WO2010058832A1

WO2010058832A1 - 車体用高強度部材構造

Info

Publication number: WO2010058832A1
Application number: PCT/JP2009/069687
Authority: WO
Inventors: 雅人安部; 陽松谷
Original assignee: カルソニックカンセイ株式会社
Priority date: 2008-11-21
Filing date: 2009-11-20
Publication date: 2010-05-27
Also published as: CN102224060B; US8764102B2; EP2351683A1; EP2351683A4; US20110227369A1; EP2351683B1; CN102224060A

Abstract

　車体用高強度部材本体の強度および剛性を効果的に向上させ得るようにする。本車体用高強度部材構造は、車両の車室３１の前方に設けられほぼ車幅方向へ延びる車体用高強度部材本体３７と、前記車体用高強度部材本体３７の少なくとも中間部に設けられ、前記車両の前後方向に複数の閉断面部を有する高剛性構造部分６４と、前記高剛性構造部分６４に取り付けられ、前記車体用高強度部材本体３７を上下方向に支持するステー４２と、前記高剛性構造部分６４に取り付けられ、前記車体用高強度部材本体３７を車両前後方向に支持するポストブラケット４４と、前記高剛性構造部分６４に取り付けられ、車両前後方向の緊急入力荷重が作用した場合、乗員の膝を受けて膝入力荷重を吸収可能なニープロテクタ４７と、を備える。

Description

車体用高強度部材構造

　本発明は、車体用高強度部材構造に関するものである。

　自動車などの車両には、車室内の前方部分に樹脂製のインストルメントパネルが設けられている。このインストルメントパネルの内部には、金属製の車体用高強度部材が設けられている（例えば、特許文献１、特許文献２参照）。

　一般に、図３１に示すように、車室の前方部分（車室前部ＦＲ１）は、車室前壁ＦＲ２と、車室床部ＦＲ３と、車室側壁ＦＲ４とを備えている。

　そして、図３に示すように、このような車室の前方部分に設けられる車体用高強度部材１は、ほぼ車幅方向２へ延びる車体用高強度部材本体３を備えている。図３では、車体用高強度部材本体３は、断面が円形のパイプ部材によって構成されている。このパイプ部材は、中間部が（前方に）突出する形状を有している。この車体用高強度部材本体３は、両端部に、左右の車体パネル（サイドパネル、図示省略）に取付けるためのサイドブラケット４を備えている。

　このような車体用高強度部材本体３は、主に、ステアリングコラム（図示省略）を支持するためのものとして設計されている。そのために、車体用高強度部材本体３には、車幅方向２の中間部（運転席側部分）に、ステアリングコラムを取付けるためのコラムブラケット５が備えられている。コラムブラケット５は、通常、車体用高強度部材本体３に対し、前後に分割して設けられる（図示省略）。

　また、車体用高強度部材本体３は、車幅方向２の中間部の中央部分に、車体用高強度部材本体３の下部を車室床部６（フロアパネル、図５参照）に対して固定し、車体用高強度部材本体３を上下方向７に支持するステー８を備えている。図３では、ステー８は、左右２本設けられている。このステー８には、車載用オーディオ装置（図示省略）や、空調装置を制御するための制御ボックス（図示省略）などを取付可能な取付用ブラケット（図示省略）などが設けられている。また、車載用オーディオ装置や制御ボックスなどを所定の位置に設置するために、ステー８は、インストルメントパネル９（図５参照）の車室内側に位置するように設定されている。図５では、ステー８は、ほぼ上下方向７へ延びると共に、側面視で、上端側が車両前方側に屈曲する形状を呈している。これにより、ステー８は、上端部と下端部との位置が、前後に大きくズレている。

　そして、車体用高強度部材本体３は、車幅方向２の中間部の運転席側部分に、車体用高強度部材本体３の車両前方側部分を車室前壁部１１（ダッシュパネル、図５参照）に対して固定し、車体用高強度部材本体３を車両前後方向１２に支持するポストブラケット１３を備えている。図３では、ポストブラケット１３は、車両前後方向１２へ延びると共に、上方に開いたほぼＵ字断面形状を有する。このポストブラケット１３は、図６に示すように、前方からの緊急入力荷重１５（例えば、車室前壁部１１の車両後方への移動）に対して、仮想線で示すように屈曲変形する（潰れる）と共に、車両後方からの乗員の膝入力荷重１６、１７（図５参照）に対しても屈曲変形する程度の強度を有するように構成されている。このような強度とするために、ポストブラケット１３には、切欠部やその他の脆弱部１８（図６参照）などが形成されており、ポストブラケット１３の強度が意図的に弱められている。

　更に、必要に応じて、図４に示すように、車体用高強度部材本体３は、車幅方向２の中間部の運転席側部分または助手席側部分に、緊急時に乗員の膝を受けて膝入力荷重１６、１７（図５参照）を吸収可能なニープロテクタ２１を備えている。このニープロテクタ２１は、例えば、車体用高強度部材本体３の下部から下方へ延びる側面視でほぼＬ字状またはほぼＶ字状のニープロテクト用ブラケット２２と、乗員の膝を直接受ける膝受部材２３とを備えている。この場合、ニープロテクト用ブラケット２２は、乗員の両膝にほぼ対応させて左右一対設けられている。また、膝受部材２３は、左右一対のニープロテクト用ブラケット２２の車室内側端部間に架設されている。

　また、ニープロテクタ２１には、上記の他にも、図５に示すように、主に平均的体格の乗員の膝を受けてその膝入力荷重１６を吸収可能な上部ニープロテクト用ブラケット２４と、主に小柄な乗員の膝を受けてその膝入力荷重１７を吸収可能な下部ニープロテクト用ブラケット２５とを、分けて備えることにより、乗員の体格に対応させ得るようにしたものなども存在している。なお、図４のニープロテクタ２１は、このような体格に対応する機能を有していないものである。

　以上のように、車体用高強度部材本体３は、その両端部に設けられたサイドブラケット４によって、図示しない左右の車体パネル（サイドパネル）に取付けられている。

　そして、車体用高強度部材本体３は、基本的に、ステアリングコラムを、コラムブラケット５を介して支持するように機能する。

　また、車体用高強度部材本体３の車幅方向２の中間部に備えられたステー８は、車体用高強度部材本体３の下部を、車室床部６（フロアパネル）に対して固定し、車体用高強度部材本体３を主に上下方向７に支持するように機能する。このステー８により、ステアリングコラムや車体用高強度部材本体３の上下方向７の振動などを抑制することができる。

　また、車体用高強度部材本体３の車幅方向２の中間部に備えられたポストブラケット１３は、車体用高強度部材本体３の車両前方側部分を、車室前壁部１１（ダッシュパネル）に対して固定し、車体用高強度部材本体３を主に車両前後方向１２に支持するように機能する。また、車両前方からの緊急入力荷重１５に対しては、図６に示すように、車体用高強度部材本体３が変形する前にポストブラケット１３が屈曲変形する（潰れる）ことにより、車体用高強度部材本体３の車両後方側への移動や折曲がりなどを防止するように機能する。更に、車室内側からの乗員の膝入力荷重１６、１７に対しては、車体用高強度部材本体３が変形する前にポストブラケット１３が屈曲変形する（潰れる）ことにより、車体用高強度部材本体３の車両前方側への移動や折曲がりなどを防止するように機能する。

　また、車体用高強度部材本体３の車幅方向２の中間部に備えられたニープロテクタ２１は、緊急時に、膝受部材２３が乗員の膝を受けて、ニープロテクト用ブラケット２２が屈曲変形する（潰れる）ことにより、膝入力荷重１６、１７を吸収するように機能する。

　さらに、図５の構造では、膝受部材２３に対する膝当り高さの違いによって、平均的体格の乗員の場合には、主に上部ニープロテクト用ブラケット２４が屈曲変形する（潰れる）ことにより、その膝入力荷重１６を吸収し、小柄な乗員の場合には、主に下部ニープロテクト用ブラケット２５が屈曲変形する（潰れる）ことにより、その膝入力荷重１７を吸収するように機能する。

　以上のような構成により、例えば、緊急入力荷重が車両に入力された際に、乗員が車外へ飛出すことなどを防止することができる。

　また、インストルメントパネルの内部には、他の構造を有する金属製の車体用高強度部材が設けられている（例えば、特許文献１参照）。

　図２２および図２３に示すように、車室２０１内の前方部分に設けられた車体用高強度部材２０２は、ほぼ車幅方向２０３へ延びる車体用高強度部材本体２０４を備えている。

　この車体用高強度部材本体２０４は、通常、断面が円形のパイプ部材によって構成されている。このパイプ部材は、運転席側が太くなり（大径パイプ部２０５）、助手席側が細くなる（小径パイプ部２０６）ように構成されている。そして、大径パイプ部２０５と小径パイプ部２０６との間には、両者の径差を吸収しつつ連続的に連結し得るようにするためのテーパ状連結部２０７が介在されている。大径パイプ部２０５とテーパ状連結部２０７との間、および、テーパ状連結部２０７と小径パイプ部２０６との間は、それぞれ一体的に溶接固定されている（全周溶接）。なお、図２２では、車体用高強度部材２０２は、左ハンドル車用のものが示されている。

　そして、この車体用高強度部材本体２０４は、その両端部に左右の車体パネル（サイドパネル、図示省略）に対して取付可能なサイドブラケット２０９を備えている。このサイドブラケット２０９は、車体用高強度部材本体２０４に対して一体的に溶接固定されている。

　また、車体用高強度部材本体２０４は、車幅方向２０３の中間部に、車体用高強度部材本体２０４の下部を車室床部（フロアパネル、図示省略）に対して固定し、車体用高強度部材本体２０４を支持するステー２１２を備えている。このステー２１２は、ほぼ上下方向２１３へ延びる。このステー２１２の上端部は、車体用高強度部材本体２０４に対して一体的に溶接固定されている。

　さらに、車体用高強度部材本体２０４は、車幅方向２０３の中間部の運転席側に、少なくとも、車体用高強度部材本体２０４の下部に対してステアリングコラム２１４（図２３参照）を取付可能なコラムブラケット２１５、２１６を備えている。このコラムブラケット２１５、２１６は、通常、車体用高強度部材本体２０４の前後に設けられている。また、コラムブラケット２１５、２１６は、通常、それぞれ左右一対設けられている。これらのコラムブラケット２１５、２１６は、車体用高強度部材本体２０４に対して一体的に溶接固定されている。

　また、車体用高強度部材本体２０４は、車体用高強度部材本体２０４の車両前方側部分を支持可能なポストブラケット２１７を備えている。

　このポストブラケット２１７は、図２３に示すように、車室前壁部２１８（ダッシュパネル）と車体用高強度部材本体２０４の車両前方側部分との間に介装される本体支持部２２１と、車室前壁部１８（ダッシュパネル）と車両前方側のコラムブラケット１５との間に介装されるコラム支持部２２２とを有する、側面視でほぼ二股の形状を備えている。

　このポストブラケット２１７は、一枚の縦面部２２３として構成されている。この縦面部２２３の上端部（本体支持部２２１の上縁部）には、曲げ加工による横フランジ部２２４が設けられている。この横フランジ部２２４は、狭幅でしかもほぼ均一幅のものとされている。

　そして、二股形状をしたポストブラケット２１７の中間部、即ち、本体支持部２２１の先端部と、コラム支持部２２２の先端部との合流部分には、車室前壁部１８に対して取付可能な前壁取付部２２５が設けられている。この前壁取付部２２５は、図２４に示すように、車室前壁部２１８に対して当接可能な当接面２２６と、この当接面２２６に設けられたネジ孔などの締結部２２７とを有している。

　また、ポストブラケット２１７（の本体支持部２２１など）には、ポストブラケット２１７（の本体支持部２２１など）が、通常時には変形せず、緊急時（例えば、前方からの緊急入力荷重入荷時）には変形し得るようにするための、切欠などの脆弱部（緊急時変形用脆弱部、図示省略）が適宜設けられている。

　さらに、図２３に示すように、ポストブラケット２１７の本体支持部２２１は、その車室内側端部が、車体用高強度部材本体２０４に対して一体的に溶接固定されている（溶接部２３１）。また、ポストブラケット２１７のコラム支持部２２２は、その車室内側端部が、コラムブラケット１５の車両前方側端部に対して一体的に溶接固定されている（溶接部２３２）。

　以上のように、車体用高強度部材本体２０４は、その両端部に設けられたサイドブラケット２０９によって、左右の車体パネル（サイドパネル）に取付られる。

　そして、車体用高強度部材本体２０４は、基本的に、ステアリングコラム２１４を、コラムブラケット２１５、２１６を介して支持するように機能する。

　また、車体用高強度部材本体２０４の車幅方向２０３の中間部に備えられたステー２１２は、車体用高強度部材本体２０４の下部を、図示しない車室床部（フロアパネル）に対して固定し、車体用高強度部材本体２０４を主に上下方向２１３に支持するように機能する。このステー２１２により、ステアリングコラム２１４や車体用高強度部材本体２０４の上下方向２１３の振動などを抑制することができる。

　また、車体用高強度部材本体２０４の車幅方向２０３の中間部の運転席側に備えられたポストブラケット２１７は、本体支持部２２１が、車体用高強度部材本体２０４の車両前方側部分を、車室前壁部２１８（ダッシュパネル）に対して固定し、車体用高強度部材本体２０４を主に車両前後方向２３３に支持するように機能する。

　また、ポストブラケット２１７は、コラム支持部２２２が、車両前方側のコラムブラケット２１５を介して、ステアリングコラム２１４を、車両前後方向２３３および上下方向２１３並びに車体用高強度部材本体２０４の周方向（回転方向）に対して支持するように機能する。

　さらに、図２４に示すように、車両前後方向２３３の前方からの緊急入力荷重２３４に対しては、車体用高強度部材本体２０４が変形する前にポストブラケット２１７の本体支持部２２１が屈曲変形する（潰れる）ことにより、車体用高強度部材本体２０４の車室内側への移動や折曲がりなどを防止するように機能する。

　以上のように、ポストブラケット２１７（の本体支持部２２１など）には、通常時には変形せず、緊急時には変形し得るようにする機能が必要となる。この機能を満たし得るようにするため、ポストブラケット２１７（の本体支持部２２１など）に、切欠などの脆弱部（緊急時変形用脆弱部、図示省略）を適宜設けることにより、緊急時におけるポストブラケット２１７（の本体支持部２２１など）の強度低下を図るようにしている。

　また、インストルメントパネルの内部には、他の構造を有する金属製の車体用高強度部材が設けられている（例えば、特許文献２、特許文献３参照）。

　図３２に示すように、車室前部ＦＲ１（図３１参照）に配設された車体用高強度部材３０５は、ほぼ車幅方向３０６へ延びる車体用高強度部材本体３０７を備えている。車体用高強度部材３０５は、車体用高強度部材本体３０７の両端部を左右の車室側壁ＦＲ４（図３１参照）に取付けるためのサイドブラケット３０８を備えている。また、車体用高強度部材３０５は、車体用高強度部材本体３０７を車室床部ＦＲ３（図３１参照）に支持可能なステー３０９を備えている。更に、車体用高強度部材３０５は、車体用高強度部材本体３０７を車室前壁ＦＲ２に支持可能なポストブラケット３１１を備えている。

　この車体用高強度部材本体３０７は、ステアリングコラムを保持可能なコラムブラケット３１３を備えている。

　また、車体用高強度部材３０５は、図３３に示すように、車体用高強度部材本体３０７やステー３０９に空調ユニット３１４を固定するための、空調ユニット取付部３１５を備えている。

　更に、図３５に示すように、車体用高強度部材本体７には、緊急時（例えば、前方からの緊急入力荷重入荷時）に乗員の膝を受けると共に、膝入力荷重３１６Ｕ、３１６Ｄを吸収可能なニープロテクタ３１８が取付けられている。

　ここで、上記した車体用高強度部材本体３０７は、図３１、図３２に示すように、通常、金属製の断面が円形のパイプによって構成されている。また、車体用高強度部材本体３０７は、要求される強度の違いにより、運転席側に太径パイプ３２１が設けられ、助手席側に細径パイプ３２２が設けられている。そして、太径パイプ３２１と細径パイプ３２２とは、連結部材３２４を介して一体化されている。連結部材３２４は、テーパ状の短管部材などである。太径パイプ３２１と連結部材３２４との間および連結部材３２４と細径パイプ２２との間は、溶接固定（全周溶接）されている。

　前述したステー３０９は、通常、金属製である。このステー３０９は、車体用高強度部材本体３０７の車幅方向３０６の中間部のほぼ中央部に取付けられている。このステー３０９は、通常は、１本または２本設けられる。そして、ステー３０９は、ほぼ上下方向３２５に延設されている。ステー３０９の上端部は、車体用高強度部材本体３０７の下部に溶接固定またはボルト固定されている（図３１の場合には、車幅方向３０６にボルト固定）。この場合のボルト固定は、緊急時に外れない程度の強固なものである。また、ステー３０９の下端部は、車室床部ＦＲ３にボルト固定されている（図３１の場合には、車幅方向３０６にボルト固定）。

　前述したポストブラケット３１１は、通常、金属製である。このポストブラケット３１１は、車体用高強度部材本体３０７の運転席側の部分（太径パイプ３２１）に取付けられている。このポストブラケット３１１は、ほぼ車両前後方向３２６に延設されている。そして、ポストブラケット３１１の先端部は、車室前壁ＦＲ２に固定されている。また、ポストブラケット３１１の後端部は、車体用高強度部材本体７の車両前方側部分に直接、または、コラムブラケット３１３を介して間接的に固定されている。ポストブラケット３１１の後端部と車体用高強度部材本体３０７またはコラムブラケット３１３との間は、溶接固定されている。なお、ポストブラケット３１１は、図３４に示すように、緊急時に、潰れることによって、車体用高強度部材本体３０７の後方への移動量を低減したり、緊急入力荷重３２７を吸収したりすることができるように構成されている。そのために、ポストブラケット３１１には、脆弱部３２８が設けられている。

　前述したコラムブラケット３１３は、通常、金属製である。このコラムブラケット３１３は、車体用高強度部材本体３０７の運転席側の部分（太径パイプ３２１）に取付けられている。コラムブラケット３１１は、ステアリングコラムの前後２箇所の部分を固定できるように、車体用高強度部材本体３０７の前後に設けられている（図示せず）。そして、コラムブラケット３１１は、車体用高強度部材本体３０７に対して溶接固定されている。

　前述した空調ユニット取付部３１５は、車体用高強度部材本体３０７の車幅方向３０６の中間部のほぼ中央部や、ステー３０９などに取付けられている。空調ユニット３１４は、通常、大部分が樹脂製である。

　前述したニープロテクタ３１８は、車体用高強度部材本体３０７の運転席側の部分（太径パイプ３２１）や、助手席側の部分（細径パイプ３２２）に取付けられている。図３５の場合、ニープロテクタ３１８は、平均的体格の乗員の膝と対応するアッパブラケット３１８ａと、小柄な乗員の膝と対応するロワブラケット３１８ｂとを、それぞれ別個に備えている。そして、アッパブラケット３１８ａとロワブラケット３１８ｂとは、膝受部材３１８ｃによって連結されている。

　このような構成によれば、緊急時に、車両（車体）に前方からの緊急入力荷重３２７が作用すると、車室前壁ＦＲ２や左右の車室側壁ＦＲ４が、車両後方へ移動し、これに伴って、ポストブラケット３１１やサイドブラケット３０８などを介して車体用高強度部材本体３０７が車両後方へ移動する。この際、ポストブラケット３１１は、図３４に示すように、脆弱部３２８が潰れることによって、車体用高強度部材本体３０７の車両後方への移動量を低減したり、緊急入力荷重３２７を吸収したりするように機能する。

　また、緊急時に、車室前壁ＦＲ２が車両後方へ移動すると、車室前壁ＦＲ２によって、大部分が樹脂製の空調ユニット３１４が潰れる。これによって、車体用高強度部材本体３０７やステー３０９の後方への移動量を低減したり、緊急入力荷重３２７を吸収したりすることができる。

　更に、図３５に示すように、車体用高強度部材本体３０７に備えられたニープロテクタ３１８では、緊急時に、膝受部材３１８ｃが乗員の膝を受けると共に、アッパブラケット３１８ａやロワブラケット３１８ｂが屈曲変形する（潰れる）ことにより、膝入力荷重３１６Ｕ、３１６Ｄを吸収するように機能する。

　なお、平均的体格の乗員の場合には、主にアッパブラケット３１８ａが屈曲変形する（潰れる）ことにより、その膝入力荷重３１６Ｕ（図１０中上側のもの）を吸収し、小柄な乗員の場合には、主にロワブラケット３１８ｂが屈曲変形する（潰れる）ことにより、その膝入力荷重３１６Ｄ（図１０中下側のもの）を吸収するように機能する。これにより、例えば、乗員が車外へ飛出すことなどが防止される。

特開平０５－１４２３５４号特開２００２－２７４４３３３号特開２００５－１１２０７８号

　しかしながら、前述した車体用高強度部材構造には、以下のような問題があった。

　即ち、図４のニープロテクタ２１を構成するニープロテクト用ブラケット２２は、図５に示すように、車体用高強度部材本体３から下方へ延びるように構成されているため（アーム長Ｌ）、緊急時にニープロテクタ２１が乗員の膝を受けて膝入力荷重１６、１７を吸収する際に、車体用高強度部材本体３には、捩れ方向のモーメントＭや、前方へ向かう荷重Ｆ１や、上方へ向かう荷重Ｆ２などが作用されることになる（図３５についても、同様のことが言える）。

　このため、乗員からの膝入力荷重１６、１７に対するニープロテクタ２１の作動状態（潰れ方など）を予測して、予測通りに正確にニープロテクタ２１を作動させ得るようにするためには、上記したモーメントＭや荷重Ｆ１、Ｆ２などによる車体用高強度部材本体３の変形をできるだけ小さくする必要がある。

　この車体用高強度部材本体３の変形を小さくするためには、手段１：車体用高強度部材本体３の強度を高くする、手段２：ポストブラケット１３やステー８の強度を高くして、これらによって車体用高強度部材本体３の変形を抑止させるようにする、などの手段が考えられる。

　手段２の間接的な手段を採用する場合、ポストブラケット１３は、前述したように、車体用高強度部材本体３の移動や折曲がりなどを防止するために、前方からの緊急入力荷重１５に対して屈曲変形すると共に、後方からの乗員の膝入力荷重１６、１７に対しても屈曲変形する程度の強度を有するように構成されているので、即ち、ポストブラケット１３は意図的に強度を弱められているので、ポストブラケット１３よって車体用高強度部材本体３の変形を抑止させるようにするのは難しい。

　同様に、ステー８は、車載用オーディオ装置や制御ボックスなどを配置するために、インストルメントパネル９の車室内側に位置するように、側面視で、上端側が車両前方側に屈曲する形状を有しているので、即ち、ステー８は、強度確保を最優先にした構成を備えていないので、ステー８によって車体用高強度部材本体３の変形を抑止させるようにするのは難しい。

　従って、手段１の直接的な手段を採用するのが最も効果が高くしかも現実性がある。しかし、インストルメントパネル９の内部は多くの部品が存在し、スペースに余裕がないため、車体用高強度部材本体３の断面係数を大きくして車体用高強度部材本体３の強度を高くするのは難しい。車体用高強度部材本体３の断面係数を大きくする代りに、高張力鋼などの高強度の（高価な）材料を使用すれば、車体用高強度部材本体３の強度を高くできるが、この場合は、コストがかかるので、現実的ではないという問題がある。

　また、上記以外にも、ニープロテクタ２１を、車体用高強度部材本体３の変形を考慮した設計とすることなども考えられる。しかしながら、乗員の膝の入力方向（膝入力荷重１６、１７の方向）には個人差や状況によるバラ付きなどがあるため、性能予測を正確に行うことが難しい。また、車体用高強度部材本体３の変形を考慮した設計をするには、多くの複雑な工程が必要になることなどが予測されることから、現実的な手段であるとは言えない。

　また、図２３に示すポストブラケット２１７は、車両前後方向２３３の前方からの緊急入力荷重２３４に対しては、図２４に仮想線で示すように、所定の変形ストロークａの分だけ変形することにより、緊急入力荷重２３４を良好に吸収することができる。しかしながら、緊急入力荷重２３４の方向がズレた場合には、十分な変形ストロークａを確保することが難しかった。

　例えば、図２５に示すように、緊急入力荷重２３４が車幅方向２０３にズレている場合には（斜め荷重２３５）、ポストブラケット２１７の変形ストロークｂが小さくなる可能性がある（ａ＞ｂ）。また、図２３に示すように、緊急入力荷重２３４が上下方向２１３にズレている場合には（上下荷重２３６）、ポストブラケット１７の変形が難しくなる可能性がある。

　即ち、緊急時には、ポストブラケット１３、２１７、３１１が潰れることによって、車体用高強度部材本体３、２０４、３０７の後方への移動量を低減したり、緊急入力荷重１５、２３４、３２７を吸収するようにしているが、このようなことを、主にポストブラケット１３、２１７、３１１によって行わせるようにするのは、構造的に不利である。

　また、近年、燃費改善のニーズなどによって、自動車などの車両の軽量化が求められており、空調ユニット３１４も小型化や軽量化を図る必要が生じている。そのため、空調ユニット３１４は、内部が密になって、緊急時における潰れ代が小さくなってしまい、車体用高強度部材本体３０７やステー３０９の後方への移動量を低減したり、緊急入力荷重３２７を吸収したりする機能を空調ユニット３１４に持たせることが困難になっている。

　なお、上述した以外にも、本発明に至る過程で新たな問題やその他の問題などが発生することも考えられる。このような新たな問題やその他の問題などについては、この欄で記載する代りに本発明の実施例の中で説明するものとする。但し、この欄に記載する必要が生じた場合には、実施例中の当該記載をこの欄にも加えることができるものとする。また、その場合には、この欄の記載として適した表現に修正することができるものとする。

　本発明の車体用高強度部材構造は、車両の車室内の前方に設けられほぼ車幅方向へ延びる車体用高強度部材本体と、前記車体用高強度部材本体の少なくとも中間部に設けられ、前記車両の前後方向に複数の閉断面部を有する高剛性構造部分と、前記高剛性構造部分に取り付けられ、前記車体用高強度部材本体を上下方向に支持するステーと、前記高剛性構造部分に取り付けられ、前記車体用高強度部材本体を車両前後方向に支持するポストブラケットと、前記高剛性構造部分に取り付けられ、車両前後方向の緊急入力荷重が作用した場合、乗員の膝を受けて膝入力荷重を吸収可能なニープロテクタと、を備える。

　好ましくは、前記ステーの上端側に、下端側よりも水平方向の断面が大きい断面拡大部が設けられ、該断面拡大部が前記高剛性構造部分の下面に取り付けられること、を特徴とする。

　好ましくは、前記ポストブラケットが、車両前後方向の前方からの緊急入力荷重に対して前記車体用高強度部材本体よりも先に屈曲変形すると共に、車両前後方向の後方からの乗員の前記膝入力荷重に対して前記車体用高強度部材本体よりも先に屈曲変形しない強度を有する強化型ポストブラケットであること、を特徴とする。

　好ましくは、前記高剛性構造部分に取り付けられ、前記車両のステアリングコラムを取付るコラムブラケットをさらに備え、前記ポストブラケットが、前記車両の車室前壁部と前記高剛性構造部分の車両前方側部分との間に介装される本体支持部と、前記車室前壁部と前記コラムブラケットとの間に介装されるコラム支持部とを有する、二股形状を備えること、を特徴とする。

　好ましくは、前記高剛性構造部分の車両前方側上面および前記コラムブラケットの上面に対して上方から当接配置可能なベースブラケットを、前記ポストブラケットの前記本体支持部の車両後方側端部と前記コラム支持部の下端部との間に架設連結し、側面視でほぼ三角形状を示す強化ポストブラケット体を構成し、前記ベースブラケットと、前記高剛性構造部分の車両前方側上面との間に、前記ベースブラケットを前記高剛性構造部分に取付る車体用高強度部材取付部を設けると共に、前記ベースブラケットと、前記コラムブラケットの上面との間に、前記ベースブラケットを前記コラムブラケットに取付るコラムブラケット取付部を設けること、を特徴とする。

　好ましくは、前記高剛性構造部分および前記コラムブラケットと、前記強化ポストブラケット体との間に、前方からの緊急入力荷重によって、前記強化ポストブラケット体を、前記高剛性構造部分および前記コラムブラケットから分離および退避し得るように取付可能な緊急時分離退避可能構造部が設けられ、該緊急時分離退避可能構造部が、前記ベースブラケットの下面に設けられたスライド用面部と、前記高剛性構造部分の車両前方側上面および前記コラムブラケットの上面に設けられ、前記スライド用面部の、車両後方へ且つ上方へ向かうスライドを案内可能なガイド面部と、前記車体用高強度部材取付部および前記コラムブラケット取付部に設けられ、車両前方からの緊急入力荷重によって破断することで緊急入力荷重を吸収可能な荷重吸収取付部材と、前記スライド用面部と前記ガイド面部との間に選択的に設置可能に設けられ、車両前方からの緊急入力荷重によって破断することで緊急入力荷重を吸収可能であると共に、緊急入力荷重の吸収量を設定および調整可能な荷重吸収量調整部材と、を備えること、を特徴とする。

　好ましくは、前記ポストブラケットが、間隔を有して平行に配置された少なくとも二枚の縦面部を有すると共に、該二枚の縦面部が、前記ベースブラケットによって連結されること、を特徴とする。

　好ましくは、前記高剛性構造部分と前記ステーとの間に、前記ステーを前記高剛性構造部分に取付る取付構造部を設け、前記取付構造部が、緊急入力荷重によって、前記高剛性構造部分と前記ステーとが分離可能な緊急時分離可能取付構造部であること、を特徴とする。

　好ましくは、前記取付構造部が、前記高剛性構造部分に設けられた取付面部と、前記ステーに設けられた取付面部と、両取付面部間を固定する固定部とを備え、前記緊急時分離可能取付構造部は、前記両取付面部を、ほぼ車両前後方向へ移動可能な緊急時前後移動可能部として有すると共に、前記固定部を、緊急入力荷重によって、前記高剛性構造部分と前記ステーとの間の固定状態を解除可能な緊急時解除可能固定部として有すること、を特徴とする。

　好ましくは、前記緊急時解除可能固定部が、前記高剛性構造部分と前記ステーとの間の固定状態が解除される際に、緊急入力荷重を吸収可能な荷重吸収部を備えること、を特徴とする。

　なお、上記構成は、それぞれ、所要の作用効果を発揮するための必要最小限の構成であり、上記構成の詳細や、記載されていない構成については、それぞれ自由度を有しているのは勿論である。そして、上記構成の記載から読取ることが可能な事項については、特に具体的に記載されていない場合であっても、その範囲内に含まれるのは勿論である。また、上記以外の構成を追加した場合には、追加した構成による作用効果が加わることになるのは勿論である。

　この構成によれば、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、車体用高強度部材本体の少なくとも中間部に、複数の閉断面部を有する高剛性構造部分を設けることにより、車体用高強度部材本体の少なくとも中間部の強度、剛性を向上させることができる。これによって、車体用高強度部材本体の撓みや（周方向の）捩れを少なくし、車体用高強度部材本体の移動や折曲がりなどを防止することができる。そして、このような高剛性構造部分に対して、ステーと、ポストブラケットと、ニープロテクタとを取付けることにより、これらに対する取付剛性を向上し、これらの個々の機能向上を図ることが可能となる。特に、ニープロテクタの車体用高強度部材本体への依存度を小さくすることができる。

　この構成によれば、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、ステーの上端側部分に設けた断面拡大部は、断面係数が高いため、ステー自体の変形を小さくすることができる。そのため、断面拡大部を高剛性構造部分の下面に接続することにより、ステーによって、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分など）の車両前後方向や上下方向の移動を効果的に抑制することが可能となる。例えば、前方からの緊急入力荷重に対して、車体用高強度部材本体が車両後方へ移動するのを、ステーによって抑制することが可能となる。また、例えば、ニープロテクタへの膝入力荷重によって、車体用高強度部材本体が上方や車両前方へ移動するのを、ステーによって抑制することが可能となる。また、断面拡大部を高剛性構造部分の下面に接続することにより、ステーによって、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分など）の捩れを効果的に抑制することが可能となる。例えば、ニープロテクタへの膝入力荷重によって、車体用高強度部材本体に発生するモーメントに対し、ステーが反力を発生することで、車体用高強度部材本体の捩れを抑制することが可能となる。従って、ニープロテクタの性能を満足させるために必要な車体用高強度部材本体の強度を、断面拡大部をするステーによって小さくすることができると共に、断面拡大部を有するステーによって、ニープロテクタの車体用高強度部材本体への依存度をより小さくすることができる。

　この構成によれば、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、高剛性構造部分による車体用高強度部材本体の剛性、強度向上効果と、ステーによる車体用高強度部材本体の移動や捩れの抑制効果とにより、車体用高強度部材本体が折曲がったり、捩れたりし難くなっていることから、ニープロテクタへの膝入力荷重を車体用高強度部材本体のみによって受けさせることも可能となる。これにより、車体用高強度部材本体が折曲がる前にポストブラケットを屈曲変形させて膝入力荷重を吸収させるようにする必要がなくなるので、ポストブラケットの強度を上げることが可能となる。そして、ポストブラケットの強度を上げて強化型ポストブラケットとすることにより、車両前後方向の車両前方からの緊急入力荷重に対しては、強化型ポストブラケットが屈曲変形して荷重吸収を行うと共に、車両前後方向の後方からの乗員の膝入力荷重に対しては、強化型ポストブラケットが屈曲変形せず、強化型ポストブラケット７３と車体用高強度部材本体とが、膝入力荷重４５、４６を共に分担するように機能することになる。よって、前方からの緊急入力荷重による車体用高強度部材本体の車両後方への移動と、膝入力荷重による車体用高強度部材本体の車両前方への移動や捩れとの両者を、共に抑制、防止し得る構造を得ることができる。従って、ニープロテクタの性能を満足させるために必要な車体用高強度部材本体の強度を、強化型ポストブラケットによって小さくすることができると共に、強化型ポストブラケットによって、ニープロテクタの車体用高強度部材本体への依存度をより一層小さくすることができる。また、ポストブラケットを強化型ポストブラケットとしたことにより、ステアリング支持剛性についても高くすることができるので、その分、材料選定の自由度を上げるなどして、車体用高強度部材本体の他部位の軽量化を図ることが可能となる。

　この構成によれば、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、二股形状をしたポストブラケットとベースブラケットとで側面視がほぼ三角形状の強化型ポストブラケット体を構成することにより、強化型ポストブラケット体を剛性の高いものとすることができる。これにより、ポストブラケットまたは強化型ポストブラケット体の軽量化を図ることが可能となる。そして、強化型ポストブラケット体のベースブラケットを、車体用高強度部材本体の車両前方側上部、および、コラムブラケットの上面に対して上方から当接配置し、ベースブラケットと車体用高強度部材本体の車両前方側上部との間、および、ベースブラケットとコラムブラケットの上面との間を、それぞれ、車体用高強度部材取付部およびコラムブラケット取付部を用いて取付ける。これにより、ポストブラケットを車体用高強度部材本体およびコラムブラケットに対して直接溶接固定する場合と比べて、溶接による歪の影響を少なくして、強化型ポストブラケット体の取付精度を向上することが可能となる。

　この構成によれば、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、前方からの緊急入力荷重があった場合に、荷重吸収取付部材および荷重吸収量調整部材が緊急入力荷重により破断することにより、緊急入力荷重を吸収することができる。この際、選択的に設置可能とされた荷重吸収量調整部材の設置位置や設置個数を調整することによって、緊急入力荷重に対する吸収量を設定、調整することができる。そして、荷重吸収取付部材および荷重吸収量調整部材の破断により、車体用高強度部材本体およびコラムブラケットに対して、強化型ポストブラケット体が分離されると、ガイド面部に沿って、スライド用面部が、車両後方へ且つ上方へスライドすることにより、車体用高強度部材本体に移動や曲げ変形などの影響を与えることなく、強化型ポストブラケット体を安定して確実に車両後方へ逃がすことが可能となる。

　この構成によれば、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、ポストブラケットが、間隔を有して平行に配置された少なくとも二枚の平行な縦面部を有すると共に、二枚の縦面部が、ベースブラケットによって連結されたことにより、縦面部を一枚のみ有する通常のポストブラケットと比べて、荷重吸収に対して構造的に有利なものとすることができる。即ち、二枚の平行な縦面部が突っ張って荷重や振動に耐えることによって、通常時（非変形時）に必要な車両前後方向の剛性を確保したり、車幅方向の振動を抑えるための横剛性を確保したりすることができる。また、緊急入力荷重に対し、二枚の平行な縦面部がそれぞれ潰れる（屈曲変形、塑性変形する）ことによって、緊急時（変形時）に必要な車両前方からの緊急入力荷重に対する変形能（形状）を得ることができる。そして、緊急入力荷重の入力方向がズレた場合でも、二枚の平行な縦面部が横に倒れるように変形することによって、緊急時（変形時）に必要な変形能（形状）を安定して確保することができる。即ち、斜め横方向からの荷重入力に対しても、良好に対応する（安定した変形ストロークを得る）ことができる。従って、全体として、ポストブラケットの板厚を上げたり、ポストブラケットに切欠などの脆弱部を設けて意図的に強度低下させる必要がない。

　この構成によれば、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、別部材として構成された車体用高強度部材本体（高剛性構造部分）と、ステーとは、取付構造部にて取付けられて一体化される。そして、車体用高強度部材は、車室内の前方に配設される。車室内の前方に配設された車体用高強度部材では、車体用高強度部材本体が、ほぼ車幅方向に延設される。また、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分）は、ステーによって車室床部に支持される。また、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分）は、ポストブラケットによって車室前壁に支持される。そして、緊急入力荷重が作用した場合、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分）とステーとの取付構造部に設けられた緊急時分離可能取付構造部によって、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分）とステーとを分離させることができる。このように、緊急時に、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分）とステーとが分離されて、それぞれ、必要量だけ移動し得るようにすることにより、車体用高強度部材本体やステーの変形を抑制することが可能となる。また、必要に応じて、車体用高強度部材本体やステーの強度アップなどを図ることなども可能となる。

　この構成によれば、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分）の下部と、ステーの上端部との取付構造部（緊急時分離可能取付構造部）は、取付面部（緊急時前後移動可能部）どうしを合わせて、固定部（緊急時解除可能固定部）にて固定することにより、取付けられる。そして、ステーなどに緊急入力荷重が作用した場合、緊急時分離可能取付構造部は、緊急時解除可能固定部が、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分）とステーとの間の固定状態を解除する。そして、緊急時前後移動可能部が、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分）とステーとを、ほぼ車両前後方向へ相対的にスライドさせるように機能する。

　この構成によれば、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、車体用高強度部材本体（高剛性構造部分）とステーとが分離する際に、緊急時解除可能固定部に備えられた荷重吸収部によって、緊急入力荷重やモーメントなどの荷重を吸収することができる。これにより、車体用高強度部材本体やステーの強度を上げることなく、緊急入力荷重やモーメントなどによる車体用高強度部材本体やステーの変形などを効果的に防止することが可能となる。また、車体用高強度部材本体やステーの移動量なども低減することが可能となる。

本発明の実施例１にかかる車体用高強度部材構造の斜視図である。図１の車体用高強度部材構造の側面図である。従来例にかかる車体用高強度部材構造の斜視図である。従来例にかかるニープロテクタを示す斜視図である。従来例の問題点を説明するための側面図である。従来例の他の問題点を説明するための平面図である。本発明の実施例２にかかる車体用高強度部材部構造の斜視図である。図７の車体用高強度部材構造の側面図である。図７のポストブラケット部分の拡大斜視図である。図９のポストブラケット部分の側面図である。図９と同様のポストブラケット部分の拡大斜視図である。ポストブラケットの取付図である。図１２に続くポストブラケットの取付図である。ポストブラケットの取付状態を示す拡大斜視図である。緊急時のポストブラケットの作動状態を示す側面図である。荷重吸収量調整部材の取付位置を示す部分平面図である。荷重吸収量調整部材の他の取付位置を示す部分平面図である。ポストブラケットの二枚の縦面部の斜視図である。ポストブラケットの変形ストロークと荷重との関係を示すグラフである。ポストブラケットの変形の様子を示す部分平面図である。荷重の入力方向が傾いた場合のポストブラケットの変形の様子を示す部分平面図である。従来例にかかる車体用高強度部材部構造の斜視図である。図２２の車体用高強度部材部構造の側面図である。従来例におけるポストブラケットの変形の様子を示す平面図である。従来例において荷重の入力方向が傾いた場合のポストブラケットの変形の様子を示す平面図である。実施例３にかかる車体用高強度部材の斜視図である。図２６のステー部分の側面図である。図２７のステー取付部分の底面図である。ステー取付部分の他の例を示す図である。図２７と同様の部分の緊急入力荷重作用時の作動図である。従来例にかかる車室前方部分の斜視図である。他の従来例にかかる車体用高強度部材の斜視図である。従来例における車体用高強度部材のステー部分の側面図である。従来例における車体用高強度部材のポストブラケット部分の平面図である。従来例における車体用高強度部材のニープロテクタ部分の側面図である。

　本発明は、主に、車体用高強度部材本体の強度、剛性を効果的に向上することを目的としている。

　以下、本発明を具体化した実施例について、図面と共に説明する。

　なお、以下の実施例は、前述した背景技術や発明が解決しようとする課題などと密接な関係があるので、必要が生じた場合には、互いに、記載を流用したり、必要な修正を伴って流用したりすることができるものとする。

　図１、図２に、本実施例の構成図を示す。

　まず、基本構成について説明する。

　自動車などの車両には、車室３１内の前方に、樹脂製のインストルメントパネル３２（図２参照）が設けられている。このインストルメントパネル３２の内部には、金属製の車体用高強度部材３３が設けられている。

　ここで、符号３４は車幅方向、３５は車両前後方向、３６は上下方向である。このような車体用高強度部材３３は、ほぼ車幅方向３４へ延びる車体用高強度部材本体３７を備えている。

　この車室３１内の前方に設けられる車体用高強度部材本体３７は、両端部に、左右の車体パネル（サイドパネル、図示省略）に取付けるためのサイドブラケット３８を備えている。このサイドブラケット３８は、金属製であり、車体用高強度部材本体３７に溶接固定されている。

　そして、車体用高強度部材本体３７は、主に、ステアリングコラム（図示省略）を支持するために設けられている。そのために、車体用高強度部材本体３７には、車幅方向３４の中間部に、ステアリングコラムを取付けるためのコラムブラケット３９が備えられている。このコラムブラケット３９は、ステアリングコラムの車両前方側部分を取付けるためのものである。このコラムブラケット３９は、金属製であり、車体用高強度部材本体３７（後述する高剛性構造部分６４）に固定されている。

　また、車体用高強度部材本体３７は、車幅方向３４の中間部に、車体用高強度部材本体３７の下部を車室床部４１（フロアパネル、図２参照）に対して固定し、車体用高強度部材本体３７を上下方向３６に支持するステー４２を備えている。このステー４２は、金属製である。

　そして、車体用高強度部材本体３７は、車幅方向３４の中間部に、車体用高強度部材本体３７の車両前方側部分を車室前壁部４３（ダッシュパネル、図２参照）に対して固定し、車体用高強度部材本体３７を車両前後方向３５に支持するポストブラケット４４を備えている。このポストブラケット４４は、金属製であり、車体用高強度部材本体３７（後述する高剛性構造部分６４）に固定されている。

　更に、必要に応じて、車体用高強度部材本体３７は、車幅方向３４の中間部に、緊急時に乗員の膝を受けて膝入力荷重４５、４６を吸収可能なニープロテクタ４７を備えている。このニープロテクタ４７は、車体用高強度部材本体３７（後述する高剛性構造部分６４）の下部に取付けられたニープロテクト用ブラケット４８と、乗員の膝を直接受ける膝受部材４９とを備えている。ニープロテクト用ブラケット４８は、金属製である。また、膝受部材４９も、金属製である。

　この場合、ニープロテクト用ブラケット４８は、主に平均的体格の乗員の膝を受けてその膝入力荷重４５を吸収可能な上部ニープロテクト用ブラケット５１と、主に小柄な乗員の膝を受けてその膝入力荷重４６を吸収可能な下部ニープロテクト用ブラケット５２とを、上下に分けて備えることにより、乗員の体格に対応させ得るように構成されている。

　ここで、上部ニープロテクト用ブラケット５１は、側面視でほぼ横に倒れた「Ｊ」字形状を有している。また、下部ニープロテクト用ブラケット５２は、側面視でほぼ「Ｖ」字形状を有している。上部ニープロテクト用ブラケット５１は、図示するように、下部ニープロテクト用ブラケット５２の縦方向延設部分の途中に溶接固定されている。また、下部ニープロテクト用ブラケット５２は、縦方向延設部分の上端部が車体用高強度部材本体３７（後述する高剛性構造部分６４）に固定されている。

　そして、ニープロテクト用ブラケット４８は、乗員の両膝にほぼ対応させて左右一対設けられており、膝受部材４９は、左右一対のニープロテクト用ブラケット４８の先端部（上部ニープロテクト用ブラケット５１および下部ニープロテクト用ブラケット５２の車室内側端面）間に架設されている。膝受部材４９は、インストルメントパネル３２の内部に配設されている。

　以上のような基本構成に対し、本実施例の車体用高強度部材構造は、以下のような構成を備えている。

　（ａ）車体用高強度部材本体３７の少なくとも中間部に、複数の閉断面部６１～６３を有する高剛性構造部分６４を設ける。そして、高剛性構造部分６４に対して、ステー４２と、ポストブラケット４４と、ニープロテクタ４７とを（集中させて）取付けるようにする。

　（ｂ）ステー４２の上端側部分６５に、下端側部分６６よりも断面が大きくなる断面拡大部６７を設ける。この断面拡大部６７を、高剛性構造部分６４の下面に対して接続する（接続部６８）。

　（ｃ）ポストブラケット４４を、車両前後方向３５の前方からの緊急入力荷重７１に対して車体用高強度部材本体３７よりも先に屈曲変形すると共に、車両前後方向３５後方からの乗員の膝入力荷重４５、４６に対して車体用高強度部材本体３７よりも先には屈曲変形しない強度を有する、強化型ポストブラケット７３とする。

　上記のより詳細な構成は、以下の通りである。

　複数の閉断面部６１～６３を有する高剛性構造部分６４は、車体用高強度部材本体３７に対して、全体に設けても、部分的に設けても良い。図１では、高剛性構造部分６４は、部分的なものとされている。即ち、図１では、高剛性構造部分６４は、車体用高強度部材本体３７を、運転席側部分と、助手席側部分と、中央部分との３つの範囲に分けた場合に、運転席側部分の内側半部に対応する位置に部分的に設けられている。そして、運転席側部分の外側半部と、助手席側部分および中央部分は、それぞれ、同一の径寸法を有する別々の断面が円形のパイプ部材７５、７６で構成されている。そして、パイプ部材７５、７６（の内端部）は、それぞれ高剛性構造部分６４に対して、圧入などによって固定されている。また、前述したサイドブラケット３８は、パイプ部材７５、７６の外端部に、それぞれ取付けられている。図１では、車体用高強度部材本体３７は、右ハンドル車用のものである。

　そして、複数の閉断面部６１～６３は、それぞれ、断面の大きさや形状が一定で車幅方向３４へ延びる、筒形状である。本実施例では、高剛性構造部分６４は、３個の筒形状をした閉断面部６１～６３が、車両前後方向３５に隣接する３連筒形状を備えている。複数の閉断面部６１～６３の個数については、２個以上であれば、何個でも良いが、３個とするのが構造的、機能的には最適である。また、複数の閉断面部６１～６３の配置については、車両前後方向３５に隣接するように構成するのが、車両前後方向３５の強度を上げるためには最適である。これにより、高剛性構造部分６４は、通常よりも、車両前後方向３５に長いものになる。但し、複数の閉断面部６１～６３の配置については、これに限るものではない。

　複数の閉断面部６１～６３は、車両前方側のもの（閉断面部６１）が大きく、中間のもの（閉断面部６２）がそれよりも小さく、車両後方側のもの（閉断面部６３）が最も小さくなるように大きさを異ならせて構成されている。これにより、高剛性構造部分６４は、側面視で、楔形状を有している。そして、車両前方側の閉断面部６１は、パイプ部材７５、７６を圧入可能な大きさ（内径寸法）および形状（円形形状）を有し、パイプ部材接続部となる。

　このような、高剛性構造部分６４は、例えば、軽合金を押出成形することによって作成することができる。

　コラムブラケット３９は、高剛性構造部分６４の車幅方向３４のほぼ中央部の車両前方側下部に取付けられる。また、ステー４２は、高剛性構造部分６４の車室内側下面に取付けられる。ポストブラケット４４は、高剛性構造部分６４の車幅方向３４のほぼ中央部の車両前方側上部で、しかも、コラムブラケット３９の上側に取付けられる。ニープロテクタ４７の一対のニープロテクト用ブラケット４８は、高剛性構造部分６４の車幅方向３４の両端部近傍の下面にそれぞれ取付けられる。

　即ち、高剛性構造部分６４は、その車両前方下部に、コラムブラケット３９を取付可能な下向きのコラムブラケット取付面を有し、その車両前方上部に、ポストブラケット４４を取付可能な上向きのポストブラケット取付面を有し、その下面のほぼ全面に、ステー４２と、ニープロテクト用ブラケット４８とを取付可能な水平取付面とを有している。更に、水平取付面の車室内側には、ステアリングコラムの車室内側部分を直接取付けるためのコラム取付面が設けられている。このコラム取付面には、コラム取付用ネジ孔部が一体に形成されている。

　ステー４２は、高剛性構造部分６４の（上下方向３６の）真下に配置されている。このステー４２は、車幅方向３４でコ字状の断面形状を有し、ほぼ上下方向へ延びる金属板材によって構成されている。ステー４２の上端側部分６５や、下端側部分６６には、必要に応じて、エンボス加工による補強形状部などが設けられる。

　ステー４２の上端側部分６５の断面拡大部６７は、車両前方側部分が上方へ向かうに従って拡がる漸拡形状を呈している。断面拡大部６７の上端部は、車両前後方向３５に対し、高剛性構造部分６４の下面全体に当接固定し得るように、水平取付面およびコラム取付面とほぼ同じ車両前後方向３５の長さと、同じ（凹凸）形状を有している。

　断面拡大部６７と、高剛性構造部分６４の下面との接続部６８は、同材質であれば、溶接によって接合することができる。また、異材質であれば、機械接合や、接着剤による接着などとすることができる。また、接続部６８は、全面的なもの（全面接続部）としても、部分的なもの（部分接続部）としても良い。

　ポストブラケット４４は、例えば、板厚を増加したり、高強度の材質に変更したりすることによって強化型ポストブラケット７３とすることが可能である。本実施例では、ポストブラケット４４を側面視で三角形状（閉ループ状）の独立した強化構造体とすることにより、構造的に強化された強化型ポストブラケット７３としている。この場合、側面視で三角形状の強化型ポストブラケット７３は、コラムブラケット３９の上面と、高剛性構造部分６４の車両前方側上部に設けられた上向きのポストブラケット取付面とに当接して配置されると共に、固定部材を用いて固定されている。

　次に、本実施例の作用について説明する。

　車体用高強度部材本体３７は、基本的に、ステアリングコラム（図示省略）を、コラムブラケット３９を介して支持するように機能する。

　また、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４）の車幅方向３４の中間部に備えられたステー４２は、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４）の下部を、車室床部４１（フロアパネル）に対して固定し、車体用高強度部材本体３７を主に上下方向３６に支持するように機能する。このステー４２により、ステアリングコラムや車体用高強度部材本体３７の上下方向３６の振動などを抑制することができる。

　また、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４）の車幅方向３４の中間部に備えられたポストブラケット４４は、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４）の車両前方側部分を、車室前壁部４３（ダッシュパネル）に対して固定し、車体用高強度部材本体３７を主に車両前後方向３５に支持するように機能する。

　また、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４）の車幅方向３４の中間部に備えられたニープロテクタ４７は、緊急時に、膝受部材４９が乗員の膝を受けて、ニープロテクト用ブラケット４８が屈曲変形する（潰れる）ことにより、膝入力荷重４５、４６を吸収するように機能する。

　特に、平均的体格の乗員の場合には、主に上部ニープロテクト用ブラケット５１が屈曲変形する（潰れる）ことにより、その膝入力荷重４５を吸収し、小柄な乗員の場合には、主に下部ニープロテクト用ブラケット５２が屈曲変形する（潰れる）ことにより、その膝入力荷重４６を吸収するように機能する。

　これにより、例えば、乗員が車外へ飛出すことなどを防止することができる。

　本実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。

　（ａ）車両の車室３１内の前方に設けられほぼ車幅方向へ延びる車体用高強度部材本体３７と、車体用高強度部材本体３７の少なくとも中間部に設けられ、車両の前後方向に複数の閉断面部６１～６３を有する高剛性構造部分６４と、高剛性構造部分６４に取り付けられ、車体用高強度部材本体３７を上下方向に支持するステー４２と、高剛性構造部分６４に取り付けられ、車体用高強度部材本体３７を車両前後方向に支持するポストブラケット４４と、高剛性構造部分６４に取り付けられ、車両前後方向の緊急入力荷重が作用した場合、乗員の膝を受けて膝入力荷重を吸収可能なニープロテクタ４７と、を備える構造によって、以下のような作用効果を得ることができる。

　即ち、前述したように、車体用高強度部材本体３７は、基本的に、ステアリングコラムを支持可能な剛性を備えている。そして、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４）の車幅方向３４の中間部に備えたステー４２により、車体用高強度部材本体３７の下部を上下方向３６に支持することができる。また、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４）の車幅方向３４の中間部に備えたポストブラケット４４により、車体用高強度部材本体３７の車両前方側部分を車両前後方向３５に支持することができる。更に、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４）の車幅方向３４の中間部に備えたニープロテクタ４７により、緊急時の乗員の膝入力荷重４５、４６を受けて吸収することができる。

　そして、車体用高強度部材本体３７の少なくとも中間部に、複数の閉断面部６１～６３を有する高剛性構造部分６４を設けることにより、車体用高強度部材本体３７の少なくとも中間部の強度、剛性を向上させることができる。これによって、車体用高強度部材本体３７の撓みや（周方向の）捩れを少なくし、車体用高強度部材本体３７の移動や折曲がりなどを防止することができる。

　そして、このような高剛性構造部分６４に対して、ステー４２と、ポストブラケット４４と、ニープロテクタ４７とを取付けることにより、これらに対する取付剛性を向上し、これらの個々の機能向上を図ることが可能となる。特に、ニープロテクタ４７の車体用高強度部材本体３７への依存度を小さくすることができる。

　（ｂ）さらに、ステー４２の上端側部分６５に、下端側部分６６よりも断面が大きくなる断面拡大部６７を設け、断面拡大部６７が、高剛性構造部分６４の下面に取り付けられることによって、以下のような作用効果を得ることができる。

　即ち、ステー４２の上端側部分６５に設けた断面拡大部６７は、断面係数が高いため、ステー４２自体の変形を小さくすることができる。

　そのため、断面拡大部６７を高剛性構造部分６４の下面に接続することにより、ステー４２によって、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４など）の車両前後方向３５や上下方向３６の移動を効果的に抑制することが可能となる。

　例えば、車両前方からの緊急入力荷重７１に対して、車体用高強度部材本体３７が後方へ移動するのを、ステー４２によって抑制することが可能となる。また、例えば、ニープロテクタ４７への膝入力荷重４５、４６によって、車体用高強度部材本体３７が上方や車両前方へ移動する（荷重Ｆ１、Ｆ２、図２参照）のを、ステー４２によって抑制することが可能となる。

　また、断面拡大部６７を高剛性構造部分６４の下面に接続することにより、ステー４２によって、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４）の捩れを効果的に抑制することが可能となる。例えば、ニープロテクタ４７への膝入力荷重４５、４６によって、車体用高強度部材本体３７に発生するモーメントＭに対し、ステー４２が反力を発生することで、車体用高強度部材本体３７（高剛性構造部分６４）の捩れを抑制することが可能となる。

　従って、ニープロテクタ４７の性能を満足させるために必要な車体用高強度部材本体３７の強度を、断面拡大部６７を有するステー４２によって小さくすることができると共に、断面拡大部６７を有するステー４２によって、ニープロテクタ４７の車体用高強度部材本体３７への依存度をより小さくすることができる。

　（ｃ）さらに、ポストブラケット４４が、車両前後方向３５の前方からの緊急入力荷重７１に対して車体用高強度部材本体３７よりも先に屈曲変形すると共に、車両前後方向３５の後方からの乗員の膝入力荷重４５、４６に対して車体用高強度部材本体３７よりも先には屈曲変形しない強度を有する強化型ポストブラケット７３であることによって、以下のような作用効果を得ることができる。

　即ち、高剛性構造部分６４による車体用高強度部材本体３７の剛性、強度向上効果と、ステー４２による車体用高強度部材本体３７の移動や捩れの抑制効果とにより、車体用高強度部材本体３７が折曲がったり、捩れたりし難くなっていることから、ニープロテクタ４７への膝入力荷重４５、４６を車体用高強度部材本体３７のみによって受けさせることも可能となる。これにより、車体用高強度部材本体３７が折曲がる前にポストブラケット４４を屈曲変形させて膝入力荷重４５、４６を吸収させるようにする必要がなくなるので、ポストブラケット４４の強度を上げることが可能となる。

　そして、ポストブラケット４４の強度を上げて強化型ポストブラケット７３とすることにより、車両前後方向３５の前方からの緊急入力荷重７１に対しては、強化型ポストブラケット７３が屈曲変形して荷重吸収を行うと共に、車両前後方向３５の後方からの乗員の膝入力荷重４５、４６に対しては、強化型ポストブラケット７３が屈曲変形せず、強化型ポストブラケット７３と車体用高強度部材本体３７とが、膝入力荷重４５、４６を共に分担するように機能することになる。

　よって、前方からの緊急入力荷重７１による車体用高強度部材本体３７の車両後方への移動と、膝入力荷重４５、４６による車体用高強度部材本体３７の車両前方への移動や捩れとの両者を、共に抑制、防止し得る構造を得ることができる。

　従って、ニープロテクタ４７の性能を満足させるために必要な車体用高強度部材本体３７の強度を、強化型ポストブラケット７３によって小さくすることができると共に、強化型ポストブラケット７３によって、ニープロテクタ４７の車体用高強度部材本体３７への依存度をより一層小さくすることができる。

　また、強化型ポストブラケット７３としたことにより、ステアリング支持剛性についても高くすることができるので、その分、材料選定の自由度を上げるなどして、車体用高強度部材本体３７の他部位の軽量化を図ることが可能となる。

　本実施例は、主に、ポストブラケットの全体的な性能向上を図ると共に、緊急入力荷重の入力方向がズレた場合にも変形ストロークを確保し得るようにすることを目的としている。

　図７～図２１は、本実施例およびその変形例を示すものである。

　まず、基本構成について説明する。

　図中、符号２４１は車幅方向、２４２は車両前後方向、２４３は上下方向である。

　図７、図８に示すように、自動車などの車両には、車室２４４内の前方に、樹脂製のインストルメントパネル２４５（図８参照）が設けられている。このインストルメントパネル２４５の内部には、金属製の車体用高強度部材２４６が設けられている。

　この車室２４４内の前方に設けられた車体用高強度部材２４６は、ほぼ車幅方向２４１へ延びる車体用高強度部材本体２４７を備えている。

　この車体用高強度部材本体２４７は、その両端部に左右の車体パネル（サイドパネル、図示省略）に対して取付可能なサイドブラケット２４８を備えている。このサイドブラケット２４８は、車体用高強度部材本体２４７に対して一体的に固定（溶接、圧入、接着、ネジ止めなど）されている。

　また、車体用高強度部材本体２４７は、車幅方向２４１の中間部に、車体用高強度部材本体２４７の下部を車室床部２４９（フロアパネル、図２参照）に対して固定し、車体用高強度部材本体２４７を上下方向２４３に支持するステー２５１を備えている。このステー２５１は、ほぼ上下方向２４３へ延びるものである。そして、このステー２５１の上端部は、車体用高強度部材本体２４７（後述する高剛性構造部分２６８）に対して固定（溶接、圧入、接着、ネジ止めなど）されている。

　また、車体用高強度部材本体２４７は、車幅方向２４１の中間部の運転席側に、少なくとも、車体用高強度部材本体２４７の下部に対してステアリングコラム（図示省略）を取付可能なコラムブラケット２５３を備えている。本実施例では、コラムブラケット２５３は、ステアリングコラムの車両前方側部分を取付けるためのものである。

　また、車体用高強度部材本体２４７は、車体用高強度部材本体２４７の車両前方側部分を支持可能なポストブラケット２５４を備えている。

　このポストブラケット２５４は、図８に示すように、車室前壁部２５５（ダッシュパネル）と車体用高強度部材本体２４７（後述する高剛性構造部分２６８）の車両前方側部分との間に介装される本体支持部２５６と、車室前壁部２５５（ダッシュパネル）と車両前方側のコラムブラケット２５３（の前端部）との間に介装されるコラム支持部２５７とを有する、側面視でほぼ二股の形状を備えている。

　そして、二股形状をしたポストブラケット２５４の中間部、即ち、本体支持部２５６の先端部と、コラム支持部２５７の先端部との合流部分には、車室前壁部２５５に対して取付可能な前壁取付部２５８が設けられている。この前壁取付部２５８は、図９に示すように、車室前壁部２５５に対して当接可能な当接面部２６１と、この当接面部２６１に設けられたネジ孔などの車体締結部２６２とを有している。

　加えて、前述した車体用高強度部材本体２４７が、少なくとも中間部に、図１０に示すような、複数の閉断面部２６５～２６７を有する高剛性構造部分２６８を有している。本実施例では、高剛性構造部分２６８は、運転席側の内側半部に対応する位置に部分的に設けられている。そして、高剛性構造部分２６８の両端部に対して、図７に示すように、二本の断面が円形のパイプ部材２７１、２７２がそれぞれ圧入などによって固定されている。このような高剛性構造部分２６８は、例えば、軽合金を押出成形することによって作成することができる。

　そして、この高剛性構造部分２６８に対して、前述したステー２５１と、ポストブラケット２５４と、ニープロテクタ２７３とが集中して取付けられている。ニープロテクタ２７３は、緊急時に乗員の膝を受けて、膝入力荷重２７４、２７５（図８参照）を吸収するためのものであり、本実施例では、左右一対のニープロテクト用ブラケット２７６と、一対のニープロテクト用ブラケット２７６間に架設された膝受部材２７７とを備えている。各ニープロテクト用ブラケット２７６は、更に、主に平均的体格の乗員の膝入力荷重２７４を吸収するための上部ニープロテクト用ブラケット２７８と、主に小柄な乗員の膝入力荷重２７５を吸収するための下部ニープロテクト用ブラケット２７９とに分けて設けられている。膝受部材２７７は、インストルメントパネル２４５に直接取付けられるのではなく、インストルメントパネル２４５の内部に配設されている。

　即ち、高剛性構造部分２６８は、図１０に示すように、その車両前方側下部２８１に、コラムブラケット２５３を取付可能な下向き傾斜面状のコラムブラケット取付面２８２を有し、その車両前方側上部２８３に、ポストブラケット２５４を取付可能な上向き傾斜面状のポストブラケット取付面２８４を有し、その下面のほぼ全面に、ステー２５１と、ニープロテクト用ブラケット２７６とを取付可能な共通の水平取付面２８５を有している。更に、水平取付面２８５の車室内側には、ステアリングコラムの車室内側部分を直接取付けるためのコラム取付面２８６が設けられている。このコラム取付面２８６は、中間部が高剛性構造部分２６８の他の部分よりも厚肉に構成されると共に、コラム取付面２８６の厚肉とされた部分には、コラム取付用ネジ孔部８７が形成されている。

　高剛性構造部分２６８は、車両前後方向２４２の強度を向上させるため、通常の断面が円形のパイプよりも、車両前後方向２４２に長い形状を有している。これに対し、前述したステー２５１は、上側部分が、車両前後方向２４２に対し、高剛性構造部分２６８の水平取付面２８５とコラム取付面２８６とを合せた長さを有するように、漸拡形状とされている（漸拡形状部２８８）。また、ステー２５１の上端部は、水平取付面２８５およびコラム取付面２８６の両方に対して当接可能な屈曲形状を有している。

　（ａ）図１１、図１２、図１３に示すように、車体用高強度部材本体２４７の車両前方側上部２８３、および、コラムブラケット２５３の上面２９１に対して、上方から当接配置可能なベースブラケット２９２を設ける。そして、二股形状をしたポストブラケット２５４の本体支持部２５６の車両後方側端部と、コラム支持部２５７の下端部との間に、ベースブラケット２９２を一体的に架設連結して、車体用高強度部材本体２４７とは別体の、側面視がほぼ三角形状をした（閉ループ構造の）、強化型ポストブラケット体２９３を構成する。そして、図１４に示すように、この強化型ポストブラケット体２９３を構成するベースブラケット２９２と、高剛性構造部分２６８の車両前方側上部２８３との間に、ベースブラケット２９２を車両前方側上部２８３に取付る車体用高強度部材取付部２９４を設ける。同様に、ベースブラケット２９２と、コラムブラケット２５３の上面９１との間に、ベースブラケット２９２をコラムブラケット２５３に取付るコラムブラケット取付部２９５を設ける。
ポストブラケット２５４の本体支持部２５６の車両後方側端部とベースブラケット２９２の車両後方側端部との間、およびコラム支持部２５７の下端部とベースブラケット２９２の車両前方側端部との間は、それぞれ溶接固定されている（溶接部）。車体用高強度部材取付部２９４とコラムブラケット取付部２９５とは、それぞれ取付用孔部等である。この取付用孔部は、丸孔または長孔等である。本実施例では、コラムブラケット取付部２９５のベースブラケット２９２側の取付用孔部のみが、ベースブラケット２９２の車両前方側端部に達するまで車両前後方向２４２へ延びる長孔であり、他は丸孔である。

　（ｂ）図１５に示すように、高剛性構造部分２６８およびコラムブラケット２５３と、強化型ポストブラケット体２９３との間に、前方からの緊急入力荷重２１０１（図８参照）によって、強化型ポストブラケット体２９３を、車体用高強度部材本体２４７およびコラムブラケット２５３から分離および退避し得るように取付可能な緊急時分離退避可能構造部２１０２を設ける。

　この緊急時分離退避可能構造部２１０２は、ベースブラケット２９２の下面に設けられたスライド用面部２１０３と、コラムブラケット２５３の上面２９１および高剛性構造部分２６８の車両前方側の上部８３に設けられて、スライド用面部２１０３が、車両後方へ且つ上方へ向かうスライドを案内可能なガイド面部２１０４とを備えている。

　また、緊急時分離退避可能構造部２１０２は、図１０に示すように、車体用高強度部材取付部２９４およびコラムブラケット取付部２９５に設けられ、車両前方からの緊急入力荷重２１０１によって破断することにより、緊急入力荷重２１０１を吸収可能な、荷重吸収取付部材２１０５と、スライド用面部２１０３とガイド面部２１０４との間に選択的に設置可能に設けられた、前方からの緊急入力荷重２１０１によって破断することにより、緊急入力荷重２１０１の吸収量を設定、調整可能な荷重吸収量調整部材２１０６とを備えている。

　ここで、スライド用面部２１０３、および、ガイド面部２１０４は、例えば、下に凸の円弧状円弧状や、このような円弧に近似した多角形状などとすることができる。また、荷重吸収取付部材２１０５や荷重吸収量調整部材２１０６には、リベットなどを用いることができる。

　更に、荷重吸収量調整部材２１０６は、例えば、図１６に示すように、スライド用面部２１０３およびガイド面部２１０４の幅中心線２１０７上に並設させるようにすることもできる。或いは、車幅方向２４１に変形し難くなるようにするために、図１７に示すように、幅中心線２１０７の両側に、幅中心線２１０７に沿って並設させるようにすることもできる。

　（ｃ）図１８に示すように、ポストブラケット２５４は、間隔２１０８を有して平行に配置された少なくとも二枚の縦面部２１０９を有している。そして、この二枚の縦面部２１０９は、ベースブラケット２９２によって連結されている。

　ここで、縦面部２１０９は、それぞれが、前述した本体支持部２５６とコラム支持部２５７とを有し、側面視がほぼ二股の形状を有している。縦面部２１０９は、車幅方向２４１に対してほぼ直行する方向に向けられている。二枚の縦面部２１０９は、また、前壁取付部２５８の部分で互いに連結されている。また、図９に示すように、コラム支持部２５７の車両前方側の間を、互いに連結するようにしても良い（前部連結面部２１１１）。図９では、前部連結面部２１１１には、抜孔部２１１２が開口形成されている。

　次に、本実施例の作用について説明する。

　車体用高強度部材本体２４７は、その両端部に設けられたサイドブラケット２４８によって、左右の車体パネル（サイドパネル）に取付られる。

　そして、車体用高強度部材本体２４７は、基本的に、ステアリングコラムを、コラムブラケット２５３を介して支持するように機能する。

　また、車体用高強度部材本体２４７の車幅方向２４１の中間部に備えられたステー２５１は、車体用高強度部材本体２４７の下部（高剛性構造部分２６８）を、車室床部２４９（フロアパネル、図８参照）に対して固定し、車体用高強度部材本体２４７を主に上下方向２４３に支持するように機能する。このステー２５１により、ステアリングコラムや車体用高強度部材本体２４７の上下方向２４３の振動などを抑制することができる。

　また、車体用高強度部材本体２４７の車幅方向２４１の中間部の運転席側に備えられたポストブラケット２５４は、本体支持部２５６が、車体用高強度部材本体２４７（高剛性構造部分２６８）の車両前方側部分を、車室前壁部２５５（ダッシュパネル、図８参照）に対して固定し、車体用高強度部材本体２４７を主に車両前後方向２４２に支持するように機能する。

　また、ポストブラケット２５４は、コラム支持部２５７が、車両前方側のコラムブラケット２５３を介して、ステアリングコラムを、車両前後方向２４２および上下方向２４３並びに車体用高強度部材本体２４７の周方向（回転方向）に対して支持するように機能する。

　そして、車両前方からの緊急入力荷重２１０１（図８参照）が有った場合、図１９に示すように、先ず、ポストブラケット２５４（強化型ポストブラケット体２９３）が潰れてこれを吸収し（図１９の変形吸収域Ａ、図２０も参照）、次に、荷重吸収取付部材２１０５および荷重吸収量調整部材２１０６が破断し、ポストブラケット２５４が車体用高強度部材本体２４７などに対して分離、移動することにより、これを吸収する（図１９の分離吸収域Ｂ、図１５も参照）ことになる。なお、図１９では、ポストブラケット２５４の潰れ方のモードにより、変形吸収域Ａで、二段階に（２つのピークを有して）荷重吸収を行うようになっているが、これに限るものではない。

　（ａ）二股形状をしたポストブラケット２５４とベースブラケット２９２とで側面視がほぼ三角形状の強化型ポストブラケット体２９３を構成することにより、強化型ポストブラケット体２９３を剛性の高いものとすることができる。これにより、ポストブラケット２５４または強化型ポストブラケット体２９３の軽量化を図ることが可能となる。

　そして、強化型ポストブラケット体２９３のベースブラケット２９２を、車体用高強度部材本体２４７の車両前方側上部２８３、および、コラムブラケット２５３の上面２９１に対して上方から当接配置し、ベースブラケット２９２と車体用高強度部材本体２４７の車両前方側上部２８３との間、および、ベースブラケット２９２とコラムブラケット２５３の上面２９１との間を、それぞれ、車体用高強度部材取付部２９４およびコラムブラケット取付部２９５を用いて取付ける。これにより、ポストブラケット２５４を車体用高強度部材本体２４７およびコラムブラケット２５３に対して直接溶接固定する場合と比べて、溶接による歪の影響を少なくして、強化型ポストブラケット体２９３の取付精度を向上することが可能となる。

　（ｂ）前方からの緊急入力荷重２１０１があった場合に、ポストブラケット２５４または強化型ポストブラケット体２９３が潰れた後で、荷重吸収取付部材２１０５および荷重吸収量調整部材２１０６が緊急入力荷重２１０１により破断することにより、図１９に分離吸収域Ｂで示すように、緊急入力荷重２１０１を吸収することができる。この際、選択的に設置可能とされた荷重吸収量調整部材２１０６の設置位置や設置個数を調整することによって、緊急入力荷重２１０１に対する吸収量を設定、調整することができる。

　そして、荷重吸収取付部材２１０５および荷重吸収量調整部材２１０６の破断などにより、車体用高強度部材本体２４７およびコラムブラケット２５３に対して、強化型ポストブラケット体２９３が分離されると、ガイド面部２１０４に沿ってスライド用面部２１０３が、車両後方へ且つ上方へスライドすることにより、車体用高強度部材本体２４７に移動や曲げ変形などの影響を与えることなく、強化型ポストブラケット体２９３を安定して確実に車両後方へ逃がすことが可能となる。

　（ｃ）ポストブラケット２５４が、間隔２１０８を有して平行に配置された少なくとも二枚の平行な縦面部２１０９を有すると共に、二枚の縦面部２１０９が、ベースブラケット２９２によって連結されることにより、縦面部２１０９を一枚のみ有する通常のポストブラケット２５４と比べて、荷重吸収に対して構造的に有利なものとすることができる。

　即ち、二枚の平行な縦面部２１０９が突っ張って荷重や振動に耐えることによって、通常時（非変形時）に必要な車両前後方向２４２の剛性を確保したり、車幅方向２４１の振動を抑えるための横剛性を確保したりすることができる。

　また、図２０に示すように、緊急入力荷重２１０１に対し、二枚の平行な縦面部２１０９の本体支持部５６がそれぞれ潰れる（屈曲変形、塑性変形する）ことによって、緊急時（変形時）に必要な車両前方からの緊急入力荷重２１０１に対する変形能（形状）を得ることができる。

　そして、図２１に示すように、緊急入力荷重２１０１の入力方向がズレた場合でも（傾斜入力２１１５）、二枚の平行な縦面部２１０９の本体支持部５６が横に倒れるように変形することによって、緊急時（変形時）に必要な変形能（形状）を安定して確保することができる。

　即ち、斜め横方向からの荷重入力（傾斜入力２１１５）に対しても、良好に対応する（安定した変形ストロークａを得る）ことができる。

　従って、全体として、ポストブラケット２５４の板厚を上げたり、ポストブラケット２５４に切欠などの脆弱部を設けて意図的に強度低下させる必要がない。

　本実施例は、主に、緊急入力荷重作用時における車体用高強度部材本体の強度、剛性を高めることを目的としている。

　図２６～図３０は、本実施例およびその変形例を示すものである。

　まず、基本構成について説明する。

　なお、図中、符号３３１は車幅方向、符号３３２は車両前後方向、符号３３３は上下方向である。

　自動車などの車両には、車室内の前方に樹脂製のインストルメントパネルが設けられている。このインストルメントパネルの内部には、金属製の車体用高強度部材が設けられている。

　図２７に示すように、この車室の前方（車室前部３３４）は、車室前壁３３５と、車室床部３３６と、車室側壁３３７とを備えている。

　図２６に示すように、この車室前部３３４に配設された車体用高強度部材３４１は、ほぼ車幅方向３３１へ延びる車体用高強度部材本体３４２を備えている。車体用高強度部材３４１は、車体用高強度部材本体３４２の両端部を左右の車室側壁３３７に取付けるためのサイドブラケット３４３を備えている。また、車体用高強度部材３４１は、車体用高強度部材本体３４２（後述する高剛性構造部分３８１）を車室床部３３６に固定して、車体用高強度部材本体３４２を支持するステー３４４を備えている。更に、車体用高強度部材３４１は、車体用高強度部材本体３４２（後述する高剛性構造部分３８１）を車室前壁３３５に固定して、車体用高強度部材本体３４２を支持するポストブラケット３４５を備えている。

　（ａ）先ず、車体用高強度部材本体３４２とステー３４４とを別部材として構成する。そして、車体用高強度部材本体３４２と、ステー３４４との間に、両者を取付可能な取付構造部３４６を設ける。更に、この取付構造部３４６を、緊急入力荷重３Ｆによって、車体用高強度部材本体３４２と３ステー４４とが分離可能な緊急時分離可能取付構造部３４７とする。

　（ｂ）取付構造部３４６は、図２７に示すように、車体用高強度部材本体３４２（後述する高剛性構造部分３８１）に設けられた取付面部３４８と、ステー３４４に設けられた取付面部３４９とを備える。また、取付構造部３４６は、図２８に示すように、両取付面部３４８、３４９を固定する固定部３５１を備える。そして、緊急時分離可能取付構造部３４７は、図２７の取付面部３４８、３４９を、それぞれほぼ車両前後方向３３２へ移動可能な、緊急時前後移動可能部３５２、３５３として有するものとする。また、緊急時分離可能取付構造部３４７は、図２８の固定部３５１を、緊急入力荷重３Ｆ（図３０参照）によって、車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）とステー３４４との間の固定状態を解除する、緊急時解除可能固定部３５４として有する。

　ここで、取付面部３４８、３４９、または、緊急時前後移動可能部３５２、３５３は、ほぼ水平且つ平坦で、且つ、それぞれ摺接可能な面（水平面部、摺接面部）とされている。但し、取付面部３４８、３４９、または、緊急時前後移動可能部３５２、３５３は、車体用高強度部材本体３４２およびステー３４４のどちらかの、車両前後方向３３２のどちらか一方への移動を規制可能なストッパ部３５０を設けることもできる。このストッパ部３５０については、後述する。

　固定部３５１は、例えば、図２８に示すように、ネジ３５５とネジ孔３５６とを用いた締結固定部３５７とすることができる。そして、固定部３５１を緊急時解除可能固定部３５４とするために、例えば、前述したネジ孔３５６を車両前後方向３３２へ延びる長孔３５８などとすることにより、移動可能締結固定部３５９とすることもできる。

　また、固定部３５１は、例えば、特に図示しないが、リベットなどを用いたカシメ固定部とすることができる。このリベットは、その強度を最適に設定することにより、そのまま緊急時解除可能固定部３５４として利用することができる（破断可能カシメ固定部）。

　或いは、固定部３５１は、例えば、図２９に示すように、フック部３６５とフック係止孔部（図示省略）とを有する係止固定部３６７とすることができる。このフック部３６５は、その強度を最適に設定することにより、そのまま緊急時解除可能固定部３５４として利用することができる（変形可能係止固定部３６８）。この場合、フック部３６５とフック係止孔部とは、それぞれ車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）とステー３４４とのどちらかに設けるようにする。

　（ｃ）緊急時解除可能固定部３５４は、車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）とステー３４４とが分離する際に、荷重吸収可能な荷重吸収部３７１を備える。

　ここで、荷重吸収可能部３７１が吸収する緊急入力荷重３Ｆ（図３０参照）には、例えば、車両前方からのもの（一次荷重３Ｆａ）や、車両後方からのもの（二次荷重３Ｆｂ）などがある（図２６参照）。このうち、車両後方からの緊急入力荷重３Ｆには、例えば、乗員による膝入力荷重などがある。

　なお、緊急時解除可能固定部３５４としての移動可能締結固定部３５９における長孔３５８が、ネジ３５５を通す中央部分を除いて、ネジ３５５の径よりも細い（幅が小さい）細溝部３７２を有することにより、緊急入力荷重発生時に、ネジ３５５が細溝部３７２を押し広げることで、荷重吸収が可能となる。すなわち、緊急時解除可能固定部３５４を、荷重吸収部３７１とすることができる。

　また、緊急時解除可能固定部３５４としてのリベットなどの破断可能カシメ固定部は、その破断荷重を、荷重吸収にとって最適となるように設定することで、荷重吸収部３７１を備えることができる。

　或いは、緊急時解除可能固定部３５４としての係止固定部３６７は、そのフック部３６５の変形荷重を、荷重吸収にとって最適となるように設定することで、荷重吸収部３７１を備えることができる。

　（ｄ）ここで、前述した車体用高強度部材本体３４２は、図２６に示すように、少なくとも高剛性構造部分３８１を備えている。高剛性構造部分３８１は、車体用高強度部材本体３４２に対し、全体的に設けるようにしても良いが、本実施例では、車体用高強度部材本体３４２の最も強度および剛性を必要とする部位に対して部分的に設けるようにしている。図２６では、高剛性構造部分３８１は、車体用高強度部材本体３４２の運転席側の中核部分に設けられている。

　高剛性構造部分３８１は、複数の閉断面部３８２を有するものとされている（図２７参照）。本実施例では、高剛性構造部分３８１は、ほぼ車幅方向３３１へ延びる３つの閉断面部３８２を、ほぼ車両前後方向３３２へ一体に連接したものとされている。３つの閉断面部３８２は、車両前後方向３３２の車両前方側のもの程大きく、車両後方側のもの程小さくなるように構成されている。

　なお、閉断面部３８２の数および配置は、前述したようにするのが最もシンプルで合理的なものとなるが、これに限るものではない。高剛性構造部分３８１は、例えば、軽金属製や軽合金製のものとされている。このような軽金属製や軽合金製の高剛性構造部分３８１は、押出加工によって製造することができる。この押出加工による高剛性構造部分３８１は、車幅方向３３１に対して均一断面を有する。

　車体用高強度部材本体３４２における、高剛性構造部分３８１の両側には、金属製のパイプ状部材３８４が設けられている。金属製のパイプ状部材３８４は、本実施例では、同径のものとされている。金属製のパイプ状部材３８４は、高剛性構造部分３８１の閉断面部８２（この場合には、最も車両前方側に位置する最も大きな閉断面部３８２）に嵌合固定されている。

　この場合、高剛性構造部分３８１は、前述したように、複数の閉断面部３８２をほぼ車両前後方向３３２へ一体に連接することにより、車両前後方向３３２の寸法が比較的大きく（長く）、上下方向３２３の寸法が比較的小さい（厚みが薄く）なるように構成されている。これにより、高剛性構造部分３８１は、車両前後方向３３２の緊急入力荷重３Ｆに対して強度および剛性が高い構造とされている。

　そして、高剛性構造部分３８１は、その下面側のほぼ全面または大部分を、水平な平坦面とすることにより、前述した取付面部３４８、３４９、または、緊急時前後移動可能部３５２、３５３が形成されている。

　高剛性構造部分３８１の下面側の車両後方側部分には、上方に傾斜する傾斜部３８５が形成されている（図２８参照）。この傾斜部３８５は、ステアリングコラム（図示省略）が、車両前方から後方に向かって上方に傾斜されていることから、ステアリングコラムとほぼ対応する傾斜を有し、ステアリングコラム（の車両後方側固定部）を取付可能なコラム後部取付部として使用可能なように構成されている。

　また、前述した傾斜部３８５は、車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）に対するステー３４４の相対的な車両前方への移動を規制可能な前述したストッパ部３５０のストッパ面３８７として使用可能である。そして、ステー３４４の上端部の車両後方側部分には、ストッパ部３５０として、前述したストッパ面３８７と対応するストッパ面３８８が設けられる。

　なお、例えば、車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）に対するステー３４４の相対的な車両後方への移動を規制する必要がある場合には、前述したストッパ部３５０は、高剛性構造部分３８１の下面側の車両前方側部分に設けるようにする。

　（ｅ）また、前述したステー３４４は、金属製である。このステー３４４は、一枚の金属板材を、平面視でほぼコ字状の断面を有するように曲げ加工などによって形成される。このステー３４４は、車体用高強度部材本体３４２における高剛性構造部分３８１の車幅方向３３１の中間部のほぼ中央部に取付けられている。本実施例では、ステー３４４は、１本である。そして、ステー３４４は、ほぼ上下方向３３３に延設されている。ステー３４４の上端部は、車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）の下部（下面部分）に固定される。このステーの上端部には、前述した取付面部３４９（緊急時前後移動可能部３５３）が一体に形成される。また、ステー３４４の下端部は、車室床部３３６にボルト固定されている（本実施例では、車幅方向６にボルト固定）。

　ステー３４４は、その下端側部分よりも、その上端側部分の方が水平方向の断面が大きくなるように構成されている。そのために、ステー３４４の上端側部分には、上方へ進むに従い水平方向の断面が拡大する断面拡大部３９１を有している。この断面拡大部３９１の上端部は、高剛性構造部分３８１の車両前後方向３２の長さ寸法とほぼ等しくなるように構成されている。この場合、ステー３４４は、その車両後方側縁部がほぼ上下方向に直線的に延びると共に、その車両前方側縁部は、下端部から中間部までがほぼ上下方向に直線的に延び、中間部からは車両前方に傾斜するように延びるものとされている。

　（ｆ）前述したポストブラケット３４５は、金属製である。このポストブラケット３４５は、側面視がほぼ三角形状である。このポストブラケット３４５は、緊急入力荷重３Ｆによって潰れない程度の強度を有するものとして構成されている。

　また、前述した車体用高強度部材３４１は、車体用高強度部材本体３４２の高剛性構造部分３８１に、ステアリングコラム（の車両前方側固定部）を取付可能なコラムブラケット３９５を備えている。そして、このコラムブラケット３９５は、高剛性構造部分３８１の車両前方側部分に固定されている。

　そして、高剛性構造部分３８１およびコラムブラケット３９５に対し、前述したポストブラケット３４５は、車体用高強度部材本体３４２（の高剛性構造部分３８１）と、ステー３４４との関係と同じ、取付構造を備えている。

　簡単に説明すると、（１）高剛性構造部分３８１およびコラムブラケット３９５とポストブラケット３４５とは、別部材で構成されると共に、両者間の取付構造部に、緊急時分離可能取付構造部が設けられている。（２）緊急時分離可能取付構造部が、緊急時解除可能固定部を有している。（３）緊急時解除可能固定部が荷重吸収部３７１を備えている。なお、その詳細（構成および作用効果）については、ステー３４４をポストブラケット３４５と読み替えることによって知ることができる。但し、高剛性構造部分３８１およびコラムブラケット３９５に対し、前述したポストブラケット３４５は、車両後方へ向かって斜め上方に移動可能となるように構成されている。即ち、ステー３４４とは移動方向が完全に一致しないように意図的に構成されている。

　（ｇ）また、図２７に示すように、車体用高強度部材３４１における、車体用高強度部材本体３４２のほぼ下方で、ステー３４４のほぼ車両前方側の位置には、空調ユニット３９７が配置される。この空調ユニット３９７は、大部分が樹脂製である。

　（ｈ）更に、図２６に示すように、車体用高強度部材３４１は、車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）に、緊急時に乗員の膝を受けると共に、緊急入力荷重３Ｆ（乗員の膝入力荷重などの二次荷重３Ｆｂ）を吸収可能なニープロテクタ３９８が取付けられている。このニープロテクタ３９８については、図３５のものと同様なので、ここでは、詳細は省略する。但し、必要な場合には、図３５およびそれに対する記載を流用することができる。

　次に、本実施例の作用について説明する。

　緊急時に、図３０に示すように、車両（車体）に前方からの緊急入力荷重３Ｆ（一次荷重３Ｆａ）が作用すると、車室前壁３３５や左右の車室側壁３３７が、後方へ移動する。これに伴って、ポストブラケット３４５やサイドブラケット３４３などを介して車体用高強度部材本体３４２が車両後方へ向かう力を受ける。この際、特に図示しないが、車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）およびコラムブラケット３９５に対し、ポストブラケット３４５が分離して、車両前後方向３３２の後方へ向かって斜め上方へに移動することによって、車体用高強度部材本体３４２の車両後方への移動量を低減したり、緊急入力荷重３Ｆを吸収したりするように機能する。

　また、緊急時に、車室前壁３３５が車両後方へ移動すると、車室前壁３３５によって、大部分が樹脂製とされている空調ユニット３９７が車両後方へ移動する。この際、車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）に対し、ステー３４４が分離して、車両前後方向３３２の後方へ移動することによって、車体用高強度部材本体３４２の後方への移動量を低減したり、緊急入力荷重３Ｆを吸収したりするように機能する。

　更に、車体用高強度部材本体３４２に備えられたニープロテクタ３９８では、緊急時に、緊急入力荷重３Ｆ（乗員の膝入力荷重などの二次荷重３Ｆｂ）を吸収するように機能する。これにより、例えば、乗員が車外へ飛出すことなどが防止される。

　このように、本実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。

　（ａ）別部材として構成された車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）と、ステー３４４とは、取付構造部３４６にて取付けられて一体化される。そして、車体用高強度部材３４１は、車室前部３３４に配設される。車室前部３３４に配設された車体用高強度部材３４１では、車体用高強度部材本体３４２が、ほぼ車幅方向３３１に延設される。また、車体用高強度部材本体３４２は、ステー３４４によって車室床部３３６に支持される。また、車体用高強度部材本体３４２は、ポストブラケット３４５によって車室前壁３３５に支持される。

　緊急入力荷重３Ｆが作用した場合には、車体用高強度部材本体３４２とステー３４４との取付構造部３４６に設けられた緊急時分離可能取付構造部３４７によって、車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）とステー３４４とを分離させることができる。

　これにより、例えば、車体用高強度部材本体３４２に車両後方へ向かう緊急入力荷重３Ｆ（３Ｆａ）が作用された場合に、ステー３４４を移動させることなく、車体用高強度部材本体３４２のみを車両後方へ移動させるようにすることができる。反対に、車体用高強度部材本体３４２に車両前方へ向かう緊急入力荷重３Ｆ（３Ｆｂ）が作用された場合に、ステー３４４を移動させることなく、車体用高強度部材本体３４２のみを車両前方へ移動させるようにすることができる。従って、車体用高強度部材本体３４２への緊急入力荷重３Ｆによって、ステー３４４が受ける影響を、低減させることができる。これにより、ステー３４４は、緊急時においても、その機能を継続して発揮し続けることが可能となる。なお、ステー３４４は、例えば、車載用オーディオ装置や制御ボックスなどを支持したり、インストルメントパネルを取付けたりするなどの機能を有している。

　或いは、ステー３４４に車両後方へ向かう緊急入力荷重３Ｆ（３Ｆａ）が作用された場合に、車体用高強度部材本体３４２を移動させることなく、ステー３４４のみを車両後方へ移動させるようにすることができる。反対に、ステー３４４に車両前方へ向かう緊急入力荷重３Ｆ（３Ｆｂ）が作用された場合に、車体用高強度部材本体３４２を移動させることなく、ステー３４４のみを車両前方へ移動させるようにすることができる。従って、ステー３４４への緊急入力荷重３Ｆによって、車体用高強度部材本体３４２が受ける影響を、低減させることができる。これにより、車体用高強度部材本体３４２は、緊急時においても、その機能を継続して発揮し続けることが可能となる。なお、車体用高強度部材本体３４２は、ステアリングコラムを支持するなどの機能を有している。

　緊急時に、車両後方へ向かう緊急入力荷重３Ｆ（３Ｆａ）は、車室前壁３３５の後退などによって、車体用高強度部材本体３４２に取付けられたポストブラケット３４５やサイドブラケット３４３や空調装置などを介して、間接的に車体用高強度部材本体３４２やステー３４４に作用されることとなる。

　また、車両前方へ向かう緊急入力荷重３Ｆ（３Ｆｂ）は、車体用高強度部材本体３４２に取付けられたニープロテクタ３９８への乗員の膝入力などによって、間接的に車体用高強度部材本体３４２やステー３４４に作用されることとなる。

　本実施例では、緊急時に、車体用高強度部材本体３４２とステー３４４との取付構造部３４６に設けられた緊急時分離可能取付構造部３４７によって、車体用高強度部材本体３４２とステー３４４とが分離されることで、車体用高強度部材本体３４２またはステー３４４の一方に作用されたモーメントなどの影響を、他方へ伝え難くすることができる。

　このように、緊急時に、車体用高強度部材本体３４２とステー３４４とが分離されて、それぞれ、必要量だけ移動し得るようにすることにより、車体用高強度部材本体３４２やステー３４４の変形を低減することが可能となる。また、必要に応じて、車体用高強度部材本体３４２やステー３４４の強度アップなどを図ることなども可能となる。

　（ｂ）車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）の下部と、ステー３４４の上端部との取付構造部３４６（緊急時分離可能取付構造部３４７）は、取付面部３４８、３４９（緊急時前後移動可能部３５２、３５３）を合わせて、固定部３５１（緊急時解除可能固定部３５４）にて固定することにより、取付けられるようになっている。

　そして、ステー３４４などに緊急入力荷重３Ｆが作用した場合に、緊急時分離可能取付構造部３４７は、緊急時解除可能固定部３５４が、車体用高強度部材本体３４２（高剛性構造部分３８１）とステー３４４との間の固定状態を解除する。そして、緊急時前後移動可能部３５２、３５３が、車体用高強度部材本体３４２とステー３４４とを、ほぼ車両前後方向３２へ相対的にスライドさせるようにガイドする。

　なお、取付面部３４８、３４９、または、緊急時前後移動可能部３５２、３５３にストッパ部３５０を設けることにより、車体用高強度部材本体３４２およびステー３４４のどちらかの、車両前後方向３３２のどちらか一方への移動を規制させることができる。本実施例では、車体用高強度部材本体３４２に対するステー３４４の車両前方への移動を規制している。

　また、緊急時解除可能固定部３５４は、ネジ３５５と車両前後方向３３２へ延びる長孔３５８とを有する移動可能締結固定部３５９や、リベットなどのカシメ固定部（破断可能カシメ固定部）や、フック部３６５とフック係止孔部とを有する係止固定部３６７（変形可能係止固定部３６８）などとすることができる。

　（ｃ）車体用高強度部材本体３４２とステー３４４とが分離する際に、緊急時解除可能固定部３５４に備えられた荷重吸収部３７１によって、緊急入力荷重３Ｆやモーメントなどの荷重を吸収することができる。

　これにより、車体用高強度部材本体３４２やステー３４４の強度を上げることなく、緊急入力荷重３Ｆやモーメントなどによる車体用高強度部材本体３４２やステー３４４の変形などを効果的に防止することが可能となる。また、車体用高強度部材本体３４２やステー３４４の移動量なども低減することが可能となる。

　なお、緊急時解除可能固定部３５４としての移動可能締結固定部３５９は、その長孔３５８をネジ３５５の径よりも細い細溝部３７２として、緊急時にネジ３５５が細溝部３７２を押し広げるようにすることで、荷重吸収部３７１とすることができる。また、緊急時解除可能固定部３５４としてのリベットなどの破断可能カシメ固定部は、その破断荷重を、荷重吸収にとって最適に設定することで、荷重吸収部３７１とすることができる。或いは、緊急時解除可能固定部３５４としての係止固定部３６７は、そのフック部３６５の変形荷重を、荷重吸収にとって最適に設定することで、荷重吸収部３７１とすることができる。

　以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであるため、本発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。

　緊急入力荷重作用時の強度部材本体の強度、剛性を高める必要のある箇所に適用可能である。
［関連出願への相互参照］
　本出願は、2008年11月21日に日本国特許庁に出願された特願2008-297592、2008年12月5日に日本国特許庁に出願された特願2008-311408、2009年2月3日に日本国特許庁に出願された特願2009-022080に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。

Claims

　車両の車室内の前方に設けられほぼ車幅方向へ延びる車体用高強度部材本体と、
　前記車体用高強度部材本体の少なくとも中間部に設けられ、前記車両の前後方向に複数の閉断面部を有する高剛性構造部分と、
　前記高剛性構造部分に取り付けられ、前記車体用高強度部材本体を上下方向に支持するステーと、
　前記高剛性構造部分に取り付けられ、前記車体用高強度部材本体を車両前後方向に支持するポストブラケットと、
　前記高剛性構造部分に取り付けられ、車両前後方向の緊急入力荷重が作用した場合、乗員の膝を受けて膝入力荷重を吸収可能なニープロテクタと、
を備える車体用高強度部材構造。
　好ましくは、前記ステーの上端側に、下端側よりも水平方向の断面が大きい断面拡大部が設けられ、該断面拡大部が前記高剛性構造部分の下面に取り付けられること、
を特徴とする請求項１記載の車体用高強度部材構造。
　前記ポストブラケットが、車両前後方向の前方からの緊急入力荷重に対して前記車体用高強度部材本体よりも先に屈曲変形すると共に、車両前後方向の後方からの乗員の前記膝入力荷重に対して前記車体用高強度部材本体よりも先に屈曲変形しない強度を有する強化型ポストブラケットであること、
を特徴とする請求項１または請求項２記載の車体用高強度部材構造。
　前記高剛性構造部分に取り付けられ、前記車両のステアリングコラムを取付るコラムブラケットを備え、
　前記ポストブラケットが、前記車両の車室前壁部と前記高剛性構造部分の車両前方側部分との間に介装される本体支持部と、前記車室前壁部と前記コラムブラケットとの間に介装されるコラム支持部とを有する、二股形状を備えること、
を特徴とする請求項１～請求項３のいずれか１項に記載の車体用高強度部材構造。
　前記高剛性構造部分の車両前方側上面および前記コラムブラケットの上面に対して上方から当接配置可能なベースブラケットを、前記ポストブラケットの前記本体支持部の車両後方側端部と前記コラム支持部の下端部との間に架設連結し、側面視でほぼ三角形状を示す強化ポストブラケット体を構成し、
　前記ベースブラケットと、前記高剛性構造部分の車両前方側上面との間に、前記ベースブラケットを前記高剛性構造部分に取付る車体用高強度部材取付部を設けると共に、
　前記ベースブラケットと、前記コラムブラケットの上面との間に、前記ベースブラケットを前記コラムブラケットに取付るコラムブラケット取付部を設けること、
を特徴とする請求項４に記載の車体用高強度部材部構造。
　前記高剛性構造部分および前記コラムブラケットと、前記強化ポストブラケット体との間に、前方からの緊急入力荷重によって、前記強化ポストブラケット体を、前記高剛性構造部分および前記コラムブラケットから分離および退避し得るように取付可能な緊急時分離退避可能構造部が設けられ、
　該緊急時分離退避可能構造部が、
　前記ベースブラケットの下面に設けられたスライド用面部と、
　前記高剛性構造部分の車両前方側上面および前記コラムブラケットの上面に設けられ、前記スライド用面部の、車両後方へ且つ上方へ向かうスライドを案内可能なガイド面部と、
　前記車体用高強度部材取付部および前記コラムブラケット取付部に設けられ、車両前方からの緊急入力荷重によって破断することで緊急入力荷重を吸収可能な荷重吸収取付部材と、
　前記スライド用面部と前記ガイド面部との間に選択的に設置可能に設けられ、車両前方からの緊急入力荷重によって破断することで緊急入力荷重を吸収可能であると共に、緊急入力荷重の吸収量を設定および調整可能な荷重吸収量調整部材と、
を備えること、
を特徴とする請求項５に記載の車体用高強度部材部構造。
　前記ポストブラケットが、間隔を有して平行に配置された少なくとも二枚の縦面部を有すると共に、該二枚の縦面部が、前記ベースブラケットによって連結されること、
を特徴とする請求項１～請求項６のいずれか１項に記載の車体用高強度部材部構造。
　前記高剛性構造部分と前記ステーとの間に、前記ステーを前記高剛性構造部分に取付る取付構造部を設け、
　前記取付構造部が、緊急入力荷重によって、前記高剛性構造部分と前記ステーとが分離可能な緊急時分離可能取付構造部であること、
を特徴とする請求項１～請求項７のいずれか１項に記載の車体用高強度部材構造。
　前記取付構造部が、前記高剛性構造部分に設けられた取付面部と、前記ステーに設けられた取付面部と、両取付面部間を固定する固定部とを備え、
　前記緊急時分離可能取付構造部は、前記両取付面部を、ほぼ車両前後方向へ移動可能な緊急時前後移動可能部として有すると共に、前記固定部を、緊急入力荷重によって、前記高剛性構造部分と前記ステーとの間の固定状態を解除可能な緊急時解除可能固定部として有すること、
を特徴とする請求項８記載の車体用高強度部材構造。
　前記緊急時解除可能固定部が、前記高剛性構造部分と前記ステーとの間の固定状態が解除される際に、緊急入力荷重を吸収可能な荷重吸収部を備えること、
を特徴とする請求項９に記載の車体用高強度部材構造。