進めると、磁気的な干渉の影響により記録ビットを長期間保存する性能が低下する熱揺らぎ現象が発生する。
 これらの磁気的な干渉や熱揺らぎ現象を回避して短いビット長や高いトラック密度を実現する磁気記憶媒体として、ディスクリート・トラック型の磁気記憶媒体が提案されている。また、このディスクリート・トラック型の磁気記憶媒体の他に、ビットパターンド型の磁気記憶媒体も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特に、ビットパターンド型の磁気記憶媒体では、記録ビットの位置が予め決められており、その決められた記録ビットの位置に磁性材料のドット(磁性ドット)が形成され磁性ドットの相互間は非磁性材料で構成される。このように磁性ドットが互いに分離されていると磁性ドットどうしの磁気的相互作用が小さく、上述した干渉や熱揺らぎ現象が回避される。
 ここで、従来、ビットパターンド型の磁気記憶媒体の多くは、次のような製造方法により製造されている。この製造方法では、まず、基板上に一様な磁性膜が形成される。その後、その磁性膜から、ビットとして利用する領域を除いた他の領域が、エッチング等の手法により除去されることで磁性ドットが形成される。そして、その除去された領域に非磁性材料が充填されることで、磁性ドットどうしを磁気的に分断するドット間分断帯が形成される。このような一連の処理によりビットパターンド型の磁気記憶媒体が得られることとなる。
 ここで、このような従来の製造方法では、磁性ドットとドット分断帯とで厚みに差が生じやすい。そのため、このような従来の製造方法では、磁気記憶媒体上での磁気ヘッドの浮上特性を安定なものとするために、磁気記憶媒体の表面について精度の高い平坦化が必要となる。そのため、非常に複雑な製造プロセスを行う必要があるという課題や、製造コストが増大するという課題が生じる。
 そこで、イオンを磁性膜に注入して局所的に磁気特性を変化させることで磁性ドットの分離状態を形成する加工方法(イオンドーピング方式)が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
 このイオンドーピング方式によれば、イオンを注入して磁気特性を変えるため、エッチングや充填、平坦化等の複雑な製造プロセスが必要なくなり、製造コストの増加を大幅に抑えることが可能となる。
特許第1888363号明細書 特開2006-309841号公報
 しかしながら、上述のイオンドーピング方式を採用した磁気記憶媒体の製造方法では、例えばロット生産を行った場合等に、磁性ドット内の磁化の反転に要する磁化反転磁界がロット毎にバラつく等といった不具合がしばしば生じている。
 尚、ここまで、ビットパターンド型の磁気記憶媒体を例に挙げて、イオンドーピング方式で磁気記憶媒体を製造する際に磁化反転磁界がバラつくという課題について説明した。しかしながら、このような課題は、ビットパターンド型の磁気記憶媒体に限るものではなく、例えばディスクリート・トラック型の磁気記憶媒体にも当てはまる課題である。即ち、このような課題は、情報が磁気的に記録される磁性部と、磁性部の飽和磁化よりも小さい飽和磁化を有する低磁性部とを備えた磁気記憶媒体に共通して当てはまる課題である。
 本件では上記事情に鑑み、イオンドーピング方式を用いつつも、磁化反転磁界のバラつきが抑えられた磁気記憶媒体を製造することができる製造方法、そのような製造方法で製造された磁気記憶媒体および情報記憶装置を提供することを目的とする。
 まず、上記目的を達成する基本形態の磁気記憶媒体製造方法は、第1の磁性膜形成過程と、第1のイオン注入過程と、消失度計測過程と、異方性磁界算出過程と、第2の磁性膜形成過程と、第2のイオン注入過程とを有している。
 第1の磁性膜形成過程は磁性膜を形成する過程である。
 第1のイオン注入過程は上記磁性膜にイオン注入を行なう過程である。
 消失度計測過程は、上記磁性膜における、上記第1のイオン注入過程でのイオン注入による飽和磁化の消失度を計測する過程である。
 異方性磁界算出過程は、次の前提で実行される過程である。即ち、上記消失度計測過程で計測された消失度で上記磁性膜の飽和磁化が、所定の場所に設定された保護領域を除いた他の領域について局所的に消失したときにその保護領域での磁化反転磁界が所定の磁化反転磁界と等しくなるという前提である。そして、この異方性磁界算出過程は、この前提で、飽和磁化消失前の上記磁性膜の異方性磁界を算出する過程である。
 第2の磁性膜形成過程は、基板上に、上記異方性磁界算出過程で算出された異方性磁界と同等な異方性磁界を有する磁性膜を、第1の磁性膜形成過程での磁性膜の形成条件と同等な形成条件で形成する過程である。
 第2のイオン注入過程は、上記第2の磁性膜形成過程で形成された磁性膜に対して上記他の領域に相当する領域について局所的に、上記第1のイオン注入過程でのイオン注入条件と同等なイオン注入条件でイオン注入を行なう過程である。
 次に、上記目的を達成する基本形態の磁気記憶媒体は、基板と、磁性部と、低磁性部とを備えている。
 磁性部は、上記第1の磁性膜形成過程と、上記第1のイオン注入過程と、上記消失度計測過程と、上記異方性磁界算出過程と、上記第2の磁性膜形成過程とを経て形成された磁性膜を有し、情報が磁気的に記録されるものである。
 低磁性部は、上記磁性部の磁性膜と連続した磁性膜への、局所的なイオン注入過程を経て形成された被注入膜を有し、その磁性部の飽和磁化よりも小さい飽和磁化を有するものである。また、この低磁性部を得るための局所的なイオン注入過程は、上記第1のイオン注入過程でのイオン注入条件と同等なイオン注入条件でイオン注入を行なう過程である。
 また、上記目的を達成する基本形態の情報記憶装置は、上記磁気記憶媒体と、磁気ヘッドと、ヘッド位置制御機構とを備えたものである。
 磁気ヘッドは、上記磁気記憶媒体に近接あるいは接触して磁性部に磁気的に情報の記録及び/又は再生を行うものである。
 また、ヘッド位置制御機構は、上記磁気ヘッドを上記磁気記憶媒体表面に対して相対的に移動させて、その磁気ヘッドによる情報の記録及び/又は再生となる磁性部上にその磁気ヘッドを位置決めするものである。
 本件によれば、イオンドーピング方式を用いつつも、磁化反転磁界のバラつきを抑えて磁気記憶媒体を製造することができる製造方法、そのような製造方法で製造された磁気記憶媒体および情報記憶装置を得ることができる。
情報記憶装置の具体的な実施形態であるハードディスク装置(HDD)の内部構造を示す図である。 図1に示す磁気ディスクの構造を模式的に示す斜視図である。 ビットパターンド型の磁気記憶媒体を、エッチングと非磁性材料の充填とによって製造するタイプの製造方法を示す図である。 イオンドーピング方式について説明する説明図である。 第1実施形態の磁気ディスク製造方法を示すフローチャートである。 図5のステップS104で使われる式が表わす異方性磁界の飽和磁化消失度依存性を示すグラフである。 図5のステップS105で用いられる測定データの一例を示すグラフである。 磁気ディスク製造処理(ステップS108)の詳細を示す図である。 第2実施形態の磁気ディスク製造方法を示すフローチャートである。 異方性磁界のPt組成比依存性の一例を示すグラフである。
 以下、基本形態について上記説明した磁気記憶媒体製造方法、磁気記憶媒体、および情報記憶装置に対する具体的な実施形態として、第1および第2の2種類の実施形態を図面を参照して説明する。
 まず、第1実施形態について説明する。
 図1は、情報記憶装置の具体的な実施形態であるハードディスク装置(HDD)の内部構造を示す図である。
 この図に示すハードディスク装置(HDD)100は、パーソナルコンピュータ等といった上位装置に組み込まれ、その上位装置における情報記憶手段として利用されるものである。
 このハードディスク装置100には、円盤状の磁気ディスク10が、図の奥行き方向に重なって複数枚ハウジングH内に納められている。この磁気ディスク10は、上記で基本形態について説明した磁気記憶媒体の具体的な実施形態に相当する。
 ここで、上述の磁気記憶媒体および情報記憶装置の基本形態に対し、次のような応用形態は好適である。この応用形態では、上記磁性部が、上記基板上に規則的に複数配列された、各々に情報が磁気的に記録される磁性ドットとなっている。また、この応用形態では、上記低磁性部が、上記磁性ドットの相互間に設けられた、その磁性ドット相互の磁気的結合を阻害するドット間分断帯となっている。
 この応用形態は、ビット情報が記録される磁性ドットが予め基板上の各箇所に設けられているビットパターンド型の磁気記憶媒体に対応する。ビットパターンド型の磁気記憶媒体は、上述したように干渉や熱揺らぎ現象が効果的に回避されることから、そのようなビットパターンド型の磁気記憶媒体に対応する上記の応用形態は好適である。
 図1の磁気ディスク10は、ビットパターンド型の磁気記憶媒体であり、この応用形態の具体的な一実施形態にも相当している。また、この磁気ディスク10は、各磁性ドットにおいて、表裏面に対して垂直な方向の磁化による磁気パターンで情報が記録されるいわゆる垂直磁気記憶媒体でもある。
 この磁気ディスク10は、ハウジングH内においてディスク軸11を中心に回転する。
 また、ハードディスク装置100のハウジングH内には、スイングアーム20、アクチュエータ30、および制御回路50も納められている。
 スイングアーム20は、磁気ディスク10の表面に沿って移動するものである。そして、このスイングアーム20は、磁気ディスク10に対して情報の書き込みと読み出しとを行う磁気ヘッド21を先端に保持している。また、スイングアーム20は、ベアリング24によってハウジングHに回動自在に支持されている。そして、このスイングアーム20は、ベアリング24を中心として所定角度の範囲内で回動することによって、磁気ヘッド21を磁気ディスク10の表面に沿って移動させる。この磁気ヘッドが、上述の基本形態における磁気ヘッドの一例に相当する。
 アクチュエータ30は、上記のスイングアーム20を駆動するものである。
 制御回路50は、アクチュエータ30によるスイングアーム20の駆動、磁気ヘッド21による情報の読み書き、このHDD100と上位装置との情報の遣り取り等を制御するものである。
 上記のスイングアーム20とベアリング24とアクチュエータ30と制御回路50とを合わせたものが、上述の基本形態におけるヘッド位置制御機構の一例に相当する。
 図2は、図1に示す磁気ディスクの構造を模式的に示す斜視図である。
 この図2には、円盤状の磁気ディスクから切り出された一部が示されている。
 図2に示す磁気ディスク10は、ガラス基板60上に複数の磁性ドット10aが規則的な配列で並べられた構造を有している。磁性ドット10aのそれぞれには1ビット相当の情報が磁気的に記録される。磁性ドット10aは磁気ディスク10の中心の周りに周回状に並んでいる。そして、そのように並んだ磁性ドットの列はトラック10cを形成する。ガラス基板60は、上述の基本形態における基板の一例に相当する。また、磁性ドット10aは、上述の基本形態における磁性部の一例に相当し、ビットパターンド型の磁気記憶媒体に対応した上述の応用形態における磁性ドットの一例にも相当している。
 また、磁性ドット10aの相互間は、磁気異方性および飽和磁化が磁性ドット10aの磁気異方性および飽和磁化よりも低いドット間分断帯10bとなっている。このドット間分断帯10bは、磁性ドット10aの相互間を磁気的に分断している。つまり、このドット間分断帯10bによって磁性ドット10aどうしの磁気的相互作用が小さくなっている。このドット間分断帯10bは、上述の基本形態における低磁性部の一例に相当し、ビットパターンド型の磁気記憶媒体に対応した上述の応用形態におけるドット間分断帯の一例にも相当している。
 このように磁性ドット10aどうしの磁気的相互作用が小さいと、磁性ドット10aに対する情報の記録再生に際してトラック10c相互間での磁気的相互作用が小さいため、トラック相互間での磁気的な干渉が少ない。また、各磁性ドット10aでは、記録される情報ビットの境界が熱で揺らぐことがないので、いわゆる熱揺らぎ現象も回避される。従って、この図2に示すようなビットパターンド型の磁気ディスク10によれば、トラック幅の縮小や記録ビット長の短縮が可能であるので、高記録密度の磁気記憶媒体が実現可能である。
 この磁気ディスク10の製造方法について以下に説明する。
 この磁気ディスク10の製造方法が、基本形態について上記説明した磁気記憶媒体製造方法の具体的な実施形態に相当する。
 ここで、この磁気記憶媒体製造方法の基本形態に対して、次のような応用形態は好適である。即ち、上記イオン注入過程が、上記保護領域として上記磁性膜が広がる方向に規則的に配列した複数箇所を用いて、その複数箇所の相互間に対して局所的にイオンを注入する過程であるという応用形態である。
 この応用形態は、ビットパターンド型の磁気記憶媒体が製造される磁気記憶媒体製造方法に対応する。ビットパターンド型の磁気記憶媒体は、上述したように干渉や熱揺らぎ現象が効果的に回避されることから、そのようなビットパターンド型の磁気記憶媒体が製造される上記の応用形態は好適である。以下に説明する磁気ディスク10の製造方法は、この応用形態の具体的な一実施形態にも相当している。
 ここで、本実施形態の磁気ディスク製造方法は、図1や図2に示す磁気ディスク10をロット生産により量産するための磁気ディスク製造方法である。そして、その量産における個々の磁気ディスク10の製造に、イオンドーピング方式が使われている。
 以下、この本実施形態の磁気ディスク製造方法の説明に先立って、まず、この製造方法で使われるイオンドーピング方式と対比するための比較例について説明する。この比較例は、ビットパターンド型の磁気記憶媒体を、エッチングと非磁性材料の充填とによって製造するタイプの製造方法である。
 図3は、ビットパターンド型の磁気記憶媒体を、エッチングと非磁性材料の充填とによって製造するタイプの製造方法を示す図である。
 このタイプの製造方法では、まず、製膜工程(A)で、基板1上に磁性膜2が形成される。
 次に、ナノインプリント工程(B)では、磁性膜2上に、紫外線硬化樹脂からなるレジスト3が塗布され、そのレジスト3に、ナノサイズの穴4aが空いたモールド4が載せられる。これによってレジスト3がそのナノサイズの穴4aに入ってレジスト3のドット3aが形成される。そして、そのモールド4越しにレジスト3に紫外線が照射されることでレジスト3が硬化してドット3aが磁性膜2上にプリントされる。また、レジスト3が硬化した後、モールド4は除去される。
 その後、エッチング工程(C)でエッチングが行われることで、レジスト3のドット3aで保護された磁性ドット2aを残して磁性膜が除去される。エッチング後はレジスト3のドット3aは化学的処理で除去され、基板1上に磁性ドット2aのみが残る。
 そして、充填工程(D)では、磁性ドット2aの相互間が非磁性材料で埋められる。その後、平坦化工程(E)を経て表面が平坦化されることでビットパターンド型の磁気記憶媒体6の完成(F)となる。
 このようなタイプの製造方法によると、磁気記憶媒体6上での磁気ヘッドの浮上特性を安定なものとするために平坦化工程(E)では精度の高い平坦化が必要となる。そのため、非常に複雑な製造プロセスを行う必要があるという課題や、製造コストが増大するという課題が生じる。
 一方、本実施形態では、上述したようにイオンドーピング方式が採用されている。
 以下、この本実施形態の磁気ディスク製造方法で使われるイオンドーピング方式について説明する。
 図4は、イオンドーピング方式について説明する説明図である。
 この図4には、イオン注入に先立ってガラス基板60上に製膜される、下地層61、磁性膜62、保護層63、およびレジストパターン64が示されている。
 以下、これらの各層の製膜について説明する。
 尚、この図4についての以下の説明におけるマグネトロンスパッタ装置での条件や膜厚等といった様々な数値は、下記の値に限定されるものではなく、適宜に他の値を用いても良い。
 本実施形態では、まず、よく洗浄されたガラス基板60がマグネトロンスパッタ装置にセットされ、5×10-5Pa以下まで真空排気される。その後、ガラス基板60を加熱せず0.67PaのArガス圧にて、(111)結晶配向した、膜厚が3nmのfcc-Pdが、磁性層を結晶配向させるための下地層61としてガラス基板60上に製膜される。
 続いて、下地層61上に磁性膜62が形成される。本実施形態では、この磁性膜62は、Coの原子層とPdの原子層とが交互に積層されてなる人工格子構造を有している。この人工格子構造の磁性膜62は、下地層61の形成後、上記のマグネトロンスパッタ装置を大気圧に戻すことなく連続して、0.67PaのArガス圧にて、Coの単原子層とPdの単原子層とを繰り返し積層することで形成される。
 磁性膜62を製膜した後には、ダイヤモンドライクカーボン製で膜厚が4nmの保護層63が磁性膜62上に製膜される。そして、この保護層63上にレジストが塗布され、ナノインプリントプロセスを用いて、図2の磁性ドット10aの外形に相当する9nm×27nmの矩形状の断面を有し、高さが50nmの柱状のレジストパターン64が形成される。
 このように各層の製膜が終了すると、次にイオン注入が行なわれる。
 イオン注入では、酸素イオン及び窒素イオンのうちいずれか一方のイオン65がレジストパターン64の上方から照射される。その結果、その照射されたイオン65が磁性膜62に注入される。また、このときのイオン注入における加速電圧は、磁性膜62の中心部へイオン65が注入されるように設定される。尚、イオン65の加速電圧は、現実的な磁性膜の膜厚や、イオン注入時における磁性膜へのダメージを考慮すると、1keV以上で、10keV以下であることが望ましい。
 上記のようなイオン注入では、レジストパターン64に向かったイオン65は、このレジストパターン64内に留まり、レジストパターン64の間隙に向かったイオン65が磁性膜62に注入される。その結果、磁性膜62のうち、レジストパターン64で保護された領域以外の他の領域について飽和磁化や磁気異方性が低減される。これら飽和磁化や磁気異方性が低減された領域が、図2のドット間分断帯10bとなる。一方、レジストパターン64で保護されることで飽和磁化や磁気異方性が維持された領域が磁性ドット10aとなる。
 このイオン注入の後、レジストパターン64がSCl洗浄によって除去され、図2の磁気ディスク10が完成する。
 ここで、以上に説明したイオンドーピング方式では、多くの場合、上記のドット間分断帯10bに飽和磁化が若干残り、その残りに起因して磁性ドット10aにおける磁化反転磁界が低下する。さらに、イオン注入による飽和磁化の消失度は、スパッタ法による製造時の次のような諸条件に依存する。スパッタ法による製造時の諸条件とは、例えば、スパッタ法で得られる磁性膜の膜厚や、スパッタ法で使われるターゲットの純度やガス圧等といった条件である。この結果、磁化反転磁界の低下度合いもこれら諸条件に依存することとなる。
 さらに、一般的に、ロット生産では、上記のような製造時の諸条件が、ロット毎に変わってしまう可能性が高い。そして、そのような諸条件の変動に起因した飽和磁化の消失度の変動によって磁化反転磁界の低下度合いが変わってしまう。その結果として、従来、イオンドーピング方式による磁気ディスクの製造方法では、この磁化反転磁界がロット毎にバラつく等といった不具合がしばしば生じることとなっている。
 本実施形態の磁気ディスク製造方法では、以下に説明するように、磁化反転磁界のロット毎のバラつきが回避された上で、イオンドーピング方式が、ロット生産での量産に適用されている。
 図5は、第1実施形態の磁気ディスク製造方法を示すフローチャートである。
 このフローチャートが示す磁気ディスク製造方法では、図1および図2に示す磁気ディスクが、イオンドーピング方式を用いてロット生産で量産される。
 この図5のフローチャートが示す製造方法では、まず、量産を開始する前に、その量産時のイオン注入によって生じるであろう飽和磁化の消失度が、サンプルを使って把握される。このサンプルを使った消失度の把握は、以下に説明するステップS101~ステップS103までの一連の処理によって行われる。
 ステップS101の処理では、次の積層物がサンプルとして作成される。即ち、図4のガラス基板60と同等なガラス基板上に、図4の下地層61と磁性膜62と保護層63それぞれと同等な下地層と磁性膜と保護層が積層された積層物である。また、このサンプルにおける各層は、図4を参照して説明した数値条件と同じ数値条件で形成される。
 尚、本実施形態では、このサンプルの磁性膜の人工格子構造における、Pdの原子層に対するCoの原子層の層厚比(サンプル層厚比)が、後述のステップS105の処理と同じ処理によって予め求められる。そして、ステップS101の処理では、サンプルの磁性膜が、その求められたサンプル層厚比で作成される。このサンプルの磁性膜における層厚比の求め方の詳細については、ステップS105の処理について説明するときに併せて説明する。
 また、本実施形態では、このサンプルの磁性膜は、人工格子構造におけるPdの原子層の層厚は0.7nmとなっている。そして、Coの原子層の層厚は、この0.7nmの層厚に上記のサンプル層厚比を乗じた値となる。さらに、ここでは、Pdの原子層とCoの原子層との対が、積層の単位としての一種の層とみなされている。そして、サンプルの磁性層は、積層数が20層で形成されている。
 このステップS101の処理が、上述の基本形態における第1の磁性膜形成過程の一例に相当する。
 次に、ステップS102の処理では、まず、上記のサンプルにおける磁性膜の飽和磁化が測定される。その後、そのサンプルに対してイオン注入が行なわれる。このステップS102でのイオン注入では、イオン種や加速電圧等といったイオン注入条件として、図4を参照して説明したイオン注入条件と同等なイオン注入条件が使われる。このステップS102の処理が、上述の基本形態における第1のイオン注入過程の一例に相当する。
 続くステップS103の処理において、イオン注入後のサンプルにおける磁性膜の飽和磁化が測定される。そして、その測定されたイオン注入後の飽和磁化を、ステップS102で測定されたイオン注入前の飽和磁化で除することで、イオン注入による飽和磁化の消失度が求められる。この求められた飽和磁化の消失度が、この後の量産時のイオン注入によって生じるであろう飽和磁化の消失度に相当するものとみなされる。このステップS103の処理が、上述の基本形態における消失度計測過程の一例に相当する。
 以下、このステップS103で得られた飽和磁化消失度が、90パーセントであったと仮定して説明を続ける。
 このステップS103で得られた消失度を使って、以下の処理が実行される(ステップS104)。この処理は、図2や図4のドット間分断帯10bが、ステップS103で得られた消失度で飽和磁化が消失して形成されたものであるときに磁性ドット10aでの磁化反転磁界が設計上の磁化反転磁界と等しくなるという前提で実行される。そして、この前提の下で、イオン注入による飽和磁化消失前の元々の磁性層の異方性磁界が算出される。
 本実施形態では、この異方性磁界の算出には、磁性膜等における磁気特性を表現した数学モデルである、いわゆるLLG(Landau-Liftshitz-Gilbert)方程式が使われる。
 本実施形態では、このLLG方程式を変形して得られる、図2のドット間分断帯10bでの飽和磁化消失度を変数とした、磁性ドット10aの異方性磁界を求めるための式が用いられる。
 そして、ステップS104の処理では、この式におけるパラメータの1つである磁化反転磁界に設計上の磁化反転磁界が代入される。
 ここで、磁性ドット10aの異方性磁界は、イオンドーピング方式におけるイオン注入前の磁性膜が有している異方性磁界に等しい。また、ドット間分断帯10bでの飽和磁化消失度とは、そのイオン注入による飽和磁化消失度のことである。つまり、このステップS104の処理で使われる式は、イオン注入前の磁性膜の異方性磁界がイオン注入による飽和磁化消失度に依存する依存関係を表わした式となっている。このステップS104の処理が、上述の基本形態における異方性磁界算出過程の一例に相当する。以下、このLLG方程式から導かれた式が表わす依存関係を、異方性磁界の飽和磁化消失度依存性と呼ぶ。
 図6は、図5のステップS104で使われる式が表わす異方性磁界の飽和磁化消失度依存性を示すグラフである。
 この図6には、設計上の磁化反転磁界として、5kOeの磁化反転磁界が採用されたときの、異方性磁界の飽和磁化消失度依存性を示すグラフG1が示されている。
 そして、このグラフG1には、異方性磁界の飽和磁化消失度依存性を表わすラインL1が記載されている。
 尚、このグラフG1では、磁化反転磁界の他にも、下記のようなパラメータが設定されている。まず、磁性ドット10aの外形寸法(縦×横)が、9nm×27nmという設計上の値に設定されている。
 また、磁性ドット10aの飽和磁化が経験上の予測値である500emu/ccに設定され、ドット間分断帯10bの異方性磁界も経験上の予測値である100Oeに設定されている。さらに、磁性ドット10a内での交換結合力も経験上の予測値である2μerg/cmに設定され、磁性ドット10aとドット間分断帯10bとの間での交換結合力も経験上の予測値である0.5μerg/cmに設定されている。
 このグラフG1から分かるように、上記の前提を満足する飽和磁化消失前の磁性膜62の異方性磁界は、飽和磁化消失度の増加に伴ってほぼ線形に低下する。
 ここで、図5のステップS103で得られた飽和磁化消失度が90パーセントであるという上記の仮定によると、飽和磁化消失前の磁性膜62の異方性磁界は18kOeとなる。
 さらに、本実施形態では、ステップS101で作成するサンプルにおけるPdの原子層に対するCoの原子層の層厚比(サンプル層厚比)を求めるための異方性磁界(サンプル異方性磁界)が、このステップS104の処理と同じ処理によって求められる。ただし、本実施形態では、このサンプル異方性磁界は、イオン注入による飽和磁化消失度が100パーセントであるという仮定の下で求められる。図6のグラフG1によると、このサンプル異方性磁界は14kOeとなる。
 このサンプル異方性磁界に対し、ステップS104の処理においてステップS103で得られた消失度に基づいて求められる異方性磁界は、後述するように量産時に実際に形成される磁性膜における異方性磁界である。そこで、以下では、このステップS104で算出された異方性磁界を、上記のサンプル異方性磁界と区別して実際の異方性磁界と呼ぶ。
 ステップS104において、実際の異方性磁界が算出されると、磁性膜62においてその実際の異方性磁界を実現するのに必要な、以下の条件が求められる(ステップS105)。
 ここで、本実施形態では、イオン注入を受ける磁性膜62は、上述のようにCoの原子層とPdの原子層とが交互に積層された人工格子構造の磁性膜である。このような人工格子構造の磁性膜では、磁性膜における異方性磁界は、Pdの原子層に対するCoの原子層の層厚比に依存する。即ち、磁性膜62として、上記のような人工格子構造を採用しCoの原子層の層厚比を調整することで、異方性磁界を調整することができる。そこで、ステップS105では、上記のステップS104で得られた実際の異方性磁界を実現するのに必要な条件として、上記のCoの原子層の所望の層厚比が求められる。
 ここで、本実施形態では、上記の層厚比は、予め用意された次のような測定データに基づいて求められる。即ち、異方性磁界がCoの原子層の層厚比に依存する依存関係を表わす測定データである。以下、この測定データが表わす依存関係を、異方性磁界の層厚比依存性と呼ぶ。この測定データは、Coの原子層の層厚比が互いに異なる複数の磁性膜を形成して各磁性膜における異方性磁界を測定することで得られたものである。ステップS105では、ステップS104で算出された実際の異方性磁界に対応する層厚比が、このような測定データに基づいて求められる。
 図7は、図5のステップS105で用いられる測定データの一例を示すグラフである。
 この図7には、異方性磁界の層厚比依存性を表わす測定データがプロットされたグラフG2が示されている。そして、このグラフG2には、異方性磁界の層厚比依存性を表わすラインL2が記載されている。
 尚、このグラフG2には、イオン注入前の磁性膜62の飽和磁化がCoの原子層の層厚比に依存する依存関係を表わすラインL3も記載されている。このラインL3が表わす依存関係を、以下では、飽和磁化の層厚比依存性と呼ぶ。この飽和磁化の層厚比依存性を表わすラインL3については、図5における後述のステップS106で使われる。
 また、このグラフG2に示す2つのラインL2,L3は、Pdの原子層の膜厚が0.7nmで、上記の積層数が20層の人工格子構造の磁性膜について得られた測定データを表わすものである。
 以下、この測定データの前提となった積層数(20層)をデフォルトの積層数と呼ぶ。
 ここでの例では、ステップS103で得られた飽和磁化消失度(90パーセント)に対応して上記のステップS104で得られる実際の異方性磁界は上述のように18kOeである。図7のグラフG2で異方性磁界の層厚比依存性を表わすラインL2から、この実際の異方性磁界を得るための層厚比(以下、実際の層厚比と呼ぶ)がおよそ0.42となる。
 さらに、本実施形態では、ステップS101で作成するサンプルにおける上記のサンプル層厚比が、このステップS105の処理と同じ処理によって求められる。ここでの例では、上述したようにサンプル異方性磁界が14kOeであるので、図7のグラフG2によると、サンプル層厚比は0.72となる。
 上記のステップS101では、このステップS105の処理と同じ処理によって求められたサンプル層厚比でPdの原子層とCoの原子層とが積層された人工格子構造の磁性膜を有するサンプルが形成されることとなる。
 次に、図5のフローチャートでは、Coの原子層の層厚比が上記の実際の層厚比となっている人工格子構造の磁性膜における飽和磁化(以下、実際の飽和磁化と呼ぶ)が求められる(ステップS106)。さらに、このステップS106の処理では、上記のサンプルの磁性膜における飽和磁化(以下、サンプル飽和磁化と呼ぶ)も求められる。
 このステップS106での2つの飽和磁化の算出には、上記の図7のグラフG2における飽和磁化の層厚比依存性を表わすラインL3が使われる。
 このラインL3から、ステップS105で得られた実際の層厚比(0.42)に対応する実際の飽和磁化として、約450emu/ccという値が得られる。一方、サンプル層厚比(0.72)に対応するサンプル飽和磁化として、約550emu/ccという値が得られる。
 ステップS106において2種類の飽和磁化が求められると、次に、それらの飽和磁化に基づいて、人工格子構造の磁性膜における実際の積層数が次のように求められる(ステップS107)。
 本実施形態では、実際の飽和磁化と実際の積層数との積が、サンプル飽和磁化とデフォルトの積層数との積の90パーセント以上となるように、実際の積層数が決定される。
 この実際の積層数の求め方は、次のような理由に基づいている。
 一般に、磁気ディスクに対する情報再生は、磁性ドットにおいて情報を担持している磁化が発する漏れ磁界が磁気ヘッドによって検出されることで行われる。このとき、磁気ヘッドで得られる再生信号は、磁性ドットの飽和磁化が大きい程、あるいは磁性ドットの体積が大きい程大きくなる。このため、例えば飽和磁化が小さくて所望のレベルの再生信号が得られないことが想定される場合には、磁性ドットを若干厚めにして体積を増すことによって、所望のレベルの再生信号を実現することが可能となる。本実施形態のように磁性ドットが人工格子構造を有する場合には、人工格子構造における積層数を増やすことで、上記のような所望のレベルの再生信号を実現することができる。このとき、飽和磁化と積層数との積が、所望のレベルの再生信号が得られる磁性ドットでの飽和磁化と積層数との積の90パーセント以上であれば、その所望のレベルの再生信号が達成されることことを本件の開発者は見出した。
 本実施形態では、ドット間分断帯が100パーセントの飽和磁化消失度で形成されたときの磁性ドットで得られる再生信号のレベルが、目標のレベルとして採用される。ここで、上記のサンプルの磁性膜は、100パーセントの飽和磁化消失度を前提として求められた層厚比で形成されたものである。そこで、図5のステップS107では、実際の飽和磁化と実際の積層数との積が、上記のサンプル飽和磁化とデフォルトの積層数との積の90パーセント以上となるように、その実際の積層数が求められる。
 上述の具体例では、サンプル飽和磁化が550emu/ccであり、デフォルトの積層数が20層であって、両者の積の90パーセントが9900となる。一方で、実際の飽和磁化が450emu/ccであるので、実際の積層数は22層以上となる。
 以上に説明したステップS107までの処理で、ステップS105で算出された実際の異方性磁界を実現するのに必要な層厚比と積層数とが得られる。
 そして、このステップS107に続く磁気ディスク製造処理(ステップS108)において、それらの層厚比と積層数とを用いた処理が実行される。
 図8は、磁気ディスク製造処理(ステップS108)の詳細を示す図である。
 まず、製膜工程(A)で、ガラス基板60上に、図4に示す下地層61と磁性膜62と保護層63とが形成される。尚、この図8では、図4に示す下地層61と保護層63については図を見やすくするために図示が省略されている。
 ここでの形成は、ステップS101においてサンプルを形成したときの、図4を参照して説明した各種数値条件と同等な数値条件で行なわれる。ただし、磁性膜62におけるCoの原子層62aの層厚比と、Coの原子層62aとPdの原子層62bとの組の積層数については、図5のステップS107までの処理で求められた層厚比と積層数とが用いられる。この製膜工程(A)は、上述した磁気記憶媒体製造方法の基本形態における第2の磁性膜形成過程の一例に相当する。
 本実施形態では、上述したように、この製膜工程(A)で形成される磁性膜62は、Coの原子層62aとPdの原子層62bとが交互に積層されてなる人工格子構造を有している。そして、ここでの人工格子構造が、上記のように求められた層厚比と積層数で構築される。
 本実施形態では、上述したように、ステップS105で求められた層厚比を有する人工格子構造により、図5のステップS102で算出された実際の異方性磁界を実現することができる。
 このことは、上述の基本形態に対し、次のような応用形態が好適であることを意味している。
 この応用形態では、上記第1の磁性膜形成過程および上記第2の磁性膜形成過程の双方が、Coの原子層とPdの原子層とが交互に積層された人工格子構造の磁性膜を形成する過程となっている。そして、この応用形態は、上記異方性磁界算出過程で算出された異方性磁界を、上記人工格子構造の磁性膜で実現するのに要する、Pdの原子層に対するCoの原子層の層厚比を算出する層厚比算出過程を有している。さらに、この応用形態では、上記第2の磁性膜形成過程が、Coの原子層とPdの原子層とを、上記層厚比算出過程で算出された層厚比で交互に積層して上記人工格子構造の磁性膜を形成する過程となっている。
 この応用形態によれば、上記人工格子構造の磁性膜におけるCoの原子層の層厚比を適宜に調節するという簡単な方法で、上記異方性磁界算出過程で算出された所望の異方性磁界を実現することができる。
 図5のステップS105の処理は、この応用形態における層厚比算出過程の一例に相当する。そして、図8の製膜工程(A)は、この応用形態における第2の磁性膜形成過程の一例にも相当している。
 また、本実施形態では、上述したように、ステップS107で求められた積層数を有する人工格子構造により、実際の磁気ディスク10で得られる再生信号のレベルを上記の目標のレベルに合わせ込むことができる。このことは、人工格子構造の磁性膜を採用した上記の応用形態に対し、次のような応用形態がさらに好適であることを意味している。
 この応用形態は、積層数算出過程を有している。この積層数算出過程は、上記第2の磁性膜形成過程で形成される磁性膜における原子層数を算出する過程である。そして、その算出は、上記第1の磁性膜形成過程で形成された磁性膜における、飽和磁化と原子層数との積に対し、上記第2の磁性膜形成過程で形成される磁性膜における、飽和磁化と原子層数との積が所定の近似度を満足するように実行される。さらに、この応用形態では、上記第2の磁性膜形成過程が、上記積層数算出過程で算出された原子層数の原子層を積層して上記人工格子構造の磁性膜を形成する過程となっている。
 この応用形態によれば、上記第1の磁性膜形成過程で形成された磁性膜から生じる漏れ磁界とほぼ同レベルの漏れ磁界を生じさせる磁性膜が、上記第2の磁性膜形成過程で形成されることとなる。磁性膜から生じる漏れ磁界のレベルは、その磁性膜を使って形成されるビットパターンド型の磁気ディスク等から得られる再生信号のレベルを左右する。従って、この応用形態によれば、上記第1の磁性膜形成過程で、所望の漏れ磁界が生じるような飽和磁化と積層数で磁性膜を形成するといった簡単な運用により、所望レベルの再生信号が得られる磁気ディスクを得ることができる。
 図5のステップS107の処理は、この応用形態における積層数算出過程の一例に相当する。また、上記のサンプル飽和磁化とデフォルトの積層数との積が、この応用形態にいう「上記第1の磁性膜形成過程で形成された磁性膜における、飽和磁化と原子層数との積」の一例に相当する。さらに、上記の実際の飽和磁化と実際の積層数との積が、この応用形態にいう「上記第2の磁性膜形成過程で形成される磁性膜における、飽和磁化と原子層数との積」の一例に相当する。そして、本実施形態では、この応用形態にいう「近似度」の一例として、90パーセント以上という近似度が採用されている。
 また、図8の製膜工程(A)は、この応用形態における第2の磁性膜形成過程の一例にも相当している。
 以上に説明した製膜工程(A)の次に、ナノインプリント工程(B)が実行される。このナノインプリント工程(B)では、磁性膜62上に、紫外線硬化樹脂からなるレジストが塗布され、そのレジストに、ナノサイズの穴66aが空いたモールド66が載せられる。これによってレジストがそのナノサイズの穴66aに入って、図4にも示したレジストパターン64が形成される。そして、そのモールド66越しにレジストに紫外線が照射されることでレジストが硬化してレジストパターン64が磁性膜62上にプリントされる。また、レジストが硬化した後モールド66は除去される。
 ナノインプリント工程(B)の後はイオン注入工程(C)に進む。このイオン注入工程(C)では、レジストパターン64がプリントされている磁性膜62の上部からイオンが照射される。その結果、そのレジストパターン64以外の箇所に照射されたイオンが磁性膜62に注入される。このイオン注入工程(C)が、上述の基本形態におけるイオン注入過程の一例に相当する。また、このイオン注入工程(C)は、ビットパターンド型の磁気記憶媒体の製造に対応した上述の応用形態における第2のイオン注入過程の一例にも相当している。
 ここで、本実施形態では、注入イオンとして、酸素イオン及び窒素イオンのうちいずれか一方のイオンが使われる。これらのイオンは、本実施形態の人工格子構造の磁性膜62や、後述の第2実施形態におけるCo-Cr-Pt合金の磁性膜について、異方性磁界や飽和磁化を確実に低減させることができる。
 このことは、上述の基本形態に対し、上記第2のイオン注入過程が、上記イオンとして、酸素イオン及び窒素イオンのうちいずれか一方のイオンを用いる過程であるという応用形態が好適であることを意味している。
 図8のイオン注入工程(C)は、この応用形態における第2のイオン注入過程の一例にも相当している。
 また、上述の基本形態に対し、次のような応用形態も好適である。この応用形態は、マスク形成過程を有する。このマスク形成過程は、上記磁性膜上に、上記保護領域へのイオンの注入を阻害するマスクを形成する過程である。そして、この応用形態では、上記第2のイオン注入過程が、上記マスクが形成された磁性膜の上からイオンを当てることで、そのマスクで保護された保護領域を除いた他の領域に対して局所的にそのイオンを注入する過程となっている。
 この応用形態によれば、イオン注入が不要な箇所はマスクで確実に保護されることとなり、磁性ドットの形成精度が高い。図8のナノインプリント工程(B)は、この応用形態におけるマスク形成過程の一例に相当し、イオン注入工程(C)は、この応用形態における第2のイオン注入過程の一例にも相当する。
 また、マスク形成過程を有したこの好適な応用形態に対し、上記マスク形成過程が、上記マスクをレジストで形成する過程であるという応用形態はさらに好適である。また。マスク形成過程を有した上記の好適な応用形態に対し、上記マスク形成過程が、上記マスクをレジストで、ナノインプリントプロセスによって形成する過程であるという応用形態もさらに好適である。
 レジストによるマスク形成は技術的に安定していて精度の良いマスク形成が期待でき、ナノインプリントプロセスによるマスク形成は、ナノレベルでのマスクパターンを容易に作成することが出来て好ましい。この図8に示すナノインプリント工程(B)は、これらさらに好適な応用形態におけるマスク形成過程の一例にも相当している。
 尚、上述したナノインプリントでは、イオンを注入するべき箇所でも完全にはレジストが除去されない。しかし、レジストが薄い場所ではイオンがレジストを透過して磁性膜62に注入され、レジストが厚い場所(即ちレジストパターン64となっている場所)では、イオンがレジストで止まって磁性膜には到達しない。このため、所望のドットパターンの形成が可能である。
 また、図8に示すイオン注入工程(C)では、イオンの加速電圧が、磁性膜62の中心部へイオンが注入されるように設定される。この加速電圧は、イオン種によって異なり、磁性膜中心部までの深さや材料によって異なる。
 このイオン注入工程(C)によってイオンが注入された箇所の磁性膜62は、内部にイオンが留まって結晶構造が歪み、保磁力および飽和磁化が低下する。イオン注入の後はレジストパターン64は化学的処理で除去される。
 このようなイオン注入工程(C)を経ることにより、磁性ドット10aの相互間に、磁性ドット10aどうしの磁気的な相互作用を分断するドット間分断帯10bが形成されてビットパターンド型の磁気ディスク10の完成(D)となる。
 本実施形態では、上記のイオン注入工程(C)において、イオン注入を受けた磁性膜62の飽和磁化が、図5のステップS101で把握された飽和磁化消失度(ここでの例では、90パーセント)で消失する。その結果、イオン注入で形成されたドット間分断帯10bには、若干の飽和磁化が残る。このドット間分断帯10bに残った飽和磁化は、磁性ドット10aにおける磁化反転磁界を低減させる。しかしながら、本実施形態では、磁性膜62の異方性磁界、延いてはこの磁性ドット10aの異方性磁界が、ステップS104において算出された、このような低減を見込んで設計上の磁化反転磁界が得られる異方性磁界に調整されている。その結果、本実施形態では、飽和磁化消失度によらず、この設計上の磁化反転磁界を有するビットパターンド型の磁気ディスク10が製造されることとなる。
 また、磁性膜62の飽和磁化は、磁性ドット10aについて得られる再生信号のレベルを左右する。しかし、本実施形態では、人工格子構造を有する磁性膜62における上記の積層数が、ステップS102において算出された適切な積層数に調整されている。その結果、本実施形態では、所望レベルの再生信号が得られるビットパターンド型の磁気ディスク10が製造されることとなる。
 そして、図5に示す本実施形態の磁気ディスク製造方法では、図8に詳細が示された磁気ディスク製造処理(ステップS108)が、磁気ディスク10の数が規定の量産数に達するまで(ステップS109におけるYes判定)繰り返される。
 以上に説明した第1実施形態の磁気ディスク製造方法によれば、ロット毎に飽和磁化消失度が把握される。そして、その把握された飽和磁化消失度に基づいて、設計上の磁化反転磁界を有し、所望レベルの再生信号が得られるビットパターンド型の磁気ディスク10が製造される。これにより、磁化反転磁界のロット毎のバラつきが抑えられた磁気ディスク10が製造されることとなる。また、それらの磁気ディスク10を使って量産されるHDD100は、搭載されている磁気ディスク10の磁化反転磁界のバラつきが抑えられたものとなる。
 以上で、第1実施形態の説明を終了し、次に、第2実施形態について説明する。
 この第2実施形態は、磁性ドットがCo-Cr-Pt合金製であり、その結果、磁気ディスク製造方法が、このCo-Cr-Pt合金での磁性膜の形成に対応した製造方法となっている点が、上述の第1実施形態と異なっている。そこで、以下では、この第1実施形態との相違点に注目した説明を行い、同一点については説明を割愛する。
 図9は、第2実施形態の磁気ディスク製造方法を示すフローチャートである。
 尚、この図9では、図5に示す処理と同等な処理については、図5と同じステップ数が付されており、以下、これらの処理については重複説明を省略する。
 この図9の磁気ディスク製造方法では、まず、上述の第1実施形態と同様に、サンプルの作成(ステップS201)と、サンプルへのイオン注入(ステップS202)とが実行される、ただし、本実施形態では、そのサンプルにおける磁性膜が、Co-Cr-Pt合金製の磁性膜となっている。また、本実施形態では、サンプルの磁性膜でのPtの組成比(サンプル組成比)が、後述のステップS203の処理と同じ処理によって求められる。そして、ステップS201の処理では、サンプルの磁性膜が、その求められたサンプル組成比で作成される。このサンプルの磁性膜における組成比の求め方の詳細については、ステップS203の処理について説明するときに併せて説明する。また、本実施形態では、サンプルの磁性膜の膜厚は20nmとなっている。
 本実施形態におけるステップS201の処理も、上述の基本形態における第1の磁性膜形成過程の一例に相当し、ステップS202の処理も、この基本形態における第1のイオン注入過程の一例に相当する。
 そして、そのCo-Cr-Pt合金製の磁性膜を有するサンプルについて、上述の第1実施形態と同様の飽和磁化消失度の計測(ステップS103)と異方性磁界の算出(ステップS104)とが実行される。
 次に、本実施形態では、ステップS104に続くステップS203の処理において、実際の異方性磁界が得られるPtの組成比(以下、実際の組成比と呼ぶ)が求められる。
 本実施形態では、この組成比は、予め用意された次のような測定データに基づいて求められる。即ち、Ptの組成比が互いに異なる複数の磁性膜を製膜して各磁性膜における異方性磁界を測定することで得られる測定データである。この測定データは、異方性磁界がPtの組成比に依存する依存関係(以下、異方性磁界のPt組成比依存性と呼ぶ)を表わしている。
 ステップS203では、ステップS102で算出された異方性磁界に対応する組成比が、この異方性磁界のPt組成比依存性に基づいて求められる。尚、以下、上述の第1実施形態についての説明と同様に、ステップS101で把握された飽和磁化消失度が90パーセントで、ステップS102で求められた実際の異方性磁界が18kOeであるとして説明を続ける。
 図10は、異方性磁界のPt組成比依存性の一例を示すグラフである。
 この図10には、異方性磁界のPt組成比依存性を表わす測定データがプロットされたグラフG3が示されている。そして、このグラフG3には、異方性磁界のPt組成比依存性を表わすラインL3が記載されている。
 尚、このグラフG3には、イオン注入前の磁性膜の飽和磁化がPtの組成比に依存する依存関係(以下、飽和磁化のPt組成比依存性と呼ぶ)を表わすラインL5も記載されている。このラインL5については、図5における後述のステップS204で使われる。
 また、このグラフG3に示す2つのラインL4,L5は、Co-Cr-Pt合金製で膜厚が20nmの磁性膜について得られた測定データを表わすものである。
 以下、この測定データの前提となった膜厚をデフォルトの膜厚と呼ぶ。
 この図10のグラフG3で異方性磁界についての依存性を表わすラインL4から、上記の実際の異方性磁界(18kOe)を得るための実際の組成比がおよそ29atパーセントとなる。
 さらに、本実施形態では、ステップS201で作成するサンプルにおける上記のサンプル組成比が、このステップS203の処理と同じ処理によって求められる。尚、ここでの例では、上述の第1実施形態についての説明と同様に、サンプル異方性磁界が14kOeであるとする。すると、図7のグラフG2から、このサンプル異方性磁界に対応するサンプル組成比がおよそ23atパーセントとなる。
 上記のステップS201では、このステップS203の処理と同じ処理によって求められたサンプル組成比でPtを含有したされたCo-Cr-Pt合金製の磁性膜を有するサンプルが形成されることとなる。
 次に、図9のフローチャートでは、Ptの組成比が上記の実際の組成比となっている、上記の図10のグラフG3の測定データに対応する磁性膜における実際の飽和磁化が算出される(ステップS204)。さらに、このステップS204の処理では、上記のサンプルの磁性膜における飽和磁化(以下、サンプル飽和磁化と呼ぶ)も求められる。
 このステップS204での2つの飽和磁化の算出には、上記の図9のグラフG3における飽和磁化のPt組成比依存性を表わすラインL5が使われる。
 このラインL5から、ステップS203で得られた実際の組成比(29atパーセント)に対応する実際の飽和磁化として、約450emu/ccという値が得られる。一方、上記のサンプル組成比(23atパーセント)に対応するサンプル飽和磁化として、約500emu/ccという値が得られる。
 ステップS204において2種類の飽和磁化が算出されると、次に、それら算出された飽和磁化に基づいて、Co-Cr-Pt合金製の磁性膜の実際の膜厚が次のように算出される(ステップS205)。
 ステップS205では、実際の飽和磁化と実際の膜厚との積が、サンプル飽和磁化とデフォルトの膜厚との積の90パーセント以上となるように、実際の膜厚が決定される。
 ここでの例では、実際の膜厚は20nm以上となる。
 この膜厚の求め方は、次のような理由に基づいている。
 上述したように、例えば磁性材料の飽和磁化が小さくて所望のレベルの再生信号が得られないことが想定される場合には、設計段階で、磁性ドットを若干厚めにして体積を増すことによって、所望のレベルの再生信号を実現することが可能となる。本実施形態のように磁性ドットがCo-Cr-Pt合金製の単層膜である場合には、その膜厚を増やすことで、上記のような所望のレベルの再生信号を実現することができる。このとき、飽和磁化と実際の膜厚との積が、所望のレベルの再生信号が得られる磁性ドットでの飽和磁化と膜厚との積の90パーセント以上であれば、その所望のレベルの再生信号が達成されることことを本件の開発者は見出した。
 本実施形態では、ドット間分断帯が100パーセントの飽和磁化消失度で形成されたときの磁性ドットで得られる再生信号のレベルが、目標のレベルとして採用される。ここで、上記のサンプルの磁性膜は、100パーセントの飽和磁化消失度を前提として求められた組成比で形成されたものである。そこで、図9のステップS205では、実際の飽和磁化と実際の膜厚との積が、上記のサンプル飽和磁化とデフォルトの膜厚との積の90パーセント以上となるように、その実際の膜厚が求められる。
 以上に説明したステップS205までの処理で、ステップS105で算出された実際の異方性磁界を実現するのに必要なPtの組成比と、所望のレベルの再生信号を実現するのに必要な膜厚とが得られる。
 ここで、上記のグラフG2に示すラインL4の形状から、Co-Cr-Pt合金製の磁性膜では、約18kOeを超える異方性磁界については実現不可能であることが分かる。このような異方性磁界は、上述の図6のグラフG1から90パーセントを下回る飽和磁化消失度に対応している。つまり、本実施形態では、図9のステップS103で得られた飽和磁化消失度が90パーセント以上のときにのみ、所望の磁化反転磁界の実現が可能となる。その結果、本実施形態では、90パーセントを下回る飽和磁化消失度が把握された場合には、例えばスパッタ装置での製膜条件等が、90パーセント以上の飽和磁化消失度が得られるように調整されることとなる。
 Ptの組成比と、磁性膜の膜厚とが得られると、次に、その組成比と膜厚とを使った磁気ディスク製造処理(ステップS206)が実行される。この磁気ディスク製造処理(ステップS206)は、製膜工程で得られる磁性膜がCo-Cr-Pt合金製であることを除けば、上記の図8に示す一連の処理と同等である。そこで、ここでは、この磁気ディスク製造処理(ステップS206)についての説明を割愛する。
 この本実施形態では、上述したように、ステップS203で求められたPtの組成比を有するCo-Cr-Pt合金製の磁性膜により、ステップS104で算出された実際の異方性磁界を確実に実現することができる。
 このことは、上述の基本形態に対し、次のような応用形態が好適であることを意味している。
 この応用形態では、上記第1の磁性膜形成過程および上記第2の磁性膜形成過程の双方が、Co-Cr-Pt基合金からなる磁性膜を形成する過程となっている。そして、この応用形態は、上記異方性磁界算出過程で算出された異方性磁界を、Co-Cr-Pt基合金からなる磁性膜で実現するのに要するPtの組成比を算出する組成比算出過程を有している。さらに、この応用形態では、上記第2の磁性膜形成過程が、上記磁性膜として、上記組成比算出過程で算出された組成比でPtを含有したCo-Cr-Pt基合金で磁性膜を形成する過程となっている。
 この応用形態によれば、Co-Cr-Pt基合金製の磁性膜におけるPtの組成比を適宜に調節するという簡単な方法で、上記異方性磁界算出過程で算出された所望の異方性磁界を実現することができる。
 図9のステップS203の処理は、この応用形態における組成比算出過程の一例に相当する。そして、図9の磁気ディスク製造処理(ステップS206)で実行される製膜工程は、この応用形態における第2の磁性膜形成過程の一例に相当している。
 また、本実施形態では、上述したように、ステップS205で求められた膜厚により、実際の磁気ディスクで得られる再生信号のレベルを上記の目標のレベルに合わせ込むことができる。このことは、Co-Cr-Pt基合金製の磁性膜を採用した上記の応用形態に対し、次のような応用形態がさらに好適であることを意味している。
 この応用形態は、膜厚算出過程を有している。この膜厚算出過程は、上記第2の磁性膜形成過程で形成される磁性膜における膜厚を算出する過程である。そして、その算出は、上記第1の磁性膜形成過程で形成された磁性膜における、飽和磁化と膜厚との積に対し、上記第2の磁性膜形成過程で形成される磁性膜における、飽和磁化と膜厚との積が所定の近似度を満足するように実行される。さらに、この応用形態では、上記第2の磁性膜形成過程が、上記積層数算出過程で算出された膜厚で、Co-Cr-Pt基合金からなる磁性膜を形成する過程となっている。
 この応用形態によれば、上記第1の磁性膜形成過程で、所望の漏れ磁界が生じるような飽和磁化と膜厚で磁性膜を形成するといった簡単な運用により、所望レベルの再生信号が得られる磁気ディスクを得ることができる。
 図9のステップS205の処理は、この応用形態における膜厚算出過程の一例に相当する。また、上記のサンプル飽和磁化とデフォルトの膜厚との積が、この応用形態にいう「上記第1の磁性膜形成過程で形成された磁性膜における、飽和磁化と膜厚との積」の一例に相当する。さらに、さらに、上記の実際のサンプル飽和磁化と実際の膜厚との積が、この応用形態にいう「上記第2の磁性膜形成過程で形成される磁性膜における、飽和磁化と膜厚との積」の一例に相当する。そして、本実施形態では、この応用形態にいう「近似度」の一例として、90パーセント以上という近似度が採用されている。
 以上に説明したように、磁気ディスク製造処理(ステップS206)は、ステップS203で得られたPtの組成比とステップS205で得られた膜厚とを使って実行される。これにより、この磁気ディスク製造処理(ステップS206)では、飽和磁化消失度によらず、設計上の磁化反転磁界を有し所望レベルの再生信号が得られるビットパターンド型の磁気ディスクが製造されることとなる。
 そして、図9に示す本実施形態の磁気ディスク製造方法では、この磁気ディスク製造処理(ステップS206)が、磁気ディスクの数が規定の量産数に達するまで(ステップS109におけるYes判定)繰り返される。
 以上に説明した第2実施形態の磁気ディスク製造方法でも、上述の第1実施形態の磁気ディスク製造方法と同様に、磁化反転磁界のロット毎のバラつきが抑えられた磁気ディスクが製造されることとなる。また、それらの磁気ディスクを使って量産されるHDDは、搭載されている磁気ディスクの磁化反転磁界のバラつきが抑えられたものとなる。
 尚、上述した説明では、磁気記憶媒体の一例として、ビットパターンド型の磁気記憶媒体を例示したが、磁気記憶媒体はビットパターンド型に限るものではなく、例えばディスクリート・トラック型であっても良い。
 また、上述した説明では、磁性膜を形成するCo-Cr-Pt基合金の一例としてCo-Cr-Pt合金を例示したが、Co-Cr-Pt基合金はこれに限るものではない。このCo-Cr-Pt基合金は、Co-Cr-Pt合金の磁気特性等を損なわない組成範囲内で他の元素をCo-Cr-Pt合金に添加した合金等であっても良い。
 また、上述した説明では、磁性ドット形成のための好ましいマスクとしてレジストパターンを用いることが例示されている。これに対し、上述した基本形態におけるイオン注入では、媒体面に接触しないようにステンシルマスクを媒体面に近付けて配してイオン注入するプロセスを用いても良い。このプロセスによれば、レジスト塗布とレジスト除去の工程を省略することができる。
 また、上述した説明では、レジストのパターニングの最良な例としてナノインプリントプロセスを利用することが示されているが、パターニングには電子線露光を用いても良い。
 100  ハードディスク装置
 10  磁気ディスク
 10a  磁性ドット
 10b  ドット間分断帯
 10c  トラック
 60  基板
 61  下地層
 62  磁性膜
 62a  Coの原子層
 62b  Pdの原子層

Claims (14)

  1.  磁性膜を形成する第1の磁性膜形成過程と、
     前記磁性膜にイオン注入を行なう第1のイオン注入過程と、
     前記磁性膜における、前記第1のイオン注入過程でのイオン注入による飽和磁化の消失度を計測する消失度計測過程と、
     前記消失度計測過程で計測された消失度で前記磁性膜の飽和磁化が、所定の場所に設定された保護領域を除いた他の領域について局所的に消失したときに該保護領域での磁化反転磁界が所定の磁化反転磁界と等しくなるという前提で、飽和磁化消失前の前記磁性膜の異方性磁界を算出する異方性磁界算出過程と、
     基板上に、前記異方性磁界算出過程で算出された異方性磁界と同等な異方性磁界を有する磁性膜を、前記第1の磁性膜形成過程での磁性膜の形成条件と同等な形成条件で形成する第2の磁性膜形成過程と、
     前記第2の磁性膜形成過程で形成された磁性膜に対して前記他の領域に相当する領域について局所的に、前記第1のイオン注入過程でのイオン注入条件と同等なイオン注入条件でイオン注入を行なう第2のイオン注入過程とを有することを特徴とする磁気記憶媒体製造方法。
  2.  前記第1の磁性膜形成過程および前記第2の磁性膜形成過程の双方が、Coの原子層とPdの原子層とが交互に積層された人工格子構造の磁性膜を形成する過程であり、
     前記異方性磁界算出過程で算出された異方性磁界を、前記人工格子構造の磁性膜で実現するのに要する、Pdの原子層に対するCoの原子層の層厚比を算出する層厚比算出過程を有し、
     前記第2の磁性膜形成過程が、Coの原子層とPdの原子層とを、前記層厚比算出過程で算出された層厚比で交互に積層して前記人工格子構造の磁性膜を形成する過程であることを特徴とする請求項1記載の磁気記憶媒体製造方法。
  3.  前記第1の磁性膜形成過程で形成された磁性膜における、飽和磁化と原子層数との積に対し、前記第2の磁性膜形成過程で形成される磁性膜における、飽和磁化と原子層数との積が所定の近似度を満足するように、該第2の磁性膜形成過程で形成される磁性膜における原子層数を算出する積層数算出過程を備え、
     前記第2の磁性膜形成過程が、前記積層数算出過程で算出された原子層数の原子層を積層して前記人工格子構造の磁性膜を形成する過程であることを特徴とする請求項2記載の磁気記憶媒体製造方法。
  4.  前記第1の磁性膜形成過程および前記第2の磁性膜形成過程の双方が、Co-Cr-Pt基合金からなる磁性膜を形成する過程であり、
     前記異方性磁界算出過程で算出された異方性磁界を、Co-Cr-Pt基合金からなる磁性膜で実現するのに要するPtの組成比を算出する組成比算出過程を有し、
     前記第2の磁性膜形成過程が、前記磁性膜として、前記組成比算出過程で算出された組成比でPtを含有したCo-Cr-Pt基合金で磁性膜を形成する過程であることを特徴とする請求項1記載の磁気記憶媒体製造方法。
  5.  前記第1の磁性膜形成過程で形成された磁性膜における、飽和磁化と膜厚との積に対し、前記第2の磁性膜形成過程で形成される磁性膜における、飽和磁化と膜厚との積が所定の近似度を満足するように、該第2の磁性膜形成過程で形成される磁性膜における膜厚を算出する膜厚算出過程を備え、
     前記第2の磁性膜形成過程が、前記積層数算出過程で算出された膜厚で、Co-Cr-Pt基合金からなる磁性膜を形成する過程であることを特徴とする請求項4記載の磁気記憶媒体製造方法。
  6.  前記第2のイオン注入過程が、前記保護領域として、前記磁性膜が広がる方向に規則的に配列した複数箇所を用いて、該複数箇所の相互間に対して局所的にイオンを注入する過程であることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項記載の磁気記憶媒体製造方法。
  7.  前記第2のイオン注入過程が、前記イオンとして、酸素イオン及び窒素イオンのうちいずれか一方のイオンを用いる過程であることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項記載の磁気記憶媒体製造方法。
  8.  前記磁性膜上に、前記保護領域へのイオンの注入を阻害するマスクを形成するマスク形成過程を有し、
     前記第2のイオン注入過程が、前記マスクが形成された磁性膜の上からイオンを当てることで、該マスクで保護された保護領域を除いた他の領域に対して局所的に該イオンを注入する過程であることを特徴とする請求項1から7のうちいずれか1項記載の磁気記憶媒体製造方法。
  9.  前記マスク形成過程が、前記マスクをレジストで形成する過程であることを特徴とする請求項8記載の磁気記憶媒体製造方法。
  10.  前記マスク形成過程が、前記マスクをレジストで、ナノインプリントプロセスによって形成する過程であることを特徴とする請求項8又は9記載の磁気記憶媒体製造方法。
  11.  基板と、
     磁性膜を形成する第1の磁性膜形成過程と、前記磁性膜にイオン注入を行なう第1のイオン注入過程と、前記磁性膜における、前記第1のイオン注入過程でのイオン注入による飽和磁化の消失度を計測する消失度計測過程と、前記消失度計測過程で計測された消失度で前記磁性膜の飽和磁化が、所定の場所に設定された保護領域を除いた他の領域について局所的に消失したときに該保護領域での磁化反転磁界が所定の磁化反転磁界と等しくなるという前提で、飽和磁化消失前の前記磁性膜の異方性磁界を算出する異方性磁界算出過程と、前記基板上に、前記異方性磁界算出過程で算出された異方性磁界と同等な異方性磁界を有する磁性膜を、前記第1の磁性膜形成過程での磁性膜の形成条件と同等な形成条件で形成する第2の磁性膜形成過程とを経て形成された磁性膜を有し、情報が磁気的に記録される磁性部と、
     前記磁性部の磁性膜と連続した磁性膜への、前記第1のイオン注入過程でのイオン注入条件と同等なイオン注入条件でイオン注入を行なう局所的なイオン注入過程を経て形成された被注入膜を有し、該磁性部の飽和磁化よりも小さい飽和磁化を有する低磁性部とを備えたことを特徴とする磁気記憶媒体。
  12.  前記磁性部が、前記基板上に規則的に複数配列された、各々に情報が磁気的に記録される磁性ドットであり、
     前記低磁性部が、前記磁性ドットの相互間に設けられた、該磁性ドット相互の磁気的結合を阻害するドット間分断帯であることを特徴とする請求項11記載の磁気記憶媒体。
  13.  基板と、磁性膜を形成する第1の磁性膜形成過程と、前記磁性膜にイオン注入を行なう第1のイオン注入過程と、前記磁性膜における、前記第1のイオン注入過程でのイオン注入による飽和磁化の消失度を計測する消失度計測過程と、前記消失度計測過程で計測された消失度で前記磁性膜の飽和磁化が、所定の場所に設定された保護領域を除いた他の領域について局所的に消失したときに該保護領域での磁化反転磁界が所定の磁化反転磁界と等しくなるという前提で、飽和磁化消失前の前記磁性膜の異方性磁界を算出する異方性磁界算出過程と、前記基板上に、前記異方性磁界算出過程で算出された異方性磁界と同等な異方性磁界を有する磁性膜を、前記第1の磁性膜形成過程での磁性膜の形成条件と同等な形成条件で形成する第2の磁性膜形成過程とを経て形成された磁性膜を有し、情報が磁気的に記録される磁性部と、前記磁性部の磁性膜と連続した磁性膜への、前記第1のイオン注入過程でのイオン注入条件と同等なイオン注入条件でイオン注入を行なう局所的なイオン注入過程を経て形成された被注入膜を有し、該磁性部の飽和磁化よりも小さい飽和磁化を有する低磁性部とを備えた磁気記憶媒体と、
     前記磁気記憶媒体に近接あるいは接触して磁性部に磁気的に情報の記録及び/又は再生を行う磁気ヘッドと、
     前記磁気ヘッドを前記磁気記憶媒体表面に対して相対的に移動させて、該磁気ヘッドによる情報の記録及び/又は再生となる磁性部上に該磁気ヘッドを位置決めするヘッド位置制御機構とを備えたことを特徴とする情報記憶装置。
  14.  前記磁性部が、前記基板上に規則的に複数配列された、各々に情報が磁気的に記録される磁性ドットであり、
     前記低磁性部が、前記磁性ドットの相互間に設けられた、該磁性ドット相互の磁気的結合を阻害するドット間分断帯であることを特徴とする請求項13記載の情報記憶装置。
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