明 細 書
染色液の成分濃度モニタ装置、成分濃度制御装置及び染色装置 技術分野
[0001] 本発明は、少なくともヨウ素及びヨウ化カリウムを成分として含有する染色液の成分 濃度をモニタするための成分濃度モニタ装置及び当該成分濃度を一定に制御する ための成分濃度制御装置並びに当該成分濃度制御装置を装備した染色装置に関 するものである。
背景技術
[0002] 画像表示装置、例えば、液晶ディスプレイ (LCD)等に用いられる偏光子としては、 一般に、ヨウ素染色されたポリビュルアルコール系フィルムが用いられる。
[0003] 上記偏光子の製造は、一般に、ポリビニルアルコール系フィルムを製膜後、膨潤ェ 程、染色工程、延伸工程、固定ィ匕工程、水洗工程及び乾燥工程を経て行われる。
[0004] 上記各工程の中で、染色工程は、膨潤工程を経た後のポリビニルアルコール系フ イルムをヨウ素により染色するものであり、その方法としては、一般に、ヨウ素とヨウ素 の溶解助剤であるヨウ化カリウムを成分として含有する水溶液に当該ポリビニルアル コール系フィルムを浸漬して行われる。
[0005] 上記各工程は、工業的には連続して行われ、染色工程には、膨潤工程を経て水分 を含有したポリビュルアルコール系フィルムが連続して導入され、一方、染色によりョ ゥ素を含有したポリビニルアルコール系フィルムが連続して導出される。
[0006] 従って、染色液の成分濃度が経時的に変化するために、当該成分濃度を把握し一 定に制御することが困難である。その結果、ポリビニルアルコール系フィルムに染色さ れるヨウ素の量が変化し、得られた偏光子の品質を不安定にし、歩留りを低下させる
[0007] 上記問題に対して、下記特許文献 1にお 、ては、製膜したポリビニルアルコール系 フィルムにアルカリ金属のヨウ化物を含む処理液を浸漬してヨウ化物イオン (Γ)を含 有させ、その後、紫外光又は可視光を照射して当該ヨウ化物イオンを酸ィ匕してヨウ素 (I )を生成させる方法が提案されている。
特許文献 1 :特開 2005— 54171号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] ところで、上記特許文献 1に記載の方法においても、処理液中のヨウ化物イオンと 対イオンであるアルカリ金属イオンの量が経時的に変化して、この場合でも処理液の 成分濃度を把握し一定に制御することが必要である。
[0009] そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、これまで困難とされていた染色液の 成分濃度を把握し一定に制御することを容易にするためになされたものである。
[0010] 具体的には、本発明は、ヨウ素及びヨウ化カリウムを成分として含有する染色液の 成分濃度をモニタするための成分濃度モニタ装置及び当該成分濃度を一定に制御 するための成分濃度制御装置並びに当該成分濃度制御装置を装備した染色装置を 提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0011] 上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、染色液の導電率が、ョ ゥ化カリウムの濃度と密接な関係にあり、また、染色液の所定波長における吸光度が 、ヨウ化カリウムの濃度及びヨウ素の濃度と密接な関係にあることを実験的に見出した 。そして、上記結果を利用することにより、染色液の成分濃度を正確に把握すること が可能となり、本発明の完成に至った。
[0012] 即ち、本発明に係る染色液の成分濃度モニタ装置は、染色液の導電率を検出する 導電率検出手段 (31)と、上記染色液の吸光度を検出する吸光度検出手段 (32)と、 上記導電率及び上記吸光度を用いて上記染色液のヨウ素の濃度及びヨウ化カリウム の濃度を演算する濃度演算手段(105〜107)と、上記ヨウ素の濃度及び上記ヨウ化 カリウムの濃度を表示する表示手段(36、 37、 109)とを備える。
[0013] 上記構成によれば、これまで困難とされていた染色液の成分濃度 (ヨウ素の濃度及 びヨウ化カリウムの濃度)をモニタすることが可能となる。従って、染色液の成分濃度 の変化を把握することができるので、当該成分濃度を一定に制御するための操作を 迅速にすることができる。
[0014] また、本発明に係る染色液の成分濃度モニタ装置は、さらに、上記ヨウ素の濃度及
び上記ヨウ化カリウムの濃度について各対応の所定の管理値力 のずれを演算する ずれ演算手段(108)を備えて、上記表示手段(36、 37、 109)は、更に上記各管理 値からの上記ずれを表示することを特徴とする。
[0015] 上記構成によれば、これまで困難とされていた染色液の成分濃度 (ヨウ素の濃度及 びヨウ化カリウムの濃度)をモニタすることに加え、当該成分濃度の各管理値からのず れをモニタすることが可能となる。従って、染色液の成分濃度とこれらの各管理値か らのずれを把握することができるので、当該成分濃度を一定に制御するための操作 を迅速にすることができる。
[0016] また、本発明に係る染色液の成分濃度制御装置は、染色液の導電率を検出する 導電率検出手段 (31)と、上記染色液の吸光度を検出する吸光度検出手段 (32)と、 上記導電率及び上記吸光度を用いて上記染色液のヨウ素の濃度及びヨウ化カリウム の濃度を演算する濃度演算手段(105〜107)と、上記ヨウ素の濃度及び上記ヨウ化 カリウムの濃度について各対応の所定の管理値力 のずれを演算するずれ演算手 段(108)と、上記各管理値力 の上記ずれを減少させるように制御出力を発生する 制御出力発生手段(110〜142)とを備える。
[0017] 上記構成によれば、上記各管理値力 のずれを減少させるための制御出力を得る ことができる。当該制御出力によって染色液の成分濃度を一定に制御するための操 作手段を自動的に操作することができる。従って、これまで困難とされていた染色液 の成分濃度制御を容易にすることが可能になる。
[0018] また、本発明に係る染色液の成分濃度制御装置は、上記ヨウ素の濃度及び上記ョ ゥ化カリウムの濃度並びに上記各管理値からの上記ずれを表示する表示手段(36、 37、 109)を備えることを特徴とする。
[0019] 上記構成によれば、これまで困難とされて 、た染色液の成分濃度制御を容易にす ることが可能になることに加え、染色液の成分濃度 (ヨウ素の濃度及びヨウ化カリウム の濃度)及び当該成分濃度の各管理値からのずれをモニタすることが可能となる。従 つて、染色液の成分濃度が一定に制御されて ヽることの確認をすることができる。
[0020] また、本発明に係る染色装置は、上記成分濃度制御装置と、上記染色液を貯える 染色液貯蔵手段(11、 12)と、少なくともヨウ素及びヨウ化カリウムを上記染色液貯蔵
手段に供給する供給手段 (21〜26)と、上記成分濃度制御装置の上記制御出力発 生手段からの制御出力に基づいて上記供給手段力 上記染色液貯蔵手段への上 記ヨウ素及びヨウ化カリウムの供給量を制御する制御手段 (N1〜N3、 M3〜M5、 P 3〜P5)とを備える。
[0021] 上記構成によれば、上記制御出力発生手段からの制御出力に基づいて上記各管 理値からのずれを減少させるように染色液の成分濃度を一定に制御するための操作 が自動的に行われる。従って、染色液の成分濃度が一定に制御された染色槽にお いてポリビュルアルコール系フィルムの染色をすることができる。
[0022] 即ち、ポリビュルアルコール系フィルムの染色工程において、経時的に変化する染 色液のヨウ素の濃度及びヨウ化カリウムの濃度について各所定の管理値力 のずれ を求め、求められた各管理値力 のずれを減少させるように染色液の成分であるヨウ 素及びヨウ化カリウムを染色液に追加する供給量を制御することができる。
[0023] 従って、本発明の結果、染色液の成分濃度を一定に制御することができるようにな り、ポリビュルアルコール系フィルムに染色されるヨウ素の量が安定し、得られた偏光 子の品質の安定と歩留りの向上が可能となる。
[0024] また、本発明に係る染色装置は、上記ヨウ素の濃度及び上記ヨウ化カリウムの濃度 並びに上記各管理値からの上記ずれを表示する表示手段(36、 37、 109)を備える ことを特徴とする。
[0025] 上記構成によれば、これまで困難とされて 、た染色液の成分濃度制御を容易にし て、染色液の成分濃度が一定に制御された染色槽にお 、てポリビニルアルコール系 フィルムの染色をすることができることに加え、染色液の成分濃度 (ヨウ素の濃度及び ヨウ化カリウムの濃度)及び当該成分濃度の各管理値力 のずれをモニタすることが 可能となる。従って、染色液の成分濃度が一定に制御されていることの確認をするこ とがでさる。
[0026] また、本発明に係る染色液の成分濃度制御装置は、染色液の導電率を検出する 導電率検出手段 (31)と、上記染色液の吸光度を検出する吸光度検出手段 (32)と、 上記導電率及び上記吸光度を用いて上記染色液のヨウ素の濃度及びヨウ化カリウム の濃度を演算する濃度演算手段(105〜107)と、上記ヨウ素の濃度について所定の
管理値からのずれを演算するずれ演算手段(108)と、上記管理値からの上記ずれ を減少させるように制御出力を発生する制御出力発生手段( 110〜 115)とを備える
[0027] 上記構成によれば、上記管理値力 のずれを減少させるための制御出力を得るこ とができる。当該制御出力によって染色液の主たる成分であるヨウ素の濃度を一定に 制御するための操作手段を自動的に操作することができる。従って、これまで困難と されていた染色液の主たる成分であるヨウ素の濃度制御を容易にすることが可能に なる。
[0028] また、本発明に係る染色装置は、上記染色液の成分濃度制御装置と、上記染色液 を貯える染色液貯蔵手段(11、 12)と、ヨウ素を染色液貯蔵手段に供給する供給手 段(21、 24)と、上記成分濃度制御装置の上記制御出力発生手段からの制御出力 に基づいて供給手段から染色液貯蔵手段への上記ヨウ素の供給量を制御する制御 手段 (Nl、 M3、 P3)とを備える。
[0029] 上記構成によれば、制御出力発生手段からの制御出力に基づいて上記管理値か らのずれを減少させるように染色液の主たる成分であるヨウ素の濃度を一定に制御 するための操作が自動的に行われる。従って、染色液の主たる成分であるヨウ素の 濃度が一定に制御された染色槽においてポリビニルアルコール系フィルムの染色を することができる。
[0030] 即ち、ポリビュルアルコール系フィルムの染色工程において、経時的に変化する染 色液の主たる成分であるヨウ素の濃度について所定の管理値からのずれを求め、求 められた管理値力 のずれを減少させるように染色液の主たる成分であるヨウ素を染 色液に追加する供給量を制御することができる。
発明を実施するための最良の形態
[0031] 以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図 1は、本発明を染色装 置に適用した一実施形態を示している。当該染色装置は、染色ユニット 10と、供給ュ ニット 20と、制御ユニット 30とにより構成されている。
[0032] 染色ユニット 10は、染色槽 11と、調整槽 12と、回収槽 13とを備えている。
[0033] 染色槽 11は、循環配管 14a及び 14bによって、それぞれ別経路で調整槽 12に連
結されている。このように連結された染色槽 11と調整槽 12とは、ポリビュルアルコー ル系フィルム Fを染色するための染色液 Lを貯えている。なお、染色槽 11の内部に設 置された 17a〜 17dは、被染色物であるポリビュルアルコール系フィルム Fを導入す るためのガイドロールである。
[0034] 調整槽 12は、更に検出配管 15によって染色槽 11に連結され、この調整槽 12は、 染色液 Lの成分濃度の制御を行うために供給ユニット 20に連結されている。
[0035] 回収槽 13は、染色槽 11の所定容量を越える余剰の染色液 Lを回収するために回 収配管 16によって染色槽 11に連結されて 、る。
[0036] 供給ユニット 20は、供給槽 21〜23を備えている。ここで、供給槽 21〜23は、それ ぞれ供給配管 24〜26によって、調整槽 12に連結されている。
[0037] 供給槽 21は、染色液 Lのヨウ素の濃度を制御するためのヨウ素及びヨウ化カリウム の混合水溶液 (以下、「I ZKI混合水溶液」という。)を貯えている。供給槽 22は、染
2
色液 Lのヨウ化カリウムの濃度を制御するためのヨウ化カリウム水溶液 (以下、「KI水 溶液」という。)を貯えている。また、供給槽 23は、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度を 調整するための水(以下、単に「水」という。)を貯えている。
[0038] 制御ユニット 30は、導電率センサ 31と、吸光度センサ 32と、マイクロコンピュータ 3
3と、駆動回路 34〜36と、モニタ 37と、インバータ Ν1〜Ν3とを備えている。
[0039] 導電率センサ 31は、検出配管 15に設置されており、この導電率センサ 31は、染色 液 Lの導電率を検出しマイクロコンピュータ 33 (後述する)に出力する。なお、本実施 形態では、導電率センサ 31として、株式会社東興化学研究所製導電率計 TCX— 9
8が採用されている。
[0040] 吸光度センサ 32は、検出配管 15に設置されており、この吸光度センサ 32は、染色 液 Lの吸光度を検出しマイクロコンピュータ 33 (後述する)に出力する。なお、本実施 形態では、吸光度センサ 32として、笠原理化工業株式会社製 液体濃度計 CR— 502Ρ (検出器 CRD— 10P)が採用されている。
[0041] マイクロコンピュータ 33は、図 2〜図 4に示すフローチャートに従い、コンピュータプ ログラムを実行する。なお、上記コンピュータプログラムは、マイクロコンピュータ 33の ROMに当該マイクロコンピュータにより読み出し可能に記憶されている。
[0042] 駆動回路 34は、マイクロコンピュータ 33による制御のもと、ポンプ P1のモータ Mlを 駆動する。このポンプ P1は、モータ Mlを内蔵してなるもので、当該ポンプ P1は、循 環配管 14bに設置されている。しかして、このポンプ P1は、モータ Mlにより駆動され て調整槽 12内の染色液 Lを染色槽 11に流出させる。
[0043] また、駆動回路 35は、マイクロコンピュータ 33による制御のもと、ポンプ P2のモータ M2を駆動する。このポンプ P2は、モータ M2を内蔵してなるもので、当該ポンプ P2 は、検出配管 15に設置されている。しかして、このポンプ P2は、モータ M2により駆 動されて、染色槽 11内の染色液 Lを調整槽 12に流出させる。
[0044] なお、本実施形態では、上記ポンプ P1及び P2としては、共に、同一の構成及び機 能を有するモータ内蔵型自吸式ポンプが採用されている。
[0045] また、駆動回路 36は、マイクロコンピュータ 33による制御のもと、モニタ 37を駆動す る。
[0046] モニタ 37は、駆動回路 36により駆動されて、所定のデータをモニタ画面に表示す る。
[0047] インバータ N1〜N3は、共に、同一の構成及び機能を有しており、これらのインバ ータ N1〜N3は、それぞれのインバータ出力をマイクロコンピュータ 33からの補正出 力に比例させて補正する。以下、この補正されたインバータ出力を「補正インバータ 出力」という。
[0048] インバータ N1は、マイクロコンピュータ 33による制御のもと、補正インバータ出力を ポンプ P3のモータ M3に出力する。このポンプ P3は、モータ M3を内蔵してなるもの で、当該ポンプ P3は、供給配管 24に設置されている。しかして、このポンプ P3は、 インバータ N1の補正インバータ出力に基づきモータ M3により駆動されて、供給槽 2 1内の I ZKI混合水溶液を調整槽 12に供給する。
2
[0049] インバータ N2は、マイクロコンピュータ 33による制御のもと、所定の起動インバータ 出力又は補正インバータ出力をポンプ P4のモータ M4に出力する。このポンプ P4は 、モータ M4を内蔵してなるもので、当該ポンプ P4は、供給配管 25に設置されている 。しかして、このポンプ P4は、インバータ N2の所定の起動インバータ出力又は補正 インバータ出力に基づき駆動されて、供給槽 22内の KI水溶液を調整槽 12に供給す
る。
[0050] また、インバータ N3は、マイクロコンピュータ 33による制御のもと、所定の起動イン バータ出力又は補正インバータ出力をポンプ P5のモータ M5に出力する。このポン プ P5は、モータ M5を内蔵してなるもので、当該ポンプ P5は、供給配管 26に設置さ れている。しかして、このポンプ P5は、インバータ N3の所定の起動インバータ出力又 は補正インバータ出力に基づきモータ M5により駆動されて、供給槽 23内の水を調 整槽 12に供給する。
[0051] なお、本実施形態では、上記ポンプ P3〜P5として、同一の構成及び機能を有する モータ内蔵型ダイヤフラム式定量ポンプが採用されている。
[0052] また、本実施形態においては、主として導電率センサ 31、吸光度センサ 32、マイク 口コンピュータ 33、駆動回路 36及びモニタ 37でもって、染色液の成分濃度モニタ装 置が構成されている。また、主として導電率センサ 31、吸光度センサ 32、マイクロコ ンピュータ 33、インバータ N1〜N3でもって、染色液の成分濃度制御装置が構成さ れている。
[0053] 次に、本実施形態に係る染色装置の作動について説明する。なお、この説明は、 染色液 Lを用いてポリビュルアルコール系フィルム Fを染色する例につ!、て行う。
[0054] まず、染色ユニット 10にお!/、ては、膨潤工程で含水した長尺のポリビュルアルコー ル系フィルム F力 ガイドロール 17a〜17dに沿って連続して染色槽 11の中に導入さ れる。このポリビュルアルコール系フィルム Fは、染色槽 11の中で染色液 Lによって 染色される。その後、染色されたポリビュルアルコール系フィルム Fは、染色液 Lを含 んだ状態で連続して染色槽 11から導出される。
[0055] ここで、染色液 Lは、ヨウ素とヨウ素の溶解助剤であるヨウ化カリウムとを成分として含 有する水溶液である。染色液 Lの成分濃度は、被染色物であるポリビュルアルコール 系フィルム Fに要求される染色濃度により適宜決定される。一般に、染色液 Lは、染 色液の重量に対して、ヨウ素を 0. 01〜0. 5 (重量%)程度及びヨウ化カリウムを 0. 0 1〜15 (重量%)程度含有する。また、染色液 Lは、場合により数 (重量%)程度のホ ゥ酸を含有することもある。染色液 Lの温度は、通常 20〜50 (°C)程度の範囲以内の 温度であり、この染色液 Lの中でのポリビュルアルコール系フィルム Fの浸漬時間は、
通常 10〜300 (秒)程度の範囲以内の時間である。
[0056] 本実施形態においては、染色液 Lは、染色液の重量に対して、ヨウ素を 0. 03 (重 量%)及びヨウ化カリウムを 0. 6 (重量%)含有している。また、染色液 Lの温度は、 30 (°C)であり、この染色液 Lの中でのポリビュルアルコール系フィルム Fの浸漬時間は、 60 (禾少)とされている。
[0057] 次に、供給ユニット 20において、供給槽 21〜23にそれぞれ貯えられている I /KI
2 混合水溶液、 KI水溶液及び水について説明する。
[0058] 染色液 Lの成分であるヨウ素は単独では水溶液とならず、その溶解助剤であるヨウ 化カリウムを必要とする。従って、供給槽 21は、 I ZKI混合水溶液を貯えている。
2
[0059] ここで、供給槽 21に貯えられて ヽる上記 I ZKI混合水溶液は、染色液 Lへのヨウ素
2
の追加を目的とするものである。従って、上記 I ZKI混合水溶液のヨウ素の濃度 [I ]s
2 2
1は、染色液 Lのヨウ素の濃度の管理値 [I ]tよりかなり大きく設定されている。
2
[0060] また、上記混合水溶液のヨウ化カリウムは、染色液 Lへのヨウ化カリウムの追カ卩を目 的とするものではなぐこのヨウ化カリウムは、ヨウ素の溶解助剤として上記 I ZKI混合
2 水溶液に混合されている。従って、上記 I Ζκι混合水溶液のヨウ化カリウムの濃度 [
2
KI]slは、上記ヨウ素の濃度 [I ]slを安定して保てる濃度範囲の中で小さく設定され
2
ている。
[0061] 本実施形態においては、染色液 Lのヨウ素の濃度の管理値 [I ]tは、上述のように 0
2
. 03 (重量%)であり、上記 I ZKI混合水溶液のヨウ素の濃度 [I ]slは、 0. 2 (重量
2 2
%)とされている。このときの上記 I ZKI混合水溶液のヨウ化カリウムの濃度 [KI]sl
2
は、 1. 0 (重量%)とされている。
[0062] 一方、供給槽 22に貯えられている KI水溶液は、染色液 Lへのヨウ化カリウムの追カロ を目的とするものである。従って、上記 KI水溶液のヨウ化カリウムの濃度 [KI]s2は、 染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度の管理値 [KI]tよりかなり大きく設定されている。
[0063] 本実施形態においては、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度の管理値 [KI]tは、上述 のように 0. 6 (重量%)であり、上記 KI水溶液のヨウ化カリウムの濃度 [KI]s2は、 10. 0 (重量%)とされている。
[0064] なお、供給槽 23に貯えられている水は、染色液 Lのヨウ化カリウムの希釈を目的と
するものである。
[0065] このように、各供給槽 21〜23から染色液 Lに各成分が供給されることにより、後述 のように、染色槽 11と調整槽 12とに貯えられた染色液 Lの成分濃度は、各管理値 [I
2
]t及び [KI]tに制御される。
[0066] 以下、染色液 Lの成分濃度制御にっ ヽて説明する。まず、上記コンピュータプログ ラムをスタートすると、図 2のステップ 101において、循環ポンプ運転開始処理がなさ れる。この運転開始処理では、マイクロコンピュータ 33から所定の起動出力が駆動回 路 34に出力される。すると、駆動回路 34は、上記起動出力に対応した駆動出力でも つてモータ Mlを駆動する。
[0067] その結果、ポンプ P1は、モータ Mlによる上記駆動のもと、調整槽 12内の染色液 L を循環配管 14bを通して染色槽 11に流入させる共に、染色槽 11内の染色液 Lを循 環配管 14aを通して調整槽 12に流入させる。従って、染色液 Lは、調整槽 12におい てその成分濃度が調整された場合でも、この染色液 Lは、染色槽 11と調整槽 12との 中で速やかに均一化される。
[0068] このように染色液 Lが染色槽 11と調整槽 12との中で均一化されている状態で、ステ ップ 102において、検出ポンプ運転開始処理がなされる。この運転開始処理では、 マイクロコンピュータ 33から所定の起動出力が駆動回路 35に出力される。すると、駆 動回路 35は、上記起動出力に対応した駆動出力でもってモータ M2を駆動する。
[0069] その結果、ポンプ P2は、モータ M2による上記駆動のもと、染色槽 11内の染色液 L を検出配管 15を通して調整槽 12に流入させる。
[0070] このことにより染色槽 11内の染色液 Lが導電率センサ 31及び吸光度センサ 32に接 触し、それぞれの検出が行われる。
[0071] そこで、ステップ 103において、導電率 aの読込処理がなされる。この読込処理で は、導電率センサ 31によって検出された染色液 Lの導電率 αがマイクロコンピュータ 33に読込まれる。
[0072] 同様に、ステップ 104にお 、て、吸光度 βの読込処理がなされる。この読込処理で は、吸光度センサ 32によって検出された染色液 Lの吸光度 |8がマイクロコンピュータ 33に読込まれる。
[0073] ここで、上記ステップ 104における吸光度 βの検出波長は、任意に選定することが できるが、この検出波長は、一般には、 300nm〜700nmの範囲以内、好ましくは、 4 00nm〜700nmの範囲以内、より好ましくは、 500nm〜600nmの範囲以内力も選 定される。検出波長が 300nm以上あれば、ヨウ素の吸光度に対するヨウ化物イオン の影響が小さくなり、十分な検出精度が得られる。また、検出波長が 700nm以下で あれば、ヨウ素の吸光度が大きくなり、十分な検出精度が得られる。従って、本実施 形態においては、検出波長は、特に好ましいと考えられる 520nmに設定されている
[0074] 上記各ステップで読込まれた検出値によって、以下に述べる染色液 Lの成分濃度 の各演算が行われる。まず、ステップ 105において、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pの 演算処理がなされる。この演算処理では、ステップ 103で読込まれた導電率 αを用 いて、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが演算される。
[0075] ここで、上記ステップ 105の演算処理について詳しく説明する。本発明者らは、既 知の濃度のヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する一連の水溶液の導電率 OCを検出し、 以下のことを実験的に確認した。即ち、染色液の導電率 αは、電解質であるヨウ化力 リウムの濃度 [ΚΙ]と相関関係を示す力 この導電率 αは、ヨウ素の濃度 [I
2 ]には大 きく影響されない。また、ホウ酸等の他の成分は、導電率 αの検出値に対して大きく 影響しない。
[0076] 具体的には、ヨウ素を 0〜0. 24 (重量%)及びヨウ化カリウムを 0〜9. 6 (重量%)含 有する一連の水溶液が作成され、この一連の水溶液の導電率 αが検出される。
[0077] 検出された一連の導電率 exをヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]に対して同一グラフ上に プロットすると、図 5に示す導電率 αとヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]との相関関係を示 すグラフが得られる。図 5において、横軸の導電率 αが決まれば、縦軸のヨウ化力リウ ムの濃度 [ΚΙ]が求められる。
[0078] ここで、上記相関関係は、直線関係とみなされ、この相関関係は、導電率 exを独立 変数とし、ヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]を従属変数とする下記の直線式(1)で示される 。直線式(1)において Αは係数であり、予め実験的に求められる。
[0079] [KI] = Α· α · · · ( !)
従って、上記直線式(1)を予めマイクロコンピュータ 33に読出し可能に記憶させて おくことにより、ステップ 105において、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pが演 算される。
[0080] また、ステップ 106において、 ΚΙ係数 Sの演算処理がなされる。この「ΚΙ係数」とは、 吸光度 ι8とヨウ素の濃度 [I ]の関係に及ぼすヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]の影響を表
2
す係数である。このステップ 106の演算処理では、ステップ 105で演算された染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρを用いて ΚΙ係数 Sが演算される。
[0081] ここで、上記ステップ 106の演算処理について詳しく説明する。本発明者らは、既 知の濃度のヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する一連の水溶液の吸光度 βを検出し、 以下のことを実験的に確認した。即ち、染色液の吸光度 j8は、ヨウ素の濃度 [I ]と相
2 関関係を示し、且つ、この吸光度 j8は、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]に大きく影響され る。
[0082] 具体的には、ヨウ素を 0〜0. 24 (重量%)及びヨウ化カリウムを 0〜9. 6 (重量%)含 有する一連の水溶液が作成され、この一連の水溶液の 520nmにおける吸光度 |8が 検出される。
[0083] 検出された一連の吸光度 13をヨウ素の濃度 [I
2 ]に対して同一グラフ上にプロットす ると、図 6に示すグラフが得られる。図 6から明らかなように、吸光度 j8とヨウ素の濃度 [I
2 ]とは、良好な相関関係を示すが、ヨウ化カリウムの濃度 [KI] ( = a、 b及び c)の違 いによって、各々独立した複数の直線関係と見なすことができる。このことは、上記相 関関係が、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]に大きく影響されることを示している。
[0084] ここで、吸光度 βとヨウ素の濃度 [I ]との相関関係を示す上記複数の直線関係は、
2
吸光度 βを独立変数とし、ヨウ素の濃度 [I
2 ]を従属変数とする下記の一つの直線式
(2)で示される。直線式(2)において係数 Sは直線式の勾配であり、ヨウ化カリウムの 濃度 [ΚΙ]によって変化する。この係数 Sが、上記「ΚΙ係数」である。
本発明者らは、図 6において、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]の異なる各々の直線の KI 係数 Sを求め、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]に対して同一グラフ上にプロットした。図 7 は、染色液のヨウ化カリウムの濃度 [KI]と KI係数 Sとの相関関係を示すグラフである
。図 7において、横軸のヨウ化カリウムの濃度 [KI]が決まれば、縦軸の KI係数 Sが求 められる。
[0086] ここで、上記相関関係は、直線関係とみなされ、この相関関係は、ヨウ化カリウムの 濃度 [KI]を独立変数とし、 KI係数 Sを従属変数とする下記の直線式 (3)で示される 。直線式(3)において Bは係数、 Cは定数であり、予め実験的に求められる。
[0087] S = Β· [ΚΙ] + C · · · (3)
従って、上記直線式(3)を予めマイクロコンピュータ 33に読出し可能に記憶させて おくこと〖こより、ステップ 106において、 ΚΙ係数 Sが演算される。
[0088] そこで、ステップ 107において、ヨウ素の濃度 [I ]ρの演算処理がなされる。この演
2
算処理では、ステップ 104で読込まれた吸光度 βとステップ 106で演算された KI係 数 Sを用いて、上記直線式(2)から染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]pが演算される。
2
[0089] 従って、上記直線式(2)を予めマイクロコンピュータ 33に読出し可能に記憶させて おくことにより、ステップ 107において、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]pが演算される。
2
[0090] 更に、ステップ 108において、管理値からのずれの演算処理がなされる。この演算 処理では、ステップ 107で演算されたヨウ素の濃度 [I ]p及びステップ 105で演算さ
2
れたヨウ化カリウムの濃度 [KI]pについて各対応の所定の管理値 [I ]t及び [KI]t
2
からのずれ Δ [Ι ]及び Δ [ΚΙ]が演算される。
2
[0091] 上記各管理値からの各ずれは、下記の式 (4)及び式(5)によって演算される。
[0092] Δ [Ι ] = [I ]p - [l it · · · (4)
2 2 2
Δ [ΚΙ] = [ΚΙ]ρ [KI]t · ' · (5)
そこで、まず、上記各管理値 [I ]t及び [KI]t並びに上記各式 (4)及び式 (5)を予
2
めマイクロコンピュータ 33に読出し可能に記憶させておくことにより、上記各管理値か らの各ずれが演算される。
[0093] 次に、ステップ 109において、モニタ表示処理がなされる。この表示処理では、マイ クロコンピュータ 33から表示データに対応した表示出力が駆動回路 36に出力される 。すると、駆動回路 36は、上記表示出力に対応した駆動出力をモニタ 37に出力する
[0094] その結果、モニタ 37は、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]p及びヨウ化カリウムの濃度 [
KI]p並びにそれぞれの管理値からのずれ Δ [Ι ]及び Δ [ΚΙ]を表示する。更に、モ
2
ユタ 37は、上記各管理値 [I ]ρ及び [ΚΙ]ρを表示するようにしてもよい。
2
[0095] 上述のように、染色液 Lの各成分濃度とそれらの各管理値からのずれが把握される
。そこで、これらのずれを減少させるように成分濃度制御が行われる。
[0096] まず、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]ρを制御する方法について説明する。図 2のステ
2
ップ 110において、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]p 1S 所定の管理値 [I ]t未満である
2 2
か否かが判定される。
[0097] 染色の進行により、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]pがその管理値 [I ]tより減少して
2 2
いれば、 [I ]pが [I ]t未満であるので、ステップ 110において YESと判定される。
2 2
[0098] この場合、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]pを増カロさせる必要がある。そこで、 I ZKI
2 2 混合水溶液の供給を確認するために、ステップ 111において、インバータ N1が動作 中か否かが判定される。インバータ N1が動作中であれば、ステップ 111において YE Sと判定される。
[0099] ここでは、 I ZKI混合水溶液が供給されて 、るが、更にその供給量を増カロさせるた
2
めに、ステップ 112において、インバータ N1の出力増大処理がなされる。この出力増 大処理では、マイクロコンピュータ 33から、ステップ 108で演算された Δ [I ] (ここでは
2 プラスの値)の絶対値に比例して増大された補正出力がインバータ N1に出力される 。すると、インバータ N1は、上記補正出力に比例した補正インバータ出力でもってモ ータ M3を駆動する。即ち、 Δ [Ι ]の絶対値が大きければ、上記補正インバータ出力
2
の増大幅が大きくなり、 Δ [Ι ]の絶対値力 S小さければ、上記補正インバータ出力の増
2
大幅が小さくなる。
[0100] その結果、ポンプ Ρ3は、モータ Μ3による上記駆動のもと、その供給量を上記補正 インバータ出力に比例して増大させる。よって、供給槽 21から染色槽 11に供給され る I ΖΚΙ混合水溶液の供給量が上記補正インバータ出力に比例して増大し、染色
2
液 Lのヨウ素の濃度 [I ]ρが所定の管理値 [I ]tに制御される。
2 2
[0101] 一方、インバータ N1が停止中であれば、ステップ 111において NOと判定される。
このとき、 I ZKI混合水溶液の供給は停止している。
2
[0102] そこで、 I ZKI混合水溶液の供給を開始させて、ヨウ素の濃度 [I ]pを速やかに増
カロさせるために、ステップ 113において、インバータ N1の起動処理がなされる。この 起動処理では、マイクロコンピュータ 33から所定の起動出力がインバータ N1に出力 される。すると、インバータ N1は、上記起動出力に比例したインバータ出力でもって モータ M3を駆動する。
[0103] その結果、ポンプ P3は、モータ M3による上記駆動のもと、供給槽 21内の I ΖΚΙ混
2 合水溶液を調整槽 12に供給する。よって、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]ρが増加し、
2
所定の管理値 [I ]tに制御される。
2
[0104] ここで、マイクロコンピュータ 33からインバータ N1に出力される所定の起動出力は、 染色液 Lのヨウ素の濃度の管理値 [I ]t、供給槽 21内の I ZKI混合水溶液のヨウ素
2 2
の濃度 [I ]sl及び染色槽 11へのポリビュルアルコール系フィルムの導入速度等の
2
染色条件により決定され、この所定の起動出力は、予めマイクロコンピュータ 33に読 出し可能に記憶させておく。
[0105] これに対して、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]pがその管理値 [I ]tと同じ又は大きく
2 2
なっていれば、 [I ]pが [I ]t以上であるので、ステップ 110において NOと判定される
2 2
[0106] ここで、ヨウ素の濃度 [I ]pがその管理値 [I ]tと同じ場合は、上記ステップ 108で
2 2
演算された Δ [Ι ]がゼロを意味する。一方、ヨウ素の濃度 [I ]ρがその管理値 [I ]t
2 2 2 より大きくなつている場合は、以下のように説明される。
[0107] 即ち、染色の開始段階で調整されて染色槽 11に貯えられた染色液 Lのヨウ素の濃 度 [I ]pがその管理値 [I ]tより大きくなる場合、或いは、染色の進行段階で染色液 L
2 2
の濃度制御のために I ZKI混合水溶液が供給槽 21から調整槽 12に供給され過ぎ
2
て、ヨウ素の濃度 [I ]Pがその管理値 [I ]tを上回るようになる場合がある。しかし、こ
2 2
れらの場合にぉ 、ても、ポリビュルアルコール系フィルム Fが常に染色液 の中のヨウ 素を選択的に吸着しているため、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]pは、常に減少してい
2
る。
[0108] 従って、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]pは、染色の進行と共にすぐに減少してくるの
2
で、供給槽 21から調整槽 12に供給される I ZKI混合水溶液の供給は停止する必要
2
がなぐこの I Ζκι混合水溶液の供給量を減少させるだけでよい。
[0109] まず、 I ΖΚΙ混合水溶液の供給を確認するために、ステップ 114にお 、て、インバ
2
ータ N1が動作中か否かが判定される。インバータ N1が停止中であれば、ステップ 1 14において NOと判定される。このとき、 I ZKI混合水溶液の供給は停止しており、
2
インバータ N1を起動することなぐそのまま進行する。
[0110] 一方、インバータ N1が動作中であれば、ステップ 114において YESと判定される。
ここでは、 I ZKI混合水溶液が供給されているが、インバータ N1の出力を停止する
2
ことなく、この出力を減少させるために、ステップ 115において、インバータ N1の出力 減少処理がなされる。この出力減少処理では、マイクロコンピュータ 33から、ステップ 108で演算された Δ [I ] (ここではマイナスの値)の絶対値に比例して減少された補
2
正出力がインバータ N1に出力される。すると、インバータ N1は、上記補正出力に比 例した補正インバータ出力でもってモータ M3を駆動する。
[0111] その結果、ポンプ P3は、モータ M3による上記駆動のもと、その供給量を上記補正 インバータ出力に比例して減少させる。よって、供給槽 21から染色槽 11に供給され る I ZKI混合水溶液の供給量が上記補正インバータ出力に比例して減少し、染色
2
液 Lのヨウ素の濃度 [I ]pが所定の管理値 [I ]tに制御される。
2 2
[0112] 上記ステップ 110〜ステップ 115における操作が適宜行われることにより、染色液 L のヨウ素の濃度 [I ]pは、所定の管理値 [I ]tに制御される。
2 2
[0113] 続いて、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを制御する方法について、図 3及 び図 4に示すフローチャートに従って説明する。
[0114] ここで、染色液 Lの成分であるヨウ化カリウムは、ヨウ素とは独立した割合でその濃 度が変化する。即ち、上述のように供給槽 21から上記 I ΖΚΙ混合水溶液を供給して
2
染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]ρをその管理値 [I ]tに制御した場合、染色液 Lのヨウ化
2 2
カリウムの濃度 [KI]pがその管理値 [KI]tより大きくなる場合と小さくなる場合が生じ る。
[0115] そこで、染色液 Lにヨウ化カリウムを追加するための KI水溶液とヨウ化カリウムを希 釈するための水がそれぞれ独立して供給される。
[0116] まず、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを制御する前段階として、ステップ 11
6において、このヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが減少傾向にある力否かが判定される。
ここで、減少傾向にあるか否かは、以下のようにして判定される。
[0117] 今回のステップ 105で演算されたヨウ化カリウムの濃度を [KI]plとし、前回のステツ プ 105で演算された値を [ΚΙ]ρ2として、その差( [KI]pl— [ΚΙ]ρ2 )を求める。この差 がマイナスの値であれば、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが減少傾向にある 。また、上記差がプラスの値又はゼロであれば、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ ]ρが増加傾向又は変化なしの状態にあり、このヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが減少 傾向にない。
[0118] 同様に前回のステップ 105で演算されたヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρ2と前々回のス テツプ 105で演算された値 [ΚΙ]ρ3との差( [ΚΙ]ρ2— [ΚΙ]ρ3 )を求める。この操作を 今回のステップ 105の直前、最大回数 5回まで実施する。その結果、上記最大回数 5 回の差のうち過半数の差が減少傾向を示すとき、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ ΚΙ]ρが減少傾向にあるとしてステップ 116にお!/、て YESと判定される。
[0119] 以下、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pが減少傾向にあり、ステップ 116において YESと 判定された場合について、図 3に示すフローチャートのステップ 117からステップ 129 に従って説明する。
[0120] ステップ 117において、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pが所定の管理値 [Κ lit未満である力否かが判定される。
[0121] 染色の進行又はヨウ素の濃度制御により、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]p がその管理値 [KI]tより減少していれば、 [KI]pが [KI]t未満であるので、ステップ 1
17において YESと判定される。
[0122] この場合、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pがそれ以上低下しな 、ようにする 必要がある。そこで、水の供給を確認するために、ステップ 118において、インバータ
Ν3が動作中か否かが判定される。インバータ Ν3が動作中であれば、ステップ 118に おいて YESと判定される。
[0123] よって、水の供給を停止するために、ステップ 119において、インバータ N3の出力 停止処理がなされる。この出力停止処理では、インバータ N3の出力が停止される。 すると、モータ M5は駆動を停止しポンプ P5が停止する。
[0124] その結果、供給槽 23から調整槽 12への水の供給が停止して、染色液 Lのヨウ化力
リウムの濃度 [KI]pがそれ以上低下しないようになる。
[0125] 一方、インバータ Ν3が停止中であれば、ステップ 118において NOと判定される。
このとき、水の供給は停止している。
[0126] 次に、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを増加させる必要がある。そこで、 ΚΙ 水溶液の供給を確認するために、ステップ 120において、インバータ Ν2が動作中か 否かが判定される。インバータ Ν2が動作中であれば、ステップ 120において YESと 判定される。
[0127] ここでは、 KI水溶液が供給されているが、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]p は減少傾向にある(上記ステップ 116において判定)。そこで、 ΚΙ水溶液の供給量を 増加させるために、ステップ 121において、インバータ Ν2の出力増大処理がなされる 。この出力増大処理では、マイクロコンピュータ 33から、ステップ 108で演算された Δ [ΚΙ] (ここではプラスの値)の絶対値に比例して増大された補正出力がインバータ Ν2に出力される。すると、インバータ Ν2は、上記補正出力に比例した補正インバー タ出力でもってモータ Μ4を駆動する。
[0128] その結果、ポンプ Ρ4は、モータ Μ4による上記駆動のもと、その供給量を上記補正 インバータ出力に比例して増大させる。よって、供給槽 22から調整槽 12に供給され る ΚΙ水溶液の供給量が上記補正インバータ出力に比例して増大し、染色液 Lのヨウ 化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが所定の管理値 [KI]tに制御される。
[0129] 一方、インバータ N2が停止中であれば、ステップ 120において NOと判定される。
このとき、 KI水溶液の供給は停止している。
[0130] そこで、 KI水溶液の供給を開始させて、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを速やかに増 カロさせるために、ステップ 122において、インバータ Ν2の起動処理がなされる。この 起動処理では、マイクロコンピュータ 33から所定の起動出力がインバータ Ν2に出力 される。すると、インバータ Ν2は、上記起動出力に比例したインバータ出力でもって モータ Μ4を駆動する。
[0131] その結果、ポンプ Ρ4は、モータ Μ4による上記駆動のもと、供給槽 22内の ΚΙ水溶 液を調整槽 12に供給する。よって、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが増加し 、所定の管理値 [KI]tに制御される。
[0132] ここで、マイクロコンピュータ 33からインバータ N2に出力される所定の起動出力は、 染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度の管理値 [KI]t、供給槽 22内の KI水溶液のヨウ化 カリウムの濃度 [KI]s2及び染色槽 11へのポリビュルアルコール系フィルムの導入速 度等の染色条件により決定され、この所定の起動出力は、予めマイクロコンピュータ 3 3に読出し可能に記憶させておく。
[0133] これに対して、ヨウ素の濃度制御のため染色液 Lに I ZKI混合水溶液が供給され
2
た結果、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pがその管理値 [KI]tと同じ或いは大きくなつて いれば、 [KI]pが [KI]t以上であるので、ステップ 117において NOと判定される。
[0134] この場合、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pがそれ以上増加しな 、ようにする 必要がある。そこで、 ΚΙ水溶液の供給を確認するために、ステップ 123において、ィ ンバータ Ν2が動作中か否かが判定される。インバータ Ν2が動作中であれば、ステツ プ 123において YESと判定される。
[0135] よって、 KI水溶液の供給を停止するために、ステップ 124において、インバータ N2 の出力停止処理がなされる。この出力停止処理では、インバータ N2の出力が停止さ れる。すると、モータ M4は駆動を停止しポンプ P4が停止する。
[0136] その結果、供給槽 22から調整槽 12への KI水溶液の供給が停止して、染色液しの ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pがそれ以上増加しないようになる。
[0137] 一方、インバータ Ν2が停止中であれば、ステップ 123において NOと判定される。
このとき、 KI水溶液の供給は停止している。
[0138] 次に、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを希釈する必要がある。そこで、水の 供給を確認するために、ステップ 125において、インバータ Ν3が動作中力否かが判 定される。インバータ Ν3が動作中であれば、ステップ 125において YESと判定される
[0139] ここでは、水が供給されているが、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pは減少傾 向にある(上記ステップ 116において判定)。そこで、インバータ Ν3の出力を制御し て水の供給量を制御することが重要となる。その為に、ステップ 126において、染色 液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが所定の閾値以下か否かが判定される。この閾値 は、下記のように設定されている。
[0140] まず、過剰な水の供給を行えば上記ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pがその管理値 [ΚΙ ]tを超えて低くなり、濃度制御の精度が低下する。つまり、上記ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pとその管理値 [KI]tとの差が小さい場合には、インバータ N3の出力は現状よ り小さくする必要が生じる。
[0141] 一方、上記ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pとその管理値 [KI]tとの差が大き 、場合に は、インバータ N3の出力を現状より増力!]させて、速やかに上記ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを減少させなければ逆に濃度制御の精度が低下する。
[0142] そこで、この濃度制御の精度をより高くするヨウ化カリウムの濃度が所定の閾値とし て設定される。上記所定の閾値は、上記ヨウ化カリウムの濃度の管理値 [KI]t、ボン プ P5の吐出能力及びポリビニル系フィルム Fの導入速度等の染色条件により適切な 値が設定される。なお、本実施形態においては、この閾値は、染色液 Lのヨウ化力リウ ムの濃度の管理値 [KI]tの 102%として設定されている。
[0143] 上述の設定のもと、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pが上記閾値以下であれ ば、ステップ 126において YESと判定される。
[0144] そこで、水の供給量を減少させて、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを緩やかに希釈さ せるために、ステップ 127において、インバータ Ν3の出力減少処理がなされる。この 出力減少処理では、マイクロコンピュータ 33から、ステップ 108で演算された Δ [ΚΙ] (ここではマイナスの値)の絶対値に比例して減少された補正出力がインバータ Ν3に 出力される。すると、インバータ Ν3は、上記補正出力に比例した補正インバータ出力 でもってモータ Μ5を駆動する。
[0145] その結果、ポンプ Ρ5は、モータ Μ5による上記駆動のもと、その供給量を上記補正 インバータ出力に比例して減少させる。よって、供給槽 23から調整槽 12に供給され る水の供給量が上記補正インバータ出力に比例して減少し、染色液 Lのヨウ化力リウ ムの濃度 [ΚΙ]ρが所定の管理値 [KI]tに制御される。
[0146] また、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pが上記閾値を越える場合は、ステップ 126にお!/、て NOと判定される。
[0147] そこで、水の供給量を増加させて、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを速やかに希釈さ せるために、ステップ 128において、インバータ Ν3の出力増大処理がなされる。この
出力増大処理では、マイクロコンピュータ 33から、ステップ 108で演算された Δ [ΚΙ] (ここではマイナスの値)の絶対値に比例して増大された補正出力がインバータ Ν3に 出力される。すると、インバータ Ν3は、上記補正出力に比例した補正インバータ出力 でもってモータ Μ5を駆動する。
[0148] その結果、ポンプ Ρ5は、モータ Μ5による上記駆動のもと、その供給量を上記補正 インバータ出力に比例して増大させる。よって、供給槽 23から調整槽 12に供給され る水の供給量が上記補正インバータ出力に比例して増大し、染色液 Lのヨウ化力リウ ムの濃度 [ΚΙ]ρが所定の管理値 [KI]tに制御される。
[0149] 一方、インバータ N3が停止中であれば、ステップ 125において NOと判定される。
このとき、水の供給は停止している。
[0150] そこで、水の供給を開始させて、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを速やかに希釈させる ために、ステップ 129において、インバータ Ν3の起動処理がなされる。この起動処理 では、マイクロコンピュータ 33から所定の起動出力がインバータ Ν3に出力される。す ると、インバータ Ν3は、上記起動出力に比例したインバータ出力でもってモータ Μ5 を駆動する。
[0151] その結果、ポンプ Ρ5は、モータ Μ5による上記駆動のもと、供給槽 23内の水を調整 槽 12に供給する。よって、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが所定の管理値 [ KI]tに制御される。
[0152] ここで、マイクロコンピュータ 33からインバータ N3に出力される所定の起動出力は、 染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度の管理値 [KI]t、供給槽 22内の KI水溶液のヨウ化 カリウムの濃度 [KI]s2及び染色槽 11へのポリビュルアルコール系フィルムの導入速 度等の染色条件により決定され、この所定の起動出力は、予めマイクロコンピュータ 3 3に読出し可能に記憶させておく。
[0153] 上述のように図 3に示すフローチャートのステップ 117からステップ 129においては 、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pが減少傾向にある場合を説明した。次に、ヨウ化力リウ ムの濃度 [ΚΙ]ρが減少傾向を示さず (管理値と同じ又は増加傾向にある)、ステップ 116にお!/、て NOと判定された場合につ!、て、図 4に示すフローチャートのステップ 1 30力 ステップ 142に従って説明する。
[0154] ステップ 130において、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]p力 所定の管理値 [
KI]t未満であるカゝ否かが判定される。
[0155] 染色の進行又はヨウ素の濃度制御により、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]p がその管理値 [KI]tより減少していれば、 [KI]pが [KI]t未満であるので、ステップ 1
30において YESと判定される。
[0156] この場合には、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pがそれ以上低下しな 、ように する必要がある。そこで、水の供給を確認するために、ステップ 131において、インバ ータ Ν3が動作中か否かが判定される。インバータ Ν3が動作中であれば、ステップ 1
31において YESと判定される。
[0157] よって、水の供給を停止するために、ステップ 132において、インバータ N3の出力 停止処理がなされる。この出力停止処理では、インバータ N3の出力が停止される。 すると、モータ M5は駆動を停止しポンプ P5が停止する。
[0158] その結果、供給槽 23から調整槽 12への水の供給が停止して、染色液 Lのヨウ化力 リウムの濃度 [KI]pがそれ以上低下しないようになる。
[0159] 一方、インバータ Ν3が停止中であれば、ステップ 131において NOと判定される。
このとき、水の供給は停止している。
[0160] 次に、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを増加させる必要がある。そこで、 ΚΙ 水溶液の供給を確認するために、ステップ 133において、インバータ Ν2が動作中か 否かが判定される。インバータ Ν2が動作中であれば、ステップ 133において YESと 判定される。
[0161] ここでは、 KI水溶液が供給されているが、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]p は減少傾向を示さず、管理値と同じ又は増加傾向にある(上記ステップ 116において 判定)。そこで、インバータ Ν2の出力を制御して ΚΙ水溶液の供給量を制御することが 重要になる。その為に、ステップ 134において、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ] Ρが所定の閾値以上力否かが判定される。この閾値は、下記のように設定されている
[0162] まず、過剰な ΚΙ水溶液の供給を行えば上記ヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρがその管 理値 [KI]tを超えて高くなり、濃度制御の精度が低下する。つまり、上記ヨウ化力リウ
ムの濃度 [KI]pとその管理値 [KI]tとの差が小さい場合には、インバータ N2の出力 は現状より小さくする必要が生じる。
[0163] 一方、上記ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pとその管理値 [KI]tとの差が大き 、場合に は、インバータ N2の出力を現状より増力!]させて、速やかに上記ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを増加させなければ逆に濃度制御の精度が低下する。
[0164] そこで、この濃度制御の精度をより高くするヨウ化カリウムの濃度が所定の閾値とし て設定される。上記所定の閾値は、上記ヨウ化カリウムの濃度の管理値 [KI]t、供給 槽 22内の KI水溶液のヨウ化カリウムの濃度 [KI]s2、ポンプ P4の吐出能力及びポリ ビニル系フィルム Fの導入速度等の染色条件により適切な値が設定される。なお、本 実施形態においては、この閾値は、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度の管理値 [KI]t の 98%として設定されている。
[0165] 上述の設定のもと、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pが上記閾値以上であれ ば、ステップ 134において YESと判定される。
[0166] そこで、 KI水溶液の供給量を増加させて、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを緩やかに 増加させるために、ステップ 135において、インバータ Ν2の出力減少処理がなされる 。この出力減少処理では、マイクロコンピュータ 33から、ステップ 108で演算された Δ [ΚΙ] (ここではプラスの値)の絶対値に比例して減少された補正出力がインバータ Ν2に出力される。すると、インバータ Ν2は、上記補正出力に比例した補正インバー タ出力でもってモータ Μ4を駆動する。
[0167] その結果、ポンプ Ρ4は、モータ Μ4による上記駆動のもと、その供給量を上記補正 インバータ出力に比例して減少させる。よって、供給槽 22から調整槽 12に供給され る ΚΙ水溶液の供給量が上記補正インバータ出力に比例して減少し、染色液 Lのヨウ 化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが所定の管理値 [KI]tに制御される。
[0168] また、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pが上記閾値未満であれば、ステップ 1 34にお!/、て NOと判定される。
[0169] そこで、 KI水溶液の供給量を増加させて、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを速やかに 増加させるために、ステップ 136において、インバータ Ν2の出力増大処理がなされる 。この出力増大処理では、マイクロコンピュータ 33から、ステップ 108で演算された
Δ [KI] (ここではプラスの値)の絶対値に比例して増大された補正出力がインバータ Ν2に出力される。すると、インバータ Ν2は、上記補正出力に比例した補正インバー タ出力でもってモータ Μ4を駆動する。
[0170] その結果、ポンプ Ρ4は、モータ Μ4による上記駆動のもと、その供給量を上記補正 インバータ出力に比例して増大させる。よって、供給槽 22から調整槽 12に供給され る ΚΙ水溶液の供給量が上記補正インバータ出力に比例して増大し、染色液 Lのヨウ 化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが所定の管理値 [KI]tに制御される。
[0171] 一方、インバータ N2が停止中であれば、ステップ 133において NOと判定される。
このとき、 KI水溶液の供給は停止している。
[0172] そこで、 KI水溶液の供給を開始して、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを速やかに増加 させるために、ステップ 137において、インバータ Ν2の起動処理がなされる。この起 動処理は、上記ステップ 122の起動処理と同一である。即ち、マイクロコンピュータ 33 力 所定の起動出力がインバータ Ν2に出力される。すると、インバータ Ν2は、上記 起動出力に比例したインバータ出力でもってモータ Μ4を駆動する。
[0173] その結果、ポンプ Ρ4は、モータ Μ4による上記駆動のもと、供給槽 22内の ΚΙ水溶 液を調整槽 12に供給する。よって、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが増加し 、所定の管理値 [KI]tに制御される。
[0174] これに対して、ヨウ素の濃度制御のため染色液 Lに I ZKI混合水溶液が供給され
2
た結果、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pがその管理値 [KI]tと同じ或いは大きくなつて いれば、 [KI]pが [KI]t以上であるので、ステップ 130において NOと判定される。
[0175] この場合には、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pがそれ以上増加しないように する必要がある。そこで、 ΚΙ水溶液の供給を確認するために、ステップ 138において 、インバータ Ν2が動作中か否かが判定される。インバータ Ν2が動作中であれば、ス テツプ 138において YESと判定される。
[0176] よって、 KI水溶液の供給を停止するために、ステップ 139において、インバータ N2 の出力停止処理がなされる。この出力停止処理では、インバータ N2の出力が停止さ れる。すると、モータ M4は駆動を停止しポンプ P4が停止する。
[0177] その結果、供給槽 22から調整槽 12への KI水溶液の供給が停止して、染色液しの
ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pがそれ以上増加しないようになる。
[0178] 一方、インバータ Ν2が停止中であれば、ステップ 138において NOと判定される。
このとき、 KI水溶液の供給は停止している。
[0179] 次に、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを希釈する必要がある。そこで、水の 供給を確認するために、ステップ 140において、インバータ Ν3が動作中力否かが判 定される。インバータ Ν3が動作中であれば、ステップ 140において YESと判定される
[0180] ここでは、水が供給されているが、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [KI]pは減少傾 向を示さず、管理値と同じ又は増加傾向にある(上記ステップ 116において判定)。 そこで、水の供給量を増加させるために、ステップ 141において、インバータ Ν3の出 力増大処理がなされる。この出力増大処理では、マイクロコンピュータ 33から、ステツ プ 108で演算された Δ [ΚΙ] (ここではマイナスの値)の絶対値に比例して増大された 補正出力がインバータ Ν3に出力される。すると、インバータ Ν3は、上記補正出力に 比例した補正インバータ出力でもってモータ Μ5を駆動する。
[0181] その結果、ポンプ Ρ5は、モータ Μ5による上記駆動のもと、その供給量を上記補正 インバータ出力に比例して増大させる。よって、供給槽 23から調整槽 12に供給され る水の供給量が上記補正インバータ出力に比例して増大し、染色液 Lのヨウ化力リウ ムの濃度 [ΚΙ]ρが所定の管理値 [KI]tに制御される。
[0182] 一方、インバータ N3が停止中であれば、ステップ 140において NOと判定される。
このとき、水の供給は停止している。
[0183] そこで、水の供給を開始させて、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pを速やかに希釈させる ために、ステップ 142において、インバータ Ν3の起動処理がなされる。この起動処理 は、上記ステップ 129の起動処理と同一である。即ち、マイクロコンピュータ 33から所 定の起動出力がインバータ Ν3に出力される。すると、インバータ Ν3は、上記起動出 力に比例したインバータ出力でもってモータ Μ5を駆動する。
[0184] その結果、ポンプ Ρ5は、モータ Μ5による上記駆動のもと、供給槽 23内の水を調整 槽 12に供給する。よって、染色液 Lのヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρが所定の管理値 [ KI]tに制御される。
[0185] 上述の各ステップにより、染色液 Lのヨウ素の濃度 [I ]p及びヨウ化カリウムの濃度 [
2
KI]pがそれぞれの管理値 [I ]t及び [KI]tに制御される。
2
[0186] 続くステップ 143 (図 3に示すフローチャートに戻る)において、濃度制御を終了す る力否かが判定される。ここでは、染色装置の運転前又は運転中にマイクロコンピュ ータ 33に入力された停止命令を確認する。停止命令を確認しなければ、濃度制御を 続けるためにステップ 143において NOと判定され、ステップ 103 (図 2に示すフロー チャートに戻る)に戻り、プログラムが継続して進行する。
[0187] 一方、濃度制御を終了する場合には、停止命令を確認し、ステップ 143において Y ESと半 IJ定される。
[0188] この場合には、ステップ 144において、測定ポンプ運転停止処理がなされる。この 運転停止処理では、駆動回路 35の出力が停止される。すると、モータ M2は駆動を 停止しポンプ P2が停止する。
[0189] 更に、ステップ 145において、循環ポンプ運転停止処理がなされる。この運転停止 処理では、駆動回路 34の出力が停止される。すると、モータ Mlは駆動を停止しボン プ P1が停止する。
[0190] 上述のように、本実施形態においては、これまで困難とされていた染色液の成分濃 度を把握し各管理値に制御することが可能になる。
[0191] 即ち、ポリビュルアルコール系フィルムの染色工程において、経時的に変化する染 色液のヨウ素の濃度及びヨウ化カリウムの濃度について各所定の管理値力 のずれ を求め、求められた各管理値力 のずれを減少させるように染色液の成分であるヨウ 素、ヨウ化カリウム及び水を染色液に追加する供給量を制御することができる。
[0192] 従って、染色液の成分濃度を経時的に一定に制御することができるようになり、ポリ ビュルアルコール系フィルムに染色されるヨウ素の量が安定し、得られた偏光子の品 質の安定と歩留りの向上が可能となる。
[0193] また、本実施形態においては、染色液の容量を多くすることもなぐ経験等に基づく 処理数量を指標として、新しい染色液に入れ替えるという対応をとる必要がない。従 つて、処理液のコストアップとならず、また、液交換のために装置停止をすることなぐ 生産性が向上する。
[0194] なお、上記実施形態は、本発明を染色装置に適用したものであるが、本発明の実 施にあたり、上記実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
[0195] 1.上記実施形態に対して、ヨウ化カリウムの濃度 [KI]pの演算処理ステップ 105に おいて、染色液のヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρを上記直線式(1)から算出する代わり に、導電率 αとヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]の相関関係(図 5参照)をデータベースとし て、上記ステップ 103で読込まれた導電率ひに基づいてマイクロコンピュータの演算 手段を使用して計算処理してもよい。
[0196] 2.上記実施形態に対して、 ΚΙ係数 Sの演算処理ステップ 106において、 ΚΙ係数 S を上記直線式(3)から算出する代わりに、染色液のヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]と ΚΙ 係数 Sとの相関関係(図 7参照)をデータベースとして、上記ステップ 105で演算され たヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρに基づいてマイクロコンピュータの演算手段を使用し て計算処理してもよい。
[0197] 3.上記実施形態に対して、ヨウ素の濃度 [I ]ρの演算処理ステップ 107において、
2
染色液のヨウ素の濃度 [I ]ρを上記直線式(2)から算出する代わりに、吸光度 j8とョ
2
ゥ素の濃度 [I ]との相関関係(図 6参照)をデータベースとして、上記ステップ 104で
2
読込まれた吸光度 j8と上記ステップ 105で演算されたヨウ化カリウムの濃度 [KI]pに 基づ 、てマイクロコンピュータの演算手段を使用して計算処理してもよ!/、。
[0198] 但し、上記ステップ 105で演算されたヨウ化カリウムの濃度 [ΚΙ]ρの値が、図 6で求 められている値( [KI] = a、 b又は c )と一致しないことがある。例えば、上記ステップ 1 05で演算されたヨウ化カリウムの濃度 [KI]p力 図 6で求められている値( [KI] = a ) と値( [KI] = b )の間にある場合である。この場合には、図 6で求められている値( [K I] = a、 b又は c )をデータベースとして、マイクロコンピュータの演算手段を使用して 比例計算により計算処理してもよい。
[0199] 4.上記実施形態に対して、供給ユニットから調整槽への各成分の供給は、 I /KI
2 混合水溶液、 KI水溶液及び水による供給に限るものではない。即ち、ヨウ素、ヨウィ匕 カリウム及び水をそれぞれどのような組合せで供給してもよぐまた、それぞれ単独で 供給してもよい。この場合、ヨウ素及びヨウ化カリウムを粉体の状態で供給することも できる。
[0200] 5.上記実施形態に対して、供給ユニットから調整槽への各成分の供給は、水溶液 の状態での供給に限るものではない。例えば、アルコール溶液、乳化液又は分散液 等の状態で供給することもできる。
[0201] 6.上記実施形態に対して、供給ユニットからの水の供給は、水をストックした供給 槽からの供給に限るものではない。即ち、水をストックすることなく供給水配管力も直 接供給してもよい。この場合、水が供給配管中を圧送されている場合には、ポンプの 代わりに、バルブの開閉により供給量を調節してもよい。
[0202] 7.上記実施形態に対して、染色ユニットの調整槽を備えることなぐ供給ユニットか らの各成分供給を染色槽に直接供給するようにしてもょ 、。
[0203] 8.上記実施形態に対して、染色ユニットの回収槽を備えることなぐ染色槽からの 余剰の染色液は、廃棄するようにしてもよい。
[0204] 9.上記実施形態に対して、制御ユニットの導電率センサと吸光度センサは、検出 配管の管路に設置することなぐ染色槽に直接設置してもよい。
[0205] 10.上記実施形態におけるモニタには、ディスプレイ、各種記録計又はプリンター 等も含まれる力 これらのモニタに代えて、或いは、これらのモニタと併用して、各管 理値からのずれが所定の範囲を超えた場合に、警告灯による表示をするようにしても よい。
[0206] 11.上記実施形態に対して、染色液の成分であるヨウ素の濃度のみを制御するよう にしてしてもよい。偏光子の性能は主に染色液のヨウ素の濃度に影響され、これをあ る程度許容できる場合もあるからである。
[0207] 12.各ポンプ P1〜P5は、上記実施形態にて述べた例に限ることなぐ例えば、モ 一タと別体のポンプであってもよぐ一般的には、モータ及びポンプの組み合わせか らなるものであればよい。
図面の簡単な説明
[0208] [図 1]本発明の染色装置の一実施形態を示す構成図である。
[図 2]上記実施形態におけるマイクロコンピュータの作動を示すフローチャートの前段 部分である。
[図 3]上記実施形態におけるマイクロコンピュータの作動を示すフローチャートの中段
部分である。
[図 4]上記実施形態におけるマイクロコンピュータの作動を示すフローチャートの後段 部分である。
[図 5]上記実施形態における染色液の導電率とヨウ化カリウムの濃度との相関関係を 示すグラフである。
[図 6]上記実施形態における染色液の吸光度とヨウ素の濃度との相関関係を示すグ ラフである。
[図 7]上記実施形態における染色液のヨウ化カリウムの濃度と KI係数との相関関係を 示すグラフである。
符号の説明
10···染色ユニット、 11···染色槽、 12···調整槽、 13···回収槽、 14a〜14b…循環配 管、 15···検出配管、 16···回収配管、 17a〜17d…ガイドロール、 20…供給ユニット 、 21〜23…供給槽、 24〜26…供給配管、 30…制御ユニット、 31···導電率センサ、 32···吸光度センサ、 33···マイクロコンピュータ、 34〜36···駆動回路、 37…モニタ、 F…ポリビュルアルコール系フィルム、 L…染色液、 Μ1〜Μ5···モータ、 Ν1〜Ν3··· インバータ、 Ρ1〜Ρ5···ポンプ。